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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】難燃性スチレン系樹脂組成物及び成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 51/04 20060101AFI20220425BHJP
   C08K 5/3435 20060101ALI20220425BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20220425BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20220425BHJP
【FI】
C08L51/04
C08K5/3435
C08K5/49
C08K3/016
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018079208
(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公開番号】P2019183084
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】500199479
【氏名又は名称】PSジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【弁理士】
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】野寺 明夫
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190467(JP,A)
【文献】特開2008-143976(JP,A)
【文献】特表2005-520010(JP,A)
【文献】特表2006-501340(JP,A)
【文献】特開2014-095056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 51/04
C08K 5/3435
C08K 5/49
C08K 3/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂のマトリクス中にゴム状重合体(a)の粒子が分散された(A)ゴム変性スチレン系樹脂80.0~98.8質量%、(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物0.2~5.0質量%、及び(C)リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤1.0~15質量%を含有し、
前記(A)ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度が0.50~0.85dL/gであり
前記(A)ゴム変性スチレン系樹脂中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量が3~20質量%であることを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
前記スチレン系樹脂は、スチレン、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデンからなる群から選択される1種又は2種以上のスチレン系単量体の繰り返し単位から構成される、請求項1に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
以下の(1)~(2)のいずれかである、請求項1又は2に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
(1)前記(C)成分のリン系難燃剤が、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、及びホスホン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、
(2)前記(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物がオリゴマー状又はポリマー状である。
【請求項4】
前記リン酸エステル化合物が縮合リン酸エステル系化合物である、請求項に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
前記ゴム状重合体(a)の粒子の平均粒子径は、0.5~4.0μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性スチレン系樹脂組成物及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂は、成形性、寸法安定性に加え、耐衝撃性に優れていることから、広範囲な用途に使用されている。中でも難燃性を付与したポリスチレン系樹脂組成物は、家電機器、OA機器を始め多岐にわたり使用されており、現在、リデュースや軽量化から製品の薄肉化が求められている。
従来から、スチレン系樹脂に難燃性を付与するために、種々の難燃剤が提案されており、中でも安価で物性バランスに優れているブロム系難燃剤が多く使用されている。しかしながら、近年ハロゲン含有有機化合物を規制する動きが欧州を中心に活発化していること等から、ブロム元素を含まない難燃樹脂、難燃樹脂組成物の需要が高まっている。
こうしたブロム系難燃剤の代替難燃剤として、例えば、特許文献1では、リン酸エステル系難燃剤が検討されている。難燃性は付与できるものの、リン酸エステルのみの添加(実施例10)では、多量の添加を必要とし、耐熱性や耐衝撃性が低下してしまうため、OA機器等への利用には課題がある。また、難燃性についてもUL94垂直燃焼試験の結果が1.5mmの肉厚でV-2であり、薄肉の製品には向かない。更に、光安定性向上のためヒンダードアミン系光安定剤の添加も記載されているが、それらヒンダードアミン系光安定剤は難燃性に寄与しておらず、NOR型ヒンダードアミン系化合物の記載はない。
【0003】
一方、スチレン系樹脂に難燃性を付与する技術として、特許文献2には、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物を添加する技術が開示されている。NOR型ヒンダードアミン系化合物を添加したポリスチレンについて、難燃性を示し、事務機器のためのハウジングに適用が見いだされる(実施例16)との記載はあるものの、0.125インチ(約3.2mm)の厚さで難燃性が得られるものであり、肉厚の薄い事務機器や家電のハウジング、シートやフィルムへの使用には課題が残る。また、特定のNOR型ヒンダードアミン系化合物とリン化合物との混合物の添加が開示されているが、スチレン系樹脂に添加した実施例は無く、一般的な難燃剤として記載されているだけであり、NOR型ヒンダードアミン系化合物に対して特に有効とされる具体的なリン化合物についての記載は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-95056号公報
【文献】特表2002-507238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ブロム系難燃剤等のハロゲン系難燃剤を使用しない従来技術では、肉厚1.5mm未満の薄肉の製品においても十分な難燃性を示す樹脂組成物を得ることができず、難燃性を高めるためにはリン酸エステル等の難燃剤を多量に添加する必要があり、耐熱性や耐衝撃性の低下により製品化が困難である。
そこで、本発明の目的は、薄肉成形でも高い難燃性を示し、耐衝撃性、耐熱性、及び成形性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物、及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴム変性スチレン系樹脂にNOR型ヒンダードアミン系化合物とリン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤とを特定の割合で添加すると、驚くべきことに非常に高い難燃相乗効果が発現し、少ないリン系難燃剤の添加量で、薄肉成形でも高い難燃性を示し、耐衝撃性、耐熱性、及び成形性を保持した難燃性スチレン系樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1](A)ゴム変性スチレン系樹脂80.0~98.8質量%、(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物0.2~5.0質量%、及び(C)リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤1.0~15質量%を含有することを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物。
[2]前記(C)成分のリン系難燃剤が、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、及びホスホン酸エステル化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つである、[1]に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[3]前記リン酸エステル化合物が縮合リン酸エステル系化合物である、[2]に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[4]前記(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物がオリゴマー状又はポリマー状である、[1]~[3]のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[5]前記(A)ゴム変性スチレン系樹脂の還元粘度が0.5~0.85dL/gである、[1]~[4]のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
[6][1]~[5]のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を含むことを特徴とする、成形品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉成形でも高い難燃性を示し、耐衝撃性、耐熱性、及び成形性に優れた難燃性スチレン系樹脂組成物、及び該難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と言う。)について詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0010】
[難燃性スチレン系樹脂組成物]
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、(A)ゴム変性スチレン系樹脂80.0~98.8質量%、(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物0.2~5.0質量%、及び(C)リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤1.0~15質量%を含有することを特徴とする、難燃性スチレン系樹脂組成物である。
【0011】
<ゴム変性スチレン系樹脂(A)>
ゴム変性スチレン系樹脂(A)の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、80~98.8質量%であり、好ましくは85~97質量%、より好ましくは90~96質量%である。80質量%未満では、耐熱性、耐衝撃性が低下する傾向があり、98.8質量%を超えると難燃性が低下する。
【0012】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(A)とは、スチレン系樹脂のマトリクス中にゴム状重合体(a)の粒子が分散されたものであり、ゴム状重合体(a)の存在下でスチレン系単量体を重合させることにより製造することができる。
【0013】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(A)を構成するスチレン系単量体としては、スチレンの他に、例えば、α-メチルスチレン、α-メチルp-メチルスチレン、ο-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、イソブチルスチレン、及びt-ブチルスチレン又はブロモスチレン、クロロスチレン、及びインデン等が挙げられる。特に、スチレンが好ましい。これらのスチレン系単量体は、1種若しくは2種以上使用することができる。
【0014】
本実施形態のゴム変性スチレン系樹脂(A)に含まれるゴム状重合体(a)は、内側にスチレン系樹脂を内包し、かつ、外側にスチレン系樹脂がグラフトされたものであってよい。
【0015】
前記ゴム状重合体(a)としては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、天然ゴム、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体等を使用できるが、ポリブタジエン又はスチレン-ブタジエン共重合体が好ましい。ポリブタジエンには、シス含有率の高いハイシスポリブタジエン及びシス含有率の低いローシスポリブタジエンの双方を用いることができる。また、スチレン-ブタジエン共重合体の構造としては、ランダム構造及びブロック構造の双方を用いることができる。これらのゴム状重合体(a)は1種若しくは2種以上使用することができる。また、ブタジエン系ゴムを水素添加した飽和ゴムを使用することもできる。
【0016】
このようなゴム変性スチレン系樹脂(A)の例としては、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体)、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレンプロピレンゴム-スチレン共重合体)等が挙げられる。
【0017】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)がHIPS系樹脂である場合、これらのゴム状重合体(a)の中で特に好ましいのは、シス1,4結合が90モル%以上で構成されるハイシスポリブタジエンである。該ハイシスポリブタジエンにおいては、ビニル1,2結合が6モル%以下で構成されることが好ましく、3モル%以下で構成されることが特に好ましい。
なお、該ハイシスポリブタジエンの構成単位に関する異性体としてシス1,4、トランス1,4、又はビニル1,2構造を有するものの含有率は、赤外分光光度計を用いて測定し、モレロ法によりデータ処理することにより算出できる。
また、該ハイシスポリブタジエンは、公知の製造法、例えば有機アルミニウム化合物とコバルト又はニッケル化合物を含んだ触媒を用いて、1,3ブタジエンを重合して容易に得ることができる。
【0018】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、3~20質量%が好ましく、更に好ましくは5~15質量%である。ゴム状重合体(a)の含有量が3質量%より少ないとスチレン系樹脂の耐衝撃性が低下する。また、ゴム状重合体(a)の含有量が20質量%を超えると難燃性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量は、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いて算出される値である。
【0019】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、耐衝撃性や難燃性の観点から、0.5~4.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.8~3.5μmである。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径は、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
【0020】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)の還元粘度(これは、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の分子量の指標となる)は、0.50~0.85dL/gの範囲にあることが好ましく、更に好ましくは0.55~0.80dL/gの範囲である。0.50dL/gより小さいと衝撃強度が低下し、0.85dL/gを超えると流動性の低下により成形性が低下する。
なお本開示で、ゴム変性スチレン系樹脂(A)の還元粘度は、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で測定される値であり、より詳細には、後述の[実施例]の項で説明する手順で測定される値である。
【0021】
ゴム変性スチレン系樹脂(A)の製造方法は、特に制限されるものではないが、ゴム状重合体(a)の存在下、スチレン系単量体(及び溶媒)を重合する塊状重合(若しくは溶液重合)、又は反応途中で懸濁重合に移行する塊状-懸濁重合、又はゴム状重合体(a)ラテックスの存在下、スチレン系単量体を重合する乳化グラフト重合にて製造することができる。塊状重合においては、ゴム状重合体(a)とスチレン系単量体、並びに必要に応じて有機溶媒、有機過酸化物、及び/又は連鎖移動剤を添加した混合溶液を、完全混合型反応器又は槽型反応器と複数の槽型反応器とを直列に連結し構成される重合装置に連続的に供給することにより製造することができる。
【0022】
<NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)>
NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、0.2~5.0質量%であり、好ましくは0.5~3.0質量%であり、より好ましくは1.0~2.0質量%である。0.2質量%以上であれば、リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤(C)との相乗効果により薄い肉厚の成形品で難燃性が得られる。また、5.0質量%を超えて添加しても、難燃性の向上は見られず、耐衝撃性や耐熱性が大きく低下する。
また、NOR型ヒンダードアミン系化合物(B)は、光安定化剤としてよく知られるものであり、添加することにより耐光性を付与することもできる。
【0023】
NOR(アルコキシイミノ基)型ヒンダードアミン系化合物(B)のアルコキシイミノ基とは、ピペリジン環のイミノ基(>N-H)の部分が、NHのままであるN-H型、Hがメチル基で置き換わったN-メチル型に対して、N-アルコキシル基(>N-OR)の構造を有するものであり、N-アルコキシル基はアルキルパーオキシラジカル(RO2・)を捕捉して容易にラジカルとなり難燃効果を発揮する。一方、N-メチル型ヒンダードアミン系化合物又はN-H型ヒンダードアミン系化合物の場合は、難燃性が低下するおそれがある。
上記のアルコキシル基(-OR)は、アルキル基に酸素が結合したアルコキシル基に限定されず、Rは、アルキル基以外に、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基等を含む。
これらアルコキシル基の具体的な例としては、メトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましく、特に、プロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が、分子量が大きくなることでシート及びフィルムからのブリードアウトを抑制できる点から、好ましい。
【0024】
本実施形態で用いるNOR型ヒンダードアミン系化合物としては、N-アルコキシル基(>N-OR)の構造を有するものであれば特に限定されない。具体例として、例えば、特表2002-507238号公報、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号等に記載されているNOR型ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0025】
また、(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物は、特に高分子タイプのものが好ましい。高分子タイプとは、一般に、オリゴマー状又はポリマー状化合物である。高分子タイプであると、成形加工のモールドデポジットが低減でき、難燃性と耐熱性の点に優れる。
上記高分子タイプのオリゴマー状又はポリマー状化合物は、繰り返し単位数としては、2~100が好ましく、より好ましくは5~80である。
【0026】
NOR型ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられる:1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-オクタデシルアミノピペリジン;ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)セバケート;2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-s-トリアジン;ビス(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)アジペート;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物;4,4’-ヘキサメチレンビス(アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン)と、2-クロロ-4,6-ビス(ジブチルアミノ)-s-トリアジンで末端キャップされた2,4-ジクロロ-6-[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-s-トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物;
2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)-6-クロロ-s-トリアジン;過酸化処理した4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンと、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’-エタン-1,2-ジイルビス(1,3-プロパンジアミン)との反応生成物(N,N’,N’’’-トリス{2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)n-ブチルアミノ]-s-トリアジン-6-イル}-3,3’-エチレンジイミノジプロピルアミン);ビス(1-ウンデカノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート;1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-オン;ビス(1-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート。
【0027】
市販品としては、BASF社製FlamestabNOR116FF、TINUVIN NOR371、TINUVIN XT850FF、TINUVIN XT855FF、TINUVIN PA123、株式会社ADEKA製LA-81等を例示することができる。
(B)NOR型ヒンダードアミン系化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
<リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤(C)>
リン含有量3.0質量%以上のリン系難燃剤(C)とは、リン系難燃剤中にリン元素が3.0質量%以上含まれるリン化合物のことをいう。単一化合物であっても混合物であってもかまわない。リン系難燃剤中のリン含有量が3.0質量%より少ないとNOR型ヒンダードアミン系化合物(B)との難燃性の相乗効果が発現せず、少ない添加量で高い難燃性を得ることはできない。
なお、リン含有量は、吸光光度法にて測定することができる。
【0029】
リン含有量が3.0質量%以上のリン系難燃剤の含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物100質量%に対して、1.0~15質量%であり、好ましくは1.5~10質量%であり、より好ましくは2.0~8.0質量%である。1.0質量%以上であれば、NOR型ヒンダードアミン化合物(B)との相乗効果により薄い肉厚の成形品で難燃性が得られる。また、15質量%を超えて添加しても、難燃性の向上は見られず、耐衝撃性や耐熱性が大きく低下する。
【0030】
(C)成分のリン系難燃剤は、上記の条件を満たしている限り特に制限されず、従来公知の方法によって得られるもの、又は市販品を用いることができる。好ましくは、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、又はホスホン酸エステル化合物であり、これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でもゴム変性スチレン系樹脂(A)との相溶性の良いリン酸エステル化合物又はホスホン酸エステル化合物が最も好ましい。
また、(C)成分のリン系難燃剤としては、ゴム変性スチレン系樹脂(A)中での分散が良好となる150℃~300℃で液体、即ち、融点が300℃以下である難燃剤が好ましい。溶融混錬時に固体であるリン系難燃剤(例えば、融点を有さないリン系難燃剤)を用いると、溶融混練時にリン系難燃剤が液体状ではないため、(A)成分に均一に分散せず、物性低下を起こしたり、難燃性が低下したりするおそれがある。
【0031】
-リン酸エステル化合物-
リン酸エステル化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリキシレニルホスフェート(TXP)、クレジルジフェニルホスフェート(CDP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート等のモノマー型リン酸エステル系化合物、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビスフェノールAビス-ジクレジルホスフェート、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェート等の、オキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物とフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である芳香族縮合リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス-ジフェニルホスフェート(BADP)、ビフェノールビス-ジフェニルホスフェート、ビフェノールビス-ジキシレニルホスフェートであり、より好ましくは、トリフェニルホスフェート(TPP)、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート、レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェートであり、更に好ましくは、レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェートである。
【0033】
また、リン酸エステル化合物は、耐熱性、成形加工時のモールドデポジットの低減等の観点で、縮合タイプである縮合リン酸エステル系化合物であることが好ましく、特に下記式(1)で表される芳香族縮合リン酸エステル系化合物が好ましい。
【化1】
式(1)中、R1~R5は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数1~10のアルコキシ基、又はハロゲン原子であり、R1~R5は同一でも異なっていてもよい。nは1~30の整数であり、好ましくは0~10の整数である。
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、アミル、第3アミル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、n-オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロヘキシル等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、クレジル、キシリル、2,6-キシリル、2,4,6-トリメチルフェニル、ブチルフェニル、ノニルフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0034】
更に、上記リン酸エステル化合物の中でも、(C)成分のリン系難燃剤としては、難燃性と透明性の両立という観点から、下記の化合物No.1、2、又は3のリン酸エステル化合物が好ましく、化合物No.2又は3がより好ましく、化合物No.2が更に好ましい。
化合物No.2(レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のPX-200等が、化合物No.3(レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート)としては、例えば、大八化学工業株式会社のCR-733S等が使用できる。
【化2】
【0035】
-ホスファゼン化合物-
ホスファゼン化合物としては、例えば、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(n-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(イソ-ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-エチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-n-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-イソ-プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,3-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,4-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,5-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(2,6-ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(m-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(o-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-プロポキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(イソ-ブトキシ)-1,3,5-トリス(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(n-プロポキシ)-1,3,5-トリス(4-t-オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等が挙げられる。
【0036】
この中でも好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(p-トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(メトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、より好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5-トリス(エトキシ)-1,3,5-トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、更に好ましくは、1,1,3,3,5,5-ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼンである。
【0037】
-ホスホン酸エステル-
ホスホン酸エステルとしては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【化3】
式(2)中、R1~R5は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R1~R5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい)及び環状(単環、縮合多環、架橋環、及びスピロ環のいずれでもよい)のいずれであってもよく、例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよい。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0038】
上記式(2)で表されるホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(2)-1~(2)-8で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0039】
なお、(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
<任意添加成分>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、上記(A)~(C)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤、加工助剤等の任意添加成分を添加することができる。これら添加剤、加工助剤等としては、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤等が挙げられる。
【0041】
酸化防止剤としては、フェノール系化合物、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0042】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第3ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第3ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第3ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第3ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(6-第3ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6―ジ第3ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第2ブチル-6-第3ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、2-第3ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第3ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、ステアリル〔3-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、テトラキス〔3-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2-第3ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第3ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2-第3ブチル-4-(3-第3ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第3ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第3ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第3ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2,2’-メチレンビス(4,6-第3ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第3ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第3ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第3ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0044】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0045】
耐候剤としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等を用いることができる。
【0046】
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ第3ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第3ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-5’-第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス(4-第3オクチル-6-(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-第3ブチル-5’-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第3ブチルフェニル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第3アミルフェニル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β、β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第3ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0047】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ジ(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第3ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノ-ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第3オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕-1,5,8-12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン、1,6,11-トリス〔2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0048】
滑剤としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
【0049】
脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
脂肪族エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28~30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
脂肪酸系滑剤のうち飽和脂肪酸としては、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12-ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。
脂肪酸系滑剤のうち不飽和脂肪酸としては、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
脂肪酸金属塩系滑剤としては、上記脂肪酸系滑剤の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を用いることができる。
具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-(3-ドデシルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3-ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル-2-ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル等が挙げられる。
これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭素繊維、マイカ、ワラストナイト、ウィスカ等を用いることができる。
【0055】
その他、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009-120717号公報に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価~3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目ヤニ防止剤)等を添加してもよい。
【0056】
添加剤及び加工助剤等の任意添加成分の合計含有量は、難燃性スチレン系樹脂組成物中、0.05~5質量%としてよい。
【0057】
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、実質的に(A)成分~(C)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分~(C)成分のみ、又は(A)成分~(C)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(A)成分~(C)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、難燃性スチレン系樹脂組成物の95~100質量%(好ましくは98~100質量%)が(A)成分~(C)成分であるか、又は(A)成分~(C)成分及び任意添加成分であることを意味する。
尚、本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分~(C)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0058】
[難燃性スチレン系樹脂組成物の物性]
<難燃性>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物の難燃性は、UL94垂直燃焼試験(UL94-V試験)において、規格内である、即ち、V-0~V-2の難燃性クラスであることが好ましい。
なお本開示で、難燃性は、後述の[実施例]の項に記載の方法で評価することができる。
【0059】
<シャルピー衝撃強さ>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物のシャルピー衝撃強度は、6kJ/m2以上であることが好ましく、より好ましくは8kJ/m2以上である。6kJ/m2未満であると、OA製品等の用途では衝撃等により使用中に破損する懸念がある。
なお本開示で、シャルピー衝撃強度は、ISO 179に準拠して測定される値である。
【0060】
<ビカット軟化温度>
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は、86℃以上であることが好ましく、より好ましくは88℃以上である。86℃未満であると、使用中、温度が上昇し製品が変形してしまう恐れがある。
なお本開示で、ビカット軟化温度は、ISO 306に準拠して、荷重49N、昇温速度50℃/時間の条件により測定される値である。
【0061】
[難燃性スチレン系樹脂組成物の製造方法]
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される高速撹拌機、バンバリーミキサーに代表されるバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。混練の際の加熱温度は、通常、180~260℃の範囲で選択される。
【0062】
[成形品]
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物は、上記の溶融混練成形機により、あるいは、得られた難燃性スチレン系樹脂組成物のペレットを原料として、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、ブロー成形法、プレス成形法、真空成形法、及び発泡成形法等により、成形品を製造することができる。
本実施形態の難燃性スチレン系樹脂組成物を含む成形品、好ましくは射出成形品(射出圧縮を含む)は、複写機、ファックス、テレビ、ラジオ、テープレコーダー、ビデオデッキ、パソコン、プリンター、電話機、情報端末機、冷蔵庫、電子レンジ等のOA機器、家庭電化製品、電気・電子機器のハウジングや各種部品、発泡断熱材、絶縁フィルム等に好適に用いられる。
【実施例
【0063】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明の実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0064】
<測定及び評価方法>
各実施例及び比較例で得られた樹脂組成物の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0065】
(1)難燃性
後述の方法で作製した試験片(b)(大きさ:127mm×12.7mm、厚み:0.8mm)を用いて、50W試験炎によるUL94垂直燃焼試験(UL94-V試験)に準拠する方法で難燃性を評価した。
上記試験片(b)にガスバーナーの炎を当てて、その燃焼の程度を評価した。
なお、難燃等級には、UL94-V試験によって分類される難燃性のクラスを示した。全ての試験片で試験は5本行い、判定した。分類方法の概要は以下のとおりである。
V-0:5本の合計燃焼時間50秒以下、最大燃焼時間10秒以下、滴下綿着火なし
V-1:5本の合計燃焼時間250秒以下、最大燃焼時間30秒以下、滴下綿着火なし
V-2:5本の合計燃焼時間250秒以下、最大燃焼時間30秒以下、滴下綿着火あり
Not V:UL94の規格外
【0066】
(2)シャルピー衝撃強さ
後述の方法で作製した試験片(b)について、ISO 179に準拠して、シャルピー衝撃強度(kJ/m2)をノッチ有りで測定した。
【0067】
(3)ビカット軟化温度
ISO 306に準拠して、樹脂組成物のビカット軟化温度(℃)を測定した。荷重は49N、昇温速度は50℃/時間とした。
【0068】
(4)モールドデポジット
後述の射出成形方法にて試験片(b)を10ショット作製後、金型への付着物を目視にて確認した。
後述の表において、目視で付着物が確認できなかったものを「無」、油滴、油膜状の付着物が確認できたものを「有」と表記した。
【0069】
実施例で用いた各材料は下記の通りである。
<(A)成分>
・スチレン系樹脂(HIPS-A):
高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、下記分析方法による該HIPSの分析値は、ゴム状重合体(a)の含有量8.6質量%、ゴム状重合体(a)粒子の平均粒子径1.9μm、還元粘度0.64dL/gであった。
・スチレン系樹脂(HIPA-B):
高衝撃ポリスチレン(HIPS)であるゴム変性スチレン系樹脂を用いた。該HIPSは、ゴム状重合体としてポリブタジエンを使用しており、下記分析方法による該HIPSの分析値は、ゴム状重合体(a)の含有量12.0質量%、ゴム状重合体(a)粒子の平均粒子径1.2μm、還元粘度0.79dL/gであった。
【0070】
[分析方法]
(1)ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の含有量:
ブタジエンセグメントの結合様式を踏まえた上で、熱分解ガスクロマトグラフイーを用いてブタジエンセグメント量を測定し、ブタジエンセグメント量からゴム状重合体(a)の含有量を算出した。単位は質量%である。
(2)ゴム変性スチレン系樹脂(A)中に含まれるゴム状重合体(a)の平均粒子径:
四酸化オスミウムで染色したゴム変性スチレン樹脂(A)から厚さ75nmの超薄切片を作製し、電子顕微鏡を用いて倍率10000倍の写真を撮影した。写真中、黒く染色された粒子がゴム状重合体(a)である。写真から、下記数式(N1):
平均粒子径=ΣniDri3 /ΣniDri2 (N1)
(式中、niは、粒子径Driのゴム状重合体(a)粒子の個数であり、粒子径Driは、写真中の粒子の面積から円相当径として算出した粒子径である。)
により面積平均粒子径を算出し、ゴム状重合体(a)の平均粒子径とした。本測定は、写真を200dpiの解像度でスキャナーに取り込み、画像解析装置IP-1000(旭化成社製)の粒子解析ソフトを用いて測定した。
(3)ゴム変性スチレン系樹脂(A)の還元粘度:
還元粘度はゴム変性スチレン系樹脂の分子量の指標となる。ゴム変性スチレン系樹脂(A)1gをメチルエチルケトン/メタノール混合溶媒(混合質量比90/10)20mLに加え、振とう機で60分かけて溶解させた。次に、R20A2型ローターを備えた日立製作所製himacCR20型遠心分離機を用い、0℃、20,000rpmで60分、遠心分離した後、上澄み液にメタノールを添加し、スチレン系樹脂を析出させた。析出物を濾過後に、乾燥させて試料とし、トルエン溶液中で30℃、濃度0.5g/dLの条件で還元粘度(dL/g)を測定した。
【0071】
<(B)成分>
・NOR型ヒンダードアミン系化合物A(NOR型-A)[BASF社製、FlamestabNOR116FF、高分子タイプ]
・NOR型ヒンダードアミン系化合物B(NOR型-B)[BASF社製、TINUVIN NOR371、高分子タイプ]
・NOR型ヒンダードアミン系化合物C(NOR型-C)[BASF社製、TINUVIN PA123]
・NOR型ヒンダードアミン系化合物D(NOR型-D)[株式会社ADEKA製、LA-81]
【0072】
<ヒンダードアミン系化合物>
・N-メチル型ヒンダードアミン系化合物[株式会社ADEKA製、LA-52]
・N-H型ヒンダードアミン系化合物[株式会社ADEKA製、LA-57]
【0073】
<(C)成分>
・ホスホン酸エステル化合物[丸菱油化工業株式会社製 ノンネン73、融点100℃、リン含有量10質量%]
・リン酸エステルA(化合物No.1):トリフェニルホスフェート[大八化学工業株式会社製 TPP、融点49℃、リン含有量9.5質量%、モノマータイプ]
・リン酸エステルB(化合物No.2):レゾルシノールビス-ジキシレニルホスフェート[大八化学工業株式会社製、PX-200、融点92℃、リン含有量9.0質量%、縮合タイプ]
・リン酸エステルC(化合物No.3):レゾルシノールビス-ジフェニルホスフェート[大八化学工業株式会社製、CR-733S、23℃で液体、リン含有量10.5質量%、縮合タイプ]
・リン酸エステルD:トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート[大八化学工業株式会社製、23℃で液体、リン含有量7.1質量%、モノマータイプ]
【0074】
<リン酸エステル>
・リン酸エステルE:トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート[大八化学工業株式会社製CR-900、融点180℃、リン含有量2.9質量%、モノマータイプ]
【0075】
[添加剤]
(フェノール系酸化防止剤)
・3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル[BASF社製、Irganox1076]
(リン系酸化防止剤)
・トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト[BASF社製株式会社、Irgafos168]
【0076】
[実施例1~11]
表1に示す組成比で各成分と(A)~(C)成分100質量部に対して、Irganox1076とIrgafos168を0.2質量部ずつ添加後、予備混合した。得られた予備混合物を一括混合し、二軸押出機(東芝機械社製、TEM-26SS)を用い、180℃~220℃の範囲で溶融押出を行い、混練物として難燃性スチレン系樹脂組成物のペレットを得た。この際、スクリュー回転数は150rpm、吐出量は10kg/hrであった。
このようにして得られたペレットを、寸法127mm×12.7mm×0.8mm厚みのピンゲート平板金型を備え付けた日本製鋼所社製の射出成形機を用い、シリンダー温度220℃、金型温度50℃、射出圧力(ゲージ圧40-60MPa)、射出速度(パネル設定値)50%、射出時間/冷却時間=5sec/20secで成形して試験片(b)を作製し、各物性の測定及び評価を実施した。結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1~9]
比較例1~9は、表2に示すように組成を変更したこと以外は実施例と同様にして、樹脂組成物のペレットを得た。各物性の測定及び評価の結果を表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
表1に示すように、実施例1~11は、高い難燃性(0.8mm厚でV-2)を有し、衝撃強度と耐熱性に優れることがわかる。更に、高分子タイプのNOR型ヒンダードアミン系化合物と、ホスホン酸エステル、縮合タイプのリン酸エステルとを使用することにより、モールドデポジットの無い射出成形が可能となり、連続生産性に優れる。
【0081】
比較例1、2について、表2に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物又はホスホン酸エステルだけでは高い難燃性は得られないことがわかる。
比較例3、4について、表2に示すように、ヒンダードアミン系化合物がNOR型ではないと高い難燃性は得られないことがわかる。
比較例5について、表2に示すように、リン系難燃剤のリン含有量が3.0質量%未満では高い難燃性は得られないことがわかる。
比較例6、7について、表2に示すように、NOR型ヒンダードアミン系化合物が所定量より多いと衝撃強度と耐熱性の低下が大きくなり、また、所定量より少ないと高い難燃性が得られないことがわかる。
比較例8、9について、表2に示すように、リン系難燃剤が所定量より多いと衝撃強度と耐熱性の低下が大きくなり、また、所定量より少ないと高い難燃性が得られないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の樹脂組成物を含む成形品は、デスクトップパソコンやノート型パソコン等のコンピューター部品、携帯電話部品、電気・電子機器、携帯情報端末、家電製品部品、自動車部品、産業資材、及び建築材等の肉厚の薄い製品、シート、フィルム等に好適に使用することができる。