(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】冷媒処理装置
(51)【国際特許分類】
F25B 45/00 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
F25B45/00 C
F25B45/00 A
(21)【出願番号】P 2018025172
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 丈博
(72)【発明者】
【氏名】松崎 亮
(72)【発明者】
【氏名】砂原 宏光
【審査官】関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-160409(JP,A)
【文献】実開昭59-101176(JP,U)
【文献】特開2005-055077(JP,A)
【文献】特開2014-085082(JP,A)
【文献】実開昭56-068875(JP,U)
【文献】登録実用新案第3209805(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0182312(US,A1)
【文献】特開2002-364937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調システムの高圧サービスバルブ及び低圧サービスバルブに
それぞれ着脱される高圧ホース及び低圧ホースと、
前記高圧ホース及び
前記低圧ホースの圧力を
それぞれ検出する高圧側圧力センサ及び低圧側圧力センサと、
前記高圧ホース及び前記低圧ホースと管路を介して接続され、前記空調システムの冷媒を貯蔵する冷媒タンクと、
前記冷媒タンクと前記管路を介して接続され、前記空調システムからの冷媒回収及び冷媒充填に関わるコンプレッサと
、を備えた冷媒処理装置において、
前記高圧サービスバルブと前記高圧ホースが接続され、前記低圧サービスバルブと前記低圧ホースが接続され、かつ前記空調システムが停止された状態で、前記コンプレッサを駆動して前記空調システムから前記冷媒タンクへ冷媒を回収させる第1機能と、
前記第1機能を実行後、前記高圧サービスバルブと前記高圧ホースが接続され、前記低圧サービスバルブと前記低圧ホースが接続され、かつ前記空調システムが停止された状態で、前記コンプレッサを駆動して前記冷媒タンクから
前記空調システムに冷媒を充填
させる第2機能と、
前記第2機能を実行後に、
前記高圧サービスバルブと前記高圧ホースが接続されず、前記低圧サービスバルブと前記低圧ホースが接続され、かつ前記コンプレッサが停止された状態で、前記空調システムの作動により前記高圧ホース内に残留する冷媒を
前記低圧ホースから
前記空調システムに吸い込ませる
第3機能と、を有し、
前記第3機能は、実行開始に際して、前記高圧側圧力センサで検出される圧力の
上昇変動に基づいて
前記空調システムと
前記高圧ホースと
が接続
されたままであることを判別するチェック機能を
含む、
ことを特徴とする冷媒処理装置。
【請求項2】
前記チェック機能は、
前記第1機能を実行前に選択された前記空調システムにおける冷凍機油の種別
としてPAGとPOEに応じて行
われ、
前記PAGが選択された場合、前記高圧側圧力センサの圧力値が上昇すると前記空調システムと前記高圧ホースとが接続されたままと判別し、
前記POEが選択された場合、前記高圧側圧力センサの圧力値を初期値として記憶し、前記高圧ホース側の前記管路を開閉させ、前記高圧側圧力センサの圧力値が前記初期値まで上昇すると前記空調システムと前記高圧ホースとが接続されたままと判別する、
ことを特徴とする上記請求項1記載の冷媒処理装置。
【請求項3】
前記チェック機能により、
前記高圧ホースが
前記空調システムに接続されていると判別されたとき、
前記高圧ホースを外す報知を行う
ことを特徴とする上記請求項1又は2記載の冷媒処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム内に充填されている冷媒を回収し、回収した冷媒を再生処理し、再生した冷媒を空調システム内に充填するといった処理を行う冷媒処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の冷媒処理装置として、本出願人は、特許文献1において、低温環境下でも素早く確実に充填作業が行える液充填方式を採用した装置を提案している。この装置は、車両エンジンを停止したまま、車両用空調システムから冷媒を高圧液体の状態で引き込み、冷凍機油を分離して濾過・除水した後、冷媒を回収タンクに回収する回収再生作業と、車両エンジンを停止したまま、回収タンクの冷媒を装置本体内で循環させて回収タンクの内圧を上昇させた後、回収タンクの内圧によって液体冷媒を車両用空調システムに充填する充填作業とを実行する。
【0003】
このような液充填方式では、充填作業が終了した後に、高圧ホース内に冷媒が残留しやすく、冷媒充填量の精度に影響を及ぼしていた。冷媒の充填量が適切でないと、車両用空調システムの冷却性能が著しく低下することから、高圧ホース内の残留量を考慮した調整分を補充しているが、冷媒残留量は車種や環境条件等によって異なるため、この調整によっても適正充填量に対するバラツキを許容することは困難であった。
【0004】
そこで、充填作業後に、高圧ホース内に残留する冷媒を車両用空調システムに戻す作業を行っている。この作業は、車両用空調システムの高圧側から高圧ホースを外した状態で、車両エンジンを駆動して車両用空調システムを作動させることで行われるが、高圧ホースを外す前に車両エンジンを駆動し車両用空調システムを作動させてしまうと、装置本体と車両用空調システムとの間で短絡した経路で冷媒が循環され、高圧側からの液化された冷媒が直接低圧側に供給されることで車両用空調システムのコンプレッサが損傷する危険性があった。
【0005】
このとき、特許文献2に示すマニホールドを用いる場合には、空調システムの高圧側から外した高圧ホースを、低圧ホースの接続継手に設けた高圧ホース接続部に接続するといった人為的な動作を伴うため、車両用空調システムの高圧側から高圧ホースを外し忘れることはないが、高圧ホースを接続部に接続することがない場合には、高圧ホースを外さずに車両エンジンを駆動してしまう危険性が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-160409号公報
【文献】特開2016-121850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、充填作業後に、ホース内に残留する冷媒を空調システム側に戻す作業を行う際に、高圧ホースが空調システムから外されていることを確認した上で、同作業を行うことができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために本発明は、空調システムの高圧サービスバルブ及び低圧サービスバルブに着脱される高圧ホース及び低圧ホースと、高圧ホース及び低圧ホースの圧力を検出する高圧側圧力センサ及び低圧側圧力センサと、冷媒を貯蔵する冷媒タンクと、空調システムからの冷媒回収及び冷媒充填に関わるコンプレッサとを備えた冷媒処理装置において、冷媒タンクから空調システムに冷媒を充填する動作が終了した後に、高圧ホース内に残留する冷媒を低圧ホースから空調システムに吸い込ませる低圧充填を実行し、該低圧充填の開始に際して、高圧側圧力センサで検出される圧力の変動状況に基づいて空調システムと高圧ホースとの接続状況を判別するチェック機能を備えたものである。
【0009】
チェック機能は、空調システムにおける冷凍機油の種別に応じて行い、チェック機能により、高圧ホースが空調システムに接続されていると判別されたとき、低圧充填を開始させず、高圧ホースを外す報知を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の装置は以上のように構成されるので、冷媒タンクから空調システムに冷媒を充填する動作が終了した後に、高圧ホース内に残留する冷媒を低圧ホースから空調システムに送る低圧充填を実行するにあたり、高圧側圧力センサで検出される圧力の変動状況に基づいて空調システムと高圧ホースとの接続状況を判別するチェック機能を備えたので、高圧ホースが接続されたまま低圧充填が実行されることがなくなる。また、チェック機能は、空調システムにおける冷凍機油の種別に応じて実行されるので、レシプロエンジンに採用されるクラッチ式コンプレッサであっても、ハイブリッド車や電気自動車で採用される電動式コンプレッサであっても接続チェックすることができる。更に、チェック機能により、高圧ホースが空調システムに接続されていると判別されたとき、低圧充填を開始させず、高圧ホースを外す警告を行うので、作業者に対して高圧ホースを外す報知ができ、確実に低圧充填を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】全自動コースの動作フローを示す説明図である。
【
図4】回収再生工程の動作を示すフローチャート図である。
【
図5】回収再生工程の冷媒の流れを示す説明図である。
【
図6】充填工程の動作を示すフローチャート図である。
【
図8】低圧充填の動作を示すフローチャート図である。
【
図9】低圧充填工程の冷媒の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の冷媒処理装置について説明する。
図1は本発明の冷媒処理装置を示す全体構成図である。
1は装置本体で、車両用空調システムUの高圧サービスバルブVH及び低圧サービスバルブVLと接続する高圧ホース2及び低圧ホース3を延出している。高圧ホース2及び低圧ホース3は、一端に逆止弁付のカプラ4,5を備え、他端を装置本体1内の高圧管路6及び低圧管路7にそれぞれ接続している。高圧管路6は、高圧用圧力センサ8を備え、冷媒から不純物や水分を除去するためのフィルタドライヤ9を通過した後、冷媒を減圧気化するためのエバポレータ10を経由して回収冷媒から冷凍機油を分離するオイルセパレータ11に至る第1高圧管路6aと、エバポレータ10を迂回してオイルセパレータ11に至る第2高圧管路6bとに分岐している。低圧管路7は、低圧用圧力センサ12を備え、接続管路13を介して高圧用圧力センサ8とフィルタドライヤ9間の高圧管路6に接続している。
【0013】
14はコンプレッサーで、入力側をオイルセパレータ11内に接続し、出力側を供給管路15を介して冷媒回収タンク16に接続している。供給管路15は、オイルセパレータ11内で熱交換するコンデンサ17を経由し冷媒回収タンク16に至る第1供給管路と15aと、オイルセパレータ11内のコンデンサ17を迂回して冷媒回収タンク16に至る第2供給管路15bとに分岐している。18は冷凍機油受けで、オイルセパレータ11で分離された冷凍機油を排油パイプ19を通じて排出される。20はロードセルで、冷媒回収タンク16に取り付けられ、タンク16内に貯留される冷媒の重量を計量する。
【0014】
21は充填管路で、冷媒回収タンク16と接続管路13を通じて高圧管路6に連結し、タンク16内の冷媒を車両用空調システムUに充填する。22は補充管路で、接続管路13に連結し、再生冷媒充填時に冷凍機油を補充するためのオイル缶23と、冷媒回収タンク16内の再生冷媒の量が不足した場合に新規な冷媒をタンク16内に補充するためのフロン缶24が接続される。
【0015】
25~33は管路切換用の電磁弁で、高圧管路6における高圧用圧力センサ8と接続管路13の連結位置との間に電磁弁25、第1高圧管路6aのエバポレータ10とオイルセパレータ11との間に電磁弁26、第2高圧管路6bに電磁弁27、低圧管路7における低圧ホース3の接続位置と低圧用圧力センサ12との間に電磁弁28、第2供給管路15bに電磁弁29、排油パイプ19に電磁弁30、充填管路21に電磁弁31、補充管路22におけるオイル缶23側に電磁弁32・フロン缶24側に電磁弁33を設けている。34~43は逆止弁で、第1供給管路15aに逆止弁34、第2供給管路15bにおける電磁弁29と冷媒回収タンク16との間に逆止弁35、補充管路22におけるオイル缶23側に逆止弁36・フロン缶24側に逆止弁37を設けている。
【0016】
図2は本発明の冷媒処理装置の制御系を示すブロック図である。
38は制御部で、高圧用圧力センサ8・低圧用圧力センサ12・コンプレッサ14・ロードセル20・電磁弁25~33・操作ボード39が接続され、操作ボード39からの指令に基づいて記憶されたプログラムを実行し、各センサ8・12からの信号に応じて装置の各機器を作動させる。操作ボード39は、冷媒充填量を表示する充填量表示部・高圧側の圧力を表示する高圧用圧力表示部・低圧側の圧力を表示する低圧用圧力表示部といった表示部40と、コース選択キー・冷凍機油選択キー・充填量設定キー・スタートキー・停止キーといった入力部41を備えている。
【0017】
続いて、このように構成する冷媒処理装置の動作について説明する。
本装置では、コース選択キーで全自動コースと工程単独コースが選択できる。このうち、全自動コースについて、以下に説明する。
全自動コースは、
図3に示すように、車両用空調システムUから冷媒を回収するとともに、装置本体1で冷媒と冷凍機油とを分離して冷媒の洗浄・補充、冷凍機油の交換等を行って再生する回収再生工程と、再生後の冷媒と冷凍機油を車両用空調システムUに充填する充填工程とが順次実行される。
【0018】
まず、作業者はユーザ作業として、車両エンジンと車両用空調システムUが停止してることを確認し、車両用空調システムUの高圧サービスバルブVH及び低圧サービスバルブVLに、装置本体1の高圧ホース2及び低圧ホース3をカプラ4・5によって接続する。また、操作ボード39の入力部41において、コースの選択、冷凍機油の選択、冷媒充填量Cの設定を行った後、スタートキーを入力する。
【0019】
<回収再生工程>
図4のフローチャート図、
図5の動作説明図。
回収再生が開始すると、高圧管路6の電磁弁25・第1高圧管路6aの電磁弁26を開き(1)、コンプレッサ14を駆動する(2)。コンプレッサ14の駆動に伴い、
図5(a)の[A]を通じて高圧ホース2から車両用空調システムUの冷媒が高圧液体の状態で導入され、フィルタドライヤ9で濾過及び除水された後、第1高圧管路6aのエバボレータ10で減圧気化され、オイルセパレータ11で冷凍機油が分離された後、第1供給管路15aを通じてオイルセパレータ11内のコンデンサ17で液化されて冷媒回収タンク16に回収される。このとき、オイルセパレータ10では、内蔵したコンデンサ17による冷媒の凝縮液化が行われるため、気化と液化が相乗的に作用して熱交換が効率良く実行される。
【0020】
高圧管路6の高圧用圧力センサ8で検出される圧力Pが第1所定圧P1以下になると(3)、空調システムUの高圧側に残留している冷媒が気体状態であると判断して、第1高圧管路6aの電磁弁26を閉じ(4)、第2高圧管路6bの電磁弁27と低圧管路7の電磁弁28を開き(5)、
図5(b)の[B]を通じて空調システムUの高圧側及び低圧側に残留している気体冷媒が冷媒回収タンク16に回収される。
【0021】
その後、低圧管路7の低圧用圧力センサ12で検出される圧力Pが第2所定圧P2以下になると(6)、ほぼ全量の冷媒回収が終了したと判断して、電磁弁27,28を閉じ(7)、コンプレッサ14を停止する(8)。冷媒を回収した後は、電磁弁30を開き(9)、
図5(b)の[C]を通じてオイルセパレータ11内の分離された冷凍機油を排出パイプ19を通じて冷凍機油受け18に排出し、所定時間T1が経過すると(10)、電磁弁30を閉じて(11)、回収再生工程が終了となる。
【0022】
<充填工程>
図6のフローチャート図、
図7の動作説明図。
充填工程が開始すると、第2高圧管路6bの電磁弁27と供給管路15bの電磁弁29と充填管路21の電磁弁31とを開き(12)、コンプレッサー14を駆動する(13)。コンプレッサー14の駆動に伴い、
図7(a)の[D]を通じて冷媒回収タンク16から取り出された冷媒が、オイルセパレータ11で熱交換されることなく、コンプレッサー14で加圧されて冷媒回収タンク16に循環することでタンク16内の圧力を上昇する。
【0023】
ロードセル20で冷媒回収タンク16内の冷媒が加圧量cだけ減少したことを検出すると(14)、冷媒回収タンク16内が加圧されたと判断して、コンプレッサー14を停止し(15)、第2高圧管路6bの電磁弁27と供給管路15bの電磁弁29を閉じ(16)、高圧管路6の電磁弁25を開いて(17)、
図7(b)の[E]を通じて車両用空調システムUの高圧側からタンク16内の圧力によって冷媒が充填される。また、電磁弁32を開いてオイル缶23から冷凍機油が供給される(18)。ロードセル20で冷媒回収タンク16内の冷媒が設定した冷媒充填量Cだけ減少したことを検出すると(19)、充填管路24の電磁弁25,31を閉じ(20)、充填工程を終了する。
【0024】
さて、車両エンジンと車両用空調システムUを停止した状態で行う液充填では、高圧ホース2内に冷媒が残留することがあり、設定した冷媒充填量Cが車両用空調システムUに充填されない可能性がある。これを加味して、冷媒充填量Cの設定を+α増量することも可能であるが、ホース内の残留量は車種や環境条件等で変化するため、増量分の設定は困難である。車両用空調システムUは、冷媒量が多くても少なくても本来の冷却性能が発揮できないため、本装置では高圧ホース2内の残留冷媒を低圧ホース3から車両用空調システムU側に送る低圧充填が実行される。
【0025】
<低圧充填工程>
図8のフローチャート図、
図9の動作説明図。
まず、ユーザ作業として、車両用空調システムUの高圧サービスバルブVHから高圧ホース2を外し、車両エンジンをかけ、車両用空調システムUを最大風量・最低温度設定・内気循環として作動することの音声出力がなされる(21)。ユーザ作業を終えた後、操作ボード39のスタートキーを入力すると(22)、高圧用圧力センサ8で検出される圧力変化に基づいて高圧ホース2が外されているかの接続チェックが実行される。
【0026】
接続チェックは、最初に設定した冷凍機油の種類毎に判定される。これは、冷凍機油としてPAGを用いるクラッチ式コンプレッサと、冷凍機油としてPOEを用いる電動式コンプレッサとで高圧用圧力センサ8の圧力変化に違いがあるためである。
【0027】
すなわち、冷凍機油としてPAGを用いるクラッチ式コンプレッサは、車内温度に応じてON-OFFするよう動作制御され、コンプレッサが作動すると高圧側の圧力が急激に上昇し、停止すると戻るといった変化を見せる。一方、冷凍機油としてPOEを用いる電動式コンプレッサは、車内温度に応じて回転数が無段階で変化するよう動作制御され、コンプレッサが作動すると高圧側の圧力が緩やかに上昇したのち回転数に合わせて微変動するといった変化を見せる。
【0028】
このため、冷凍機油としてPAGが選択されているとき、接続チェックは、高圧用圧力センサ8の圧力変化に基づいて判断され(23)、検出される圧力値pが上昇に転じたら、高圧ホース2が外されていないと判断し、処理(21)の音声出力に戻る。また、冷凍機油としてPOEが選択されているとき、接続チェックでは、チェック開始時点の高圧用圧力センサ8で検出される高圧ホース2内の圧力値を初期値p1として一旦記憶し(24)、高圧管路6の電磁弁25を瞬間的に開閉して高圧ホース2内の圧力を逃がした後(25)、高圧用圧力センサ8の圧力値が記憶した初期値p1に達するか否かで判断され(26)、検出された圧力値p2が初期値p1に達したら、高圧ホース2が外されていないと判断し、処理(21)の音声出力に戻る。
【0029】
接続チェックで高圧ホース2が外されていることを確認すると、低圧充填工程が開始する。低圧充填工程では、電磁弁25・28を開き(27)、高圧ホース2内の残留冷媒を低圧ホース3から車両用空調システムUに吸い込ませる。ユーザが操作ボード38において高圧用圧力センサ8の圧力値と、低圧用圧力センサ12の圧力値がほぼ均衡になってことを確認してスタートキーが押されると(28)、電磁弁25・28を閉じて(29)、低圧充填工程を終了する。
【0030】
こうして全ての工程が完了すると、ユーザが車両エンジンを停止した後、低圧ホース2を外し、全自動コースが完了となる。操作ボード38では、コース終了後には冷媒充填量・回収量等の確認ができる。
【0031】
このように本発明は、低圧充填工程の開始時に、高圧用圧力センサ8で検出される高圧側圧力に基づいて、高圧ホース2が車両用空調システムUから外されているかの接続チェックを実行するので、高圧ホース2が接続されたまま、誤って車両エンジンをかけて車両用空調システムUを作動させてしまっても、低圧充填工程が開始されることがなく、車両用空調システムUの破損を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0032】
1 装置本体
6 高圧管路
7 低圧管路
8 高圧用圧力センサ
12 低圧用圧力センサ
14 装置コンプレッサ
15 供給管路
16 冷媒回収タンク
21 充填管路
25~33 電磁弁
38 制御部
U 車両用空調システム
VH 高圧サービスバルブ
VL 低圧サービスバルブ