IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝キヤリア株式会社の特許一覧

特許7062475空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム
<>
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図1
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図2
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図3
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図4
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図5
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図6
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図7
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図8
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図9
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図10
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図11
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図12
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図13
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図14
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図15
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図16
  • 特許-空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/64 20180101AFI20220425BHJP
   F24F 11/65 20180101ALI20220425BHJP
【FI】
F24F11/64
F24F11/65
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018046903
(22)【出願日】2018-03-14
(65)【公開番号】P2019158257
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 健一
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 智子
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-196568(JP,A)
【文献】特開2011-069601(JP,A)
【文献】国際公開第2012/176690(WO,A1)
【文献】特開2012-225609(JP,A)
【文献】特開2012-247100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/64
F24F 11/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内に設置された空調機の省エネ運転が開始された後、在室者によって当該省エネ運転が解除されるまでの時間と、当該省エネ運転が解除された際の前記室内の空調状態との関係に対する在室者の不快度の推定値が定義された不快確率モデルを格納するモデル格納手段と、
前記空調機の省エネ運転中に、前記室内の現在の空調状態を取得する取得手段と、
前記取得された空調状態と、前記省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって得られる在室者の不快度に基づいて、当該省エネ運転を解除する制御手段と
を具備する空調制御装置。
【請求項2】
記制御手段は、前記取得された空調状態と前記省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって得られる在室者の不快度が予め定められた値以上である場合、前記省エネ運転を解除する
請求項1記載の空調制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記省エネ運転を解除する場合、前記省エネ運転中の空調機の設定を、前記省エネ運転が開始される前の設定に変更する請求項1または2に記載の空調制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記空調機の省エネ運転中に在室者によって前記空調機の設定が変更された場合、前記省エネ運転を解除する処理を実行しない請求項3記載の空調制御装置。
【請求項5】
過去に省エネ運転が開始された日時、前記在室者によって当該省エネ運転が解除された日時、及び前記室内の過去の空調状態を含むログデータを格納するログデータ格納手段と、
前記ログデータに基づいて前記不快確率モデルを構築する構築手段と
を更に具備する請求項1~4のいずれか1項に記載の空調制御装置。
【請求項6】
前記ログデータに含まれる前記室内の過去の空調状態は、前記室内の過去の温度を含み、
前記構築手段は、前記ログデータに含まれる前記室内の過去の温度の分散値に基づいて前記不快確率モデルを構築し、
前記取得手段は、前記室内の空調状態として、前記空調機の省エネ運転中の前記室内の温度の分散値を取得する
請求項5記載の空調制御装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の空調制御装置と、
前記制御手段によって出力された信号に基づいて運転する空調機と
を具備する空調システム。
【請求項8】
第1室内に設置された第1空調機及び第2室内に設置された第2空調機を制御する空調制御装置において、
前記第1空調機の省エネ運転が開始された後、在室者によって当該省エネ運転が解除されるまでの時間と、当該省エネ運転が解除された際の前記第1室内の空調状態との関係が定義された不快確率モデルを格納するモデル格納手段と、
前記第1空調機及び前記第2空調機を含む空調機全体における消費電力の上限を設定する設定手段と、
前記第1空調機及び前記第2空調機の省エネ運転中に、前記第1室内の空調状態を取得する取得手段と、
前記取得された空調状態と、前記第1空調機の省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって、前記第1室内における在室者の不快度を推定する推定手段と、
前記推定された不快度が予め定められた値以上である場合、前記第1空調機の省エネ運転を解除して通常運転させ、前記設定された消費電力量の上限から前記第1空調機を通常運転させるために必要な電力量を減算した電力量で前記第2空調機の省エネ運転を継続させる制御手段と
を具備する空調制御装置。
【請求項9】
室内に設置された空調機の省エネ運転が開始された後、在室者によって当該省エネ運転が解除されるまでの時間と、当該省エネ運転が解除された際の前記室内の空調状態との関係に対する在室者の不快度の推定値が定義された不快確率モデルを格納するモデル格納手段を有する空調制御装置が実行する空調制御方法であって、
前記空調機の省エネ運転中に、前記室内の現在の空調状態を取得するステップと、
前記取得された空調状態と、前記省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって得られる在室者の不快度に基づいて、当該省エネ運転を解除するステップと
を具備する空調制御方法。
【請求項10】
室内に設置されて空調機の省エネ運転が開始された後、在室者によって当該省エネ運転が解除されるまでの時間と、当該省エネ運転が解除された際の前記室内の空調状態との関係に対する在室者の不快度の推定値が定義された不快確率モデルを格納するモデル格納手段を有する空調制御装置のコンピュータによって実行されるプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記空調機の省エネ運転中に、前記室内の現在の空調状態を取得するステップと、
前記取得された空調状態と、前記省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって得られる在室者の不快度に基づいて、当該省エネ運転を解除するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、オフィス等の室内には空調機が設置されているが、この空調機においては省エネルギー化を実現するような運転(以下、空調機の省エネ運転と表記)が求められている。
【0003】
空調機の省エネ運転は、例えば消費電力に上限を設ける(セーブ運転)、または空調機の設定温度や風量を緩和すること等によって行われる。また、複数の空調機が設置されている場合には、当該複数の空調機の出力タイミングをずらすこと(ピークシフト)等によっても省エネルギー化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-175229号公報
【文献】特開2017-161216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
省エネルギー化の観点によれば、空調機の省エネ運転は、空調機が設置されている室内の快適性が維持される限り長時間継続されることが望ましい。
【0006】
しかしながら、空調機の省エネ運転においては、通常必要とされる電力よりも少ない電力で空調機を運転するため、室内の快適性は徐々に低下する。
【0007】
室内の快適性が徐々に低下し、当該室内にいる者(以下、在室者と表記)が不快と感じた場合には、当該在室者は例えばリモコン等を操作することによって空調機の省エネ運転を解除(停止)することができるが、当該省エネ運転を解除する操作を行うことは煩雑である。
【0008】
このため、空調機の省エネ運転の開始後、在室者が不快と感じるまでの間に当該省エネ運転を自動的に解除することが考えられる。
【0009】
しかしながら、在室者が不快と感じるまでの時間は、例えば空調機が設置されている環境に応じて例えば10分程度から数時間のように幅があるため、事前に把握することは困難である。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、空調機の省エネ運転の開始後、在室者が不快に感じる前に当該省エネ運転を解除することが可能な空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係る空調制御装置は、モデル格納手段と、取得手段と、制御手段とを具備する。前記モデル格納手段は、室内に設置された空調機の省エネ運転が開始された後、在室者によって当該省エネ運転が解除されるまでの時間と、当該省エネ運転が解除された際の前記室内の空調状態との関係に対する在室者の不快度の推定値が定義された不快確率モデルを格納する。前記取得手段は、前記空調機の省エネ運転中に、前記室内の現在の空調状態を取得する。前記制御手段は、前記取得された空調状態と、前記省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間とを前記不快確率モデルに適用することによって得られる在室者の不快度に基づいて、当該省エネ運転を解除する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る空調制御装置を含む空調システムの構成の一例を示す図。
図2】空調制御装置のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】空調機の運転モードが冷房モードである場合における省エネ運転と室内の空調状態との関係性を示す図。
図4】ログデータのデータ構造の一例を示す図。
図5】ログデータ取得処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図6】モデル構築処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図7】省エネ運転時間と平均室温との関係を平面散布図として可視化した図。
図8】省エネ運転毎に得られる省エネ運転時間と平均室温との関係を平面散布図として可視化した図。
図9】閾線を平面散布図上に示した図。
図10】不快度推定処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図11】省エネ運転毎に得られる省エネ運転時間と分散値との関係を閾線とともに平面散布図として可視化した図。
図12】室温以外のデータを用いる場合の空調制御装置10の構成の一例について説明するための図。
図13】1つの冷媒系統で複数の室内機を制御することができる空調機について説明するための図。
図14】第2の実施形態に係る空調制御装置を含む空調システムの構成の一例を示す図。
図15】設置データのデータ構造の一例を示す図。
図16】ログデータのデータ構造の一例を示す図。
図17】実消費量制御処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る空調制御装置を含む空調システムの構成の一例を示す。図1に示すように、空調システムは、空調制御装置10及び当該空調制御装置10と伝送路を介して接続される空調機を備える。
【0014】
本実施形態において、空調機は、例えばビル内の部屋等の室内(空間)に設置され、当該室内の空調を行う室内機を含む。本実施形態においては、図1に示すように、空調システムが室内20に設置されている空調機30A及び30Bを備えるものとして説明するが、当該空調システムに備えられる空調機は、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。
【0015】
なお、室内20は、家屋またはビル等の施設全体であってもよいし、施設内の一区域であって、床及び内壁等で区別された空間であってもよい。
【0016】
空調機30Aは、例えば室内20にいる者(以下、在室者と表記)によってリモコン40Aを介して入力された空調設定の設定値に応じて室内20の空調を行う。空調機30Aには室内20の温度(室温)を計測する室温計50Aが接続されており、空調機30Aは、室温計50Aによって計測された室温に基づいて空調を行う。
【0017】
同様に、空調機30Bは、例えば在室者によってリモコン40Bを介して入力された空調設定の設定値に応じて室内20の空調を行う。空調機30Bには室温計50Bが接続されており、空調機30Bは、室温計50Bによって計測された室温に基づいて空調を行う。
【0018】
上記した室温計50A及び50Bは、それぞれ空調機30A及び30Bに組み込まれていてもよいし、室内20の異なる位置に配置されていてもよい。更に、室温計50A及び50Bは、同一の室温計であっても構わない。
【0019】
空調制御装置10は、空調機30A及び30Bの運転を制御する(つまり、室内20の空調を制御する)ための装置であり、例えばビルの管理室等に設けられている。空調制御装置10は、例えばビル管理者が室内20の空調状態を把握する、または各空調機30A及び30Bの設定を変更する目的で導入されるBEMS(Building Energy Management System)等の機器であってもよいし、空調システムにおいて使用される他の機器であってもよい。
【0020】
図1に示すように、空調制御装置10は、ログデータ取得部11、ログデータ格納部12、モデル構築部13、モデル格納部14、不快度推定部15及び運転制御部16を含む。
【0021】
ログデータ取得部11は、空調機30A及び30Bの運転状況及び室内20の空調状態の履歴を含むログデータを、当該空調機30A及び30Bの各々から取得する。ログデータは、予め定められた間隔で取得され、ログデータ格納部12に格納される。すなわち、ログデータ格納部12には、空調機30A及び30Bの過去の運転状況及び室内20の過去の空調状態を含むログデータが蓄積されている。
【0022】
ここで、本実施形態において、各空調機30A及び30Bは、省エネ運転が可能であるものとする。本実施形態における省エネ運転とは省エネルギー化を実現する(つまり、空調システムが少ないエネルギーで稼働する)ような空調機の運転であり、例えば空調設定が緩和された状態の空調機の運転を含む。なお、本実施形態において「空調設定が緩和される」とは、空調機の運転モードが冷房モードである場合には当該空調機の設定温度が上げられることを含み、空調機の運転モードが暖房モードである場合には当該空調機の設定温度が下げられることを含む。なお、「空調設定が緩和される」には、例えば空調機から出力される風量を低減することが含まれていてもよい。本実施形態において、省エネ運転以外の運転は便宜的に通常運転と称する。
【0023】
各空調機30A及び30Bの省エネ運転は、例えば在室者によるリモコン40A及び40Bに対する操作に応じて開始されてもよいし、予め定められた条件等に従って開始されてもよい。省エネ運転が開始される条件には、例えば予め定められた時間となったこと及び室内20が予め定められた温度になったこと等が含まれる。また、例えば各空調機30A及び30Bの運転モードが冷房モードである場合、当該空調機30A及び30Bの設定温度が在室者により上げられる傾向のある時間帯となった際に省エネ運転が開始されてもよい。同様に、各空調機30A及び30Bの運転モードが暖房モードである場合には、当該空調機30A及び30Bの設定温度が在室者により下げられる傾向のある時間帯となった際に省エネ運転が開始されてもよい。設定温度が上げられる傾向のある時間帯及び設定温度が下げられる傾向のある時間帯は、例えば上記したログデータ格納部12に格納されているログデータまたはその他のデータから特定されてもよい。
【0024】
なお、上記した省エネ運転においては、通常必要とされるよりも少ないエネルギー(電力)で空調機が運転されるため、省エネ運転が継続されると室内の快適性は徐々に低下し、結果として、在室者はいずれ不快と感じるようになる。
【0025】
モデル構築部13は、ログデータ格納部12に格納されたログデータに基づいて不快確率モデルを構築する。不快確率モデルは、上記した省エネ運転が開始されてからの経過時間と室内20の空調状態とに基づく当該室内20における在室者の不快度(室内20において在室者が不快と感じている度合い)を推定するために用いられるモデルである。モデル構築部13によって構築された不快確率モデルは、モデル格納部14に格納される。なお、不快確率モデルの詳細については後述する。
【0026】
不快度推定部15は、上記した空調機30A及び30Bの省エネ運転中に、モデル格納部14に格納された不快確率モデルを用いて在室者の不快度を推定(評価)する。
【0027】
運転制御部16は、不快度推定部15によって推定された不快度に基づいて、空調機30A及び30Bの省エネ運転を解除する。この場合、運転制御部16は、空調機30A及び30Bの空調設定(例えば、設定温度)を強める方向に変更する。
【0028】
なお、本実施形態において「空調設定を強める」とは、上記した「空調設定が緩和される」の反対の意であり、例えば空調機の運転モードが冷房モードである場合には当該空調機の設定温度が下げられることを含み、空調機の運転モードが暖房モードである場合には当該空調機の設定温度が上げられることを含む。
【0029】
なお、ビル管理者は、空調制御装置10を操作することによって、ログデータ格納部12に格納されたログデータを空調制御装置10の表示装置に表示させることが可能である。また、ビル管理者は、上記したリモコン40A及び40Bと同様に空調制御装置10を操作することによって、空調機30A及び30Bの空調設定の設定値を変更するまたは省エネ運転を開始することも可能である。
【0030】
図2は、本実施形態に係る空調制御装置10のハードウェア構成の一例を示す。図2に示すように、空調制御装置10は、CPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104等を備える。
【0031】
CPU101は、空調制御装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するハードウェアプロセッサである。CPU101は、ストレージデバイスである不揮発性メモリ102から主メモリ103にロードされる様々なプログラムを実行する。CPU101によって実行されるプログラムには、オペレーティングシステム及び空調機30A及び30Bの運転を制御するためのアプリケーションプログラム(以下、空調制御プログラムと表記)等が含まれる。なお、CPU101は、例えばハードウェア制御のためのプログラムである基本入出力システム(BIOS)等も実行する。
【0032】
なお、図2においては、空調制御装置10がCPU101を備えるものとして説明するが、空調制御装置10は、上記したプログラムを実行可能であれば、CPU101以外のプロセッサまたはコントローラ等を備えていてもよい。
【0033】
本実施形態において、上記した図1に示すログデータ取得部11、モデル構築部13、不快度推定部15及び運転制御部16の一部または全ては、上記したCPU101に空調制御プログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現されるものとする。なお、これらの各部11、13、15及び16の一部または全ては、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせ構成として実現されてもよい。
【0034】
また、本実施形態において、図1に示すログデータ格納部12及びモデル格納部14は、上記した不揮発性メモリ102等の記憶装置によって実現される。
【0035】
通信デバイス104は、外部装置と例えば有線または無線による通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0036】
図2においては、便宜的に空調制御装置10がCPU101、不揮発性メモリ102、主メモリ103及び通信デバイス104を備えるものとして説明したが、空調制御装置10は、上記したようにログデータを表示するための表示装置及び各空調機30A及び30Bの空調設定の設定値を変更するための入力装置等を更に備えていてもよい。
【0037】
以下、図1に示すログデータ格納部12に格納されるログデータについて説明する。図3は、空調機30A及び30Bの運転モードが冷房モードである場合における、上記した省エネ運転と室内20の空調状態との関係性を示す。
具体的には、図3の上段は、空調機30Aの設定温度の推移を可視化して示している。なお、図3の上段の第1省エネ運転フラグは、後述するように空調機30Aが省エネ運転中であるか否かを示している。図3の中段は、空調機30Bの設定温度の推移を可視化して示している。なお、図3の中段の第2省エネ運転フラグは、後述す量に空調機30Bが省エネ運転中であるか否かを示している。図3の下段は、空調機30A及び30Bの設定温度を上げ下げしたことに伴う室内20の温度(室温)の平均値の推移を可視化して示している。
【0038】
なお、図3等において説明する室温の平均値は、室温計50A及び50Bによって計測された室内20の温度分布の平均値であるものとする。
【0039】
図3に示す例では、空調機30A及び30Bによって行われる空調によって室内20の温度が下降した10時30分の時点で例えば空調機30Aの省エネ運転が開始された(つまり、空調機30Aの設定温度が上げられた)ことが示されている。空調機30Aの省エネ運転中には、室内20の温度の平均値は徐々に上昇する。
【0040】
ここで、室温の平均値が26℃に達した11時25分の時点で、室内20の在室者が室温が高いことによって不快であると感じたものとする。この場合、在室者は、リモコン40Aを操作することによって空調機30Aの省エネ運転を解除する(つまり、空調機30Aの設定温度を下げる)ことができる。これによれば、室温は再び下降し、室内20の快適性を向上させることができる。
【0041】
なお、上記した10時30分から11時25分までの間の省エネ運転は空調機30Aのみが行うものとし、空調機30Bの設定温度は変更されていないものとする。
【0042】
一方、空調機30A及び30Bによって行われる空調によって室内20の温度が下降した13時35分の時点で例えば空調機30Bの省エネ運転が開始された(つまり、空調機30Bの設定温度が上げられた)ことが示されている。空調機30Bの省エネ運転中には、室内20の温度の平均値は徐々に上昇する。
【0043】
ここで、室温の平均値が27℃に達した14時20分の時点で、室内20の在室者が室温が高いことによって不快であると感じたものとする。この場合、在室者は、リモコン40Bを操作することによって空調機30Bの省エネ運転を解除する(つまり、空調機30Bの設定温度を下げる)ことができる。これによれば、室温は再び下降し、室内20の快適性を向上させることができる。
【0044】
なお、上記した13時35分から14時20分までの間の省エネ運転は空調機30Bのみが行うものとして、空調機30Aの設定温度は変更されていないものとする。
【0045】
空調機30A及び30Bが省エネ運転を行うことができる場合には、図3において示すように在室者が快適と感じているか不快と感じているかによって省エネ運転の開始及び解除が繰り返される場合が多い。
【0046】
本実施形態においては、上記したような空調機30A及び30Bの運転状況及び室内20の空調状態(例えば、室温)の履歴がログデータとして空調制御装置10(ログデータ格納部12)に蓄積される。
【0047】
図4は、図3に示すように空調機30A及び30Bが運転された場合にログデータ取得部11によって取得されてログデータ格納部12に格納されたログデータのデータ構造の一例を示す。
【0048】
図4に示すように、ログデータには、時刻に対応づけて第1設定温度、第1室温、第1省エネ運転フラグ、第2設定温度、第2室温、第2省エネ運転フラグ及び平均室温が含まれる。
【0049】
時刻は、例えばログデータが取得された(またはログデータ格納部12に格納された)時刻である。なお、図4においては便宜的に時刻が示されているが、ログデータに含まれる時刻は、日付を含む概念(つまり、日時)であるものとする。
【0050】
第1設定温度は、空調機30Aの設定温度である。第1室温は、室温計50Aによって計測された室内20の温度である。第1省エネ運転フラグは、上記したように空調機30Aが省エネ運転中であるか否かを示す。第1省エネ運転フラグが「0」である場合には空調機30Aが省エネ運転中でないことを示し、第1省エネ運転フラグが「1」である場合には空調機30Aが省エネ運転中であることを示す。
【0051】
第2設定温度は、空調機30Bの設定温度である。第2室温は、室温計50Bによって計測された室内20の温度である。第2省エネ運転フラグは、上記したように空調機30Bが省エネ運転中であるか否かを示す。第2省エネ運転フラグが「0」である場合には空調機30Bが省エネ運転中でないことを示し、第2省エネ運転フラグが「1」である場合には空調機30Bが省エネ運転中であることを示す。平均室温は、第1室温及び第2室温の平均値である。
【0052】
図4に示す例では、ログデータ格納部12には、ログデータ121が格納されている。ログデータ121は、時刻「10:15」、第1設定温度「24」、第1室温「24.5」、第1省エネ運転フラグ「0」、第2設定温度「24」、第2室温「24.5」、第2省エネ運転フラグ「1」及び平均室温「24.50」を含む。このログデータ121によれば、10時15分の時点で、空調機30Aの設定温度が24℃であり、室温計50Aによって計測された室温が24.5℃であり、空調機30Bの設定温度が24℃であり、室温計50Bによって計測された室温24.5℃であり、平均室温が24.50℃であることが示されている。また、ログデータ121によれば、空調機30A及び30Bは省エネ運転中でないことが示されている。
【0053】
次に、ログデータ格納部12に格納されているログデータ122について説明する。ログデータ122は、時刻「10:30」、第1設定温度「27」、第1室温「24.0」、第1省エネ運転フラグ「1」、第2設定温度「24」、第2室温「24.5」、第2省エネ運転フラグ「0」及び平均室温「24.25」を含む。このログデータ122によれば、10時30分の時点で、空調機30Aの設定温度が27℃であり、室温計50Aによって計測された室温が24.0℃であり、空調機30Bの設定温度が24℃であり、室温計50Bによって計測された室温24.5℃であり、平均室温が24.25℃であることが示されている。また、ログデータ122によれば、空調機30Aは省エネ運転中であり、空調機30Bは省エネ運転中でないことが示されている。
【0054】
ここで、ログデータ122の前にログデータ格納部12に格納されたログデータ(つまり、時刻「10:25」を含むログデータ)に含まれる第1省エネ運転フラグは「0」である。一方、ログデータ122に含まれる第1省エネ運転フラグは「1」である。これによれば、10時25分から10時30分の間に空調機30Aの省エネ運転が開始されたことを判別することができる。
【0055】
これに対して、ログデータ123は、時刻「11:25」、第1設定温度「26」、第1室温「26.5」、第1省エネ運転フラグ「0」、第2設定温度「24」、第2室温「25.5」、第1省エネ運転フラグ「0」及び平均室温「26.00」を含む。このログデータ123によれば、11時25分の時点で、空調機30Aの設定温度が26℃であり、室温計50Aによって計測された室温が26.5℃であり、空調機30Bの設定温度が24℃であり、室温計50Bによって計測された室温25.5℃であり、平均室温が26.00℃であることが示されている。また、ログデータ123によれば、空調機30A及び30Bは省エネ運転中でないことが示されている。
【0056】
ここで、ログデータ123の1時刻前にログデータ格納部12に格納されたログデータ(つまり、時刻「11:20」を含むログデータ)に含まれる第1省エネ運転フラグは「1」である。一方、ログデータ123に含まれる第1省エネ運転フラグは「0」である。これによれば、11時20分から11時25分までの間に空調機30Aの省エネ運転が解除されたことを判別することができる。
【0057】
なお、詳細については省略するが、図4に示すログデータ124によれば13時30分から13時35分までの間に空調機30Bの省エネ運転が開始されたことを判別することができ、ログデータ125によれば14時15分から14時20分までの間に空調機30Bの省エネ運転が解除されたことを判別することができる。
【0058】
このようにログデータ格納部12に格納されたログデータによれば、各空調機30A及び30Bの省エネ運転が開始された時刻(空調設定が緩和された時刻)、当該省エネ運転が解除された時刻(空調設定が強められた時刻)及びその間の室内20の空調状態(例えば、平均室温)等を特定することができる。
【0059】
ここでは、ログデータ121~125についてのみ説明したが、他のログデータについても同様である。また、図4においては、ログデータ格納部12に格納されているログデータの一部のみが示されているが、ログデータ格納部12には、各空調機30A及び30Bの運転中に取得された全てのログデータが格納されているものとする。なお、ログデータ格納部12に格納されているログデータのうち、当該ログデータ格納部12に格納されてから所定期間が経過したログデータについては、破棄されるようにしてもよい。
【0060】
また、図4においては時刻が5分間隔となるようにログデータ格納部12にログデータが格納されている(つまり、5分間隔でログデータが蓄積されている)が、上記した省エネ運転の開始及び解除を判別することができる程度の間隔であれば、異なる間隔でログデータが蓄積されるようにしてもよい。また、ログデータが蓄積される間隔は、一定の時間間隔でなく、不定期であってもよい。
【0061】
また、本実施形態においては、省エネ運転フラグ(第1及び第2省エネ運転フラグ)が空調機30A及び30B毎に管理されるものとして説明したが、当該省エネ運転フラグは、空調機が設置される部屋(室内)毎に管理されていてもよい。
【0062】
次に、本実施形態に係る空調制御装置10の動作について説明する。まず、図5のフローチャートを参照して、ログデータを取得する際の処理(以下、ログデータ取得処理と表記)について説明する。なお、ログデータ取得処理は、空調制御装置10に含まれるログデータ取得部11によって予め定められた間隔(例えば、5分間隔)で実行される。ここでは、空調機30A及び30Bの運転モードは冷房モードであるものとして説明する。
【0063】
ログデータ取得部11は、当該空調機30Aの設定温度及び室温計50Aによって計測された室温と、当該空調機30Bの設定温度及び室温計50Bによって計測された室温とを、空調機30A及び30Bの各々から取得する(ステップS1)。
【0064】
次に、ログデータ取得部11は、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度及びログデータ格納部12に格納されているログデータのうちの直近(現時点から最も近い最新)のログデータに基づいて、第1省エネ運転フラグを決定する(ステップS2)。
【0065】
以下、ステップS2の処理について具体的に説明する。ここでは、空調機30Aが省エネ運転中でない場合と空調機30Aが省エネ運転中である場合とに分けて説明する。
【0066】
なお、空調機30A及び30Bが省エネ運転中であるか否かは、直近のログデータに含まれる第1及び第2省エネ運転フラグに基づいて判別可能である。
【0067】
まず、空調機30Aが省エネ運転中でない場合におけるステップS2の処理について説明する。
【0068】
空調機30Aが省エネ運転中でない場合において、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度が直近のログデータに含まれる第1設定温度よりも高い、すなわち、当該空調機30Aの設定温度が上げられた(空調設定が緩められた)場合には、空調機30Aの省エネ運転が開始されたと判定される。一方、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度が直近のログデータに含まれる第1設定温度と同じまたは低い場合には、当該空調機30Aの設定温度は上げられていないため、空調機30Aの省エネ運転は開始されていない(つまり、通常運転が継続されている)と判定される。
【0069】
上記したように空調機30Aの省エネ運転が開始されたと判定された場合、ステップS2においては、第1省エネ運転フラグとして「1」が決定される。一方、空調機30Aの省エネ運転が開始されていないと判定された場合、ステップS2においては、第1省エネ運転フラグとして「0」が決定される。
【0070】
次に、空調機30Aが省エネ運転中である場合におけるステップS2の処理について説明する。
【0071】
空調機30Aが省エネ運転中である場合において、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度が直近のログデータに含まれる第1設定温度よりも低い、すなわち、当該空調機30Aの設定温度が下げられた(空調設定が強められた)場合には、空調機30Aの省エネ運転が解除されたと判定される。一方、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度が直近のログデータに含まれる第1設定温度と同じまたは高い場合には、当該空調機30Aの設定温度は下げられていないため、空調機30Aの省エネ運転は解除されていない(つまり、省エネ運転が継続されている)と判定される。
【0072】
上記したように空調機30Aの省エネ運転が解除されたと判定された場合、ステップS2においては、第1省エネ運転フラグとして「0」が決定される。一方、空調機30Aの省エネ運転が解除されていないと判定された場合、ステップS2においては第1省エネ運転フラグとして「1」が決定される。
【0073】
次に、ログデータ取得部11は、ステップS1において取得された空調機30Bの設定温度及びログデータ格納部12に格納されているログデータのうちの直近のログデータに基づいて、第2省エネ運転フラグを決定する(ステップS3)。
【0074】
なお、ステップS3の処理は、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度及び直近のログデータに含まれる第1設定温度を、ステップS1において取得された空調機30Bの設定温度及び直近のログデータに含まれる第2設定温度とする点以外はステップS2の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0075】
ログデータ取得部11は、ステップS1において取得された室温(室温計50A及び50Bによって計測された室温)の平均値を平均室温として算出する(ステップS4)。
【0076】
ステップS4の処理が実行されると、ログデータ取得部11は、例えば現在時刻に対応づけて、ステップS1において取得された空調機30Aの設定温度(第1設定温度)、室温計50Aによって計測された室温(第1室温)、ステップS2において決定された第1省エネ運転フラグ、ステップS1において取得された空調機30Bの設定温度(第2設定温度)、室温計50Bによって計測された室温(第2室温)、ステップS2において決定された第2省エネ運転フラグ及びステップS4において算出された平均室温を含むログデータを、ログデータ格納部12に格納する(ステップS5)。
【0077】
上記したログデータ取得処理によれば、空調機30A及び30Bからの設定温度及び室温に基づいて、図4において説明したようなログデータを自動的に取得してログデータ格納部12に格納することができる。
【0078】
ここでは、空調機30A及び30Bの運転モードが冷房モードである場合について説明したが、当該運転モードが暖房モードである場合には、ステップS2及びS3における第1及び第2省エネ運転フラグの決定処理が異なる。すなわち、例えばステップS2においては、空調機30Aが省エネ運転中でない場合において当該空調機30Aの設定温度が下げられた場合には省エネ運転が開始されたと判定され、第1省エネ運転フラグとして「1」が決定される。一方、空調機30Aが省エネ運転中である場合において当該空調機30Aの設定温度が上げられた場合には省エネ運転が解除されたと判定され、第1省エネ運転フラグとして「0」が決定される。なお、ステップS3についても同様である。
【0079】
また、ログデータ取得処理が実行される際において、空調機30A及び30Bが省エネ運転中であるか否かは、ログデータ格納部12に格納されているログデータのうちの直近のログデータに含まれる第1及び第2省エネ運転フラグに基づいて判別可能であるものとして説明したが、空調機30A及び30Bの電源がオンされた直後等であって、直近のログデータが存在しない場合には、例えば第1及び第2省エネ運転フラグ「0」を含むログデータが格納される(つまり、ステップS2及びS3においては第1及び第2省エネ運転フラグとして「0」が決定される)ものとする。なお、この場合における第1及び第2省エネ運転フラグは、例えば空調機30A及び30Bの設定温度及び運転モード等に基づいて決定されてもよい。
【0080】
また、上記したログデータ取得処理においては空調制御装置10側で省エネ運転フラグを決定するものとして説明したが、例えば空調機30A及び30Bが省エネ運転中であるか否かを示す情報が当該空調機30A及び30Bから取得される構成であっても構わない。
【0081】
ここで、本実施形態に係る空調制御装置10は、上記したログデータに基づいて不快確率モデルを構築し、当該構築された不快確率モデルを用いて在室者の不快度を推定することによって、各空調機30A及び30Bの省エネ運転を解除することができる。
【0082】
以下、本実施形態において不快確率モデルを構築する処理(以下、モデル構築処理と表記)及び在室者の不快度を推定する処理(以下、不快度推定処理と表記)について説明する。
【0083】
まず、図6のフローチャートを参照して、モデル構築処理の処理手順について説明する。図6に示す処理は、空調制御装置10に含まれるモデル構築部13によって実行される。ここでは、ログデータ格納部12には、複数のログデータが既に格納(蓄積)されているものとする。
【0084】
モデル構築部13は、ログデータ格納部12に格納されているログデータを取得する(ステップS11)。
【0085】
次に、モデル構築部13は、取得されたログデータに基づいて、空調機30A及び30B毎に省エネ運転開始時時刻(日時)及び省エネ運転解除時刻(日時)を特定する(ステップS12)。省エネ運転開始時刻は上記したように省エネ運転が開始された時刻であり、省エネ運転解除時刻は当該省エネ運転が解除された時刻である。
【0086】
なお、空調機30Aの省エネ運転開始時刻は、ログデータに含まれる第1省エネ運転フラグが「0」から「1」に変更された時刻に相当する。一方、空調機30Aの省エネ運転解除時刻は、ログデータに含まれる第1省エネ運転フラグが「1」から「0」に変更された時刻に相当する。また、空調機30Bの省エネ運転開始時刻は、ログデータに含まれる第2省エネ運転フラグが「0」から「1」に変更された時刻に相当する。一方、空調機30Bの省エネ運転解除時刻は、ログデータに含まれる第2省エネ運転フラグが「1」から「0」に変更された時刻に相当する。
【0087】
モデル構築部13は、ステップS12において特定された省エネ運転開始時刻から省エネ運転解除時刻までの時間(以下、省エネ運転時間と表記)を算出する(ステップS13)。省エネ運転時間は、省エネ運転が開始された後、在室者が不快と感じて設定温度を変更する(つまり、省エネ運転を解除する)操作が行われるまでの時間に相当する。
【0088】
ステップS13の処理が実行されると、モデル構築部13は、省エネ運転解除時刻の時点での平均室温を取得する(ステップS14)。この場合、モデル構築部13は、省エネ運転解除時刻を含むログデータに含まれる平均室温を取得する。
【0089】
ここで、上記したステップS12~S14の処理について、図4を参照して具体的に説明する。
【0090】
まず、図4に示すログデータによれば、ステップS12においては、第1省エネ運転フラグが「0」から「1」に変更されているログデータ122に含まれる時刻である10時30分が空調機30Aの省エネ運転開始時刻として特定される。また、第1省エネ運転フラグが「1」から「0」に変更されているログデータ123に含まれる時刻である11時25分が空調機30Aの省エネ運転解除時刻として特定される。この場合、ステップS13においては、空調機30Aの省エネ運転時間としては55分が算出される。この場合、ステップS14においては、ログデータ123に含まれる平均室温である26.00℃が取得される。
【0091】
同様に、ステップS12においては、第2省エネ運転フラグが「0」から「1」に変更されているログデータ124に含まれる時刻である13時35分が空調機30Bの省エネ運転開始時刻として特定される。また、第2省エネ運転フラグが「1」から「0」に変更されているログデータ125に含まれる時刻である14時20分が空調機30Bの省エネ運転解除時刻として特定される。この場合、ステップS13においては、空調機30Bの省エネ運転時間として45分が算出される。この場合、ステップS14においては、ログデータ125に含まれる平均室温である27.00℃が取得される。
【0092】
ここで、図7は、ステップS13において算出された省エネ運転時間とステップS14において取得された平均室温(つまり、省エネ運転解除時の平均室温)との関係を平面散布図として可視化した図である。図7においては、平均室温を縦軸、省エネ運転時間を横軸としている。
【0093】
図7における×印201は、上記した図4に示すログデータから算出される空調機30Aの省エネ運転時間「55分」及び当該空調機30Aの省エネ運転解除時の平均室温「26.00℃」を表している。
【0094】
また、図7における×印202は、図4に示すログデータから算出される空調機30Bの省エネ運転時間「45分」及び当該空調機30Bの省エネ運転解除時の平均室温「27.00℃」を表している。
【0095】
なお、図4に示すログデータでは各空調機30A及び30Bの省エネ運転の回数は1回ずつであるが、ログデータ格納部12に格納されている全てのログデータが取得される期間中において、当該省エネ運転は複数回繰り返される。このため、図6に示すモデル構築処理においては、ステップS11において取得されるログデータから特定される省エネ運転毎にステップS12~S14の処理が実行される。
【0096】
図8は、省エネ運転毎にステップS12~S14の処理が実行されることによって得られる省エネ運転時間と平均室温との関係を平面散布図として可視化した図である。
【0097】
ここで、上記したように省エネ運転は在室者が不快と感じた場合に解除されることを鑑みると、図8における×印の各々は、省エネ運転の開始後、在室者が不快と感じる(省エネ運転を解除する)までの時間とその時点での平均室温との関係を示している。換言すれば、図8は、省エネ運転が開始されてからどの程度の時間が経過したときに、どの程度の室温になっていれば、在室者が不快と感じるかということを表しているといえる。
【0098】
すなわち、図8によれば、省エネ運転開始後、室温が高いと省エネ運転が早期に解除される(つまり、在室者が早期に不快と感じる)ことがわかる。一方、室温が十分低いと、省エネ運転は解除されにくい(つまり、省エネ運転であっても在室者が不快と感じにくい)ことがわかる。
【0099】
これにより、例えば省エネ運転時間が短く、平均室温が低い状態であるほど、在室者の不快度(在室者によって省エネ運転が解除される確率)は低いと考えられる。一方、省エネ運転時間が長く(省エネ運転が開始されてから時間が経過しており)、平均室温が高い状態であるほど、在室者の不快度は高いと考えられる。
【0100】
本実施形態においては、このような観点に基づいて、例えば省エネ運転時間(つまり、省エネ運転が開始されてからの経過時間)と当該省エネ運転が解除された際の平均室温との関係が定義された不快確率モデルが構築されるものとする。
【0101】
再び図6に戻ると、モデル構築部13は、図8に示すような各省エネ運転時間と当該省エネ運転解除時の平均室温との関係(平面散布図における座標)において、在室者の不快度を推定するための閾線を生成する(ステップS15)。なお、ステップS15において生成される閾線は、在室者が不快と感じる確率が低い状態と在室者が不快と感じる確率が高い状態とを分類することによって得られる例えば曲線である。この閾線を生成するための分類手法としては、例えば1-クラスサポートベクターマシンのような手法を利用することができるが、他の分類手法が利用されてもよい。
【0102】
図9は、ステップS15において生成された閾線を図8に示す平面散布図上に示した図である。図9に示す閾線301によれば、当該閾線301よりも下の領域(省エネ運転時間及び平均室温)では在室者の不快度は低いと推定され、当該閾線301よりも上の領域(省エネ運転時間及び平均室温)では在室者の不快度は高いと推定される。
【0103】
モデル構築部13は、このような閾線を用いて、上記した省エネ運転時間と、省エネ運転解除時の平均室温と、当該省エネ運転時間及び当該平均室温に対応する不快度(省エネ運転が解除される確率)との関係が定義された不快確率モデルを構築する(ステップS16)。
【0104】
なお、ステップS16において構築される不快確率モデルは、図7図9において説明した省エネ運転時間と省エネ運転解除時の平均室温との関係に対して不快度を付加した3Dモデルである。この不快確率モデルにおいては、上記した閾線を境界として、例えば省エネ運転時間が短く、平均室温が低い状態であるほど、低い不快度が出力され、省エネ運転時間が長く、平均室温が高い状態であるほど、高い不快度が出力されるように規定されている。
【0105】
ステップS16において生成された不快確率モデルは、モデル格納部14に格納(登録)される(ステップS17)。
【0106】
なお、上記したモデル構築処理(図6に示す処理)は、例えば所定数のログデータがログデータ格納部12に格納された場合に実行されるようにしてもよいし、例えば省エネ運転が解除されたことを判別可能なログデータ(例えば、図4に示すログデータ123及び125等)がログデータ格納部12に格納された際に実行されるようにしてもよい。また、精度の高い不快確率モデルを生成するために必要な数のログデータがログデータ格納部12に格納されていない初期の段階では、他の部屋(空間)またはビル等から取得されたログデータを予め用意しておき、当該ログデータに基づいて不快確率モデルが構築されるようにしてもよい。
【0107】
また、モデル構築処理は、空調機の運転モード毎に実行されるものとする。すなわち、本実施形態においては、空調機30A及び30Bが冷房モードで運転している場合に取得されたログデータに基づいて冷房モード用の不快確率モデルが構築され、当該空調機30A及び30Bが暖房モードで運転している場合に取得されたログデータに基づいて暖房モード用の不快確率モデルが構築される。
【0108】
また、本実施形態においてはモデル構築処理が空調制御装置10において実行されるものとして説明したが、当該モデル構築処理は、空調制御装置10の外部で実行されるようにしてもよい。この場合、空調制御装置10の外部で実行されたモデル構築処理によって構築された不快確率モデルがモデル格納部14に格納されていればよい。
【0109】
また、モデル格納部14に格納された不快確率モデルは、当該不快確率モデルが構築された後にログデータ格納部12に新たに格納されたログデータに基づいて更新されるようにしてもよい。
【0110】
次に、図10のフローチャートを参照して、不快度推定処理の処理手順について説明する。図10に示す処理は、空調制御装置10に含まれる不快度推定部15及び運転制御部16によって実行される。ここでは、モデル格納部14には、上記したモデル構築処理が実行されることによって構築された不快確率モデルが格納されているものとする。
【0111】
まず、不快度推定部15は、ログデータ格納部12に格納されているログデータを参照して、空調機30Aまたは空調機30Bが省エネ運転中であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0112】
ステップS21においては、ログデータ格納部12に格納されているログデータのうちの直近のログデータに含まれる第1省エネ運転フラグが「1」である場合には空調機30Aが省エネ運転中であると判定され、当該直近のログデータに含まれる第2省エネ運転フラグが「1」である場合には空調機30Bが省エネ運転中であると判定する。
【0113】
ステップS21の処理について図4を用いて具体的に説明すると、例えば10時58分の時点で図10の処理が実行されているものとすると、直近のログデータは時刻「10:55」を含むログデータであり、当該ログデータに含まれる第1省エネ運転フラグは「1」である。この場合、空調機30Aは省エネ運転中であると判定される。なお、この場合における第2省エネ運転フラグは「0」であるので、空調機30Bは省エネ運転中ではない。
【0114】
同様に、例えば13時58分の時点で図10の処理が実行されているものとすると、直近のログデータは時刻「13:55」を含むログデータであり、当該ログデータに含まれる第2省エネ運転フラグは「1」である。この場合、空調機30Bは省エネ運転中であると判定される。なお、この場合における第1省エネ運転フラグは「0」であるので、空調機30Aは省エネ運転中ではない。
【0115】
一方、例えば11時28分の時点で図10の処理が実行されているものとすると、直近のログデータは時刻「11:25」を含むログデータであり、当該ログデータに含まれる第1及び第2省エネ運転フラグは共に「0」である。この場合、空調機30A及び30Bは省エネ運転中でないと判定される。
【0116】
同様に、例えば14時28分の時点で図10の処理が実行されているものとすると、直近のログデータは時刻「14:25」を含むログデータであり、当該ログデータに含まれる第1及び第2省エネ運転フラグは共に「0」である。この場合、空調機30A及び30Bは省エネ運転中でないと判定される。
【0117】
ステップS21において空調機30Aまたは30Bが省エネ運転中であると判定された場合(ステップS11のYES)、不快度推定部15は、ログデータ格納部12から、直近のログデータ(以下、第1ログデータと表記)及び省エネ運転フラグ(第1または第2省エネ運転フラグ)が「0」から「1」に変更されたログデータ(以下、第2ログデータと表記)を取得する(ステップS22)。
【0118】
ここで、第1ログデータに含まれる時刻は、現在時刻に相当する。一方、第2ログデータに含まれる時刻は、省エネ運転が開始された時刻(省エネ運転開始時刻)に相当する。
【0119】
これにより、不快度推定部15は、第1ログデータに含まれる時刻及び第2ログデータに含まれる時刻に基づいて現時点での省エネ運転時間(省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間)を算出する(ステップS23)。
【0120】
次に、不快度推定部15は、モデル格納部14に格納されている不快確率モデルを用いて室内20の在室者の不快度を推定する(ステップS24)。この場合、不快度推定部15は、現在の室内20の空調状態として第1ログデータに含まれる平均室温(つまり、現在の平均室温)を取得し、ステップS23において算出された省エネ運転時間と、当該取得された平均室温とを、不快確率モデルに適用する。これによれば、現在の省エネ運転時間と平均室温との関係に対応づけて不快確率モデルに定義されている不快度が出力される。
【0121】
ステップS24においては、上記したように省エネ運転時間が短く、平均室温が低い状態であるほど、低い不快度が推定(出力)され、省エネ運転時間が長く、平均室温が高い状態であるほど、高い不快度が推定(出力)される。
【0122】
なお、ここで用いられる不快確率モデルは、空調機30A及び30Bの運転モードに応じた不快確率モデル(冷房用の不快確率モデルまたは暖房用の不快確率モデル)である。
【0123】
不快度推定部15は、このように推定された不快度が予め定められた値(以下、閾値と表記)以上であるか否かを判定する(ステップS25)。
【0124】
不快度が閾値以上であると判定された場合(ステップS25のYES)、運転制御部16は、省エネ運転を解除する処理を実行する。
【0125】
この場合、運転制御部16は、省エネ運転を解除した後の設定温度(空調設定の設定値)を決定する(ステップS26)。ステップS26において決定される設定温度は、例えば省エネ運転が開始される直前の設定温度とすることができる。省エネ運転が開始される直前の設定温度は、上記した第2ログデータの直前のログデータに含まれる省エネ運転中の空調機の設定温度(第1または第2設定温度)から取得可能である。なお、ステップS26において決定される設定温度は、現在の設定温度を予め定められた値だけ強める方向に変更した温度であってもよいし、例えばビル管理者等によって予め定められた温度であってもよい。
【0126】
運転制御部16は、省エネ運転中の空調機(空調機30Aまたは30B)の設定温度を、ステップS16において決定された設定温度に変更する(ステップS27)。なお、例えば空調機30A及び30Bの両方が省エネ運転中である場合には、当該空調機30A及び30Bの設定温度は同じ設定温度(予め定められた設定温度)に変更されてもよいし、それぞれ異なる設定温度(各空調機30A及び30Bの省エネ運転が開始される前の設定温度)に変更されてもよい。
【0127】
ステップS27の処理が実行される場合、運転制御部16は、ステップS26において決定された設定温度(省エネ運転の解除)を示す制御信号を省エネ運転中の空調機に出力する。これによれば、省エネ運転中の空調機の省エネ運転が解除され、ステップS27において変更された設定温度での運転が開始される。
【0128】
一方、ステップS21において空調機30A及び30Bが省エネ運転中でないと判定された場合(ステップS21のNO)、図10の処理は終了される。また、ステップS25において不快度が閾値以上でない(閾値未満である)と判定された場合(ステップS25のNO)も同様に図10の処理は終了される。
【0129】
なお、上記した不快度推定処理(図10に示す処理)は、例えば定期的に実行されるものとする。具体的には、不快度推定処理は、例えば新たなログデータが取得(格納)される度に(つまり、5分間隔で)実行されることができるが、当該ログデータが取得される間隔よりも長い間隔(例えば、10分間隔または30分間隔等)で実行されても構わない。
【0130】
上記したように本実施形態においては、空調機30Aまたは30Bの省エネ運転中に、室内20の空調状態(例えば、平均室温)を取得し、当該取得された空調状態と、空調機30Aまたは30Bの省エネ運転が開始されてから現在までの経過時間(つまり、現在の省エネ運転時間)とを不快確率モデルに適用することによって、当該省エネ運転を解除する。
【0131】
なお、上記した不快確率モデルによれば現在の空調状態と省エネ運転時間とに基づいて室内20の在室者の不快度を推定することが可能であり、このような不快度が閾値以上である場合に省エネ運転が解除される。
【0132】
本実施形態においては、このような構成により、空調機30A及び30Bの省エネ運転(省エネルギー化を実現するような空調設定での運転)の開始後、在室者が不快に感じる前に当該省エネ運転を解除することができる。
【0133】
また、本実施形態において省エネ運転が解除される場合、当該省エネ運転中の空調機30Aまたは30Bの設定を当該省エネ運転が開始される前の設定に変更する。本実施形態においては、このような構成により、省エネ運転が継続されることによって増加した不快度を低減させ、在室者の快適性を向上させることができる。
【0134】
ここで、本実施形態に係る空調制御装置10による省エネ運転の解除よりも前に、在室者がリモコン40Aまたは40Bを操作することによって省エネ運転中の空調機30Aまたは30Bの省エネ運転を解除する(つまり、空調設定を強める方向に変更する)可能性がある。
【0135】
このような操作(以下、解除操作と表記)によって省エネ運転が解除されたにもかかわらず、更に省エネ運転を解除する処理が実行された場合、空調設定が更に強められる場合がある。この場合、在室者の快適性を損なう可能性があるばかりでなく、省エネルギー化にも反することになる。
【0136】
これに対して、本実施形態においては、例えば空調機30Aの省エネ運転中に在室者によって解除操作が行われた場合には、上記したログデータ取得処理により、当該空調機30Aが省エネ運転中でないことを示す第1省エネ運転フラグ「0」を含むログデータがログデータ格納部12に格納される。
【0137】
この場合、図10に示す不快度推定処理のステップS21においては空調機30Aは省エネ運転中でないと判定されるため、ステップS22以降の処理は実行されない。すなわち、本実施形態においては、省エネ運転中に在室者によって解除操作が行われた(つまり、空調機30Aの設定が変更された)場合には、空調制御装置10によって省エネ運転を解除するような更なる設定の変更は行われないため、上記した在室者の快適性を損なうことを回避するとともに、省エネ性を向上させることができる。ここでは、空調機30Aが省エネ運転中である場合について主に説明したが、空調機30Bが省エネ運転中であっても同様である。
【0138】
なお、本実施形態においては、過去に省エネ運転が開始された日時、在室者によって当該省エネ運転が解除された日時、及び室内20の過去の空調状態を含むログデータをログデータ格納部12に格納(蓄積)しておくことにより、当該ログデータに基づいて不快確率モデルを構築することができる。この不快確率モデルは、例えば空調制御装置10の外部で構築(生成)されて、当該空調制御装置10のモデル格納部14に予め格納されていてもよい。
【0139】
また、空調機30A及び30Bの運転モードには冷房モード及び暖房モードが含まれるが、当該空調機30A及び30Bが冷房モードで運転している場合の在室者の不快度を推定する場合には、当該冷房モードでの運転中に取得されたログデータに基づいて構築された不快確率モデルが用いられる。一方、空調機30A及び30Bが暖房モードで運転している場合の在室者の不快度を推定する場合には、当該暖房モードでの運転中に取得されたログデータに基づいて構築された不快確率モデルが用いられる。すなわち、本実施形態においては、空調機30A及び30Bの運転モードに応じて、異なる不快確率モデルを用いて在室者の不快度を推定することができる。
【0140】
なお、本実施形態においては上記したように不快度が閾値以上である場合に省エネ運転を解除するものとして説明したが、不快確率モデルは、単に省エネ運転時間と平均室温との関係が定義されたモデルであってもよい。このような不快確率モデルによれば、例えば現在の省エネ運転時間と平均室温との関係によって定められる平面散布図上の位置(座標)が、上記した閾線によって分類された在室者が不快と感じる確率が高い状態の領域に位置している場合に省エネ運転を解除するような構成とすることができる。
【0141】
また、本実施形態においては、省エネ運転時間(空調機の空調設定が緩和されている時間)と平均室温との2変数を用いて在室者の不快度を推定するものとして説明したが、例えば日射や室内20に配置されている各種装置からの発熱等により、同一の室内20であっても空調機30A及び30Bによる空調(例えば、冷房)の効きにくい場所がある。すなわち、室内20の空調状態に対する不快度には偏りがあることが多いため、室内20の平均室温を監視するのみでは在室者の不快度を高い精度で推定することが難しい場合がある。
【0142】
これに対処するために、例えば室温計50A及び50Bを含む複数の室温計によって計測された室温分布の分散値(室温ムラ)を、本実施形態において説明した平均室温の代わりに用いてもよい。このときログデータ取得部はステップS4において、室温の分散値を算出する。なお、図11は、各省エネ運転時間と分散値との関係を上記した閾線とともに平面散布図として可視化した図である。この場合、室内20の過去の温度(室温)の分散値に基づいて不快確率モデルを構築し、現在の室内20の空調状態として取得された室内20の温度の分散値を当該不快確率モデルに対して適用することによって、不快度の高い室内20の空調機の省エネ運転を解除することができる。このような構成によれば、空調の効きが悪化しやすい(つまり、在室者が不快と感じやすい)場所の空調状態に対応した不快確率モデルを構築することができるため、高い精度で不快度を推定することが可能となる。
【0143】
ここでは、平均室温の代わりに分散値を用いる場合について説明したが、分散値以外にも、複数の室温計によって計測された室温のうちの最大値または最小値を用いることも可能である。また、平均室温、分散、室温の最大値及び最小値のうちのいくつかを組み合わせて多変量のモデルを構築することも可能である。
【0144】
更に、例えばスパースモデリングと称される手法を用いて、室内20に配置された複数の室温計のうち、高い不快度と結びつきやすい室温を計測可能な位置に配置されている室温計を自動的に選択して、当該選択された室温計によって計測される室温のみを利用するようにしてもよい。このような構成によれば、例えば空調の効きが悪化しやすい場所が複数存在するような場合にも対応することが可能となる。
【0145】
なお、本実施形態においては、室温計50A及び50Bによって計測される室温を用いる場合について説明したが、当該室温以外のデータを用いてもよい。具体的には、本実施形態に係る空調制御装置10は、図12に示すような構成とすることが可能である。なお、図12においては、上記した図1と同様の部分については同一参照符号が付されている。
【0146】
図12に示すように、空調制御装置10は、例えば気象ログ格納部17a、分電盤ログ格納部17b及び在人数ログ格納部17cを更に含む。
【0147】
気象ログ格納部17aには、空調機30A及び30Bの外気負荷が反映される気象ログが格納されている。気象ログには例えば外気温、日射量、風速及び降水量等が含まれるが、当該気象ログは、例えば各種センサを用いて計測されてもよいし、外部のサーバ装置等から取得(収集)されてもよい。
【0148】
分電盤ログ格納部17bには、室内20に配置されている各種装置(以下、室内装置と表記)の発熱が反映される分電盤のログ(以下、分電盤ログと表記)が格納されている。なお、分電盤ログは、分電盤から取得可能な室内装置の稼働量を含む。このような分電盤ログによれば、室内装置における発熱等を得ることができる。
【0149】
在人数ログ格納部17cには、室内20の在室者の発熱が反映される当該在室者の人数のログ(以下、在人数ログと表記)が格納されている。在人数ログ(在室者の人数)は、例えば室内20の在室者に関するタイムカードシステムや、当該室内20に配置された赤外線センサ等を用いて取得されてもよいし、当該室内20を撮影するカメラの画像を解析することによって取得されてもよい。
【0150】
図12に示す構成においては、室内20の熱負荷の原因となる変数として、気象ログ、分電盤ログ及び在人数ログのうちの少なくとも1つを用いることができる。すなわち、空調制御装置10は、図12に示す気象ログ格納部17a、分電盤ログ格納部17b及び在人数ログ格納部17cのうちの少なくとも1つを含む構成であってもよい。
【0151】
このような構成によれば、実際に室温が上昇する前であっても在室者が不快と感じる予兆を捉え、より適切に対応することが可能となる。
【0152】
なお、上記した気象ログ、分電盤ログ及び在人数ログは、本実施形態において説明した室温に代えて用いてもよいし、当該室温と組み合わせて用いてもよい。
【0153】
ここでは、室温以外のデータとして気象ログ、分電盤ログ及び在人数ログについて説明したが、当該室温以外のデータは、例えば室内20の湿度及び二酸化炭素濃度等のデータであってもよい。室内20の湿度及び二酸化炭素濃度は、室温計50A及び50Bと同様に室内20に配置された湿度計及び二酸化炭素濃度計によって計測されればよい。
【0154】
また、本実施形態においては、ログデータに第1及び第2省エネ運転フラグが含まれるものとして説明したが、当該第1及び第2省エネ運転フラグはログデータに含まれない構成であってもよい。この場合、例えば図6に示すステップS12における省エネ運転開始時刻及び省エネ運転解除時刻は、ログデータに含まれる第1及び第2設定温度の変化に基づいて特定されればよい。図10に示すステップS21における空調機30A及び30Bが省エネ運転中であるか否かの判定処理についても同様である。
【0155】
また、ログデータには平均室温が含まれない構成であってもよい。この場合には、図6に示すステップS14の処理の度にログデータに含まれる第1及び第2室温の平均室温が算出されればよい。
【0156】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。前述した第1の実施形態においては不快確率モデルを用いて推定された不快度に基づいて、1つの部屋に備えられた空調機の省エネ運転を解除することについて説明したが、例えば需要電力の削減を要請するためのデマンドレスポンスのようなビル単位の省エネルギー化においては、空調機全体の消費電力に上限が設けられる。
【0157】
なお、空調機は室内に設置される室内機及び室外に設置される室外機を含むが、一般的な空調機においては必要な電力の約9割は室外機が消費する。このため、上記したように消費電力に上限が設けられる場合には室外機の運転を制御する(変える)必要がある。
【0158】
ここで、近年では、例えば1つの冷媒系統で複数の室内機を制御することができる空調機(マルチエアコン)が知られている。このような空調機においては、図13に示すように、系統が複数の部屋に跨ることが多い。図13に示す例では、例えば室内20Aには室内機30A及び30Bが設置されており、室内20Bには室内機30Cが設置されており、屋外60に設置されている室外機70は、このような室内機30A~30Cに対して冷媒配管を経由して熱を分配する。
【0159】
なお、図13に示すような空調機においては、例えば設定温度及び室温に応じた各室内機30A~30Cからの要求量に応じて、当該室内機30A~30Cの運転が制御される。以下、各室内機30A~30Cからの要求量は、当該室内機30A~30Cの各々において空調を行う際に必要な電力量または熱量等の概念を含む。
【0160】
この場合において、空調機全体に対して消費電力の上限が設けられていなければ、各室内機30A~30Cの要求通りに室内機30A~30Cを運転(稼働)することができる。一方、空調機全体に対して消費電力の上限が設けられている場合、合計要求量(室内機30A~30Cの要求通りに室内機30A~30Cを運転するために必要な消費電力の総量)に対する当該消費電力の上限値の割合をRとすると、各室内機30A~30Cからの要求量の各々にRを乗算した値を当該各室内機の実際の消費量(実消費量)として、当該室内機の各々を運転することができる。これによれば、空調機全体を消費電力の上限値の範囲内で運転することができる。
【0161】
なお、室内機毎に実消費量をビル管理者が指定(設定)することができる場合があるが、要求は時々刻々変動するので、空調機全体に対して消費電力の上限が設けられている際に各空調機に対して実消費量をビル管理者がリアルタイムに指定することは困難である。
【0162】
上記した消費電力の上限値に基づく空調機の制御においては、各室内20A及び20Bの不快度とは無関係に熱が消費されるため、不快度の低い室内で熱が消費される一方で、不快度が高い室内の空調能力(不快度が高い室内に設置されている室内機の実消費量)が不足することがある。このような場合、快適性を重視する観点からは、消費電力の上限値を解除(つまり、各室内機30A~30Cの省エネ運転を解除)せざるを得ないが、不快度の低い室内では省エネ運転を継続可能であるにもかかわらず当該省エネ運転を解除するため、機会損失につながる。
【0163】
つまり、一部の室内で不快度が高くなる(突出する)ことによって、空調機全体の省エネ時間が短くなる不合理がある。なお、室外機70との距離が近い室内機(例えば、室内機30C)ほど熱を多く消費する傾向があるため、室内機の位置によっては、この不合理はより顕著となる。
【0164】
そこで、本実施形態においては、各室内20A及び20Bの在室者の不快度に応じて室内機30A~30Cの実消費量を制御することにより、全ての室内20A及び20Bの在室者の不快度を所定範囲内に抑え、より長い時間にわたって省エネ運転(消費電力の上限値内の運転)を継続することを実現する。
【0165】
図14は、本実施形態に係る空調制御装置を含む空調システムの構成の一例を示す。なお、前述した図1と同様の部分については同一参照符号を付してその詳しい説明を省略する。ここでは、図1と異なる部分について主に述べる。
【0166】
また、本実施形態に係る空調制御装置10のハードウェア構成は、前述した第1の実施形態と同様であるため、適宜、図2を用いて説明する。
【0167】
本実施形態においては、上記した図13と同様に、室内機30A及び30Bが室内20Aに設置されており、室内機30Cが室内20Bに設置されているものとする。また、屋外60に設置されている室外機70は、室内機30A~30Cに熱を分配するように冷媒配管を介して接続されている。
【0168】
なお、図14において、室内機30A及び30Bは、前述した第1の実施形態における空調機30A及び30Bに相当する。また、室内機30C、リモコン40C及び室温計50Cは、設置(配置)されている場所が室内20Bである点以外は、室内機30A、リモコン40A及び室温計50A等と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0169】
図14に示すように、本実施形態に係る空調制御装置10は、設置データ格納部18及び上限値設定部19を含む。
【0170】
設置データ格納部18には、各室内機が設置されている場所(室内)を示すデータ(以下、設置データと表記)が予め格納されている。
【0171】
上限値設定部19は、空調機全体の消費電力の上限(以下、電力上限値と表記)を設定する。なお、電力上限値は、例えばビル管理者等によって指定されてもよいし、予め定められた時間に予め定められた値が自動的に設定されてもよい。
【0172】
なお、詳細については後述するが、本実施形態における運転制御部16は、不快度推定部15による室内20A及び20B毎の不快度の推定結果に基づいて、各室内機30A~30Cの実消費量を制御する機能を有する。
【0173】
図15は、図14に示す設置データ格納部18に格納されている設置データのデータ構造の一例を示す。図15に示すように、設置データは、室内ID及び室内機IDを含む。室内IDは、室内機が設置されている室内を識別するための識別子である。室内機IDは、当該室内機IDに対応づけられている室内IDによって識別される室内に設置されている室内機を識別するための識別子である。
【0174】
図15に示す例では、設置データ格納部18には、設置データ181~183を含む複数の設置データが格納されている。
【0175】
設置データ181は、室内ID「20A」及び室内機ID「30A」を含む。この設置データ181によれば、室内ID「20A」によって識別される室内(ここでは、室内20A)に室内機ID「30A」によって識別される室内機(ここでは、室内機30A)が設置されていることが示されている。
【0176】
設置データ182は、室内ID「20A」及び室内機ID「30B」を含む。この設置データ182によれば、室内ID「20A」によって識別される室内(ここでは、室内20A)に室内機ID「30B」によって識別される室内機(ここでは、室内機30B)が設置されていることが示されている。
【0177】
設置データ183は、室内ID「20B」及び室内機ID「30C」を含む。この設置データ183によれば、室内ID「20B」によって識別される室内(ここでは、室内20B)に室内機ID「30C」によって識別される室内機(ここでは、室内機30C)が設置されていることが示されている。
【0178】
図16は、本実施形態におけるログデータ格納部12に格納されているログデータのデータ構造の一例を示す。図16に示すように、ログデータには、時刻に対応づけて第1設定温度、第1室温、第1省エネ運転フラグ、第1要求量、第2設定温度、第2室温、第2省エネ運転フラグ、第2要求量、第3設定温度、第3室温、第3省エネ運転フラグ及び第3要求量が含まれる。
【0179】
なお、時刻、第1設定温度、第1室温、第1省エネ運転フラグ、第2設定温度、第2室温及び第2省エネ運転フラグについては、前述した第1の実施形態と同様であるため、その詳しい説明を省略する。
【0180】
第1要求量は、室内機30Aからの要求量を示す。第2要求量は、室内機30Bからの要求量を示す。
【0181】
第3設定温度は、室内機30Cの設定温度である。第3室温は、室温計50Cによって計測された室内20Bの室温である。第3省エネ運転フラグは、室内機30Cが省エネ運転中であるか否かを示す。第3省エネ運転フラグが「0」である場合には室内機30Cが省エネ運転中でないことを示し、第3省エネ運転フラグが「1」である場合には室内機30Cが省エネ運転中であることを示す。第3要求量は、室内機30Cからの要求量を示す。
【0182】
すなわち、本実施形態において、ログデータには、当該ログデータに含まれる時刻における各室内機30A~30Cからの要求量が含まれている。
【0183】
以下、本実施形態に係る空調制御装置10の動作について説明する。本実施形態に係る空調制御装置10は、前述した第1の実施形態と同様に、ログデータ取得処理及びモデル構築処理の各々を実行する。
【0184】
まず、ログデータ取得処理については、上記したようにログデータに含まれる要求量が各室内機30A~30Cから取得される(つまり、当該要求量を含むログデータがログデータ格納部12に格納される)点以外については前述した第1の実施形態と同様であるので、その詳しい説明については省略する。
【0185】
次に、本実施形態におけるモデル構築処理については、室内20A及び20B(つまり、部屋)毎に実行される。具体的には、本実施形態におけるモデル構築処理においては、ログデータ格納部12に格納されているログデータを室内20A及び20Bに関するログデータに分割し、当該室内20A及び20Bに関するログデータの各々について前述した図6に示す処理が実行される。これにより、室内20A及び20Bの各々について不快確率モデルが構築される。
【0186】
なお、本実施形態において、室内20Aに関するログデータとは、図16に示す時刻、第1設定温度(室内機30Aの設定温度)、第1室温(室温計50Aによって計測された室温)、第1省エネ運転フラグ(室内機30Aが省エネ運転中であるか否かを示すフラグ)、第2設定温度(室内機30Bの設定温度)、第2室温(室温計50Bによって計測された室温)及び第2省エネ運転フラグ(室内機30Bが省エネ運転中であるか否かを示すフラグ)を含むログデータである。このような室内20Aに関するログデータに基づいて図6に示す処理が実行される場合、ステップS14においては、例えば第1室温及び第2室温に基づいて算出された平均値が取得される。
【0187】
一方、本実施形態において、室内20Bに関するログデータとは、図16に示す時刻、第3設定温度(室内機30Cの設定温度)、第3室温(室温計50Cによって計測された室温)及び第3省エネ運転フラグ(室内機30Cが省エネ運転中であるか否かを示すフラグ)を含むログデータである。このような室内20Bに関するログデータに基づいて図6に示す処理が実行される場合、ステップS14においては、例えば第3室温が取得される。
【0188】
上記した室内20A及び20Bに関するログデータは、設置データ格納部18に格納されている設置データに基づいて当該室内20A及び20Bの各々に設置されている室内機を特定することによって、ログデータ格納部12から取得可能である。
【0189】
ここで、本実施形態においては、上記したように各室内20A及び20Bの在室者の不快度に応じて室内機30A~30Cの実消費量を制御する処理(以下、実消費量制御処理と表記)を実行する。
【0190】
以下、図17のフローチャートを参照して、本実施形態における実消費量制御処理の処理手順について説明する。
【0191】
まず、不快度推定部15は、上記した上限値設定部19によって電力上限値(単位:W)が設定されているか否かを判定する(ステップS31)。
【0192】
電力上限値が設定されていると判定された場合(ステップS31のYES)、不快度推定部15は、不快度推定処理を実行する(ステップS32)。なお、ステップS32の不快度推定処理においては、前述した図10に示すステップS21~S25の処理が室内20A及び20B毎に実行される。これによれば、ステップS32においては、室内20A及び20Bのうち、不快度が閾値以上である室内を特定することができる。
【0193】
以下の説明では、不快度が閾値以上である室内が室内20Aであり、室内20Bは不快度が閾値上でないものとして説明する。この場合、室内20Aに設置されている室内機(ここでは、室内機30A及び30B)のうちの少なくとも1つは省エネ運転中であるものとする。なお、本実施形態における省エネ運転とは、当該空調機からの要求量よりも少ない実消費量で運転している状態をいう。
【0194】
この場合、運転制御部16は、設置データ格納部18を参照して、不快度が閾値以上である室内に設置されている室内機の集合(以下、室内機集合と表記)を特定する(ステップS33)。上記したように不快度が閾値以上である室内が室内20Aであるものとすると、ステップS33においては、室内機30A及び30Bが室内機集合として特定される。
【0195】
次に、運転制御部16は、ログデータ格納部12に格納されているログデータのうちの直近のログデータに含まれる室内機30A及び30Bの各々の要求量(第1及び第2要求量)を取得する(ステップS34)。なお、ステップS34において取得される要求量は、現在の室内機30A及び30Bの要求量に相当する。
【0196】
ステップS34の処理が実行されると、運転制御部16は、以下の数式(1)により、Eを算出する(ステップS35)。
【0197】
【数1】

なお、数式(1)において、Lは電力上限値、Uは室内機集合、kは室内機集合に属する室内機(番号)を示す。また、Skは、室内機kの要求量(単位:W)を示す。
【0198】
すなわち、ステップS35において算出されるEは、上記した電力上限値Lから、室内機集合Uに属する室内機k(ここでは、室内機30A及び30B)の各々を要求通りに運転するために必要な消費電力の総量を減算した値である。換言すれば、Eは、不快度の高い室内20Aに設置されている室内機30A及び30Bを要求通りに運転した際に、不快度の低い室内20Bに設置されている室内機30Cが消費可能な電力量を示している。
【0199】
次に、運転制御部16は、ステップS35において算出されたEが0より大きい値であるか(つまり、E>0であるか)否かを判定する(ステップS36)。
【0200】
Eが0より大きい値であると判定された場合(ステップS36のYES)、運転制御部16は、以下の数式(2)及び(3)により、各室内機30A~30Cの実消費量(単位:W)を決定する(ステップS37)。
【0201】
【数2】

数式(2)によれば、ステップS33において特定された室内機集合Uに属する各室内機kの実消費量Sk´は、当該各室内機kの要求量Skとする。すなわち、不快度の高い室内20Aに設置されている室内機30Aの実消費量は当該室内機30Aの要求量とし、室内機30Bの実消費量は当該室内機30Bの要求量とする。この場合、室内機30A及び30Bは、それぞれ要求通りの実消費量で運転することができる。
【0202】
一方、数式(3)によれば、ステップS33において特定された室内機集合Uに属さない各室内機kの実消費量Sk´は、ステップS35において算出されたEを当該各室内機kの要求量Skで按分した値とする。ここでは、室内機集合に属さない室内機(つまり、不快度の低い室内20Bに設置された室内機)は室内機30Cのみであるため、当該室内機30Cの実消費量はEと同一の値となる。
【0203】
なお、例えば室内機集合Uに属さない室内機が2つ(以下、室内機k1及びk2と表記)であり、当該2つの室内機k1及びk2の要求量がそれぞれSk1及びSk2である場合には、要求量がSk1である室内機k1の実消費量Sk1´は、E*Sk1/(Sk1+Sk2)となる。同様に、要求量がSk2である室内機k2の実消費量Sk2´は、E*Sk2/(Sk1+Sk2)となる。室内機集合Uに属さない室内機が3つ以上である場合についても同様である。
【0204】
ステップS37において決定された室内機集合に属さない室内機30Cの実消費量が当該室内機30Cの要求量よりも多い場合には、当該室内機30Cの実消費量は当該室内機30Cの要求量と同一の値としてもよい。
【0205】
ステップS37の処理が実行されると、運転制御部16は、当該ステップS37において決定された各室内機30A~30Cの実消費量を制御信号として室外機70に送信する(ステップS38)。これによれば、室外機70は、空調制御装置10(運転制御部16)から送信された各室内機30A~30Cの実消費量に基づいて当該各室内機30A~30Cを運転するように稼働する。
【0206】
一方、ステップS36においてEが0より大きい値でないと判定された場合(ステップS36のNO)、電力上限値の範囲内で各室内機30A~30Cを運転することができないため、運転制御部16は、電力上限値を解除する(ステップS39)。
【0207】
また、ステップS31において電力上限値が設定されていないと判定された場合(ステップS31のNO)、図17に示す実消費量制御処理は終了される。
【0208】
なお、上記した実消費量制御処理(図17に示す処理)は、例えば定期的に実行されるものとする。具体的には、実消費量制御処理は、例えば新たなログデータが取得(格納)される度に(つまり、5分間隔で)実行されることができるが、当該ログデータが取得される間隔よりも長い間隔(例えば、10分間隔または30分間隔等)で実行されても構わない。
【0209】
また、図17においては電力上限値が設定されていない場合には実消費量制御処理が終了されるものとして説明したが、電力上限値が設定されていな場合には、前述した図10に示す処理が実行されるようにしてもよい。これによれば、各室内20A及び20Bに設置されている室内機30A~30Cの省エネ運転を当該室内20A及び20Bの在室者の不快度に従って解除することができる。なお、上記したように不快確率モデルは室内20A及び20B(つまり、部屋)毎に構築されているため、図10に示す処理は室内20A及び20B毎に実行されるものとする。
【0210】
上記したように本実施形態においては、例えば室内機30A~30Cの省エネ運転中に、室内20A及び20B(第1及び第2室内)の在室者の不快度を推定し、当該室内20Aの在室者の不快度が閾値以上である場合、当該室内20Aに設置されている室内機30A及び30B(第1空調機)の省エネ運転を解除して通常運転させ、室内20Bに設置されている室内機30C(第2室内機)については、電力上限値(室内機30A~30C及び室外機70における消費電力量の上限)から室内機30A及び30Bを通常運転させるために必要な電力量を減算した電力量Eで省エネ運転を継続させる。なお、室内機の通常運転とは、当該室内機からの要求通りに当該室内機を運転する(つまり、室内機からの要求量を実消費量として運転する)ことをいう。
【0211】
本実施形態においては、このような構成により、不快度の高い室内20Aに設置されている室内機30A及び30Bは不快な状態を解消するために要求通りに通常運転させるとともに、不快度の低い室内20Bに設置されている室内機30Cは電力上限値の制限内で省エネ運転させることができるため、各室内20A及び20Bの在室者の快適性及び省エネ性を両立することが可能となる。
【0212】
なお、本実施形態においては室外機70を経由して各室内機30A~30Bの実消費量を制御(制限)するものとして説明したが、室外機70を経由することなく、直接、各室内機30A~30Cの実消費量を制御する構成としてもよい。また、本実施形態は前述した第1の実施形態と組み合わせた構成としてもよく、例えば本実施形態に係る空調制御装置10が図12に示す気象ログ格納部17a、分電盤ログ格納部17b及び在人数ログ格納部17c等を備えていても構わない。
【0213】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、空調機が省エネ運転中である場合において、在室者が不快に感じる前に当該省エネ運転を解除することが可能な空調制御装置、空調システム、空調制御方法及びプログラムを提供することができる。
【0214】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0215】
10…空調制御装置、11…ログデータ取得部、12…ログデータ格納部、13…モデル構築部、14…モデル格納部、15…不快度推定部、16…運転制御部、17a…気象ログ格納部、17b…分電盤ログ格納部、17c…在人数ログ格納部、18…設置データ格納部、19…上限値設定部、20A,20B…室内、30A,30B,30C…空調機(室内機)40A,40B,40C…リモコン、50A,50B,50C…室温計、60…屋外、70…室外機、101…CPU、102…不揮発性メモリ、103…主メモリ、104…通信デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17