(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】異方性導電フィルム
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20220425BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20220425BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R11/01 501A
H01R43/02 Z
H01R43/00 H
(21)【出願番号】P 2017160630
(22)【出願日】2017-08-23
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000224
【氏名又は名称】特許業務法人田治米国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚尾 怜司
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-044947(JP,A)
【文献】特開2003-064324(JP,A)
【文献】特開2003-45236(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1307625(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 11/01
H01R 43/02
H01R 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を有する異方性導電フィルムであって、
該絶縁性樹脂層が、光重合性樹脂組成物の層であり、
導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有
し、
傾斜もしくは起伏は、絶縁性樹脂層から露出することなく絶縁性樹脂層内に埋まっている導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面に形成されている異方性導電フィルム。
【請求項2】
前記傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けており、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ない請求項1記載の異方性導電フィルム。
【請求項3】
前記接平面からの導電粒子の最深部の距離Lbと、導電粒子の粒子径Dとの比(Lb/D)が30%以上105%以下である請求項1
又は2記載の異方性導電フィルム。
【請求項4】
光重合性樹脂組成物が、光カチオン重合性樹脂組成物である請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項5】
光重合性樹脂組成物が、光ラジカル重合性樹脂組成物である請求項1~3のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項6】
絶縁性樹脂層の層厚Laと導電粒子の粒子径Dとの比(La/D)が0.6~10である請求項1~
5のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項7】
導電粒子が互いに非接触で配置されている請求項1~
6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項8】
導電粒子の最近接粒子間距離が導電粒子径の0.5倍以上4倍以下である請求項1~
7のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項9】
絶縁性樹脂層の傾斜もしくは起伏が形成されている表面と反対側の表面に、第2の絶縁性樹脂層が積層されている請求項1~
8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項10】
絶縁性樹脂層の傾斜もしくは起伏が形成されている表面に、第2の絶縁性樹脂層が積層されている請求項1~
8のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項11】
第2の絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層の最低溶融粘度よりも低い請求項
9又は
10記載の異方性導電フィルム。
【請求項12】
導電粒子の粒子径のCV値が20%以下である請求項1~
11のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【請求項13】
導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を形成する工程を有する、請求項1記載の異方性導電フィルムの製造方法であって、
導電粒子分散層を形成する工程が、導電粒子を光重合性樹脂組成物からなる絶縁性樹脂層表面に分散した状態で保持させる工程と、絶縁性樹脂層表面に保持させた導電粒子を該絶縁性樹脂層に押し込む工程を有し、
導電粒子を絶縁性樹脂層表面に押し込む工程において、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有するように、導電粒子を押し込むときの絶縁性樹脂層の粘度、押込速度又は温度を調整する異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項14】
導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む工程において、前記傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けており、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ない請求項
13記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項15】
前記接平面からの導電粒子の最深部の距離Lbと、導電粒子径Dとの比(Lb/D)が30%以上105%以下である請求項
14記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項16】
光重合性樹脂組成物が、光カチオン重合性樹脂組成物である請求項
13~
15のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項17】
光重合性樹脂組成物が、光ラジカル重合性樹脂組成物である請求項
13~
15のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項18】
導電粒子径のCV値が20%以下である請求項
13~
17のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項19】
導電粒子を絶縁性樹脂層表面に保持させる工程において、絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配列で保持させ、
導電粒子を該絶縁性樹脂層に押し込む工程において、導電粒子を平板又はローラーで絶縁性樹脂層に押し込む請求項
13~
18のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項20】
導電粒子を絶縁性樹脂層表面に保持させる工程において、転写型に導電粒子を充填し、その導電粒子を絶縁性樹脂層に転写することにより絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配置で保持させる請求項
13~
19のいずれかに記載の異方性導電フィルムの製造方法。
【請求項21】
請求項1~
12のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体。
【請求項22】
請求項1~
12のいずれかに記載の異方性導電フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性導電接続する、接続構造体の製造方法。
【請求項23】
異方性導電接続を、光照射と圧着ツールにより行う請求項
22記載の接続構造体の製造方法。
【請求項24】
第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムを、その導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側又は形成されていない側から配置する異方性導電フィルム配置工程、
異方性導電フィルムに対し光照射を行うことにより導電粒子分散層を光重合させる光照射工程、及び
光重合した導電粒子分散層上に第2の電子部品を配置し、圧着ツールで第2の電子部品を加圧することにより、第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性導電接続する圧着工程を有する、請求項
22又は
23記載の接続構造体の製造方法。
【請求項25】
配置工程において、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムをその導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側から配置する請求項
24記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICチップなどの電子部品の実装に、導電粒子を絶縁性樹脂層に分散させた異方性導電フィルムが広く使用されている。異方性導電フィルムでは、高実装密度に対応できるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を高密度に分散させることが行われている。しかしながら、導電粒子の個数密度を高めることはショートの発生要因となる。
【0003】
これに対し、ショートを低減させると共に、異方性導電フィルムを基板に仮圧着するときの作業性を改善するため、導電粒子を単層で埋め込んだ光重合性樹脂層と絶縁性接着剤層とを積層した異方性導電フィルムが提案されている(特許文献1)。この異方性導電フィルムの使用方法としては、光重合性樹脂層が未重合でタック性を有する状態で仮圧着を行い、次に光重合性樹脂層を光重合させて導電粒子を固定化し、その後、基板と電子部品とを本圧着する。
【0004】
また、特許文献1と同様の目的を達成するために、第1接続層が、主として絶縁性樹脂からなる第2接続層と第3接続層とに挟持された3層構造の異方性導電フィルムも提案されている(特許文献2,3)。具体的には、特許文献2の異方性導電フィルムは、第1接続層が、絶縁性樹脂層の第2接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている。他方、特許文献3の異方性導電フィルムは、第1接続層と第3接続層の境界が起伏している構造を有し、第1接続層が、絶縁性樹脂層の第3接続層側の平面方向に導電粒子が単層で配列された構造を有し、隣接する導電粒子間の中央領域の絶縁性樹脂層厚が、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層厚よりも薄くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-64324号公報
【文献】特開2014-060150号公報
【文献】特開2014-060151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の異方性導電フィルムでは、異方性導電接続の仮圧着時に導電粒子が動きやすく、異方性導電接続前の導電粒子の精密な配置を異方性導電接続後に維持できない、もしくは導電粒子間の距離を十分に離間させることができないという問題がある。また、このような異方性導電フィルムを基板と仮圧着した後に光重合性樹脂層を光重合させ、導電粒子が埋め込まれている光重合した樹脂層と電子部品とを貼り合わせると、電子部品のバンプの端部で導電粒子が捕捉されにくいという問題や、導電粒子の押込に過度に大きな力が必要となり、導電粒子を十分に押し込むことができないという問題があった。また、特許文献1では、導電粒子の押し込みの改善のために、光重合性樹脂層からの導電粒子の露出の観点等からの検討も十分になされていない。
【0007】
そこで、光重合性樹脂層に代えて、異方性導電接続時の加熱温度で高粘度となる熱重合性の絶縁性樹脂層に導電粒子を分散させ、異方性導電接続時の導電粒子の流動性を抑制すると共に、異方性導電フィルムを電子部品と貼着するときの作業性を向上させることが考えられる。しかしながら、そのような絶縁性樹脂層に導電粒子を仮に精密に配置したとしても、異方性導電接続時に樹脂層が流動すると導電粒子も同時に流動してしまうので、導電粒子の捕捉性の向上やショートの低減を十分に図ることは困難であり、異方性導電接続後の導電粒子に当初の精密な配置を維持させることも、導電粒子同士を離間した状態に保持させることも困難である。このため、やはり光重合性樹脂層に導電粒子を分散保持させておくことが望まれていることが現状である。
【0008】
また、特許文献2、3に記載の3層構造の異方性導電フィルムの場合、基本点な異方性導電接続特性については問題が認められないものの、3層構造であるため、製造コストの観点から、製造工数を減数化することが求められている。また、第1接続層の片面における導電粒子の近傍において、第1接続層の全体もしくはその一部が導電粒子の外形より大きく隆起し(絶縁性樹脂層そのものが平坦ではなくなり)、その隆起した部分に導電粒子が保持されているため、導電粒子の保持や不動性と端子により挟持させ易くすることとを両立させるために設計上の制約が多くなり易いという問題が懸念されている。
【0009】
これに対し、本発明は、導電粒子を光重合性の絶縁性樹脂層に分散させた異方性導電フィルムにおいて、3層構造を必須としなくても、また、導電粒子を保持している光重合性の絶縁性樹脂層における当該導電粒子近傍において光重合性の絶縁性樹脂の全体もしくはその一部を導電粒子の外形より大きく隆起させなくても、異方性導電接続時における光重合性の絶縁性樹脂層の流動による導電粒子の不要な移動(流動)を抑制し、導電粒子の捕捉性を向上させ、且つショートを低減させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、異方性導電フィルムに、導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層に分散した導電粒子分散層を設けるにあたり、光重合性の絶縁性樹脂層の導電粒子近傍の表面形状について以下の知見(i)、(ii)を得、また、光重合性の絶縁性樹脂層の光重合のタイミングについて以下の知見(iii)を得た。
【0011】
即ち、特許文献1に記載の異方性導電フィルムでは、導電粒子が埋め込まれた側の光重合性の絶縁性樹脂層自体の表面が平坦になっているのに対し、(i)導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層から露出している場合に、導電粒子の周囲の光重合性の絶縁性樹脂層の表面を、隣接する導電粒子間の中央部における光重合性の絶縁性樹脂層の接平面に対して当該絶縁性樹脂層内側に傾斜させるようにすると、その絶縁性樹脂層の表面の平坦性が損なわれて一部欠けた状態(光重合性の絶縁性樹脂層の表面の一部が欠けることで、直線的な絶縁性樹脂層の、表面の平坦性が一部損なわれた状態)となり、その結果、異方性導電接続時に端子間における導電粒子の挟持や扁平化を妨げる虞のある不要な絶縁性樹脂を低減させることができ、更に、(ii)導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層から露出することなく当該絶縁性樹脂層内に埋まっている場合に、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層に、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対してうねり、即ち、痕跡となるような微小な起伏(以下、単に起伏とのみ記す)が形成されるようにすると、異方性導電接続時に導電粒子が端子によって押し込まれやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が向上し、さらに異方性導電フィルムの製品検査や、使用面の確認が容易になることを見出した。また、光重合性の絶縁性樹脂層におけるこのような傾斜もしくは起伏は、当該絶縁性樹脂層に導電粒子を押し込むことによって導電粒子分散層を形成する場合に、導電粒子を押し込むときの絶縁性樹脂層の粘度、押し込み速度、温度などを調整することにより形成できることを見出した。
【0012】
また、(iii)本願発明のような異方性導電フィルムを使用して電子部品同士を異方性導電接続させ接続構造体を製造する際に、一方の電子部品に異方性導電フィルムを配置させた後、その上に他方の電子部品を配置する前に、異方性導電フィルムの光重合性の絶縁性樹脂層に対し光照射を行うことで、異方性導電接続時にその絶縁性樹脂の最低溶融粘度の過度な低下を抑制して導電粒子の不要な流動を防止し、それにより接続構造体に良好な導通特性を実現できることを見出した。
【0013】
本発明は、導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を有する異方性導電フィルムであって、
該絶縁性樹脂層が、光重合性樹脂組成物の層であり、
導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有する異方性導電フィルムを提供する。
【0014】
本発明の異方性導電フィルムにおいては、前記傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面にして欠けており、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少ないことが好ましい。あるいは、前記接平面からの導電粒子の最深部の距離Lbと、導電粒子径Dとの比(Lb/D)が30%以上105%以下であることが好ましい。
【0015】
光重合性樹脂組成物は、光カチオン重合性、光アニオン重合性もしくは光ラジカル重合性であってもよいが、成膜用ポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤とを含有する光カチオン重合性樹脂組成物であることが好ましい。ここで、好ましい光カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物とオキセタン化合物とから選択される少なくとも一種であり、好ましい光カチオン重合開始剤は、芳香族オニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。また、光重合性樹脂組成物が光ラジカル重合性樹脂組成物である場合、成膜用ポリマーと、光ラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤と、熱ラジカル重合開始剤とを含有することが好ましい。
【0016】
本発明の異方性導電フィルムにおいて、絶縁性樹脂層から露出している導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層の表面に傾斜もしくは起伏が形成されていてもよく、絶縁性樹脂層から露出することなく絶縁性樹脂層内に埋まっている導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面に傾斜もしくは起伏が形成されていてもよい。また、絶縁性樹脂層の層厚Laと導電粒子径Dとの比(La/D)は、好ましくは0.6~10であり、導電粒子が互いに非接触で配置されていることが好ましい。更に、導電粒子の最近接粒子間距離が導電粒子径の0.5倍以上4倍以下であることが好ましい。
【0017】
本発明の異方性導電フィルムにおいて、絶縁性樹脂層の傾斜もしくは起伏が形成されている表面と反対側の表面に、第2の絶縁性樹脂層が積層されていてもよく、反対に、絶縁性樹脂層の傾斜もしくは起伏が形成されている表面に、第2の絶縁性樹脂層が積層されていてもよい。これらの場合、第2の絶縁性樹脂層の最低溶融粘度が絶縁性樹脂層の最低溶融粘度よりも低いことが好ましい。なお、導電粒子の粒子径のCV値は、好ましくは20%以下である。
【0018】
本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を形成する工程を有する製造方法により製造できる。ここで、導電粒子分散層を形成する工程は、導電粒子を光重合性樹脂組成物からなる絶縁性樹脂層表面に分散した状態で保持させる工程と、絶縁性樹脂層表面に保持させた導電粒子を該絶縁性樹脂層に押し込む工程を有し、この導電粒子を絶縁性樹脂層表面に押し込む工程において、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有するように、導電粒子を押し込むときの絶縁性樹脂層の粘度、押込速度又は温度を調整する。より詳しくは、導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む工程において、好ましくは、前記傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面に対して欠けるようにし、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少なくなるようにする。あるいは、前記接平面からの導電粒子の最深部の距離Lbと、導電粒子径Dとの比(Lb/D)を30%以上105%以下とする。この数値範囲内において、30%以上60%未満であると、導電粒子を最低限に保持し、且つ樹脂層からの導電粒子の露出が大きいことから、より低温低圧実装が容易になり、60%以上105%以下であると、導電粒子の状態をより保持し易くなり、且つ接続前後で捕捉される導電粒子の状態が維持され易くなる。
【0019】
なお、光重合性樹脂組成物、導電粒子の粒子径のCV値については、既に説明したとおりである。
【0020】
また、本発明の異方性導電フィルムの製造方法においては、導電粒子を絶縁性樹脂層表面に保持させる工程において、光重合性の絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配列で保持させ、導電粒子を該絶縁性樹脂層に押し込む工程において、導電粒子を平板又はローラーで光重合性の絶縁性樹脂層に押し込むことが好ましい。また、導電粒子を絶縁性樹脂層表面に保持させる工程において、転写型に導電粒子を充填し、その導電粒子を光重合性の絶縁性樹脂層に転写することにより絶縁性樹脂層の表面に導電粒子を所定の配置で保持させることが好ましい。
【0021】
本発明は、また、上述の異方性導電フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品とが異方性導電接続されている接続構造体を提供する。
【0022】
本発明の接続構造体は、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムを、その導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側又は形成されていない側から配置する異方性導電フィルム配置工程、異方性導電フィルム側又は第1の電子部品側から、異方性導電フィルムに対し光照射を行うことにより導電粒子分散層を光重合させる光照射工程、及び光重合した導電粒子分散層上に第2の電子部品を配置し、熱圧着ツールで第2の電子部品を加熱加圧することにより、第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性導電接続する熱圧着工程を有する製造方法により製造できる。この配置工程においては、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムをその導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側から配置し、そして光照射工程において、異方性導電フィルム側から光照射を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を有する。この異方性導電フィルムにおいては、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面を、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜させ、若しくは起伏が形成されるようにする。即ち、導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層から露出している場合には、露出している導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に傾斜があり、導電粒子が光重合性の絶縁性樹脂層から露出することなく該絶縁性樹脂層内に埋まっている場合には、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層に起伏があるか、導電粒子が1点で絶縁性樹脂層に接することになる。
【0024】
換言すれば、本発明の異方性導電フィルムにおいては、導電粒子は光重合性の絶縁性樹脂に埋め込まれているため、導電粒子の近傍では埋め込みの程度により、導電粒子の外周に沿って樹脂が存在している場合(例えば、
図4、
図6参照)や、絶縁性樹脂全体の傾向として平坦であるが、導電粒子近傍では、絶縁性樹脂が導電粒子の埋め込みに引き連られて内部に入り込む場合(例えば、
図1B、
図2参照)が存在し得る。内部に入り込む場合とは、導電粒子の樹脂への埋め込みによって、断崖のような状態になることも含む(
図3)。両者が混在する場合も存在する。本発明における傾斜とは、絶縁性樹脂が導電粒子の埋め込みに引き連られて内部に入り込んで形成される斜面のことであり、また、起伏とは、そのような傾斜とそれに続いて導電粒子上に堆積した絶縁性樹脂層とのことである(堆積により傾斜が消えることもある)。このように、絶縁性樹脂に傾斜や起伏を形成することにより、導電粒子が絶縁性樹脂に一部もしくは全体が埋め込まれた状態になって保持されるので、接続時の樹脂の流動などの影響を最小限にでき、接続時の導電粒子の捕捉性が向上することになる。また、特許文献2や3に比べ、導電粒子近傍の絶縁性樹脂量が少なくとも端子と接続させるフィルム面の一部において低減されている(導電粒子の厚み方向における絶縁性樹脂量が少なくなる)ので、端子と導電粒子とが直接接触しやすくなる。即ち、接続時の押し込みに対して導電粒子の邪魔になる樹脂が存在しないこと若しくは低減され、最小限の樹脂量で構成されることになる。更に、絶縁性樹脂は導電粒子の外形に概ね沿った表面の欠落などはあるが、過度な隆起が発生しなくなることになる。また、この場合の樹脂とは、導電粒子を保持することが可能になるため、比較的高粘度となり易く、端子との接続面となるフィルム面の、特に導電粒子直上の樹脂量は少ないことが好ましくなる。もしくは、導電粒子の外形に沿って導電粒子を保持している比較的高粘度の樹脂が無いことも、同様の理由から好ましいものになる。このように、本発明はこれらの構成に則ることになる。なお、導電粒子の外形に沿うことは、押し込みにおける効果が発現し易くなることが期待できるとともに、外観を観察することによって異方性導電フィルムの製造において、良否判定を簡便にし易くなる効果も期待できる。また、端子と導電粒子が直接接触し易くなることは、導通特性の向上や押し込みの均一性にも効果が見込まれる。このように、比較的高粘度の絶縁性樹脂による導電粒子の保持と、導電粒子のフィルム面方向直上における上記樹脂の欠落や低減もしくは変形とが両立することにより、導電粒子の捕捉と押し込みの均一性、導通特性が良好になる条件が整うことになる。また、比較的高粘度の樹脂そのもの(絶縁性樹脂層の厚み)を薄くすることも可能になり、比較的低粘度の第2の樹脂層を積層するなど設計自由度を高くできることにもつながる。比較的高粘度の樹脂そのものを薄くすることとは、接続ツールの加熱加圧条件についてもマージンが取り易くなる。なお、この場合に導電粒子径にばらつきが小さいことが、より効果を発揮する上で望まれることになる。導電粒子径のばらつきが大きくなると、傾斜や起伏の程度が導電粒子毎に相違するためである。
【0025】
絶縁性樹脂層から露出している導電粒子の周囲の絶縁性樹脂層に傾斜があると、その傾斜部分では、異方性導電接続時に導電粒子が端子間で挟持されることや、扁平に潰れようとすることに対して絶縁性樹脂が妨げとなりにくい。また、傾斜によって導電粒子の周囲の樹脂量が低減している分、導電粒子を無用に流動させることに繋がる樹脂流動が低減する。よって、端子における導電粒子の捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0026】
また、絶縁性樹脂層内に埋まっている導電粒子の直上の絶縁性樹脂層に起伏があっても傾斜の場合と同様に、異方性接続時に端子からの押圧力が導電粒子にかかりやすくなる。これは、起伏により導電粒子の直上の樹脂量が低減して存在しているため、導電粒子を固定化させ、且つ起伏があることによって樹脂が平坦に堆積している場合(
図8参照)よりも接続時の樹脂流動が生じやすくなることが見込まれ、傾斜と同様な効果も期待できる。よって、この場合にも端子における導電粒子の捕捉性が向上し、導通信頼性が向上する。
【0027】
このような本発明の異方性導電フィルムによれば、導電粒子の捕捉性が向上し、端子上の導電粒子が流動し難いことから導電粒子の配置を精密に制御できる。したがって、例えば、端子幅6μm~50μm、端子間スペース6μm~50μmのファインピッチの電子部品の接続に使用することができる。また、導電粒子の大きさが3μm未満(例えば2.5~2.8μm)のときに有効接続端子幅(接続時に対向した一対の端子の幅のうち、平面視にて重なり合っている部分の幅)が3μm以上、最短端子間距離が3μm以上であればショートを起こすこと無く電子部品を接続することができる。
【0028】
また、導電粒子の配置を精密に制御できるので、ノーマルピッチの電子部品を接続する場合には、分散性(個々の導電粒子の独立性)や配置の規則性、粒子間距離などを種々の電子部品の端子のレイアウトに対応させることが可能となる。
【0029】
さらに、絶縁性樹脂層内に埋まっている導電粒子の直上の絶縁性樹脂層に起伏があると、異方性導電フィルムの外観観察により導電粒子の位置が明確に分かるので、製品検査が容易になり、また、異方性接続時に異方性導電フィルムのどちらのフィルム面を基板に貼り合わせるかという使用面の確認も容易になる。
【0030】
加えて、本発明の異方性導電フィルムによれば、導電粒子の配置の固定のために光重合性の絶縁性樹脂層を光重合させておくことが必ずしも必要ではないので異方性接続時に絶縁性樹脂層がタック性を持ちうる。このため、異方性導電フィルムと基板を仮圧着するときの作業性が向上し、仮圧着後に電子部品を圧着するときにも作業性が向上する。
【0031】
一方、本発明の異方性導電フィルムの製造方法によれば、絶縁性樹脂層に上述の傾斜若しくは起伏が形成されるように、絶縁性樹脂層に導電粒子を埋め込むときの該絶縁性樹脂層の粘度、押し込み速度、温度等を調整する。そのため、上述の効果を奏する本発明の異方性導電フィルムを容易に製造することができる。
【0032】
また、本願発明の異方性導電フィルムを構成する絶縁性樹脂層は、光重合性樹脂組成物から構成されている。このため、本発明の異方性導電フィルムを使用して電子部品同士を異方性導電接続させ接続構造体を製造する際に、一方の電子部品に異方性導電フィルムを配置させた後、その上に他方の電子部品を配置する前に、異方性導電フィルムの光重合性の絶縁性樹脂層に対し光照射を行うことで、異方性導電接続時にその絶縁性樹脂の最低溶融粘度の過度な低下を抑制して導電粒子の不要な流動を防止し、それにより接続構造体に良好な導通特性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】
図1Aは、実施例の異方性導電フィルム10Aの導電粒子の配置を示す平面図である。
【
図1B】
図1Bは、実施例の異方性導電フィルム10Aの断面図である。
【
図2】
図2は、実施例の異方性導電フィルム10Bの断面図である。
【
図3】
図3は、絶縁性樹脂層に形成される「傾斜」と「起伏」との中間ともいえる状態の異方性導電フィルム10Cの断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の異方性導電フィルム10Dの断面図である。
【
図5】
図5は、実施例の異方性導電フィルム10Eの断面図である。
【
図6】
図6は、実施例の異方性導電フィルム10Fの断面図である。
【
図7】
図7は、実施例の異方性導電フィルム10Gの断面図である。
【
図8】
図8は、比較例の異方性導電フィルム10Xの断面図である。
【
図9】
図9は、実施例の異方性導電フィルム10Hの断面図である。
【
図10】
図10は、実施例の異方性導電フィルム10Iの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の異方性導電フィルムの一例について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0035】
<異方性導電フィルムの全体構成>
図1Aは、本発明の一実施例の異方性導電フィルム10Aの粒子配置を説明する平面図であり、
図1BはそのX-X断面図である。
【0036】
この異方性導電フィルム10Aは、例えば長さ5m以上の長尺のフィルム形態とすることができ、巻き芯に巻いた巻装体とすることもできる。
【0037】
異方性導電フィルム10Aは導電粒子分散層3から構成されており、導電粒子分散層3では、光重合性の絶縁性樹脂層2の片面に導電粒子1が露出した状態で規則的に分散している。フィルムの平面視にて導電粒子1は互いに接触しておらず、フィルム厚方向にも導電粒子1が互いに重なることなく規則的に分散し、導電粒子1のフィルム厚方向の位置が揃った単層の導電粒子層を構成している。
【0038】
個々の導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2の表面2aには、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層2の接平面2pに対して傾斜2bが形成されている。なお後述するように、本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層の表面に起伏2cが形成されていてもよい(
図4、
図6)。
【0039】
本発明において、「傾斜」とは、導電粒子1の近傍で絶縁性樹脂層の表面の平坦性が損なわれ、前記接平面2pに対して樹脂層の一部が欠けて樹脂量が低減している状態を意味する。換言すれば、傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が接平面に対して欠けていることになる。一方、「起伏」とは、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面にうねりがあり、うねりのように高低差がある部分が存在することで樹脂が低減している状態を意味する。換言すれば、導電粒子直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、導電粒子直上の絶縁性樹脂層の表面が接平面にあるとしたときに比して少なくなる。これらは、導電粒子の直上に相当する部位と導電粒子間の平坦な表面部分(
図1B、4、6の2f)とを対比して認識することができる。なお、起伏の開始点が傾斜として存在する場合もある。
【0040】
<導電粒子の分散状態>
本発明における導電粒子の分散状態には、導電粒子1がランダムに分散している状態も規則的な配置に分散している状態も含まれる。この分散状態において、導電粒子が互いに非接触で配置されていることが好ましく、その個数割合は好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、更に好ましくは99.5%以上である。この個数割合に関し、分散状態における規則的な配置において、接触している2個以上の導電粒子(換言すれば、凝集した導電粒子)は、1個としてカウントする。後述するフィルム平面視における導電粒子の占有面積率と同様の測定手法を用いて、好ましくはN=200以上で求めることができる。どちらの場合においても、フィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性の点から好ましい。ここで、フィルム厚方向の導電粒子1の位置が揃っているとは、フィルム厚方向の単一の深さに揃っていることに限定されず、絶縁性樹脂層2の表裏の界面又はその近傍のそれぞれに導電粒子が存在している態様を含む。
【0041】
また、導電粒子1はフィルムの平面視にて規則的に配列していることが導電粒子の捕捉とショートの抑制とを両立させる点から好ましい。配列の態様は、端子およびバンプのレイアウトによるため、特に限定はない。例えば、フィルムの平面視にて
図1Aに示したように正方格子配列とすることができる。この他、導電粒子の規則的な配列の態様としては、長方格子、斜方格子、6方格子、3角格子等の格子配列をあげることができる。異なる形状の格子が、複数組み合わさったものでもよい。規則的な配列は、上述したような格子配列に限定されるものではなく、例えば、導電粒子が所定間隔で直線状に並んだ粒子列を所定の間隔で並列させてもよい。導電粒子1を互いに非接触とし、格子状等の規則的な配列にすることにより、異方性導電接続時に各導電粒子1に圧力を均等に加え、導通抵抗のばらつきを低減させることができる。規則的な配列は、例えばフィルムの長手方向に所定の粒子配置が繰り替えされているか否かを観察することで確認できる。
【0042】
さらに、フィルムの平面視にて規則的に配列し、かつフィルム厚方向の位置が揃っていることが捕捉安定性とショート抑制の両立のためにより好ましい。
【0043】
一方、接続する電子部品の端子間スペースが広くショートが発生しにくい場合には、導電粒子を規則的に配列させることなく導通に支障を来たさない程度に導電粒子があればランダムに分散させていてもよい。この場合も、上記同様に個々に独立していることが好ましい。異方性導電フィルム製造時の、検査や管理が容易になるからである。
【0044】
導電粒子を規則的に配列させる場合に、その配列の格子軸又は配列軸がある場合は、異方性導電フィルムの長手方向や長手方向と直行する方向に対して平行でもよく、異方性導電フィルムの長手方向と交叉してもよく、接続する端子幅、端子ピッチ、レイアウトなどに応じて定めることができる。例えば、ファインピッチ用の異方性導電性フィルムとする場合、
図1Aに示したように導電粒子1の格子軸Aを異方性導電フィルム10Aの長手方向に対して斜行させ、異方性導電フィルム10Aで接続する端子20の長手方向(フィルムの短手方向)と格子軸Aとのなす角度θを6°~84°、好ましくは11°~74°にすることが好ましい。
【0045】
導電粒子1の粒子間距離は、異方性導電フィルムで接続する端子の大きさや端子ピッチに応じて適宜定める。例えば、異方性導電フィルムをファインピッチのCOG(Chip On Glass)に対応させる場合、ショートの発生を防止する点から最近接粒子間距離を導電粒子径Dの0.5倍以上にすることが好ましく、0.7倍より大きくすることがより好ましい。一方、導電粒子1の捕捉性の点から、最近接粒子間距離を導電粒子径Dの4倍以下とすることが好ましく、3倍以下とすることがより好ましい。
【0046】
また、導電粒子の面積占有率は、好ましくは35%以下、より好ましくは0.3~30%である。この面積占有率は、
[平面視における導電粒子の個数密度]×[導電粒子1個の平面視面積の平均]×100
により算出される。
【0047】
ここで、導電粒子の個数密度の測定領域としては、1辺が100μm以上の矩形領域を任意に複数箇所(好ましくは5箇所以上、より好ましくは10箇所以上)設定し、測定領域の合計面積を2mm2以上とすることが好ましい。個々の領域の大きさや数は、個数密度の状態によって適宜調整すればよい。例えば、導電粒子径Dの30倍の長さを1辺とする矩形領域を、好ましくは10箇所以上、より好ましくは20箇所以上で測定領域の合計面積を2mm2以上としてもよい。ファインピッチ用途の比較的個数密度が大きい場合の一例として、異方性導電フィルム10Aから任意に選択した面積100μm×100μmの領域の200箇所(2mm2)について、金属顕微鏡などによる観測画像を用いて個数密度を測定し、それを平均することにより上述の式中の「平面視における導電粒子の個数密度」を得ることができる。面積100μm×100μmの領域は、バンプ間スペース50μm以下の接続対象物において、1個以上のバンプが存在する領域になる。
【0048】
なお、面積占有率が上述の範囲内であれば個数密度の値には特に制限はないが、実用上、個数密度は150~70000個/mm2が好ましく、特にファインピッチ用途の場合には好ましくは6000~42000個/mm2、より好ましくは10000~40000個/mm2、更により好ましくは15000~35000個/mm2である。尚、個数密度が150個/mm2未満の態様を除外するものではない。
【0049】
導電粒子の個数密度は、上述のように金属顕微鏡を用いて観察して求める他、画像解析ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事株式会社等)により観察画像を計測して求めてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0050】
また、導電粒子1個の平面視面積の平均は、フィルム面の金属顕微鏡やSEMなどの電子顕微鏡などによる観測画像の計測により求められる。画像解析ソフトを用いてもよい。観察方法や計測手法は、上記に限定されるものではない。
【0051】
面積占有率は、異方性導電フィルムを電子部品に圧着(好ましくは熱圧着)するために押圧治具に必要とされる推力の指標となる。従来、異方性導電フィルムをファインピッチに対応させるために、ショートを発生させない限りで導電粒子の粒子間距離を狭め、個数密度が高められてきたが、そのように個数密度を高めると、電子部品の端子個数が増え、電子部品1個当りの接続総面積が大きくなるのに伴い、異方性導電フィルムを電子部品に圧着(好ましくは熱圧着)するために押圧治具に必要とされる推力が大きくなり、従前の押圧治具では押圧が不十分になるという問題が起こることが懸念される。これに対し、面積占有率を上述のように好ましくは35%以下、より好ましくは0.3~30%の範囲とすることにより、異方性導電フィルムを電子部品に熱圧着するために押圧治具に必要とされる推力を低く抑えることが可能となる。
【0052】
<導電粒子>
導電粒子1は、公知の異方性導電フィルムに用いられている導電粒子の中から適宜選択して使用することができる。例えばニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、ハンダなどの合金粒子、金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。2種以上を併用することもできる。中でも、金属被覆樹脂粒子が、接続された後に樹脂粒子が反発することで端子との接触が維持され易くなり、導通性能が安定する点から好ましい。尚、導電粒子の表面には公知の技術によって、導通特性に支障を来たさない絶縁処理が施されていてもよい。
【0053】
導電粒子径Dは、配線高さのばらつきに対応できるようにし、また、導通抵抗の上昇を抑制し、且つショートの発生を抑制するために、好ましくは1μm以上30μm以下、より好ましくは2.5μm以上9μm以下である。接続対象物によっては、9μmより大きいものが適する場合もある。絶縁性樹脂層に分散させる前の導電粒子の粒子径は、一般的な粒度分布測定装置により測定することができ、また、平均粒子径も粒度分布測定装置を用いて求めることができる。画像型でもレーザー型であってもよい。画像型の測定装置としては、一例として湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を挙げることができる。導電粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子個数)は1000個以上が好ましい。異方性導電フィルムにおける導電粒子径Dは、SEMなどの電子顕微鏡観察から求めることができる。この場合、導電粒子径Dを測定するサンプル数(導電粒子個数)を200個以上とすることが望ましい。
【0054】
本発明の異方性導電フィルムを構成する導電粒子の粒子径のバラツキは、好ましくはCV値(標準偏差/平均)20%以下である。CV値を20%以下とすることにより、挟持される際に均等に押圧され易くなり、特に配列している場合には押圧力が局所的に集中することを防止でき、導通の安定性に寄与できる。また接続後に圧痕による接続状態の評価を精確に行うことができる。また、個々の導電粒子への光照射が均一化され、絶縁性樹脂層の光重合が均一化される。具体的には、端子サイズが大きいもの(FOGなど)にも、小さいもの(COGなど)にも圧痕による接続状態の確認を精確に行うことができる。従って、異方性接続後の検査が容易になり、接続工程の生産性を向上させることが期待できる。
【0055】
ここで、粒子径のバラツキは画像型粒度分析装置などにより算出することができる。異方性導電フィルムに配置されていない、異方性導電フィルムの原料粒子としての導電粒子径は、一例として、湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることができる。この場合、導電粒子個数は好ましくは1000個以上、より好ましくは3000個以上、特に好ましくは5000個以上を測定すれば正確に導電粒子単体のバラツキを把握することができる。導電粒子が異方性導電フィルムに配置されている場合は、上記真球度と同様に平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0056】
また、本発明の異方性導電フィルムを構成する導電粒子は、略真球であることが好ましい。導電粒子として略真球のものを使用することにより、例えば、特開2014-60150号公報に記載のように転写型を用いて導電粒子を配列させた異方導電性フィルムを製造するにあたり、転写型上で導電粒子が滑らかに転がるので、導電粒子を転写型上の所定の位置へ高精度に充填することができる。したがって、導電粒子を精確に配置することができる。
【0057】
ここで、略真球とは、次式で算出される真球度が70~100であることをいう。
【0058】
【0059】
上記式中、Soは導電粒子の平面画像における該導電粒子の外接円の面積であり、Siは導電粒子の平面画像における該導電粒子の内接円の面積である。
【0060】
この算出方法では、導電粒子の平面画像を異方導電性フィルムの面視野および断面で撮り、それぞれの平面画像において任意の導電粒子100個以上(好ましくは200個以上)の外接円の面積と内接円の面積を計測し、外接円の面積の平均値と内接円の面積の平均値を求め、上述のSo、Siとすることが好ましい。また、面視野及び断面のいずれにおいても、真球度が上記の範囲内であることが好ましい。面視野および断面の真球度の差は20以内であることが好ましく、より好ましくは10以内である。異方導電性フィルムの生産時の検査は主に面視野であり、異方性接続後の詳細な良否判定は面視野と断面の両方で行うため、真球度の差は小さい方が好ましい。この真球度は導電粒子単体であるなら、上述の湿式フロー式粒子径・形状分析装置FPIA-3000(マルバーン社)を用いて求めることもできる。導電粒子が異方性導電フィルムに配置されている場合は、真球度と同様に、異方性導電フィルムの平面画像又は断面画像により求めることができる。
【0061】
<光重合性の絶縁性樹脂層>
(光重合性の絶縁性樹脂層の粘度)
絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度は、特に制限はなく、異方性導電フィルムの適用対象や、異方性導電フィルムの製造方法等に応じて適宜定めることができる。例えば、上述の凹み2b、2cを形成できる限り、異方性導電フィルムの製造方法によっては1000Pa・s程度とすることもできる。一方、異方性導電フィルムの製造方法として、導電粒子を絶縁性樹脂層の表面に所定の配置で保持させ、その導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む方法を行うとき、絶縁性樹脂層がフィルム成形を可能とする点から樹脂の最低溶融粘度を1100Pa・s以上とすることが好ましい。
【0062】
また、後述の異方性導電フィルムの製造方法で説明するように、
図1Bに示すように絶縁性樹脂層2に押し込んだ導電粒子1の露出部分の周りに凹み2bを形成したり、
図6に示すように絶縁性樹脂層2に押し込んだ導電粒子1の直上に凹み2cを形成したりする点から、好ましくは1500Pa・s以上、より好ましくは2000Pa・s以上、さらに好ましくは3000~15000Pa・s、さらにより好ましくは3000~10000Pa・sである。この最低溶融粘度は、一例として回転式レオメータ(TA instrument社製)を用い、測定圧力5gで一定に保持し、直径8mmの測定プレートを使用し求めることができ、より具体的には、温度範囲30~200℃において、昇温速度10℃/分、測定周波数10Hz、前記測定プレートに対する荷重変動5gとすることにより求めることができる。
【0063】
絶縁性樹脂層2の最低溶融粘度を1500Pa・s以上の高粘度とすることにより、異方性導電フィルムの接続対象への圧着に導電粒子の不用な移動を抑制でき、特に、異方性導電接続時に端子間で挟持されるべき導電粒子が樹脂流動により流されてしまうことを防止できる。
【0064】
また、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより異方性導電フィルム10Aの導電粒子分散層3を形成する場合において、導電粒子1を押し込むときの絶縁性樹脂層2は、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように導電粒子1を絶縁性樹脂層2に押し込んだときに、絶縁性樹脂層2が塑性変形して導電粒子1の周囲の絶縁性樹脂層2に凹み2b(
図1B)が形成されるような高粘度な粘性体とするか、あるいは、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出することなく絶縁性樹脂層2に埋まるように導電粒子1を押し込んだときに、導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図6)が形成されるような高粘度な粘性体とする。そのため、絶縁性樹脂層2の60℃における粘度は、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。この測定は最低溶融粘度と同様の測定方法で行い、温度が60℃の値を抽出して求めることができる。なお、本発明において、60℃粘度が3000Pa・s未満の場合が除外されるものではない。光照射で接続する場合、低温実装が求められるため、導電粒子の保持が可能であれば、より低粘度にすることが求められるからである。
【0065】
絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むときの絶縁性樹脂層2の具体的な粘度は、形成する凹み2b、2cの形状や深さなどに応じて、下限は好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは4000Pa・s以上、さらに好ましくは4500Pa・s以上であり、上限は、好ましくは20000Pa・s以下、より好ましくは15000Pa・s以下、さらに好ましくは10000Pa・s以下である。また、このような粘度を好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃で得られるようにする。
【0066】
上述したように、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の周囲に凹み2b(
図1B)が形成されていることにより、異方性導電フィルムの物品への圧着時に生じる導電粒子1の偏平化に対して樹脂から受ける抵抗が、凹み2bが無い場合に比して低減する。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで導通性能が向上し、また捕捉性が向上する。
【0067】
また、絶縁性樹脂層2から露出することなく埋まっている導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2の表面に凹み2c(
図6)が形成されていることにより、凹み2cが無い場合に比して異方性導電フィルムの物品への圧着時の圧力が導電粒子1に集中し易くなる。このため、異方性導電接続時に端子で導電粒子が挟持され易くなることで捕捉性が向上し、導通性能が向上する。
【0068】
(光重合性の絶縁性樹脂層の層厚)
本発明の異方性導電フィルムでは、光重合性の絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子径Dとの比(La/D)が0.6~10が好ましい。ここで、導電粒子径Dは、その平均粒子径を意味する。絶縁性樹脂層2の層厚Laが大き過ぎると異方性導電接続時に導電粒子が位置ズレしやすくなり、端子における導電粒子の捕捉性が低下する。この傾向はLa/Dが10を超えると顕著である。そこでLa/Dは8以下がより好ましく、6以下が更により好ましい。反対に絶縁性樹脂層2の層厚Laが小さすぎてLa/Dが0.6未満となると、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持することが困難となる。特に、接続する端子が高密度COGの場合、絶縁性樹脂層2の層厚Laと導電粒子径Dとの比(La/D)は、好ましくは0.8~2である。
【0069】
(光重合性の絶縁性樹脂層の組成)
絶縁性樹脂層2は、光重合性樹脂組成物から形成する。例えば、光カチオン重合性樹脂組成物、光ラジカル重合性樹脂組成物あるいは光アニオン重合性樹脂組成物から形成することができる。これらの光重合性樹脂組成物には必要に応じて熱重合開始剤を含有させることができる。
【0070】
(光カチオン重合性樹脂組成物)
光カチオン重合性樹脂組成物は、成膜用ポリマーと、光カチオン重合性化合物と、光カチオン重合開始剤と、熱カチオン重合開始剤とを含有する。
【0071】
(成膜用ポリマー)
成膜用ポリマーとしては、異方性導電フィルムに適用されている公知の成膜用ポリマーを使用することができ、ビスフェノールS型フェノキシ樹脂、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、フィルム形成状態、接続信頼性等の観点からビスフェノールS型フェノキシ樹脂を好適に用いられる。フェノキシ樹脂は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンより合成されるポリヒドロキシポリエーテルである。市場で入手可能なフェノキシ樹脂の具体例としては、新日鐵住金化学(株)の商品名「FA290」などを挙げることができる。
【0072】
光カチオン重合性樹脂組成物における成膜用ポリマーの配合量は、適度な最低溶融粘度を実現するために、樹脂成分(成膜用ポリマー、光重合性化合物、光重合開始剤及び熱重合開始剤の合計)の5~70wt%とすることが好ましく、20~60wt%とすることがより好ましい。
【0073】
(光カチオン重合性化合物)
光カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物とオキセタン化合物とから選択される少なくとも一種である。
【0074】
エポキシ化合物としては、5官能以下のものを用いることが好ましい。5官能以下のエポキシ化合物としては、特に限定されず、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、脂環型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ノボラックフェノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物などが挙られ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
市場で入手可能なグリシジルエーテル型の単官能エポキシ化合物の具体例としては、四日市合成(株)の商品名「エポゴーセーEN」などを挙げることができる。また、市場で入手可能なビスフェノールA型の2官能エポキシ化合物の具体例としては、DIC(株)の商品名「840-S」などを挙げることができる。また、市場で入手可能なジシクロペンタジエン型の5官能エポキシ化合物の具体例としては、DIC(株)の商品名「HP-7200シリーズ」などを挙げることができる。
【0076】
オキセタン化合物としては、特に限定されず、ビフェニル型オキセタン化合物、キシリレン型オキセタン化合物、シルセスキオキサン型オキセタン化合物、エーテル型オキセタン化合物、フェノールノボラック型オキセタン化合物、シリケート型オキセタン化合物などが挙げられ、これらの中から1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。市場で入手可能なビフェニル型のオキセタン化合物の具体例としては、宇部興産(株)の商品名「OXBP」などを挙げることができる。
【0077】
光カチオン重合性樹脂組成物におけるカチオン重合性化合物の含有量は、適度な最低溶融粘度を実現するために、好ましくは樹脂成分の10~70wt%、より好ましくは20~50wt%である。
【0078】
(光カチオン重合開始剤)
光カチオン重合開始剤としては、公知のものを使用することができるが、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(TFPB)をアニオンとするオニウム塩を好ましく使用することができる。これにより、光硬化後の最低溶融粘度の過度な上昇を抑制することができる。これは、TFPBの置換基が大きく、分子量が大きいためであると考えられる。
【0079】
光カチオン重合開始剤のカチオン部分としては、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム等の芳香族オニウムを好ましく採用することができる。これらの中でも、芳香族スルホニウムであるトリアリールスルホニウムを採用することが好ましい。TFPBをアニオンとするオニウム塩の市場で入手可能な具体例としては、BASFジャパン(株)の商品名「IRGACURE 290」、和光純薬工業(株)の商品名「WPI-124」などを挙げることができる。
【0080】
光カチオン重合性樹脂組成物における光カチオン重合開始剤の含有量は、樹脂成分中の0.1~10wt%とすることが好ましく、1~5wt%とすることがより好ましい。
【0081】
(熱カチオン重合開始剤)
熱カチオン重合開始剤としては、特に限定されず、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族アンモニウム塩などが挙られ、これらの中でも、芳香族スルホニウム塩を用いることが好ましい。市場で入手可能な芳香族スルホニウム塩の具体例としては、三新化学工業(株)の商品名「SI-60」などを挙げることができる。
【0082】
熱カチオン重合開始剤の含有量は、樹脂成分の1~30wt%とすることが好ましく、5~20wt%とすることがより好ましい。
【0083】
(光ラジカル重合性樹脂組成物)
光ラジカル重合性樹脂組成物は、成膜用ポリマーと、光ラジカル重合性化合物と、光ラジカル重合開始剤と、熱ラジカル重合開始剤とを含有する。
【0084】
成膜用ポリマーとしては、光カチオン重合性樹脂組成物で説明したものを適宜選択して使用することができる。その含有量も既に説明したとおりである。
【0085】
光ラジカル重合性化合物としては、従来公知の光ラジカル重合性(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。光ラジカル重合性樹脂組成物における光ラジカル重合性化合物の含有量は、樹脂成分中の好ましくは10~60質量%、より好ましくは20~55質量%である。
【0086】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。熱ラジカル重合開始剤の使用量は、硬化率と製品ライフのバランスから、(メタ)アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部である。
【0087】
(その他の成分)
光カチオン重合性樹脂組成物や光ラジカル光重合性樹脂組成物等の光重合性樹脂組成物には、最低溶融粘度を調整するため、シリカなどの絶縁性フィラー(以下、フィラーとのみ記す)を含有させることが好ましい。フィラーの含有量は、適度な最低溶融粘度を実現するために、光重合性樹脂組成物の全量に対し、好ましくは3~60wt%、より好ましくは10~55wt%、さらに好ましくは20~50wt%である。また、フィラーの平均粒子径は、好ましくは1~500nm、より好ましくは10~300nm、さらに好ましくは20~100nmである。
【0088】
また、光重合性樹脂組成物は、異方性導電フィルムと無機材料との界面における接着性を向上させるために、シランカップリング剤をさらに含有することが好ましい。シランカップリング剤としては、エポキシ系、メタクリロキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系などが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を込み合わせて用いてもよい。
【0089】
更に、上述の絶縁フィラとは異なる充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などを含有させてもよい。
【0090】
(絶縁性樹脂層の厚さ方向における導電粒子の位置)
本発明の異方性導電フィルムでは、絶縁性樹脂層2の厚さ方向における導電粒子1の位置は前述のように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出していてもよく、露出することなく、絶縁性樹脂層2内に埋め込まれていても良いが、隣接する導電粒子間の中央部における接平面2pからの導電粒子の最深部の距離(以下、埋込量という)Lbと、導電粒子径Dとの比(Lb/D)(以下、埋込率という)が30%以上105%以下であることが好ましい。なお、導電粒子1は絶縁性樹脂層2を貫通していてもよく、その場合の埋込率(Lb/D)は100%となる。
【0091】
埋込率(Lb/D)を30%以上60%未満とすると、上述のようにより低温低圧実装が容易になり、60%以上とすることにより、導電粒子1を絶縁性樹脂層2によって所定の粒子分散状態あるいは所定の配列に維持し易くなり、また、105%以下とすることにより、異方性導電接続時に端子間の導電粒子を無用に流動させるように作用する絶縁性樹脂層の樹脂量を低減させることができる。
【0092】
なお、本発明において、埋込率(Lb/D)の数値は、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上が、当該埋込率(Lb/D)の数値になっていることをいう。したがって、埋込率が30%以上105%以下とは、異方性導電フィルムに含まれる全導電粒子数の80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは96%以上の埋込率が30%以上105%以下であることをいう。このように全導電粒子の埋込率(Lb/D)が揃っていることにより、押圧の加重が導電粒子に均一にかかるので、端子における導電粒子の捕捉状態が良好になり、導通の安定性が期待できる。より精度を上げるため、200個以上の導電粒子を計測して求めてもよい。
【0093】
また、埋込率(Lb/D)の計測は、面視野画像において焦点調整することにより、ある程度の個数について一括して求めることができる。もしくは埋込率(Lb/D)の計測にレーザー式判別変位センサ(キーエンス製など)を用いてもよい。
【0094】
(埋込率30%以上60%未満の態様)
埋込率(Lb/D)30%以上60%以下の導電粒子1のより具体的な埋込態様としては、まず、
図1Bに示した異方性導電フィルム10Aのように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように埋込率30%以上60%未満で埋め込まれた態様をあげることができる。この異方性導電フィルム10Aは、絶縁性樹脂層2の表面のうち該絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1と接している部分及びその近傍が、隣接する導電粒子間の中央部の絶縁性樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対して導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有している。
【0095】
このような傾斜2bもしくは後述する起伏2cは、異方性導電フィルム10Aを、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより製造する場合に、導電粒子1の押し込みを、40~80℃で3000~20000Pa・s、より好ましくは4500~15000Pa・sで行うことにより形成することができる。
【0096】
(埋込率60%以上100%未満の態様)
埋込率(Lb/D)60%以上105%以下の導電粒子1のより具体的な埋込態様としては、埋込率30%以上60%未満の態様と同様に、まず、
図1Bに示した異方性導電フィルム10Aのように、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出するように埋込率60%以上100%未満で埋め込まれた態様をあげることができる。この異方性導電フィルム10Aは、絶縁性樹脂層2の表面のうち該絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1と接している部分及びその近傍が、隣接する導電粒子間の中央部の絶縁性樹脂層の表面2aにおける接平面2pに対して導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有している。
【0097】
このような傾斜2bもしくは後述する起伏2cは、異方性導電フィルム10Aを、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を押し込むことにより製造する場合に、導電粒子1の押し込みを、40~80℃で3000~20000Pa・s、より好ましくは4500~15000Pa・sで行うことにより形成することができる。また、傾斜2bや起伏2cは絶縁性樹脂層をヒートプレスするなどにより、その一部が消失してしまう場合がある。傾斜2bがその痕跡を有しない場合、起伏2cと略同等の形状になる(つまり、傾斜が起伏に変化する)。起伏2cがその痕跡を有しない場合、導電粒子が1点で絶縁性樹脂層2に露出している場合がある。
【0098】
(埋込率100%の態様)
次に、本発明の異方性導電フィルムのうち、埋込率(Lb/D)100%の態様としては、
図2に示す異方性導電フィルム10Bのように、導電粒子1の周りに
図1Bに示した異方性導電フィルム10Aと同様の導電粒子の外形に概ね沿った稜線となる傾斜2bを有し、絶縁性樹脂層2から露出している導電粒子1の露出径Lcが導電粒子径Dよりも小さいもの、
図3に示す異方性導電フィルム10Cのように、導電粒子1の露出部分の周りの起伏2bが導電粒子1近傍で急激に現れ、導電粒子1の露出径Lcと導電粒子径Dとが略等しいもの、
図4に示す異方性導電フィルム10Dのように、絶縁性樹脂層2の表面に浅い起伏2cがあり、導電粒子1がその頂部1aの1点で絶縁性樹脂層2から露出しているものをあげることができる。
【0099】
これら異方性導電フィルム10B、10C、10Dは埋込率100%であるため、導電粒子1の頂部1aと絶縁性樹脂層2の表面2aとが面一に揃っている。導電粒子1の頂部1aと絶縁性樹脂層2の表面2aとが面一に揃っていると、
図1Bに示したように導電粒子1が絶縁性樹脂層2から突出している場合に比して、異方性導電接続時に個々の導電粒子の周辺にてフィルム厚み方向の樹脂量が不均一になりにくく、樹脂流動による導電粒子の移動を低減できるという効果がある。なお、埋込率が厳密に100%でなくても、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の頂部と絶縁性樹脂層2の表面とが面一となる程度に揃っているとこの効果を得ることができる。言い換えると、埋込率(Lb/D)が概略90~100%の場合には、絶縁性樹脂層2に埋め込まれた導電粒子1の頂部と絶縁性樹脂層2の表面とは面一であるといえ、樹脂流動による導電粒子の移動を低減させることができる。
【0100】
これら異方性導電フィルム10B、10C、10Dの中でも、10Dは導電粒子1の周りの樹脂量が不均一になりにくいので樹脂流動による導電粒子の移動を解消でき、また頂部1aの1点であっても絶縁性樹脂層2から導電粒子1が露出しているので、端子における導電粒子1の捕捉性もよく、導電粒子のわずかな移動も起こりにくいという効果が期待できる。したがって、この態様は、特にファインピッチやバンプ間スペースが狭い場合に有効である。
【0101】
なお、傾斜2b、起伏2cの形状や深さが異なる異方性導電フィルム10B(
図2)、10C(
図3)、10D(
図4)は、後述するように、導電粒子1の押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。なお、
図3の態様は、
図2(傾斜の態様)と
図4(起伏の態様)の中間状態であると言い換えることができる。本発明は、この
図3の態様も包含するものである。
【0102】
(埋込率100%超の態様)
本発明の異方性導電フィルムのうち、埋込率100%を超える場合、
図5に示す異方性導電フィルム10Eのように導電粒子1が露出し、その露出部分の周りの絶縁性樹脂層2に接平面2pに対する傾斜2bもしくは導電粒子1の真上の絶縁性樹脂層2の表面に接平面2pに対する起伏2cがあるものをあげることができる。
【0103】
なお、導電粒子1の露出部分の周りの絶縁性樹脂層2に傾斜2bを有する異方性導電フィルム10E(
図5)と導電粒子1の直上の絶縁性樹脂層2に起伏2cを有する異方性導電フィルム10F(
図6)は、それらを製造する際の導電粒子1の押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度等を変えることで製造することができる。
【0104】
なお、
図5に示す異方性導電フィルム10Eを異方性導電接続に使用すると、導電粒子1が端子から直接押圧されるので、端子における導電粒子の捕捉性が向上する。また、
図6に示す異方性導電フィルム10Fを異方性導電接続に使用すると、導電粒子1が端子を直接押圧せず、絶縁性樹脂層2を介して押圧することになるが、押圧方向に存在する樹脂量が
図8の状態(即ち、導電粒子1が埋込率100%を超えて埋め込まれ、導電粒子1が絶縁性樹脂層2から露出しておらず、かつ絶縁性樹脂層2の表面が平坦である状態)に比べて少ないため、導電粒子に押圧力がかかりやすくなり、且つ異方性導電接続時に端子間の導電粒子1が樹脂流動により無用に移動することが妨げられる。
【0105】
なお、
図7に示すように、埋込率(Lb/D)が30%以上60%未満の異方性導電フィルム10Gでは、絶縁性樹脂層2上を導電粒子1が転がりやすくなるため、異方性導電接続時の捕捉率を向上させる点からは、埋込率(Lb/D)を60%以上とすることが好ましい。
【0106】
また、埋込率が100%を超える態様(Lb/D)において、
図8に示す比較例の異方性導電フィルム10Xのように絶縁性樹脂層2の表面が平坦な場合は導電粒子1と端子との間に介在する樹脂量が過度に多くなる。また、導電粒子1が直接端子に接触して端子を押圧することなく、絶縁性樹脂を介して端子を押圧するので、これによっても導電粒子が樹脂流動によって流され易い。
【0107】
本発明において、絶縁性樹脂層2の表面の傾斜2b、起伏2cの存在は、異方性導電フィルムの断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより確認することができ、面視野観察においても確認できる。光学顕微鏡、金属顕微鏡でも傾斜2b、起伏2cの観察は可能である。また、傾斜2b、起伏2cの大きさは画像観察時の焦点調整などで確認することもできる。上述のようにヒートプレスにより傾斜もしくは起伏を減少させた後であっても、同様である。痕跡が残る場合があるからである。
【0108】
<異方性導電フィルムの変形態様>
(第2の絶縁性樹脂層)
本発明の異方性導電フィルムは、
図9に示す異方性導電フィルム10Hのように、導電粒子分散層3の、絶縁性樹脂層2の傾斜2bが形成されている面に、該絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4を積層してもよい。また
図10に示す異方性導電フィルム10Iのように、導電粒子分散層3の、絶縁性樹脂層2の傾斜2bが形成されていない面に、該絶縁性樹脂層2よりも最低溶融粘度が低い第2の絶縁性樹脂層4を積層してもよい。第2の絶縁性樹脂層4の積層により、異方性導電フィルムを用いて電子部品を異方性導電接続するときに、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填し、接着性を向上させることができる。尚、第2の絶縁性樹脂層4を積層する場合、第2の絶縁性樹脂層4が傾斜2bの形成面上にあるか否かに関わらず第2の絶縁性樹脂層4がツールで加圧するICチップ等の電子部品側にある(言い換えると、絶縁性樹脂層2がステージに載置される基板等の電子部品側にある)ことが好ましい。このようにすることで、導電粒子の不本意な移動を避けることができ、捕捉性を向上させることができる。傾斜2bが起伏2cであっても同様である。
【0109】
絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度は、差があるほど電子部品の電極やバンプによって形成される空間が第2の絶縁性樹脂層4で充填されやすくなり、電子部品同士の接着性を向上させる効果が期待できる。また、この差があるほど導電粒子分散層3中に存在する絶縁性樹脂層2の移動量が相対的に小さくなるため、端子における導電粒子の捕捉性が向上しやすくなる。実用上は、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4との最低溶融粘度比は、好ましくは2以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。一方、この比が大きすぎると長尺の異方性導電フィルムを巻装体にした場合に、樹脂のはみだしやブロッキングが生じる虞があるので、実用上は15以下が好ましい。第2の絶縁性樹脂層4の好ましい最低溶融粘度は、より具体的には、上述の比を満たし、かつ3000Pa・s以下、より好ましくは2000Pa・s以下であり、特に100~2000Pa・sである。
【0110】
なお、第2の絶縁性樹脂層4は、絶縁性樹脂層と同様の樹脂組成物において、粘度を調整することにより形成することができる。
【0111】
また、異方性導電フィルム10H、10Iにおいて、第2の絶縁性樹脂層4の層厚は、電子部品や接続条件に影響される部分があるために、特に限定はされないが、好ましくは4~20μmである。もしくは、導電粒子径に対して、好ましくは1~8倍である。
【0112】
また、絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4を合わせた異方性導電フィルム10H、10I全体の最低溶融粘度は、低すぎると樹脂のはみだしが懸念されるため100Pa・sより大きいことが好ましく、200~4000Pa・sがより好ましい。
【0113】
(第3の絶縁性樹脂層)
第2の絶縁性樹脂層4と絶縁性樹脂層2を挟んで反対側に第3の樹脂層が設けられていてもよい。例えば、第3の絶縁性樹脂層をタック層として機能させることができる。第2の絶縁性樹脂層と同様に、電子部品の電極やバンプによって形成される空間を充填させるために設けてもよい。
【0114】
第3の絶縁性樹脂層の樹脂組成、粘度及び厚みは第2の絶縁性樹脂層と同様でもよく、異なっていても良い。絶縁性樹脂層2と第2の絶縁性樹脂層4と第3の絶縁性樹脂層を合わせた異方性導電フィルムの最低溶融粘度は特に制限はないが、低すぎると樹脂のはみだしが懸念されるため100Pa・sより大きいことが好ましく、200~4000Pa・sがより好ましい。
【0115】
<異方性導電フィルムの製造方法>
本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子が絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を形成する工程を有する製造方法により製造できる。
【0116】
この製造方法においては、導電粒子分散層を形成する工程が、導電粒子を光重合性樹脂組成物からなる絶縁性樹脂層表面に分散した状態で保持させる工程と、絶縁性樹脂層表面に保持させた導電粒子を該絶縁性樹脂層に押し込む工程を有する。
【0117】
この導電粒子を絶縁性樹脂層表面に押し込む工程において、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有するように、導電粒子を押し込むときの絶縁性樹脂層の粘度、押込速度又は温度等を調整する。ここで、導電粒子を絶縁性樹脂層に押し込む工程において、前記傾斜では、導電粒子の周りの絶縁性樹脂層の表面が、前記接平面にして欠けるようにし、前記起伏では、導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の樹脂量が、前記導電粒子の直上の絶縁性樹脂層の表面が該接平面にあるとしたときに比して少なくなるようにする。あるいは、前記接平面からの導電粒子の最深部の距離Lbと、導電粒子径Dとの比(Lb/D)が30%以上105%以下となるようにする。なお、導電粒子や光重合性樹脂組成物については、本発明の異方性導電フィルムに関し説明したものと同様のものを使用することができる。
【0118】
本発明の異方性導電フィルムの製造方法の具体例としては、例えば、絶縁性樹脂層2の表面に導電粒子1を所定の配列で保持させ、その導電粒子1を平板又はローラーで絶縁性樹脂層に押し込むことにより製造することができる。なお、埋込率100%超の異方性導電フィルムを製造する場合に、導電粒子配列に対応した凸部を有する押し板で押し込んでもよい。
【0119】
ここで、絶縁性樹脂層2における導電粒子1の埋込量は、導電粒子1の押し込み時の押圧力、温度等により調整することができ、また、傾斜2b、起伏2cの形状及び深さは、押し込み時の絶縁性樹脂層2の粘度、押込速度、温度等により調整することができる。
【0120】
また、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる手法としては、公知の手法を利用することができる。例えば、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を直接散布する、あるいは二軸延伸させることのできるフィルムに導電粒子1を単層で付着させ、そのフィルムを二軸延伸し、その延伸させたフィルムに絶縁性樹脂層2を押圧して導電粒子を絶縁性樹脂層2に転写することにより、絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる。また、転写型を使用して絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させることもできる。
【0121】
転写型を使用して絶縁性樹脂層2に導電粒子1を保持させる場合、転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したもの、印刷法を応用したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。なお、本発明は上記の手法で限定されるものではない。
【0122】
また、導電粒子を押し込んだ絶縁性樹脂層の、導電粒子を押し込んだ側の表面、又はその反対面に、絶縁性樹脂層よりも低粘度の第2の絶縁性樹脂層を積層することができる。
【0123】
異方性導電フィルムを用いで電子部品の接続を経済的に行うには、異方性導電フィルムはある程度の長尺であることが好ましい。そこで異方性導電フィルムは長さを、好ましくは5m以上、より好ましくは10m以上、さらに好ましくは25m以上に製造する。一方、異方性導電フィルムを過度に長くすると、異方性導電フィルムを用いて電子部品の製造を行う場合に使用する従前の接続装置を使用することができなくなり、取り扱い性も劣る。そこで、異方性導電フィルムは、その長さを好ましくは5000m以下、より好ましくは1000m以下、さらに好ましくは500m以下に製造する。異方性導電フィルムのこのような長尺体は、巻芯に巻かれた巻装体とすることが取り扱い性に優れる点から好ましい。
【0124】
<異方性導電フィルムの使用方法>
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、プラスチック基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続して接続構造体を製造する際に好ましく使用することができる。本発明の異方性導電フィルムを用いてICチップやウェーハーをスタックして多層化してもよい。なお、本発明の異方性導電フィルムで接続する電子部品は、上述の電子部品に限定されるものではない。近年、多様化している種々の電子部品に使用することができる。本発明は、本発明の異方性導電フィルムを用いて電子部品同士を異方性導電接続する接続構造体の製造方法や、それにより得られた接続構造体、即ち、本発明の異方性導電フィルムにより電子部品同士が異方性導電接続されている接続構造体も包含する。
【0125】
(接続構造体及びその製造方法)
本発明の接続構造体は、本発明の異方性導電フィルムにより第1の電子部品と第2の電子部品とが異方性導電接続されているものである。第1の電子部品としては、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)パネル、有機EL(OLED)などのフラットパネルディスプレイ(FPD)用途、タッチパネル用途などの透明基板、プリント配線板(PWB)などが挙げられる。プリント配線板の材質は、特に限定されず、例えば、FR-4基材などのガラスエポキシでもよく、熱可塑性樹脂などのプラスチック、セラミックなども用いることができる。また、透明基板は、透明性の高いものであれば特に限定はなく、ガラス基板、プラスチック基板などが挙げられる。一方、第2の電子部品は、第1の端子列に対向する第2の端子列を備える。第2の電子部品は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。第2の電子部品としては、例えば、IC(Integrated Circuit)、フレキシブル基板(FPC:Flexible Printed Circuits)、テープキャリアパッケージ(TCP)基板、ICをFPCに実装したCOF(Chip On Film)などが挙げられる。なお、本発明の接続構造体は、以下の配置工程、光照射工程及び熱圧着工程を有する製造方法により製造することができる。
【0126】
(配置工程)
まず、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムを、その導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側又は形成されていない側から配置する。導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側から配置すると、傾斜又は起伏の部位が光照射されることで、比較的樹脂量が少ない部分の反応を促進させ導電粒子の押し込みと保持を両立する効果が期待できる。逆に、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムを、導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されていない側から配置すると、第1の電子部品側に存在する比較的樹脂量が多い部分に光が照射されることで、導電粒子の挟持状態が強固になり易くなることが期待できる。なお、光照射工程を考慮すると、導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側から配置することが好ましい。これは、第1の電子部品と導電粒子との距離が近くなることで、補足性が向上することが期待できるからである。
【0127】
(光照射工程)
次に、異方性導電フィルム側又は第1の電子部品側から、異方性導電フィルムに対し光照射を行うこと(所謂、先照射)により導電粒子分散層を光重合させる。光重合させることにより、低温での接続が行い易くなり、接続する電子部品へ過度に熱がかかることを避けることが可能となる。また、光照射を異方性導電フィルム側から行うと、第2の電子部品の搭載前に異方性導電フィルム全体へ均一に光照射による反応を開始させることができ、第1の電子部品に設けられている遮光部(配線に関係する部分)からの影響を除外するということが可能となる。逆に、光照射を第1の電子部品側から行うと、第2の電子部品の搭載について考慮する必要がなくなる。なお、第2の電子部品の搭載に関して接続装置の発展に伴い、接続工程時での負担が相対的に低下してきていることを考慮すると、光照射を異方性導電フィルム側から行うことが好ましい。
【0128】
光照射による導電粒子分散層の光重合の程度は、反応率という指標で評価することができ、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、更により好ましくは90%以上である。上限は100%以下である。反応率は、光重合前後の樹脂組成物を市販のHPLC(高速液体クロマトグラフ装置、スチレン換算)を用いて測定することができる。また、本工程の光照射後の導電粒子分散層の最低溶融粘度(即ち、接続してプレスアウトする前の最低要溶融粘度となる。光重合開始後の最低溶融粘度とも言い換えられる)は、異方性導電接続時の良好な導電粒子捕捉性と押し込みとを実現するために、下限については好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは1200Pa・s以上であり、上限については好ましくは8000Pa・s以下、より好ましくは5000Pa・s以下である。この最低溶融粘度の到達温度は、好ましくは60~100℃、より好ましくは65~85℃である。
【0129】
照射光としては、紫外線(UV:ultraviolet)、可視光線(visible light)、赤外線(IR:infrared)などの波長帯域から光重合性の異方性導電フィルムの重合特性に応じて選択することができる。これらの中でも、エネルギーが高い紫外線(通常、波長10nm~400nm)が好ましい。
【0130】
なお、配置工程において、第1の電子部品に対し、異方性導電フィルムをその導電粒子分散層の傾斜又は起伏が形成されている側から配置し、そして光照射工程において、異方性導電フィルム側から光照射を行うことが好ましい。
【0131】
(熱圧着工程)
光照射された異方性導電フィルム上に第2の電子部品を配置し、公知の熱圧着ツールで第2の電子部品を加熱加圧することにより、第1の電子部品と第2の電子部品とを異方性導電接続させ、接続構造体を得ることができる。尚、熱圧着ツールは低温化のため温度をかけないで圧着ツールとして使用してもよい。異方性導電接続条件は、使用する電子部品や異方性導電フィルム等に応じて適宜設定することができる。なお、熱圧着ツールと接続すべき電子部品との間にポリテトラフルオロエチレンシート、ポリイミドシート、硝子クロス、シリコンラバー等の緩衝材を配置して熱圧着を行ってもよい。なお、熱圧着の際、第1の電子部品側から光照射を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の異方性導電フィルムは、導電粒子が光重合性樹脂組成物からなる絶縁性樹脂層に分散している導電粒子分散層を有し、導電粒子近傍の絶縁性樹脂層の表面が、隣接する導電粒子間の中央部における絶縁性樹脂層の接平面に対して傾斜もしくは起伏を有する。このため、電子部品同士を異方性導電接続させて接続構造体を製造する際に、一方の電子部品に異方性導電フィルムを配置させた後、その上に他方の電子部品を配置する前に、異方性導電フィルムの光重合性の絶縁性樹脂層に対し光照射を行うことで、異方性導電接続時にその絶縁性樹脂の最低溶融粘度の過度な低下を抑制して導電粒子の不要な流動を防止でき、それにより接続構造体に良好な導通特性を実現できる。よって、本発明の異方性導電フィルムは、各種基板への半導体装置等の電子部品の実装に有用である。
【符号の説明】
【0133】
1 導電粒子
1a 導電粒子の頂部
2 絶縁性樹脂層
2a 絶縁性樹脂層の表面
2b 凹み(傾斜)
2c 凹み(起伏)
2f 平坦な表面部分
2p 接平面
3 導電粒子分散層
4 第2の絶縁性樹脂層
10A、10B、10C、10D、10E、10F、10G、10H、10I 実施例の異方性導電フィルム
20 端子
A 導電粒子の配列の格子軸
D 導電粒子径
La 絶縁性樹脂層の層厚
Lb 埋込量(隣接する導電粒子間の中央部における接平面からの導電粒子の最深部の距離)
Lc 露出径
θ 端子の長手方向と導電粒子の配列の格子軸とのなす角度