IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友重機械工業株式会社の特許一覧

特許7062484ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法
<>
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図1
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図2
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図3
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図4
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図5
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図6
  • 特許-ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/10 20060101AFI20220425BHJP
   B29C 33/70 20060101ALI20220425BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20220425BHJP
   B29C 45/34 20060101ALI20220425BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B29C33/10
B29C33/70
B29C45/17
B29C45/34
B29C45/76
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018060814
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019171630
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】生田目 昂
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 美子
(72)【発明者】
【氏名】工藤 佑貴
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-009474(JP,A)
【文献】特開2002-187169(JP,A)
【文献】特開2011-247682(JP,A)
【文献】特開2012-196870(JP,A)
【文献】特開2002-292694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置のガスベントから排気される、前記金型装置のキャビティ空間に供給された樹脂の樹脂分解ガス濃度を検出する樹脂分解ガス濃度検出センサーと、
前記樹脂分解ガス濃度検出センサーが検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、前記金型装置の前記ガスベントが詰まっているかを判定する判定部と、を有するガスベント詰まり検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガスベント詰まり検出装置と、
金型装置と、を備えた金型システム。
【請求項3】
請求項1に記載のガスベント詰まり検出装置と、
射出成形機と、を備えた射出成形システム。
【請求項4】
金型装置のガスベントから排気される、前記金型装置のキャビティ空間に供給された樹脂の樹脂分解ガス濃度を検出する樹脂分解ガス濃度検出工程と、
前記樹脂分解ガス濃度検出工程で検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、前記金型装置のガスベントが詰まっているかを判定する判定工程と、を有するガスベント詰まり検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融した樹脂を射出装置により金型装置のキャビティ空間内に供給、充填し、所望の形状の成形品を製造することが従来からなされている。
【0003】
金型装置のキャビティ空間内に溶融した樹脂を供給、充填するためには、キャビティ空間内の空気を外部空間に排気する必要がある。
【0004】
また、金型装置のキャビティ空間内に溶融した樹脂を供給した際に、樹脂の一部が分解して樹脂分解ガスが発生する場合がある。係る樹脂分解ガスがキャビティ空間内に滞留すると、溶融した樹脂のキャビティ空間内への充填に影響を及ぼす恐れがあるため、係る樹脂分解ガスも外部空間に排気する必要がある。
【0005】
そこで、キャビティ空間内に存在する空気や、樹脂分解ガスをキャビティ空間内から外部空間に排気するために、金型装置には、キャビティ空間と、金型装置の外部空間とを連通するガスベントを設けることが従来からなされている。
【0006】
そして、キャビティ空間内で発生した樹脂分解ガス等をガスベントから適切に排気できるように、ベント構造の設計や、設計のために必要なデータを収集する方法についても各種検討がなされていた。例えば特許文献1には、金型注入材料の発生ガス測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-40390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、金型装置を繰り返し使用していると、ガスベント内等に固体の樹脂分解物等が堆積してガスベントが詰まり、キャビティ空間内の空気や、発生した樹脂分解ガスの排気が困難になる場合があった。
【0009】
このように、固体の樹脂分解物等によりガスベントが詰まると、成形材料の充填不足(充填不良)が生じたり、堆積した固体の樹脂分解物が樹脂の成形品に付着する等して、歩留まりの低下の原因となる。このため、適切なタイミングで金型装置を清掃できるように、ガスベントの詰まりを検出できるガスベント検出装置が求められていた。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の一側面では、ガスベントの詰まりを検出できるガスベント詰まり検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面では、金型装置のガスベントから排気される、前記金型装置のキャビティ空間に供給された樹脂の樹脂分解ガス濃度を検出する樹脂分解ガス濃度検出センサーと、
前記樹脂分解ガス濃度検出センサーが検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、前記金型装置の前記ガスベントが詰まっているかを判定する判定部と、を有するガスベント詰まり検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、ガスベントの詰まりを検出できるガスベント詰まり検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るガスベント詰まり検出装置、金型システムの説明図である。
図2図1の領域Aの拡大図である。
図3】ショット数と樹脂分解ガス濃度との関係の説明図である。
図4】ショット数と各ショットにおける樹脂分解ガス濃度の最大値との関係の説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係るガスベント詰まり検出方法のフロー図である。
図6】本発明の一実施形態に係る射出成形システムの型開完了時の状態を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る射出成形システムの型締時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係るガスベント詰まり検出装置、金型システム、射出成形システム、ガスベント詰まり検出方法について添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0015】
[ガスベント詰まり検出装置]
ここで、本実施形態のガスベント詰まり検出装置の一構成例について、図1図2を用いて説明する。図1は、ガスベント詰まり検出装置50、及びガスベント詰まり検出装置を適用する金型装置800の、キャビティ空間801、及びガスベント802を通る面での断面図を模式的に示した図である。また、図2は、図1の点線で示した領域Aを拡大して模式的に示した図である。
【0016】
本実施形態のガスベント詰まり検出装置を適用する金型装置800の構成例について説明する。
【0017】
図1図2に示すように、金型装置800は、固定金型810と、可動金型820と、可動部材830とを有することができる。固定金型810は固定されており、可動金型820は、例えば図1中の左右方向に移動することができ、固定金型810との間の距離を変更可能に構成されている。可動部材830は図1中の左右方向に移動することが可能であり、可動部材830によりキャビティ空間801内に充填され、得られた成形品を押圧し、突き出すことで金型装置800から取り出すことができる。
【0018】
図1図2では、固定金型810と、可動金型820とがタッチし、型締した状態を示している。型締をした状態では、固定金型810と、可動金型820との間に成形材料である樹脂を充填するための空間であるキャビティ空間801が形成される。係るキャビティ空間801に連通した成形材料導入口803から射出装置により成形材料である溶融した樹脂を供給することで、キャビティ空間801内に樹脂を充填することができる。
【0019】
図2に示すように、キャビティ空間801内に供給された成形材料である樹脂21は、樹脂導入口から、キャビティ空間801の端部801Aに向かって充填されていく。
【0020】
しかし、キャビティ空間801内には空気が残存している。また、キャビティ空間801内に溶融した樹脂を供給した際に、樹脂の一部が分解して樹脂分解ガスが発生する場合がある。そして、係る空気や、樹脂分解ガスがキャビティ空間801内に滞留すると、樹脂21は、キャビティ空間801の端部801Aまで到達できなくなり、樹脂の充填不足が生じる恐れがある。
【0021】
このため、キャビティ空間801と、金型装置800の外部空間とを連通するガスベント802を設けておくことができる。ガスベント802の数は特に限定されず、例えば1つのキャビティ空間801に対して、1つのガスベント802でもよく、1つのキャビティ空間801に対して複数のガスベント802を設けることもできる。
【0022】
ガスベント802は、例えば固定金型810の可動金型820と対向する面と、可動金型820の固定金型810と対向する面とのいずれか一方、もしくは両方に形成した溝により構成することができる。図2では、可動金型820に溝を形成し、ガスベント802とした例を示している。
【0023】
また、可動部材830のキャビティ空間に対向する面830Aにスリットを設け、可動部材830内を中空構造とすることでガスベントとすることもできる。
【0024】
ガスベント802を設けておくことで、キャビティ空間801内に溶融した樹脂を供給した際に、キャビティ空間801内にあった空気や、樹脂が分解して発生した樹脂分解ガスをキャビティ空間801内から、外部空間へと排気することができる。このため、キャビティ空間801への樹脂の充填不足等が生じることを抑制できる。
【0025】
しかしながら、キャビティ空間801への樹脂の充填を複数回繰り返し実施すると、ガスベント802内部に固体である樹脂分解物が堆積する場合があった。また、堆積の程度によっては、ガスベント802のキャビティ空間801側の開口部8021近傍にも係る固体の樹脂分解物が付着する場合があった。このようにガスベント802内部や、ガスベント802の開口部8021近傍に樹脂分解物が堆積すると、ガスベント802が詰まり、樹脂のキャビティ空間801への充填不足が生じる場合があった。また、堆積した樹脂分解物がキャビティ空間801内に充填し、製造した成形品の表面に付着し、外観を損ねる場合があった。このように、樹脂の充填不足や、堆積した樹脂分解物の成形品表面への付着が生じると、その程度によっては不良品として除外する必要があり、歩留まり低下の原因となる。
【0026】
このため、ガスベント802が詰まる前に、金型装置800を清掃し、歩留まりの低下を抑制できるように、ガスベント802の詰まりを検出できるガスベント詰まり検出装置が求められていた。
【0027】
そこで、本発明の発明者らが検討を行ったところ、ガスベント802に固体の樹脂分解物が堆積し、ガスベント802の一部が塞がれると、その程度により、ガスベント802から排出される樹脂分解ガスの濃度が変化していることを見出した。そして、ガスベントから排出される樹脂分解ガスの濃度をモニターすることで、ガスベントの詰まりを検出できることを見出し、本発明を完成させた。
【0028】
図3に、ショット数と、各ショットにおいて、キャビティ空間801に樹脂を充填している間にガスベント802から排出される樹脂分解ガス濃度の変化との関係を示す。なお、ショット数は、金型装置800を清掃後、金型装置800のキャビティ空間801に樹脂を充填し、成形品を製造した回数に相当する。
【0029】
図3では各ショットにおいて、溶融した樹脂を射出し、キャビティ空間に樹脂の充填を開始してから、充填を完了するまでに、ガスベントから排気された樹脂分解ガスの濃度の変化を示している。例えば、期間31は、清掃完了後の金型装置に1回目の樹脂の充填を行っている間、すなわち1回目のショットの樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の変化を示している。期間31においては、最初は金型装置のキャビティ空間内に溜まっていた空気もあわせてガスベントから排気されるため、ガスベントから排気されるガス内の樹脂分解ガス濃度が徐々に高まり、一定の濃度Cまで達する。その後数回のショットでは、樹脂充填を行っている間にガスベントから排気されるガス内の樹脂分解ガス濃度の変化はほぼ同じ挙動を示す。
【0030】
しかし、金型装置の清掃を行わずにショット数を重ね、ガスベント内等に樹脂分解物が堆積し、ガスベントの一部が塞がれ始めると、図2におけるキャビティ空間801の端部801A近傍まで樹脂21が到達した際に、樹脂21が充填されていない空間801Bの圧力が高くなる。そして、断熱圧縮が生じるため、該樹脂21が充填されていない空間801Bの温度が高くなり、樹脂21の分解が促進される。このため、図3に示したn回目のショットでは、樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度が当初の濃度Cよりも高い濃度Cにまで達することになる。また、n回目のショットの際よりもガスベントの詰まりが進行した(n+1)回目のショットでは、樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値はさらに高くなり、濃度Cにまで達する。
【0031】
ここで、ショット数と、各ショットで樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値との関係を図4に示す。ここまで説明したように、清掃直後の金型装置を用い、該金型装置に樹脂を充填した1回目のショットでは、樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値は例えばCとなる。そして、ショット数を重ねても、しばらくは各ショットにおける樹脂分解ガス濃度の最大値はCのまま一定となる。
【0032】
しかしながら、ガスベントの一部が塞がれ始めると、各ショットで樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値がCよりも高くなる。そして、ガスベントが完全に詰まる直前の1回のショットにおける樹脂分解ガス濃度の最大値はCまで高くなる。
【0033】
この様に、ガスベントが塞がれている程度に応じて、各ショットにおいて樹脂の充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値が変化する。このため、ガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度を検出し、検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、具体的には例えば、各ショットで樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値に基いて、ガスベントが詰まっているかを判定できる。
【0034】
そこで、例えば図1に示すように、本実施形態のガスベント詰まり検出装置50は、樹脂分解ガス濃度検出センサー501と、判定部502とを有することができる。
【0035】
樹脂分解ガス濃度検出センサー501は、金型装置800のガスベント802から排気される、金型装置800のキャビティ空間801に供給された樹脂の樹脂分解ガス濃度を検出することができる。
【0036】
また、判定部502は、樹脂分解ガス濃度検出センサー501が検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、金型装置800のガスベント802が詰まっているかを判定することができる。
【0037】
樹脂分解ガス濃度検出センサー501としては、ガスベント802から排気される、金型装置800のキャビティ空間801に供給された樹脂の樹脂分解ガスの濃度を検出できるセンサーを用いることができる。
【0038】
このため、樹脂分解ガス濃度検出センサー501の種類は特に限定されず、用いる樹脂の種類や、射出成形の際の条件等に応じて選択することができる。
【0039】
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)であれば4-フェノキシフェノールや1,4-ジフェノキシベンゼンが発生するため、VOCセンサーを、ポリフェニレネーテル(PPE)であればo―クレゾールや2,6-キシレノール、2,4-キシレノールが発生するためVOCセンサーを、ポリフェニレンサルファイド(PPS)であればベンゼンチオールやジフェニルジスルフィド、フェニルスルフィド、硫化水素が発生するためVOCセンサーや硫化水素センサーを、ポリアミド66(PA66)であればアンモニアや二酸化炭素、シクロペンタノンが発生するためアンモニアセンサーや二酸化炭素センサー、VOCセンサーを、ポリアミド6(PA6)であればε―カプロラクタムが発生するためVOCセンサーを、ポリカーボネート(PC)であればCOやフェノールが発生するため二酸化炭素センサーやVOCセンサーを、液晶ポリマー(LCP)であればベンゼンやフェノール、ビフェニル、安息香酸フェニルが発生するのでVOCセンサーを、ポリブチレンテレフタレート(PBT)であれば二酸化炭素や1,3-ブタジエン、テトラヒドロフラン、ベンゼンが発生するため二酸化炭素センサーやVOCセンサーを、ポリエチレンテレフタレート(PET)であれば二酸化炭素やエチレン、メタン、アセトアルデヒド、ベンゼンが発生するため二酸化炭素センサーや可燃ガスセンサー、VOCセンサーを、ポリオキシメチレン(POM)であればホルムアルデヒドが発生するためVOCセンサーを、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)であれば炭素数2以上の飽和炭化水素や炭素数2以上の不飽和炭化水素が発生するため可燃ガスセンサーやVOCセンサーを、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)であればメタクリル酸メチルが発生するためVOCセンサーを、ポリスチレン(PS)であればスチレンが発生するためVOCセンサーを、ポリ塩化ビニル(PVC)であれば塩化水素が発生するため塩化水素センサーをそれぞれ樹脂分解ガス検出センサーとして用いることができる
そして、判定部502は、例えばコンピュータの一種であり、CPU(Central Processing Unit)502Aと、記憶媒体502Bとを有することができる。なお、記憶媒体502Bとしては、例えばRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile RAM)、HDD(Hard Disk Drive)等が挙げられる。また、判定部502は、判定結果を表示するための表示装置502Cや、判定結果を外部に出力するためのネットワークインタフェースなどの通信部502D等と接続しておくこともできる。
【0040】
判定部502は、樹脂分解ガス濃度検出センサー501と接続しておくことができ、樹脂分解ガス濃度検出センサー501で検出した樹脂分解ガス濃度を取得することができる。そして、CPU502Aにおいて、キャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間にガスベント802から排気される樹脂分解ガス濃度の最大値と、記憶媒体502Bに予め設定し、記憶しておいた樹脂分解ガス濃度の最大値の閾値とを対比することができる。
【0041】
この際、取得したキャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値が、樹脂分解ガス濃度の閾値を越えていない場合にはガスベントは詰まっていないと判定することができる。このため、金型装置の清掃を行わず、続けて成形を実施できる旨、表示装置502Cに表示させたり、通信部502Dを介して射出成形システム等に対して出力することもできる。
【0042】
また、取得したキャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値が、樹脂分解ガス濃度の最大値の閾値を越えた場合にはガスベントが詰まっていると判定することができる。このため、次のショットを中止し、金型装置を清掃する旨、表示装置502Cに警告を表示させたり、通信部502Dを介して射出成形システム等に対して出力することもできる。
【0043】
樹脂分解ガス濃度の最大値の閾値の決め方は特に限定されず、例えば成形品に要求される仕様等に応じて選択することができる。このため、例えば予備試験を実施し、仕様を満たさない成形品が生じるまでの、各ショットのキャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値の変化を測定しておくことができる。すなわち、図4に示したようなグラフを取得しておくことができる。そして、例えば仕様を満たさない成形品が発生する前のショットにおける樹脂分解ガス濃度の最大値を閾値に設定することができる。
【0044】
以上に説明した本実施形態のガスベント詰まり検出装置によれば、従来は着目されていなかった樹脂分解ガス濃度を用いることで、容易にガスベントの詰まりを検出することができる。このため、係るガスベント詰まり検出装置を用いることで、容易に金型装置のガスベントの詰まりを検出することができ、成形品の歩留まりを高めることが可能になる。
[ガスベント詰まり検出方法]
本実施形態のガスベント詰まり検出方法は、以下の工程を有することができる。
【0045】
金型装置のガスベントから排気される、金型装置のキャビティ空間に供給された樹脂の樹脂分解ガス濃度を検出する樹脂分解ガス濃度検出工程。
樹脂分解ガス濃度検出工程で検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、金型装置のガスベントが詰まっているかを判定する判定工程。
【0046】
なお、本実施形態のガスベント詰まり検出方法は、既述のガスベント詰まり検出装置を用いて実施することができる。このため、既に説明した事項については説明を一部省略する。
【0047】
既述の様に、本発明の発明者らの検討によれば、ガスベントが塞がれている程度に応じて、各ショットで樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値が変化する。このため、ガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度を検出し、検出した樹脂分解ガス濃度に基いて、具体的には例えば各ショットで樹脂充填を行っている間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の最大値に基いて、ガスベントが詰まっているかを判定できる。
【0048】
そこで、本実施形態のガスベント詰まり検出方法は、図5のフローチャートに示したように、まず樹脂分解ガス濃度検出工程S1を実施することができる。樹脂分解ガス濃度検出工程S1では、金型装置のガスベントから排気される、金型装置のキャビティ空間に供給された樹脂の樹脂分解ガスの濃度を検出することができる。具体的には金型装置のキャビティ空間に樹脂を充填している間にガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度の変化を検出することができる。
【0049】
次いで、本実施形態のガスベント詰まり検出方法は、図5に示したように、判定工程S2を実施することができる。判定工程S2では、樹脂分解ガス濃度検出工程S1で検出した1ショット間の樹脂分解ガス濃度に基いて、金型装置のガスベントが詰まっているかを判定することができる。
【0050】
具体的には例えば、判定工程S2では、樹脂分解ガス濃度検出工程S1で検出したキャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間の樹脂分解ガス濃度の最大値が閾値を越えているかを判定することができる。
【0051】
そして、キャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間の樹脂分解ガス濃度の最大値が閾値を超えていないと判定した場合、ガスベントが詰まっていないと判定することができる。この場合、金型装置から成形品を取出した後、再度連続して金型装置のキャビティ空間に樹脂を充填することができる。その際、図5のフローチャートのNoの方に進み、樹脂分解ガス濃度検出工程S1と、判定工程S2とを再度実施することができる。
【0052】
また、判定工程S2において、キャビティ空間内に樹脂の充填を開始してから充填が完了するまでの間の樹脂分解ガス濃度の最大値が閾値を越えていると判定した場合には、金型装置のガスベントが詰まっていると判定することができる。この場合、図5のフローチャートのYesの方に進み、ガスベント詰まり検出方法のフローを終了することができる。そして、例えば表示装置等によりガスベントの詰まりを通知することができる。
【0053】
ガスベントの詰まりが通知された場合には、例えば金型装置の清掃等を行い、ガスベントの詰まりを取り除いた後、金型装置のキャビティ空間への樹脂の充填を再開し、繰り返し実施できる。この際、併せてガスベントの詰まり検出方法を再開することもできる。
【0054】
以上に説明した本実施形態のガスベント詰まり検出方法によれば、ガスベントから排気される樹脂分解ガス濃度を測定することで、容易にガスベントの詰まりを検出することができる。このため、係るガスベント詰まり検出方法を用いることで、容易に金型装置のガスベントの詰まりを検出することができ、成形品の歩留まりを高めることが可能になる。
[金型システム]
本実施形態の金型システムは、既述のガスベント詰まり検出装置と、金型装置とを有することができる。
【0055】
本実施形態の金型システム11は、図1に示すように、既述のガスベント詰まり検出装置50と、金型装置800とを有することができる。
【0056】
ガスベント詰まり検出装置50、及び金型装置800については既に説明したため、ここでは説明を省略する。
【0057】
本実施形態の金型システム11では、図1に示すようにガスベント802の金型装置800の外表面に位置する開口部、すなわち出口に検出部が対向するように、ガスベント詰まり検出装置50の樹脂分解ガス濃度検出センサー501を配置することができる。このように配置することで、ガスベント802から排気された樹脂分解ガスの濃度を精度よく測定することができる。樹脂分解ガス濃度検出センサー501の取付位置は任意であるが、固定側の部材、例えば固定金型810等に取付けると、可動側の部材、例えば可動金型820等に取り付ける場合に比べ、配線の取り回し等の点で好ましい。
【0058】
なお、ガスベント802に配管を接続し、該配管を介して樹脂分解ガス濃度検出センサー501と、ガスベント802とを接続することもできる。しかしながら、金型装置800は型開時、例えば可動金型820の位置が図中左側方向に移動するため、ガスベント802と、配管とを接続することが困難な場合がある。このため、上述のようにガスベント802の金型装置800の外表面に設けられた開口部と、樹脂分解ガス濃度検出センサー501の検出部とが対向するように配置することで、樹脂分解ガス濃度の検出を行うように構成することが好ましい。
【0059】
また、可動部材830のキャビティ空間に対向する面830A(図2を参照)にスリットを形成し、可動部材830を中空構造とすることでガスベントとする場合、可動部材830内に樹脂分解ガス濃度検出センサーを配置することができる。
【0060】
金型装置800には、複数のガスベント802を設けることができる。そして、樹脂分解ガス濃度検出センサー501は、いずれかのガスベント802に対応して配置されていればよく、その配置は特に限定されない。このため、図1では、金型装置800の上面に連通するように設けられたガスベント802Aの出口に対向するように樹脂分解ガス濃度検出センサー501を配置した例を示したが、係る形態に限定されない。例えば図1中、金型装置800の下面に連通するように設けられたガスベント802Bの出口に対向するように樹脂分解ガス濃度検出センサーを配置することもできる。
【0061】
以上に説明した本実施形態の金型システムによれば、既述のガスベント詰まり検出装置を備えている。このため、容易に金型装置のガスベントの詰まりを検出することができ、該金型システムを用いた成形品の歩留まりを高めることが可能になる。
[射出成形システム]
本実施形態の射出成形システム60は、既述のガスベント詰まり検出装置50と、射出成形機10とを有することができる。
【0062】
ここで、射出成形機について説明する。
【0063】
(射出成形機)
図6は、一実施形態による射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図7は、一実施形態による射出成形機の型締時の状態を示す図である。図6図7において、X方向、Y方向およびZ方向は互いに垂直な方向である。X方向およびY方向は水平方向を表し、Z方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X方向は型開閉方向であり、Y方向は射出成形機10の幅方向である。図6図7に示すように、射出成形機10は、型締装置100と、エジェクタ装置200と、射出装置300と、移動装置400と、制御装置700と、フレーム900とを有する。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0064】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図6および図7中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図6および図7中左方向)を後方として説明する。
【0065】
型締装置100は、金型装置800の型閉、型締、型開を行う。型締装置100は例えば横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、トグルサポート130、タイバー140、トグル機構150、型締モータ160、運動変換機構170、および型厚調整機構180を有する。
【0066】
固定プラテン110は、フレーム900に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0067】
可動プラテン120は、フレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされる。フレーム900上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。
【0068】
固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、型閉、型締、型開が行われる。固定金型810と可動金型820とで金型装置800が構成される。なお、金型装置800は既述の様に付帯設備として可動部材830等をさらに有することもできる。
【0069】
トグルサポート130は、固定プラテン110と間隔をおいて連結され、フレーム900上に型開閉方向に移動自在に載置される。尚、トグルサポート130は、フレーム900上に敷設されるガイドに沿って移動自在とされてもよい。トグルサポート130のガイドは、可動プラテン120のガイド101と共通のものでもよい。
【0070】
尚、本実施形態では、固定プラテン110がフレーム900に対し固定され、トグルサポート130がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされるが、トグルサポート130がフレーム900に対し固定され、固定プラテン110がフレーム900に対し型開閉方向に移動自在とされてもよい。
【0071】
タイバー140は、固定プラテン110とトグルサポート130とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。各タイバー140は、型開閉方向に平行とされ、型締力に応じて伸びる。少なくとも1本のタイバー140には、タイバー140の歪を検出するタイバー歪検出器141が設けられてよい。タイバー歪検出器141は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。タイバー歪検出器141の検出結果は、型締力の検出などに用いられる。
【0072】
尚、本実施形態では、型締力を検出する型締力検出器として、タイバー歪検出器141が用いられるが、本発明はこれに限定されない。型締力検出器は、歪ゲージ式に限定されず、圧電式、容量式、油圧式、電磁式などでもよく、その取付け位置もタイバー140に限定されない。
【0073】
トグル機構150は、可動プラテン120とトグルサポート130との間に配設され、トグルサポート130に対し可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。トグル機構150は、クロスヘッド151、一対のリンク群などで構成される。各リンク群は、ピンなどで屈伸自在に連結される第1リンク152および第2リンク153を有する。第1リンク152は可動プラテン120に対しピンなどで揺動自在に取付けられ、第2リンク153はトグルサポート130に対しピンなどで揺動自在に取付けられる。第2リンク153は、第3リンク154を介してクロスヘッド151に取付けられる。トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させると、第1リンク152および第2リンク153が屈伸し、トグルサポート130に対し可動プラテン120が進退する。
【0074】
尚、トグル機構150の構成は、図6および図7に示す構成に限定されない。例えば図6および図7では、各リンク群の節点の数が5つであるが、4つでもよく、第3リンク154の一端部が、第1リンク152と第2リンク153との節点に結合されてもよい。
【0075】
型締モータ160は、トグルサポート130に取付けられており、トグル機構150を作動させる。型締モータ160は、トグルサポート130に対しクロスヘッド151を進退させることにより、第1リンク152および第2リンク153を屈伸させ、トグルサポート130に対し可動プラテン120を進退させる。型締モータ160は、運動変換機構170に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構170に連結されてもよい。
【0076】
運動変換機構170は、型締モータ160の回転運動をクロスヘッド151の直線運動に変換する。運動変換機構170は、ねじ軸171と、ねじ軸171に螺合するねじナット172とを含む。ねじ軸171と、ねじナット172との間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0077】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、型締工程、型開工程などを行う。
【0078】
型閉工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。クロスヘッド151の位置や速度は、例えば型締モータエンコーダ161などを用いて検出する。型締モータエンコーダ161は、型締モータ160の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、クロスヘッド151の位置を検出するクロスヘッド位置検出器、およびクロスヘッド151の速度を検出するクロスヘッド速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。また、可動プラテン120の位置を検出する可動プラテン位置検出器、および可動プラテン120の速度を検出する可動プラテン速度検出器は、型締モータエンコーダ161に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0079】
型締工程では、型締モータ160をさらに駆動してクロスヘッド151を型閉完了位置から型締位置までさらに前進させることで型締力を生じさせる。型締時に可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図7参照)が形成され、射出装置300が成形材料導入口803を介してキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。キャビティ空間801の数は複数でもよく、その場合、複数の成形品が同時に得られる。
【0080】
型開工程では、型締モータ160を駆動してクロスヘッド151を設定速度で型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置200が可動金型820から成形品を突き出す。
【0081】
型閉工程および型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程および型締工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置を含む)、型締力は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、速度切替位置、型閉完了位置、および型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型締位置と型締力とは、いずれか一方のみが設定されてもよい。
【0082】
型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、型開工程におけるクロスヘッド151の速度や位置(型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置を含む)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、速度切替位置、および型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、速度が設定される。速度切替位置は、1つでもよいし、複数でもよい。速度切替位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型締位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0083】
尚、クロスヘッド151の速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の速度や位置などが設定されてもよい。また、クロスヘッドの位置(例えば型締位置)や可動プラテンの位置の代わりに、型締力が設定されてもよい。
【0084】
ところで、トグル機構150は、型締モータ160の駆動力を増幅して可動プラテン120に伝える。その増幅倍率は、トグル倍率とも呼ばれる。トグル倍率は、第1リンク152と第2リンク153とのなす角θ(以下、「リンク角度θ」とも呼ぶ)に応じて変化する。リンク角度θは、クロスヘッド151の位置から求められる。リンク角度θが180°のとき、トグル倍率が最大になる。
【0085】
金型装置800の交換や金型装置800の温度変化などにより金型装置800の厚さが変化した場合、型締時に所定の型締力が得られるように、型厚調整が行われる。型厚調整では、例えば可動金型820が固定金型810にタッチする型タッチの時点でトグル機構150のリンク角度θが所定の角度になるように、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0086】
型締装置100は、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整することで、型厚調整を行う型厚調整機構180を有する。型厚調整機構180は、タイバー140の後端部に形成されるねじ軸181と、トグルサポート130に回転自在に保持されるねじナット182と、ねじ軸181に螺合するねじナット182を回転させる型厚調整モータ183とを有する。
【0087】
ねじ軸181およびねじナット182は、タイバー140ごとに設けられる。型厚調整モータ183の回転は、回転伝達部185を介して複数のねじナット182に伝達されてよい。複数のねじナット182を同期して回転できる。尚、回転伝達部185の伝達経路を変更することで、複数のねじナット182を個別に回転することも可能である。
【0088】
回転伝達部185は、例えば歯車などで構成される。この場合、各ねじナット182の外周に受動歯車が形成され、型厚調整モータ183の出力軸には駆動歯車が取付けられ、複数の受動歯車および駆動歯車と噛み合う中間歯車がトグルサポート130の中央部に回転自在に保持される。尚、回転伝達部185は、歯車の代わりに、ベルトやプーリなどで構成されてもよい。
【0089】
型厚調整機構180の動作は、制御装置700によって制御される。制御装置700は、型厚調整モータ183を駆動して、ねじナット182を回転させることで、ねじナット182を回転自在に保持するトグルサポート130の固定プラテン110に対する位置を調整し、固定プラテン110とトグルサポート130との間隔Lを調整する。
【0090】
尚、本実施形態では、ねじナット182がトグルサポート130に対し回転自在に保持され、ねじ軸181が形成されるタイバー140が固定プラテン110に対し固定されるが、本発明はこれに限定されない。
【0091】
例えば、ねじナット182が固定プラテン110に対し回転自在に保持され、タイバー140がトグルサポート130に対し固定されてもよい。この場合、ねじナット182を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0092】
また、ねじナット182がトグルサポート130に対し固定され、タイバー140が固定プラテン110に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで、間隔Lを調整できる。
【0093】
さらにまた、ねじナット182が固定プラテン110に対し固定され、タイバー140がトグルサポート130に対し回転自在に保持されてもよい。この場合、タイバー140を回転させることで間隔Lを調整できる。
【0094】
間隔Lは、型厚調整モータエンコーダ184を用いて検出する。型厚調整モータエンコーダ184は、型厚調整モータ183の回転量や回転方向を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。型厚調整モータエンコーダ184の検出結果は、トグルサポート130の位置や間隔Lの監視や制御に用いられる。尚、トグルサポート130の位置を検出するトグルサポート位置検出器、および間隔Lを検出する間隔検出器は、型厚調整モータエンコーダ184に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0095】
型厚調整機構180は、互いに螺合するねじ軸181とねじナット182の一方を回転させることで、間隔Lを調整する。複数の型厚調整機構180が用いられてもよく、複数の型厚調整モータ183が用いられてもよい。
【0096】
尚、本実施形態の型厚調整機構180は、間隔Lを調整するため、タイバー140に形成されるねじ軸181とねじ軸181に螺合されるねじナット182とを有するが、本発明はこれに限定されない。
【0097】
例えば、型厚調整機構180は、タイバー140の温度を調節するタイバー温調器を有してもよい。タイバー温調器は、各タイバー140に取付けられ、複数本のタイバー140の温度を連携して調整する。タイバー140の温度が高いほど、タイバー140は熱膨張によって長くなり、間隔Lが大きくなる。複数本のタイバー140の温度は独立に調整することも可能である。
【0098】
タイバー温調器は、例えばヒータなどの加熱器を含み、加熱によってタイバー140の温度を調節する。タイバー温調器は、水冷ジャケットなどの冷却器を含み、冷却によってタイバー140の温度を調節してもよい。タイバー温調器は、加熱器と冷却器の両方を含んでもよい。
【0099】
尚、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。竪型の型締装置は、下プラテン、上プラテン、トグルサポート、タイバー、トグル機構、および型締モータなどを有する。下プラテンと上プラテンのうち、いずれか一方が固定プラテン、残りの一方が可動プラテンとして用いられる。下プラテンには下金型が取付けられ、上プラテンには上金型が取付けられる。下金型と上金型とで金型装置が構成される。下金型は、ロータリーテーブルを介して下プラテンに取付けられてもよい。トグルサポートは、下プラテンの下方に配設され、タイバーを介して上プラテンと連結される。タイバーは、上プラテンとトグルサポートとを型開閉方向に間隔をおいて連結する。トグル機構は、トグルサポートと下プラテンとの間に配設され、可動プラテンを昇降させる。型締モータは、トグル機構を作動させる。型締装置が竪型である場合、タイバーの本数は通常3本である。尚、タイバーの本数は特に限定されない。
【0100】
尚、本実施形態の型締装置100は、駆動源として、型締モータ160を有するが、型締モータ160の代わりに、油圧シリンダを有してもよい。また、型締装置100は、型開閉用にリニアモータを有し、型締用に電磁石を有してもよい。
【0101】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置200の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(図6および図7中右方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(図6および図7中左方向)を後方として説明する。
【0102】
エジェクタ装置200は、金型装置800から成形品を突き出す。エジェクタ装置200は、エジェクタモータ210、運動変換機構220、およびエジェクタロッド230などを有する。
【0103】
エジェクタモータ210は、可動プラテン120に取付けられる。エジェクタモータ210は、運動変換機構220に直結されるが、ベルトやプーリなどを介して運動変換機構220に連結されてもよい。
【0104】
運動変換機構220は、エジェクタモータ210の回転運動をエジェクタロッド230の直線運動に変換する。運動変換機構220は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0105】
エジェクタロッド230は、可動プラテン120の貫通穴において進退自在とされる。エジェクタロッド230の前端部は、可動金型820の内部に進退自在に配設される可動部材830と接触する。エジェクタロッド230の前端部は、可動部材830と連結されていても、連結されていなくてもよい。
【0106】
エジェクタ装置200は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。
【0107】
突き出し工程では、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で待機位置から突き出し位置まで前進させることにより、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。その後、エジェクタモータ210を駆動してエジェクタロッド230を設定速度で後退させ、可動部材830を元の待機位置まで後退させる。エジェクタロッド230の位置や速度は、例えばエジェクタモータエンコーダ211を用いて検出する。エジェクタモータエンコーダ211は、エジェクタモータ210の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、エジェクタロッド230の位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、およびエジェクタロッド230の速度を検出するエジェクタロッド速度検出器は、エジェクタモータエンコーダ211に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0108】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(図6および図7中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図6および図7中右方向)を後方として説明する。
【0109】
射出装置300は、フレーム900に対し進退自在なスライドベース301に設置され、金型装置800に対し進退自在とされる。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、圧力検出器360などを有する。
【0110】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料としては、樹脂を用いることができる。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0111】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(図6および図7中左右方向)に複数のゾーンに区分される。各ゾーンに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ゾーン毎に、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0112】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0113】
スクリュ330は、シリンダ310内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0114】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0115】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図7参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0116】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図6参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0117】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0118】
尚、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0119】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0120】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えばねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0121】
圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される圧力を検出する。圧力検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、圧力検出器360に作用する圧力を検出する。
【0122】
圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。圧力検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0123】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程および保圧工程などを行う。
【0124】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転数で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転数は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。尚、スクリュ330の回転数を検出するスクリュ回転数検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0125】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0126】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を成形材料導入口803を介して金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切替(所謂、V/P切替)が行われる。V/P切替が行われる位置をV/P切替位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0127】
尚、充填工程においてスクリュ330の位置が設定位置に達した後、その設定位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切替が行われてもよい。V/P切替の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、およびスクリュ330の速度を検出するスクリュ速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0128】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば圧力検出器360を用いて検出する。圧力検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。
【0129】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮のため、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0130】
尚、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0131】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0132】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(図6および図7中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(図6および図7中右方向)を後方として説明する。
【0133】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0134】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切り替えることにより、第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。尚、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411および第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0135】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向および回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0136】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、およびピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0137】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0138】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0139】
尚、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0140】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図6図7に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0141】
制御装置700は、型閉工程や型締工程、型開工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。また、制御装置700は、型締工程の間に、計量工程や充填工程、保圧工程などを行う。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」とも呼ぶ。
【0142】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、および突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、および冷却工程は、型締工程の開始から型締工程の終了までの間に行われる。型締工程の終了は型開工程の開始と一致する。尚、成形サイクル時間の短縮のため、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0143】
制御装置700は、操作装置750や表示装置760と接続されている。操作装置750は、ユーザによる入力操作を受け付け、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。表示装置760は、制御装置700による制御下で、操作装置750における入力操作に応じた操作画面を表示する。
【0144】
操作画面は、射出成形機10の設定などに用いられる。操作画面は、複数用意され、切り替えて表示されたり、重ねて表示されたりする。ユーザは、表示装置760で表示される操作画面を見ながら、操作装置750を操作することにより射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)などを行う。
【0145】
操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネルで構成され、一体化されてよい。尚、本実施形態の操作装置750および表示装置760は、一体化されているが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。
(ガスベント詰まり検出装置)
そして、本実施形態の射出成形システムは、既述のガスベント詰まり検出装置50を有することができる。
【0146】
ガスベント詰まり検出装置50の詳細については既述のため、ここでは説明を省略する。
【0147】
本実施形態の射出成形システムでは、金型装置800の外表面に位置するガスベント802の開口部、すなわち出口に対向するように、ガスベント詰まり検出装置50の樹脂分解ガス濃度検出センサー501を配置することができる。このように配置することで、ガスベントから排気された樹脂分解ガスの濃度を精度よく測定することができる。
【0148】
なお、ガスベント802に配管を接続し、該配管を介して樹脂分解ガス濃度検出センサー501と、ガスベント802とを接続することもできる。しかしながら、金型装置800は、型開時、例えば可動金型820の位置が図中左側方向に移動するため、ガスベント802と、配管とを接続することが困難な場合がある。このため、上述のようにガスベント802の金型装置800の外表面に設けられた開口部と、樹脂分解ガス濃度検出センサー501の検出部とが対向するように配置することで、樹脂分解ガス濃度の検出を行うように構成できる。
【0149】
また、可動部材830のキャビティ空間に対向する面830A(図2を参照)にスリットを形成し、可動部材830を中空構造とすることでガスベントとする場合、可動部材内に樹脂分解ガス濃度検出センサーを配置することができる。
【0150】
樹脂分解ガス濃度検出センサー501は、金型装置800に設けられたいずれかのガスベントの出口に対向するように配置されていればよい。このため、図6図7では、金型装置800の上面に連通するように設けられたガスベント802Aの出口に対向するように樹脂分解ガス濃度検出センサー501を配置した例を示したが、係る形態に限定されない。例えば図6図7中、金型装置800の下面に連通するように設けられたガスベント802Bの出口に対向するように樹脂分解ガス濃度検出センサーを配置することもできる。
【0151】
樹脂分解ガス濃度検出センサー501は、射出成形機10の、固定プラテン110、可動プラテン120、及びフレーム900のいずれかに固定しておくことが好ましい。また、可動部材830内に配置することもできる。
【0152】
なお、樹脂分解ガス濃度検出センサー501を金型装置800の下方に配置する場合には、金型装置800を型開し、成形品を取出す際に、下方に落下する成形品と接触しないように、例えば固定プラテン110に固定しておくことが好ましい。
【0153】
樹脂分解ガス濃度検出センサー501の固定方法は特に限定されないが、例えば図6図8に示すように、アーム部71を介して射出成形機10に固定しておくこともできる。
【0154】
そして、樹脂分解ガス濃度検出センサー501には、判定部502が接続されており、樹脂分解ガス濃度検出センサー501が検出した、金型装置800のガスベント802から排気された樹脂分解ガスの濃度に基づいて、ガスベント802の詰まりを検出できる。
【0155】
なお、判定部502は、射出成形機10の制御装置700に組み込んでおき、別途設けない構成とすることもできる。すなわち、制御装置700により判定部502の機能を実施することもできる。
【0156】
また、本実施形態の射出成形システムは、既述の金型システムと、射出成形機とを備えた構成とすることもできる。このため、本実施形態の射出成形システム60は、さらに金型装置800を含むこともできる。
【0157】
以上に説明した本実施形態の射出成形システムによれば、既述のガスベント詰まり検出装置を備えている。このため、容易に金型装置のガスベントの詰まりを検出することができ、該射出成形システムを用いた成形品の歩留まりを高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0158】
800 金型装置
801 キャビティ空間
802,802A、802B ガスベント
11 金型システム
50 ガスベント詰まり検出装置
501 樹脂分解ガス濃度検出センサー
502 判定部
10 射出成形機
60 射出成形システム
S1 樹脂分解ガス濃度検出工程
S2 判定工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7