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特許7062567地下埋設型タンク上部ボックス、及びタンク上部ボックスの埋設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】地下埋設型タンク上部ボックス、及びタンク上部ボックスの埋設方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20190101AFI20220425BHJP
   B67D 7/78 20100101ALI20220425BHJP
   B65D 90/22 20060101ALI20220425BHJP
   E02D 29/045 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B65D90/02 R
B67D7/78 Z
B65D90/22 A
E02D29/045 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018178093
(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公開番号】P2020050351
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593140956
【氏名又は名称】タマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(72)【発明者】
【氏名】西野 圭太
(72)【発明者】
【氏名】大友 忠春
(72)【発明者】
【氏名】東崎 英樹
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231584(JP,A)
【文献】特開2005-343503(JP,A)
【文献】特開平10-167384(JP,A)
【文献】実開昭54-032818(JP,U)
【文献】特開昭61-273382(JP,A)
【文献】特開2007-112466(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0205581(US,A1)
【文献】特開2018-028341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00-90/66
B67D 7/78
E02D 29/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上であって、前記バンドと重なる位置に配置され、前記バンドと重なる各個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、
前記バンドと重なる個所毎に配置され、前記切り欠き部全体と前記切り欠き部から前記ボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドとの双方を間に挟む位置で前記ボックスピット本体枠から前記ボックスピット本体枠の内側に向かって延びる、前記地下タンクの上面から少なくとも前記切り欠き部上面高さ位置若しくは前記地下タンクの上端高さ位置まで形成された複数の壁と、
を備えたことを特徴とする地下埋設型タンク上部ボックス。
【請求項2】
地下タンクの円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された前記地下タンク上にタンク上部ボックスを埋設するタンク上部ボックスの埋設方法であって、
前記バンドと重なる各個所に前記バンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、前記バンドと重なる個所毎に配置され、前記切り欠き部全体と前記切り欠き部から前記ボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドとを間に挟む位置で前記ボックスピット本体枠から前記ボックスピット本体枠の内側に向かって延びる、前記地下タンクの上面から少なくとも前記切り欠き部上面高さ位置まで形成された複数の壁と、を有する地下埋設型タンク上部ボックスを、前記地下タンク上であって、前記バンドと重なる位置に配置する工程と、
前記ボックスピット本体枠全周を、前記地下タンクと接着する工程と、
前記バンドと重なる個所毎に、前記複数の壁で挟まれた前記地下タンク上の領域に前記切り欠き部を塞ぐように樹脂材を埋め込む工程と、
を備えたことを特徴とするタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項3】
前記地下タンク外周表面は、アスファルト材でコーティングされており、
前記ボックスピット本体枠全周が、前記地下タンクにコーティングされたアスファルト材と接着されることを特徴とする請求項2記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項4】
前記地下タンクは、スチール材で形成されると共に、外周表面がアスファルト材でコーティングされており、
前記ボックスピット本体枠と前記地下タンクとが接触する部分について前記スチール材を露出させる工程をさらに備え、
前記ボックスピット本体枠全周が、前記地下タンクの露出した前記スチール材と接着されることを特徴とする請求項2記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【請求項5】
前記地下タンクは、スチール材で形成されると共に、外周表面がアスファルト材でコーティングされており、
前記ボックスピット本体枠と前記地下タンクとが接触する部分について前記スチール材を露出させる工程をさらに備え、
前記ボックスピット本体枠全周が、FRP材を介して前記地下タンクの露出した前記スチール材と接着されることを特徴とする請求項2記載のタンク上部ボックスの埋設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、地下埋設型タンク上部ボックス、及びタンク上部ボックスの埋設方法に関し、例えば、地下に埋設された配管と地下に埋設された石油燃料タンクに接続された配管とを繋ぐ継手が格納された地下に埋設された地下埋設型タンク上部ボックス、タンク上部ボックスを配置した地下タンクシステム、及びタンク上部ボックスの埋設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリンスタンドに代表される給油所には、地下タンクが埋設されている。タンクローリー車からガソリン、軽油、灯油等の燃料油の荷卸(注入)を受けて、かかる地下タンクに燃料油が貯蔵されている。そして、地下タンクに接続された各計量機が地下タンク内に貯蔵された燃料油を車両に給油(注出)している。
【0003】
かかる設備について、タンクローリー車から燃料油の荷卸(注入)を受ける注入口から地下タンクまでの間の配管は地中に埋設されている。同様に、地下タンクと各計量機との間の配管も地中に埋設されている。これらの配管は、地下タンクを点検するためのマンホール蓋下の地下に埋設されたタンク上部ボックス(ピット)内において、地下タンクから延びる配管と配管継手により接続されている。従来、埋設された地下タンク上には、打ちっぱなしのコンクリート(いわゆる捨てコン)、砕石、或いは砂等を堆積させて、堆積した堆積物の上にスチール(鉄)製の上部ボックスを配置して、地下タンクと各計量機との間の配管を接続していた。そのため、地下タンクと上部ボックスとの間の堆積物中を通って地下水が上部ボックス内に侵入してしまうといった問題があった。また、逆に上部ボックス内に漏れ出た油液が地中に漏れ出してしまう可能性があるといった問題があった。これらの問題を解決すべく、堆積物を取り除いて上部ボックスを地下タンク上に直接配置することも検討される。しかし、かかる場合でも、上部ボックスが載せられる地下タンクに傷が付くといった問題や、地下水等による上部ボックス自体の腐食の問題があった。そのため、新規に地下タンクを設置する場合には、スチール製の上部ボックスに代えて耐食性のあるFRP(繊維強化プラスチック)製の上部ボックスを設置している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、かかる地下タンクは、基礎上に配置されるが、その際、スチール製のバンドが地下タンクの上面を押さえ付けながら基礎に締結されることで固定される。そのため、バンドが地下タンクの上面の一部を覆っている部分が存在する。新規に地下タンクを設置する場合には、FRP製の上部ボックスの配置位置から外れた位置に合わせて、地下タンクを固定するバンドの配置位置を設計できるので、バンドに干渉することなく、地下タンク上にFRP製の上部ボックスを配置できる。そのため、地下タンクとFRP製の上部ボックスとの間の密閉性をある程度高めることができ、上部ボックス内への地下水の侵入をある程度抑えることができる。しかしながら、既に埋設されている既存の地下タンク上にFRP製の上部ボックスを設置しようとする場合、既にバンドの設置位置は決まっているので、FRP製の上部ボックスが、バンドに干渉してしまい配置することが困難になるといった問題があった。既に埋設されている既存の地下タンクは多数存在する。これらの既存の地下タンクへの対策は今後の重要な問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-343503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、既に埋設されている既存の地下タンクに対しても設置可能な地下埋設型タンク上部ボックス、およびその方法、及び地下タンクシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の地下埋設型タンク上部ボックスは、
円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上であって、バンドと重なる位置に配置され、バンドと重なる各個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、
バンドと重なる個所毎に配置され、切り欠き部全体と切り欠き部からボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドとの双方を間に挟む位置でボックスピット本体枠からボックスピット本体枠の内側に向かって延びる、地下タンクの上面から少なくとも切り欠き部上面高さ位置若しくは地下タンクの上端高さ位置まで形成された複数の壁と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のタンク上部ボックスの埋設方法は、
地下タンクの円弧状の上面部分に接するバンドで地中に埋設される基礎に締結された地下タンク上にタンク上部ボックスを埋設するタンク上部ボックスの埋設方法であって、
バンドと重なる各個所にバンドと干渉しないように切り欠き部が形成された、FRP(Fiber-Reinforced Plastics)製のボックスピット本体枠と、バンドと重なる個所毎に配置され、切り欠き部全体と切り欠き部からボックスピット本体枠の内側に向かって延びるバンドとを間に挟む位置でボックスピット本体枠からボックスピット本体枠の内側に向かって延びる、地下タンクの上面から少なくとも切り欠き部上面高さ位置まで形成された複数の壁と、を有する地下埋設型タンク上部ボックスを、地下タンク上であって、バンドと重なる位置に配置する工程と、
ボックスピット本体枠全周を、地下タンクと接着する工程と、
バンドと重なる個所毎に、複数の壁で挟まれた地下タンク上の領域に切り欠き部を塞ぐように樹脂材を埋め込む工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
地下タンク外周表面は、アスファルト材でコーティングされており、
ボックスピット本体枠全周が、地下タンクにコーティングされたアスファルト材と接着されると好適である。
【0010】
或いは、地下タンクは、スチール材で形成されると共に、外周表面がアスファルト材でコーティングされており、
ボックスピット本体枠と地下タンクとが接触する部分についてスチール材を露出させる工程をさらに備え、
ボックスピット本体枠全周が、地下タンクの露出したスチール材と接着されると好適である。
【0011】
或いは、地下タンクは、スチール材で形成されると共に、外周表面がアスファルト材でコーティングされており、
ボックスピット本体枠と地下タンクとが接触する部分についてスチール材を露出させる工程をさらに備え、
ボックスピット本体枠全周が、FRP材を介して地下タンクの露出したスチール材と接着されると好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、新規に地下タンクを設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対してもタンク上部ボックスを設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。
図2】実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す正面図である。
図3】実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す側面図である。
図4】実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す断面図である。図4では、
図5】実施の形態1におけるボックスピット本体の上方から見た構成を示す断面図である。
図6】実施の形態1におけるボックスピット本体の切り欠き部分の断面と壁の一例とを示す図である。
図7】実施の形態1における地下タンクへの接着方法の一例を説明するための断面図である。
図8】実施の形態1における地下タンクへの接着方法の他の一例を説明するための断面図である。
図9】実施の形態1における止水性能試験装置の構成を示す図である。
図10】実施の形態1における止水性能試験装置の切り欠き部付近の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における給油所の構成を示す断面構成図の一例である。図1において、ガソリンスタンドに代表される給油所には、貯蔵タンク102(地下タンク)が地下(地中)に埋設されている。一方、地上には、計量機(給油器)104が配置される。また、地上には、タンクローリー車106からの燃料油の注入を受ける配管注入口116が配置される。貯蔵タンク102から上方へ延びる配管111は、地下に埋設されたボックスピット100(地下埋設型タンク上部ボックス)内で配管継手により例えば計量機104へと延びる配管112に接続される。また、貯蔵タンク102から上方へ延びる配管113は同様にボックスピット100内で配管継手により例えば配管注入口116へと延びる配管114に接続される。また、貯蔵タンク102内の圧力が所定の値を超えた場合に、圧力調整のために気化したガスは、例えば配管114を介して放出弁130から大気中に放出される。かかる配管111,112,113,114は、地下(地中)に埋設されている。
【0015】
給油所には、ガソリン、軽油、及び灯油等の燃料油を一般車両300に販売するガソリンスタンド(GS)(或いはSS:サービスステーション)の他に、運送事業者等が自己の事業に使用する車両(タクシー、バス、或いはトラック等)に燃料油を供給する給油場所も含まれる。ここで言う燃料油には、その他、液化状の天然ガス、及び液化状の水素等が含まれてもよい。
【0016】
タンクローリー車106が給油所に到来すると、タンクローリー車106の配管は配管注入口116に接続される。その後、タンクローリー車106によって運ばれてきた燃料油は、配管114,113内を流れて貯蔵タンク102内に注入される。
【0017】
地上に配置された計量機104は、配管111,112を介して貯蔵タンク102内に貯蔵された燃料油101を車両300に注出(給油)する。例えば、計量機104内に配置された図示しないポンプによって貯蔵タンク102内に貯蔵された燃料油101を移送させる。
【0018】
ここで、ボックスピット100は、貯蔵タンク102を点検するため地下に埋設される。ボックスピット100の上部には、地上から開閉可能なマンホール蓋が配置される。
【0019】
図2は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す正面図である。
図3は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す側面図である。図3では、図2に示した地下タンクシステム500の側面図を示している。地下タンクシステム500は、コンクリートで構成される基礎(基台)103と、貯蔵タンク102と、FRP(Fiber-Reinforced Plastics:繊維強化プラスチック)製のボックスピット100とを備えている。図2及び図3では、配管112,114、及びボックスピット100の配管挿入口等の図示は省略している。図2及び図3において、基礎103上に貯蔵タンク102が配置される。貯蔵タンク102は、中央部分が水平方向に筒状に延びる円筒状に形成され、両端部分が凸の半球状に形成されている。そして、貯蔵タンク102は、スチール製のバンド18が貯蔵タンク102の上面を押さえ付けながら基礎103に締結されることで固定される。よって、貯蔵タンク102は、円弧状の上面部分に接するバンド18で地中に埋設される基礎103に締結されている。また、スチール製のバンド18で貯蔵タンク102を損傷させないように、貯蔵タンク102とバンド18との間にはゴムシート17が配置される。ゴムシート17は、例えば、バンド18と同じ幅サイズ或いはバンド18の幅サイズ以下で形成されると好適である。
【0020】
貯蔵タンク102直上には、ボックスピット100が直に配置される。ボックスピット100は、貯蔵タンク102から上方に延びる配管111,113を取り囲む位置に配置される。実施の形態1では、さらに、ボックスピット100は、バンド18と重なる位置に配置される。ボックスピット100は、貯蔵タンク102上に直に配置されるボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14と、マンホール蓋16と、を有する。ボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14とは、この順で接続され、図示しないフランジにより例えばボルトとナットを使って固定される。ボックスピット本体枠10と、中段ボックス12と、上段ボックス14とは地下(地中)に埋設される。そして、上段ボックス14の上面付近が地上面となる。そして、上段ボックス14の上面をマンホール蓋16で覆っている。マンホール蓋16を取り外すことで、作業員がボックスピット100内で作業或いはボックスピット100を点検することができる。
【0021】
ここで、上述したように、既に埋設されている既存の地下タンク上にFRP製の上部ボックスを設置しようとする場合、既にバンドの設置位置は決まっているので、FRP製の上部ボックスが、バンドに干渉してしまい配置することが困難になるといった問題があった。そこで、実施の形態1では、ボックスピット本体枠10に、バンド18と重なる各個所にバンド18と干渉しないように例えば矩形の切り欠き部30を形成する。そして、切り欠き部30内にバンド18を挟むように、ボックスピット本体枠10を貯蔵タンク102上に直に配置する。これにより、バンド18との干渉を無くすことができる。なお、ボックスピット本体枠10の底面部分は、貯蔵タンク102上面側の円弧形状に合わせて形成されることは言うまでもない。
【0022】
図4は、実施の形態1における地下タンクシステムの構成を示す断面図である。図4では、図2のA-A断面を示している。
図5は、実施の形態1におけるボックスピット本体の上方から見た構成を示す断面図である。図5では、図2のB-B断面を示している。
図6は、実施の形態1におけるボックスピット本体の切り欠き部分の断面と壁の一例とを示す図である。
図4に示すように、貯蔵タンク102は、スチール製のタンク本体20の全表面にアスファルト材がコーティングされ、アスファルトシート22を構成している。なお、図4では、タンク本体20のスチール材の厚さを示す断面部分の図示は省略している。図4~6に示すように、ボックスピット本体枠10には、切り欠き部30を挟む位置に対となる2つずつの壁32が配置される。バンド18と重なる個所毎に2つずつの、複数の壁32が、ボックスピット本体枠10内に配置される。各壁32は、ボックスピット本体枠10からボックスピット本体枠10の内側に向かって延びる。また、各壁32は、図6(a)に示すように、切り欠き部30の形成位置での貯蔵タンク102の上面高さ位置から少なくとも切り欠き部30の上面高さ位置まで形成される。より好適には図6(a)に示すように、各壁32は、切り欠き部30の形成位置での貯蔵タンク102の上面高さ位置から切り欠き部30の上面高さを超えて、貯蔵タンク102の上端高さ位置まで形成されるとなお良い。各壁32は、図6(a)に示すように、上面は水平に形成される。また、各壁32における切り欠き部30側の側面は、ボックスピット本体枠10の内壁に沿って例えば垂直に立ち上がる形状に形成される。一方、各壁32の底面は貯蔵タンク102の上面の円弧形状に合わせて形成される。また、各壁32の厚さは、数mm~数cm程度に形成されると好適である。よって、各壁32は、例えば、直角三角形の斜辺を凹状に形成した形状に形成されると好適である。図6(a)の例では、貯蔵タンク102の上面の円弧形状が各壁32の上面高さ位置まで到達する長さまで各壁32をボックスピット本体枠10の内側に向かって延ばした形状を示している。但し、これに限るものではない。切り欠き部30の上面高さ位置以上まで貯蔵タンク102の上面の円弧形状に沿って延びていれば良く、垂直に立ち上がる形状の、各壁32のボックスピット本体枠10の内側の側面が形成されても好適である。言い換えれば、各壁32は、図6(b)~図6(f)に示すように、例えば、直角を持つ台形の斜辺を凹状に形成した形状に形成されても構わない。また、図6(c)と図6(d)、若しくは図6(e)と図6(f)を比較してわかるように、各壁32の紙面斜め奥側に向かう幅も任意に選択できる。
【0023】
バンド18と重なる個所毎に配置される2つの壁32は、図4~6に示すように、切り欠き部30全体と、切り欠き部30からボックスピット本体枠10の内側に向かって延びるバンド18と、を間に挟む位置に配置される。かかるボックスピット100を使って、例えば、既に埋設されている既存の貯蔵タンク102の円弧状の上面部分に接するバンド18で地中に埋設される基礎103に締結された貯蔵タンク102上にかかるボックスピット100を埋設するタンク上部ボックスの埋設方法を以下に説明する。
【0024】
ボックスピット配置工程として、まず、既に埋設されている既存の貯蔵タンク102上に堆積する打ちっぱなしのコンクリート(いわゆる捨てコン)、砕石、或いは砂等の堆積物を取り除き、その後、実施の形態1におけるボックスピット100(地下埋設型タンク上部ボックス)を、貯蔵タンク102上であって、バンド18と重なる位置に配置する。まずは、最下部となるボックスピット本体枠10を貯蔵タンク102上に配置する。
【0025】
接着工程として、ボックスピット本体枠10全周を、貯蔵タンク102と接着する。
図7は、実施の形態1における地下タンクへの接着方法の一例を説明するための断面図である。図7に示すように、貯蔵タンク102のスチール製のタンク本体20の全表面には、アスファルトシート22がコーティングされている。そこで、ボックスピット本体枠10の底面全周を切り欠き部30以外に隙間ができないように例えばFRP40で接着する。図7の例では、ボックスピット本体枠10全周が、コーティングされたアスファルト材と接着される。
【0026】
図8は、実施の形態1における地下タンクへの接着方法の他の一例を説明するための断面図である。FRP製のボックスピット本体枠10とアスファルトシート22との接着性が低い場合には、図8(a)に示すように、接着工程の前に、スチール露出工程として、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とが接触する部分についてスチール材を露出させる。具体的には、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とが接触する部分のアスファルトシート22を剥がすことで、貯蔵タンク102のスチール製のタンク本体20部分を露出させる。
【0027】
そして、接着工程として、図8(a)に示すように、ボックスピット本体枠10全周を、貯蔵タンク102の露出したスチール材と接着する。ボックスピット本体枠10の底面全周を切り欠き部30以外に隙間ができないように例えばFRP40(接着剤)で接着する。ここで、図8(b)に示すように、事前にFRP40b(FRP材)を貯蔵タンク102の露出したスチール材に接着し、ボックスピット本体枠10全周が、FRP40bを介して貯蔵タンク102の露出したスチール材と接着されるようにしても良い。FRP40(40b)は、アスファルト材よりもスチール材との接着性の方が優れている。よって、十分にボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102とを接着できる。これにより、ボックスピット本体枠10と貯蔵タンク102との密閉性が高まり、ボックスピット100内への地下水の侵入を防止できると共に、ボックスピット100から地中への油液も漏れ出しを防ぐことができる。但し、これだけでは、切り欠き部30を通じて地下水の侵入及び/或いは油液の漏れ出しが生じ得る。そこで、次の工程を実施する。
【0028】
樹脂埋込工程として、まず、図5に示すように、ボックスピット本体枠10の外側から切り欠き部30の隙間にパテ材36を塗り込み、切り欠き部30を外側から埋める。次に、ボックスピット本体枠10内におけるバンド18と重なる個所毎に、複数の壁32で挟まれた貯蔵タンク102上の領域に切り欠き部30を塞ぐように樹脂材34を埋め込む。樹脂材34として、エポキシ樹脂を用いると好適である。2つの壁32によって堰を作ることで、埋め込む液状の樹脂材34が外側に漏れ出すことを防止できる。
【0029】
次に、中段ボックス12を配置して、例えば、配管112,114を接続し直す。そして、上段ボックス14と、マンホール蓋16とを取り付けた後、掘り起こした部分を埋め直す。これにより、既にバンド18で固定されている既存の貯蔵タンク102上に、バンド18と干渉することなくFRP製のボックスピット100を配置できる。
【0030】
次に、実施の形態1におけるボックスピット本体枠10の止水性能を評価した。
【0031】
図9は、実施の形態1における止水性能試験装置の構成を示す図である。
図10は、実施の形態1における止水性能試験装置の切り欠き部付近の構成を示す図である。図10は、図9のC-C断面を示している。図9及び図10の例では、試験の便宜上、上面が平面の模擬地下タンクを用いる。模擬地下タンクは、スチール製の模擬タンク本体21上にアスファルトシート22がコーティングされている。そのため、FRP製の試験用のボックスピット本体枠10の底面形状も凹の円弧状ではなく、水平に形成される。試験用のボックスピット本体枠10底部にも切り欠き部30を形成する。また、模擬地下タンク上にはスチール製のバンド18が配置される。バンド18とアスファルトシート22との間にはゴムシート17が配置される。かかるバンド18の配置位置に切り欠き部30を合わせて、模擬地下タンク上にFRP製の試験用のボックスピット本体枠10を配置する。そして、試験用のボックスピット本体枠10の底面全周を切り欠き部30以外に隙間ができないように例えばFRP40で接着する。図7の例と同様、試験用のボックスピット本体枠10全周が、コーティングされたアスファルト材と接着される。また、ボックスピット本体枠10の外側から切り欠き部30をパテ材36で埋める。また、試験用のボックスピット本体枠10内では、切り欠き部30を挟むように2つの壁32’が配置される。試験装置では、模擬地下タンクが水平に形成されるので、各壁32’の底面も合わせて水平に形成している。また、模擬地下タンクが水平なので、切り欠き部30上面高さ位置まで盛り上がらない。そのため、2つの壁32’だけでは、堰が完成せず、液状のエポキシ樹脂を注入した際に試験用のボックスピット本体枠10の中心側に漏れ出してしまうため、さらに、壁33でボックスピット本体枠10の中心側の空いた流路を塞いだ。そして、2つの壁32’と壁33で囲まれた空間に樹脂材34を埋め込む。かかる構成により、実施の形態1の貯蔵タンク102(地下タンク)とボックスピット本体枠10との間での構成と実質的に同様の構成を作り出すことができる。
【0032】
次に、試験用のボックスピット本体枠10上に試験用の上部ボックス501を配置する。試験用の上部ボックス501は、底面全体が底面の枠に沿って形成される図示しないフランジ部分を残して、残りはすべて開口され、試験用のボックスピット本体枠10の上面の図示しないフランジ部分で接続される。また、試験用の上部ボックス501の上面中央部には、水を注ぐための筒が配置される。FRP40、パテ材36、及び樹脂材34が乾いて固化した状態で、試験用の上部ボックス501の筒から水を注入し、試験用のボックスピット本体枠10と模擬地下タンクとの間での水漏れを評価した。水による加圧をかけるため、水は、試験用のボックスピット本体枠10全体が埋まる程度まで注入した。その結果、水による加圧での試験用のボックスピット本体枠10及び模擬地下タンク上面の損傷は生じず、かつ、水漏れも生じなかった。以上により、実施の形態1における地下タンクシステム500における止水性能が高いことがわかる。
【0033】
以上のように、実施の形態1によれば、新規に地下タンクを設置する場合だけではなく、既に埋設されている既存の地下タンクに対してもFRP製のボックスピット100を設置できる。よって、スチール製のボックスピットよりも耐食性を高めることができる。また、既存の地下タンクとFRP製のボックスピット100との密閉性を高めることができる。よって、地下水の上部ボックス内への侵入を防止できると共に、ボックスピット100内に漏れ出た油液の地中への漏れ出しを防止できる。
【0034】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、高さ寸法を変えた複数の中段ボックス12を用意しておくと好適である。埋設された地下タンクの深さが一定でない場合でも、地下タンクの深さに合わせて中段ボックス12の高さを選択すれば、その他の部品を共通にできる。或いは、高さ寸法を変えた複数の上段ボックス14を用意してもよい。
【0035】
また、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成を適宜選択して用いることができる。
【0036】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての地下埋設型タンク上部ボックス、及びタンク上部ボックスの埋設方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0037】
10 ボックスピット本体枠
12 中段ボックス
14 上段ボックス
16 マンホール蓋
17 ゴムシート
18 バンド
20 タンク本体
21 模擬タンク本体
22 アスファルトシート
30 切り欠き部
32,32’ 壁
34 樹脂材
36 パテ材
40 FRP
100 ボックスピット
101 燃料油
102 貯蔵タンク
103 基礎
104 計量機
106 タンクローリー車
111,112,113,114 配管
116 注入口
130 放出弁
300 車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10