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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】薬液注入システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20220425BHJP
   G16H 20/17 20180101ALI20220425BHJP
【FI】
A61M5/142 530
G16H20/17
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018059567
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019170452
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】多久和 良
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509284(JP,A)
【文献】特表2008-521500(JP,A)
【文献】特表2010-524050(JP,A)
【文献】特表2005-523793(JP,A)
【文献】国際公開第2009/124133(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
G16H 20/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の患者へ薬液を注入するための薬液注入システムであって、
前記複数の患者のそれぞれに対応する複数の薬液注入装置と、
前記複数の薬液注入装置の外部に設けられ、前記複数の薬液注入装置に対して前記薬液の注入の開始及び停止の指示を与える少なくとも1つの外部機器と、を備え、
各薬液注入装置は、前記薬液を送るポンプと、通信部と、ポンプ制御部と、記憶部と、を備え、
前記通信部は、
前記薬液注入装置の外部に設けられた外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の開始を指示する開始信号と、
前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の開始を指示するための入力を前記外部機器に対して行った開始入力者を識別する開始入力者情報を含む信号と、
前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の停止を指示する停止信号と、
前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の停止を指示するための入力を前記外部機器に対して行った停止入力者を識別する停止入力者情報を含む信号と、を受信する機能を有し、
前記ポンプ制御部は、前記通信部が前記開始信号を受信した場合に前記薬液の注入が開始されるように前記ポンプを制御し、前記通信部が前記停止信号を受信した場合に前記薬液の注入が停止されるように前記ポンプを制御するように構成され、
前記記憶部は、前記薬液の注入の開始が指示されたことを示す情報を含む開始指示情報とともに前記開始入力者情報を記憶し、前記薬液の注入の停止が指示されたことを示す情報を含む停止指示情報とともに前記停止入力者情報を記憶するように構成され、
前記薬液注入システムは、前記外部機器から出力される信号が入力される通信モジュールをさらに備え、
前記通信モジュールは、
前記薬液注入装置に前記通信モジュールを装着するための装着部と、
前記外部機器から出力されて前記通信モジュールに入力される前記信号を、前記通信モジュールが装着された前記薬液注入装置に送信する機能を有するモジュール通信部と、を有し、
各薬液注入装置の前記通信部は、前記外部機器から出力されて前記通信モジュールに入力される前記信号を、前記通信モジュールとの間の前記通信によってのみ受信可能に構成され、
前記薬液注入装置は、当該薬液注入装置に装着されていた前記通信モジュールが当該薬液注入装置から取り外された状態で前記薬液の注入を行うように構成され、前記通信モジュールが前記薬液注入装置から取り外された後、前記薬液注入装置は、当該薬液注入装置単体で薬液注入の停止及び薬液注入の設定値の変更を行うことができないように構成されている、薬液注入システム。
【請求項2】
薬液注入装置は、その薬液注入装置とこれに装着された前記通信モジュールとの間の通信が可能な状態になったことを示す表示を行う表示部を有している、請求項1に記載の薬液注入システム。
【請求項3】
前記開始指示情報は、前記開始入力者による前記入力が行われた日時を示す情報をさらに含み、前記停止指示情報は、前記停止入力者による前記入力が行われた日時を示す情報をさらに含む、請求項1又は2に記載の薬液注入システム
【請求項4】
前記通信部は、前記開始指示情報、前記開始入力者情報、前記停止指示情報、及び前記停止入力者情報を含む信号を前記外部機器に送信する機能をさらに有する、請求項1~3の何れか1項に記載の薬液注入システム
【請求項5】
前記記憶部は、前記薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報であって前記外部機器から出力される指示信号に係る指示情報とともに当該指示信号に係る指示をするための入力を前記外部機器に対して行った入力者を識別する入力者情報を記憶するように構成されている、請求項の何れか1項に記載の薬液注入システム
【請求項6】
各薬液注入装置は、前記薬液の注入を開始するためのスイッチ、前記薬液の注入を停止するためのスイッチ、及び前記薬液の注入の設定値についての設定を変更するための入力手段を含む操作手段を備えていないことで、前記通信モジュールが前記薬液注入装置から取り外された後、前記薬液注入装置は、それ単体で前記薬液の注入の開始、前記薬液の注入の停止及び前記薬液の注入の設定値の変更を行うことができないように構成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の薬液注入システム。
【請求項7】
前記外部機器は、表示装置と、前記表示装置に前記薬液注入装置のアラームに関する情報が表示されるように前記表示装置を制御する機器制御部と、前記薬液注入装置の前記アラームを解除するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける入力受付部と、をさらに備え、
前記通信モジュールを介した前記薬液注入装置と前記外部機器との通信を確立した後に前記医療従事者が前記薬液注入装置の前記アラームを解除する入力をすると、前記機器制御部は、前記薬液注入装置の前記アラームを解除する解除信号を前記外部機器から出力し、出力された前記解除信号は、前記通信モジュールを経由して前記薬液注入装置に入力される、請求項1~6の何れか1項に記載の薬液注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬液を注入するための薬液注入システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に収容された薬液を患者の体内に注入するための薬液注入装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、投与スケジュールと薬液の消費履歴を記憶する一時記録部を有するスレーブ制御手段を備える薬液注入装置と、操作部と表示部を制御するプログラミング部を有するとともに、前記一時記憶部との間で前記投与スケジュールと前記消費履歴の送受信を行ない、前記スレーブ制御手段に対して接続されることで、特定の識別信号に基づき前記送受信を行うメイン制御手段と、前記薬液注入装置を装着する装着手段とを有する外部制御装置とから構成される薬液注入システムを開示している。
【0004】
この特許文献1の薬液注入システムでは、薬液注入装置の流量制御ユニットに設けられた動作スイッチをオンすると、予め入力された薬液注入装置側の動作情報に従って、薬液注入が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-042102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、医療現場においては、一人の患者は、例えば交代勤務する複数の看護師によって看護されるのが一般的である。そして、特定の患者に対する薬液注入の処置を、医師や看護師などの複数の医療従事者のうちの何れの者が行ったかについて後日確認する必要が生じることがある。
【0007】
しかし、特許文献1の薬液注入システムでは、薬液注入装置の流量制御ユニットに設けられた動作スイッチを複数の医療従事者のうちの何れの者がオンにしたかについて後日確認するための考慮はなされていない。このため、患者に対して薬液注入の処置を行った医療従事者を後日確認するための看護記録を、薬液注入システムとは別に作成するという煩雑な作業が必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、患者に対する薬液注入の処置を、複数の医療従事者のうちの何れの者が行ったかについて確認することができる薬液注入システムを提供することにある。
【0009】
(1)本発明の前記薬液注入システムは、患者へ薬液を注入するためのものである。前記薬液注入システムは、前記複数の患者のそれぞれに対応する複数の薬液注入装置と、前記複数の薬液注入装置の外部に設けられ、前記複数の薬液注入装置に対して前記薬液の注入の開始及び停止の指示を与える少なくとも1つの外部機器と、を備える。
【0010】
各薬液注入装置は、前記薬液を送るポンプと、通信部と、ポンプ制御部と、記憶部と、を備える。前記通信部は、前記薬液注入装置の外部に設けられた外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の開始を指示する開始信号と、前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の開始を指示するための入力を前記外部機器に対して行った開始入力者を識別する開始入力者情報を含む信号と、前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の停止を指示する停止信号と、前記外部機器から出力される信号であって前記薬液の注入の停止を指示するための入力を前記外部機器に対して行った停止入力者を識別する停止入力者情報を含む信号と、を受信する機能を有する。前記ポンプ制御部は、前記通信部が前記開始信号を受信した場合に前記薬液の注入が開始されるように前記ポンプを制御し、前記通信部が前記停止信号を受信した場合に前記薬液の注入が停止されるように前記ポンプを制御するように構成される。前記記憶部は、前記薬液の注入の開始が指示されたことを示す情報を含む開始指示情報とともに前記開始入力者情報を記憶し、前記薬液の注入の停止が指示されたことを示す情報を含む停止指示情報とともに前記停止入力者情報を記憶するように構成される。前記薬液注入システムは、前記外部機器から出力される信号が入力される通信モジュールをさらに備え、前記通信モジュールは、前記薬液注入装置に前記通信モジュールを装着するための装着部と、前記外部機器から出力されて前記通信モジュールに入力される前記信号を、前記通信モジュールが装着された前記薬液注入装置に送信する機能を有するモジュール通信部と、を有し、各薬液注入装置の前記通信部は、前記外部機器から出力されて前記通信モジュールに入力される前記信号を、前記通信モジュールとの間の前記通信によってのみ受信可能に構成され、前記薬液注入装置は、当該薬液注入装置に装着されていた前記通信モジュールが当該薬液注入装置から取り外された状態で前記薬液の注入を行うように構成され、前記通信モジュールが前記薬液注入装置から取り外された後、前記薬液注入装置は、当該薬液注入装置単体で薬液注入の停止及び薬液注入の設定値の変更を行うことができないように構成されている。
【0011】
本発明の薬液注入システムでは、各薬液注入装置の記憶部には、前記開始指示情報とともに前記開始入力者情報が記憶され、前記停止指示情報とともに前記停止入力者情報が記憶される。したがって、各患者に対して複数の医療従事者のうちの何れの者が薬液注入の処置を行ったかについて、各患者に対応する薬液注入装置の記憶部に記憶された上記情報に基づいて当該処置の後に確認することができる。具体的には次の通りである。
【0012】
例えば特許文献1の薬液注入装置では、薬液の注入の開始又は停止を行うための動作スイッチが薬液注入装置に設けられているため、医療従事者を含み薬液注入装置の周囲に位置する複数の関係者が、薬液注入装置に設けられた動作スイッチを簡単にオン又はオフすることが可能である。しかも、動作スイッチをオン又はオフするという簡単な構成であるため、動作スイッチの操作を何れの者が行ったかについての履歴は薬液注入システムに残らない。このため、当該薬液注入システムだけでは、患者に対する薬液注入の処置を何れの者が行ったかについて後日確認することはできない。
【0013】
一方、本発明の薬液注入システムでは、前記複数の関係者が薬液注入装置自体をいかに操作しても薬液注入の開始又は停止の動作をさせることができない構成をあえて採用している。本発明では、薬液の注入を開始又は停止する医療従事者は、そのための入力を外部機器に対して行う必要があり、その入力に基づいて外部機器から前記開始信号、前記開始入力者情報を含む信号、前記停止信号、前記停止入力者情報を含む信号などが出力される。そして、開始信号又は停止信号を薬液注入装置の通信部が受信した場合に薬液の注入が開始又は停止され、また、前記開始指示情報とともに前記開始入力者情報が記憶部に記憶され、前記停止指示情報とともに前記停止入力者情報が記憶部に記憶される。したがって、複数の医療従事者のうちの何れの医療従事者によって外部機器に対して薬液注入の開始又は停止の入力が行われたかについての履歴を薬液注入装置に残すことができる。
【0014】
これにより、各患者に対して薬液注入の処置を行った医療従事者を後日確認するための看護記録を、各患者に対応する薬液注入装置の記憶部に記憶された前記開始指示情報、前記開始入力者情報、前記停止指示情報、及び前記停止入力者情報に基づいて容易に作成することができる。また、本発明では、医療従事者以外の者が薬液注入装置自体を操作しても薬液注入の開始又は停止の操作を行うことができないので、医師や看護師などの医療従事者の意に反して、医療従事者以外の者が薬液注入装置を操作して薬液の注入を開始又は停止させることを防ぐことができる。これにより、薬液注入時における安全性を高めることができる。しかも、この態様では、外部機器から出力されて通信モジュールに入力される信号は、通信モジュールとこれが装着された薬液注入装置との間の通信によってのみその薬液注入装置に受信される。したがって、外部機器から出力される開始信号又は停止信号が誤って対象外の薬液注入装置に受信されることを確実に防止できる。
【0015】
(2)各薬液注入装置は、その薬液注入装置とこれに装着された前記通信モジュールとの間の通信が可能な状態になったことを示す表示を行う表示部を有しているのが好ましい。
【0016】
この態様では、医療従事者は、前記通信モジュールが複数の薬液注入装置のうちの何れかに装着されると、その装着された薬液注入装置と当該通信モジュールとの間の通信が可能な状態になったことを薬液注入装置の表示部を目視することにより確認できる。したがって、医療従事者は、外部機器から出力される開始信号又は停止信号を受信する対象となる薬液注入装置が複数の薬液注入装置のうちの何れの装置であるかについて薬液注入装置の表示部を目視することにより確認できる
【0020】
)前記薬液注入装置において、前記開始指示情報は、前記開始入力者による前記入力が行われた日時を示す情報をさらに含み、前記停止指示情報は、前記停止入力者による前記入力が行われた日時を示す情報をさらに含んでいるのが好ましい。
【0021】
この態様では、薬液の注入を開始又は停止させるための外部機器への入力がいつ行われたかについての履歴を薬液注入装置に残すことができる。これにより、患者に対する薬液注入の処置が行われた後、何れの医療従事者が薬液の注入の開始及び停止の何れの入力を行ったかについて時系列で確認することができる。
【0022】
)前記薬液注入装置において、前記通信部は、前記開始指示情報、前記開始入力者情報、前記停止指示情報、及び前記停止入力者情報を含む信号を前記外部機器に送信する機能をさらに有しているのが好ましい。
【0023】
この態様では、何れの医療従事者によって外部機器に対して薬液注入の開始又は停止の入力が行われたかについての履歴を外部機器においても確認することが可能になる。この場合、薬液注入装置に前記履歴を表示するための表示装置を設ける必要がないので、薬液注入装置の構造を簡素化することができる。
【0024】
)前記薬液注入装置において、前記記憶部は、前記薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報であって前記外部機器から出力される指示信号に係る指示情報とともに当該指示信号に係る指示をするための入力を前記外部機器に対して行った入力者を識別する入力者情報を記憶するように構成されているのが好ましい。
【0025】
この態様では、薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報についても、外部機器から出力される信号に基づいて記憶部に記憶されるので、薬液注入装置の構造をさらに簡素化することができる。具体的には、薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報としては、薬液の注入の設定値の設定又は変更が指示されたことを示す情報を含む設定指示情報と、当該設定指示の入力を外部機器に対して行った設定入力者を識別する設定入力者情報とを例示できる。そして、例えば設定入力者と開始入力者とが異なる医療従事者である場合には、開始入力者は、記憶部に記憶された設定入力者による設定指示情報に基づいて、設定入力者が行った設定指示の内容を確認することができる。したがって、設定指示の内容を設定入力者と開始入力者によってダブルチェックすることができる。また、薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報としては、アラームの解除が指示されたことを示す情報を含む解除指示情報と、当該解除指示の入力を外部機器に対して行った解除入力者を識別する解除入力者情報とを例示できる。さらに、薬液の注入の開始と停止に関する情報以外の情報としては、患者の状況に関する情報と、当該患者の状況に関する情報の入力を外部機器に対して行った状況入力者を識別する状況入力者情報とを例示できる。
【0026】
(6)各薬液注入装置は、前記薬液の注入を開始するためのスイッチ、前記薬液の注入を停止するためのスイッチ、及び前記薬液の注入の設定値についての設定を変更するための入力手段を含む操作手段を備えていないことで、前記通信モジュールが前記薬液注入装置から取り外された後、前記薬液注入装置は、それ単体で前記薬液の注入の開始、前記薬液の注入の停止及び前記薬液の注入の設定値の変更を行うことができないように構成されていることが好ましい。
【0027】
(7)前記外部機器は、表示装置と、前記表示装置に前記薬液注入装置のアラームに関する情報が表示されるように前記表示装置を制御する機器制御部と、前記薬液注入装置の前記アラームを解除するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける入力受付部と、をさらに備え、前記通信モジュールを介した前記薬液注入装置と前記外部機器との通信を確立した後に前記医療従事者が前記薬液注入装置の前記アラームを解除する入力をすると、前記機器制御部は、前記薬液注入装置の前記アラームを解除する解除信号を前記外部機器から出力し、出力された前記解除信号は、前記通信モジュールを経由して前記薬液注入装置に入力されることが好ましい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、患者に対する薬液注入の処置を、複数の医療従事者のうちの何れの者が行ったかについて確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の実施形態に係る薬液注入システムを示す平面図である。
図2】前記実施形態に係る薬液注入システムの機能的構成を示すブロック図である。
図3】前記実施形態に係る薬液注入システムにおいて外部機器と通信モジュールと特定の薬液注入装置とを接続した状態を示す斜視図である。
図4】本発明の実施形態に係る薬液注入装置と通信モジュールとを示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、薬液注入の開始動作を示している。
図6】前記実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、薬液注入の停止動作を示している。
図7】前記実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、患者の状況を確認する動作を示している。
図8】前記実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、アラームの停止動作を示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0037】
[薬液注入システム]
図1は、本発明の実施形態に係る薬液注入システム1を示す平面図である。図2は、実施形態に係る薬液注入システム1の機能的構成を示すブロック図である。図3は、実施形態に係る薬液注入システム1において外部機器7と通信モジュール8と特定の薬液注入装置2とを接続した状態を示す斜視図である。図4は、実施形態に係る薬液注入装置2と通信モジュール8とを示す平面図である。
【0038】
薬液注入システム1は、複数の患者に対して、各患者の病状等に合った薬液を各患者に予め設定された設定値でそれぞれ注入するためのものである。薬液注入システム1は、例えば抗凝固薬、循環作動薬、麻酔薬、抗がん剤、抗生剤などの種々の薬液を患者に対して注入するための用途に用いることができるが、薬液注入システム1において使用される薬液はこれらに限られない。
【0039】
図1に示すように、薬液注入システム1は、複数の薬液注入装置2と、複数の外部機器7と、複数の通信モジュール8と、複数の薬液容器6と、複数の薬液チューブ60と、追加投与装置9と、を備える。
【0040】
各薬液容器6は、対応する患者の病状に応じた薬液を収容する。薬液容器6には薬液チューブ60が接続されている。薬液容器6内の薬液は、薬液注入装置2に設けられた後述のポンプ51によって薬液チューブ60を通じて送液され、患者に注入される。
【0041】
各外部機器7は、薬液注入装置2に対して、薬液の注入の開始を指示する機能、薬液の注入の停止を指示する機能、薬液の注入の設定値を設定する機能、薬液の注入の設定値を変更する機能、薬液の注入に関する履歴を記憶する機能、薬液の注入に関する履歴を表示する機能などを有する。また、各外部機器7は、薬液の注入の開始又は停止を指示するための医療従事者による入力、薬液の注入の設定値の設定又は変更を指示するための医療従事者による入力などを受け付ける機能を有する。
【0042】
各外部機器7は、薬液注入装置2の外部に設けられ、薬液注入装置2とは別体として構成されている。本実施形態では、各外部機器7は、医師や看護師などの複数の医療従事者が使用することができる。ただし、各外部機器7は、特定の医療従事者に予め割り当てられていてもよい。図1に示す具体例では、複数の外部機器7は、第1の外部機器7と、第2の外部機器7とによって構成されているが、外部機器7の個数は、3つ以上であってもよく、1つであってもよい。
【0043】
各通信モジュール8は、外部機器7と薬液注入装置2との間に介在する。各通信モジュール8は、外部機器7と特定の薬液注入装置2との間における情報の送受信を選択的に許可する機能、外部機器7から出力された信号を受信し、当該信号を薬液注入装置2に出力する機能、薬液注入装置2から出力された信号を受信し、当該信号を外部機器7に出力する機能などを有する。
【0044】
各通信モジュール8は、薬液注入装置2の外部に設けられ、薬液注入装置2とは別体として構成されている。本実施形態では、各通信モジュール8は、対応する外部機器7に予め割り当てられている。外部機器7と対応する通信モジュール8とはケーブル61によって接続されることにより有線通信可能に構成されている。ただし、外部機器7と対応する通信モジュール8とは無線通信可能に構成されていてもよい。図1に示す具体例では、複数の通信モジュール8は、第1の通信モジュール8と、第2の通信モジュール8とによって構成されているが、通信モジュール8の個数は、3つ以上であってもよく、1つであってもよい。
【0045】
各薬液注入装置2は、外部機器7から出力される信号による指示に従って薬液の注入を開始する機能、外部機器7から出力される信号によって設定される設定値に従って患者に薬液を注入するために薬液を送る機能、外部機器7から出力される信号による指示に従って薬液の注入を停止する機能、薬液の注入に関する履歴を記憶する機能、当該履歴に関する情報を通信モジュール8を介して外部機器7に送信する機能などを有する。
【0046】
図1に示す具体例では、複数の薬液注入装置2は、第1の薬液注入装置2と、第2の薬液注入装置2と、第3の薬液注入装置2とによって構成されているが、薬液注入装置2の個数は4つ以上であってもよい。これらの薬液注入装置2は、同じ構造を備えている。
【0047】
複数の薬液注入装置2は、複数の患者のそれぞれに予め割り当てられている。言い換えると、各患者は、専用の薬液注入装置2を使用する。具体的に、例えば患者Aは、第1の薬液注入装置2を使用し、患者Bは、第2の薬液注入装置2を使用し、患者Cは、第3の薬液注入装置2を使用する。したがって、薬液注入装置2が特定されると、患者も特定される。
【0048】
追加投与装置9は、薬液の導出量を増加させるための指示を制御装置3に対して出力するためのものである。例えば、薬液として麻酔薬を使用している場合、患者が痛みの増加に応じて追加投与装置9を操作することにより、麻酔薬の投与量を増やして痛みを緩和することができる。すなわち、追加投与装置9は、薬液注入装置2の外部に設けられ、薬液注入装置2に対して薬液の注入に関する指示を与える第2の外部機器である。
【0049】
薬液注入システム1の全体的な構成は以上の通りである。以下では、薬液注入システム1を構成する各機器についてさらに具体的に説明する。
【0050】
[薬液注入装置]
図2及び図4に示すように、各薬液注入装置2は、ポンプ51と、通信部21と、モジュール検出部22と、制御装置3と、安全検出装置4と、これらを収容する筐体2Aとを備える。
【0051】
ポンプ51は、薬液容器6内に収容された薬液を薬液容器6から導出し、薬液チューブ60を通じて患者に送る機能を有する。ポンプ51は、薬液を患者に送ることができるものであればよく、その機構は特に限定されるものではない。ポンプ51は、例えば所定の周期で蠕動運動するように薬液チューブ60の一部分を押圧することにより、薬液チューブ60内の薬液を一定の流量で患者に送ることができる。ポンプ51は、筐体2Aに設けられる図略の収容部に収容されており、筐体2Aに対して着脱可能に構成されている。
【0052】
通信部21は、外部機器7から出力される種々の信号を受信する機能を有する。外部機器7から出力される信号としては、例えば、薬液の注入の開始を指示する開始信号、薬液の注入の開始を指示するための入力を外部機器7に対して行った開始入力者を識別する開始入力者情報を含む信号、薬液の注入の停止を指示する停止信号、薬液の注入の停止を指示するための入力を外部機器7に対して行った停止入力者を識別する停止入力者情報を含む信号、薬液の注入の設定値の設定又は変更を指示する設定値信号、薬液の注入の設定値の設定又は変更を指示するための入力を外部機器7に対して行った設定入力者を識別する設定入力者情報を含む信号などを挙げることができるが、これらの信号に限られない。
【0053】
本実施形態では、薬液注入装置2と外部機器7との間には通信モジュール8が介在しているので、通信部21は、外部機器7から出力される信号を通信モジュール8を介して受信し、外部機器7に送信するための信号を通信モジュール8に出力する。本実施形態では、通信部21は、後述する通信モジュール8のモジュール通信部81との間で情報の送受信を行う。モジュール検出部22は、後述する通信モジュール8の装置検出部82と協働して薬液注入装置2に対して通信モジュール8が通信可能であることを検出する機能を有する。
【0054】
制御装置3は、中央演算処理装置(Central Processing Unit)、種々の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)などから構成される。
【0055】
図2に示すように、制御装置3は、メイン制御部31と、記憶部32と、警報出力部33と、ポンプ制御部34とを機能として備える。制御装置3は、CPUが前記制御プログラムを実行することにより、メイン制御部31、記憶部32、警報出力部33、ポンプ制御部34などを機能的に構成するように動作する。
【0056】
メイン制御部31は、薬液注入装置2の全体的な動作を制御するためのものである。
【0057】
記憶部32は、薬液の注入の開始が指示されたことを示す情報を含む開始指示情報とともに前記開始入力者情報を記憶する。また、記憶部32は、薬液の注入の停止が指示されたことを示す情報を含む停止指示情報とともに前記停止入力者情報を記憶する。さらに、記憶部32は、薬液の注入の設定値の設定又は変更が指示されたことを示す情報を含む設定指示情報とともに前記設定入力者情報を記憶する。
【0058】
なお、記憶部32が記憶する開始指示情報には、外部機器7から出力される開始信号に係る開始指示情報だけでなく、第2の外部機器としての追加投与装置9から出力される開始信号(増量注入の開始信号)に係る開始指示情報も含まれる。また、記憶部32が記憶する開始入力者情報には、外部機器7から出力される開始信号に係る開始入力者情報だけでなく、追加投与装置9から出力される開始信号(増量注入の開始信号)に係る開始入力者情報も含まれる。本実施形態では、増量注入の開始入力者情報は、追加投与装置9を操作することが想定されている患者に予め設定されている。
【0059】
同様に、記憶部32が記憶する停止指示情報には、外部機器7から出力される停止信号に係る停止指示情報だけでなく、第2の外部機器としての追加投与装置9から出力される停止信号(増量注入の停止信号)に係る停止指示情報も含まれる。また、記憶部32が記憶する停止入力者情報には、外部機器7から出力される停止信号に係る停止入力者情報だけでなく、追加投与装置9から出力される停止信号(増量注入の停止信号)に係る停止入力者情報も含まれる。本実施形態では、増量注入の停止入力者情報は、追加投与装置9を操作することが想定されている患者に予め設定されている。
【0060】
ポンプ制御部34は、通信部21が前記開始信号を受信した場合に薬液の注入が開始されるようにポンプ51を制御し、通信部21が前記停止信号を受信した場合に薬液の注入が停止されるようにポンプ51を制御するように構成されている。
【0061】
警報出力部33は、安全検出装置4によって検出される薬液注入装置2の異常の状態に応じて、当該異常を医療従事者等に警報ランプ56を通じて知らせる機能を有する。
【0062】
図2に示すように、安全検出装置4は、閉塞検出部41と、気泡検出部42と、ポンプ検出部43と、ドア検出部44とを含む。
【0063】
閉塞検出部41は、薬液チューブ60の閉塞の有無を検出するためのセンサである。閉塞検出部41は、例えば薬液チューブ60の内部が異物で詰まったり、薬液チューブ60が折れ曲がったりすることによって薬液の流れが阻害されることに起因する薬液チューブ60の内部の圧力上昇を検出する圧力センサなどによって構成される。
【0064】
気泡検出部42は、薬液チューブ60の内部に混入した気泡を検出するためのセンサである。気泡検出部42は、例えば超音波センサによって構成される。
【0065】
ポンプ検出部43は、ポンプ51が筐体2Aの前記収容部に収容されているか否かを検出するセンサである。
【0066】
ドア検出部44は、筐体2Aの前記収容部を開閉する図略の扉の開閉状態を検出するセンサである。
【0067】
図2及び図4に示すように、各薬液注入装置2は、表示部52と、警報部53と、インジケータ54と、再警報待機ランプ55と、警報ランプ56と、給電ランプ57と、バッテリーランプ58とをさらに備える。
【0068】
表示部52は、薬液注入装置2の動作状況を表示するためのものである。本実施形態では、表示部52は、パイロットランプによって構成されているが、これに限られず、例えば液晶表示装置などによって構成されていてもよい。
【0069】
表示部52が表示する薬液注入装置2の動作状況としては、次のようなものが例示できる。表示部52は、例えば薬液注入装置2に対して通信モジュール8が装着され、これらの間の通信が可能な状態になったことを表示することができる。また、表示部52は、薬液注入装置2が薬液の注入動作中であることを表示することができる。また、表示部52は、閉塞検出部41、気泡検出部42、ポンプ検出部43、ドア検出部44などのセンサによって検出された異常状態を表示することができる。また、表示部52は、薬液注入装置2が後述するロックアウトタイム中であることを表示することができる。さらに、表示部52は、薬液注入装置2が停止中であることを表示することができる。
【0070】
これらの動作状況は表示部52としてのパイロットランプを異なる色で点灯させたり、点滅させたり、消灯させたりすることによって表示される。また、表示部52が液晶表示装置などの表示装置によって構成されている場合には、これらの動作状況は、文字、図形などによって表示されてもよい。
【0071】
インジケータ54は、薬液の注入中にそのおおよその流量を医療従事者に知らせるための表示を行う。インジケータ54は、例えば流量に応じた速度でスクロールするように構成されている。
【0072】
再警報待機ランプ55は、再警報待機中にランプ表示する。薬液注入装置2に何らかのエラーが発生して警報音が鳴っている場合、医療従事者は薬液注入装置2と外部機器7との通信を確立した後に警報音を消す(アラームを解除する)。しかし、アラームを解除しても薬液注入装置2に発生したエラー状態が解消したわけではないので、アラームの解除から一定時間経過しても薬液注入装置2のエラー状態が解消されていない場合には、再度警報音が鳴るように薬液注入装置2が構成されている。このように再警報待機ランプ55は、医療従事者によってアラームが解除された状態(消音状態)で、かつ、薬液注入装置2のエラーが解消されていない状態である場合に表示される。
【0073】
警報部53及び警報ランプ56は、上述した安全検出装置4によって検出される薬液注入装置2の異常を医療従事者に知らせるためのものである。安全検出装置4によって薬液注入装置2の異常が検知されたときには、警報出力部33は、警報部53が警報音を発し、警報ランプ56が点灯、点滅等の表示を行うように警報部53及び警報ランプ56を制御して当該異常を医療従事者に知らせる。
【0074】
給電ランプ57は、電源部24のバッテリーの残量が少なくなったことを医療従事者に知らせるための表示を行う。バッテリーランプ58は、電源部24のバッテリーの残量を表示する。
【0075】
各薬液注入装置2は、追加受信部25をさらに備える。追加受信部25は、追加投与装置9から出力される薬液の追加投与信号を受信する。当該追加投与信号は、第2の外部機器としての追加投与装置9から出力される信号であって薬液の増量注入の開始を指示する開始信号(増量注入の開始信号)である。図2に示すように、追加投与装置9は、追加送信部91と、追加制御部92と、追加投与スイッチ93と、電源部94とを含む。追加投与装置9は電源部94の電力によって動作し、追加投与装置9の動作は追加制御部92によって制御される。患者によって追加投与スイッチ93が操作されると、追加送信部91は、薬液の導出量を増加させるための前記追加投与信号を無線で薬液注入装置2の追加受信部25に送信する。追加受信部25が当該信号を受信すると、ポンプ制御部34は、薬液の注入の流量が増量されるようにポンプ51を制御する。
【0076】
ただし、ポンプ制御部34は、追加投与装置9からの前記信号を追加受信部25が受信した場合に、追加投与装置9からの前回の信号を受信してから予め設定された時間(ロックアウトタイム)が経過しているか否かを判定する。ポンプ制御部34は、ロックアウトタイムが経過していないと判定すると、当該追加投与装置9からの指示は無効と判断する。これにより、患者に対して過剰な薬液の投与を防止する。一方、ポンプ制御部34は、ロックアウトタイムが経過していると判定すると、追加投与装置9からの指示に応じた増加流量で薬液を導出するための駆動電圧を設定し、予め設定された期間が経過すると、通常の流量(増量前の設定流量)で薬液を導出するための駆動電圧に戻す。
【0077】
上記のようにポンプ制御部34は、追加受信部25が増量注入の前記開始信号を受信した場合に前記薬液の増量注入が開始されるようにポンプ51を制御する。また、ポンプ制御部34は、追加受信部25が増量注入の停止信号を受信した場合に薬液の増量注入が停止されるようにポンプ51を制御してもよく、この場合、薬液の注入量は例えば増量前の通常の注入量に戻るようにポンプ51を制御してもよい。当該増量注入の停止信号は、第2の外部機器としての追加投与装置9から出力される信号であって薬液の増量注入の停止を指示する停止信号である。
【0078】
各薬液注入装置2は、無線給電部23と、電源部24とをさらに備える。本実施形態では、電源部24は、充電池によって構成されている。電源部24を充電する際には、薬液注入装置2は、例えば電磁誘導方式で充電を行うための図略の無線充電台上に配置される。これにより、無線給電部23のコイルに対して電磁誘導で電流を発生させることにより電源部24を充電することができる。
【0079】
本実施形態では、各薬液注入装置2は、薬液の注入を開始するためのスイッチ、薬液の注入を停止するためのスイッチ、薬液の注入の設定値についての設定を変更するための入力手段などの操作手段を備えていない。また、本実施形態では、各薬液注入装置2は、文字を表示するための液晶表示装置などの表示装置を備えていない。
【0080】
また、本実施形態では、薬液注入装置2と通信モジュール8との間の信号の送受信は、赤外線通信を利用した無線データ通信によって行われ、しかも、薬液注入装置2の充電は、電磁誘導方式などの無線充電によって行われる。したがって、薬液注入装置2には、有線データ通信の場合に必要になる端子接続用の開口部や、有線充電の場合に必要になる端子接続用の開口部を設ける必要がない。これにより、本実施形態に係る薬液注入装置2は、防滴性に優れている。
【0081】
[通信モジュール]
通信モジュール8は、薬液注入装置2と外部機器7との間の情報の送受信を中継するためのものである。図2及び図4に示すように、通信モジュール8は、装着部としての一対の係合部80と、モジュール通信部81と、装置検出部82と、データ変換部83とを備える。
【0082】
薬液注入装置2と外部機器7とが情報の送受信を行う際には、通信モジュール8は、薬液注入装置2の所定の部位に装着される。薬液注入装置2は、一対の係合部80が係合する一対の被係合部20を有する。通信モジュール8の一対の係合部80を薬液注入装置2の一対の被係合部20に係合させることにより、図3に示すように通信モジュール8が薬液注入装置2に装着される。この装着状態では、通信モジュール8のモジュール通信部81は、薬液注入装置2の通信部21に対して近接又は当接した状態で対向する位置に配置される。本実施形態では、通信モジュール8のモジュール通信部81と薬液注入装置2の通信部21とは、赤外線を用いた無線データ通信である赤外線通信によって互いに情報の送受信を行う。
【0083】
通信モジュール8の装置検出部82と薬液注入装置2のモジュール検出部22とは、薬液注入装置2に対して通信モジュール8が通信可能であることを検出するためのものである。これらの検出部22,82としては、例えば光センサ、磁気センサなどを例示できるが、これらに限られない。光センサは、光の断続や強さを検出して電気信号に変換するセンサであり、磁気センサは、磁石の磁束密度を検出して電気信号に変換するセンサである。
【0084】
薬液注入装置2に対して通信モジュール8が通信可能であることが前記検出部22,82によって検出されると、装置検出部82は、電気信号をデータ変換部83に出力し、データ変換部83は、外部機器7と薬液注入装置2との間の情報の送受信を許容する。また、データ変換部83は、前記情報の送受信を許容する機能に加えて、さらに、規格の異なるデータを送受信可能なように変換するアダプタとしての機能を有する。本実施形態では、薬液注入装置2と通信モジュール8は、赤外線通信によって互いに情報を送受信するように構成され、外部機器7と通信モジュール8は、ユニバーサルシリアルバス(USB)の規格によって互いに情報を送受信するように構成されている。データ変換部83は、これらの規格の異なるデータを薬液注入装置2と外部機器7との間で送受信可能なように変換する。
【0085】
[外部機器]
外部機器7は、上述した種々の機能を有する。外部機器7としては、これらの種々の機能を有するものであればよく、その具体的態様は限定されない。外部機器7としては、例えばスマートフォン、タブレット端末、ノートパソコンなどの携帯型情報通信端末を用いることができる。図1及び図3に示す具体例では、外部機器7としてスマートフォンを用いている。
【0086】
外部機器7は、機器制御部71と、機器記憶部72と、入力受付部73と、機器通信部74と、表示装置75とを備える。機器制御部71は、外部機器7の動作を制御する。表示装置75は、例えば液晶表示装置などによって構成される。
【0087】
入力受付部73は、医療従事者による種々の入力を受け付ける機能を有する。入力受付部73は、例えば、薬液の注入を開始させる開始入力者によって行われる薬液の注入を開始させるための入力と、薬液の注入を停止させる停止入力者によって行われる薬液の注入を停止させるための入力と、薬液の注入の設定値を設定又は変更する設定入力者によって行われる入力と、を受け付ける。開始入力者、停止入力者及び設定入力者は、何れも医師や看護師などの医療従事者である。
【0088】
入力受付部73は、薬液の注入の開始を指示するための入力を行う開始入力者を識別するための識別情報の入力を受け付ける。また、入力受付部73は、薬液の注入の停止を指示するための入力を行う停止入力者を識別するための識別情報の入力を受け付ける。さらに、入力受付部73は、薬液の注入の設定値の設定又は変更を指示するための入力を行う設定入力者を識別するための識別情報の入力を受け付ける。これらの識別情報は、例えば外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において開始入力者、停止入力者又は設定入力者を特定可能な情報が入力されることによって入力受付部73に受け付けられ、機器記憶部72に記憶される。
【0089】
機器通信部74は、入力受付部73に受け付けられた前記入力に基づいて薬液注入装置2に対して指示を与える種々の信号を出力する。当該種々の信号としては、前記開始信号、前記停止信号、前記開始入力者情報を含む信号、前記停止入力者情報を含む信号、前記設定信号、前記設定入力者情報を含む信号などを例示できる。
【0090】
機器記憶部72は、種々の情報を記憶する。当該種々の情報としては、前記開始指示情報、前記開始入力者情報、前記停止指示情報、前記停止入力者情報、前記設定指示情報、前記設定入力者情報などを例示できる。
【0091】
表示装置75は、機器記憶部72に記憶された前記開始指示情報、前記開始入力者情報、前記停止指示情報、前記停止入力者情報、前記設定指示情報、前記設定入力者情報などを表示する。
【0092】
[薬液注入の開始動作]
図5は、本発明の実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、実施形態に係る薬液注入方法のうち、薬液の注入開始まで(輸液開始まで)の流れを示している。
【0093】
図5に示すように、医師、看護師などの医療従事者は、当該医療従事者を識別するための識別情報を外部機器7に入力する(ステップS1)。具体的に、当該識別情報は、外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において当該医療従事者を特定可能な情報が入力されることによって入力受付部73に受け付けられ、機器記憶部72に記憶される。当該識別情報としては、外部機器7を利用する医療従事者が当該利用の開始時に外部機器7にログインする際に入力する認証IDを例示できる。なお、認証IDの入力とともにパスワードの入力が要求されてもよい。
【0094】
次に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2に近づける(ステップS2)。具体的には、本実施形態では、図3及び図4に示すように、通信モジュール8は、通信モジュール8の一対の係合部80を薬液注入装置2の一対の被係合部20に係合させることにより、薬液注入装置2における予め設定された部位に装着される。
【0095】
通信モジュール8が薬液注入装置2に装着されると、通信モジュール8の装置検出部82は、通信モジュール8が薬液注入装置2に対して通信可能であることを検出し、データ変換部83は、外部機器7と薬液注入装置2との間の情報の送受信を許容する。
【0096】
また、通信モジュール8が薬液注入装置2に装着されると、薬液注入装置2のモジュール検出部22は、通信モジュール8が薬液注入装置2に対して通信可能であることを検出する(ステップS3)。
【0097】
次に、薬液注入装置2のメイン制御部31は、薬液注入装置2がスリープ状態にあるか否かを判定する(ステップS4)。薬液注入装置2がスリープ状態にあるとき、薬液注入装置2の電源はオフの状態にあり、薬液注入装置2がスリープ状態にないとき、薬液注入装置2の電源はオンの状態にある。
【0098】
薬液注入装置2がスリープ状態にあるとメイン制御部31が判定すると(ステップS4においてYES)、メイン制御部31は、薬液注入装置2の電源をオンにする制御を行い(ステップS5)、通信モジュール8を介した薬液注入装置2と外部機器7との通信が開始される(ステップS6)。薬液注入装置2がスリープ状態にないとメイン制御部31が判定すると(ステップS4においてNO)、薬液注入装置2の電源をオンにする制御を行うことなく、通信モジュール8を介した薬液注入装置2と外部機器7との通信が開始される(ステップS6)。
【0099】
当該通信においては、外部機器7の機器制御部71は、通信モジュール8が装着された薬液注入装置2についての初期確認を行う。当該初期確認には、通信モジュール8が装着された薬液注入装置2が複数の薬液注入装置2(第1の薬液注入装置2、第2の薬液注入装置2及び第3の薬液注入装置2)のうちの何れの装置であるかの確認が含まれる。具体的に、薬液注入装置2の識別情報に関する信号が薬液注入装置2から出力され、通信モジュール8を経由して外部機器7に入力される。薬液注入装置2の前記識別情報は、例えばシリアル番号のように個々の薬液注入装置2の識別をするために予め個々の薬液注入装置2に割り当てられている情報である。
【0100】
次に、外部機器7の機器制御部71は、薬液注入装置2に関する情報や追加投与装置9に関する情報を薬液注入装置2から読み出す(ステップS7)。当該薬液注入装置2に関する情報には、例えば個々の薬液注入装置2に設定されている設定値、薬液注入装置2の電池残量などの情報が含まれる。当該設定値には、例えば、薬液注入時における薬液の流量、薬液の注入量などが含まれる。前記追加投与装置9に関する情報には、例えば、追加投与装置9の操作回数、ロックアウトタイム経過後の有効操作回数、ロックアウトタイム中の無効操作回数、追加投与量などが含まれる。当該薬液注入装置2に関する情報や追加投与装置9に関する情報を含む信号が薬液注入装置2から出力され、通信モジュール8を経由して外部機器7に入力され、当該情報が機器記憶部72に記憶される。
【0101】
次に、外部機器7を操作する医療従事者は、薬液注入装置2による薬液の注入を開始する前に、薬液注入装置2に設定されている設定値を変更することができる。具体的に、本実施形態では、外部機器7の入力受付部73は、薬液注入装置2の設定を変更するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS8)。入力受付部73は、薬液注入装置2の設定を変更するか否かについて医療従事者に確認するための表示を行うように外部機器7の表示装置75を制御する。
【0102】
外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において医療従事者が薬液注入装置2の設定を変更するという入力をすると(ステップS8においてYES)、機器制御部71は入力された設定変更の情報に関する設定信号を外部機器7から出力する。出力された当該設定信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に入力された当該設定信号に係る設定変更の情報は、記憶部32に記憶され、薬液注入装置2の設定が変更される(ステップS9)。一方、当該入力画面において医療従事者が薬液注入装置2の設定を変更しないという入力をすると(ステップS8においてNO)、設定値は変更されない。
【0103】
外部機器7の機器通信部74は、薬液の注入の開始を指示するための入力を外部機器7に対して行った当該医療従事者(開始入力者)を識別する設定入力者情報を含む信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に入力された当該信号に係る開始入力者情報は、記憶部32に記憶される(ステップS10)。
【0104】
また、設定値の変更がされた場合には、外部機器7の機器通信部74は、薬液の注入の設定値の変更を指示するための入力を外部機器7に対して行った当該医療従事者(設定入力者)を識別する設定入力者情報を含む信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に入力された当該信号に係る設定入力者情報は、記憶部32に記憶される(ステップS10)。
【0105】
薬液注入装置2の設定が変更された場合には、機器制御部71は、設定変更後の内容を医療従事者が確認できるように、表示装置75を制御して当該設定変更後の内容を表示する(ステップS11)。また、薬液注入装置2の設定が変更されなかった場合にも、機器制御部71は、現状の設定の内容を医療従事者が確認できるように、表示装置75を制御して当該現状の設定の内容を表示する(ステップS11)。
【0106】
次に、ポンプ制御部34は、薬液注入装置2においてプライミングが実行されるようにポンプ51を制御する(ステップS12)。プライミングは、例えば薬液チューブ60内に存在する気泡を排出するために一時的に薬液の流量を通常運転の設定値よりも大きな値に設定してポンプ51を運転するものである。
【0107】
プライミングが実行された後、ポンプ制御部34は、薬液注入装置2に設定されている設定値で薬液の注入が開始されるようにポンプ51を制御する(ステップS13)。
【0108】
最後に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2から遠ざける(ステップS14)。具体的に、薬液注入装置2に装着されていた通信モジュール8は、薬液注入装置2から取り外される。通信モジュール8が薬液注入装置2から取り外された後、薬液注入装置2単体では、薬液の注入の停止、薬液の注入の設定値の変更などを行うことはできない。これにより、医療従事者の意に反して、医療従事者以外の者が薬液注入装置2を操作して薬液の注入を停止させることを防ぐことができる。
【0109】
[薬液注入の停止動作]
図6は、実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、実施形態に係る薬液注入方法のうち、薬液の注入終了時の流れを示している。
【0110】
図6に示すように、医療従事者は、当該医療従事者を識別するための識別情報を外部機器7に入力する(ステップS21)。当該識別情報の入力は、上述した図5に示すステップS1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0111】
次に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2に近づける(ステップS22)。具体的には、本実施形態では、図3に示すように、通信モジュール8は薬液注入装置2における予め設定された部位に装着される。
【0112】
通信モジュール8が薬液注入装置2に装着されると、通信モジュール8の装置検出部82は、通信モジュール8が薬液注入装置2に対して通信可能であることを検出し、データ変換部83は、外部機器7と薬液注入装置2との間の情報の送受信を許容する。
【0113】
また、通信モジュール8が薬液注入装置2に装着されると、薬液注入装置2のモジュール検出部22は、通信モジュール8が薬液注入装置2に対して通信可能であることを検出し、(ステップS23)、通信モジュール8を介した薬液注入装置2と外部機器7との通信が開始される(ステップS24)。
【0114】
当該通信においては、図5におけるステップS6と同様に、外部機器7の機器制御部71は、通信モジュール8が装着された薬液注入装置2についての初期確認を行う。
【0115】
次に、外部機器7の機器制御部71は、図5におけるステップS7と同様に、薬液注入装置2に関する情報などを薬液注入装置2から読み出す(ステップS25)。当該薬液注入装置2に関する情報などを含む信号が薬液注入装置2から出力され、通信モジュール8を経由して外部機器7に入力され、当該情報が機器記憶部72に記憶される。
【0116】
次に、外部機器7の入力受付部73は、薬液注入装置2の薬液注入動作を停止するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS26)。入力受付部73は、薬液注入装置2の薬液注入動作を停止するか否かについて医療従事者に確認するための表示を行うように外部機器7の表示装置75を制御する。
【0117】
外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において医療従事者が薬液注入装置2の薬液注入動作を停止する入力をすると(ステップS26においてYES)、機器制御部71は、薬液注入装置2を停止させる停止信号を外部機器7から出力する。出力された当該停止信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に当該停止信号が入力されると、薬液注入装置2のメイン制御部31は、薬液注入装置2の薬液注入動作が停止されるようにポンプ51を制御する(ステップS27)。
【0118】
また、外部機器7の機器通信部74は、薬液の注入の停止を指示するための入力を外部機器7に対して行った当該医療従事者(停止入力者)を識別する停止入力者情報を含む信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。記憶部32は、薬液の注入の停止が指示されたことを示す情報を含む停止指示情報とともに前記停止入力者情報を記憶する(ステップS28)。
【0119】
次に、入力受付部73は、薬液注入装置2の電源をオフにするか否かについての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS29)。
【0120】
医療従事者が薬液注入装置2の電源をオフにする入力をすると(ステップS29においてYES)、機器制御部71は、薬液注入装置2の電源をオフにするオフ信号を外部機器7から出力する。出力された当該オフ信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に当該オフ信号が入力されると、メイン制御部31は、薬液注入装置2の電源をオフにする制御を行う(ステップS30)。
【0121】
最後に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2から遠ざける(ステップS31)。具体的に、薬液注入装置2に装着されていた通信モジュール8は、薬液注入装置2から取り外される。通信モジュール8が薬液注入装置2から取り外された状態では、薬液注入装置2単体では、薬液の注入を開始させることができなくなる。これにより、医療従事者の意に反して、医療従事者以外の者が薬液注入装置2を操作して薬液の注入を開始させることを防ぐことができる。
【0122】
[患者の状況を確認する動作]
図7は、本発明の実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、患者の状況を確認する動作を示している。患者の状況を確認する動作とは、医療従事者が定期的に患者の様態を目視で確認したり、患者からヒアリングしたりすることにより、患者の状況を確認し、確認された状況に関する情報を、薬液注入装置2の記憶部32及び外部機器7の機器記憶部72に記憶させて履歴として残すための動作をいう。
【0123】
図7に示すステップS41~S45は、図6に示すステップS21~S25と同様の処理が行われるため、詳細な説明を省略する。
【0124】
医療従事者は、患者の様態を目視で確認したり、患者からヒアリングしたりすることにより、患者の状況を確認し、確認された状況に関する情報を、外部機器7に入力する。具体的に、外部機器7の入力受付部73は、患者の状況に関する情報についての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS46)。入力受付部73は、医療従事者が患者の状況に関する情報を入力可能な表示を行うように外部機器7の表示装置75を制御する。
【0125】
医療従事者は、外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において、患者の状況を例えば文章で入力することができる。また、医療従事者は、当該入力画面において、予め設定された選択肢の中から、その患者の状況に適合するものを選択することもできる。かかる場合、当該選択肢は、例えば患者の表情を表す複数の図形などによって構成されていてもよい。具体的には、複数の図形は、例えば笑顔を表す図形、苦痛な表情を表す図形、これらの間の通常の表情を表す図形などによって構成される。なお、当該入力は、医療従事者ではなく、患者によって行われてもよい。
【0126】
外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において医療従事者が患者の状況に関する情報について入力をすると(ステップS46においてYES)、入力された患者の状況に関する情報(患者情報)は、機器記憶部72に記憶される(ステップS47)。
【0127】
また、外部機器7の機器通信部74は、患者の状況に関する情報と、患者の状況に関する情報の入力を外部機器7に対して行った当該医療従事者(状況入力者)を識別する状況入力者情報とを含む信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。記憶部32は、患者の状況に関する情報とともに前記状況入力者情報を記憶する(ステップS48)。
【0128】
最後に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2から遠ざける(ステップS49)。具体的に、薬液注入装置2に装着されていた通信モジュール8は、薬液注入装置2から取り外される。
【0129】
[アラームの停止動作]
図8は、本発明の実施形態に係る薬液注入方法を示すフローチャートであり、アラームの停止動作を示している。
【0130】
図8に示すように、安全検出装置4によって薬液注入装置2の異常が検出されると、薬液注入装置2のポンプ制御部34は、薬液の注入が停止されるようにポンプ51を制御し、薬液注入装置2の警報出力部33は、警報部53が警報音を発し、警報ランプ56が点灯、点滅などの表示を行うように警報部53及び警報ランプ56を制御する(ステップS61)。
【0131】
警報部53及び警報ランプ56によって薬液注入装置2の異常を知った医療従事者は、警報部53及び警報ランプ56によるアラームを解除するために、以下の処置を行う。まず、医療従事者は、当該医療従事者を識別するための識別情報を外部機器7に入力する(ステップS62)。当該識別情報の入力は、上述した図5に示すステップS1と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0132】
また、図8に示すステップS63~S66は、図6に示すステップS22~S25と同様の処理が行われるため、詳細な説明を省略する。
【0133】
図8に示すステップS66において、アラームに関する情報などの薬液注入装置2に関する情報などを含む信号が薬液注入装置2から出力され、通信モジュール8を経由して外部機器7に入力され、当該情報が機器記憶部72に記憶される。そして、機器制御部71は、外部機器7の表示装置75に当該アラームに関する情報が表示されるように表示装置75を制御する(ステップS67)。
【0134】
医療従事者は、外部機器7の表示装置75に表示されるアラームに関する情報を確認し、その内容に応じた適切な処置を行う。
【0135】
外部機器7の入力受付部73は、薬液注入装置2のアラームを解除するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS68)。入力受付部73は、薬液注入装置2のアラームを解除するか否かについて医療従事者に確認するための表示を行うように外部機器7の表示装置75を制御する。
【0136】
外部機器7の表示装置75に表示される入力画面において医療従事者が薬液注入装置2のアラームを解除する入力をすると(ステップS68においてYES)、機器制御部71は、薬液注入装置2のアラームを解除する解除信号を外部機器7から出力する。出力された当該解除信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に当該解除信号が入力されると、薬液注入装置2の警報出力部33は、薬液注入装置2のアラームが解除されるように警報部53及び警報ランプ56を制御する(ステップS69)。
【0137】
また、外部機器7の機器通信部74は、アラームの解除を指示するための入力を外部機器7に対して行った当該医療従事者(解除入力者)を識別する解除入力者情報を含む信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。記憶部32は、アラームの解除が指示されたことを示す情報を含む解除指示情報とともに前記解除入力者情報を記憶する(ステップS70)。
【0138】
次に、入力受付部73は、薬液注入装置2による薬液の注入を再開するか否かについての医療従事者による入力を受け付ける(ステップS71)。
【0139】
医療従事者が薬液注入装置2による薬液の注入を再開する入力をすると(ステップS71においてYES)、機器制御部71は、薬液注入装置2の運転を再開する信号を外部機器7から出力する。出力された当該信号は、通信モジュール8を経由して薬液注入装置2に入力される。薬液注入装置2に当該信号が入力されると、ポンプ制御部34は、薬液注入装置2の薬液の注入を再開するようにポンプ51を制御する(ステップS72)。
【0140】
最後に、医療従事者は、通信モジュール8を薬液注入装置2から遠ざける(ステップS73)。具体的に、薬液注入装置2に装着されていた通信モジュール8は、薬液注入装置2から取り外される。
【0141】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下の態様を採用することもできる。
【0142】
前記実施形態に係る薬液注入システム1では、通信モジュール8が設けられていたが、通信モジュール8は、省略することもできる。この場合、外部機器7から出力される種々の信号は、通信モジュール8を介さずに、薬液注入装置2の通信部21によって直接受信される。
【0143】
前記実施形態では、薬液注入装置2と通信モジュール8との間の信号の送受信は、赤外線通信を利用した無線データ通信によって行われていたが、これに限られない。薬液注入装置2と通信モジュール8との間の信号の送受信は、赤外線通信以外の無線データ通信によって行われてもよく、有線データ通信によって行われてもよい。
【0144】
前記実施形態では、薬液注入装置2の充電は、電磁誘導方式などの無線充電によって行われていたが、これに限られず、有線充電によって行われてもよい。
【0145】
前記実施形態において、薬液注入装置2は、患者によって追加投与スイッチ93が操作された場合に、その履歴が記憶部32に記憶されるように構成されていてもよい。
【0146】
前記ポンプ制御部34は、通信部21が前記開始信号を受信した場合にのみ薬液の注入が開始されるようにポンプ51を制御してもよい。また、前記ポンプ制御部34は、通信部21が前記停止信号を受信した場合にのみ薬液の注入が停止されるようにポンプ51を制御してもよい。
【0147】
さらに、前記ポンプ制御部34は、通信部21が前記開始信号を受信した場合及び追加受信部25が前記開始信号を受信した場合にのみ薬液の注入が開始されるようにポンプ51を制御してもよい。この場合の薬液の注入の開始には、薬液の増量注入の開始も含まれる。また、前記ポンプ制御部34は、通信部21が前記停止信号を受信した場合及び追加受信部25が前記停止信号を受信した場合にのみ薬液の注入が停止されるようにポンプ51を制御してもよい。この場合の薬液の注入の停止には、薬液の増量注入の停止も含まれる。
【符号の説明】
【0148】
1 薬液注入システム
2 薬液注入装置
7 外部機器
8 通信モジュール
21 通信部
22 モジュール検出部
32 記憶部
34 ポンプ制御部
51 ポンプ
60 薬液チューブ
71 機器制御部
72 機器記憶部
73 入力受付部
74 機器通信部
75 表示装置
81 モジュール通信部
82 装置検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8