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特許7062512並列冗長式UPSシステムおよびそれを用いた監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】並列冗長式UPSシステムおよびそれを用いた監視方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20220425BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02J13/00 301B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018093925
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019201470
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000180025
【氏名又は名称】山洋電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大井 美恵子
【審査官】下林 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163708(JP,A)
【文献】特開2004-173388(JP,A)
【文献】特開平11-184574(JP,A)
【文献】特開2014-183661(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00 - 11/00
H02J 13/00
H02J 3/00 - 5/00
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H02M 7/42 - 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を有するマスタと、被制御部を有する複数のスレーブと、を備えた並列冗長式UPSシステムであって、
前記制御部と前記被制御部との間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われるとともに、所定(特定)のタイミングにおいてパルス信号ラインによるパルス通信が行われ、
前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、
前記制御部から前記被制御部へのシリアル通信による応答要求に対して、前記被制御部からの応答信号数が前回のパルス通信時と比べて変化した場合に前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が、前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、前記制御部が前記スレーブの台数の変動を認識することを特徴とする並列冗長式UPSシステム。
【請求項2】
スレーブの台数の変動を通知する信号が当該スレーブから出力されると、前記被制御部は、パルス通信の開始(再開)を前記制御部に通知し、前記制御部に対してパルス出力することで、前記スレーブの台数と接続しているスレーブのIDとを前記制御部に通知し、
前記制御部は、前記被制御部との間の前記パルス通信の過程において取得したスレーブの台数と接続しているスレーブのIDとをシリアル通信に反映する
請求項1に記載の並列冗長式UPSシステム。
【請求項3】
前記マスタは、キャビネットに設けられ、
前記スレーブは、前記キャビネットに配置されるモジュールである
請求項1又は2に記載の並列冗長式UPSシステム。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の並列冗長式UPSシステムにおける前記マスタ同士をシリアル通信ラインにより接続したことを特徴とするシステム。
【請求項5】
さらに、前記マスタ同士をパルス通信ラインにより接続したことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
制御部を有するマスタと、被制御部を有する複数のスレーブと、を備えた並列冗長式UPSシステムにおける監視方法であって、
前記制御部と前記被制御部との間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われるとともに、所定(特定)のタイミングにおいてパルス信号ラインによるパルス通信が行われており、
前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が前記スレーブの台数とスレーブのIDの情報を取得するステップと、
前記制御部から前記被制御部へのシリアル通信による応答要求に対して、前記被制御部からの応答信号数が前回のパルス通信時と比べて変化した場合に、前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が、前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、前記制御部が前記スレーブの台数の変動を認識するステップと
を有することを特徴とする並列冗長式UPSシステムにおける監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、並列冗長式UPSシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、停電などによって電力が断たれた場合にも電力を供給し続ける無停電電源装置(以下、「UPS」とも言う。)を、複数並列に接続した並列冗長式が知られている。この並列冗長式UPSシステムにおいては、UPSの出力電圧・電流・周波数を各UPS間で並列制御することでUPSの並列運転を実現し、安定した交流出力を供給する。UPSシステム容量の電源供給にN台(N>1)のUPSが必要な場合、(N+1)台のUPSを設置することにより、UPS1台の故障や点検時においても、残りの健全機でUPS給電を継続することができる。
【0003】
このような並列冗長式UPSシステムにおける監視技術が提案されている。
特許文献1には、プライベートLANを利用した無停電電源装置における電源制御方式に関する提案がある。当該提案は、マスタ無停電電源装置(UPS)に接続させている基本処理装置側で、異常が発生したスレーブUPSを特定可能とし、かつ、異常の種類を判別可能とするために、マスタとスレーブとをLANを介して接続し、スレーブに障害が発生した場合に、スレーブからマスタに障害発生と障害詳細情報を知らせるものである。
【0004】
特許文献2は、系統連系システムにおいて定周期でインバータの運転情報を他のインバータに送信し、他のインバータからそれぞれの運転情報を返信するものである。そして、正常なインバータのうちの最も上位のインバータが自動的にマスタインバータとなることで、複数台のインバータを並列運転する場合に、マスタインバータの切り換えを容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2907198号公報
【文献】特許第3740118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、図5は、並列冗長式UPSシステムXの一構成例を示す機能ブロック図である。図5に示すように、並列冗長式UPSシステムXは、無停電電源装置UPS1,2,…,n(n>1)を有している。それぞれの無停電電源装置UPS1,2,…,nは、監視部103-1~nと制御部105-1~nとを有している。監視部103は制御部に個別に接続されており、制御部105-1~nは、シリアル通信ラインLsにより接続される。加えて、それぞれの無停電電源装置UPS1,2,…,nは、パルス通信ラインLpによるパルス通信が可能に接続されている。
【0007】
上記の並列冗長式UPSシステムXは、以下の特徴を有する。
1)全てのUPSは制御部と監視部とから構成されている。
2)制御部はパルス通信ラインとシリアル通信ラインを有している。
3)監視部は制御部からの計測情報や状態情報などを監視、表示する機能を有している。
4)制御部はパルス通信によってUPSの台数、UPSのID、マスタ/スレーブを認識する(認識した情報を、以下「接続情報」と称する)。
5)制御部は、接続情報よりシリアル通信が可能の場合、ポーリングを開始する。ポーリングとは、UPS間のシリアル通信においての競合を回避し、UPSに対し定期的に問い合わせを行い、一定の条件を満たした場合に送受信や処理を行うことである。
【0008】
図6は、並列冗長式UPSシステムXにおける状態遷移図の一例を示す図である。
以下に、図6に示す状態遷移例について説明する。ここでは、遷移条件を符号Cxxxで、処理を符号Syyyで示している。
【0009】
遷移条件C101は、電源の起動である。すると、全並列冗長式UPSシステムXが、ステップS101において、通信やディップスイッチなどで設定された装置容量や装置台数を読み出し、ステップS102において、一定の条件でパルス信号を出力し、パルス通信ラインから入力したパルス信号より接続情報を作成する。遷移条件C103は、パルス通信による接続情報取得であり、接続情報取得後、パルス通信終了しステップS104へ遷移する。ステップS104において、接続情報よりマスタ/スレーブが確定できるか判断する。
【0010】
遷移条件C105: 接続台数とマスタ/スレーブが確定できないとき、接続情報無効としS102のパルス通信処理へ遷移する。
【0011】
遷移条件C106: 接続台数とマスタ/スレーブが確定できたとき、ステップS107のポーリング処理(シリアル通信)へ遷移する。
【0012】
ステップS107: マスタまたはスレーブはそれぞれのポーリング処理を行う。
【0013】
遷移条件C108: ステップS107でマスタは全スレーブからの通信異常、スレーブはマスタからの通信異常が一定時間継続した場合はポーリングを中止し、ステップS102へ遷移する。
【0014】
しかしながら、上記の技術においては、並列冗長式UPSシステムにおいて、通信やディップスイッチなどで設定された装置容量や装置台数を読み出し(上記ステップS101)、その範囲内でのみUPSの増減が可能であった。また、ポーリングは設定した装置台数の範囲内で行っていた。
【0015】
従って、従来の技術では,並列冗長式UPSシステムにおいて、システムの動作中のUPSの減少や増加は初期設定時に決めた装置台数の範囲内で行うことは可能であったが、UPSの増設はできなかった。並列冗長式UPSシステムの装置の容量の変更の自由度が小さかった。
【0016】
本発明は、並列冗長式UPSシステムにおいて、監視部と複数のUPSを並列に接続することで、運転中にUPSの台数に変動があっても、UPS台数とその識別番号(ID,以下「ID」と称する。)とを自動的に特定し、並列冗長式UPSシステムの装置の容量を変更することを容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一観点によれば、制御部を有するマスタ(監視部)と、被制御部を有する複数のスレーブ(UPS)と、を備えた並列冗長式UPSシステムであって、前記制御部と前記被制御部との間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われるとともに、所定(特定)のタイミングにおいてパルス信号ラインによるパルス通信が行われ、前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部(監視制御部)が前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、前記制御部から前記被制御部へのシリアル通信による応答要求に対して、前記被制御部からの応答信号数が前回のパルス通信時と比べて変化した場合に前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が、前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、前記制御部が前記スレーブの台数の変動を認識することを特徴とする並列冗長式UPSシステムが提供される。
【0018】
スレーブの台数の変動を通知する信号が当該スレーブから出力されると、前記被制御部は、パルス通信の開始(再開)を前記制御部に通知し、前記制御部に対してパルス出力することで、前記スレーブの台数と接続しているスレーブのIDとを前記制御部に通知し、前記制御部は、前記被制御部との間の前記パルス通信の過程において取得したスレーブの台数と接続しているスレーブのIDとをシリアル通信に反映する。
【0019】
すなわち、スレーブの台数の変動時においても行われているシリアル通信により、スレーブの切断、スレーブの増加が発生すると、パルス通信を行って、スレーブの台数の変動を認識するとともに、どのスレーブIDが切断されたか、追加されたかを知ることができる。
【0020】
前記マスタは、キャビネットに設けられ、前記スレーブは、前記キャビネットに配置されるモジュールであっても良い。
【0021】
また、上記のいずれか1に記載の並列冗長式UPSシステムにおける前記マスタ同士をシリアル通信ラインにより接続したシステムとしても良い。
さらに、前記マスタ同士をパルス通信ラインにより接続したシステムとしても良い。
【0022】
本発明の他の観点によれば、制御部を有するマスタと、被制御部を有する複数のスレーブと、を備えた並列冗長式UPSシステムにおける監視方法であって、前記制御部と前記被制御部との間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われるとともに、所定(特定)のタイミングにおいてパルス信号ラインによるパルス通信が行われており、前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が前記スレーブの台数とスレーブのIDの情報を取得するステップと、前記制御部から前記被制御部へのシリアル通信による応答要求に対して、前記被制御部からの応答信号数が前回のパルス通信時と比べて変化した場合に、前記制御部と前記被制御部との間のパルス通信の結果に基づいて、前記制御部が、前記スレーブの台数と前記スレーブのIDの情報を取得し、前記制御部が前記スレーブの台数の変動を認識するステップと、を有することを特徴とする並列冗長式UPSシステムにおける監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、制御部を有するマスタと被制御部を有する複数のスレーブ(UPS)を並列に接続した並列冗長式UPSシステムにおいて、UPSの台数とIDを自動的に特定し、並列冗長式UPSシステムの装置の容量を変更することを容易にするができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の第1の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す斜視図である。
図1B】本実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図2】本実施の形態による並列冗長式UPSシステムにおけるシーケンス図である。
図3】本発明の第2の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の第3の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図5】従来の並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
図6】従来の並列冗長式UPSシステムにおける状態遷移図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態による並列冗長式UPSシステムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(第1の実施の形態)
図1Aは、本発明の第1の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す斜視図である。図1Bは、本実施の形態よる並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。
【0027】
図1Aに示すように、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムは、例えば、キャビネットCの構成を有している。そして、キャビネットCには、マスタとして機能する例えば引き出しのような1台の監視部(マスタ)1と、マスタ1内に例えば同様に引き出しのように複数配置されるUPS3-1~3n(スレーブ,モジュールとも称する)とを有する。尚、マスタ1とスレーブ3-1~3-nとの配置はこのようなキャビネットにおける複数の引き出しを有する構成例に限定されるものではない。
【0028】
図1Bに示すように、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムAは、監視制御部(制御部)1-1を有するマスタ(監視部)1と、監視制御部を有しておらず、被制御部(UPS制御部)5-1~5-nを有するスレーブ(UPS)3-1~3-n(n>1の整数)とを有する。マスタ1においては、台数は1台に固定されている。スレーブ3-1~nにおいては、マスタに接続している台数は不定であり、動作中のスレーブの台数が変動しうる。マスタ1とそれぞれのスレーブ3-1~3-nとは、シリアル通信ラインLsとパルス通信ラインLpとで互いに接続されている。また、シリアル通信ラインLsによって、スレーブ3-1~3-nまでの状態(システムの状態監視:例えば、入出力電力、電流、電圧、などのスレーブの動作状態(故障、過電流など))がわかる。
【0029】
本実施の形態によれば、マスタ1と複数のスレーブ3を並列に接続した並列冗長式UPSシステムにおいて、マスタ1の制御部1-1とスレーブ3-1~3-nの被制御部5-1~5-nとの間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われる。マスタ1の制御部1-1とスレーブ3-1~3-nの被制御部5-1~5-nとの間の所定のタイミングにおけるパルス通信の結果に基づいて、制御部1-1がスレーブ3-1~3-nの台数とスレーブ3-1~3-nのIDの情報を取得し、UPSの台数とIDを自動的に特定し、システムの状態監視や制御を行うことができる。
図5と対比すると、スレーブ3-1~3-nには、制御部1-1は不要である。
【0030】
図2は、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムAにおけるシーケンス図である。
【0031】
まず、マスタ1の制御部1-1において、電源がオンされると(ステップS11)、制御部1-1からパルス通信ラインLpに対してHighのパルス出力要求がなされる(L11)。
【0032】
すると、並列冗長式UPSシステムAにパルス通信の開始が知らせられ(L12)、マスタ1と各スレーブ3-1~3-nとの間でパルス通信が行われる(L31)。
【0033】
パルス通信の結果により、各スレーブ3-1~3-nからの返信信号を参照して、マスタ1に接続されているスレーブ3-1~3-nの台数とそれを一意に識別するIDとを知ることができる。すなわち、返信信号には、各スレーブ3-1~3-nのIDが含まれているため、接続されているスレーブ3-1~3-nのみがそのIDをマスタ1に知らせることができる。
【0034】
ここで、シリアル通信Lsによりマスタ1の制御部1-1に対して、マスタ1と接続されているスレーブ3-1~3-nの台数とスレーブ番号(ID)が通知される(L13)。
【0035】
このように、マスタ1の制御部1-1と各スレーブ3-1~3-nの被制御部5-1~5-nとの間において常時行われるシリアル通信により、マスタ1と接続されているスレーブ3-1~3-nの台数とスレーブ番号(ID)との要求/応答が継続的に行われる(L14,L15)。
【0036】
L16に示すように、一旦、スレーブ3-1~3-nのうちのいずれかが切断されると(ステップS12,L16),マスタ1の制御部1-1からのシリアル通信による応答要求(L17)に対して、スレーブからの応答がなくなる。
【0037】
この際、シリアル通信Lsにより、マスタ1の制御部1-1に対して通信異常の発生が通知される(L18)。すると、制御部1-1からパルス通信ラインLpに対してHighのパルス出力要求がなされる(L19)。
【0038】
システムにパルス通信の開始が報知されると、マスタ1と各スレーブ3-1~3-nとの間でパルス通信が行われる(L32)。
【0039】
パルス通信の結果により、上記の処理L31と同様にして各スレーブ3-1~3-nからの返信信号を参照し、現在、マスタ1に接続されているスレーブ3-1~3-nの台数とIDとを知ることができる。この場合には、応答のないスレーブ3-1~3-n分だけ、スレーブ3-1~3-nの台数が減少し、また、減少したスレーブ3-1~3-nの台数とIDがシリアル通信により制御部1-1に通知される(L21)。
【0040】
次いで、例えば、スレーブ3-1~3-nが修理又は交換されてキャビネット1(マスタ)に挿入されると(ステップS13、追加(増加))、スレーブ3-1~3-nの追加されたいずれかから、Highのパルス出力要求がなされる(L22)。これを契機に、スレーブ3-1~3-nとキャビネット1(マスタ)との間のパルス通信が行わる(L33)。パルス通信の結果として得られた、スレーブ3-1~3-nの台数と増加したIDがシリアル通信によりキャビネット1(マスタ)に通知され(L23)、制御部1-1にスレーブ3-1~3-nの台数の増加が通知される(L24)。
【0041】
以上の処理の後で、キャビネット1(マスタ)からスレーブ3-1~3-nへのシリアル信号による、応答要求(L25)と、応答(L26)とのやり取りが継続される。
【0042】
以上のように、本実施の形態によれば、並列冗長式UPSシステムにおいて、監視装置と複数のUPSを並列に接続し、マスタの監視制御部とスレーブの被制御部との間で、シリアル信号ラインにおけるシリアル通信が常時行われる。監視制御部と被制御部との間の所定のタイミングにおけるパルス通信の結果に基づいて、監視制御部がスレーブの台数とスレーブのIDの情報を取得し、UPSの台数とIDを自動的に特定し、システムの状態監視や制御を行うことができる。
【0043】
また、マスタに接続されているスレーブの台数とIDとを自動的に特定することができるため、並列冗長式UPSシステムの起動中においてもスレーブの台数の変動を認識することができ、スレーブの台数設定や操作ミスが少なくなり、設置作業の効率が向上する。また、設定した装置台数の範囲を超えてスレーブを増設することも可能である。従って、並列冗長式UPSシステムの装置の容量を自由に変更することが容易である。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。図3に示すように、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムDは、例えば図1Bに示す並列冗長式UPSシステムAを複数有する。これらを、キャビネット1からmまでと称する。キャビネットCAB1は、例えば、図1Bに示す並列冗長式UPSシステムAと同様にマスタ1と、スレーブ3-1~3-nまでを有する。キャビネットCAB2は、マスタ1aと、スレーブ3a-1~3a-n2までを有する。同様に、キャビネットCABmは、マスタ1mと、スレーブ3m-1~3m-n3までを有する。すなわち、キャビネットCAB2からキャビネットCABmまでも、それぞれ、図1Bに示す並列冗長式UPSシステムAと同様の構成を有する。
【0045】
加えて、マスタ1と、マスタ1a~マスタ1mまでは、シリアル通信ラインL2sにより接続されており、シリアル通信を行うことができる。
【0046】
ここで、マスタ1は、マスタ1a~マスタ1mまでのマスタとしての機能を有しており、マスタ1は、シリアル通信ラインL2sによるシリアル通信により、各マスタ1a~マスタ1mまでのキャビネットのうち接続されているキャビネットの台数を取得することができる。
【0047】
但し、本実施の形態では、監視部1は、あくまでキャビネット台数が固定された状態において、全体のシステムにおける個々のキャビネット内のUPSの状態を監視することができる。
【0048】
すなわち、シリアル通信ラインL2sによって、キャビネットCAB2からCABmまでの各UPSの状態(システムの状態監視:例えば、入出力電力、電流、電圧、などのスレーブの動作状態(故障、過電流など))を知ることができる。
【0049】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態による並列冗長式UPSシステムの一構成例を示す機能ブロック図である。図4に示すように、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムEは、並列冗長式UPSシステムDの構成に加えて、マスタ1と、マスタ1a~マスタ1mまでは、シリアル通信ラインL2sに加えてパラレル通信ラインL2pにより接続されており、パルス通信も行うことができる。
【0050】
パルス通信により、キャビネットCAB1に接続している各キャビネットの台数とIDがわかる。
【0051】
従って、本実施の形態による並列冗長式UPSシステムEにおいては、マスタ1が、キャビネットCAB1に接続されるキャビネットの台数の変動とキャビネットのIDの情報を取得し、並列冗長式UPSシステムEの状態監視や制御を行うことができる。加えて、パルス通信L2pにより、キャビネットの台数とIDを自動的に特定することができるため、固定されたシステムではなく、キャビネットの接続台数の増減にも対応することができる。
【0052】
上記の実施の形態において、図示されている構成等については、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0053】
また、本発明の各構成要素は、任意に取捨選択することができ、取捨選択した構成を具備する発明も本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、無停電電源装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
A 並列冗長式UPSシステム
Ls シリアル通信(網)
Lp パルス通信(網)
1 マスタ
1-1 監視制御部(制御部)
3-1~3-n スレーブ
5-1~5-n 被制御部(UPS制御部)
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6