(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】シリーズレギュレータ
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
(21)【出願番号】P 2018070721
(22)【出願日】2018-04-02
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安坂 信
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-133935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソースが入力電圧の印加端
に接続されており、ドレインが出力電圧の印加端
に接続された第1トランジスタと;
ソースが前記入力電圧の印加端に接続されており、ドレインが前記出力電圧の印加端に接続されており、前記第1トランジスタよりも電流能力の小さい第2トランジスタと;
第1入力端が第1基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記出力電圧に応じた第1帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第1トランジスタの制御端に接続された第1アンプと;
第1入力端が前記第1基準電圧に固定オフセット電圧を付与した第2基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記第1帰還電圧に可変オフセット電圧を付与した第2帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第1アンプよりも消費電流の小さい第2アンプと;
前記第1帰還電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続された第1オフセット抵抗と;
前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第3トランジスタと;
前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第4トランジスタと;
を有する
、シリーズレギュレータ。
【請求項2】
前記第4トランジスタと前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第5トランジスタをさらに有する
、請求項1に記載のシリーズレギュレータ。
【請求項3】
前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第6トランジスタと;
前記第6トランジスタと前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第7トランジスタと;
をさらに有し、
前記第4トランジスタのオンスレッショルド電圧は、前記第1トランジスタのオンスレッショルド電圧よりも低い
、請求項2に記載のシリーズレギュレータ。
【請求項4】
ソースが入力電圧の印加端に接続されており、ドレインが出力電圧の印加端に接続された第1トランジスタと;
ソースが前記入力電圧の印加端に接続されており、ドレインが前記出力電圧の印加端に接続されており、前記第1トランジスタよりも電流能力の小さい第2トランジスタと;
第1入力端が第1基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記出力電圧に応じた第1帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第1トランジスタの制御端に接続された第1アンプと;
第1入力端が前記第1基準電圧に固定オフセット電圧を付与した第2基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記第1帰還電圧に可変オフセット電圧を付与した第2帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第1アンプよりも消費電流の小さい第2アンプと;
第1端が前記第1帰還電圧の印加端に接続された第1オフセット抵抗と;
前記第1オフセット抵抗の第2端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続された第2オフセット抵抗
と;
前記入力電圧の印加端と前記第1オフセット抵抗の第2端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第3トランジスタと;
前記入力電圧の印加端と前記第1オフセット抵抗の第2端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第4トランジスタと;
前記第4トランジスタと前記第1オフセット抵抗の第2端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第5トランジスタと;
前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第6トランジスタと;
前記第6トランジスタと前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第7トランジスタと;
を有し、
前記第4トランジスタのオンスレッショルド電圧は、前記第1トランジスタのオンスレッショルド電圧よりも低い、シリーズレギュレータ。
【請求項5】
入力電圧の印加端
にソースが接続され、出力電圧の印加端
にドレインが接続される第1トランジスタと;
前記入力電圧の印加端にソースが接続され、前記出力電圧の印加端にドレインが接続され、前記第1トランジスタよりも電流能力の小さい第2トランジスタと;
第1入力端が第1基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記出力電圧に応じた第1帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第1トランジスタの制御端に接続された第1アンプと;
第1入力端が前記第1基準電圧に固定オフセット電圧を付与した第2基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記第1帰還電圧に可変オフセット電圧を付与した第2帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第1アンプよりも消費電流の小さい第2アンプと;
前記第1帰還電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されたオフセット抵抗と;
前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第3トランジスタと;
第1端が前記入力電圧の印加端に接続されており、第2端が
第1抵抗を介して接地端に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続されており、前記第1トランジスタよりもオンスレッショルド電圧の低い第4トランジスタと;
第1端が前記第2帰還電圧の印加端に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第5トランジスタと;
第1端が前記入力電圧の印加端に接続されており、第2端が
第2抵抗を介して接地端に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第6トランジスタと;
第1端が前記第2帰還電圧の印加端に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第7トランジスタと;
前記入力電圧の印加端と前記第5トランジスタの第2端との間に接続されており、制御端が
第3抵抗を介して前記入力電圧の印加端に接続された第8トランジスタと;
前記入力電圧の印加端と前記第7トランジスタの第2端との間に接続されており、制御端が
第4抵抗を介して前記入力電圧の印加端に接続された第9トランジスタと;
前記第8トランジスタの制御端と接地端との間に接続されており、制御端が前記第4トランジスタの第2端に接続された第10トランジスタと;
前記第9トランジスタの制御端と接地端との間に接続されており、制御端が前記第6トランジスタの第2端に接続された第11トランジスタと;
を有する
、シリーズレギュレータ。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載のシリーズレギュレータと、
前記シリーズレギュレータから電力供給を受けて動作する負荷と、
を有する
、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書中に開示されている発明は、シリーズレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
図17は、シリーズレギュレータの一従来例を示す図である。本従来例のシリーズレギュレータ20において、オペアンプ21は、帰還電圧Vfb(=出力電圧Voutの分圧電圧)と基準電圧Vrefとが一致するように、出力トランジスタM1のゲート信号G1を制御する。これにより、入力電圧Vinから所望の出力電圧Vout(={(R1+R2)/R2}×Vref)を生成することができる。
【0003】
なお、上記に関連する従来技術の一例としては、特許文献1を挙げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来例のシリーズレギュレータ20では、単一のオペアンプ21と出力トランジスタM1を用いて負荷範囲の全領域をカバーしていた。そのため、広負荷範囲での安定動作、高速負荷応答、並びに、低消費電流化を実現することが難しかった。
【0006】
本明細書中に開示されている発明は、本願の発明者により見出された上記課題に鑑み、広負荷範囲での安定動作、高速負荷応答、並びに、低消費電流化を実現することのできるシリーズレギュレータ(LDO[low dorp-out]レギュレータを含む)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に開示されているシリーズレギュレータは、電源と負荷との間に接続された第1トランジスタを駆動する第1アンプと、前記第1トランジスタに並列接続された第2トランジスタを駆動する第2アンプと、前記第1アンプ及び前記第2アンプをそれぞれ制御するアンプ制御回路とを有し、前記第2トランジスタの電流能力は、前記第1トランジスタの電流能力よりも小さく、前記第2アンプの消費電流は、前記第1アンプの消費電流よりも小さく、前記アンプ制御回路は、前記負荷に流れる出力電流が所定のアンプ切替閾値よりも小さい第1負荷領域では、前記第1トランジスタに流れる第1出力電流をゼロ値とし、前記第2トランジスタに流れる第2出力電流で前記出力電流の全てを賄うように、前記第1アンプ及び前記第2アンプをそれぞれ制御する一方、前記出力電流が前記アンプ切替閾値よりも大きい第2負荷領域では、前記第2出力電流をゼロ値または前記アンプ切替閾値よりも小さい固定値とし、前記第1出力電流で前記出力電流の全てまたは前記出力電流から前記第2出力電流を差し引いた差分を賄うように、前記第1アンプ及び前記第2アンプをそれぞれ制御する構成(第1の構成)とされている。
【0008】
上記第1の構成から成るシリーズレギュレータにおいて、前記アンプ制御回路は、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタ双方の駆動信号、若しくは、前記第2トランジスタの駆動信号に基づいて、前記第1負荷領域であるか前記第2負荷領域であるかを判別する構成(第2の構成)にするとよい。
【0009】
或いは、上記第1の構成から成るシリーズレギュレータにおいて、前記アンプ制御回路は、前記出力電流に応じたセンス電圧に基づいて、前記第1負荷領域であるか前記第2負荷領域であるかを判別する構成(第3の構成)にしてもよい。
【0010】
また、上記第1~第3いずれかの構成から成るシリーズレギュレータにおいて、前記第1アンプ及び前記第2アンプは、それぞれ、前記負荷に印加される出力電圧が目標値と一致するように、前記第1トランジスタ及び前記第2トランジスタを駆動する構成(第4の構成)にするとよい。
【0011】
また、本明細書に開示されているシリーズレギュレータは、入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に接続された第1トランジスタと;前記第1トランジスタに並列接続されており、前記第1トランジスタよりも電流能力の小さい第2トランジスタと;第1入力端が第1基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記出力電圧に応じた第1帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第1トランジスタの制御端に接続された第1アンプと;第1入力端が前記第1基準電圧に固定オフセット電圧を付与した第2基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記第1帰還電圧に可変オフセット電圧を付与した第2帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第1アンプよりも消費電流の小さい第2アンプと;前記第1帰還電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続された第1オフセット抵抗と;前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第3トランジスタと;前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第4トランジスタと;を有する構成(第5の構成)とされている。
【0012】
なお、上記第5の構成から成るシリーズレギュレータは、前記第4トランジスタと前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第5トランジスタをさらに有する構成(第6の構成)にするとよい。
【0013】
また、上記第6の構成から成るシリーズレギュレータは、前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第6トランジスタと;前記第6トランジスタと前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第7トランジスタと;をさらに有し、前記第4トランジスタのオンスレッショルド電圧は、前記第1トランジスタのオンスレッショルド電圧よりも低い構成(第7の構成)にするとよい。
【0014】
また、上記第7の構成から成るシリーズレギュレータは、前記第5トランジスタと前記第7トランジスタとの間に接続された第2オフセット抵抗をさらに有する構成(第8の構成)にするとよい。
【0015】
また、本明細書中に開示されているシリーズレギュレータは、入力電圧の印加端と出力電圧の印加端との間に接続された第1トランジスタと;前記第1トランジスタに並列接続されており、前記第1トランジスタよりも電流能力の小さい第2トランジスタと;第1入力端が第1基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記出力電圧に応じた第1帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第1トランジスタの制御端に接続された第1アンプと;第1入力端が前記第1基準電圧に固定オフセット電圧を付与した第2基準電圧の印加端に接続されており、第2入力端が前記第1帰還電圧に可変オフセット電圧を付与した第2帰還電圧の印加端に接続されており、出力端が前記第2トランジスタの制御端に接続されており、前記第1アンプよりも消費電流の小さい第2アンプと;前記第1帰還電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されたオフセット抵抗と;前記入力電圧の印加端と前記第2帰還電圧の印加端との間に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第3トランジスタと;第1端が前記入力電圧の印加端に接続されており、第2端が抵抗を介して接地端に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続されており、前記第1トランジスタよりもオンスレッショルド電圧の低い第4トランジスタと;第1端が前記第2帰還電圧の印加端に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第5トランジスタと;第1端が前記入力電圧の印加端に接続されており、第2端が抵抗を介して接地端に接続されており、制御端が前記第1アンプの出力端に接続された第6トランジスタと;第1端が前記第2帰還電圧の印加端に接続されており、制御端が前記第2アンプの出力端に接続された第7トランジスタと;前記入力電圧の印加端と前記第5トランジスタの第2端との間に接続されており、制御端が抵抗を介して前記入力電圧の印加端に接続された第8トランジスタと;前記入力電圧の印加端と前記第7トランジスタの第2端との間に接続されており、制御端が抵抗を介して前記入力電圧の印加端に接続された第9トランジスタと;前記第8トランジスタの制御端と接地端との間に接続されており、制御端が前記第4トランジスタの第2端に接続された第10トランジスタと;前記第9トランジスタの制御端と接地端との間に接続されており、制御端が前記第6トランジスタの第2端に接続された第11トランジスタと;を有する構成(第9の構成)とされている。
【0016】
また、本明細書中に開示されている電子機器は、上記第1~第9いずれかの構成から成るシリーズレギュレータと、前記シリーズレギュレータから電力供給を受けて動作する負荷と、を有する構成(第10の構成)とされている。
【発明の効果】
【0017】
本明細書中に開示されている発明によれば、広負荷範囲での安定動作、高速負荷応答、並びに、低消費電流化を実現することのできるシリーズレギュレータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】シリーズレギュレータの第1実施形態を示す図
【
図3】シリーズレギュレータの第2実施形態を示す図
【
図5】シリーズレギュレータの第3実施形態を示す図
【
図7】シリーズレギュレータの第4実施形態を示す図
【
図8】シリーズレギュレータの第5実施形態を示す図
【
図10】シリーズレギュレータの第6実施形態を示す図
【
図12】閾値ばらつきに起因するアンプ切替動作の不具合を示す図
【
図13】シリーズレギュレータの第7実施形態を示す図
【
図14】シリーズレギュレータの第8実施形態を示す図
【
図15】シリーズレギュレータの第9実施形態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
図1は、シリーズレギュレータの第1実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、オペアンプ11及び12と、基準電圧源13と、アンプ制御回路14と、Pチャネル型MOS[metal oxide semiconductor]電界効果トランジスタM1及びM2と、抵抗R1及びR2と、を有する半導体集積回路装置(シリーズ電源IC)であり、入力電圧Vinから所望の出力電圧Vout(={(R1+R2)/R2}×Vref)を生成して負荷RLに供給する。
【0020】
なお、半導体集積回路装置への集積化に際して、トランジスタM1及びM2、並びに、抵抗R1及びR2は、外付けのディスクリート部品としてもよい。
【0021】
トランジスタM1は、重負荷用の出力トランジスタである。トランジスタM1のソースは、電源(=入力電圧Vinの入力端)に接続されている。トランジスタM1のドレインは、負荷RL(=出力電圧Voutの出力端)に接続されている。トランジスタM1のゲートは、オペアンプ11の出力端(=ゲート信号G1の出力端)に接続されている。トランジスタM1のオン抵抗値は、ゲート信号G1が高いほど高くなり、ゲート信号G1が低いほど低くなる。従って、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1は、ゲート信号G1が高いほど小さくなり、ゲート信号G1が低いほど大きくなる。
【0022】
トランジスタM2は、トランジスタM1に並列接続された軽負荷用の出力トランジスタである。トランジスタM2の電流能力は、トランジスタM1の電流能力より小さくても足りる。従って、トランジスタM2のサイズは、トランジスタM1のサイズよりも小さく設計することができる。なお、トランジスタM2のゲートは、オペアンプ12の出力端(=ゲート信号G2の出力端)に接続されている。トランジスタM2のオン抵抗値は、ゲート信号G2が高いほど高くなり、ゲート信号G2が低いほど低くなる。従って、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2は、ゲート信号G2が高いほど小さくなり、ゲート信号G2が低いほど大きくなる。
【0023】
抵抗R1及びR2は、出力電圧Voutの出力端と接地端との間に直列接続された抵抗ラダーであり、相互間の接続ノードから出力電圧Voutを分圧した帰還電圧Vfb(={R2/(R1+R2)}×Vout)を出力する。
【0024】
オペアンプ11は、反転入力端(-)に入力される基準電圧Vref(=出力電圧Voutの目標値を設定するための固定電圧)と、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbとが一致(イマジナリショート)するように、ゲート信号G1(=トランジスタM1の駆動信号)を生成する。なお、オペアンプ11は、重負荷用のトランジスタM1だけを駆動すればよいので、低消費電流化よりも高速負荷応答などに特化した回路設計を行うことができる。すなわち、オペアンプ11の負荷応答は、オペアンプ12の負荷応答よりも高速化することができる。
【0025】
オペアンプ12は、反転入力端(-)に入力される基準電圧Vrefと、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfbが一致(イマジナリショート)するように、ゲート信号G2(=トランジスタM2の駆動信号)を生成する。なお、オペアンプ12は、軽負荷用のトランジスタM2だけを駆動すればよいので、高速負荷応答よりも低消費電流化などに特化した回路設計を行うことができる。すなわち、オペアンプ12の消費電流は、オペアンプ11の消費電流よりも小さく抑えることができる。
【0026】
基準電圧源13は、入力電圧Vinから所定の基準電圧Vrefを生成する内部電源回路(例えばバンドギャップ電源回路)である。
【0027】
アンプ制御回路14は、例えばゲート信号G2に基づいて、負荷RLに流れる出力電流Ioutが所定のアンプ切替閾値Ithよりも小さい軽負荷領域(Iout<Ith)であるのか、それとも、出力電流Ioutがアンプ切替閾値Ithよりも大きい重負荷領域(Iout>Ith)であるのかを判別し、その判別結果に基づいて重負荷用のオペアンプ11の動作可否を制御するためのイネーブル信号ENを生成する。具体的に述べると、アンプ制御回路14は、軽負荷領域でオペアンプ11をディセーブル状態(=ゲート信号G1がハイレベルに固定された状態)とし、重負荷領域でオペアンプ11をイネーブル状態(=ゲート信号G1のハイレベル固定が解除された状態)とするように、イネーブル信号ENを生成する。一方、軽負荷用のオペアンプ12には、イネーブル信号ENが入力されておらず、出力電流Ioutの大きさに依らず、常にイネーブル状態とされている。
【0028】
図2は、第1実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作を示す図であり、上から順に、負荷RLに流れる出力電流Iout(=Iout1+Iout2)、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2、及び、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が描写されている。なお、各横軸は出力電流Ioutの大きさを示している。
【0029】
軽負荷領域(Iout<Ith)では、オペアンプ11がディセーブル状態とされるので、トランジスタM1がオフとなり、これに流れる出力電流Iout1がゼロ値となる。従って、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2は、負荷RLに流れる出力電流Ioutそのものとなる。
【0030】
一方、重負荷領域(Iout>Ith)では、オペアンプ11がイネーブル状態とされる。その結果、トランジスタM1には、出力電流Ioutから出力電流Iout2を差し引いた差分(=Iout-Iout2)に相当する出力電流Iout1が流れる。
【0031】
このように、重負荷用のトランジスタM1及びオペアンプ11と、軽負荷用のトランジスタM2及びオペアンプ12を個別に用意しておき、出力電流Ioutに応じてオペアンプ11の動作可否を制御する構成であれば、軽負荷領域(Iout<Ith)における低消費電流化と、重負荷領域(Iout>Ith)における高速負荷応答を両立することが可能となる。
【0032】
ただし、第1実施形態のシリーズレギュレータ10では、軽負荷用のオペアンプ12が常にイネーブル状態とされている。そのため、出力電流Ioutの増大に伴い、出力電流Iout2がその最大値Iout_max(=アンプ切替閾値Ithに相当)に達して以降、出力電流Iout2は、上記の最大値Iout_maxに維持されたままとなる。
【0033】
その結果、重負荷用のオペアンプ11では、軽負荷領域から重負荷領域への切替に際して、出力電流Iout1をゼロ値(=無負荷状態)から立ち上げなければならず、広負荷範囲(0~Iout-Iout2)での安定動作が必要となる。しかしながら、一般に、負荷範囲が広くなるほど出力インピーダンスの差が大きくなるため、無負荷状態での安定起動と大電流出力時の高速負荷応答及び安定動作の両立は難しい。
【0034】
以下では、上記の考察に鑑み、軽負荷領域(Iout<Ith)における低消費電流化と、重負荷領域(Iout>Ith)における高速負荷応答に加えて、広負荷範囲での安定動作も実現することのできる新規な実施形態について説明する。
【0035】
<第2実施形態>
図3は、シリーズレギュレータの第2実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第1実施形態(
図1)をベースとしつつ、アンプ制御回路14がオペアンプ11の動作可否を制御するだけでなく、オペアンプ12の動作可否も制御する構成に変更されている。また、これに伴い、シリーズレギュレータ10には、インバータ15が追加されている。そこで、既出の構成要素については、
図1と同一の符号を付すことで重複した説明を割愛し、以下では、本実施形態の特徴部分について重点的に説明する。
【0036】
アンプ制御回路14は、例えばゲート信号G1及びG2の双方に基づいて、軽負荷領域(Iout<Ith)であるのか、それとも、重負荷領域(Iout>Ith)であるのかを判別し、その判別結果に基づいてイネーブル信号ENを生成する。より具体的に述べると、アンプ制御回路14は、軽負荷領域でオペアンプ11をディセーブル状態とし、重負荷領域でオペアンプ11をイネーブル状態とするように、イネーブル信号ENを生成する。この点については、基本的に先出の第1実施形態と同様である。
【0037】
インバータ15は、イネーブル信号ENを論理反転させて反転イネーブル信号ENBを生成し、これをオペアンプ12に出力する。従って、オペアンプ12は、軽負荷領域でイネーブル状態となり、重負荷領域でディセーブル状態となる。すなわち、オペアンプ11及び12それぞれの動作可否は、イネーブル信号ENと反転イネーブル信号ENBに応じて相補的に切り替えられる。
【0038】
図4は、第2実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作を示す図であり、先出の
図2と同じく、上から順に、負荷RLに流れる出力電流Iout、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2、及び、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が描写されている。なお、各横軸は出力電流Ioutの大きさを示している。
【0039】
軽負荷領域(Iout<Ith)では、オペアンプ11がディセーブル状態とされて、オペアンプ12がイネーブル状態とされる。従って、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1がゼロ値となり、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2が負荷RLに流れる出力電流Ioutそのものとなる。この点については、基本的に先出の第1実施形態と同様である。
【0040】
一方、重負荷領域(Iout>Ith)では、オペアンプ11がイネーブル状態とされて、オペアンプ12がディセーブル状態とされる。従って、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2がゼロ値となり、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が負荷RLに流れる出力電流Ioutそのものとなる。
【0041】
本図に即して述べると、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、出力電流Ioutがアンプ切替閾値Ithに達して軽負荷領域から重負荷領域に切り替わる際、出力電流Iout2がその最大値Iout2_max(=Ith)からゼロ値まで急峻に立下り、これとは相補的に、出力電流Iout1がゼロ値からその最小値Iout1_min(=Ith)まで急峻に立ち上がる。なお、出力電流Ioutの線形性を維持するためには、Iout2_max=Iout1_min=Ithに設定しておけばよい。
【0042】
すなわち、アンプ制御回路14は、軽負荷領域(Iout<Ith)では、出力電流Iout1をゼロ値とし、出力電流Iout2で出力電流Ioutの全てを賄うように、オペアンプ11及び12をそれぞれ制御する一方、重負荷領域(Iout>Ith)では、出力電流Iout2をゼロ値とし、出力電流Iout1で出力電流Ioutの全てを賄うように、オペアンプ11及び12をそれぞれ制御する。
【0043】
別の見方をすると、アンプ制御回路14は、重負荷用のオペアンプ11をイネーブル状態とする際に、これが無負荷状態で動作し始めることのないように、軽負荷用のオペアンプ11をディセーブル状態として、出力電流Iout2をゼロ値まで引き下げる。
【0044】
その結果、オペアンプ11では、軽負荷領域から重負荷領域への切替に際して、出力電流Iout1をゼロ値(=無負荷状態)から起動する必要がなくなる。従って、オペアンプ11では、無負荷状態での安定起動を考慮せず、大電流出力時の高速負荷応答及び安定動作に特化して、その位相定数などを設定することができる。
【0045】
以上のアンプ切替制御より、本実施形態のシリーズレギュレータ10であれば、広負荷範囲での安定動作、高速負荷応答、並びに、低消費電流化を実現することが可能となる。
【0046】
なお、本図で示したように、アンプ切替閾値Ithについては、軽負荷領域から重負荷領域への切替時と重負荷領域から軽負荷領域への切替時との間でヒステリシスを持たせておくことが望ましい。
【0047】
<第3実施形態>
図5は、シリーズレギュレータの第3実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第2実施形態(
図3)をベースとしつつ、重負荷領域でもオペアンプ12がトランジスタM2を完全にオフしない構成に変更されている。また、本実施形態では、インバータ15が割愛されており、アンプ制御回路14からオペアンプ11及び12に個別のイネーブル信号EN1及びEN2が出力されている。
【0048】
アンプ制御回路14は、例えばゲート信号G2に基づいて、軽負荷領域(Iout<Ith)と重負荷領域(Iout>Ith)の判別を行い、その判別結果に基づいてイネーブル信号EN1及びEN2をそれぞれ生成する。より具体的に述べると、アンプ制御回路14は、軽負荷領域では、オペアンプ11をディセーブル状態としてオペアンプ12をイネーブル状態とし、重負荷領域では、オペアンプ11をイネーブル状態としてオペアンプ12を出力電流抑制状態(=トランジスタM2を完全にオフせずに、出力電流Iout2を固定値Iout2_fixに制限した状態)とするように、イネーブル信号EN1及びEN2をそれぞれ生成する。
【0049】
図6は、第3実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作を示す図であり、先出の
図2や
図4と同じく、上から順に、負荷RLに流れる出力電流Iout、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2、及び、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が描写されている。なお、各横軸は出力電流Ioutの大きさを示している。
【0050】
軽負荷領域(Iout<Ith)では、オペアンプ11がディセーブル状態とされて、オペアンプ12がイネーブル状態とされる。従って、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1がゼロ値となり、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2が負荷RLに流れる出力電流Ioutそのものとなる。この点については、基本的に先出の第1実施形態や第2実施形態と同様である。
【0051】
一方、重負荷領域(Iout>Ith)では、オペアンプ11がイネーブル状態とされて、オペアンプ12が出力電流抑制状態とされる。従って、出力電流Iout2が固定値Iout2_fixとなり、出力電流Iout1が、出力電流Ioutから出力電流Iout2を差し引いた差分値(=Iout-Iout2)となる。
【0052】
本図に即して述べると、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、出力電流Ioutがアンプ切替閾値Ithに達して軽負荷領域から重負荷領域に切り替わる際、出力電流Iout2がその最大値Iout2_max(=Ith)から固定値Iout2_fix(<Iout2_max)まで急峻に立下り、これとは相補的に、出力電流Iout1がゼロ値からその最小値Iout1_min(=Ith-Iout2_fix)まで急峻に立ち上がる。
【0053】
すなわち、アンプ制御回路14は、軽負荷領域(Iout<Ith)では、出力電流Iout1をゼロ値とし、出力電流Iout2で出力電流Ioutの全てを賄うように、オペアンプ11及び12をそれぞれ制御する一方、重負荷領域(Iout>Ith)では、出力電流Iout2を固定値Iout2_fix(<Ith)とし、出力電流Iout1で出力電流Ioutから出力電流Iout2を差し引いた差分(Iout-Iout2)を賄うように、オペアンプ11及び12をそれぞれ制御する。
【0054】
このように、重負荷領域でもオペアンプ12がトランジスタM2を完全にオフしない構成であれば、先出の第2実施形態と同じく、広負荷範囲での安定動作、高速負荷応答、並びに、低消費電流化を実現することができる上、重負荷領域から軽負荷領域への急峻な負荷変動時にも、オペアンプ12を遅滞なく円滑に反応させることが可能となる。
【0055】
なお、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、軽負荷領域から重負荷領域への切替に際して、オペアンプ11が安定動作可能な負荷状態から起動できるように、上記のアンプ切替閾値Ith(例えば数百μA~数mA)や固定値Iout2_fix(例えば数十μA~100μA)を適宜調整することが望ましい。
【0056】
<第4実施形態>
図7は、シリーズレギュレータの第4実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第3実施形態(
図5)をベースとしつつ、出力電流Ioutの流れる電流経路上にセンス抵抗Rsが設けられており、出力電流Ioutに応じたセンス電圧Vs(=Iout×Rs)がアンプ制御回路14に入力されている。
【0057】
アンプ制御回路14は、このセンス電圧Vsに基づいて、軽負荷領域(Iout<Ith)と重負荷領域(Iout>Ith)の判別を行い、その判別結果に基づいてイネーブル信号EN1及びEN2をそれぞれ生成する。
【0058】
このように、負荷領域の判別手法については、ゲート信号G1及びG2に基づく判別手法であってもよいし、センス電圧Vsに基づく判別手法であってもよいし、これら以外の判別手法であってもよい。なお、センス電圧Vsを用いる場合には、アンプ切替閾値Ithにヒステリシスを持たせておくことにより、判別動作の安定性を高めることができる。ただし、アンプ切替閾値Ithのヒステリシスは、必ずしも必須の構成要素ではない。
【0059】
<第5実施形態>
図8は、シリーズレギュレータの第5実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第2実施形態(
図3)をベースとしつつ、アンプ制御回路14及びインバータ15に代えて、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM3及びM4と、抵抗R3と、オフセット電圧源16とを有する。また、本図では、以降の説明を簡単とするために、抵抗R1を割愛してシリーズレギュレータ10をバッファ出力状態としている。以下では、本実施形態の特徴部分について重点的に説明する。
【0060】
オペアンプ11は、反転入力端(-)に入力される基準電圧Vref1(既出の基準電圧Vrefに相当)と、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfb1(既出の帰還電圧Vfbに相当)とが一致(イマジナリショート)するように、ゲート信号G1を生成する。先にも述べたように、オペアンプ11については、低消費電流化よりも高速負荷応答などに特化した回路設計を行うことができる。
【0061】
オペアンプ12は、反転入力端(-)に入力される基準電圧Vref2(=Vref1+Voffset)と、非反転入力端(+)に入力される帰還電圧Vfb2(=Vfb1+ΔV1)とが一致(イマジナリショート)するように、ゲート信号G2を生成する。先にも述べたように、オペアンプ12については、高速負荷応答よりも低消費電流化などに特化した回路設計を行うことができる。
【0062】
基準電圧源13は、入力電圧Vinから所定の基準電圧Vref1を生成する第1の内部電源回路(例えばバンドギャップ電源回路)である。
【0063】
オフセット電圧源16は、基準電圧Vref1に固定オフセット電圧Voffsetを付与した基準電圧Vref2(=Vref1+Voffset)を生成する第2の内部電源回路である。
【0064】
トランジスタM3は、オフセット電圧キャンセル用のトランジスタである。トランジスタM3のソースは、電源(=入力電圧Vinの入力端)に接続されている。トランジスタM3のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。トランジスタM3のゲートは、オペアンプ12の出力端(=ゲート信号G2の出力端)に接続されている。トランジスタM3のオン抵抗値は、ゲート信号G2が高いほど高くなり、ゲート信号G2が低いほど低くなる。従って、トランジスタM3に流れる出力電流Iout3は、ゲート信号G2が高いほど小さくなり、ゲート信号G2が低いほど大きくなる。
【0065】
トランジスタM4は、オペアンプ切替用のトランジスタである。トランジスタM4のソースは、電源(=入力電圧Vinの入力端)に接続されている。トランジスタM4のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。トランジスタM4のゲートは、オペアンプ11の出力端(=ゲート信号G1の出力端)に接続されている。トランジスタM4のオン抵抗値は、ゲート信号G1が高いほど高くなり、ゲート信号G1が低いほど低くなる。従って、トランジスタM4に流れる出力電流Iout4は、ゲート信号G1が高いほど小さくなり、ゲート信号G1が低いほど大きくなる。
【0066】
抵抗R3は、帰還電圧Vfb1の印加端と帰還電圧Vfb2の印加端との間に接続されたオフセット抵抗であり、自身に流れる出力電流Iout3及びIou4に応じた可変オフセット電圧ΔV1(=(Iout3+Iout4)×R3)を帰還電圧Vfb1に付与して帰還電圧Vfb2(=Vfb1+ΔV1)を生成する。
【0067】
図9は、第5実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作を示す図であり、上から順に、負荷RLに与えられる出力電圧Vout、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2、及び、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が描写されている。なお、各横軸は出力電流Ioutの大きさを示している。
【0068】
以下の説明では、トランジスタM1及びM4のサイズ比がM1:M4=M:1であり、Iout4=Iout1/Mであるものとする。また、トランジスタM2及びM3のサイズ比がM2:M3=N:1であり、Iout3=Iout2/Nであるものとする。
【0069】
まず、軽負荷領域から重負荷領域への切替動作について説明する。軽負荷領域(Iout<IthH)では、オペアンプ11がゲート信号G1をハイレベルに固定してトランジスタM1(及びM4)をオフさせた状態となるので、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2が負荷RLに流れる出力電流Ioutそのものとなる。なお、出力電流Iout(=Iout2)が増大していくと、出力電流Iout3も増大していくので、可変オフセット電圧ΔV1(=Iout3×R3)が上昇していく。従って、固定オフセット電圧Voffsetが可変オフセット電圧ΔV1により徐々にキャンセルされていく。
【0070】
出力電流Ioutがさらに増大し、Iout=Iout2=IthH(=Voffset×N/R3)になると、固定オフセット電圧Voffsetと可変オフセット電圧ΔV1との差が0Vとなる。すなわち、固定オフセット電圧Voffsetが可変オフセット電圧ΔV1により完全にキャンセルされた状態(ΔV1=Voffset)となる。
【0071】
このとき、出力電流Iout2は、この時点で流れている電流値を最大値Iout2_max(=IthH)として、それ以上に増えなくなる。なぜなら、出力電流Iout2がそれ以上に増えようとすると、可変オフセット電圧ΔV1が固定オフセット電圧Voffsetよりも高くなってしまい、オペアンプ12がトランジスタM2及びM3をオフさせようとする負帰還動作となるためである。
【0072】
その結果、出力電流Ioutがアンプ切替閾値IthHよりも大きくなると、その超過分を出力電流Iout1で賄うために、重負荷用のオペアンプ11が動作するので、トランジスタM1がオンする。また、これと同時にトランジスタM4もオンする。従って、出力電流Iout1が流れ始めるとともに、出力電流Iout4も増大していく。
【0073】
出力電流Iout4が少しでも流れると、可変オフセット電圧ΔV1が固定オフセット電圧Voffsetよりも高くなるので、上記で説明したように、オペアンプ12がトランジスタM2及びM3をオフさせようとする。従って、負荷RLに流れる出力電流Ioutとしては、出力電流Iout2よりも出力電流Iout1が支配的となり、出力電流Iout4もさらに増大する。
【0074】
上記一連の切替動作により、出力電流Ioutの制御主体は、軽負荷用のオペアンプ12から重負荷用のオペアンプ11へと一気に移行する。その結果、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1は、ゼロ値から流れ始めるのではなく、これよりも大きい所定の最小値Iout1_min(=IthH=Voffset×N/R3)から流れ始める。
【0075】
次に、重負荷領域から軽負荷領域への切替動作について説明する。重負荷領域(Iout>IthH)では、出力電流Iout(=Iout1)の減少に伴い、可変オフセット電圧ΔV1(=Iout4×R3)が低下していく。
【0076】
そして、出力電流Ioutがさらに減少し、Iout<IthL(=Voffset×M/R3)になると、Voffset>ΔV1となり、延いては、Vref2<Vfb2となる。従って、軽負荷用のオペアンプ12が再び動作し始めるので、トランジスタM2(及びM3)がオンする。その結果、出力電圧Voutが持ち上がり、重負荷用のオペアンプ11がゲート信号G1をハイレベルに固定した状態に戻る。
【0077】
上記一連の切替動作により、出力電流Iout(=Iout1)がアンプ切替閾値IthLよりも小さくなると、出力電流Ioutの制御主体は、重負荷用のオペアンプ11から軽負荷用のオペアンプ12へと一気に移行する。従って、オペアンプ11が軽負荷領域で動作することはない。従って、オペアンプ11の特性を重負荷領域に特化して設計することが可能となる。
【0078】
なお、
図9と先出の
図4を対比すれば分かるように、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、基本的に、第2実施形態と同様のアンプ切替動作が実現される。すなわち、本実施形態は、第2実施形態をより具現化したものとして理解することもできる。
【0079】
また、抵抗R1を割愛することなく、出力電圧Voutの分圧電圧を第1帰還電圧Vfb1とする場合でも、抵抗分圧に伴う電圧変動を考慮して回路定数(Voffset、R3、Iout3、Iout4など)を適宜設定することにより、上記と同様の作用効果を享受し得ることは言うまでもない。
【0080】
<第6実施形態>
図10は、シリーズレギュレータの第6実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第5実施形態(
図8)をベースとしつつ、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM5をさらに有する。以下では、本実施形態の特徴部分について重点的に説明する。
【0081】
トランジスタM5は、出力電流Iout2の固定値設定用トランジスタである。トランジスタM5のソースは、トランジスタM4のドレインに接続されている。トランジスタM5のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。また、トランジスタM5のゲートは、オペアンプ12の出力端(=ゲート信号G2の出力端)に接続されている。このように、トランジスタM5は、出力電流Iout4の流れる電流経路上(=トランジスタM4と帰還電圧Vfb2の印加端との間)に挿入されている。以下では、その導入意義について説明する。
【0082】
図11は、第6実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作を示した図であり、先出の
図9と同じく、上から順に、負荷RLに与えられる出力電圧Vout、トランジスタM2に流れる出力電流Iout2、及び、トランジスタM1に流れる出力電流Iout1が描写されている。なお、各横軸は出力電流Ioutの大きさを示している。
【0083】
基本的なアンプ切替動作は、先の第5実施形態(
図9)と同様であるが、本実施形態では、トランジスタM5の新規導入により、重負荷領域(Iout>IthH)でもオペアンプ12がトランジスタM2を完全にオフしなくなる。以下、具体的に説明する。なお、以下の説明では、トランジスタM2及びM5のサイズ比がM2:M5=P:1であり、Iout5=Iout2/Pであるものとする。
【0084】
オペアンプ12から出力されるゲート信号G2は、トランジスタM2のゲートだけでなく、トランジスタM5のゲートにも共通に入力されている。従って、出力電流Ioutがアンプ切替閾値IthHよりも大きくなり、軽負荷領域から重負荷領域に切り替わるときでも、トランジスタM2(及びM3)が完全にオフしなくなる。なぜなら、トランジスタM2(及びM3)を完全にオフしてしまうと、トランジスタM5も完全にオフしてしまうので、出力電流Iout4の流れる電流経路が遮断されてしまい、抵抗R3に可変オフセット電圧ΔV1が生じなくなるからである。
【0085】
なお、このときに流れる出力電流Iout2の固定値Iout2_fixについては、{(Iout2/P)+(Iout2/N)}×R3=Voffsetより、Iout2_fix=(Voffset/R3)×{P×N/(P+N)}として求められる。
【0086】
また、重負荷領域での出力電流Iout1については、Iout=Iout1+Iout2_fixより、Iout1=Iout-Iout2_fixとなる。
【0087】
一方、重負荷領域から軽負荷領域へのアンプ切替閾値IthLについては、先出の第5実施形態と異なる。より具体的に述べると、Iout1/M<Iout2_fix/Pとなるポイントで、出力電圧Voutがオペアンプ11で設定される目標値(=基準電圧Vref1)よりも高くなり、オペアンプ11がトランジスタM1をオフし始める。
【0088】
なお、上記の条件を満たす出力電流Iout1については、Iout1=M×Iout2_fix/Pで求めることができる。また、Iout=Iout1+Iout2より、アンプ切替閾値IthLについては、IthL=(M+P)×Iout2_fix/P=(M+P)×N×Voffset/{R3×(P+N)}として求められる。
【0089】
出力電流Ioutが上記のアンプ切替閾値IthLを下回ると、Voffset>ΔV1となり、延いては、Vref2<Vfb2となる。従って、軽負荷用のオペアンプ12が再び動作し始めるので、出力電圧Voutが持ち上がり、重負荷用のオペアンプ11がゲート信号G1をハイレベルに固定した状態に戻る。
【0090】
重負荷領域において、ゲート信号G2がハイレベルに張り付いてしまう構成では、重負荷領域から軽負荷領域への急峻な負荷変動が生じたときに、オペアンプ12による出力帰還動作が不安定となりやすい。これに対して、本実施形態のように、重負荷領域でもオペアンプ12がトランジスタM2を完全にオフしない構成(=ゲート信号G2がハイレベルに張り付かない構成)であれば、重負荷領域から軽負荷領域への急峻な負荷変動時にも、オペアンプ12による出力帰還動作をより安定化させることが可能となる。
【0091】
なお、
図11と先出の
図6とを対比すれば分かるように、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、基本的に、第3実施形態と同様のアンプ切替動作が実現される。すなわち、本実施形態は、第3実施形態をより具現化したものとして理解することもできる。
【0092】
図12は、トランジスタM4の閾値ばらつき(=オンスレッショルド電圧Vthの製造ばらつき)に起因するアンプ切替動作の不具合を示す図であり、負荷RLに流れる出力電流Iout(横軸)とトランジスタM1に流れる出力電流Iout1(縦軸)との関係が示されている。
【0093】
先に説明した第5実施形態(
図8)と第6実施形態(
図10)では、いずれも、重負荷領域から軽負荷領域へのアンプ切替閾値IthHがトランジスタM4によって決定されていた。ただし、トランジスタM4は、軽負荷領域から重負荷領域へのアンプ切替閾値IthLを決定する際にも重要な役割を果たしている。
【0094】
例えば、トランジスタM4のオンスレッショルド電圧VthがトランジスタM1のそれよりも高い場合、トランジスタM1がオンしてもトランジスタM4がオフしている状況が生じ得る。このような状況に陥ると、軽負荷領域から重負荷領域への切替動作がうまくいかず、オペアンプ11が想定よりも負荷の軽い状態で動作してしまうおそれがある(
図12の大破線で囲まれた領域を参照)。
【0095】
すなわち、軽負荷領域から重負荷領域へのアンプ切替閾値IthHのみを考慮すれば、トランジスタM4のサイズ(W/L比)は、トランジスタM4のオンスレッショルド電圧Vthがばらついても、トランジスタM1のそれを上回らないように、できるだけ低めに設計しておく必要がある。また、トランジスタM1よりもオンスレッショルド電圧Vthの低い素子(Low-Vth PMOSFET)が存在するのであれば、これを用いることが望ましい。
【0096】
しかし、上記の対策を採用した場合、重負荷領域から軽負荷領域へのアンプ切替閾値IthLが本来の狙い値よりも必然的に軽負荷側に設定されることになる。なぜなら、上記の対策では、トランジスタM1及びM4のサイズ比(M:1)を1:1に近付けることを意味しているので、パラメータMが小さくなり、延いては、アンプ切替閾値IthLが軽負荷側にシフトしていく。また、Low-Vth PMOSFETを使用した場合には、単純なサイズ比でパラメータMを決定することができなくなるので、アンプ切替閾値IthLの設定がさらに難しくなる。
【0097】
以下では、上記の考察に鑑み、アンプ切替閾値IthH及びIthLそれぞれを適切に設定することのできる新規な実施形態について説明する。
【0098】
<第7実施形態>
図13は、シリーズレギュレータの第7実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第6実施形態(
図10)をベースとしつつ、トランジスタM4としてLow-Vth PMOSFETが用いられているほか、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM6及びM7をさらに有する。以下では、本実施形態の特徴部分について重点的に説明する。
【0099】
トランジスタM4は、先と同じく、オペアンプ切替用のトランジスタとして用いられているが、特に、トランジスタM1よりもオンスレッショルド電圧Vthの低いLow-Vth PMOSFETを採用したことにより、軽負荷領域から重負荷領域へのオペアンプ切替用トランジスタとして機能する。また、トランジスタM5は、トランジスタM4の上記変更に伴い、出力電流Iout4の制限用トランジスタとして機能する。このように、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、トランジスタM6及びM7の新規導入に伴い、トランジスタM4及びM5の役割が変更されている。
【0100】
トランジスタM6は、重負荷領域から軽負荷領域へのオペアンプ切替用トランジスタである。トランジスタM6のソースは、電源(=入力電圧Vinの入力端)に接続されている。トランジスタM6のドレインは、トランジスタM7のソースに接続されている。トランジスタM7のゲートは、オペアンプ11の出力端(=ゲート信号G1の出力端)に接続されている。トランジスタM6のオン抵抗値は、ゲート信号G1が高いほど高くなり、ゲート信号G1が低いほど低くなる。従って、トランジスタM6に流れる出力電流Iout6は、ゲート信号G1が高いほど小さくなり、ゲート信号G1が低いほど大きくなる。なお、トランジスタM6は、トランジスタM1と並べて形成するなどして、互いのペア性を高めておくことが望ましい。
【0101】
トランジスタM7は、出力電流Iout2の固定値設定用トランジスタである。トランジスタM7のソースは、トランジスタM6のドレインに接続されている。トランジスタM7のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。また、トランジスタM7のゲートは、オペアンプ12の出力端(=ゲート信号G2の出力端)に接続されている。このように、トランジスタM7は、出力電流Iout6の流れる電流経路上(=トランジスタM6と帰還電圧Vfb2の印加端との間)に挿入されている。
【0102】
次に、上記したトランジスタM6及びM7の導入意義について説明する。第7実施形態におけるシリーズレギュレータ10の出力動作波形(タイミングチャート)については、先出の第6実施形態(
図11)と変わらないので、その描写を割愛するが、アンプ切替閾値IthH及びIthLの設定動作が異なっている。以下、その点について詳述する。
【0103】
なお、以下の説明では、トランジスタM1及びM6のサイズ比がM1:M6=Q:1であり、トランジスタM2及びM7のサイズ比がM2:M7=S:1であるものとする。
【0104】
まず、本実施形態のシリーズレギュレータ10では、トランジスタM4の役割がアンプ切替閾値IthHの設定用に特化されている。より具体的に述べると、トランジスタM4としては、軽負荷領域から重負荷領域へのアンプ切替が確実に行われるように、トランジスタM1よりもオンスレッショルド電圧Vthが低い素子(Low-Vth PMOSFET)が用いられている。なお、このような素子を用いることができない場合には、トランジスタM4のオンスレッショルド電圧Vthがばらついても、トランジスタM1のそれを上回らないように、トランジスタM1及びM4のサイズ比(M:1)を1:1に近付けておけばよい。
【0105】
トランジスタM4のオンタイミングは、トランジスタM1のオンタイミングよりも早い方が望ましい。ただし、トランジスタM4に流れる出力電流Iout4自体は、小さくてもよい。なぜなら、可変オフセット電圧ΔV1が固定オフセット電圧Voffsetより少しでも高くなり、オペアンプ12がゲート信号G2を引き上げ始めると、正帰還が掛かり、オペアンプ12自身の出力動作によってアンプ切替動作が進むためである。そこで、トランジスタM4に流れる出力電流Iout4は、トランジスタM5で制限しておくことが望ましい(M2:M5=P:1)。
【0106】
一方、重負荷領域から軽負荷領域へのアンプ切替閾値IthLについては、トランジスタM6及びM7で別途設定されている。なお、出力電流Iout4が出力電流Iout3や出力電流Iout6と比べて無視できるほど小さい場合、アンプ切替閾値IthLは、出力電流Iout3及びIout6に応じて決定することができる。また、その考え方や計算式については、基本的に先出の第6実施形態と同様であり、出力電流Iout4を出力電流Iout6に置き換えて理解すればよい。
【0107】
より具体的に述べると、Iout1/Q<Iout2_fix/Sとなるポイントで、出力電圧Voutがオペアンプ11で設定される目標値(=基準電圧Vref1)よりも高くなり、オペアンプ11がトランジスタM1をオフし始める。
【0108】
なお、上記の条件を満たす出力電流Iout1については、Iout1=Q×Iout2_fix/Sで求めることができる。また、Iout=Iout1+Iout2より、アンプ切替閾値IthLについては、IthL=(Q+S)×Iout2_fix/S=(Q+S)×N×Voffset/{R3×(S+N)}として求められる。
【0109】
出力電流Ioutが上記のアンプ切替閾値IthLを下回ると、Voffset>ΔV1となり、延いては、Vref2<Vfb2となる。従って、軽負荷用のオペアンプ12が再び動作し始めるので、出力電圧Voutが持ち上がり、重負荷用のオペアンプ11がゲート信号G1をハイレベルに固定した状態に戻る。
【0110】
<第8実施形態>
図14は、シリーズレギュレータの第8実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第7実施形態(
図13)をベースとしつつ、トランジスタM5のドレインとトランジスタM7のドレインとの間に接続された抵抗R4(=ヒステリシス用の第2オフセット抵抗に相当)をさらに有する。
【0111】
このように、重負荷領域から軽負荷領域へのアンプ切替閾値IthLを設定する手段としては、先出のトランジスタM6及びM7だけでなく、さらに、出力電流Iout6に応じた可変オフセット電圧ΔV2(=Iout6×R4)を帰還電圧Vfb1に付与するための抵抗R4を追加してもよい。
【0112】
<第9実施形態>
図15は、シリーズレギュレータの第9実施形態を示す図である。本実施形態のシリーズレギュレータ10は、第7実施形態(
図13)をベースとしつつ、Pチャネル型MOS電界効果トランジスタM8及びM9と、Nチャネル型MOS電界効果トランジスタM10及びM11と、抵抗R5~R8と、をさらに有する。また、これらの素子追加に伴い、既出のトランジスタM4~M7についても、それぞれの接続関係が変更されている。以下、具体的に説明する。
【0113】
トランジスタM4のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM4のドレインは、抵抗R5を介して接地端に接続されている。トランジスタM4のゲートは、オペアンプ11の出力端に接続されている。
【0114】
トランジスタM5のソースは、トランジスタM8のドレインに接続されている。トランジスタM5のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。トランジスタM5のゲートは、オペアンプ12の出力端に接続されている。
【0115】
トランジスタM6のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM6のドレインは、抵抗R7を介して接地端に接続されている。トランジスタM6のゲートは、オペアンプ11の出力端に接続されている。
【0116】
トランジスタM7のソースは、トランジスタM9のドレインに接続されている。トランジスタM7のドレインは、帰還電圧Vfb2の印加端に接続されている。トランジスタM7のゲートは、オペアンプ12の出力端に接続されている。
【0117】
トランジスタM8のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM8のドレインは、トランジスタM5のソースに接続されている。トランジスタM8のゲートは、抵抗R6を介して入力電圧Vinの印加端に接続されている。
【0118】
トランジスタM9のソースは、入力電圧Vinの印加端に接続されている。トランジスタM9のドレインは、トランジスタM7のソースに接続されている。トランジスタM9のゲートは、抵抗R8を介して入力電圧Vinの印加端に接続されている。
【0119】
トランジスタM10のドレインは、トランジスタM8のゲートに接続されている。トランジスタM10のソースは、接地端に接続されている。トランジスタM10のゲートは、トランジスタM4のドレインに接続されている。
【0120】
トランジスタM11のドレインは、トランジスタM9のゲートに接続されている。トランジスタM11のソースは、接地端に接続されている。トランジスタM11のゲートは、トランジスタM6のドレインに接続されている。
【0121】
例えば、トランジスタM4がオンすると、トランジスタM10のゲート電圧が上昇してトランジスタM10がオンし、トランジスタM8のゲート電圧が低下してトランジスタM8がオンする。その結果、トランジスタM5に出力電流Iout4が流れる状態となる。
【0122】
逆に、トランジスタM4がオフすると、トランジスタM10のゲート電圧が低下してトランジスタM10がオフし、トランジスタM8のゲート電圧が上昇してトランジスタM8がオフする。その結果、出力電流Iout4の流れる電流経路が遮断される。
【0123】
同様に、トランジスタM6がオンすると、トランジスタM11のゲート電圧が上昇してトランジスタM11がオンし、トランジスタM9のゲート電圧が低下してトランジスタM9がオンする。その結果、トランジスタM7に出力電流Iout6が流れる状態となる。
【0124】
逆に、トランジスタM6がオフすると、トランジスタM11のゲート電圧が低下してトランジスタM11がオフし、トランジスタM9のゲート電圧が上昇してトランジスタM9がオフする。その結果、出力電流Iout6の流れる電流経路が遮断される。
【0125】
このように、オペアンプ11により駆動されるトランジスタM4と、オペアンプ12により駆動されるM5は、共通の電流経路上に設けることなく、それぞれの電流経路を切り分けておいてもよい。トランジスタM6とトランジスタM7についても同様である。
【0126】
<電子機器への搭載>
図16は、スマートフォンの外観を示す図である。スマートフォンXは、シリーズレギュレータ10を搭載する電子機器の一例である。例えば、シリーズレギュレータ10は、スマートフォンXに組み込まれている無線通信モジュールなどの電源として好適に用いることができる。もちろん、シリーズレギュレータ10は、スマートフォンXだけでなく、ノートパソコンやタブレットなどのモバイル機器を始めとして、様々な電子機器に広く用いられることは言うまでもない。また、シリーズレギュレータ10には、無線通信モジュールに限らず、様々な負荷RLを接続することが可能である。
【0127】
<その他の変形例>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。例えば、バイポーラトランジスタとMOS電界効果トランジスタとの相互置換や、各種信号の論理レベル反転は任意である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本明細書中に開示されているシリーズレギュレータは、例えば、無線通信モジュール用電源として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0129】
10 シリーズレギュレータ
11 オペアンプ(重負荷用)
12 オペアンプ(軽負荷用)
13 基準電圧源
14 アンプ制御回路
15 インバータ
16 オフセット電圧源
M1~M9 Pチャネル型MOS電界効果トランジスタ
M10、M11 Nチャネル型MOS電界効果トランジスタ
R1~R8 抵抗
RL 負荷
Rs センス抵抗
X スマートフォン(電子機器)