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特許7062410半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20220425BHJP
   A23L 27/60 20160101ALI20220425BHJP
   A23D 7/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A23L5/00 L
A23L27/60 A
A23D7/00 504
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017219964
(22)【出願日】2017-11-15
(65)【公開番号】P2019088238
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000103840
【氏名又は名称】オリエンタル酵母工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】河原田 啓希
(72)【発明者】
【氏名】古川 周平
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-194336(JP,A)
【文献】特開2005-151937(JP,A)
【文献】国際公開第2012/001770(WO,A1)
【文献】特開2011-120571(JP,A)
【文献】特開2004-222561(JP,A)
【文献】特開昭48-092566(JP,A)
【文献】特開2015-006130(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062111(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/00
A23L 27/60
A23D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物油を30~60質量%;
タンパク質素材として、乳タンパク質及び酵素処理卵黄を1~7質量%;
乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%;及び
増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~質量%;を含有する水中油型エマルジョンであって、
前記エマルジョンの平均粒径が、1~20μmの範囲であることを特徴とする半固体状水中油型乳化食品。
【請求項2】
粘度が、30~150Pa・sである請求項1に記載の半固体状水中油型乳化食品。
【請求項3】
前記増粘多糖類が、キサンタンガム及びアルギン酸エステルの少なくともいずれかを含み、その質量比が0:5~2:1である請求項1又は2に記載の半固体状水中油型乳化食品。
【請求項4】
マヨネーズ様調味料である請求項1~3のいずれかに記載の半固体状水中油型乳化食品。
【請求項5】
植物油を30~60質量%;
タンパク質素材として、乳清タンパク質及び酵素処理卵黄を1~7質量%;
乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%;及び
増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~3質量%;を含有する原料を乳化処理し、エマルジョンの平均粒径を1~20μmの範囲に調整する工程を含むことを特徴とする半固体状水中油型乳化食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性及び冷凍耐性に優れる半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズやマヨソースとも称される半固体状乳化ドレッシングなどの半固体状水中油型乳化食品は、サラダや和え物、サンドイッチの具材、焼そばやたこ焼き、お好み焼きなど幅広い食品に用いられているが、近年、その用途が拡大され、調理パンや冷凍惣菜などの冷凍食品でも利用されている。しかし、半固体状水中油型乳化食品は、加熱調理されたり、冷凍処理されると、水中油型乳化の乳化状態が破壊される解乳化が起こり、水相と油層が分離してしまう。そうすると、半固体状水中油型乳化食品を使用した製品は外観に劣るだけでなく、食味や風味も劣るものとなり、製品の品質や価値を著しく低下するという問題があった。
【0003】
このため、半固体状水中油型乳化食品には、加熱処理したり、冷凍して解凍した後にも安定した乳化状態を維持すること、即ち、耐熱性や冷凍耐性を備えることが望まれており、これらを目的とした様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、熱凝固性たん白質として乾燥卵白を配合することで、マヨネーズ等の乳化食品に冷凍耐性を付与する技術(例えば、特許文献1参照)、卵白、ラクトアルブミンあるいはその分画物、ゼラチンのうち1種以上の蛋白質と、アラビアガムおよび/またはオクテニルコハク酸処理した澱粉加水分解物を配合することで、マヨネーズ等の水中油型乳化組成物に耐熱性と冷凍耐性を付与する技術(例えば、特許文献2参照)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるポリソルベート60を配合することで、マヨネーズ等の水中油型乳化物に冷凍耐性を付与する技術(例えば、特許文献3参照)、水相に、非溶解状態で分散している平均粒子径15~200μmである加熱溶解性タマリンドシードガム、加熱溶解性ローカストビーンガム及び加熱溶解性カラギーナンから選ばれるガム質粒子を含有することで、マヨネーズ等の酸性水中油型乳化食品に冷凍耐性を付与する技術(例えば、特許文献4参照)、HLBが3以下であり、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、及びソルビタン脂肪酸エステルから選ばれる乳化剤と、HLBが10以上であり、ポリグリセリン脂肪酸エステルである乳化剤とを特定比で用いることにより、高油分水中油型乳化油脂組成物に冷凍から加熱における広い温度域での乳化安定性を付与する技術(例えば、特許文献5参照)などが提案されている。
しかし、耐熱性及び冷凍耐性について更なる向上が求められているのが現状である。
【0005】
したがって、加熱処理や長期間冷凍保存しても解乳化が生じることがなく、しかも保形性や食感に優れる半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法の速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-141861号公報
【文献】特開2001-327247号公報
【文献】特開2006-158204号公報
【文献】特開2012-10622号公報
【文献】特開2016-195580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような要望に応え、現状を打破し、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、加熱処理や長期間冷凍保存しても解乳化が生じることがなく、しかも保形性や食感に優れる半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、特定量の植物油と、特定量の特定のタンパク質素材と、特定量の特定の乳化剤と、特定量の特定の増粘多糖類とを含有させることにより、半固体状水中油型乳化食品の耐熱性及び冷凍耐性を向上させることができることを知見した。
【0009】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 植物油を30~60質量%;
タンパク質素材として、乳タンパク及び/又は卵黄を1~7質量%;
乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%;及び
増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~5質量%;を含有する水中油型エマルジョンであることを特徴とする半固体状水中油型乳化食品である。
<2> 前記エマルジョンの平均粒径が、1~20μmの範囲である前記<1>に記載の半固体状水中油型乳化食品である。
<3> 粘度が、30~150Pa・sである前記<1>又は<2>に記載の半固体状水中油型乳化食品である。
<4> 前記増粘多糖類が、キサンタンガム及びアルギン酸エステルの少なくともいずれかを含み、その質量比が0:5~2:1である前記<1>~<3>のいずれかに記載の半固体状水中油型乳化食品である。
<5> 前記タンパク質素材が、乳清タンパク質及び酵素処理卵黄である前記<1>~<4>のいずれかに記載の半固体状水中油型乳化食品である。
<6> マヨネーズ様調味料である前記<1>~<5>のいずれかに記載の半固体状水中油型乳化食品である。
<7> 植物油を30~60質量%;
タンパク質素材として、乳タンパク及び/又は卵黄を1~7質量%;
乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%;及び
増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~5質量%;を含有する原料を乳化処理し、エマルジョンの平均粒径を1~20μmの範囲に調整する工程を含むことを特徴とする半固体状水中油型乳化食品の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、加熱処理や長期間冷凍保存しても解乳化が生じることがなく、しかも保形性や食感に優れる半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(半固体状水中油型乳化食品及びその製造方法)
本発明の半固体状水中油型乳化食品は、植物油と、タンパク質素材と、乳化剤と、増粘多糖類とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む水中油型エマルジョンである。
【0012】
<植物油>
前記植物油としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、大豆油、菜種油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、綿実油、コーン油、ひまわり油、米油、ゴマ油、サフラワー油、紅花油、グレープシード油、オリーブ油、落花生油、クルミ油、カカオ脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、不飽和脂肪酸が多く解乳化を起こしにくい点で、大豆油、ひまわり油、菜種油が好ましく、大豆油がより好ましい。
前記植物油は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0013】
前記植物油の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、30~60質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、35~55質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、有利である。
【0014】
<タンパク質素材>
前記タンパク質素材としては、乳タンパク及び/又は卵黄を含む限り、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0015】
前記乳タンパクとしては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、乳清タンパク質、カゼインなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、乳清タンパク質を含むことが好ましい。
前記乳タンパクは、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0016】
前記卵黄としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、生卵黄;生卵黄に殺菌処理、冷凍処理、濾過処理、乾燥処理、酵素処理、脱糖処理、脱コレステロール処理、食塩又は糖類等の混合処理などのうちの1種類以上の処理を施したものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、酵素処理卵黄を含むことが好ましい。
前記乾燥処理の具体例としては、スプレードライ、フリーズドライなどによる乾燥処理が挙げられる。
前記酵素処理の具体例としては、ホスホリパーゼ、プロテアーゼなどによる酵素処理が挙げられる。
前記脱糖処理の具体例としては、酵母、グルコースオキシダーゼ等による脱糖処理が挙げられる。
前記卵黄は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0017】
前記タンパク質素材は、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、乳清タンパク質及び酵素処理卵黄が好ましい。
【0018】
前記乳タンパク及び/又は卵黄の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、1~7質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、3~6質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、有利である。
【0019】
前記タンパク質素材は、本発明の効果を損なわない限り、乳タンパク及び/又は卵黄以外のタンパク質素材(以下、「その他のタンパク質素材」と称する。)を含んでいてもよい。
前記その他のタンパク質素材としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、全卵、卵白、大豆タンパク質、ゼラチンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他のタンパク質素材は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記その他のタンパク質素材の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0020】
<乳化剤>
前記乳化剤としては、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含む限り、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0021】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、グリセリンがエーテル結合したポリグリセリンと、脂肪酸とのエステルである。
前記エーテル結合するグリセリンの分子の数としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、平均的に、2~10分子が挙げられる。
前記脂肪酸としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、炭素数が16~18の飽和脂肪酸などが挙げられる。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの具体例としては、テトラグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンジパルミテート、ヘキサグリセリンモノオレエート、ヘキサグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノパルミテート、デカグリセリンモノステアレート、デカグリセリンジオレエート、デカグリセリントリステアレート等が挙げられる。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルは、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0022】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、0.1~5質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0.5~3質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、有利である。
【0023】
前記乳化剤は、本発明の効果を損なわない限り、ポリグリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤(以下、「その他の乳化剤」と称する。)を含んでいてもよい。
前記その他の乳化剤としては、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の乳化剤は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記その他の乳化剤の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0024】
<増粘多糖類>
前記増粘多糖類としては、タマリンドガム(「タマリンドシードガム」と称することもある。)、キサンタンガム及びアルギン酸エステル(「アルギン酸プロピレングリコールエステル」と称することもある。)からなる群から選択される2種類以上を含む限り、特に制限はなく、適宜選択することができるが、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、キサンタンガム及びアルギン酸エステルを含むことが好ましく、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルの3種類を含むことがより好ましい。
前記タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルは、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0025】
前記タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上の半固体状水中油型乳化食品における合計含有量としては、0.5~5質量%であれば、特に制限はなく、適宜選択することができるが、1~3質量%が好ましい。前記好ましい範囲内であると、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、有利である。
【0026】
前記増粘多糖類が、キサンタンガム及びアルギン酸エステルの少なくともいずれかを含む場合のこれらの質量比(キサンタンガム:アルギン酸エステル)としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、0:5~2:1が、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、有利である。
【0027】
前記増粘多糖類は、本発明の効果を損なわない限り、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステル以外の増粘多糖類(以下、「その他の増粘多糖類」と称する。)を含んでいてもよい。
前記その他の増粘多糖類としては、アラビアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、グアーガム、ジェランガム、カードラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の増粘多糖類は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記その他の増粘多糖類の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0028】
<その他の成分>
前記半固体状水中油型乳化食品におけるその他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、例えば、従来の半固体状水中油型乳化食品に用いられている成分や食品に用いることができる成分を適宜選択することができ、水相を構成する原料としては、例えば、水;食酢;食塩、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等の調味料;砂糖、ぶどう糖、果糖、ぶどう糖果糖液糖等の糖類;馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉類;果汁類;香辛料;着香料などが挙げられ、油相を構成する原料としては、例えば、親油性のある着香料、香辛料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、公知の方法により調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記その他の成分の半固体状水中油型乳化食品における含有量としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0029】
<平均粒径>
前記エマルジョンの平均粒径としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、1~20μmが好ましく、5~15μmがより好ましい。
本発明において、エマルジョンの平均粒径とは、半固体状水中油滴型乳化食品中の乳化粒子の粒度分布を、レーザー回折式粒度分布計MT-3300EX(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した時に得られるメディアン径、即ち、半固体状水中油滴型乳化食品中の乳化粒子をある粒子直径を境に2つに分けたときに該粒子直径より大きい側の粒子と小さい側の粒子とが等量になる粒子直径を意味する。
【0030】
<粘度>
前記半固体状水中油型乳化食品の粘度としては、特に制限はなく、適宜選択することができるが、食感が良好であり、耐熱性及び冷凍耐性がより優れる点で、30~150Pa・sが好ましく、冷凍耐性及び加熱時の保形性が更に優れる点で、50~100Pa・sがより好ましい。
本発明において、半固体状水中油型乳化食品の粘度とは、20℃における粘度をいい、例えば、TVB-10(東機産業株式会社製)により測定することができる。
【0031】
<態様>
前記半固体状水中油型乳化食品の態様としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、マヨネーズ様調味料、ドレッシング類などが挙げられる。
【0032】
本発明の半固体状水中油型乳化食品は、耐熱性及び冷凍耐性に優れ、加熱調理や長期間冷凍保存しても解乳化が生じることがなく、しかも保形性や食感に優れる。
【0033】
本発明の半固体状水中油型乳化食品を製造する方法としては、特に制限はなく、適宜選択することができ、例えば、本発明の半固体状水中油型乳化食品の製造方法により、好適に製造することができる。
【0034】
(半固体状水中油型乳化食品の製造方法)
本発明の半固体状水中油型乳化食品の製造方法は、原料を乳化処理し、エマルジョンの平均粒径を調整する工程(以下、「乳化及び粒径調整工程」と称する。)を含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0035】
<乳化及び粒径調整工程>
前記乳化及び粒径調整工程は、原料を乳化する乳化処理と、エマルジョンの平均粒径を1~20μmの範囲に調整する粒径調整処理とを含む。
【0036】
前記原料は、植物油を30~60質量%と、タンパク質素材として、乳タンパク及び/又は卵黄を1~7質量%と、乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%と、増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~5質量%とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記植物油、タンパク質素材、乳化剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、増粘多糖類及びその他の成分は、上記した本発明の半固体状水中油型乳化食品の項目に記載の各成分と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0037】
前記乳化処理の方法としては、原料を乳化できる限り、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、水相原料を水に溶解又は分散させ、これに油相を添加しながら撹拌し、乳化する方法などが挙げられる。
前記撹拌の方法としては、特に制限はなく、公知の装置を適宜選択することができ、例えば、ホモミキサー、コロイドミルなどが挙げられる。
【0038】
前記粒径調整処理の方法としては、エマルジョンの平均粒径を1~20μmの範囲に調整することができる限り、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、撹拌装置の種類を変えたり、撹拌条件を調整したり、原料成分の添加順序を調整したりするなどにより、調整することができる。
前記粒径調整処理は、前記乳化処理と共に行ってもよいし、前記乳化処理の後に行ってもよい。
【0039】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、目的に応じて適宜選択することができる。
【0040】
本発明の半固体状水中油型乳化食品の製造方法によれば、耐熱性及び冷凍耐性に優れる半固体状水中油型乳化食品を効率よく製造することができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例、比較例及び試験例を示して本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例、比較例及び試験例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(比較例1~13、実施例1~12:半固体状水中油型乳化食品の製造)
表1-1~2-3に記載のタンパク質素材、増粘多糖類、糖類、食酢及び調味料を水に溶解又は分散し、これに植物油を加え、全量1,000gの混合物を得た。ついで、当該混合物をmagic PLANT(IKAジャパン株式会社)により撹拌(100~150rpm)し、半固体状水中油型乳化食品であるマヨネーズ様調味料を得た。
なお、半固体状水中油型乳化食品が乳化剤を含む場合は、加温して溶解してから植物油に混ぜ込んだ。
【0043】
<エマルジョンの平均粒径の測定>
上記で得られた各半固体状水中油型乳化食品のエマルジョンの平均粒径は、半固体状水中油滴型乳化食品を水で5倍量に希釈し、レーザー回折式粒度分布計MT-3300EX(マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定した。
【0044】
<半固体状水中油型乳化食品の粘度の測定>
上記で得られた各半固体状水中油型乳化食品のエマルジョンの粘度は、半固体状水中油型乳化食品を100g計量し、TVB-10(東機産業株式会社製)にて測定した。
【0045】
(評価)
<冷凍耐性:油の分離度>
上記で得られた各半固体状水中油型乳化食品45gを以下のようにして凍結・解凍し、凍結・解凍後の油の分離度を下記式(i)で算出した。
(1)室温から10℃の保温庫で、10℃で1時間
(2)-10℃の冷凍庫に移して2日間
(3)-30℃の冷凍庫に移して2日間
(4)室温ないし37℃の保温庫で解凍(1時間)
(5)遠心分離
-式(i)-
油の分離度(%)=分離した油の重量(g)/45g×100
【0046】
以下の基準により、油の分離度から冷凍耐性を評価した。結果を表1-1~2-3に示した。なお、油の分離度が5%未満であれば、-20℃で保管しても1年間の冷凍耐性を有すると判断できる。
〔評価基準〕
A : 油の分離度が、1%未満。
B : 油の分離度が、1%以上、5%未満。
C : 油の分離度が、5%以上、10%未満。
D : 油の分離度が、10%以上。
【0047】
<耐熱性>
上記で得られた各半固体状水中油型乳化食品10gをホイロ済みロールパン生地(生地質量60g)の上に載せ、オーブン内で、180℃で8分間焼成後、以下の基準により、半固体状水中油型乳化食品の乳化状態及び保形性を評価した。なお、評価は10人のパネルにより行ない、最も多い評価結果を表1-1~2-3に示した。
〔評価基準〕
-乳化状態-
A : 油の分離なし。
B : ほとんど油の分離なし。
C : 若干油の分離が認められる。
D : 油の分離が認められるが、許容範囲内である。
E : 完全に油が分離している。
-保形性-
A : 焼成前とほとんど変化なし。
B : 焼成前と若干変化が認められる。
C : 焼成前と変化が認められるが、許容範囲内である。
D : 焼成前とかなり変化が認められる。
E : 焼成前の形が残っていない。
【0048】
<総合評価>
上記冷凍耐性の評価(油の分離度)及び耐熱性(乳化状態及び保形性)の評価結果から、以下の基準に基づき、総合評価を行い、結果を表1-1~2-3に示した。なお、総合評価がA~C評価である場合には、冷凍耐性及び耐熱性を有する半固体状水中油型乳化食品ということができるが、総合評価がA~B評価であることが好ましい。
〔評価基準〕
A : 全てA評価である。
B : A及びB評価のみである。
C : A、B及びC評価のみである。
D : B、C及びD評価のみである(ただし、下記E評価に該当する場合を除く)。
E : 油の分離度がD評価、もしくはE評価が少なくとも1つある。
【0049】
下記表1-1~2-3に、比較例1~13及び実施例1~12の組成、エマルジョンの平均粒径、粘度及び評価結果を示す。なお、実施例1~12の半固体状水中油型乳化食品は、凍結・解凍後若しくは焼成後であっても、優れた食感を有していた。
【0050】
【表1-1】
【0051】
【表1-2】
【0052】
【表1-3】
【0053】
【表2-1】
【0054】
【表2-2】
【0055】
【表2-3】
【0056】
表1-1~2-3に示したように、植物油を30~60質量%;タンパク質素材として、乳タンパク及び/又は卵黄を1~7質量%;乳化剤として、ポリグリセリン脂肪酸エステルを0.1~5質量%;及び増粘多糖類として、タマリンドガム、キサンタンガム及びアルギン酸エステルからなる群から選択される2種類以上を0.5~5質量%;を含有する水中油型エマルジョンという構成を満たすことで、加熱処理や長期間冷凍保存しても解乳化が生じることがなく、しかも保形性や食感に優れる半固体状水中油型乳化食品が得られることが確認された。