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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
   F24C 15/02 20060101AFI20220425BHJP
   F24C 3/00 20060101ALI20220425BHJP
   A47J 37/06 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
F24C15/02 F
F24C3/00 L
A47J37/06 361
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018029891
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019143923
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴大
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-200831(JP,A)
【文献】特開昭59-044530(JP,A)
【文献】実開昭61-089704(JP,U)
【文献】実開昭54-140969(JP,U)
【文献】特開2008-180430(JP,A)
【文献】特開2009-213684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/02
F24C 3/00
A47J 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を出し入れするための開口部が前面に形成されたグリル庫と、該グリル庫の前記開口部を開閉するグリル扉とを備える加熱調理器において、
前記グリル扉は、その前面側に嵌め込まれた前板部材と、該前板部材の前面側に空隙を存して対向するガード部材と、前記前板部材よりも下方位置で前方に突出する取っ手部とを備え、
前記空隙は、上部側で開放する上方開放部と、下部側で開放する下部開放部とを備え
前記空隙の前記下部開放部は、前記取っ手部に対向する上方位置で開放されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1記載の加熱調理器において
前記空隙の前記下部開放部は、前記取っ手部に対向する上方位置で、前記取っ手部の上面に対向して下向きに開放されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項1又は2記載の加熱調理器において、
前記前板部材と前記ガード部材との何れか一方又は両方は、少なくとも一方の面に複数のフィンからなる冷却用フィン部を備えていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載の加熱調理器において、
前記空隙内に、前記前板部材と前記ガード部材との何れか一方又は両方に接する複数のフィンを備える冷却用フィン部材が設けられていることを特徴する加熱調理器。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項記載の加熱調理器において、
前記グリル扉は、前記ガード部材を着脱自在に保持していることを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項記載の加熱調理器において、
前記前板部材と前記ガード部材との少なくとも何れか一方は、合成樹脂により形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項記載の加熱調理器であって、前記グリル扉が、前記グリル庫内部を臨む窓開口を備えるものにおいて、
前記前板部材は、厚み方向に重合された2枚以上の板材により形成されていて前記窓開口を閉塞し、前記グリル庫の内部に面する板材は金属により形成されていることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方がグリル扉により開閉されるグリル庫を備える加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加熱調理器として、例えばグリル付きコンロにおいては、グリルによる調理中にグリル扉の温度上昇を抑えるために、グリル扉に空気断熱層を設けたものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-213684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のものでは、グリルの連続使用や長時間のグリル調理によって空気断熱層の断熱効果が低下して、グリル扉の温度が上昇してしまう。このため、グリル調理中に使用者等がグリル扉に触れた場合に、使用者等が熱さによる不快感を感じてしまう不都合がある。
【0005】
上記の点に鑑み、本発明は、グリル扉の温度の上昇を確実に抑えることができ、使用者等が熱さによる不快感を感じることを防止することができる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、本発明は、被加熱物を出し入れするための開口部が前面に形成されたグリル庫と、該グリル庫の前記開口部を開閉するグリル扉とを備える加熱調理器において、前記グリル扉は、その前面側に嵌め込まれた前板部材と、該前板部材の前面側に空隙を存して対向するガード部材と、前記前板部材よりも下方位置で前方に突出する取っ手部とを備え、前記空隙は、上部側で開放する上方開放部と、下部側で開放する下部開放部とを備え、前記空隙の前記下部開放部は、前記取っ手部に対向する上方位置で開放されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、グリル扉の前板部材の前面側に、ガード部材を対向させて設け、前板部材とガード部材との間に空隙を設けたことにより、前板部材からガード部材への熱伝達を空隙により阻止することができる。このとき、前板部材とガード部材との間の空隙は、上方開放部と下部開放部とを備えることにより、空隙内を空気が滞りなく流通するので、前板部材とガード部材との間の熱こもりを防止することができる。そして、グリル扉の近傍等で熱に伴う上昇気流等が生じれば、当該気流の影響を受けて前板部材とガード部材との間を比較的多量の空気が通過し、前板部材とガード部材とが効率よく冷却される。これにより、グリル扉の温度の上昇を確実に抑えることができ、グリル調理中に使用者等がグリル扉に触れた際に、使用者等が熱さによる不快感を感じることを防止することができる。
【0009】
また、本発明によれば、グリル調理中に前板部材とガード部材との間の空隙で上昇気流が発生すると、下部開放部に向かう空気が、取っ手部の上面に接触して取っ手部が冷却される。これにより、取っ手部の温度上昇を抑えることができ、グリル扉の開閉操作の際に取っ手部を把持した使用者等が熱さによる不快感を感じることを確実に防止できる。
また、本発明においては、前記空隙の前記下部開放部は、前記取っ手部に対向する上方位置で、前記取っ手部の上面に対向して下向きに開放されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明において、前記前板部材と前記ガード部材との何れか一方又は両方は、少なくとも一方の面に複数のフィンからなる冷却用フィン部を備えていることを特徴とする。
【0011】
これによれば、グリル扉に沿って空気流が発生したとき、冷却用フィン部による冷却効果が得られ、前板部材やガード部材の温度上昇を確実に抑えることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記空隙内に、前記前板部材と前記ガード部材との何れか一方又は両方に接する複数のフィンを備える冷却用フィン部材が設けられていることを特徴する。
【0013】
前記空隙内の冷却用フィン部材によって前板部材とガード部材との冷却が促されるので、温度上昇を確実に抑えることができる。
【0014】
また、本発明において、前記グリル扉は、前記ガード部材を着脱自在に保持していることが好ましい。
【0015】
これによれば、前板部材とガード部材との間の空隙内に汚れが浸入する等によって、前板部材やガード部材に汚れが付着しても、ガード部材を取り外して容易に掃除を行うことができ、清潔な状態を維持することができる。
【0016】
また、本発明において、前記前板部材と前記ガード部材との少なくとも何れか一方は、耐熱性を有する合成樹脂により形成されていることを特徴とする。
【0017】
これによれば、前板部材とガード部材との少なくとも何れか一方のグリル庫からの熱の伝達を確実に抑制することができる。
【0018】
また、本発明における前記グリル扉が、前記グリル庫内部を臨む窓開口を備える場合、前記前板部材は、厚み方向に重合された2枚以上の板材により形成されていて前記窓開口を閉塞し、前記グリル庫の内部に面する板材は金属により形成されていることが好ましい。
【0019】
窓開口を介してグリル庫内に面している板材を板金製とすることにより、当該板材にグリル調理の際の汚れ等が付着しても容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態のグリル付きガスコンロの正面図。
図2】グリル扉を示す斜視図。
図3図2のグリル扉の要部の分解斜視図。
図4図2のIV-IV線断面図。
図5】嵌合部を示す説明的断面図。
図6】本実施形態におけるグリル扉の変形例を示す要部の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示す本実施形態のグリル付きガスコンロ1は、本発明の加熱調理器に相当するものである。図1に示すように、グリル付きガスコンロ1の前面側の中央部には、グリル扉2が設けられている。グリル扉2は、グリル付きガスコンロ1の内部に設けられた図示しないグリル庫に被加熱物を出し入れする際に、グリル庫の前面開口部を開閉する。
【0022】
グリル付きガスコンロ1は、システムキッチンのカウンタトップWに組み込むビルトイン式であり、上面を開放面とする箱形のコンロ本体3を備えている。コンロ本体3の上部には天板4が設けられ、天板4からはコンロ本体3に支持されたコンロバーナ5,6,7が上方に露出している。グリル付きガスコンロ1の前面側におけるグリル扉2の両側には、各コンロバーナ5,6,7用の点消火スイッチ8,9,10や、グリル庫内の図示しないグリルバーナ用の点消火スイッチ11等が設けられている。
【0023】
グリル扉2は、図2に示すように、扉本体12と、前板部材13と、ガード部材14とを備えている。扉本体12は、金属製の扉枠15と、扉枠15の下半部の前面側に取り付けられた合成樹脂製のパネル部材16とを備えている。パネル部材16には前方に張り出す取っ手部17が形成されている。
【0024】
図3に示すように、扉枠15の上半部には窓開口18が形成されている。そして、図4に示すように、前板部材13は、扉枠15の上縁部下側の溝部19と、パネル部材16の上面との間で扉本体12に嵌め込み支持されおり、窓開口18は前板部材13によって閉塞されている。
【0025】
前板部材13は、図3に示すように、板金製の第1板材20と、合成樹脂製の第2板材21とを重合することにより形成されている。窓開口18を介してグリル庫内に面している第1板材20を板金製とすることにより、グリル庫の調理の際に付着した汚れ等を除去し易い。
【0026】
また、第2板材21は、合成樹脂製とする以外に、金属製として放熱性能を向上させてもよい。なお、本実施形態の前板部材13は2枚構成であるが、前板部材の構成はこれに限らず、図示しないが、金属製の1枚板でもよく、異なる材質或いは同一材質の板材を3枚以上重ね合わせて形成してもよい。
【0027】
前板部材13が扉本体12の窓開口18を閉塞していることにより、調理中のグリル庫内部で発生する熱が窓開口18を通過することが抑えられ、窓開口18を透明のガラス板で閉塞した場合に比べて、グリル扉2の前方に向かう熱の放出が少ない。
【0028】
また、前板部材13の前面側には、図4に示すように、合成樹脂製のガード部材14が連結されている。なお、ガード部材14は、金属製の板材であってもよく、例えば、コンロ本体3やシステムキッチンのデザインに合わせた色や材質の板部材を採用することができる。
【0029】
ガード部材14と前板部材13との間には空隙22が形成されている。この空隙22は、その周囲(上下端及び左右端)が開放されている。空隙22の周囲が開放されていることにより、空隙22への熱のこもりが生じ難く、前板部材13からガード部材14への熱の伝達が阻止される。
【0030】
特に、ガード部材14と前板部材13との間の空隙22は、上端側に形成されている上端開放部22a(上方開放部)と下端側に形成されている下端開放部22b(下方開放部)とによって上下に連通していて、下方から上方への空気の流れが通過し易い。グリル扉2の前面側には、調理中のグリル庫内からの熱や、何れかのコンロバーナ5,6,7の燃焼時の燃焼空気の流れ等により、上昇気流が発生する。これに伴い、空隙22内に気流が生じ、ガード部材14と前板部材13とが冷却される。
【0031】
更に、空隙22の下端開放部22bは、取っ手部17の上面に対向して開放されている。このため、空隙22内を下方から上方に流れる空気は、取っ手部17の上面に接した後に下端開放部22bから空隙22内に入る。これによって、取っ手部17が冷却される。
【0032】
なお、ガード部材14と前板部材13との間の空隙22を通過する空気の流れは、熱による上昇気流に限るものではない。空隙22の周囲が開放されていることで、上下左右の各方向への熱の拡散が得られ、ガード部材14と前板部材13との冷却作用が極めて高い。
【0033】
ガード部材14と前板部材13とは、図5に示すように、嵌合部23により連結される。嵌合部23は、比較的柔軟な凸部材23aと凹部材23bとで構成されている。そして、ガード部材14を前板部材13から離反させることで、凸部材23aが凹部材23bから外れ、ガード部材14をグリル扉2から容易に取り外すことができる。これにより、ガード部材14と前板部材13との間の掃除が容易となる。
【0034】
なお、これ以外に、図示しないが、ガード部材14と前板部材13とをねじ止めしてもよい。ねじ止めによると、ガード部材14の取り外しに多少手間がかかるが、ガード部材14と前板部材13とを強固に連結することができるので、ガード部材14の脱落を確実に防止することができる。また、図示しないが、ガード部材14は、前板部材13に対向するように設けられていれば、前板部材13以外の扉本体12に着脱自在に取り付けてもよい。
【0035】
また、図示しないが、必要に応じて、前板部材13とガード部材14との間に板状の遮熱部材を配設してもよい。これによれば、前板部材13からガード部材14への熱の伝達を一層確実に阻止することができる。この遮熱部材は、単一のみ設けてもよく、複数設けてもよい。また、この遮熱部材は、前記空隙22を確保した上で前板部材13やガード部材14に密着させて設けてもよく、前板部材13とガード部材14との両方から離間して設けてもよい。
【0036】
また、図6に示すように、前板部材13の第2板材21に冷却用フィン部24を形成してもよい。更に、ガード部材14と前板部材13との間の空隙22内に、冷却用フィン部材25を設けてもよい。これにより、前板部材13が冷却され、ガード部材14の温度上昇を確実に抑えることができる。
【0037】
なお、図示しないが、前板部材13に替えて、ガード部材14に冷却用フィン部を形成してもよい。また、冷却用フィン部24を形成するか、冷却用フィン部材25を設けるかのうち、何れか一方を選択してもよい。冷却用フィン部24と冷却用フィン部材25との何れか一方のみ設けるだけでも、十分にガード部材14の温度上昇を抑えることができる。
【0038】
また、上記の実施形態においてはグリル扉2の扉枠15の上半部に窓開口18が形成されているものを挙げて説明したが、窓開口18が形成されていない扉枠15を採用することもでき、その場合には、図示しないが、第1板材20を設けなくてもよい。
【0039】
また、上記の実施形態では、取っ手部17が前板部材13の下方に設けられたグリル扉2を挙げて説明したが、図示しないが、取っ手部が前板部材の上方に設けられたグリル扉であっても、周囲が開放された空隙が設けられていることにより前板部材とガード部材との間の熱こもりを防止してグリル扉の温度の上昇を抑えることができる。
【0040】
また、上記の実施形態では、ガード部材14と前板部材13との間の空隙22が、上下方向の端部22a,22bを含む全周端で開放するものを挙げて説明したが、空隙22の開放形状は、これに限るものではない。図示しないが、例えば、ガード部材と前板部材とで全周端を閉塞した空隙を形成したとき、ガード部材の上端側の面に孔部を設けて上方開放部とし、ガード部材の下端側の面に孔部を設けて下方開放部としても、空隙内で下方から上方への空気の流れを形成することができる。
【0041】
更に、上記の本実施形態では、加熱調理器としてグリル付きガスコンロ1を挙げて説明したが、これ以外に、図示しないが、グリル付き誘導加熱調理器やグリル付きヒータ加熱調理器等であっても本発明を好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…グリル付きガスコンロ(加熱調理器)、2…グリル扉、12…扉本体、13…前板部材、14…ガード部材、17…取っ手部、18…窓開口、20…第1板材(板材)、21…第2板材(板材)、22…空隙、22a…上端開放部(上方開放部)、22b…下端開放部(下方開放部)、24…冷却用フィン部、25…冷却用フィン部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6