(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/347 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
G01D5/347 110D
(21)【出願番号】P 2018062229
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【氏名又は名称】金山 義信
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輔
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155466(JP,A)
【文献】特開2009-276284(JP,A)
【文献】特開2010-256080(JP,A)
【文献】特開2010-032545(JP,A)
【文献】特開2002-340622(JP,A)
【文献】特開2000-193421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01D 5/26- 5/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射部と光透過部とが交互に連続して配置された第1スケールと、
前記第1スケールに対して相対的に移動可能な第1光検出部であって、前記第1スケールに光を照射するための第1発光手段からの光の照射に起因して前記第1スケールの前記光反射部で反射して戻った光、または、前記第1スケールを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第1受光手段を備える、第1光検出部と、
前記第1スケールに重ね合わせられて所定間隔の縞模様パターンの発光が可能な第2発光手段を備える第2スケールであって、前記縞模様パターンは、
発光の有無に関わらず、前記第1発光手段からの光を透過可能に構成され、且つ、前記第1スケールの前記光反射部及び前記光透過部と交差する方向に延びる、第2スケールと、
前記第2スケールに対して相対的に移動可能な第2光検出部であって、前記第2スケールからの光を受光し電気信号に変換して出力する第2受光手段を備える、第2光検出部と
を備える、エンコーダ。
【請求項2】
前記縞模様パターンは、有機EL素子により構成される、請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記第2スケール
は、
前記第1スケールと前記第1光検出部との間に延在する、
請求項1
又は2に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記第1スケールは、前記第2スケールと前記第1光検出部との間に延在する、
請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記第2発光手段は、前記第1スケールの前記光反射部及び前記光透過部と直交する方向に延びる前記縞模様パターンの発光を行うことが可能に構成されている、
請求項1から
4のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出を行うためのエンコーダであって、特に、2軸方向の変位検出に使用可能なエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定機等の分野において、高精度に寸法等の測定ができる光学式エンコーダ(以下、単にエンコーダと称する)が使用されている。エンコーダとは、スケール表面に生成された等間隔のパターンをリーディングヘッド(光検出部)で読み取り、リーディングヘッド上を通過したパターンの数をカウントすることで長さや角度を測定するものである。
【0003】
このようなエンコーダとしては、直線方向の相対変位量を測定するための1次元エンコーダが広く知られかつ用いられている。この1次元エンコーダは、直線方向の変位測定に使用可能であるので、例えば2つの1次元エンコーダを用いることで2次元的な変位量測定が可能になる。
【0004】
特許文献1は、2次元エンコーダの一例を開示する。特許文献1の2次元エンコーダは、光源からの光を平行光にするコリメータレンズと、コリメータレンズからの平行光を反射して光路を変更する平面ミラーと、平面ミラーからの光を所定の間隔で配列されている格子状のパターンにて透過するメインスケールと、メインスケールからの光を透過する基材に形成されたX軸用インデックススケール及びY軸用インデックススケールと、X軸用インデックススケールを透過した光を検知して電気信号に変換するX軸用光検知器と、Y軸用インデックススケールを透過した光を検知して電気信号に変換するY軸用光検知器と、それらX軸及びY軸用光検知器からの電気信号が入力される信号処理部とを備える。この2次元エンコーダでは、前述の基材の一方の面にX軸用インデックススケールが形成され、その基材の他方の面にY軸用インデックススケールが形成されるが、X軸用インデックススケールとY軸用インデックススケールとは、平面ミラーから見て重ならないように離して形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-307439号公報
【文献】特許第6108988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の2次元エンコーダでは、1つの光源からの光は、X軸用インデックススケールと、このX軸用インデックススケールから離れた位置にあるY軸用インデックススケールとに照射される。したがって、これら2つのインデックススケールが形成される基材やメインスケールをある程度以上大きくすることが必要である。このため、特許文献1の2次元エンコーダは、小型の機械又は装置における微小領域での変位量測定等には不向きである。
【0007】
本発明は、省スペース化を可能にする、2軸方向の変位検出用のエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、光非透過部(光反射部)と光透過部とが交互に連続して配置された第1スケールと、前記第1スケールに対して相対的に移動可能な第1光検出部であって、前記第1スケールに光を照射するための第1発光手段からの光の照射に起因して前記第1スケールの前記光非透過部で反射して戻った光、または、前記第1スケールを透過した光を受光し電気信号に変換して出力する第1受光手段を備える、第1光検出部と、前記第1スケールに重ね合わせられて所定間隔の縞模様パターンの発光が可能な第2発光手段を備える第2スケールであって、前記縞模様パターンは、前記第1スケールの前記光反射部及び前記光透過部と交差する方向に延びる、第2スケールと、前記第2スケールに対して相対的に移動可能な第2光検出部であって、前記第2スケールからの光を受光し電気信号に変換して出力する第2受光手段を備える、第2光検出部とを備える、エンコーダを提供する。
【0009】
好ましくは、前記第2スケールは、前記第1発光手段からの光を透過可能に構成され、前記第1スケールと前記第1光検出部との間に延在する。あるいは、前記第1スケールは、前記第2スケールと前記第1光検出部との間に延在するように設けられることも可能である。
【0010】
好ましくは、前記第2発光手段は、前記第1スケールの前記光反射部及び前記光透過部と直交する方向に延びる前記縞模様パターンの発光を行うことが可能に構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係る上記エンコーダによれば、2軸方向の変位検出が可能であり、かつ、省スペース化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエンコーダが適用されたプローブの概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態のエンコーダの概略構成図である。
【
図3】
図2のエンコーダの、第2スケールを中心としたスケールの一部の断面模式図である。
【
図4】
図2のエンコーダの第1スケールと第2スケールとの関係を説明するための図であり、(a)は第1スケールの一部の光反射部及び光透過部を示し、(b)は第2スケールの一部の有機EL素子及びセパレータを示す。
【
図5】
図2のエンコーダにおける、第1光検出部上での光模様及びそれの検出用のセンサ素子を示す模式図である。
【
図6】
図5の光に対する、第1光検出部での処理例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。
【0014】
本発明の一実施形態に係るエンコーダ10が適用されたプローブ1の概略構成図を
図1に示す。また、
図2に、
図1のエンコーダ10の概略構成図を示す。
【0015】
図1に示すプローブ1は、ハウジング(筐体)3と、このハウジング3に対して移動可能なスタイラス保持部材5とを備えている。ハウジング3は、被測定ワークピース(不図示)に関してプローブ1を移動させることができる座標測定機又は工作機械の如き位置決定装置に取り付けることができる。スタイラス保持部材5には、ワークピース接触端5aを有するスタイラス5bが取り付けられている。
図1に示すように、スタイラス保持部材5は、ワークピース等にスタイラス5bが非接触状態にあるとき、ばね部材7a、7bによる弾性力により、ハウジング3に対して初期位置に位置付けられる。ワークピース等との接触によりスタイラス5bが変位したとき、スタイラス保持部材5は、ここではX軸及びY軸からなる2次元平面において移動可能に構成されている。このスタイラス保持部材5の2次元平面つまりXY平面での移動を可能にするようにスタイラス保持部材5の下側にボール9が配置されている。なお、図示しないが、スタイラス保持部材5は、XY平面に直交するZ軸方向に相対移動しないように構成されている。
【0016】
このようなプローブ1におけるスタイラス5bの変位を検出するために、プローブ1にはエンコーダ10が搭載されている。エンコーダ10は、スケール12と、読取センサ14とを備える。ここでは、スタイラス保持部材5にスケール12が設けられ、ハウジング3に読取センサ14が設けられている。しかし、スタイラス保持部材5に読取センサ14が設けられ、ハウジング3にスケール12が設けられてもよい。なお、スタイラス保持部材5のスケール12が設けられる面5sは光を反射しない又は反射し難いように形成されていて、例えば黒色の無光沢材料表面として形成されている。
【0017】
図1のエンコーダ10の概略構成を
図2に示す。ただし、
図2では、スケール12と、読取センサ14との図面上での上下の位置関係が
図1の場合と逆である。
図2に示すように、スケール12は、第1スケール16と、第2スケール18とを備える。そして、読取センサ14は、第1スケールに対応する第1光検出部20と、第2スケールに対応する第2光検出部22とを備える。
【0018】
ここで、まずスケール12について説明する。第1スケール16は、光非透過部としての光反射部16aと光透過部16bとが交互に連続して配置されたスケールである。ここでは、第1スケール16は、透明なつまり光透過性のあるガラス製の板に(例えばCr、Au、Pt、Ag、Al等の)光反射率の高い金属を成膜して光反射部16aを形成することで構成されている。つまり、そのような金属膜が成膜されていない部分が光透過部16bになる。ここでは、光反射部16aと光透過部16bとのそれぞれは
図1のY軸に平行に延びるように設けられている。したがって、第1スケール16は、所定間隔の縞模様パターンを有する。
【0019】
この第1スケール16に、第2スケール18が重ね合わされている。第2スケール18は、3層からなる。第2スケール18を中心としたスケール12の一部の断面模式図を
図3に示す。第2スケール18において、
図2及び
図3中の真ん中の層(中間層)18mは、有機EL素子18aと、セパレータ18bとが交互に並んだ構成を備える。セパレータ18bは、主に、隣り合う有機EL素子18a間に設けられている。そして、中間層18mの上下には、第1電極層18u及び第2電極層18vが設けられている。第2スケール18は、電極層18u、18v間に電圧がかけられていないので有機EL素子18aに電圧がかけられていない状態でも、それに電圧がかけられている状態でも、ある程度以上の光透過性があるように、透過性材料で構成されている。したがって、第1スケール16と読取センサ14との間に延在する第2スケール18は、後述する第1発光部24からの光を透過可能である。なお、有機EL素子18aの材料、セパレータ18bの材料、電極層18u、18vの各材料としては、既知の種々の材料を用いることができる。なお、ここでは、有機EL素子18aとセパレータ18bとのそれぞれは
図1のX軸に平行に延びるように設けられている。したがって、第2スケール18は、所定間隔の縞模様パターンの発光が可能である。ただし、この所定間隔は、第1スケール16における上記所定間隔と同じであっても異なってもよい。
【0020】
そして、スケール12では、第1スケール16における光反射部16a及び光透過部16bが延在する方向(本実施形態ではY軸方向)が、第2スケール18における有機EL素子18aが延在する方向(本実施形態ではX軸方向)と交差するように、特にここでは直角に交差するように、第1スケール16と第2スケール18とは互いに対して設けられている。
図4に第1スケール16の一部と第2スケール18の一部とを模式的に示すように、第1スケール16における光反射部16a及び光透過部16bは、第2スケール18の有機EL素子18aと直交関係を有する。したがって、第2スケール18つまり有機EL素子18aは、第1スケール16の光反射部16a及び光透過部16bと交差する方向に延びる、特に直交する方向に延びる縞模様パターンの発光を行うことが可能である。ここでは、第1スケール16と第2スケール18とは既知の接合手段により一体的に接合されている。この接合による影響を受けないように、第1スケール16の光反射部16aは、第1スケール16における第2スケール18とは反対側の面に形成されている(
図1参照)。なお、第1スケール16と第2スケール18とは接合されることなく、単に重ね合わせられることでスケール12を構成してもよい。例えば、第2スケール18は有機ELシートとして構成され、単に第1スケール16に重ね合わせられてもよい。
【0021】
図1のプローブ1では、このようなスケール12から所定距離離れた位置に、上記読取センサ14が設けられている。読取センサ14は、スケール12に平行になるように設けられている。読取センサ14は、上述のごとく、第1スケール16に対応する第1光検出部20と、第2スケール18に対応する第2光検出部22とを備える。
【0022】
第1スケール16に対応する第1光検出部20は、読取センサ14の一部をなし、第1スケール16に対して相対的に移動可能である。第1光検出部20は、第1スケール16に光を照射するための第1発光部(第1発光手段)24と、第1スケール16から反射した光を受光し電気信号に変換して出力するための第1受光部(第1受光手段)26とを備えている。第1発光部24は、例えば、発光ダイオード(LED)アレイで構成することができるが、その他の光源、例えば半導体レーザー(LD)アレイを用いてもよい。特に、ここでは、第1発光部24は赤色光の光を第1スケール16に向けて照射するように構成されている。したがって、第1光検出部20の第1受光部26は、光を受光し、赤色光の成分に応じた電気信号を出力するように構成されている。なお、第1発光部24の光の色は赤色光に限定されない。
【0023】
第1受光部26は、例えば、フォトダイオード(PD)アレイを含んで構成することができる。また、第1発光部24を駆動するための回路と、第1受光部26における第1スケール16からの反射光を電気信号に変換して処理するための回路とが形成された電子部品、ここでは集積回路(IC)を第1光検出部20が備えていてもよいし、このICは第1光検出部20とは別体として存在してもよい。
【0024】
一方で、第2スケール18に対応する第2光検出部22は、第2スケール18に対して相対的に移動可能である点では、第1スケール16に対応する第1光検出部20と同じであるが、発光部(発光手段)を備えずに、第2受光手段としての第2受光部28を有する。これは、前述の記載から理解できるように、第2スケール18が、第2発光手段としての有機EL素子18aを有するからである。なお、第2発光手段には、有機EL素子18aの他に、第1電極層18u及び第2電極層18vが含まれてもよい。第2スケール18のうちの有機EL素子18aは、自己発光体であり、ここでは青色光を発するように構成されている。したがって、第2光検出部22の第2受光部28は、第2スケール18からの光を受光し電気信号に変換し、特に青色光の成分に応じた電気信号を出力するように構成されている。
【0025】
第2光検出部22の第2受光部28が第2スケール18からの光を電気信号に変換して処理するための回路は、ここでは、第1光検出部20と一体的に読取センサ14に備えられ、それらは1つの電子部品として構成されている。一方で、第2発光手段としての第2スケール18の有機EL素子18aの発光を制御するための回路を含む電子部品30は、読取センサ14とは別体として構成されている。しかし、読取センサ14及び電子部品30は一体化されてもよい。
【0026】
ここで、第1スケール16と第1光検出部20とでのX軸方向での変位検出を
図2、
図5及び
図6に基づいて説明する。なお、第2スケール18と第2光検出部22とでのY軸方向での変位検出は、第1スケール16と第1光検出部20とでのX軸方向の変位検出と、発光手段の配置の点で違いがあるが、受光手段での処理は概ね同じである。したがって、第2スケール18と第2光検出部22とでのY軸方向での変位検出については、その詳細な説明を省略する。なお、以下に説明する一軸についての変位検出の説明は、主として特許文献2に基づく。
【0027】
第1受光部26について説明する。第1受光部26は、第1発光部24から第2スケール18を透過しつつ第1スケール16に照射され、それの光反射部16aで反射されて、再度第2スケール18を通過しつつ第1受光部26側に戻った光を受光するためのPDアレイを含んで構成される。
図5を参照して詳細に説明する。
図5は、第1受光部26を説明する説明図である。
図5に示すように、第1発光部24から照射され第1スケール16で反射した光は、第1受光部26表面において明部40と暗部42の縞模様を形成する。明部40は、光反射部16aで反射された光に対応する部分であり、暗部42は、光透過部16bに対応する部分であり、光が反射されないために暗くなっている。
【0028】
第1受光部26を構成するPDアレイは、4つのPD素子PD1(記号44)、PD2(記号46)、PD3(記号48)、PD4(記号50)を一組とするPDのセットが、複数セット存在して構成される。ここでは、1つの明部40と1つの暗部42との組を4つのPD素子PD1、PD2、PD3、PD4で受光する。よって、明部40と暗部42とを合わせたサイズが、4つのPD素子PD1~PD4を合わせたサイズと同じであることが望ましい。
【0029】
このとき、4つの各PD素子は、PD1~PD4にかけてそれぞれ位相が1/4ずつずれた電気信号を出力し、複数のPD素子のセットの各PDは、PD1~PD4それぞれ同じ電気信号を出力する。つまり、各PD素子のセットの各PD1同士は同じ信号を出力し、各PD2同士は同じ信号を出力する。これは、PD3もPD4も同様である。
【0030】
PD1~PD4にかけて位相が1/4ずつずれた電気信号を出力するので、PD1とPD3は、互いに1/2即ち180度位相がずれた電気信号を出力し、PD2とPD4も同様に互いに180度位相がずれた電気信号を出力する。このため、各PD素子のセットのPD1同士、PD2同士、PD3同士、PD4同士が接続されて電気信号が出力される。更に、位相が180度異なるPD1とPD3の電気信号の差分をとってAとし、PD2とPD4の電気信号の差分をとってBとして出力することができる。これにより、電気信号Aと電気信号Bとは、位相が1/4つまり90度ずれた信号になる。
【0031】
ここで、
図6を参照して更に説明する。
図6は、PD1~PD4の出力電気信号と、電気信号A、Bを表す説明図である。
図6に示すように、PD1~PD4の各出力電気信号の波形である波形52~波形58は、1/4つまり90度ずつ位相がずれている。つまり、PD1の波形52とPD3の波形54とは、180度位相がずれており、PD2の波形56とPD4の波形58も180度位相がずれている。180度位相がずれているPD1とPD3の電気信号の差分を取ることにより、別の言い方をすると、PD3の信号を反転させて合成することにより電気信号Aになる。同様に180度位相がずれているPD2とPD4の電気信号の差分を取ることにより電気信号Bになる。この電気信号Aまたは電気信号Bのパルス数をカウントすることにより、第1スケール16の光透過部16bと光反射部16aの組がいくつ移動したかを知ることができる。よって、カウントしたパルス数に第1スケール16の光反射部16aと光透過部16bの1組の長さ(
図5参照)を乗ずることにより、第1スケール16が第1光検出部20に対して相対的に動いた距離を求めることができる。
【0032】
第2光検出部22の第2受光部28においても、第2スケール18から、特に有機EL素子18aから照射された光は、
図5に示したような明部40及び暗部42の縞模様を形成する。一方で、第2受光部28のPDアレイも、第1受光部26と同様に、4つのPD素子PD1、PD2、PD3、PD4を一組とするPDのセットが、複数セット存在して構成される。したがって、
図5及び
図6に基づいて上で説明したようにして、Y軸方向の相対変位を検出することが可能になる。
【0033】
以上述べたように、本実施形態によれば、Y軸方向に延びる縞模様の第1スケール16とそれに対応する第1光検出部20とでX軸方向の相対変位を検出することができる。また、X軸方向に延びる縞模様の第2スケール18とそれに対応する第2光検出部22とでY軸方向の相対変位を検出することができる。したがって、エンコーダ10によれば、X軸及びY軸の2軸方向の変位検出が可能である。
【0034】
更に、エンコーダ10では、第2スケール18が自己発光可能に構成されていて、かつ、光を透過可能に構成されている。したがって、第1スケール16と第2スケール18とが重ね合わされていて、第2スケール18が第1スケール16と第1光検出部20との間に延在するにもかかわらず、X軸方向の変位検出中に、Y軸方向の変位検出も可能になる。このように、第1スケール16と第2スケール18とを重ね合わせることができるので、エンコーダ10は省スペース化に適する。
【0035】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明は種々の変更が可能である。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0036】
上記実施形態では、第2スケール18は、第1発光手段からの光を透過可能に構成され、第1スケール16と第1光検出部20との間に延在するように設けられた。しかし、第1スケール16を第2スケール18と第1光検出部20との間に延在するように設けてもよい。この場合、第2スケール18からの光は、格子状の光となって、第1スケール16の光透過部16bを透過して第2光検出部22に至る。この場合にも、第2スケールからの所定間隔のパターンの光を第2光検出部22で実質的に読み取ることができ、よって、第2スケールを用いて相対的な変位(例えばY軸方向での相対変位)を検出することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、エンコーダで検出可能な変位は、2軸としてXY直交軸を有する平面での相対変位であった。しかし、2軸のうちの少なくとも1軸を(例えば原点周りの)曲線軸とすることで、本発明に係るエンコーダによれば、3次元変位又は立体角などの2軸変位も検出可能になる。つまり、第1スケールを湾曲形状に形成し、その第1スケールに重ねて、第2スケールを設けることができる。特に、有機ELは可撓性を有して作製可能であるので、スケール12を、特に第2スケール18を曲線軸に適合したスケールとすることができる。
【0038】
例えば、上記実施形態では、第1発光部24は第1光検出部20に備えられた。しかし、第1発光部24は第1光検出部20とは別個にされてもよい。例えば、
図2において、スケール12を間に挟んで第1光検出部20に対向する位置に第1発光部24が設けられてもよい。この場合、
図1のプローブ1においては、第1発光部24はスタイラス保持部材5側に設けられ得る。そして、第1発光部24からの光は、第1スケール16の光透過部16bを透過し、第1光検出部20の第1受光手段26に至ることができる。
【0039】
上記実施形態では、第1発光部24で赤色光を発し、第2発光手段としての有機EL素子18aで青色光を発するようにした。しかし、光の色又は波長はこれらに限定されない。第1発光手段と第2発光手段の光の色又は波長は、互いに干渉しないように選択されるとよい。
【符号の説明】
【0040】
1 プローブ、3 ハウジング、5 スタイラス保持部材、7a、7b ばね部材、9 ボール、10 エンコーダ、12 スケール、14 読取センサ、16 第1スケール、16a 光反射部、16b 光透過部、18 第2スケール、18a 有機EL素子(第2発光手段)、18b セパレータ、18u 第1電極層、18v 第2電極層、20 第1光検出部、22 第2光検出部、24 第1発光部(第1発光手段)、26 第1受光部(第1受光手段)、28 第2受光部(第2受光手段)、30 電子部品