(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】撮影装置および撮影用治具
(51)【国際特許分類】
E21F 17/00 20060101AFI20220425BHJP
G03B 17/56 20210101ALI20220425BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20220425BHJP
【FI】
E21F17/00
G03B17/56 A
G03B15/03 W
G03B15/03 S
(21)【出願番号】P 2018062311
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501091006
【氏名又は名称】株式会社東設土木コンサルタント
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】110000349
【氏名又は名称】特許業務法人 アクア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】重岡 匠
(72)【発明者】
【氏名】吉本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】中川 光貴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 孝明
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-306378(JP,A)
【文献】国際公開第03/021962(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02985087(EP,A1)
【文献】特開2015-155946(JP,A)
【文献】特開2016-037808(JP,A)
【文献】特開2001-008058(JP,A)
【文献】実開昭57-067197(JP,U)
【文献】中国実用新案第205281099(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0216596(US,A1)
【文献】中国実用新案第206036542(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 17/00
G03B 17/56
G03B 15/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面の画像を撮影するための撮影装置であって、
カメラと、
前記カメラを支持する台車と、
前記台車を走行させるレールと、
前記レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、
前記脚部の先端に設けられ、
前記物体の表面に対して前記脚部を所定の角度に固定する足部とを備え、
前記足部は
前記物体の表面に当接させる部材であって、前記脚部の一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されていることを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
物体の表面の画像を撮影するための撮影装置であって、
カメラと、
前記カメラを支持する台車と、
前記台車を走行させるレールと、
前記レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、
前記脚部の先端に設けられ、
前記物体の表面に対して前記脚部を所定の角度に固定する足部とを備え、
前記足部はボルト穴が設けられた金具であって、
前記物体の表面に対して一定の距離をおいて設置された既設構造物にボルトで固定して前記脚部を所定の角度に固定することを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
前記カメラは、ライトと共に台車に支持され前記レールを走行することを特徴とする請求項1
または2に記載の撮影装置。
【請求項4】
物体の表面の画像を撮影するための撮影用治具であって、
カメラを走行させるレールと、
前記レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、
前記脚部の先端に設けられ、
前記物体の表面に対して前記脚部を所定の角度に固定する足部とを備え、
前記足部は
前記物体の表面に当接させる部材であって、前記脚部の一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されていることを特徴とする撮影用治具。
【請求項5】
物体の表面の画像を撮影するための撮影用治具であって、
カメラを走行させるレールと、
前記レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、
前記脚部の先端に設けられ、
前記物体の表面に対して前記脚部を所定の角度に固定する足部とを備え、
前記足部はボルト穴が設けられた金具であって、
前記物体の表面に対して一定の距離をおいて設置された既設構造物にボルトで固定して前記脚部を所定の角度に固定することを特徴とする撮影用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の壁面などの物体の表面を撮影するための撮影装置、および撮影用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや橋梁などの構造物では、損傷の有無などを確認するために定期的な点検が必要となる。このような点検は、例えば構造物の壁面の画像を撮影することで実施され、大型のカメラを搭載した車両を走行させながらトンネル内を撮影したり、アームにカメラを取付けて橋梁の桁下を撮影したりしていた。
【0003】
特許文献1には、道路に沿ってトンネル内に施設された案内レールと、案内レール上を移動する移動式テレビカメラとを備え、移動式テレビカメラからの画像情報に基づいて土木構造物としてのトンネルや道路の管理を行う道路トンネル総合監視制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1に記載の技術では、点検対象物であるトンネルに案内レールを常設し、その上で、案内レール上を移動する移動式テレビカメラを設置する必要がある。このため、これらの設備を設置するためのコストが高くなり、作業も大掛かりになってしまう。
【0006】
また洞道内を点検対象物とした場合、洞道内では、壁面付近にケーブルが敷設されていて、ケーブルと壁面との間が非常に狭くなっている。このため、洞道内の壁面を撮影しようとしても、ケーブルが障害物となり撮影が困難となる。
【0007】
仮に洞道内の壁面を撮影できたとしても、壁面に対して一定の距離かつ一定の角度で撮影しなければ、撮影した壁面の画像を周囲の画像と比較して損傷の有無などを確認する際、点検の信頼性が低くなってしまう。なお特許文献1に記載のような大掛かりな設備は、ケーブルと壁面との間の狭いスペースで使用できず、壁面の撮影自体ができない。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、狭いスペースしか確保できない場所であっても、構造物の壁面などの物体の表面を確実に撮影できる撮影装置および撮影用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる撮影装置の代表的な構成は、物体の表面の画像を撮影するための撮影装置であって、カメラと、カメラを支持する台車と、台車を走行させるレールと、レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、脚部の先端に設けられ、物体の表面に対して脚部を所定の角度に固定する足部とを備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成では、カメラを支持する台車を走行させるレールは、その両端近傍から延びた所定の長さの脚部によって、撮影対象物(点検対象物)である物体の表面から一定の距離となる。レールはさらに、物体の表面に対して脚部を所定の角度に固定する足部によって、物体の表面に対して一定の角度となる。つまり、レールは、物体の表面に対して一定の距離かつ一定の角度に維持される。このため、レール上を走行する台車に支持されたカメラは、一定の距離かつ一定の角度で物体の表面を撮影できる。
【0011】
一例として壁面近傍にケーブルが敷設され、壁面とケーブルとの間に狭いスペースしか確保できない洞道内を点検対象物とした場合について説明する。このような場合、作業者は、レールの両端近傍の脚部および脚部の先端に設けられた足部を、ケーブルを避けるようにして壁面に向かって進入させ、さらに足部を壁面に押し付ける。このようにすれば、レールを壁面から一定の距離かつ一定の角度に維持できる。そしてレール上で台車を走行させることで、カメラは、一定の距離かつ一定の角度で洞道内の壁面を撮影できる。したがって上記構成による撮影装置によれば、狭いスペースしか確保できない場所であっても、構造物の壁面などの物体の表面を確実に撮影できる。
【0012】
また、構造が簡単で、かつ小型であることから、大がかりな設備が必要なく、安価である。さらに軽量に作成することができるため、持ち運びや撮影時の取り回しにも優れている。
【0013】
上記のカメラは、ライトと共に台車に支持されレールを走行するとよい。このように、光源であるライトと共にカメラを走行させるので、最小限の光源で暗い場所でも物体の表面を撮影できる。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明にかかる撮影用治具の代表的な構成は、物体の表面の画像を撮影するための撮影用治具であって、カメラを走行させるレールと、レールの両端近傍から延びた所定の長さの脚部と、脚部の先端に設けられ、物体の表面に対して脚部を所定の角度に固定する足部とを備えることを特徴とする。
【0015】
上述した撮影装置における技術的思想に対応する構成要素やその説明は、当該撮影用治具にも適用可能である。すなわち上記構成による撮影用治具によれば、狭いスペースしか確保できない場所であっても、レールを、物体の表面に対して一定の距離かつ一定の角度に維持できることから、レール上でカメラを走行させることで、一定の距離かつ一定の角度で物体の表面を撮影できる。
【0016】
上記の足部は物体の表面に当接させる長尺の部材であって、脚部から双方向または一方向のみに延びていて、レールに対して直角を成しているとよい。このように足部は、長尺の部材であり、レールに対して直角を成しさらに脚部から双方方向または一方向のみに延びているため、狭いスペースしか確保できない場所にも進入させ易く、さらに物体の表面に当接させることができる。
【0017】
上記の足部は物体の表面に当接させる部材であって、脚部の一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されているとよい。これにより、脚部の一方側に足部を折りたたんだ状態とすることで、狭いスペースしか確保できない場所にも進入させ易い。また足部を狭いスペースに進入させた後、足部は、その先端を物体の表面(壁面など)に突き当てて起こす(回動させる)ことにより、物体の表面に当接させてさらに物体の表面に対して脚部を直角に固定できる。
【0018】
上記の足部はボルト穴が設けられた金具であって、既設構造物にボルトで固定して前記脚部を所定の角度に固定するとよい。これにより、足部と既設構造物とをボルトで固定するだけで、レールを、物体の表面に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持できる。
【0019】
上記の足部はクリップ式であって、既設構造物を挟持して脚部を所定の角度に固定するとよい。このようにすれば、クリップ式の足部によって既設構造物を挟持するという簡素な作業により、脚部を所定の角度に固定できる。また足部がクリップ式であるから着脱が容易であり、作業性を向上させることもできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、狭いスペースしか確保できない場所であっても、構造物の壁面などの物体の表面を確実に撮影できる撮影用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態における撮影装置を用いて洞道内の壁面を撮影する様子を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態における撮影装置を示す図である。
【
図4】本発明の第3実施形態における撮影装置を示す図である。
【
図5】本発明の第4実施形態における撮影装置を示す図である。
【
図6】本発明の第5実施形態における撮影装置を用いて洞道内の壁面を撮影する様子を示す図である。
【
図7】本発明の第6実施形態における撮影装置を用いて洞道内の壁面を撮影する様子を示す図である。
【
図8】本発明の第7実施形態における撮影装置を用いて洞道内の壁面を撮影する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0023】
本実施形態において点検対象物である「物体の表面」は、洞道の壁面を例に用いて説明する。しかし本発明はこれに限定するものではなく、さまざまな物体の表面を点検対象物とすることができる。最も代表的な例は構造物の壁面であるが、構造物の床面や天井、橋梁などの構造物の表面などに対しても適用可能である。また人工的な構造物ばかりでなく、地面や地層などの自然物の表面に対しても好適に適用可能である。
【0024】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における撮影装置100を用いて洞道102内の壁面104を撮影する様子を示す図である。
図2は、撮影装置100を示す図である。
【0025】
洞道102は、例えばシールド工法により掘削され、その壁面104がセグメントと呼ばれる板で補強された構造体である。セグメントは、コンクリートブロックであるため、経年劣化によるひび割れが生じる場合がある。そのため、洞道102内では、壁面104の損傷の有無などを確認するために定期的な点検が必要となる。
【0026】
洞道102の点検は、壁面104を撮影することで実施される。一例として、撮影した壁面104の複数の画像を合成し、洞道のマップに撮影した画像をマッピングして損傷の有無などを確認する。
【0027】
洞道102内では、電力ケーブルや通信ケーブルなどの複数のケーブル106が収容され、壁面104付近に敷設されている。壁面104付近には、上下方向に延びる縦金物108が設置されている。縦金物108には、腕金110が取付けられている。腕金110は、上下に離間して複数段設けられていて、壁面104から遠ざかるように水平に延びている。ケーブル106は、縦金物108に取付けられた腕金110上に設置され、図示のように洞道102内の壁面104付近に沿って敷設されている。
【0028】
このため洞道102内において、ケーブル106と壁面104との間は狭いスペースしか確保できない場所112となっている。そのため、作業者114が壁面104を点検するために壁面104を撮影しようとしても、ケーブル106が障害物となり撮影が困難となる。
【0029】
仮に洞道102内の壁面104を撮影できたとしても、壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度で撮影しなければ、壁面104の画像を比較して損傷の有無などを確認する際、点検の信頼性が低くなってしまう。しかも、狭いスペースしか確保できない場所112では、大掛かりな設備を使用することができず、壁面104の撮影自体ができない。
【0030】
そこで本実施形態では、撮影装置100を用いることで、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、撮影対象物(点検対象物)である洞道102内の壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度で壁面104を確実に撮影できるようにした。
【0031】
撮影装置100は、構造物の壁面などの物体の表面(ここでは洞道102内の壁面104)を撮影するための装置である。撮影装置100は、
図2に示すように撮影用治具101を含んでいる。撮影用治具101は、カメラ116を走行させるレール118と、一対の脚部120、122と、一対の足部124、126とを備える。一対の脚部120、122は、レール118の両端128、130の近傍から所定方向(ここでは一例として、カメラ116の撮影方向)に延びていて、所定の長さを有している。
【0032】
一対の足部124、126は、一対の脚部120、122の先端132、134に設けられ、洞道102内の壁面104に対して脚部120、122を所定の角度(ここでは直角)に固定する。具体的には、一対の足部124、126は、レール118および一対の脚部120、122のいずれの長手方向とも直交する方向に延び、さらに一対の脚部120、122から双方向(両方向)に延びてT字形状を成している。
【0033】
ここで壁面104に対して脚部120、122を所定の角度で確実に固定するためには、一対の足部124、126を2辺として含む平面(四辺形)を形成する必要がある。このため、この平面を形成できるのであれば、一対の足部124、126の長手方向は、必ずしもレール118の長手方向に直交する必要はない。
【0034】
ただし一対の足部124、126の長手方向が、レール118の長手方向に平行になってしまうと平面を形成できず、脚部120、122を壁面104に対して安定して固定できない。このため、一対の足部124、126は、レール118の長手方向と平行にならない方向に延びるよう設定されている。
【0035】
撮影装置100は、撮影用治具101に加え、カメラ116と、台車136とをさらに備える。カメラ116は、レール118を走行可能な台車136に搭載されている。台車136にはさらに、カメラ116の両側付近にライト138、140が搭載されている。このため、カメラ116は、光源であるライト138、140と共にレール118を走行可能であり、最小限の光源で暗い場所でも洞道102内の壁面104を撮影できる。
【0036】
ここで撮影対象物である洞道102内の壁面104に対するレール118の距離および角度について説明する。レール118は、その両端128、130近傍からカメラ116の撮影方向に延びた所定の長さの脚部120、122によって、洞道102内の壁面104から一定の距離となる。
【0037】
レール118はさらに、洞道102内の壁面104に対して脚部120、122を所定の角度に固定する足部124、126によって、洞道102内の壁面104に対して一定の角度となる。このため、レール118は、洞道102内の壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に維持される。
【0038】
以下、
図2に示す撮影装置100を用いて、洞道102内の壁面104を撮影する手順を説明する。まず作業者114(
図1参照)は、脚部120、122および足部124、126を、ケーブル106を避けるようにして壁面104に向かって進入させ、さらに足部124、126を壁面104に押し付ける。
【0039】
このようにすれば、ケーブル106と壁面104との間であって狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118は、壁面104から一定の距離かつ一定の角度に維持される。つぎに作業者114は、レール118上でカメラ116を走行させることにより、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を撮影する。
【0040】
撮影した壁面104の画像は、走行するカメラ116によって一定の距離かつ一定の角度で連続的に撮影されたものである。このため、撮影された複数の画像を合成して壁面104の損傷の有無などを確認する際、信頼性の高い点検を行うことができる。
【0041】
以上説明したように、第1実施形態における撮影装置100は、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118上を走行するカメラ116によって、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。
【0042】
また撮影装置100は、構造が簡単で、かつ小型であることから、大がかりな設備が必要なく、安価である。さらに撮影装置100は、軽量に作成することができるため、持ち運びや撮影時の取り回しにも優れている。
【0043】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における撮影装置100Aを示す図である。なお図中では、撮影装置100Aを側方から見た状態を示し、さらに撮影装置100Aを用いて洞道102内の壁面104を撮影する手順を示している。
【0044】
撮影装置100Aは、撮影用治具101Aが脚部120AとともにL字形状を成す足部124Aを備える点で、上記の撮影装置100と異なる。足部124Aは、洞道102内の壁面104に当接させる長尺の部材である。また足部124Aは、脚部120Aの先端132Aに取付けられ、脚部120Aから一方向のみに延びていて、レール118の長手方向(
図2参照)に対して直角を成しL字形状を形成している。
【0045】
このような撮影装置100Aを用いて洞道102内の壁面104を撮影する場合、まず作業者114は、脚部120AとともにL字形状を形成する足部124Aを、
図3(a)に示すようにケーブル106を避けるように回転させながら壁面104に向かって進入させる(矢印A参照)。つぎに作業者114は、
図3(b)に示すように、撮影装置100Aを足部124A側に軽く回転させて、足部124Aを壁面104に押し付ける(矢印B参照)。
【0046】
このようにすれば、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118を、
図3(b)に示すように壁面104から一定の距離かつ一定の角度に維持できる。そして作業者114は、レール118上でカメラ116を走行させることにより、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を撮影する。
【0047】
したがって撮影装置100Aによっても、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。特に足部124Aは、レール118に対して直角を成しさらに脚部120Aから一方向のみに延びているため、狭いスペースしか確保できない場所112にも進入させ易く、さらに壁面104に当接させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態における撮影装置100Bを示す図である。なお図中では、撮影装置100Bを側方から見た状態を示し、さらに撮影装置100Bを用いて洞道102内の壁面104を撮影する手順を示している。
【0049】
撮影装置100Bは、撮影用治具101Bが脚部120Bに対して可動式の足部124Bを備える点で、上記の撮影装置100、100Aと異なる。足部124Bは、洞道102内の壁面104に当接させる長尺の部材であって、脚部120Bの先端132Bに回動可能に取付けられている。ただし、足部124Bの形状は、壁面104に当接可能であれば、これに限らず、例えば、円形等であってもよい(
図5参照)。
【0050】
より具体的には、足部124Bは、その一端142が脚部120Bの下方から脚部120Bに接近する時計回り方向(一方側)には、
図4(a)に示すように折りたたむように回動可能となっている。
【0051】
また足部124Bは、その他端144が脚部120Bの上方から脚部120Bに接近する反時計回り方向(他方側)には、脚部120Bの先端132Bの上側に設けられた回転規制部146によって、直角より小さくなる回動が規制されている。
【0052】
このような撮影装置100Bを用いて洞道102内の壁面104を撮影する場合、まず作業者114は、脚部120Bに対して足部124Bを折りたたんだ状態とし、この状態の足部124Bを、
図4(a)に示すようにケーブル106を避けて壁面104に向かって進入させる(矢印C参照)。
【0053】
つぎに作業者114は、折りたたんだ状態の足部124Bの他端144を壁面104に突き当てて回転させ、さらに
図4(b)に示すように足部124Bが直角で固まるように軽く押しつける(矢印D参照)。これにより、撮影装置100Bの脚部120Bは、壁面104に対して直角に固定される。
【0054】
このようにすれば、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118を、
図4(b)に示すように壁面104から一定の距離かつ一定の角度に維持できる。そして作業者114は、レール118上でカメラ116を走行させることにより、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を撮影する。
【0055】
したがって撮影装置100Bによっても、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。特に足部124Bは、脚部120Bの一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されているため、狭いスペースしか確保できない場所112にも進入させ易い。
【0056】
(第4実施形態)
図5は、本発明の第4実施形態における撮影装置100Cを示す図である。
図5(a)は、撮影装置100C全体を示す斜視図である。
図5(b)は、
図5(a)に示す撮影装置100Cの一部を拡大して示す図である。
【0057】
撮影装置100Cは、撮影用治具101Cが脚部120C、122Cに対して可動式の円板状の足部124C、126Cを備える点で、上記の撮影装置100、100A、100Bと異なる。足部124C、126Cは、洞道102内の壁面104に当接させる部材であって、
図5(a)に示すように脚部120C、122Cの先端132C、134Cに回動可能に取付けられている。
【0058】
より具体的には、円板状の足部124Cは、その上縁143が脚部120Cの上方から脚部120Cに接近する方向(一方側)には、
図5(b)に示すように折りたたむように回動可能となっている(矢印E参照)。
【0059】
また足部124Cは、その下縁145が脚部120Cの下方から脚部120Cに接近する方向(他方側)には、脚部120Cの先端132Cに設けられた回転規制部147によって、直角より小さくなる回動が規制されている。なお回転規制部147は、
図5(b)に示すように、先端132Cの一方側への回動を許容するように上方が切り欠かれている。
図5(a)に示す足部126Cも同様に、脚部122Cの一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されている。
【0060】
このため、撮影用治具101Cでは、円板状の足部124C、126Cを脚部122Cの一方側に折りたたむことで、上下方向の寸法を小さくできる。そこで撮影装置100Cを用いて
図1に示す洞道102内の壁面104を撮影する場合、まず作業者114は、脚部120C、122Cに対して足部124C、126Cを折りたたんだ状態とし、この状態の足部124C、126Cを、ケーブル106を避けて壁面104に向かって進入させる。
【0061】
つぎに作業者114は、折りたたんだ状態の足部124C、126Cの下縁145を壁面104に突き当てて回転させ、足部124C、126Cが直角で固まるように軽く押しつける。これにより、撮影装置100Cの脚部120C、122Cは、壁面104に対して直角に固定される。
【0062】
このようにすれば、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118を、壁面104から一定の距離かつ一定の角度に維持できる。そして作業者114は、レール118上でカメラ116を走行させることにより、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を撮影する。
【0063】
したがって撮影装置100Cによっても、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。特に足部124C、126Cは、脚部120C、122Cの一方側には折りたたむように回動可能であって、他方側には直角より小さくなる回動が規制されているため、狭いスペースしか確保できない場所112にも進入させ易い。
【0064】
(第5実施形態)
図6は、本発明の第5実施形態における撮影装置100Dを用いて洞道102内の壁面104を撮影する様子を示す図である。撮影装置100Dは、撮影用治具101Dが縦金物108、148にボルト150で固定されている点で、上記の撮影装置100、100A~100Cと異なる。なお縦金物108、148は、洞道内102内に一定間隔で設置された既設構造物である。
【0065】
撮影用治具101Dは、カメラ116を走行させるレール118と、一対の脚部152、154と、一対の足部156、158とを備える。一対の脚部152、154は、図示のように、レール118の両端128、130の近傍から所定方向(ここでは一例として、カメラ116の撮影方向とは反対方向、すなわち縦金物108、148に向かう方向)に延びていて、所定の長さを有している。
【0066】
一対の足部156、158は、ボルト穴が設けられた金具であって、図示のように縦金物108、148にボルト150でそれぞれ固定することにより、洞道102内の壁面104に対して脚部152、154を所定の角度(ここでは直角)に固定する。
【0067】
このように撮影用治具101Dでは、足部156、158を縦金物108、148にボルト150で固定するだけで、レール118を、洞道102内の壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持できる。したがって撮影装置100Dによっても、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。
【0068】
なお上記の一対の足部156、158は、縦金物108、148にボルト150で固定したが、これに代えて、壁面104に沿って設置された縁金物160、162にボルト150で固定してもよい。縁金物160、162は、洞道内102内に一定間隔で設置された既設構造物であって、例えば縦金物108、148に対向した位置にある。
【0069】
このような場合であっても、足部156、158を既設構造物すなわち縁金物160、162にボルト150で固定するだけで、脚部152、154を所定の角度に固定でき、レール118を、壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持できる。したがって、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。
【0070】
(第6実施形態)
図7は、本発明の第6実施形態における撮影装置100Eを用いて洞道102内の壁面104を撮影する様子を示す図である。撮影装置100Eは、撮影用治具101Eが既設構造物である縁金物160、162にクリップ止めされている点で、上記の撮影装置100、100A~100Dと異なる。
【0071】
具体的には、撮影用治具101Eは、カメラ116を走行させるレール118と、一対の脚部164、166と、一対の足部168、170とを備える。一対の脚部164、166は、図示のように、レール118の両端128、130の近傍からカメラ116の撮影方向に向かって延びていて、所定の長さを有している。
【0072】
一対の足部168、170は、クリップ式であって、一対の脚部164、166の先端に設置された雲台172、174で接続されていて、角度調整が可能となっている。すなわち一対の足部168、170は、既設構造物である縁金物160、162を挟持して、脚部164、166を所定の角度に固定する。
【0073】
このように撮影用治具101Eでは、クリップ式の足部168、170によって縁金物160、162を挟持するという簡素な作業により、脚部164、166を所定の角度に固定できる。
【0074】
したがって撮影装置100Eによっても、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、レール118を、洞道102内の壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持し、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。特に足部168、170がクリップ式であるから着脱が容易であり、作業性を向上させることもできる。
【0075】
なお上記の一対の足部168、170は、縁金物160、162にクリップ止めしたが、これに代えて、縦金物108、148(
図6参照)にクリップ止めしてもよい。
【0076】
このような場合であっても、足部168、170を既設構造物すなわち縦金物108、148にクリップ止めするだけで、脚部164、166を所定の角度に固定でき、レール118を、壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持できる。したがって、狭いスペースしか確保できない場所112であっても、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。
【0077】
(第7実施形態)
図8は、本発明の第7実施形態における撮影装置100Fを用いて洞道102内の壁面104を撮影する様子を示す図である。なお図中では、撮影用治具装置100Fを側方から見た状態を示している。
【0078】
図示のように洞道内102内には、上記した縦金物108、148や縁金物160、162が設置されていない。そこで、壁面104にアンカーボルト176を埋め込み、アンカーボルト176で板状の取付用金具178をセグメント単位で設置するという構成を採用することができる。このアンカーボルト176と取付用金具178は、壁面104に常時設置してもよいし、取り外し可能なものであってもよい。
【0079】
撮影用治具101Fは、不図示のカメラを走行させるレール118と、脚部180と、脚部180の先端に設けられた足部182とを備える。脚部180は、レール118からカメラの撮影方向に向かって延びていて、所定の長さを有している。足部182は、クリップ式であって、板状の取付用金具178を挟持して、壁面104に対して脚部180を所定の角度(ここでは直角)に固定する。ただし固定方法としては、壁面104に対して脚部180を所定の角度で固定できるのであれば、これに限られず、足部182をボルト穴の設けられた金具とし、同じようにボルト穴の設けられた取付用金具178にボルトで固定する等、適宜の固定方法を用いてよい。
【0080】
このように撮影用治具101Fでは、洞道102内に縦金物108、148や縁金物160、162が設置されていない場合であっても、レール118を、洞道102内の壁面104に対して一定の距離かつ一定の角度に確実に維持できる。したがって撮影装置100Fによれば、一定の距離かつ一定の角度で洞道102内の壁面104を確実に撮影できる。特に足部182がクリップ式であるから着脱が容易であり、作業性を向上させることもできる。
【0081】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、構造物の壁面などの物体の表面を撮影するための撮影装置および撮影用治具として利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
100、100A、100B、100C、100D、100E、100F…撮影装置、101、101A、101B、101C、101D、101E、101F…撮影用治具、102…洞道、104…壁面、106…ケーブル、108、148…縦金物、110…腕金、112…場所、114…作業者、116…カメラ、118…レール、120、120A、120B、120C、122、122C、152、154、164、166、180…一対の脚部、124、124A、124B、124C、126、126C、156、158、168、170、182…一対の足部、128、130…レールの両端、132、132A、132B、132C、134、134C…一対の脚部の先端、136…台車、138、140…ライト、142…足部の一端、143…足部の上縁、144…足部の他端、145…足部の下縁、146、147…回転規制部、150…ボルト、160、162…縁金物、172、174…雲台、176…アンカーボルト、178…取付用金具