(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】透光パネルの枠構造及び透光パネルの脱着方法
(51)【国際特許分類】
E01F 8/00 20060101AFI20220425BHJP
E01B 19/00 20060101ALI20220425BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
E01F8/00
E01B19/00 B
E01D19/10
(21)【出願番号】P 2018182068
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山本 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 充明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義悟
(72)【発明者】
【氏名】小山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 知親
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 陽介
(72)【発明者】
【氏名】井田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】盛岡 諒平
(72)【発明者】
【氏名】引地 宏陽
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-48639(JP,A)
【文献】特開2004-100271(JP,A)
【文献】特開2018-123626(JP,A)
【文献】国際公開第2015/151302(WO,A1)
【文献】特開2005-120694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 3/00-8/02
E01B 1/00-26/00
E01D 1/00-24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有する透光板と、この透光板を嵌め込む枠体と、を備えた透光パネルを、道路又は鉄道に沿って立設された支柱に取り付ける透光パネルの枠構造であって、
前記枠体は、左右一対の縦枠と、上下一対の横枠と、を備え、
前記縦枠は、前記支柱の道路又は鉄道側となる内フランジの内側に固定される内側枠と、この内側枠よりも外側に取り付けられる外側枠と、を有し、
前記内側枠又は前記外側枠のうち一方の枠は、他方の枠側へ向け突設された嵌合片を有し、
前記内側枠又は前記外側枠のうち他方の枠は、前記嵌合片と嵌合する嵌合溝を有し、
前記内側枠と前記外側枠は、前記嵌合溝に前記嵌合片が嵌合された状態で前記横枠にそれぞれねじ止め固定されていること
を特徴とする透光パネルの枠構造。
【請求項2】
前記縦枠は、支柱側が開放された開放部を備え、
前記内側枠と前記外側枠は、それぞれ前記開放部から支柱側に延在するフランジ部を有し、両方のフランジ部を貫通するボルトでボルト止めされていること
を特徴とする請求項1に記載の透光パネルの枠構造。
【請求項3】
前記内側枠は、外側へ向け突設された嵌合片を有し、
前記外側枠は、前記嵌合片と嵌合する嵌合溝を有すること
を特徴とする請求項2に記載の透光パネルの枠構造。
【請求項4】
前記両方のフランジ部を貫通するボルトは、透光パネルの落下を防止する落下防止ワイヤを挿通するワイヤ止め金具であること
を特徴とする請求項3に記載の透光パネルの枠構造。
【請求項5】
前記ワイヤ止め金具は、前記落下防止ワイヤを挿通する一端が開放された螺旋状の線材からなるワイヤ挿通部を有すること
を特徴とする請求項4に記載の透光パネルの枠構造。
【請求項6】
前記外側枠は、前記両方のフランジ部を貫通するボルトを外側から遮蔽する遮蔽部を備えることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の透光パネルの枠構造。
【請求項7】
前記内側枠は、前記透光板の端部を内側から押さえ止める押縁が嵌着可能に構成されていること
を特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の透光パネルの枠構造。
【請求項8】
前記内側枠は、前記透光板を嵌め込む溝の内壁を構成する突片がパネル面内方向に沿って形成されていること
を特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の透光パネルの枠構造。
【請求項9】
前記突片には、前記透光板の端部を内側から押さえ止める押縁が嵌着可能に構成されていること
を特徴とする請求項8に記載の透光パネルの枠構造。
【請求項10】
前記内側枠と前記外側枠は、それぞれビスホールを有し、前記横枠に各ビスホールでビス止めされていること
を特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の透光パネルの枠構造。
【請求項11】
請求項5に記載の透光パネルの枠構造において、既設の前記落下防止ワイヤに前記ワイヤ止め金具で透光パネルを係留し又は取り外す透光パネルの脱着方法であって、
前記ワイヤ止め金具のナットを緩め、前記ワイヤ止め金具を回転させて既設の前記落下防止ワイヤに透光パネルを係留し又は取り外すこと
を特徴とする透光パネルの脱着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路や鉄道に沿って設置され、騒音の伝播を防止するとともに透光性を有して内側から外側が視認可能な透光パネルの枠構造及びそのパネルの脱着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路や鉄道に沿って設置され、自動車や列車などの車両から発生する騒音の伝播を防止する遮音壁が設置されている。また、このような遮音壁には、車両等が走行する壁の内側から外側を視認可能とするために、樹脂ガラスや無機ガラスなどの透光性を有する透光パネルが嵌め込まれた遮音壁も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、このような透光パネルの枠構造において、遮音壁の内側から支柱Bに固定(いわゆる前止め)することができる遮音パネルの枠構造が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1、明細書の段落[0017]~[0037]、図面の
図1,
図2等参照)。
【0004】
特許文献1に記載の遮音パネルの枠構造は、自動車が衝突した際に、その衝撃力を吸収して遮音板が割れて飛散するのを防止することができるとされている。しかし、特許文献1に記載の遮音パネルの枠構造は、内側(道路や鉄道側)から接続用のリベットが見え、景観性を損ねるという問題があった。また、特許文献1に記載の遮音パネルの枠構造は、パネル落下防止ワイヤが内側(道路や鉄道側)及び外側(民地側)のいずれからも見えるため、景観性が低下するだけでなく、ワイヤの余長を収納するスペースがない。それに加え、特許文献1に記載の遮音パネルの枠構造は、複数のパネルがワイヤで上下方向に連結されているため、パネル交換時にワイヤを一度外す必要があり、作業性が悪いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、部品を共通化してコストダウンを達成することができるとともに、景観性が良好でパネルの交換作業が容易で事故等でリベットやボルトなどの接合部材が破損した場合でもパネルの各部材が落下するおそれの少ない透光パネルの枠構造及び透光パネルの脱着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る透光パネルの枠構造は、透光性を有する透光板と、この透光板を嵌め込む枠体と、を備えた透光パネルを、道路又は鉄道に沿って立設された支柱に取り付ける透光パネルの枠構造であって、前記枠体は、左右一対の縦枠と、上下一対の横枠と、を備え、前記縦枠は、前記支柱の道路又は鉄道側となる内フランジの内側に固定される内側枠と、この内側枠よりも外側に取り付けられる外側枠と、を有し、前記内側枠又は前記外側枠のうち一方の枠は、他方の枠外側へ向け突設された嵌合片を有し、前記内側枠又は前記外側枠のうち他方の枠は、前記嵌合溝に前記嵌合片が嵌合された状態で前記横枠にそれぞれねじ止め固定されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る透光パネルの枠構造は、第1発明において、前記縦枠は、支柱側に開放された開放部を備え、前記内側枠と前記外側枠は、前記開放部からそれぞれ支柱側に延在するフランジ部を有し、両方のフランジ部を貫通するボルトでボルト止めされていることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る透光パネルの枠構造は、第2発明において、前記内側枠は、外側へ向け突設された嵌合片を有し、前記外側枠は、前記嵌合片と嵌合する嵌合溝を有することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る透光パネルの枠構造は、第3発明において、前記両方のフランジ部を貫通するボルトは、透光パネルの落下を防止する落下防止ワイヤを挿通するワイヤ止め金具であることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る透光パネルの枠構造は、第4発明において、前記ワイヤ止め金具は、前記落下防止ワイヤを挿通する一端が開放された螺旋状の線材からなるワイヤ挿通部を有することを特徴とする。
【0012】
第6発明に係る透光パネルの枠構造は、第2発明ないし第5発明のいずれかの発明において、前記外側枠は、前記両方のフランジ部を貫通するボルトを外側から遮蔽する遮蔽部 を備えることを特徴とする透光パネルの枠構造。
【0013】
第7発明に係る透光パネルの枠構造は、第1発明ないし第6発明のいずれかの発明において、前記内側枠は、前記透光板の端部を内側から押さえ止める押縁が嵌着可能に構成されていることを特徴とする。
【0014】
第8発明に係る透光パネルの枠構造は、第1発明ないし第7発明のいずれかの発明において、前記内側枠は、前記透光板を嵌め込む溝の内壁を構成する突片がパネル面内方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0015】
第9発明に係る透光パネルの枠構造は、第8発明において、前記突片には、前記透光板の端部を内側から押さえ止める押縁が嵌着可能に構成されていることを特徴とする。
【0016】
第10発明に係る透光パネルの枠構造は、第1発明ないし第9発明のいずれかの発明において、前記内側枠と前記外側枠は、それぞれビスホールを有し、前記横枠に各ビスホールでビス止めされていることを特徴とする。
【0017】
第11発明に係る透光パネルの脱着方法は、請求項5に記載の透光パネルの枠構造において、既設の前記落下防止ワイヤに前記ワイヤ止め金具で透光パネルを係留し又は取り外す透光パネルの脱着方法であって、前記ワイヤ止め金具のナットを緩め、前記ワイヤ止め金具を回転させて既設の前記落下防止ワイヤに透光パネルを係留し又は取り外すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第10発明によれば、縦枠を支柱の内側に固定する内側枠と外側枠との2パーツに分けたので、内側枠を変更すれば様々な支柱への固定方法に対応することができるだけでなく、外側枠部分を共通化することができる。このため、固定方法が異なる毎に設計や金型を製作する必要がなくなり、コストダウンを達成することができる。また、縦枠を2分割することができるため、従来の縦枠の最大径を小さくすることができ、押出し成型の金型を小さくすることができる。よって、その点でも製作費を低減してコストダウンを達成することができる。
【0019】
また、第1発明~第10発明によれば、内側枠と外側枠が、嵌合溝に嵌合片が嵌合された状態で横枠にそれぞれねじ止め固定されているので、万が一事故等で透光パネルに強い衝撃荷重が加わった場合でも、内側枠と外側枠がそれぞれ脱落するおそれがない。このため、事故により道路や鉄道の高架橋から透光パネルの部品が落下して下方を通行している人や車両に損害を与えるような大事故を未然に防ぐことができ、安全性が向上する。
【0020】
特に、第2発明によれば、前記枠体は、支柱側に開放された開放部を備え、内側枠と外側枠がそれぞれフランジ部を有しており、その両方のフランジ部を貫通するボルトでボルト止めされているので、さらに脱落するおそれがなくなり、安全性が向上する。
また、第2発明によれば、前記開放部から支柱側に延在したフランジ部にボルト止めされているので、ボルトが支柱の内フランジの内側に固定された内側枠に遮蔽されて、ボルトが内側から見えないので、景観性が向上する。
【0021】
特に、第3発明によれば、内側枠が外側へ向け突設された嵌合片を有し、外側枠が前記嵌合片と嵌合する嵌合溝を有するので、フランジ部をボルト止めする際に嵌合溝に嵌合片が嵌合された状態で容易に固定できる。
【0022】
特に、第4発明によれば、内側枠と外側枠とを止めるボルトが落下防止ワイヤを挿通するワイヤ止め金具であるので、内側枠と外側枠とを止めるボルトをワイヤ止め金具で兼用させることができる。このため、部品点数を削減してコストダウンを達成することができる。また、フランジ部にワイヤ止め金具が取り付けられているので、事故等の衝撃により支柱に固定したボルトが外れて、透光パネルが落下した場合、ワイヤ止め金具を介してフランジ部が変形することにより、落下の際の運動エネルギーを吸収することができる。
【0023】
特に、第5発明によれば、ワイヤ止め金具が一端が開放された螺旋状の線材からなるワイヤ挿通部を有するので、複数のパネルがワイヤで上下方向に連結されている透光パネルの一部を交換する際に、落下防止ワイヤの端部を開放してワイヤ止め金具から一度引き抜く必要がなくなる。このため、透光パネルの交換作業が容易で作業性が格段に向上する。
【0024】
特に、第6発明によれば、外側枠が、前記両方のフランジ部を貫通するボルトを外側から遮蔽する遮蔽部 を有するので、ワイヤないしワイヤ止め金具を開放部内に収納することができるとともに、それらが内側だけでなく、外側からも見えないので、景観性が向上する。
【0025】
特に、第7発明によれば、内側枠の内側に押縁が嵌着可能に構成されているので、透光板がポリカーボネイトなどの樹脂ガラスである場合に対応することができ、透光板の取替も容易である。
【0026】
特に、第8発明によれば、透光板を嵌め込む溝の内壁を構成する突片がパネル面内方向に沿って内側枠に形成されているので、透光板の縦枠周りをシリコン樹脂等でシール(コーキング)することができる。このため、透光板が衝撃に弱い無機ガラスである場合にも対応することができる。
【0027】
特に、第9発明によれば、前記突片には、前記透光板の端部を内側から押さえ止める押縁が嵌着可能に構成されているので、押縁を追加するだけで透光板が樹脂ガラスである場合にも透光板が無機ガラスである場合にもいずれにも対応することができる。このため、透光パネルの部品をほとんど共通化することができ、透光板の種類毎に設計や金型を製作する必要がなくなり、コストダウンを達成することができる。
【0028】
特に、第10発明によれば、内側枠と外側枠が、それぞれ横枠にビスホールでビス止めされているので、内側枠と外側枠がそれぞれ横枠から脱落するおそれを払拭することができる。このため、さらに安全性が向上する。
【0029】
第11発明によれば、交換する透光パネルのワイヤ止め金具のナットを緩めるだけで、上下のパネルと連結されて緊張状態の落下防止ワイヤから簡単にワイヤ止め金具を取り外して透光パネルを交換することができる。このため、透光パネルの交換作業の作業性が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る透光パネルを示す正面図である。
【
図6】同上の透光パネルの横枠を主に示す
図5のC部拡大端面図である。
【
図7】同上の透光パネルの縦枠の取付構造を主に示す
図4のD部拡大端面図である。
【
図8】同上の縦枠を内側枠と外側枠とに分解した分解端面図である。
【
図9】同上の内側枠と外側枠を回転嵌合させる状況を示す説明図である。
【
図10】同上の透光パネルのワイヤ止め金具に落下防止ワイヤを挿通した状態を示す斜視図である。
【
図11】同上の透光パネルのパネル枠から透光板を取り外す手順を説明する説明図であり、(a)~(d)は、取り外しの順番を表している。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る透光パネルを示す正面図である。
【
図15】同上の透光パネルの横枠を主に示す
図14のG部拡大端面図である。
【
図16】同上の透光パネルの縦枠の取付構造を主に示す
図13のH部拡大端面図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る透光パネルの縦枠の取付構造を主に示す
図7と同様の拡大端面図である。
【
図18】本発明の実施形態に係る透光パネルの脱着方法である透光パネルのワイヤ止め金具から落下防止ワイヤを取り外す手順を示す写真である。
【
図19】同上の透光パネルの脱着方法においてワイヤ止め金具のナットを緩めてワイヤ止め金具を回転傾倒する手順を示す写真である。
【
図20】同上の透光パネルの脱着方法において回転傾倒したワイヤ止め金具から落下防止ワイヤを取り外す手順を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態に係る透光パネルの枠構造及び透光パネルの脱着方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
[第1実施形態]
先ず、
図1~
図10を用いて、本発明の第1実施形態に係る透光パネルの枠構造について説明する。第1実施形態に係る透光パネル1は、透光板が無機ガラスからなるタイプのものである。
【0033】
図1は、第1実施形態に係る透光パネルを示す正面図であり、
図2は、その平面図、
図3は、右側面図である。また、
図4は、
図1のA-A線切断端面図であり、
図5は、
図1のB-B線切断端面図である。ここで、正面とは、騒音の発生源である道路又は鉄道側(以下、内側という)から見て透光板の板面に対して垂直且つ水平に見た状態を指している。
【0034】
図1~
図5に示すように、本実施形態に係る透光パネル1は、透光板G1と、この透光板G1が嵌め込まれた枠体であるパネル枠2など、から主に構成されている。この透光パネル1は、道路又は鉄道に沿って立設された支柱H1(
図7参照)に取り付けられ、自動車や列車などの車両から発生する騒音の伝播を防止する遮音壁として用いられる。また、透光パネル1は、透光板G1が透光性を有しており、内側から見て壁の向こう側(一般的に民地側、以下外側という)が視認可能となっている。
【0035】
<透光板>
第1実施形態に係る透光板G1は、化学処理によりガラス表面を強化した化学強化ガラス間に樹脂フィルムを介装した化学強化合わせガラスからなる。勿論、透光板G1は、化学強化ガラス単体や一般的なフロートガラスからなる板ガラスとすることもできる。
【0036】
要するに、透光板G1は、少なくとも表面が石英ガラスなどの透光性を有する無機ガラスからなる長方形の板材であればよい。表面を化学強化ガラスなどの無機ガラスとすることにより、ポリカーボネイトなどの樹脂ガラスと比べて、平滑性が高く視認性が高いというメリットがあるからである。また、無機ガラスは、樹脂ガラスと比べて、耐薬品性が高く、傷が付きにくい上、耐候性が極めて良いというメリットもある。
【0037】
但し、無機ガラスは、樹脂ガラスに比べて重く、耐衝撃性が低いというデメリットがある。このため、後述のように、透光板G1は、シリコン樹脂などでシーリングしてパネル枠2との間に弾性体を介装して衝撃が直接伝達されないように支持されている。
【0038】
<<パネル枠>>
パネル枠2は、押し出し成形されたアルミ合金からなるアルマイト製の枠体であり、
図1~
図5に示すように、上下一対で線対称の横枠3,3と、左右一対で線対称の縦枠5,5など、から構成されている。
【0039】
また、
図3、
図4に示すように、このパネル枠2の縦枠5,5には、落下防止ワイヤW(
図10参照)を挿通するワイヤ止め金具6が、それぞれ上下2か所に設けられている。
【0040】
<横枠>
図6は、透光パネル1の横枠3を主に示す
図5のC部拡大端面図である。
図6に示すように、横枠3は、鉛直断面が概略矩形状の条材である枠本体30からなり、この枠本体30の下部の内側寄りに透光板G1を装着する透光板装着溝31が形成されている。
【0041】
また、透光板装着溝31の外側の側面には、ガスケットGeを装着するためのガスケット装着溝32が形成されている。このガスケットGeは、シリコン樹脂などのゴム弾性体からなる。
【0042】
このガスケット装着溝32にガスケットGeが装着され、そのガスケットGeに透光板G1の板面が当接した状態で透光板装着溝31に透光板G1の上端部(又は下端部)が挿入されている。また、透光板G1の内側の縁に沿ってシール材S1でシール(封止)されて透光板装着溝31に透光板G1が装着されている。このシール材S1は、シリコン樹脂や変成シリコン樹脂などのゴム弾性体からなる。
【0043】
このため、透光板G1が、外側のガスケットGeと内側のシール材S1の2つのゴム弾性体で挟持されて弾性支持されることとなり、耐衝撃性が低い透光板G1の欠点を補うことができる。また、透光板G1を交換する際に、シール材S1を再施工するのが内側だけであるため、外側に仮設足場等を設ける必要がなくなる。
【0044】
なお、符号P1は、シール材S1を施工する際に、硬化前の流動状態のシール材S1が透光板装着溝31の奥に入り込まないように阻止するバックアップ材P1である。このバックアップ材P1は、変形容易な発泡樹脂からなる。
【0045】
また、横枠3は、後述の第2実施形態に係る透光パネル1’と部品を共通化する観点から、後述の押縁36(
図14、
図15参照)が嵌着可能(装着可能)な構成となっている。具体的には、横枠3には、透光板装着溝31の奥部(上部又は下部)の内側に、押縁36を係止する2つの押縁係止溝33,34が形成されているとともに、その外側に、押縁36を揺動嵌着するためのテーパ面35が形成されている。
【0046】
<縦枠>
図7は、透光パネル1の縦枠5の取付構造を主に示す
図4のD部拡大端面図であり、
図8は、縦枠5を内側枠50と外側枠51とに分解した分解端面図である。
図7、
図8に示すように、縦枠5は、一点鎖線で示す支柱H1の内フランジH1aの内側に固定される内側枠50(前止めパーツ)と、この内側枠50よりも外側に取り付けられる外側枠51(後付けパーツ)の2つのパーツ(部材)から構成されている。
【0047】
このため、内側枠50を変更すれば様々な支柱への固定方法に対応することができるだけでなく、外側枠51の部分を共通化することができる。このため、固定方法が異なる毎に設計を行ったり金型を製作したりする必要がなくなり、コストダウンを達成することができる。
【0048】
(内側枠)
また、内側枠50は、
図7、
図8に示すように、支柱H1にボルト止めされる水平断面が直線状の止付けプレート50aを有している。この止付けプレート50aの背面には、断面L字状の嵌合片50bが外側へ向け突設されている。
【0049】
そして、嵌合片50bには、途中から透光パネル1のパネル面内方向(止付けプレート50a及び支柱H1の内フランジH1aと平行、以下単にパネル面内方向という)に延在するフランジ部50cが嵌合片50bの背面と段違いに雁行するように形成されている。また、止付けプレート50aの端部と嵌合片50bの基端部付近には、パネル面内方向に延在する突片50dが止付けプレート50aの正面と段違いに雁行するように形成されている。この突片50dは、後述のガスケット装着溝51cと対向してその間のスペースが透光板G1を嵌め込むための溝となっている。つまり、突片50dは、透光板G1を嵌め込むための溝の内壁を構成する。
【0050】
なお、嵌合片50bとフランジ部50cとの接合部付近の内側には、横枠3に縦枠5をビス止めするための断面C字状のビスホール50eが形成されている。
【0051】
それに加え、内側枠50は、後述の第2実施形態に係る透光パネル1’と部品を共通化する観点から、後述の押縁52(
図13、
図16参照)が装着可能な構成となっている。具体的には、内側枠50には、突片50dの透光板G1側に、押縁52を係止するための2つの押縁係止溝50f,50gが形成されているとともに、押縁係止溝50g側に、押縁52を揺動嵌着するためのテーパ面50hが形成されている。
【0052】
(外側枠)
外側枠51は、
図7、
図8に示すように、周囲が囲まれて閉塞された断面矩形の閉塞部51aと、この閉塞部51aと面内方向に隣接して支柱H1側が開放された開放部51bと、を備えている。この開放部51bは、閉塞部51aの前後面に延設された後述のフランジ部51eと遮蔽部51gとで囲われて、後述の落下防止ワイヤWを挿通するスペースとなっている。また、この開放部51bは、落下防止ワイヤWの余長を収容するスペースとしても利用することができる。
【0053】
また、この閉塞部51aの内側には、ガスケットGeを装着するためのガスケット装着溝51cが形成されている。そして、このガスケット装着溝51cと面内方向に隣接する位置に、前述の断面L字状の嵌合片50bと嵌合する嵌合溝51dが形成されている。
【0054】
そして、嵌合溝51dと隣接する位置に、内側枠50のフランジ部50cと当接するようにパネル面内方向に延在するフランジ部51eが形成されている。また、
図7に示すように、内側枠50のフランジ部50cと外側枠51のフランジ部51eとは、ワイヤ止め金具6でボルト止めされている。勿論、フランジ部50cとフランジ部51eとは、ワイヤ止め金具6ではなく、他のボルトでボルト止めされていてもよい。
【0055】
なお、
図8に示すように、閉塞部51aの四隅のうち透光板G1側の二隅付近には、横枠3に縦枠5をビス止めするための断面C字状の2つのビスホール51f,51fが形成されている。
【0056】
また、閉塞部51aの外側面が支柱H1側に延設された板状部位である遮蔽部51gは、フランジ部50cとフランジ部51eの両方のフランジ部を貫通するワイヤ止め金具6を外側から遮蔽する機能を有している。このため、外側からも見えなくなるため、景観性がさらに向上する。
【0057】
図9は、内側枠50と外側枠51を回転嵌合させる状況を示す説明図である。
図9に示すように、内側枠50と外側枠51の嵌合は、外側枠51の嵌合溝51dに、内側枠50の断面L字状の嵌合片50bを差し込んで図の矢印方向にフランジ部50cとフランジ部51eとが当接するまで回転させて嵌合されている。つまり、換言すると、内側枠50と外側枠51とが相対的に、このように別々に回転しないと内側枠50と外側枠51との嵌合が解除されない構造となっている。このため、縦枠5を2分割しても各部材が脱落するような大事故を未然に防ぐことができる。
【0058】
また、内側枠50が外側へ向け突設された嵌合片50bを有し、外側枠51が前記嵌合片50bと嵌合する嵌合溝51dを有するので、嵌合溝51dに嵌合片50bが嵌合された状態でフランジ部50c、51eをボルト止めする際に容易に固定できる。
なお、図示しないが、内側枠50に嵌合溝51d’を、外側枠51に嵌合片50b’を設けて、内側枠50の嵌合溝51d’に、外側枠51の断面L字状の嵌合片50b’を差し込んで外側から内側にフランジ部50cとフランジ部51eとが当接するまで回転させて嵌合されてもよい。
【0059】
そして、
図7に示したように、内側枠50と外側枠51を嵌合させた状態で両方のフランジ部50c,51eを貫通するワイヤ止め金具6でボルト止めされている。それに加え、内側枠50及び外側枠51の各ビスホール50e,51fで横枠3に縦枠5がビスSでビス止めされている(
図3も参照)。勿論、ビスSでなくボルトなどでねじ止め固定されていてもよい。
【0060】
このため、内側枠50と外側枠51がそれぞれ横枠3から脱落するおそれを払拭することができる。よって、事故により道路や鉄道の高架橋から透光パネル1の部品が落下して下方を通行している人や車両に損害を与えるような大事故を未然に防ぐことができ、さらに安全性が向上する。
【0061】
<ワイヤ止め金具>
図10は、透光パネル1のワイヤ止め金具6に落下防止ワイヤWを挿通した状態を示す斜視図である。
図10に示すように、ワイヤ止め金具6は、線材である鋼棒(鋼線)から曲げ加工された部材であり、一端が開放された螺旋状のワイヤ挿通部60を有し、他端にねじ溝が形成されてナットが螺着可能な螺旋金具となっている。
【0062】
ワイヤ止め金具6は、このワイヤ挿通部60に落下防止ワイヤWが挿通されて、透光パネル1同士を縦方向に連結するのに用いられている。このため、ワイヤ止め金具6は、透光パネル1を支柱H1に止付けているボルト等の連結部材が万が一事故等で破損した場合であっても、支柱H1から透光パネル1が落下しないよう防止する機能を有している。
【0063】
なお、本実施形態に係るワイヤ止め金具6として、螺旋状のワイヤ挿通部60を有した螺旋金具を例示したが、一般的なアイボルトとしてもよい。その場合でも落下防止ワイヤWをアイボルトに挿通して上下に透光パネル1同士を連結することが可能である。但し、後述のように、ワイヤ止め金具6を螺旋金具とした方が、落下防止ワイヤWで透光パネル1同士を上下に連結した状態で、途中の透光パネル1を交換することができるようになるため好ましい。
【0064】
<透光板の取り外し手順>
次に、
図11を用いて、修繕等により透光板G1を取り替える場合の透光パネル1におけるパネル枠2から透光板G1を取り外す手順を説明する。
図11は、透光パネル1のパネル枠2から透光板G1を取り外す手順を説明する説明図であり、(a)~(d)の順番に行う。
図11に示すように、パネル枠2から透光板G1を取り外す際は、ケンドン式に一旦透光板G1を持ち上げて下端を揺動して取り外す。
【0065】
具体的には、
図11(a)に示すように、先ず、透光板G1の四周のシール材S1等を取り除く。そして、
図11(b)に示すように、透光板装着溝31の上端まで透光板G1を持ち上げて、透光板G1の下端が下の横枠3の透光板装着溝31から外れてフリーの状態とする。
【0066】
次に、
図11(c)に示すように、透光板G1の下部を手前(内側)に引き寄せて透光板G1を縦回転に揺動し、透光板G1の上端部が透光板装着溝31内において当接して回転しなくなるまで揺動する。そして、
図11(d)に示すように、その状態から透光板G1を下方に下げ、透光板装着溝31から透光板G1の上端を引き出してパネル枠2から透光板G1を取り外す。
【0067】
このように、透光パネル1は、パネル枠2を分解することなく、透光板G1のみを取り替えることができる。このため、飛び石等により透光板G1に傷がついたような場合でも簡単に短時間で透光板G1を交換することができる。よって、メンテナンス作業の作業時間を大幅に短縮することができる。
【0068】
以上説明した第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、縦枠5を内側枠50と外側枠51との2パーツに分けたので、支柱H1等に固定する内側枠50を変更すれば様々な支柱への固定方法に対応することができる。また、このことにより、外側枠51を共通化することができ、固定方法が異なる毎に設計や金型を製作する必要がなくなり、コストダウンを達成することができる。
【0069】
その上、第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、縦枠5を2分割することができるため、従来の縦枠の最大径より各パーツの最大径を小さくすることができ、押出し成型の金型を小さくすることができる。よって、その点でも製作費を低減してコストダウンを達成することができる。
【0070】
また、第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、内側枠50と外側枠51を嵌合させた状態でワイヤ止め金具6でボルト止めされているとともに、内側枠50及び外側枠51の各ビスホール50e,51fで横枠3に縦枠5がビス止めされている。よって、万が一事故等で透光パネル1に強い衝撃荷重が加わった場合でも、内側枠50と外側枠51がそれぞれ脱落するおそれがない。このため、事故により道路や鉄道の高架橋から透光パネル1の部品が落下して下方を通行している人や車両に損害を与えるような大事故を未然に防ぐことができ、安全性が向上する。
【0071】
それに加え、第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、透光板G1を嵌め込む溝の内壁を構成する突片50dがパネル面内方向に沿って内側枠50に形成されている。このため、縦枠5に沿って透光板G1の周りをシール材S1でシール(コーキング)して、衝撃に弱い無機ガラスである透光板G1にも対応することができる。
【0072】
さらに、第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、縦枠5を2分割してもそれらを接合するリベット等の接合部材が、道路側や鉄道側から見えない。このため、景観性が向上する。
【0073】
また、第1実施形態に係る透光パネル1の枠構造によれば、開放部51bに落下防止ワイヤWの余長を収容することができる。このため、透光パネル1を上下に連結した状態で落下防止ワイヤWを緩めることが可能となる。よって、落下防止ワイヤWを全部引き抜かないで上下に連結した複数の透光パネル1の一部だけを交換することが容易となる。
【0074】
[第2実施形態]
次に、
図12~
図16を用いて、本発明の第2実施形態に係る透光パネルの枠構造について説明する。本発明の第2実施形態に係る透光パネル1’が前述の第1実施形態に係る透光パネル1と相違する点は、主に、透光板G1が透光板G2となっており、この透光板G2が押縁で内側から押圧されて固定されている点である。よって、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し説明を省略する。なお、第2実施形態に係る透光パネル1’は、透光板G2が樹脂ガラスからなるタイプのものである。
【0075】
図12は、第2実施形態に係る透光パネル1’を示す正面図である。
図13は、
図12のE-E線切断端面図であり、
図14は、
図12のF-F線切断端面図である。また、
図15は、透光パネル1’の横枠3を主に示す
図14のG部拡大端面図であり、
図16は、透光パネル1’の縦枠5の取付構造を主に示す
図13のH部拡大端面図である。
【0076】
図12~
図16に示すように、第2実施形態に係る透光パネル1’は、前述のパネル枠2に透光板G2が横枠3、縦枠5にそれぞれ押縁36、押縁52が嵌着され、これらの押縁36、押縁52で透光板G2の四周の縁が内側から押さえ止められて固定されている。
【0077】
<透光板>
第2実施形態に係る透光板G2は、ポリカーボネイトやアクリル樹脂などの樹脂ガラスからなる。透光板G2は、前述の無機ガラスからなる透光板G1と比べて、比重において軽く、耐衝撃性が高く割れにくいというメリットがある。このため、透光板G1のように、パネル枠2との間に弾性体を介装して衝撃が直接伝達されないように支持する必要がなく、押縁36、押縁52によるパネル枠2への押圧固定が可能である。
【0078】
(横枠)
図15に示すように、横枠3への押縁36の嵌着は、前述の押縁係止溝33,34へ押縁36の係止片36a,36bが掛け止められることにより嵌着されている。
【0079】
また、押縁36の透光板G2側となる外側には、ガスケットGeを装着するガスケット装着溝36cが形成され、このガスケット装着溝36cにガスケットGeが装着されている。このため、横枠3では、透光板G2をガスケットGeを介して、押縁36で透光板装着溝31の外側へ透光板G2を押し付けて固定されていることになる。
【0080】
なお、符号36dは、押縁36を縦枠5へビス止め固定するためのビスホールである。また、上の横枠3への押縁36の固定は、嵌着だけでなく、図の破線で示すようにビス等で止付けられている。
【0081】
(縦枠)
図16に示すように、縦枠5への押縁52の嵌着は、前述の突片50dの外側に形成された押縁係止溝50f,50gへ押縁52の係止片52a,52bが掛け止められることにより嵌着されている。
【0082】
また、押縁52の透光板G2側となる外側には、ガスケットGeを装着するガスケット装着溝52cが形成され、このガスケット装着溝52cにガスケットGeが装着されている。このため、縦枠5では、透光板G2をガスケットGeを介して、外側枠51へ透光板G2を押縁52で押し付けて固定されていることになる。
【0083】
なお、符号52dは、押縁52を横枠3へビス止め固定するためのビスホールである。
【0084】
以上説明した第2実施形態に係る透光パネル1’の枠構造によれば、前述の第1施形態に係る透光パネル1の枠構造が奏する作用効果に加え、押縁36、押縁52を追加するだけで透光板G2がポリカーボネイトなどの樹脂ガラスである場合に対応することができる。このため、樹脂ガラスや無機ガラスを嵌め込む場合の透光パネルの部品をほとんど共通化することができる。よって、透光板の種類毎に設計や金型を製作する必要がなくなり、コストダウンを達成することができる。
【0085】
また、第2実施形態に係る透光パネル1’の枠構造によれば、押縁36、押縁52などの追加部材の幅を調整するだけで、透光板の種々の幅に対応することができる。
【0086】
それに加え、第2実施形態に係る透光パネル1’の枠構造によれば、シール材が不要の乾式固定であるため、押縁36、押縁52を取り外すだけで、透光板G1よりも軽い透光板G2をケンドン式で簡単に取り外して交換することができる。このため、透光パネル1よりもメンテナンス作業の作業時間を短縮することができる。
【0087】
[第3実施形態]
次に、
図17を用いて、本発明の第3実施形態に係る透光パネル1”の枠構造について説明する。本発明の第3実施形態に係る透光パネル1”が前述の第1実施形態に係る透光パネル1と相違する点は、主に、内側枠50’の突片50dが無くなり、押縁53となっている点である。よって、その点について主に説明し、同一構成は同一符号を付し説明を省略する。
【0088】
図17は、透光パネル1”の縦枠5’の取付構造を主に示す
図7と同様の拡大端面図である。
図17に示すように、縦枠5’の内側枠50’は、前述の内側枠50の突片50dが無くなり、代わりに円弧状に湾曲した係合凹部50d’と係合爪50f’が形成されている。
【0089】
そして、押縁53には、円弧状に湾曲した係合凹部50d’に差し込まれる円弧状に湾曲した突片53aと、係合爪50f’と係合する係合爪53bが形成されている。
【0090】
この押縁53は、突片53aを係合凹部50d’に差し込むと、円弧状に湾曲した係合凹部50d’の形状に案内されて、押縁53が揺動し、係合爪53bが係合爪50f’に掛け止められる仕組みとなっている。また、押縁53を取り外す場合は、押縁53と透光板の隙間から押込治具を挿入し、押込治具の先端部に押縁53の突設凹部53cを引っかけて取り外すことができる。このため、透光パネル1”の内側からの押縁53の脱着が極めて容易である。
【0091】
なお、押縁53と透光板G1との間には、バックアップ材P1が介装された上、押縁53と透光板G1との間の隙間がシール材S1でシーリングされている。つまり、透光板G1がシール材S1で弾性支持されている。
【0092】
以上説明した第3実施形態に係る透光パネル1”の枠構造によれば、前述の第1施形態に係る透光パネル1の枠構造の作用効果に加え、透光パネル1”の内側からの押縁53の
取り外しが極めて容易である。このため、透光パネル1よりもメンテナンス作業の作業時間を短縮することができる。
【0093】
[透光パネルの脱着方法]
次に、
図18~
図20を用いて、本発明の実施形態に係る透光パネルの脱着方法について説明する。前述の第1実施形態に係る透光パネル1を支柱H1から取り外す場合を例示して説明する。
図18は、透光パネル1のワイヤ止め金具6から落下防止ワイヤWを取り外す手順を示す写真であり、(1)~(10)は、順番を示している。
【0094】
本実施形態に係る透光パネルの脱着方法では、
図18の(1)~(10)に示すように、ワイヤ止め金具6の螺旋状のワイヤ挿通部60の開放端から上下の複数の透光パネル1同士を連結した既設の落下防止ワイヤWを回しながら取り外して行く。
図18の(1)~(10)に示すように、ワイヤ挿通部60の鋼線の巻き数である2周り半ほど落下防止ワイヤWを回しながら取り外して行くと、落下防止ワイヤWをワイヤ止め金具6から完全に取り外すことができる。
【0095】
なお、透光パネル1のワイヤ止め金具6に落下防止ワイヤWを係留する手順は、前述の手順と逆の
図18の(10)~(1)の順番に行えばよい。
【0096】
図19は、ワイヤ止め金具6のナットを緩めてワイヤ止め金具6を回転傾倒する手順を示す写真であり、
図20は、回転傾倒したワイヤ止め金具6から落下防止ワイヤWを取り外す手順を示す写真である。(1)~(4)は、順番を示している。
【0097】
また、
図19に示すように、ワイヤ止め金具6のナットを緩めるとワイヤ止め金具6を回転傾倒させることができる。しかし、これは、透光パネル1のワイヤ止め金具6が、外側枠51の支柱H1側が開放された開放部51bに位置し、しかもパネル面内方向に揺動可能に取り付けられているからである。
【0098】
つまり、従来のワイヤ止め金具であるアイボルトのように、縦枠のパネル側の小口に軸着されている場合は、仮に、ワイヤ止め金具が螺旋金具であった場合でも、揺動方向は、パネル面内方向と直交する方向となる。その場合、螺旋金具の揺動範囲は、縦枠の幅だけとなり、殆どワイヤ止め金具を回転傾倒させることができない。
【0099】
しかし、透光パネル1では、ワイヤ止め金具6がパネル面内方向に延在するフランジ部50c,51eに取り付けられて、ワイヤ止め金具6が挿置されている開放部51bが、支柱H1側が開放されているため、大きくワイヤ止め金具6を回転傾倒させることができる。このため、
図20に示すように、落下防止ワイヤWの可動範囲が広がることとなる。よって、
図18の(1)~(10)に示すように、ワイヤ挿通部60の開放端から落下防止ワイヤWを回しながら取り外し又は逆にワイヤ止め金具6に落下防止ワイヤWを係留して行く作業が極めて容易となる。
【0100】
以上説明した本発明の実施形態に係る透光パネルの脱着方法によれば、複数のパネルが落下防止ワイヤWで上下方向に連結されている状態で、複数の透光パネル1の一部を交換する際に、落下防止ワイヤWの端部を開放して連結された透光パネルから落下防止ワイヤWを一度全部引き抜く必要がなくなる。このため、透光パネル1の交換作業の作業性が格段に向上する。
【0101】
それに加え、本発明の実施形態に係る透光パネルの脱着方法によれば、ワイヤ止め金具6を大きく回転傾倒させることができ、落下防止ワイヤWの可動範囲を広げることができる。このため、ワイヤ挿通部60の開放端から落下防止ワイヤWを回しながら取り外し、又は逆にワイヤ止め金具6に落下防止ワイヤWを係留して行く作業が極めて容易となる。
よって、透光パネル1の交換作業の作業性がさらに向上する。
【0102】
以上、本発明の実施形態に係る透光パネルの枠構造及び透光パネルの脱着方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎない。よって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
【符号の説明】
【0103】
1,1’,1”:透光パネル
2:パネル枠
3:横枠
30:枠本体
31:透光板装着溝
32:ガスケット装着溝
33,34:押縁係止溝
35:テーパ面
36:押縁
36a,36b:係止片
36c:ガスケット装着溝
36d、51f、52d:ビスホール
5,5’:縦枠
50,50’:内側枠
50a:止付けプレート
50b,(50b’):嵌合片
50c:フランジ部
50d:突片
50d’:係合凹部
50e:ビスホール
50f,50g:押縁係止溝
50f’:係合爪
50h:テーパ面
51:外側枠
51a:閉塞部
51b:開放部
51c:ガスケット装着溝
51d,(51d’):嵌合溝
51e:フランジ部
51g:遮蔽部
52:押縁
52a:係止片
52b:係止片
52c:ガスケット装着溝53:押縁
53a:突片
53b:係合爪
53c:突設凹部
6:ワイヤ止め金具
60:ワイヤ挿通部
G1:透光板
G2:透光板
H1:支柱
H1a:内フランジ
S:ビス
W:落下防止ワイヤ
Ge:ガスケット
S1:シール材
P1:バックアップ材
G:ゴムパッキン