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  • 特許-p62-ZZ化学抑制剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】p62-ZZ化学抑制剤
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/58 20060101AFI20220425BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
C07C217/58 CSP
A61K31/137
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P19/08
A61P25/28
A61P3/10
A61P43/00 105
A61K45/00
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2017564373
(86)(22)【出願日】2016-06-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-16
(86)【国際出願番号】 US2016036241
(87)【国際公開番号】W WO2016200827
(87)【国際公開日】2016-12-15
【審査請求日】2019-06-04
(31)【優先権主張番号】62/174,465
(32)【優先日】2015-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501111751
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ピッツバーグ-オブ・ザ・コモンウェルス・システム・オブ・ハイヤー・エデュケイション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF PITTSBURGH-OF THE COMMONWEALTH SYSTEM OF HIGHER EDUCATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100175477
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】シャングン シェ
【審査官】池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/090290(WO,A1)
【文献】特開2004-217600(JP,A)
【文献】特開2004-315511(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068388(WO,A1)
【文献】特表2012-527435(JP,A)
【文献】米国特許第03152182(US,A)
【文献】国際公開第2013/022919(WO,A1)
【文献】特表2017-518961(JP,A)
【文献】RN 1647792-56-0 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2015年02月15日,検索日:18 MAY 2020
【文献】Buemi,Maria Rosa et al.,Indole derivatives as dual-effective agents for the treatment of neurodegenerative diseases: Synthesis, biological evaluation, and molecular modeling studies,Bioorganic & medicinal chemistry,2013年06月02日,vol.21 (15),pp.4575-4580
【文献】RN 1298046-56-6 REGISTRY,DATABASE REGISTRY [ONLINE] Retrieved from STN,2011年05月20日,検索日:18 MAY 2020
【文献】Elizarov, Arkadij M. et al.,Self-Assembly of Dendrimers by Slippage,Organic Letters,2002年,vol.4 (21),pp.3565-3568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iを有し、
【化1】
・・・ 式I
Arは、アリーレンであり、
は、
【化2】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイルであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキルであり、
Yは、シクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化3】


の構造を有し、
ここで、
Zは、-O-であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、
aは2であり、bは0である、
化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
Arはベンゼン環であり、第1のR基はR基に対してベンゼン環のメタ位にあり、第2のR基はR基に対してベンゼン環のパラ位にある、請求項1の化合物。
【請求項3】
は、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CHまたは-NHである、請求項1または2の化合物。
【請求項4】
cは1であり、Rは、4-フルオロまたは4-メチルである、請求項1から3のいずれか1つの化合物。
【請求項5】
cは2であり、Rは、2,4-ジフルオロである、請求項1から3のいずれか1つの化合物。
【請求項6】
Yは、
【化4】
または
【化5】
である、請求項1から5のいずれか1つの化合物。
【請求項7】
Arはベンゼントリルである、請求項1から6のいずれか1つの化合物。
【請求項8】
各R基は同じ構造を有する、請求項1から7のいずれか1つの化合物。
【請求項9】
Arはベンゼントリルであり、Rは、-CH-X-(CH-R11であり、
ここで、Xは、NHまたはOであり、mは0~6であり、R11は、置換基を有してもよいシクロアルキルである、請求項1の化合物。
【請求項10】
【化6】
の構造を有し、
ここで、各R、R、およびRは同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CH、または-NHから選択され、dは0~3であり、eは0~5であり、fは0~5である、請求項1の化合物。
【請求項11】
【化7】
の構造を有し、
各R、R、およびRは同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CH、または-NHから選択され、dは0~3であり、eは0~5であり、fは0~5である、請求項1の化合物。
【請求項12】
Yが
【化8】
または
【化9】
である、請求項10または11の化合物。
【請求項13】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
から選択される、請求項1の化合物。
【請求項14】
cは0である、請求項1の化合物。
【請求項15】
cは1である、請求項1の化合物。
【請求項16】
cは2である、請求項1の化合物。
【請求項17】
Cyはヘテロアリール環である、請求項1の化合物。
【請求項18】
治療上有効な量の少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物と、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤とを含む、対象においてp62-媒介疾患を治療するための医薬組成物であって、
p62-ZZインヒビターは、化合物または薬学的に許容されるその塩であって、式Iを有し、
【化18】
・・・ 式I
Arは、アリーレンであり、
は、
【化19】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイルであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキルであり、
Yは、シクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化20】


の構造を有し、
ここで、
Zは、-O-であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、
aは2であり、bは0である、医薬組成物。
【請求項19】
Arはベンゼン環であり、第1のR基はR基に対してベンゼン環のメタ位にあり、第2のR基はR基に対してベンゼン環のパラ位にある、請求項18の医薬組成物。
【請求項20】
は、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CHまたは-NHである、請求項18または19の医薬組成物。
【請求項21】
cは1であり、Rは、4-フルオロまたは4-メチルである、請求項18から20のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項22】
cは2であり、Rは、2,4-ジフルオロである、請求項18から20のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項23】
Yは、
【化21】
または
【化22】
である、請求項18から22のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項24】
Aはベンゼントリルである、請求項18から23のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項25】
各R基は同じ構造を有する、請求項18から24のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項26】
Arはベンゼントリルであり、Rは、-CH-X-(CH-R11であり、
ここで、Xは、NHまたはOであり、mは0~6であり、R11は、置換基を有してもよいシクロアルキルである、請求項18の医薬組成物。
【請求項27】
【化23】
の構造を有し、
ここで、各R、R、およびRは同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CH、または-NHから選択され、dは0~3であり、eは0~5であり、fは0~5である、請求項18の医薬組成物。
【請求項28】
【化24】
の構造を有し、
各R、R、およびRは同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CH、または-NHから選択され、dは0~3であり、eは0~5であり、fは0~5である、請求項18の医薬組成物。
【請求項29】
Yが
【化25】
または
【化26】
である、請求項27または28の医薬組成物。
【請求項30】
p62-媒介疾患は、多発性骨髄腫である、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項31】
破骨細胞形成を阻害し、および/または、破骨細胞の活性化を低減させることをさらに含む、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項32】
p62-媒介疾患は、薬剤耐性の多発性骨髄腫である、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項33】
前記化合物を少なくとも1つの抗癌剤と同時投与することをさらに含む、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項34】
p62-媒介疾患は、癌である、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項35】
p62-媒介疾患は、神経変性疾患である、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項36】
p62-媒介疾患は、糖尿病疾患である、請求項18から29のいずれか1つの医薬組成物。
【請求項37】
ストローマ細胞を、少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物と接触させることを含む、ストローマ細胞におけるp62活性を調節する方法(ヒトに対して行うものを除く)であって、
前記p62-ZZインヒビターは、式Iを有する、化合物または薬学的に許容されるその塩であって、
【化27】
・・・ 式I
Arは、アリーレンであり、
は、
【化28】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイルであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキルであり、
Yは、シクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化29】


の構造を有し、
ここで、
Zは、-O-であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、
aは2であり、bは0である、方法。
【請求項38】
多発性骨髄腫細胞を、少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物と接触させることを含む、多発性骨髄腫の細胞増殖を阻害する方法(ヒトに対して行うものを除く)であって、
前記p62-ZZインヒビターは、式Iを有する、化合物または薬学的に許容されるその塩であって、
【化30】
・・・ 式I
Arは、アリーレンであり、
は、
【化31】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイルであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキルであり、
Yは、シクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、ヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化32】


の構造を有し、
ここで、
Zは、-O-であり、
は、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、
aは2であり、bは0である、方法。
【請求項39】
少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤と、請求項1から17のいずれか1つの化合物を含む、医薬組成物。
【請求項40】
少なくとも1つの抗癌剤をさらに含む、請求項39の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年6月11日に出願された米国仮出願62/174,465の利益を主張し、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
セクエストソーム1(SQSTM1/p62)は、N末端PB1ドメイン、ZZ-型ジンクフィンガードメイン、TRAF6結合ドメイン(TBS)、LC3相互作用領域(LIR)、KEAP1-相互作用領域(KIR)、およびC末端ユビキチン結合ドメイン(UBA)を含む、タンパク質-相互作用ドメインに富む。p62は、主に、選択的なオートファジーによる、タンパク質凝集物、細胞形質小体、および機能不全のオルガネラの分解についての重要なアダプタとして作用し、一方、それは、多くの細胞のシグナル経路および機能における密接で複雑な関係についての関心物を得るために続く。概して、p62は、腫瘍形成において、細胞オートファジーおよびアポトーシスの引き金を引く、タンパク質ユビキチン化反応における重要な役割を果たすことが示され、細胞恒常性を調節するのを助ける、転写因子NF-B、p38MAPKおよびmTOR経路の活性化に特に関連があるとされる。
【0003】
研究は、p62が選択的なオートファジーに関係することを明らかにした。オートファジーは、厳密に調節されて保持された、全ての細胞で生じる異化プロセスであり、したがって、機能の中でも、細胞恒常性、発達、および免疫応答について重要で密接な関係を有する。例えば、ニューロンにおける微小管結合タウタンパク質は、p62により、プロテアソームにランスファーされる。興味深いことに、マウスにおけるp62遺伝子の崩壊は、表現型が似ているアルツハイマー病をもたらす。同様に、凝集された突然変異体のハンチンチンタンパク質の蓄積は、ハンチングトン病の病理学的な根拠であり、p62を含むことが発見され、そのUBAドメインの欠落は、突然変異体ハンチンチンによる細胞死を増加させる。また、p62は、パーキンソン病および筋萎縮性側索硬化症において並びに乳がんの腫瘍に示される細胞質内集蔟体でみられた。さらに、マウスp62の標的とされた欠落は、インシュリンおよびレプチン抵抗性、2型糖尿病および肥満を導くことがわかっている。現れたサポートがいくつかの変化する疾病におけるp62の密接な関係を支持するため、標的のセクエストソーム1(SQSTM1/p62)が薬物の設計および発見のために非常に重要である。
【0004】
p62が、NF-kB、p38MAPK、およびmTOR経路を含む細胞シグナルおよびオートファジーにおける重要な役割を果たすことが知られている。特に、p62-欠損マウスによる研究は、p62の1つの機能が破骨細胞形成および骨リモデリングを制御することを示した。通常の破骨細胞の機能は、p62によるNF-kBの経路のこの調節に依拠する。ZZドメインは、RIP1タンパク質と結合するため、このメカニズムと関係があるとされており、RIP1タンパク質は、NF-kBおよびp38MAPKシグナルを活性化できる、TNFレポーターと相互に作用する「デス」ドメインを含む。これらおよびこれまでの発見に鑑み、p62は、無数の疾病、具体的には、多発性骨髄腫(MM)および関連する癌、並びに神経障害および糖尿病疾患のような他の疾病のための魅力的な標的薬物である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の疾病のなかでも、MMは不治の血液学的な悪性病変であり、最大80%の患者における、プラズマ細胞の調節不全の増殖および漸進性の骨破壊により特徴づけられる。サリドマイドおよびボルテゾミブを含み、新規でより可能性のある治療の方式であるにも関わらず、MMは、いまだ、2番目に多い血液学的悪性疾患である。Leukemia & Lymphoma Society (Facts 2009-2010)により報告されているように、MMの患者数と新たに診断された症例は、ともに年々著しく増加している。したがって、腫瘍の増殖を効果的に阻害し、従来の薬物耐性を克服する新規な治療が早急に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示されるのは、式Iを有する化合物、または薬学的に許容可能なその塩であって、
【化1】
・・・ 式I
Arは、アリーレンまたはヘテロアリーレンであり、
は、
【化2】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイル、アルケンジイル、カルボニルまたはその組み合わせであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキル、または-O-であり、
Yは、置換基を有してもよいシクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化3】

の構造を有し、
ここで、
Zは、-NR-であり、Rは、Hまたはアルキル、-O-、-S-、または-CH-であり、
は、(-CH-)であり、mは0~5であり、または2~6の炭素原子を有するアルケンジイルであり、
Cyは、3~8員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、
aは2~5であり、bは0~3である。
【0007】
また、本明細書に開示されるのは、対象においてp62-媒介疾患を治療するための方法であって、治療上有効な量の、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物を、それを必要とする対象に投与することを含む方法である。
【0008】
さらに、本明細書に開示されるのは、ストローマ細胞においてp62活性を調節する方法であって、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物を、ストローマ細胞に接触させることを含む方法である。
【0009】
追加的に、本明細書に開示されるのは、多発性骨髄腫の細胞増殖を阻害する方法であって、本明細書に開示される少なくとも1つのp62-ZZインヒビター化合物を多発性骨髄腫細胞に接触させることを含む方法である。
【0010】
上述のものは、以下の詳細な記載から明らかであり、添付の図面に対する参照により進める。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、種々のシグナル経路を示す概略図である。
図2図2は、p62-zzドメインおよびPKCζボルテゾミブの阻害を介する、多発性骨髄腫細胞増殖についての、スクリーニングされた化合物を確認するための、インビトロでの生物学的アッセイを示す概略図である。
図3図3は、RPMI-8226ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療における、化合物XIELP1-106の抗腫瘍活性を示すグラフである。
図4図4は、皮下にRPMI-8226の担腫瘍マウスの生存曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
概要
本明細書に記載されるのは、例えば、ストローマ細胞および多発性骨髄腫細胞に影響を及ぼす、新規なp62-ZZインヒビターである。新規なp62-ZZインヒビターは、正常なストローマ細胞に対して毒性がなく、多発性骨髄腫の細胞増殖に対してマイクロモル(~2μM)の阻害活性を示す。ある実施形態では、化合物は、他のp62ドメインと関連するZZドメインについて選択的である阻害活性を示す化合物を意味する、選択的なp62-ZZインヒビターである。
【0013】
セクエストソーム1(p62)は、MMを有する患者の骨髄の微小環境における、NF-B、p38MAPK、およびPI3Kの活性化をもたらす、シグナル複合体の形成に重要な役割を果たす。骨髄のストローマ細胞において、MM細胞により活性化された複数の各シグナル経路(例えば、NF-Bまたはp38MAPK)のインヒビターで対象を治療することに対し、p62の機能をブロックすることは、p62により媒介された複数の経路の活性化を阻害し、骨髄の微小環境でのより広い効果を有する。
【0014】
用語
以下の用語および方法の説明が、本開示の実施にあたり、当業者を導くために、本化合物、組成物、および方法をより十分に記載するために提供される。また、本開示で使用される用語は、実施形態および実施例を具体的に記載する目的とするのみであり、限定を意図していないことは理解されるべきである。
【0015】
本明細書で使用されるように、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、別途の明確な記載がない限り、複数形を含む。また、本明細書で使用されるように、用語「含む(comprises)」は、「含む(includes)」を意味する。
【0016】
化合物を「投与」または「投与すること」は、本明細書に記載される、化合物、化合物の前駆薬、または医薬組成物を提供することを意味することが理解されるべきである。化合物または組成物は、対象(例えば、静脈内)に対して別のひとにより投与されることとしてもよく、対象により自分で投与することとしてもよい(例えば、錠剤)。
【0017】
「アルカンジイル」は、脂肪族、炭化水素由来の一般式-C2n-の二価基を指す。より低級のアルカンジイルは、1(メチレンラジカルともいう)から10の炭素原子、特に、1から5の炭素原子を有する。
【0018】
「アルケンジイル」は、同じ炭素原子からの2つの水素原子の除去によりアルカンから形成された二価基を指し、その遊離原子価は二重結合の一部である。より低級のアルケンジイルは、2から10の炭素原子、特に、1から5の炭素原子を有する。
【0019】
用語「アルケニル」は、2から24の炭素原子の炭化水素基と少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む構造式を指す。「より低級のアルケニル」基は、1から10の炭素原子を有する。
【0020】
用語「アルキル」は、1~24の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシル等を指す。「より低級のアルキル」基は、1から10の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基である。好ましいアルキル基は1から4の炭素原子を有する。アルキル基は、「置換アルキル」であることとしてもよく、1つ以上の水素原子がハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、アミノ、ヒドロキシル、アリール、またはカルボキシルのような置換基で置換されている。
【0021】
用語「アルキルアリール」は、アルキル基がアリール基の水素原子に置換されている基を指す。例は、-Ar-Rであり、Arはアリーレン基であり、Rはアルキル基である。
【0022】
用語「アルコキシ」は、連結点で酸素原子を含む、1~20の炭素原子、好ましくは1~8の炭素原子、より好ましくは1~4の炭素原子を含む、直鎖、分岐、または環状の炭化水素配置およびこれらの組み合わせを指す。「アルコキシ基」の例は、式-ORで表され、ここで、Rはアルキル基であり、任意に、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または上記のようなヘテロシクロアルキル基で置換されていてもよい。適切なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシシクロプロポキシ、シクロヘキシルオキシ等を含む。
【0023】
用語「アミン」または「アミノ」は、式-NRR’を指し、ここで、RおよびR’は、独立して、水素またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基であり得る。例えば、「アルキルアミノ」または「アルキル化アミノ」は-NRR’を指し、ここで、少なくとも1つのRまたはR’はアルキルである。
【0024】
用語「アミノアルキル」は、上記のように定義されるアルキル基を指し、ここで、少なくとも1つの水素原子は、アミノ基(例えば、-CH-NH)で置換される。
【0025】
「アミノカルボニル」は、単体または組み合わせで、アミノ基置換カルボニル(カルバモイル)ラジカルを意味し、ここで、アミノラジカルは、例えば、アルキル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルカノイル、アルコキシカルボニル、アラルルコキシカルボニル(aralkoxycarbonyl)等で任意に一置換または二置換されていることとしてもよい。
【0026】
用語「アミド(amide)」または「アミド(amido)」は、式-C(O)NRR’により表され、RおよびR’は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、または上記のようなヘテロシクロアルキル基であることとしてもよい。適切なアミド基はアセトアミドである。
【0027】
「動物」は、多細胞の脊椎動物の生物、例えば、哺乳類および鳥類を含むカテゴリを指す。用語「哺乳類」は、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む。同様に、用語「対象」は、鳥類と、霊長目の動物、コンパニオンアニマル(例えば、イヌおよびネコ)、家畜(豚、羊、牛など)、および飼いならした動物、例えば、ネコ科の動物、のような非ヒト哺乳類とを含む非ヒト並びにヒト対象を含む。用語「対象」は、生物の生存サイクルにおけるステージに関わらず適用する。したがって、用語「対象」は、生物に応じて(つまり、生物が哺乳類または鳥類、例えば、飼いならされた、または野生の鳥であるかどうか)、子宮内でまたは胚内で生物に対して適用する。
【0028】
「類似体」は、例えば、相同体(アルキル鎖の長さまたはより多くの同位体の1つの含有における相違のような、化学的構造または質量における増加により相違する)、分子フラグメント、1以上の官能基により相違する構造、またはイオン化における変化が、親化合物とは化学的構造が異なる分子である。類似体は、親化合物から合成される必要はない。構造上の類似体は、Remington (The Science and Practice of Pharmacology, 19th Edition (1995), chapter 28)に記載されるもののような技術により、量的な構造活性の関係(QSAR)を用いることがしばしば発見されている。誘導体は、基本構造から誘導された分子である。
【0029】
用語「アラルキル」は、アリール基をもってアルキル基の水素原子と置換されている基を指す。アラルキル基の例は、ベンジル基である。
【0030】
用語「アリール」は、芳香族基由来のあらゆる基を指し、ベンゼン環、または1以上の任意に置換されたベンゼン環に融合された、任意に置換されたベンゼン環系を含むが、これに限定されない。「ヘテロアリール基」は、アリール基の環内に組み込まれた少なくとも1つのヘテロ原子を有するアリール基として定義される。ヘテロ原子の例は、窒素、酸素、硫黄、リンを含むがこれらに限定されない。アリール基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化合物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシを含むがこれに限定されない1つ以上の基で置換されてもよく、またはアリール基は置換されないこととしてもよい。アリール基の例は、フェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、1-アントラセニル等を含むが、これらに限定されない。
【0031】
用語「アリーレン」は、二価もしくはより高い価のベンゼン環基、または、もう1つの任意に置換されたベンゼン環と融合された二価もしくはより高い価のベンゼン環系を指す。アリーレン基は、アルキル、アルキニル、アルケニル、アリール、ハロゲン化合物、ニトロ、アミノ、エステル、ケトン、アルデヒド、ヒドロキシ、カルボン酸、もしくはアルコキシを含むがこれに限定されない1つ以上の基で置換されてもよく、またはアリーレン基は置換されないこととしてもよい。アリーレン基の例は、フェニレン(例えば、ベンゼン-1,4-ジイル)、ナフタレン-1,8-ジイル、ベンゼントリル、ベンゼンテトライル等を含むが、これらに限定されない。
【0032】
「カルボニル」は、式-C(O)-のラジカルを指す。カルボニル含有基は、アシル基、アミド、カルボキシ基、エステル、尿素、カーバメート、カーボネート、およびケトンを含む炭素-酸素二重結合(C=O)、並びに、-CORまたは-RCHOに基づく置換基のようなアルデヒドを含む、あらゆる置換基であって、Rは脂肪族、ヘテロ脂肪族、アルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシル、または、第二級、第三級、もしくは第四級アミンであるアルデヒドである。
【0033】
カルボニルアミノ基は、-N(R)-C(O)-Rであることとしてもよい(ここで、各Rは独立して、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基,またはHのような置換基である。)。
【0034】
「カルボキシル」は、-COOHラジカルを指す。カルボキシル基は、カルボン酸を形成することとしてもよい。「置換されたカルボキシル」は、-COORであって、Rは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、シクロアルキル、ハロゲン化アルキル、またはヘテロシクロアルキル基である。例えば、置換されたカルボキシル基は、カルボン酸エステルまたはその塩(例えば、カルボン酸塩)であることとしてもよい。
【0035】
用語「シクロアルキル」は、少なくとも3つの炭素原子で構成される非芳香性炭素系環を指す。シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含むがこれらに限定されない。用語「ヘテロシクロアルキル基」は、上記のようなシクロアルキル基であり、環の少なくとも1つの炭素原子が、これらに限定されないが、窒素、酸素、硫黄、またはリンのようなヘテロ原子で置換される。
【0036】
「誘導体」:化学では、誘導体は、例えば、1つの原子が別の原子または原子のグループと置換される場合に、別の化合物から生じることを想像できる化合物もしくは類似の化合物由来の化合物である。後者の定義は有機化学において一般的である。生物化学では、少なくとも理論上は前駆化合物から形成され得る化合物を指す。
【0037】
「薬剤耐性」または「多薬剤耐性」は、癌を治療するために歴史的に投与された少なくとも1つの治療薬による治療に対する耐性がある癌を指す。これらの再発癌は、手術、一次化学療法、放射線療法、または免疫療法の後に生じることが多い。ある実施形態では、癌は、化学療法耐性癌である。
【0038】
用語「ハロゲン化アルキル」または「ハロアルキル基」は、上記で定義したように、ハロゲン(F、Cl、Br、I)で置換されたこれらの基に存在する1つ以上の水素原子を有するアルキル基を指す。
【0039】
用語「ヒドロキシル」は、式-OHにより置換される。
【0040】
用語「ヒドロキシアルキル」は、ヒドロキシル基により置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキル基を指す。用語「アルコキシアルキル基」は、上述したアルコキシ基により置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキル基として定義される。
【0041】
「阻害すること」は、疾病または病気の完全な発達を阻害することを指す。また、「阻害すること」は、制御に関連して、あらゆる量的なまたは質的な生物学的な活性または結合における低減を指す。
【0042】
用語「新生物」は、異常な細胞増殖を指し、それは、良性及び悪性腫瘍、並びに他の増殖性疾患を含む。
【0043】
「任意」または「任意に」は、続いて記載されるイベントまたは状況が生じる必要ななく、明細書は、これらのイベントまたは状況が生じ、これらのイベントまたは状況が生じる例、それが生じない例を含むことを意味する。
【0044】
用語「薬学的に許容される塩またはエステル」は、例えば、無機および有機酸の塩、例えば、塩酸、臭水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸等を含むがこれらに限定されない、慣用手段により調製された塩またはエステルを指す。ここに開示される化合物の「薬学的に許容される塩」は、また、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛のようなカチオンから、またはアンモニア、エチレンジアミン、N-メチル-グルタミン、リジン、アルギニン、またはオルニチン、コリン、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、および水酸化テトラメチルアンモニウムのような塩基から形成されるものを含む。これらの塩は、標準的な手順、例えば、遊離酸と適切な有機または無機塩基との反応によって調製することができる。本明細書に挙げられるあらゆる化学的化合物は、薬学的に許容されるその塩として代替的に投与されることとしてもよい。「薬学的に許容される塩」は、また、遊離の酸、塩基、および両性イオンの形態も含む。適切な薬学的に許容される塩の記載は、Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, Selection and Use, Wiley VCH (2002)でみることができる。本明細書に記載される化合物がカルボキシ基のような酸性官能基を含む場合、適切な薬学的に許容されるカルボキシ基についてのカチオン対は当業者によく知られており、アルカリ、アルカリ土類、アンモニウム、第4級アンモニウムカチオンを含む。このような塩は、当業者により知られている。「薬理学的に許容される塩」の追加の実施例は、Berge et al., J. Pharm. Sci. 66:1 (1977)を参照されたい。
【0045】
「薬学的に許容されるエステル」は、ヒドロキシまたはカルボキシル基を含むように変更される、本明細書に記載される化合物由来のものを含む。インビボでの加水分解性のエステルは、もとの酸またはアルコールを産生するために、ヒトまたは動物の体内で加水分解されるエステルである。適切なカルボキシル基を含む適切な薬学的に許容されるエステルは、C1-6アルコキシメチルエステル、例えば、メトキシ-メチル、C1-6アルカノイルオキシメチルエステル、例えば、ピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3-8シクロアルコキシカルボニルオキシ、C1-6アルキルエステル、例えば、1-シクロヘキシルカルボニル-オキシエチル、1,3-ジオキソレン(dioxolen)-2-オニル(onyl)メチルエステル、例えば、5-メチル-1,3-ジオキソレン-2-オニルメチル、およびC1-6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば、化合物におけるあらゆるカルボキシ基で形成されてもよい、1-メトキシカルボニル-オキシエチルを含む。
【0046】
ヒドロキシ基を含む、インビボでの加水分解性のエステルは、無機エステル、例えば、リン酸エステルおよびα-アシルオキシアルキルエステル、並びに、もとのヒドロキシ基を得るためにエステル崩壊のインビボでの加水分解をもたらす関連する化合物を含む。α-アシルオキシアルキルエステルの例は、アセトキシ-メトキシおよび2,2-ジメチルプロピオニルオキシ-メトキシを含む。ヒドロキシについての基を形成するインビボでの加水分解性のエステルの選択は、アルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチルおよび置換されたベンゾイルおよびフェニルアセチル、アルコキシカルボニル(アルキルカーボネートエステルを得る)、ジアルキルカルバモイルおよびN-(ジアルキルアミノエチル)-N-アルキルカルバモイル(カルバメートを得る)、ジアルキルアミノアセチルおよびカルボキシアセチルを含む。ベンゾイルでの置換基の例は、ベンゾイル環の3位または4位に対するメチレン基を介して環状の窒素原子から連結されたモルフォリノおよびピペラジノを含む。
【0047】
治療用途のために、化合物の塩は、対イオンが薬学的に許容されるものである。しかしながら、薬学的に許容されない酸および塩基の塩は、例えば、薬学的に許容される化合物の調製時または精製時における使用がみられることとしてもよい。
【0048】
上記のように言及されるような、薬学的に許容される酸および塩基の追加の塩は、化合物が形成可能な、治療的に活性のある非毒性の酸および塩基の追加の塩の形態を含むことが意味される。薬学的に許容される酸の追加の塩は、従来、このような適切な酸により塩基形態を処理することにより得られている。適切な酸は、例えば、ハロゲン化水素の酸のような無機の酸、例えば、塩化水素または臭水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸、または有機の酸、例えば、酢酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸(つまり、エタン二酸)、マロン酸、コハク酸(つまり、ブタン二酸)、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸(つまり、ヒドロキシブタン二酸)、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サイクラミン、サリチル酸、p-アミノサリチル酸、パモ酸等の酸を含む。逆に、前記の塩の形態は、適切な塩基で自由な塩基の形態へと処理により変換されることとしてもよい。
【0049】
酸性のプロトンを含む化合物は、また、それらの非毒性金属またはアミン追加塩基へと、適切な有機および無機塩基での処理により変換されることとしてもよい。適切な塩基の塩の形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムの塩等、有機塩基を有する塩、例えば、ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、ヒドラバミン塩、および例えばアルギニン、リジン等のアミノ酸を有する塩を含む。
【0050】
また、上記で使用される用語「追加の塩」は、本明細書に記載される化合物を形成することができる、溶媒和化合物を含む。このような溶媒和化合物は、例えば、水和物、アルコラート等である。
【0051】
上記で使用される用語「第四級アミン」は、その化合物は、化合物の塩基の窒素と、適切な第四級化剤、例えば、任意の置換されたアルキルハロゲン化合物、アリールハロゲン化合物、またはアリールアルキルハロゲン化合物、例えば、ヨウ化メチルまたはヨウ化ベンジル間の反応により形成することができるような第四級アンモニウム塩を定義する。また、よい離脱基を有する他の反応物質、例えばアルキルトリフルオロメタンスルホン酸、アルキルメタンスルホン酸、およびアルキルp-トルエンスルホン酸が使用されることとしてもよい。第四級アミンは、正に帯電した窒素を有する。薬学的に許容される対イオンは、クロロ、ブロモ、ヨード、トリフルオロ酢酸塩および酢酸塩を含む。対イオンの選択は、イオン交換樹脂を用いて導入することができる。
【0052】
本明細書に記載される化合物は、金属結合、キレート化、複合体形成の特性を有することとしてもよく、したがって、金属複合体または金属キレートとして存在することとしてもよい。
【0053】
また、本明細書に記載される化合物のいくつかは、それらの互変異性型で存在することとしてもよい。
【0054】
疾病または病気を「防止する」は、疾病のサインを示していない、または、病状もしくは病気に発展するリスクを低減する、または、病状もしくは病気の重症度を低減する目的についての早期のサインのみを示す対象に、組成物を予防的に投与することを指す。
【0055】
また、開示される化合物のプロドラッグが、本明細書で熟考される。プロドラッグは、加水分解、代謝等のインビボでの生理的作用により、化学的に、活性のある化合物に変更され、その後、対象にプロドラッグの投与を行う、活性または不活性の化合物である。このテキストを通して使用される用語「プロドラッグ」は、エステル、アミド、およびリン酸塩のような薬理学的に許容可能な誘導体を意味し、得られたインビボでの誘導体の生体内変化の産物が、本明細書に記載される化合物で定義されるような活性化薬物となるようなものである。好ましくは、プロドラッグは、優れた水溶解度、高いバイオアベイラビリティを有し、インビボで、活性化したインヒビターへと容易に代謝される。本明細書に記載される化合物のプロドラッグは、親化合物に対して、変更カオチンが切断される方法で化合物に存在する官能基を変更することにより、または、インビボもしくは通常の操作において、調製されることとしてもよい。プロドラッグを用いるおよび作成することを含む技術および適合性は、当業者によりよく知られる。エステルを含むプロドラッグの一般的な検討は、Svensson and Tunek, Drug Metabolism Reviews 165 (1988)およびBundgaard, Design of Prodrugs, Elsevier (1985)を参照されたい。
【0056】
また、用語「プロドラッグ」は、対象にプロドラッグが投与された場合に、インビボで、活性のある本発明の親薬物を放出する、あらゆる共有結合的に結合された担体を含むことを意図する。プロドラッグは、可溶性およびバイオアベイラビリティーのような活性化のある薬剤医薬に対して拡張された特性を有することが多いため、本明細書に記載される化合物は、プロドラッグ形態にて送達される。よって、本明細書に開示される化合物のプロドラッグ、プロドラッグを送達する方法、このようなプロドラッグを含む組成物が熟考される。典型的には、開示される化合物のプロドラッグは、親化合物を得るために、通常の操作またはインビボで、変更カオチンが切断される方法で、化合物に存在する1つ以上の官能基を変更することにより調製される。プロドラッグは、対応するアミノおよび/またはホスホネート基をそれぞれ産生するために、インビボで切断されたあらゆる基で官能基を持たせたホスホネートおよび/またはアミノ基を有する化合物を含む。プロドラッグの例は、限定されないが、アシル化アミノ基および/またはホスホネートエステルまたはホスホネートアミド基を有する化合物を含む。具体的な実施例では、プロドラッグは、低級アルキルホスホネートエステル、例えば、イソプロピルホスホネートエステルである。
【0057】
また、開示された化合物の保護された誘導体が熟考される。開示された化合物による使用のための種々の適切な保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999に開示される。
【0058】
概して、保護基は、分子の残りの部分に影響を及ぼさない条件下で取り除かれる。これらの方法は、酸加水分解、水解等を含み、当業者によく知られる。1つの好ましい方法は、遊離ホスホネートを得るために、TMS-Br媒介エステル切断のような、ルイス酸性条件を用いるホスホネートエステルの切断のような、エステルの除去を含む。第2の好ましい方法は、保護基の除去であり、例えば、アルコール、酢酸等、またはこれらの混合物のような適切な溶媒系における、炭素でのパラジウムを利用した水解による、ベンジル基の除去を含む。適切な溶媒系、例えば、水、ジオキサンおよび/または塩化メチレンで、無機酸または有機酸、例えば、HClまたはまたはトリフルオロ酢酸を利用して、t-ブトキシカルボニル保護基を含むt-ブトキシ系の基を除去することができる。アミノおよびヒドロキシ機能アミノを保護するのに適切な別の例示的な保護基は、トリチルである。他の従来の保護基が知られ、適切は保護基は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis; 3rd Ed.; John Wiley & Sons, New York, 1999で評議されるときに、当業者により選択され得る。アミンが脱保護されるとき、得られる塩は、容易に遊離アミンを産生するために中和される。同様に、ホスホン酸部分のような酸の部分が現れるとき、化合物は酸化合物またはその塩として分離されることとしてもよい。
【0059】
「対象」は、ヒトと獣医学の対象の両方を含む。
【0060】
「置換された」または「置換」は、1つ以上の追加のR基による、R基または水素原子の分子の置換を指す。別途の定義がない限り、本明細書で使用される、用語「置換基を有してもよい」または「任意の置換基」は、1、2、3、4、またはそれ以上の基で、好ましくは、1、2、または3、より好ましくは、1または2の基でさらに置換されていてもよく、置換されていなくてもよい基を指す。置換基は、例えば、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-8シクロアルキル、ヒドロキシル、オキソ、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6アルコキシアリール、ハロ、C1-6アルキルハロ(例えば、CFおよびCHF)、C1-6アルコキシハロ(例えば、OCFおよびOCHF)、カルボキシル、エステル、シアノ、ニトロ、アミノ、置換されたアミノ、二置換のアミノ、アシル、ケトン、アミド,アミノアシル、置換されたアミド、二置換のアミド、チオール、アルキルチオ、チオキソ、スルフェート、スルホネート、スルフィニル、置換されたスルフィニル、スルホニル、置換されたスルホニル、スルホニルアミド、置換されたスルホンアミド、二置換のスルホンアミド、アリール、arC1-6アルキル、ヘテロシクリルおよびヘテロアリールから選択されてもよく、ここで、各アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロシクリル、並びに、それらを含む基は、さらに任意に置換されてもよい。また、N-ヘテロ環における任意の置換基は、C1-6アルキル、つまり、N-C1-3アルキル、より好ましくは、メチル、特に、N-メチルを含むこととしてもよいが、これらに限定されない。
【0061】
「治療に有効な量」は、その薬剤により治療される対象において所望の効果を達成するのに十分な、特定の薬剤の所定の量を指す。理想的には、治療上有効な量の薬剤は、対象において、実質的な細胞毒性効果を生じさせることなく、疾病または病気を阻害しまたは治療するための十分な量である。治療上有効な量の薬剤は、治療を受ける対象、苦痛の重症度、および治療用組成物の投与の態様に依存するものである。
【0062】
「治療」は、発症し始めた後に、疾病または病理的な状態のサインまたは兆候を改善する治療介入を指す。本明細書で使用される場合、用語「改善する」とは、疾病または病理的な状態に照らして、観察可能な有益なあらゆる治療の効果を指す。有益な効果は、例えば、病気にかかりやすい対象における、疾病の臨床症状の発症の遅延、疾病のいくつかまたはすべての臨床症状の重症度の低下、疾病のより遅い進行、対象における全体的な健康や健康状態の向上により、または、特定の疾病に特異的である当技術分野で周知の他のパラメータにより証明され得る。用語「疾病の治療」は、例えば、疾病のリスクを有する、または、癌、特に、転移性癌のような疾病を有する対象において、疾病の全体的な発症または状態を阻害することを含む。
【0063】
インヒビター
明確な別途の記載がない限り、本明細書に記載される全ての化合物は、薬学的に許容されるその塩として提供される。いくつかの実施形態では、インヒビターは、塩ではない。いくつかの実施形態では、インヒビターは、塩である。ある実施形態では、インヒビターは、低分子量の化合物であることとしてもよい(「LMWC」は、例えば、限定されないが、約600ダルトン未満の分子量を有する)。
【0064】
本明細書に開示される化合物の具体的な例は、1つ以上の不斉中心を含むこととしてもよく、よって、化合物は、異なる立体異性の形態で存在し得る。したがって、化合物および組成物は、ラセミ混合物を含む、立体異性の混合物として、または、個々の純粋な鏡像異性体として提供されることとしてもよい。ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、エナンチオピュアな形態において、90%の鏡像異性体過剰率、95%の鏡像異性体過剰率、97%の鏡像異性体過剰率、または99%以上の鏡像異性体過剰率のような実質的にエナンチオピュアな形態へと合成され、または、精製される。
【0065】
本明細書に開示される化合物は、少なくとも1つの不斉中心または幾何学中心、シス-トランス中心(C=C、C=N)を有し得る。別途の特定がない限り、全てのキラル、ジアステレオマー、ラセミ、メソ、回転および幾何異性体の構造が意図される。化合物は、単一の異性体として、または、異性体の混合物として単離され得る。また、化合物の全ての互変異性体は、本開示の考慮される部分である。また、本開示の化合物は、化合物に存在する原子の全ての同位体を含み、限定されないが、重水素、三重水素、18F等を含む。
【0066】
本明細書で開示されるのは、
式Iを有するp62-ZZインヒビターである化合物であって、
【化4】
・・・ 式I
Arは、アリーレンまたはヘテロアリーレン基であり、
は、
【化5】
の構造を有し、
ここで、
Wは、アルカンジイル、アルケンジイル、カルボニルまたはその組み合わせであり、
Xは、-NR-であって、Rは、Hまたはアルキル、または-O-であり、
Yは、置換基を有してもよいシクロアルキル、置換基を有してもよいシクロアルキル-置換アルキル、置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル、または置換基を有してもよいヘテロシクロアルキル-置換アルキルであり、
各Rは、同じまたは異なり、
【化6】

の構造を有し、
ここで、
Zは、-NR-であり、Rは、Hまたはアルキル、-O-、-S-、または-CH-であり、
は、(-CH-)であり、mは0~5であり、または2~6の炭素原子を有するアルケンジイルであり、
Cyは、3~8員シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール環であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、またはアミノから選択され、cは0~5であり、
各Rは、同じまたは異なり、ヒドロキシ、ハロゲン、置換あるいは非置換のアルコキシ、置換あるいは非置換のアルキル、アミノ、置換あるいは非置換のシクロアルキル、置換あるいは非置換のヘテロシクロアルキル、置換あるいは非置換のアリール、またはニトロから選択され、aは2~5であり、bは0~3である、
化合物である。
【0067】
Arは、例えば、ベンゼントリル(例えば、ベンゼン-1,3,4-トリイル)またはベンゼンテトリルであることとしてもよい。
【0068】
Wは、例えば、低級のアルカンジイル、または低級のアルケンジイル、またはカルボニルも含む低級のアルカンジイル、またはカルボニルも含む低級のアルケンジイルであることとしてもよい。Xは、例えば、-NR-であることとしてもよく、ここで、Rは、低級のアルキルであることとしてもよく、それは任意に置換されることとしてもよい。Yは、例えば、シクロアルキル-置換アルキルであることとしてもよく、アルキル基は1~4の炭素原子を含む。ある実施形態では、Rは、-CH-X-(CH-R11であり、Xは、NHまたはO、mは0~6であり、R11は、置換基を有してもよいシクロアルキルである(具体的には、置換基を有してもよいシクロヘキシル。)。ある実施形態では、R11は、置換されていないシクロヘキシルである。
【0069】
ある実施形態では、Yは、
【化7】
または
【化8】
である。
【0070】
ある実施形態では、Rは、
【化9】
の構造を有し、
Zは、例えば、-NR-であることとしてもよく、ここで、Rは、低級のアルキルであることとしてもよく、それは任意に置換されていることとしてもよく、またはZは-O-であることとしてもよい。Rは、例えば、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CHまたは-NHであることとしてもよい。ある実施形態では、cは1であり、または2である。ある実施形態では、Rは、4-フルオロ、2,4-ジフルオロ、または4-メチルである。
【0071】
は、例えば、-F、-Cl、-OCH、-OH、または-NHであることとしてもよい。ある実施形態では、Rは、低級のアルキル、低級のアルコキシ、C~Cアルキルアミノ(アルキルアミノのC~Cアルキル部分は、直鎖または分岐鎖であることとしてもよい。)、ジ(C-Cアルキル)アミノ、C~Cシクロアルキル(特に、C~Cシクロアルキル、特に、シクロプロピル)、ヒドロキシル置換されたC~Cシクロアルキル、N、O、およびSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む3~6員ヘテロシクロアルキル、アルキル置換された3~6員ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル置換された3~6員ヘテロシクロアルキル、またはフェニル、ナフチルまたはアントラセニル(anthracenyl)、またはニトロ基のようなアリールである。
【0072】
ある実施形態ではaは2、3、4、または5である。好ましい実施形態では、aは2である。ある実施形態では、第1のR基はR基に対してAr環のメタ位にあり、第2のR基はR基に対してAr環のパラ位にある。ある実施形態では、 各R基は同じ構造を有する。
【0073】
ある実施形態では、bは0、1、2、または3である。
【0074】
ある実施形態では、cは0、1、2、3、4、または5である。
【0075】
より具体的な実施形態では、p62-ZZインヒビターは、
【化10】
、または
【化11】
から選択され、
ここで、各R、R、およびRは同じまたは異なり、-F、-Cl、-OCH、-OH、-CH、または-NHから選択され、dは0~3であり、eは0~5であり、fは0~5である。
【0076】
本明細書に開示される化合物は、以下に示されるように合成される。
一般的な合成経路:
【化12】

【化13】
【0077】
まず、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(1.38g、10.0mmol)を、ドライジメチルホルムアミド(DMF,40mL)で希釈した。1-(ブロモメチル)-4-フルオロベンゼン(3.96g、21.0mmol)、その後、無水KCO(5.52g、40.0mmol)をゆっくりと加えた。混合物を6時間、室温で撹拌した。混合物は、HOとエーテル(各120ml)との間で分配された。有機層は分離され、水層はエーテルで抽出された(3×50mL)。プールされた有機層はHO(2×50mL)および飽和した水溶NaCl(50mL)で洗浄された。薄い色の、淡黄色の抽出物は、無水硫酸ナトリウムのもとで乾燥させ、濃縮して、ヘキサン(75mL)による洗浄および乾燥後に、ホワイトクリーム色の固体3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンズアルデヒド(4.31g、82%)を得た。
【0078】
その後、3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンズアルデヒド(354mg、1mmol)がドライエタノールに溶かされ、シクロヘキシルメタンアミン(0.13mL、1mmol)が添加された。反応混合物は、60℃で12時間撹拌された。反応液は室温まで冷却された。NaBH(57mg、1.5mmol)を、少量でゆっくりと添加し、得られた溶液をさらに12時間撹拌した。溶剤を真空で蒸発させ、残留物を水に溶かし、酢酸エチルで抽出した。有機層を、NaSOと組み合わせて乾燥させ、ろ過し、真空で蒸発させた。残留物を新しいカラムで精製し、所望の産生物N-(3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミン(260mg、57%)を生成した。
【0079】
最後に、2-((3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンジル)アミノ)エタン-1-オール(260mg、0.58mmol)を25mLの無水メタノールに溶解し、HClガスで1時間ポンプ輸送した。混合物をさらに2時間撹拌し、約1mLになるまで蒸発させた。固体の化合物を得るためにヘキサンがその後添加され、それはろ過されて乾燥されて、最終化合物が得られた(210 mg, 74%). 1H NMR (CDCl3): 7.52-7.33 (m, 10H), 7.01-6.84 (m, 3H), 5.20 (s, 2H), 5.17 (s, 2H), 3.71 (s, 2H), 3.64 (t, J = 4.8, 2H), 2.93 (s, 2H), 2.72 (t, J = 4.8, 2H)。
【0080】
治療および医薬組成物
本明細書に記載される化合物は、p62-媒介疾患を治療するのに有用であり得る。例示的なp62-媒介疾患は、多発性髄髄腫、オートファジー関連疾患、メタボリックシンドローム、アルツハイマー病、および他の神経変性疾患、並びに、黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス、サルモネラ菌のような感染症を含む。
【0081】
本明細書に開示される化合物は、腎癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性髄髄腫および乳癌のような癌を治療するのに有用であることとしてもよい。
【0082】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、多発性骨髄腫の細胞増殖を阻害する。特に、化合物は、OPM-2細胞、OPM-2様細胞、MM-IS細胞、MM-IS様細胞、MM.1R細胞、MM-1R様細胞、KMS-18細胞、KMS-18様細胞、S6B45細胞、S6B45様細胞、MR20細胞、MR20様細胞、ARD細胞、および/またはARD様細胞の1つ以上から選択される、細胞タイプにより、特徴づけられる多発性骨髄腫を治療するために使用されることとしてもよい。腫瘍のタイプおよび疾病の進行ステージにより、治療方法の抗癌の効果は、限定されないが、腫瘍増殖の阻害、腫瘍増殖の遅延、腫瘍の退行、腫瘍の収縮、治療終了時の腫瘍の再増殖までの時間の増加、疾患の進行の遅延、および転移の予防を含む。治療の方法が、このような治療を必要とする対象に施される場合、当該治療の方法は、例えば、抗癌効果、奏効率、疾患進行までの時間、または生存率により測定される効果を産みだすことが期待される。特に、ヒト患者、具体的には、最初の治療法も把握しているものの、再発している患者、これまでの化学療法に対して不応性である患者に、当該治療方法は適している。例えば、本明細書に開示される化合物は、デキサメサゾン、アルキル化剤(例えば、メルファラン、シクロホスファミド(cyclophosamide))、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、サリドマイド、レナリドマイド、CC-4047、ボルテゾミブ、およびマルチターゲットキナーゼインヒビターの1つ以上に対して抵抗力がある、癌、特に、薬剤耐性の多発性骨髄腫を治療するために使用されることとしてもよい。また、本明細書に開示される化合物は、上記のように言及されたあらゆる薬剤と同時投与されることとしてもよい。本明細書に開示される化合物は、オートファジーをブロックすることとしてもよい。オートファジーをブロックすることは、癌治療のためのDNA損傷剤および可能な他の薬剤の効能を高めることができる(Suppression of autophagy by FIP200 deletion impairs DNA damage repair and increases cell death upon treatments with anti-cancer agents. Bae et al., Jl. Mol Cancer Res. 2011 Aug. 1)。
【0083】
ある実施形態では、本明細書に開示される化合物は、腫瘍の成長と骨破壊を低減できるストローマ細胞におけるp62活性を調節する。
【0084】
具体的な実施形態では、本明細書で開示される化合物は、破骨細胞形成を阻害するおよび/または破骨細胞の活性化を低減するために使用されることとしてもよい。骨細胞は、正常および病的状態の両方における主要骨再吸収細胞である。増殖した破骨細胞の骨吸収は、破骨細胞形成の増加および骨の再吸収のために予め形成された破骨細胞の活性化の両方をもたらすことができる。骨転移を有する患者では、溶骨性の骨破壊が、重度の骨痛、病的骨折、高カルシウム血症、および神経圧迫症候群をもたらし得る。いくつかの腫瘍は、腎臓癌、肺癌、甲状腺癌、前立腺癌、多発性髄髄腫および乳癌を含む骨についての高い偏向を示す。例えば、Roodman, Journal of Clinical Oncology, vol. 19, 2001, p. 3562を参照。破骨細胞の形成および活性化は、また、閉経後の骨粗しょう症などの骨粗鬆症、パジェット病、関節リウマチおよび頭頸部扁平上皮癌にかかっている個々における溶骨性の疾病および骨欠損に貢献する。米国特許第7,462,646号参照。
【0085】
開示される化合物は、別の治療薬、具体的には別の抗癌剤とともに同時投与することとしてもよい。ある実施形態では、少なくともp62-ZZインヒビターおよび少なくとも1つの他の抗癌剤を含む医薬組成物が提供される。例示的な化学療法剤は、EGF受容体アンタゴニスト、硫化ヒ素、アドリアマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、シメチジン、カルミノマイシン(caminomycin)、メクロレタミンハイドロクロライド、ペンタメチルメラミン、チオテパ、テニポシド、シクロホスファミド、クロラムブシル、デメトキシヒポクレリンA、メルファラン、イホスファミド、トロポスファミド、トレスルファン、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体、リン酸エトポシド、テニポシド、エトポシド、ロイロシジン、ロイロシン、ビンデシン、9-アミノカンプトテシン、カンプトイリノテカン(Camptoirinotecan)、クリスナトール、メゲストロール、メトプテリン、マイトマイシンC、エクテイナシジン743、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、ロバスタチン、1-メチル-4-フェニールピリジニウムイオン、セムスチン、スタウロスポリン、ストレプトゾシン、フタロシアニン、ダカルバジン、アミノプテリン、メトトレキセート、トリメトレキセート、チオグアニン、メルカプトプリン、フルダラビン、ペンタスタチン、クラドリビン、シタラビン、ポルフィロマイシン、5-フルオルロウラシル、6-メルカプトプリン、塩酸ドキソルビシン、ロイコボリン、ミコフェノール酸、ダウノルビシン、デフェロキサミン、フロクスウリジン、ドキシフルリジン、ラクチトレキセド、イダルビシン、エピルビカン、ピラールビカン、ゾルビシン、ミトキサントロン、硫酸ブレオマイシン、アクチノマイシンD、サフラシン、サフラマイシン、キノカルシン(quinocarcin)、ディスコデルモライド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、酒石酸ビノレルビン、ベルテポルフィン(vertoporfin)、パクリタキセル、タモキシフェン、ラロキシフェン、チアゾフラン、チオグアニン、リバビリン、EICAR、エストラムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、フルタミド、ビカルタミド、ブセレリン、ロイプロリド、プテリジン、エンジイン、レバミゾール、アフラコン、インターフェロン、インターロイキン、アルデスロイキン、フィルグラスチム、サルグラモスチム、リツキシマブ、BCG、トレチノイン、ベタメタゾン、塩酸ゲムシタビン、ベラパミル、VP-16、アルトレタミン、タプシガルギン、オキサリプラチン、イプロプラチン、テトラプラチン、ロバプラチン、DCP、PLD-147、JM118、JM216、JM335、サトラプラチン、ドセタキセル、脱酸素化パクリタキセル、TL-139、5’-ノル-アンヒドロビンブラスチン、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、BAY38-3441、9-ニトロカンプトテシン、エキサテカン(exatecan)、ラルトテカン、ジャイマテカン、ホモカンプトテシンジフルモテカン(homocamptothecins diflomotecan)および9-アミノカンプトテシン、SN-38、ST1481、カラニテシン、インドロカルバゾール、プロトベルベリン、イントプリシン、イデノイソキノロン、ベンゾフェナジンおよびNB-506を含む。
【0086】
本明細書に記載される化合物は、また、摂食量および体重、リバースインシュリンおよびレプチン抵抗性、逆肝脂肪症(脂肪肝)を低減し、並びに、脂質異常症を改善するために、それを必要とする対象に投与されることとしてもよい。それらは、肥満、糖尿病(例えば、2型糖尿病)、および非アルコール性およびアルコール性脂肪肝疾患(NAFLD/AFLD)の治療に使用することができ、あとは、インスリン抵抗性、肝硬変および肝臓癌、動脈硬化性心疾患、糖尿病性腎症、痛風および線維症にかかりやすい異脂肪血症についてのリスクファクターとなり得る。
【0087】
糖尿病疾患は、1型糖尿病、2型糖尿病、不適切な耐糖能、および/またはインシュリン耐性であり得る。
【0088】
本明細書に開示される化合物は、また、例えば、アルツハイマー病、毛細血管拡張性運動失調症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病のような、神経変性疾患または疾病を治療するために、それを必要とする対象に投与されることとしてもよい。
【0089】
本明細書で特定される化合物は、薬剤に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容される添加剤、例えば、担体、増粘剤、希釈剤、緩衝剤、防腐剤、界面活性剤などを含む医薬組成物に含まれることとしてもよい。また、医薬組成物は、抗菌剤、消炎剤、麻酔剤、麻薬などのような、1つ以上の追加の有効成分を含むことができる。これらの製剤に有用な薬学的に許容される担体は、慣習的なものである。Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 19th Edition (1995)は、本明細書に開示される化合物の薬学的な送達に適する製剤および組成物を記載する。
【0090】
概して、担体の性質は、採用される投与の具体的なモードによるであろう。例えば、非経口製剤は、通常、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される流体を含む注射液をビヒクルとして含有する。固体の組成物に関し(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル形態)、従来の非毒性の固体担体は、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的にニュートラルな担体に加えて、投与される医薬組成物は、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、およびpH緩衝剤など、例えば、酢酸ナトリウムまたはソルビタンモノラウレートのような、少量の非毒性補助物質を含むこととしてもよい。
【0091】
本明細書に開示される化合物は、経口、直腸、鼻腔内、肺内、もしくは経皮的送達によることを含む、種々の粘膜投与モードにより、または、他の表面への局所送達により、対象に投与され得る。任意に、化合物は、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、または非経口経路を含む、非粘膜ルートにより投与され得る。別の代替的な実施形態では、化合物は、細胞、組織、または対象由来の組織に対して直接暴露することにより、生体外で投与され得る。
【0092】
医薬組成物を処方するために、化合物を、種々の薬学的に許容される添加剤、並びに、化合物の分散のためのビヒクルもしくはベースと組み合わせることができる。所望の添加材は、限定されないが、pH調整剤、例えば、アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸等を含む。さらに、局所麻酔(例えば、ベンジルアルコール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着型インヒビター(例えば、Tween80またはMiglyol812)、溶解促進剤(例えば、シクロデキストリンおよびその誘導体)、安定剤(例えば、血清アルブミン)、並びに還元剤(例えば、グルタチオン)を含むことができる。アジュバント、例えば、当該技術分野でよく知られる多くの他の適切なアジュバントの中でも、水酸化アルミニウム(例えば、Amphogel, Wyeth Laboratories, Madison, NJ)、Freund'sアジュバント、MPLTM(3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA;Corixa, Hamilton, IN)およびIL-12(Genetics Institute, Cambridge, MA)を組成物中に含めることができる。組成物が液体である場合、統一をとるために、0.9%(w/v)の生理食塩水の張度を基準にして測定された製剤の張度は、典型的には、投与部位において実質的で不可逆的な組織損傷が誘発されない値に調整される。概して、溶液の張度は、約0.3~約3.0の値、例えば、約0.5~約2.0、または約0.8~1.7に調整される。
【0093】
化合物をベースまたはビヒクルで分散させることができ、それは、化合物を分散させる能力を有する親水性の化合物、およびあらゆる所望の添加剤を含むことができる。ベースは、限定されないが、ポリカルボン酸のコポリマーまたはその塩、他のモノマーを有する(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸等)を有するカルボキシル無水物(例えば、無水マレイン酸)、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンのような親水性のビニルポリマー、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のようなセルロース誘導体、キトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、およびそれらの非毒性金属塩のような天然高分子を含む、幅広い範囲の適切な化合物から選択することができる。しばしば、生分解性ポリマーが、例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸-グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸-グリコール酸)コポリマー、およびこれらの混合物から、ベースまたはビヒクルとして選択される。代替的にまたは追加的に、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等のような合成脂肪酸エステルをビヒクルとして採用することができる。親水性のポリマーおよび他のビヒクルは、単体でまたは組み合わせて使用され、部分的結晶化、イオン結合、架橋などにより、ビルクルに強化された構造的完全性を付与することができる。ビヒクルは、粘膜表面に直接適用するために、液体または粘性のある溶液、ゲル、ペースト、粉末、ミクロスフェアおよびフィルムを含む様々な形態で提供することができる。
【0094】
化合物は、様々な方法に従ってベースまたはビヒクルと組み合わせることができ、化合物の放出は、ビヒクルの拡散、崩壊、またはそれに関連する水路の形成によって行うことができる。いくつかの状況では、化合物は、適切なポリマーから調整された、例えば、イソブチル2-シアノアクリレートのような、ナノカプセル(ナノスフェア)、マイクロカプセル(マイクロスフェア)中に分散され(例えば、Michael et al., J. Pharmacy Pharmacol. 43:1-5, 1991参照。)、および生体適合性分散媒体に分散され、長時間にわたり持続的な送達および生物学的な活性をもたらす。
【0095】
開示の組成物は、代替的には、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、湿潤剤などの添加剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンを、おおよその生理学的条件に必要とされる薬学的に許容可能なビヒクル物質として含むことができる。固体の組成物について、従来の非毒性の薬学的に許容されるビヒクルを使用することができ、これは、例えば、医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカン、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどを含む。
【0096】
化合物を投与するための医薬組成物は、また、溶液、マイクロエマルジョン、または高濃度の有効成分に適する他の規則構造として処方され得る。ビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの適切な混合物を含む、溶剤または分散媒であることとしてもよい。溶液のための適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散性調合物の場合の所望の粒子サイズの維持、および界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えばマンニトールおよびソルビトールなどの糖類、ポリアルコール、または塩化ナトリウムを含むことが望ましいであろう。化合物の長期吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0097】
ある実施形態では、例えば徐放性ポリマーを含む組成物のような、時間放出製剤中で化合物を投与することができる。これらの組成物は、例えばポリマー、マイクロカプセル化送達システムまたは生体接着性ゲルのような制御放出ビヒクルのような急速放出に対して保護するビヒクルを用いて調製することができる。本開示の種々の組成物中での延長された送達は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムヒドロゲルおよびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。制御放出製剤が所望される場合、本開示に従って使用するのに適した制御放出結合剤は、活性物質に対して不活性であり、かつ化合物および/または他の生物学的活性物質を組み込むことができる、あらゆる生体適合性制御放出物質を含む。多数のこのような材料が当該技術分野で知られる。有用な徐放性結合剤は、送達後の生理学的条件下で(例えば、粘膜表面で、または体液の存在下で)ゆっくりと代謝される物質である。適切な結合剤には、徐放性製剤に使用するための当該分野で周知の生体適合性ポリマーおよびコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。このような生体適合性のある化合物は、毒性がなく周囲の組織に対して不活性であり、鼻の炎症、免疫応答、炎症などの重大な副作用を引きださない。それらは代謝産物に代謝され、生体適合性があり、身体から容易に排除される。
【0098】
本開示において使用するための例示的なポリマー材料には、加水分解可能なエステル結合を有するコポリマーおよびホモポリマーポリエステル由来のポリマーマトリックスが含まれるが、これらに限定されない。これらの多くが、生物分解性であり、毒性が全くないまたは低い分解産物をもたらすことが当該技術分野で知られている。例示的なポリマーには、ポリグリコール酸およびポリ乳酸、ポリ(DL-乳酸-共-グリコール酸)、ポリ(D-乳酸-共-グリコール酸)およびポリ(L-乳酸-共-グリコール酸)が含まれる。他の有用な生分解性または生体侵食性ポリマーには、これに限定されるものではないが、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(ε-アプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-アプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(ベータヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)のようなポリマー、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)(例えば、L-ロイシン、グルタミン酸、L-アスパラギン酸など)、ポリ(エスエル尿素)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリマールアミド、多糖類、およびそれらのコポリマー、のようなハイドロゲルを含む。
【0099】
このような製剤を調製するための多くの方法が、当該技術分野でよく知られている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978参照。)。他の有用な製剤は、徐放性マイクロカプセル(米国特許第4,652,441号および第4,917,893号)、マイクロカプセルおよび他の製剤を製造するのに有用な乳酸-グリコール酸コポリマー(米国特許第4,677,191号および第4,728,721号)、並びに水溶性ペプチドの徐放組成物(米国特許第4,675,189号)を含む。
【0100】
本開示の医用組成物は、典型的には、製造、貯蔵および使用の条件下で無菌で安定である。滅菌溶液は、必要に応じて本明細書に列挙した成分の1つまたは組み合わせとともに、適切な溶媒中に必要量の化合物を組み込み、続いてろ過滅菌することによって調製することができる。概して、分散液は、塩基性分散媒体および本明細書に列挙したものからの必要な他の成分を含む滅菌ビヒクル中に、化合物および/または他の生物学的活性物質を組み込むことによって調製される。滅菌粉末の場合、調製方法には、真空乾燥および凍結乾燥が含まれ、化合物に予め滅菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分を加えた粉末を得る。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0101】
本開示の様々な治療方法によれば、治療または予防が求められる疾病の管理に関連する従来の方法論と一致した方法で、化合物を対象に送達することができる。本明細書の開示によれば、予防上または治療上有効な量の化合物は、選択された疾患または病気または1つ以上のその症状を予防、阻止、および/または改善するのに十分な時間および条件下で、そのような治療を必要とする対象に投与される。この化合物の投与は、予防的でも治療的な目的でもよい。予防的に提供される場合、任意の症状の前に、その化合物が提供される。化合物の予防的投与は、その後のあらゆる疾患プロセスを防止または寛解させるのに役立つ。治療的に提供される場合、化合物は、病気または感染の症状の発症時に(または直後に)提供される。
【0102】
予防的および治療的目的のために、化合物は、長期間にわたる連続送達(例えば、連続経皮、粘膜または静脈内送達)を介して、単一のボーラス送達で、または、反復投与プロトコルで(例えば、1時間ごと、毎日または毎週反復される投与プロトコルによって)、経口経路によって被験体に投与することができる。化合物の治療有効量は本明細書に示される標的とされる疾病および病気に関連する1つ以上の兆候または検出可能な症状を緩和するための臨床的に有意な結果をもたらす治療レジメンおよび長期間の予防内での繰り返しの投与として提供され得る。この文脈における有効投与量の決定は、典型的には、その後ヒト臨床試験によりフォローされた動物モデル研究に基づいており、対象疾患症状の発生または重症度を有意に低下させる投与プロトコールによって導かれる。これに関する適切なモデルには、例えば、マウス、ラット、トリ、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類および当技術分野で知られている他の容認された動物モデルが含まれる。あるいは、インビトロモデルを用いて有効投薬量を決定することができる。このようなモデルを使用すると、治療上有効な量の化合物を投与するための適切な濃度と投与量を決定するために、通常の計算と調整のみが必要とされる(例えば、標的疾患の1つ以上の症状を緩和する、または所望の免疫応答を引き出すのに有効である量)。代替的な実施形態では、薬剤の有効量または有効な投与量は、治療または診断の目的のために、本明細書に示される疾病または病気と関連する、1つ以上の選択された生物学的活性を単に阻害するまたは高めることとしてもよい。
【0103】
化合物の実際の投与量は、疾病の兆候および対象の具体的な状態(例えば、対象の年齢、大きさ、適応度、症状の程度、感受性因子など)、投与の時間および経路、同時に投与される他の薬剤または治療、並びに、対象における、所望の活性または生物学的反応を誘発するための特定の薬理学の薬剤のような因子に従って変化する。投与レジメンは、最適予防または治療反応を提供するように調整することができる。治療上有効な量はまた、治療上有益な効果によって、化合物の毒性または有害な副作用が臨床的に凌駕される量である。本開示の方法および処方物中の治療有効量の化合物の非限定的な範囲は、約0.01mg/kg体重~約20mg/kg体重、例えば約0.05mg/kg~約5mg/kg体重、または約0.2mg/kg~約2mg/kg体重である。
【0104】
投薬量は、標的部位(例えば、肺または全身循環)で所望の濃度を維持するために、主治医によって変更することができる。 より高いまたはより低い濃度は、送達様式、例えば、経表皮、直腸、経口、肺、または鼻腔内送達対静脈または皮下送達に基づいて選択することができる。投与量は、投与された製剤の放出速度、例えば、肺内スプレー対粉末、徐放性経口対注射粒状または経皮送達製剤などに基づいて調整することもできる。
【0105】
実施例
骨髄の微小環境は、MMにおける重要な支えとなる役割を提供し、ストローマ細胞における複数のシグナル経路の活性化により、腫瘍の増殖と骨破壊の両方を増大させることが知られている。セクエストソーム1(p62)は、MMを有する患者の骨髄微小環境における、NF-B、p38MAPKおよびPI3Kの活性化をもたらす、シグナル複合体の形成における重要な役割を果たす。特定のp62ドメイン:ΔSH2、ΔPB1、ΔZZ、Δp38、ΔTBSおよびΔUBAが欠損された、p62の欠失構造が生成され、MMについての潜在的な治療薬として、阻害ペプチド/分子を発現させる手段としての、NF-Bおよびp38MAPKシグナルにより媒介されたMM細胞増殖および破骨細胞(OCL)形成の増加に関係するドメイン、具体的にはp62のZZドメインを特定する(図1)。これらの構築物は、その後、p62-ノックアウトストローマ細胞系にトランスフェクトされ、p62のZZドメインが、MM細胞増殖のストローマ細胞のサポート、増加したIL-6、VCAM-1発現、およびOCL形成に必要とされる。これらの結果は、p62のZZドメインを標的とする小分子またはドミナントネガティブ構築物が、骨髄の微小環境によりMM細胞のサポートおよびOCL形成を阻害し、p62機能をブロックしているであろうことを示唆する。
インヒビターの系統的な生物学的実験が、図2に示されるように行われた。
【0106】
実施例1
化合物XIELP1-106:N-(3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミンハイドロクロライド
【化14】
【表1】
【0107】
XIELP1-12b:N-(3,4-ビス((4-フルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキサナミン
【化15】
【表2】
【0108】
XIELP1-17b:N-(3,4-ビス((4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミン
【化16】
【表3】
【0109】
XIELP1-20a:N-(3,4-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナミン
【化17】
【表4】
【0110】
XIELP1-24b:2-((3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)アミノ)エタン-1-オル
【化18】
【表5】
【0111】
XIELP1-25b:N-(3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミン
【化19】
【表6】
【0112】
XIELP1-51:N-(3,4-ビス((4-メチルベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナミン
【化20】
【表7】
【0113】
XIELP1-58:N-(3,5-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)-1-シクロヘキシルメタンアミン
【化21】
【表8】
【0114】
XIELP1-60:N-(3,5-ビス((2,4-ジフルオロベンジル)オキシ)ベンジル)シクロヘキサナミン
【化22】
【表9】
【0115】
化合物XIELP1-106(10bとしても言及される)の治療有効性および許容性は、皮下のRPMI-8226ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療において評価された。異なる時点での2つのグループにおける腫瘍の体積は、図3に示される。XIELP1-106ビヒクルコントロールグループの平均腫瘍体積は、腫瘍移植後30日で1,452mmに達した。XIELP1-106(60mg/kg、ip、q3d×4wks)の治療は、23%のT/C値(p=0.001)を有する強力な抗腫瘍活性を産み出した。
【0116】
ビヒクル処理されたマウスの生存期間中央値(MST)は、42日であった(図4)。XIELP1-106グループでは、実験終了まで動物は死亡しなかった(腫瘍接種後60日)。
【0117】
安全性のプロファイルに関し、所与の投与レベルで、XIELP1-106で治療されたマウスは、3投与後に11.2%の中程度の体重減少がもたらされ、その後、残りの期間中の治療の許容性へと展開した。全体的な他の臨床異常は生じなかった。まとめると、所与の投与レベルでのXIELP1-106は、この実験において、RPMI-8226ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルの治療における強い抗腫瘍の効能を示し、皮下のRPMI-8226腫瘍に耐えるマウスの生存時間を有意に延長した。
【0118】
開示された化合物、組成物、および方法の原理が適用される、多くの可能な実施例に鑑み、示された実施形態は本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の範囲を限定するように解釈すべきではないことが認識されるべきである。
図1
図2
図3
図4