(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ストレッチデニムや他の布地製品の縫目または裾の形成方法
(51)【国際特許分類】
A41D 27/24 20060101AFI20220425BHJP
A41D 27/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A41D27/24 C
A41D27/00 Z
(21)【出願番号】P 2018545419
(86)(22)【出願日】2017-11-20
(86)【国際出願番号】 EP2017079794
(87)【国際公開番号】W WO2018091709
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2016-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507343327
【氏名又は名称】サンコ テキスタイル イスレットメレリ サン ベ ティク エーエス
【氏名又は名称原語表記】SANKO TEKSTIL ISLETMELERI SAN. VE TIC. A.S.
【住所又は居所原語表記】Organize Sanayi Bolgesi 3. Cadde 16400 Inegol-Bursa(TR)
(74)【代理人】
【識別番号】100060759
【氏名又は名称】竹沢 荘一
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】セルカン メルツ
(72)【発明者】
【氏名】アルペル ジェスィト
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-085637(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0196136(US,A1)
【文献】特開平09-041208(JP,A)
【文献】特開2016-019699(JP,A)
【文献】特表2013-544983(JP,A)
【文献】米国特許第04753182(US,A)
【文献】特表2010-500933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 27/24
A41D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布に縫目を形成する方法であって、
弾性繊維及び非弾性繊維を含む複数の繊維(8)を含む織布(2
、32)を供給するステップ(1000)と、
前記織布(2、
32)の第1の片の縁(34)を前記織布(32)の第2の片(32)に縫い合わせて縫目を形成するステップ(1002)と、
第3の布地片(18)に接着剤(24)をラミネートするステップ(1004)と、
前記第3の布地片を切断して細長片(22)を形成するステップ(1006)と、
前記細長片(22)を前記縫目に沿って載置するステップ(1010)と、
前記細長片(22)が前記織布(2、32)の前記縁(34)を覆ってシールするようにして、前記細長片(22)を前記縫目に
貼り付けるステップ(1012)とを含
み、
前記織布(2、32)は伸縮性があり、弾性糸を含み、
前記織布(2、32)は、コーティングされず、ラミネートもされていない単層の布地材料であり、
前記複数の繊維は、弾性素材及び天然素材を含んでおり、さらに
前記細長片(22)を前記縫目に貼り付けるステップ(1012)において、弾性材料で形成された前記繊維(8)が前記接着剤(24)に接着するように、圧力と熱を使用して前記細長片(22)を前記縫目に固定することを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
前記織布は、単層の布地を含んでいることを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項3】
請求項1
または2のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数の繊維は、前記織布(2、32)の前記
第1の片の縁(34)で露出した端部を有する繊維と、前記織布(2、32)の前記
第2の片の縁(34)で露出した端部を有する繊維とを含み、
前記縫目を形成するステップ(1002)は、前記織布(2、32)の前記第1の片の前記縁(34)と前記織布(32)の前記第2の片の前記縁(34)とを縫い合わせて前記縫目を形成するステップを含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法において、
前記織布及び前記第3の布地片は、同じ布地材料
で形成されることを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数の繊維は、1つ以上のエラストマー繊維のコアを含む少なくとも1つの伸縮性糸、及び前記コアを覆う天然繊維の非弾性シースを含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法において、
前記弾性繊維は、程度の異なる弾性を有する複数の弾性繊維を含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数の繊維は天然繊維を含み、前記天然繊維は前記複数の繊維の少なくとも65%を構成することを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法において、
前記ラミネートは、紙及びプラスチックを含む裏当てシートを有する接着剤を含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法において、
前記固定のステップは、熱溶接
機またはフラットアイロンプレスのいずれか1つの使用を含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項10】
請求項
1に記載の方法において、
前記ラミネートは、裏当てシートを有する前記接着剤を含み、前記縫目に沿って前記細長片を載置するステップは、前記縫目をまたぐように前記細長片を位置決めするステップを含み、さらに、前記載置及び前記固定のステップの前に、前記裏当てシートを除去し布地を洗浄するステップを含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項11】
請求項
3に記載の方法において、
前記
縁(34)の縫い合わせのステップは、前記織布(2、32)の
前記第1の片の縁(34)と前記第2の片の縁(34)とが重なるように前記
各縁(34)を位置決めし、次いで、重なり合ったこれらの縁を縫い合わせるステップを含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項12】
請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の方法において、
前記細長片(22)の形成のステップは超音波溶接を用いて行われることを含むことを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項13】
請求項1乃至
12のいずれか1項に記載の方法において、
前記細長片(22)を前記縫目に貼り付けるステップ(1012)により、前記
弾性繊維が前記接着剤に接着し、前記
縫目から引き戻されないようにすることを特徴とする縫目の形成方法。
【請求項14】
縫目で一緒に縫い合わされた織布の断片を含む、請求項1乃至
13のいずれか1項に記載の方法を用いて形成された衣服
であって、
前記織布(2、32)は、複数の繊維(8)を含み、前記複数の繊維(8)は、弾性繊維および非弾性繊維を含み、
前記複数の繊維は、弾性素材及び天然素材を含み、前記織布(2、32)は弾性があり、弾性糸を含むものにおいて、
前記織布は、コーティングされておらず、ラミネートもされていない単層の布地材料であり、
接着剤で積層された織布の細長片が、前記織布の前記縫目に貼り付けられていることを特徴とする衣服。
【請求項15】
織布に裾を形成する方法であって、
弾性繊維及び非弾性繊維を含む複数の繊維(8)を含む織布(2、32)を供給するステップ(1000)と、
前記織布の縁(34)を折り畳み、縫って裾を形成するステップ(1002)と、
第3の布地片(18)に接着剤(24)をラミネートするステップ(1004)と、
前記第3の布地片を切断して細長片(22)を形成するステップ(1006)と、
前記細長片(22)を前記裾に沿って載置するステップ(1010)と、
前記細長片(22)が前記織布(2、32)の前記縁(34)を覆ってシールするようにして、前記細長片(22)を前記裾に貼り付けるステップ(1012)とを含み、
前記織布(2、32)は伸縮性があり、弾性糸を含み、
前記織布(2、32)は、コーティングされず、ラミネートもされていない単層の布地材料であり、
前記複数の繊維は、弾性素材及び天然素材を含んでおり、さらに
前記細長片(22)を前記裾に貼り付けるステップ(1012)において、弾性材料で形成された前記繊維(8)が前記接着剤(24)に接着するように、圧力と熱を使用して前記細長片(22)を前記裾に固定することを特徴とする裾の形成方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記織布(2、32)は、単層の布地を含み、
前記複数の繊維は、前記織布(2、32)の前記縁(34)で露出した端部を有する繊維を含み、
前記織布(2、32)に裾を形成するステップ(1002)は、前記織布(2、32)の前記縁(34)を折り畳んで縫い合わせ外縁(50)のある前記裾を形成するステップを含むことを特徴とする裾の形成方法。
【請求項17】
請求項15乃至16のいずれか1項に記載の方法において、
前記織布及び前記第3の布地片は、同じ布地材料で形成されることを特徴とする裾の形成方法。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか1項に記載の方法において、
前記複数の繊維は、1つ以上のエラストマー繊維のコアを含む少なくとも1つの伸縮性糸、及び前記コアを覆う天然繊維の非弾性シースを含むことを特徴とする裾の形成方法。
【請求項19】
請求項15乃至18のいずれか1項に記載の方法において、
前記細長片(22)を前記裾に貼り付けるステップ(1012)により、前記弾性繊維が前記接着剤に接着し、前記裾から引き戻されないようにすることを特徴とする縫目または裾の形成方法。
【請求項20】
請求項15乃至19のいずれか1項に記載の方法を用いて形成された衣服であって、
前記織布(2、32)は、複数の繊維(8)を含み、前記複数の繊維(8)は、弾性繊維および非弾性繊維を含み、
前記複数の繊維は、弾性素材及び天然素材を含み、前記織布(2、32)は弾性があり、弾性糸を含むものにおいて、
前記織布は、コーティングされておらず、ラミネートもされていない単層の布地材料であり、
接着剤で積層された織布の細長片が、前記織布の前記裾に貼り付けられており、
折り畳まれ縫い合わされた織布の外縁(50)で形成された前記裾を含むことを特徴とする、請求項15に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、布地と衣服、及びこれらの製法に関するものであり、特に、伸縮性のあるデニムや他の布地に形成された縫目や裾をシールする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エラストマーの糸を備えたストレッチタイプの布地は、今日の衣服製造業において非常にポピュラーで、有用になってきた。
このエラストマーの糸で作られた衣服は、スポーツウェア及び運動競技のユニフームやアパレルにおいて非常にポピュラーなだけでなく、様々な他のタイプのファッション衣類にも適用されている。それは、このようなストレッチタイプの布地を使用して体形にフィットした衣服を提供することで、体にぴったりとした衣服が必要とされる場合に、快適さもたらし、非常に有用なためである。
多くのストレッチタイプの布地は、特定の感触及び質感を提供するために、エラストマーや他の繊維との組み合わせを含んでいる。
エラストマーすなわち、弾性繊維は、それらの元の長さよりも大きく伸ばすことができ、かつ、元の長さに回復することができる繊維である。
【0003】
しかし、利用可能な多くのストレッチタイプの布地や衣服があるにも拘わらず、それらの多くは、弾力性を欠くか、あるいは十分な弾力性がない。
様々な伸縮性のある布地や衣服は、やがて、それらの弾力性を失い、弛み、割れて、そして、機能しなくなる傾向がある。
更に、これらの衣服は、ストレッチタイプの布地のパネルと細長片とをつなぎ合わせて縫目を形成することにより製造されるので、縫目及びこの縫目の周りの領域は、特に欠陥が発生しやすい。
【0004】
伸縮性のある布地に縫目を形成するとき、多くの問題が生じる場合がある。欠陥は、縫製により伸縮性のある布地の縫目を形成する場合に生じ、この種の問題は時々「ライクラの損傷」とも呼ばれる。ライクラ(登録商標)は、弾性糸を作るために使用された材料を識別する商標である。
幾つかの例では、この問題が、間違ったタイプの縫い針が使用されたり、縫製プロセスで足踏みミシンに過度の力が加えられたりすることで発生する。
場合によっては、布地の構造が緩すぎて、縫製プロセス中に繊維が布地の内側に向かって移動するのを、ミシンのストッパーが止めることができない。
この問題は、軟化工程のような洗濯工程や、不適切になされる乾燥又は他のオーブン工程等の間にも起こり得る。
【0005】
伸縮性のある布地に縫目を形成するときに生じる別の問題は、「ライクラ滑り」と呼ばれる。ライクラ滑りとは、一般的に、エラストマー繊維が縫目から引き戻され、元の位置に回復しない現象を指す。
応力の作用下では、布地を形成する繊維は、弾性繊維を損傷し元の位置に回復しないような、又は弾性繊維が縫目から外れる可能性のある、様々な異なる摩擦力を受ける。これは、伸縮性および非伸縮性の糸を形成する弾性繊維と非弾性繊維の両方を含む布が使用されるときにも生じ、そして特に問題である。
エラストマー繊維及び非弾性繊維は、異なる摩擦係数及び異なる弾性率を有する。この例では、一部の弾性繊維は伸張されて強い回復能力を有するが、他の繊維は強い回復能力を有していないため、応力下で縫目の滑りが発生する。繊維の一部は、縫目や衣服から外れる。
さらに、衣服内の縫目の位置に応じて、縫目の一部は、縫目の他の部分よりも引き伸ばされる可能性があり、縫目自体に沿ったこの不一致は、深刻な滑りの問題、及び縫目が長さ方向に沿って変化する問題を引き起こす可能性がある。
【0006】
そのために、時間が経過しても欠陥のない縫目を有する、伸縮性のある布地を提供することが望ましい。
【0007】
この問題に対処するための従来の試みの1つが、特許文献1に開示されている。すなわち、2枚の布地が溶接によって互いに接合され、ラミネート細長片が、接着により、溶接された縫目に接合されている。
【0008】
特許文献2は、2枚の布地の間に形成された防水性の縫目を開示している。しかし、特許文献2では、布地の繊維は、布地自体がすでに所定の位置でラミネートシートに固定され、上記滑りなどの問題を受けにくいラミネート布地である。
後で述べるように、特許文献3には、糸を形成するための様々な方法が、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】US 2008/0196136 A1
【文献】WO2004/091902 A1(特表2006-523556 A)
【文献】US2013/0260129 A1(特表2013-544983 A)
【発明の概要】
【0010】
本発明は、前述の問題を解決し、デニム、伸縮性のあるデニム、又は弾性繊維及び非弾性繊維を含む他の布地等の布地に、縫目を形成しシールする方法を提供する。
本発明はまた、デニムや他の布地に、裾を形成しシールする方法に関する。
本発明はまた、そのようにして形成された縫目や裾に関する。
【0011】
本発明の1つの目的は、請求項1に記載された製法に関係している。本発明の他の目的は、他の請求項に記載された衣服に関係している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の幾つかの実施例において、縫目を形成する方法は、弾性繊維を含む複数の繊維を含んだ、織布を供給するステップを含んでいる。これら複数の繊維は、弾性素材及び天然素材を含んでいても良い。
この織布は、非弾性ヤーン、弾性ヤーン、及びエラストマーコア及び非弾性シースカバーを含むヤーンを含んでいても良い。この織布は、ラミネートされた布地ではない。すなわち、これらの弾性繊維、非弾性繊維は、ラミネートシートに接着されておらず、互いに自由に動きうるものである。他の実施例においては、他の織布を使用しても良い。
布地は、単層布でも良い、すなわち、単層の材料からなっていても良い。単層の材料からなる布地は、コーティングが無く、ラミネートされていなくても良い。
【0013】
縫目を形成する方法は、縫目を形成するために、織布の1片の縁を第2の布地片に固定するステップも提供する。布地の第3の片が、できれば裏当てシートを有している接着剤にラミネートされ、その後、この布地の第3の片をカットし、縁をシールすることにより、布地の第3の細長片が形成される。本発明の幾つかの実施例において、これら3つの布地の部片は、同じ材料である。
本発明は、さらに、裏当てシートがある場合には、これを細長片から除去し、そして、細長片を縫目に沿って載置し、圧力や熱を用いてこの細長片を縫目に貼り付け、弾性繊維が布地の縫目から滑るのを防ぐ、方法も提供する。
【0014】
本発明の他の実施例によれば、衣服又は布地に裾が形成され、この裾の上にラミネート接着剤を有する布地の細長片が載置され、次いでつなぎ合わされ、これにより、弾性繊維が裾から離れて滑るのを防止する。
使用に適した接着剤は、布地及びヤーンの弾性繊維の両方に接着するのに十分な程度まで、縫目又は裾を形成する布地内に浸透できるものである。結果として、弾性繊維が所定の位置に保持され、滑りは生じない。
適切な接着剤の例は、ホットメルト接着剤(HMA)や、これも感圧接着剤(HMPSA)であるホットメルト接着剤である。
一つの実施例では、接着剤は両面接着剤を有する細長片の形態である。この細長片は、細長片状の布地に付着させ、続いて縫目に付着させても良い。接着剤及び接着細長片は、当技術分野において公知のものである。
【0015】
この方法によれば、縫目や裾まで延びる布地の弾性繊維が互いに接着され、及び/又は他の繊維に接着され、縫目又は裾から引き離されることがないのを確実にする、シールされた縫目や裾を製造できる利点がある。
【0016】
本発明によれば、複数の布地片を互いにつなぎ合わせることによってシールされた縫目やシールされた裾が形成された、様々な衣服も開示される。このようにして製造された衣服は、縫目や裾に欠陥がないように形成される利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の様々な実施例における、布地に縫目を形成しシールする方法を示す、フローチャートである。
【
図2】本発明の様々な実施例において、縫目を形成するのに使用される、布地のパネルの平面図である。
【
図3】本発明の様々な実施例において、布地の縫目をつなぎ合わせる、接着剤がラミネートされた布地片を示す断面図である。
【
図4】本発明の様々な実施例において、縫目を形成しシールする過程の1ステップを概略的に示す断面図である。
【
図5】本発明の様々な実施例において、縫目を形成しシールする過程の1ステップを概略的に示す断面図である。
【
図6】本発明の様々な実施例において、縫目を形成しシールする過程の1ステップを概略的に示す断面図である。
【
図7】本発明の様々な実施例によって、裾を形成しシールする過程の1ステップを概略的に示す断面図である。
【
図8】本発明の様々な実施例における、シールされた縫目を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を、読むことにより最もよく理解できる。図面の様々な特徴は、必ずしも一定の縮尺で表示されてはいないのは、慣習どおりである。様々な特徴は、むしろ、それらをより明確にするために、任意に拡大又は縮小して表示される場合がある。明細書及び図面全体を通して、同じ数字は同じ特徴を示している。
【0019】
本発明は、布地や衣服において、縫目や裾を形成し、シールするための方法に関する。本発明は、弾性繊維と非弾性繊維の両方を含む伸縮性デニム布のような織布の分野において、特定の用途を見出している。しかし、本発明は、あらゆる種類の布又は衣服について、縫目や裾を形成し、それをシールすることに適用可能である。
【0020】
図1は、本発明の様々な実施例による方法の概観を説明するフローチャートである。方法と布地のさらなる詳細については、後の図に示している。
図1を参照すると、ステップ1000において、布地が供給される。この布地は、非弾性繊維を含む。幾つかの例では、この布地は、非弾性繊維と弾性繊維とを含んでいる。他の例では、他の布地が使用されても良い。この方法は、布地に縫目又は裾を形成することを提供する。
ステップ1002では、2枚の布地のパネルを縫い合わせて、縫目を形成する。幾つかの実施例では、2枚のパネルあるいは数個の同じ布地素材が互いにつながれる。
ステップ1004では、別の布地片に接着剤をラミネートする。この接着剤は裏あて片を含んでいる。
ステップ1006では、ラミネートされた布地片が細長い細長片に切断される。
ステップ1008では、ラミネートされた布地片から裏あて細長片が除去され、ステップ1010では、この細長片が縫目の上に載置される。
ステップ1012では、熱と圧力を使用して、布地の細長片を縫目に固定することによって縫目をシールする。
【0021】
他の実施例によれば、ステップ1002で布地の2枚のパネルをつなぐ代りに、一枚の布地の縁に裾が形成され、ステップ1006で形成された細長片を、ステップ1010で縫目の上に載置し、ステップ1012で縫目をシールする。
【0022】
本発明による、縫目又は裾のいずれかの実施例によれば、縫目又は裾から引き離される繊維に対して耐性があり、他の欠陥に対しても耐性がある、シールされた縫目や裾が提供される利点がある。
【0023】
図2は、本発明の様々な態様によって使用される、布地の平面図を示している。布地2は、伸縮性のある布地でも良く、また、布地2は本発明の様々な態様によって織られた織布でも良い。布地2は、どのようなタイプの伸縮性のある布地であっても良い。すなわち、当該技術分野で知られた伸縮性のあるデニムであれば良い。布地2は、好適な種々の実施例に基づく伸縮性のあるデニムでも良い。布地2は、弾性材料を含んでいても良く、幾つかの実施例では、非弾性糸と弾性糸とで作られる。
【0024】
布地2は、単層の材料であってもよく、コーティングもラミネートもされていない単層の布地であっても良い。
図2に示すように、布地2は、縁4、6を含んでいる。織布2は、経糸10と緯糸12の両方向に延びる繊維8を含んでいる。
【0025】
繊維8は、様々な繊維を意味しており、複数の繊維を含む様々な糸に形成された繊維、又は、単一の布地タイプから形成された糸を含んでいても良い。
幾つかの実施例では、布地2は、非弾性や弾性の繊維を含んでいる織布でも良く、伸縮性のあるデニムでも良い。
図2は、一般に、互いに直交する経糸10及び緯糸12方向に伸びる、繊維8を示している。しかし、他の実施例では、他の配列を使用しても良い。
布地2は、経糸10及び緯糸12の少なくとも1つに弾性繊維を含んでおり、伸縮自在である。つまり、経糸10及び緯糸12の少なくとも1つの方向において、様々な負荷に応じて伸長可能である。
【0026】
さらに、
図2は、縁4、6が一般的に繊維8の方向、従って、経糸10及び緯糸12に対して直角であることを示している。他の実施例として、他の角度からなる、他の配列を使用しても良い。言いかえれば、縁4や縁6を形成するために、布地2は、繊維8の経糸10及び緯糸1の方向に関して、様々な角度でカットしても良い。
従って、縁4や縁6は、経糸10及び緯糸12の方向の少なくとも1つに沿って伸びる繊維8に対して、常に平行である必要はない。従って、繊維8は、縁4や縁6で、露出して終了する端部を含んでいる。
本発明は、布地2の縁4又は縁6のような、布地パネルに縁が形成されるとき、その縁と直交又は他の角度で交差する繊維8が、縫目又は裾が形成されるときにその縁から引き戻されないようにする方法と技術を提供する。これは、特に、布地2が、コーティングされておらず、ラミネートされた層に貼り合わされてもいない、コーティング無し非ラミネートの単層の布地であり、そのため、引き戻しの影響を受けやすい場合に、効果的である。そのような実施例においても、本発明は、シールされた縫目や裾は、その縫目や裾から引き離される繊維に対して耐性があり、他の欠陥にも耐性があるという効果をもたらす。
【0027】
経糸10方向に伸びる繊維8や緯糸12方向に伸びる繊維8は、非弾性及び弾性の両方の繊維を含んでいても良い。幾つかの実施例では、非弾性及び弾性両方の繊維が、経糸10及び緯糸12方向の双方に伸びている。
エラストマー材料は、モノフィラメント及び/又は短繊維内、すなわち、それらを撚って糸を形成する、原綿、ウール、麻、亜麻などの天然繊維内にキャストしても良い。言いかえれば、エラストマー材料は、そのまま、あるいは糸の中の他の繊維と一緒に利用しても良い。
幾つかの実施例では、繊維8は糸として形成され、ある実施例では、前記糸は弾性糸であり、1つ以上の弾性繊維からなる弾性コアと、このコアを覆う非弾性のシースを含んでいる。この非弾性のシースは、綿や他の天然繊維からなり、幾つかの実施例では、非弾性のシースは合成材料で形成しても良い。
コアスパン及びリングスパン技術は、繊維産業において知られており広く使用されている方法である。そして、1つの糸部材を形成するために異なる特徴を有する2つ以上の繊維を組み合わせることを含む。繊維を紡糸して糸を製造するための、これら及び他の様々な方法を使用することができる。
特許文献3に、弾性特性を有する1つ又は複数の繊維を含む伸縮性のあるコアを絶縁シース被覆と組み合わせることによって糸を形成するための様々な方法が、開示されている。特許文献3の内容は、その全体を記載されている通りに参照することにより、本明細書に組み込まれる。
【0028】
伸縮性のあるコア糸の幾つかの実施例では、コアは、1つ又は複数の繊維の束を含んでおり、それらの一部又は全体が、弾性体である。コアを生成する繊維は、ねじり、混在、又は共押出により、一緒に接続される。繊維が織り込まれる幾つかの実施例では、それらは種々の程度に織り込まれる。エラストマーコアは、1つ以上のコア繊維によってもたらされる優れた回復特性及び弾力特性によって特徴付けられる。
【0029】
弾性糸は、伸縮性のあるデニムを含む種々のタイプの衣服に使用される、伸縮性のある織布を製造するのに使用される。種々の実施例において、弾性繊維は、同じ又は異なる材料で形成され、同じ又は異なる弾力性の度合いを有する。幾つかの実施例において、繊維の1つは、その元の長さの400%の長さに伸張でき、他の繊維は、弾力性の度合いが低く、その元の長さの約20%まで伸張可能である。
幾つかの実施例において、弾性繊維は、熱可塑性プラスチックである。幾つかの実施例において、熱可塑性プラスチックと、非常に優れた弾力性を提供する柔らかい構造物セグメントと堅い構造物セグメントがうまく結合された構造を有する、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が使用される。纏めてエラスタンと呼ばれる、様々な弾性ポリウレタン材料を使用することもできる。そのような実施例では、ガラス転移温度Tgの低いポリエーテルをベースにした前記2つのセグメントが有利である。
他の種々の実施例において、繊維の形で又は糸のコア繊維として繊維8を形成する弾性繊維を形成するために、他のエラストマー材料と他の配列が使用される。
【0030】
T-400ライクラ(lycra)などの市販の材料(ポリウレタン系コポリマー)と、他のポリウレタン系共重合体、及び又は、PBT系(ポリブチレンテレフタレート)ポリマー及び/又はコポリマー材料は、様々な実施例において、エラストマー材料として使用することができる。
市販の使用できるエラストマー繊維の例としては、以下のものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
Dowxla、Dorlastan(バイエル,ドイツ)、ライクラ(デュポン,米国)、Clerrspan(Globe Mfg. Co.,米国)、Glospan(Globe Mfg. Co.,米国)、Spandaven(Gomelast C.A,ベネズエラ)、Rocia(旭化成工業,日本)、フジボウスパンデックス(富士スピニング、日本)、カネボウLooBell 15(カネボウ株式会社,日本)、Spantel(クラレ,日本)、Mobilon(Nisshinbo Industries)、オペロン(東レ-デュポン株式会社)、エスパ(東洋紡)、Acelan(Teakwang Industries)、Texlon(Tongkook Synthetic)、Toplon(Hyosung)、Yantai (Yantai Spandex)、Linel、Linetex (Fillatice Spa)。
一般的に良好な弾性特性及び高い伸縮性を提供するために、上記の繊維や他の繊維を選択しても良い。ポリオレフィン繊維も使用することができる。本発明による弾性繊維としては、さらに他の種類の市販の弾性繊維、及び開発中の他の弾性繊維を使用しても良い。
【0031】
それぞれの繊維は、布地を形成するために様々な方法で互いに接続しても良い。様々な実施例では、複数の弾性繊維を、人造繊維と混ぜ合わせる、すなわち、撚り合わせた単層又は2層の弾性繊維を人造繊維と混ぜ合わせたり、撚り合わせた単層又は2層の弾性繊維を天然繊維と混ぜ合わせたり、あるいは、エアジェットテクスチャード加工(AJT)されたものと人造繊維とを混ぜ合わせることができる。幾つかの実施例では、1つ又は複数の弾性繊維を人造繊維と同時に押出しする、すなわち共押出しすることができる。
【0032】
上記の様々な実施例では、エラストマーコア及び非弾性シースカバーを有する糸の実施例、ならびに非弾性及び弾性繊維の両方を含む複数の繊維が使用される他の実施例を含む、様々な繊維の混合物を使用することができる。
幾つかの実施例では、経糸10の方向、あるいは緯糸12の方向に伸びる繊維、あるいは両方向に伸びる繊維は、弾性繊維、及び綿のような非弾性の天然繊維を含んでいる。
非弾性繊維はまた、ウール、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、及び、その他の、糸に自然な外観及び自然な感触を提供する材料の繊維でも良い。その他の天然繊維や合成材料、例えば、あらゆる種類の再生セルロース、大麻、亜麻、ジュート、ケナフ、サイザル、バナナ、アガベ、竹、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ(アクリロニトリル)、ポリ(ラクチド)、又は、それらの混合物が、他の実施例として使用されても良い。
1つの有利な具体化として、デニム布地を形成するために綿短繊維を使用しても良い。前記した材料の様々な組み合わせを、繊維に使用しても良い。
【0033】
幾つかの実施例では、布地2は、弾性・非弾性の繊維材料を含んでいる織布であり、非弾性の繊維材料が布地2の主要部を構成し、この非弾性の繊維材料は、弾性の芯が、天然の材料からなる非弾性のシースで囲まれている糸の実施例を含んでいる。
幾つかの実施例では、布地2は、弾性糸と単一の材料からなる天然糸を含んでいる、織られた布地である。幾つかの実施例では、布地は、非弾性の繊維で形成された糸を含んでいる。幾つかの実施例では、布地2は、少なくとも、約65%の天然糸を含んでいる織布である。ある実施例では、その布地は、65%の綿と35%の様々な弾性繊維を含んでいる。ある実施例では、布地は、65%の綿と35%のライクラ又は他の弾性ポリウレタンを含んでいる。
他の実施例では、布地2は、弾性材料が布地の5~50%を占める織布材である。ある実施例では、布地2は、弾性材料が布地の5~50%を形成し、綿又は他の天然の非弾性繊維が残りの割合を形成している、単一層の織布材料である。
【0034】
この織布の素材は、快適な質感のある外観や感触と共に、伸縮性の利点をもたらす。それ故、布地2は、本発明による縫目でない場合、繊維の縫目、特に弾性繊維の縫目からの滑りや引き戻しを受けやすい。
幾つかの実施例において、繊維2は、他の層又は薄膜を含まない単一層の布地である。すなわち、弾性繊維と非弾性繊維の両方がコーティングやラミネートにより接着されているため、その動きに対して互いに他の動きの影響を受けない、すなわち、滑りを生じない。本発明で使用する繊維2は、コーティングやラミネートの無い単一層の繊維であり、その弾性繊維や非弾性繊維は、もし、本発明による縫目が無ければ、互いに動いたり滑ったりするものである。
【0035】
本発明の幾つかの実施例において、布地2の布地片又はパネルが互いに縫い合わされて縫目が形成され、様々な衣服や他の製品が製造される。伸縮性のある布地で形成された衣服には、様々な種類のシャツ、ズボン、タイツ、キャップ、ショーツ、及び様々な他の種類のトレーニングアパレル及び他のファッションアパレルが含まれる。伸縮性のある布地はまた、スリーブ、圧縮靴下、又は着用者の身体上の様々な位置で着用される様々なバンド又はアイテムを形成するためにも使用される。様々な他の最終製品が、数個の布地2の部片を縫い合わせて形成される。
【0036】
本発明の実施例によれば、2個の布地の部片がつなぎ合わされて縫目が形成される。幾つかの実施例において、
図2に示した布地2のような2個の布地の部片が、つなぎ合わされる。幾つかの実施例において、
図2に示した布地2の1片は、縁4又は縁6に沿って、同一又は類似の布地の1片に縫い合わされて、縫目が形成される。
幾つかの実施例において、
図2に示した布地2は、つなぎ合わされる複数の部分に切断され、1つの衣服を作るために様々な配置で互いに縫い合わせてもよく、これらの部分は互いにつなぎ合わされる。幾つかの実施例において、
図2に示した布地2は、衣服を形成するために様々な配置で互いにつなぎ合わされることになる複数の部品に切断されても良く、そして、これらの部品は互いに縫い合わされる。
他の実施例において、タイプの異なる2枚の布地が互いに縫い合わされて縫目が形成され、一方又は両方の布地は、織布2のように弾性繊維と非弾性繊維の両方を有する織布である。
以下、
図4~
図6を参照して、種々のアレンジメントを説明する。
【0037】
図3は、本発明の実施例に基づく、ラミネートされた布地の細長片の断面図である。布地の細長片22は、いかなるタイプの布地でも良いが、1つの望ましい実施例は、布地の細長片22の布地18が、シールする布地と同一又は同様なものであることである。従って、
図2の布地2から形成された縫目をシールするために、布地の細長片22が使用される幾つかの実施例において、布地18の材料は布地2と同じもので良い。
幾つかの実施例では、布地の大きなサンプルが、互いにつなぎ合わされるパネルに裁断され、さらに、他の布地片18にもカットされ、この布地片に接着剤が塗布されて、パネルに形成された縫目をシールするのに使用される布地の細長片22が形成される。
接着剤24で裏打ちされた布地片18を、次に薄い細長片に切断し、布地の細長片22を形成する。布地の細長片22に切断する前の布地は、どのような寸法でも良く、接着剤24と裏当てシート26を有している。
幾つかの実施例では、接着剤24と裏当てシート26は、布地の細長片22を形成するために、布地18にラミネートされる。しかし、他の実施例では、接着剤24を布地18に塗布するのに他の方法を用いても良い。幾つかの実施例では、接着剤テープを使用し、布地18にラミネートして貼付しても良い。
【0038】
1つの実施例として、ビーミスアソシエイツ社により提供される粘着テープ3400Nが、温度120℃~130℃、滞留時間を5~10分、圧力を約2.8~4.2バールの条件で、布地18に貼付される。
他のラミネートの例として、種々のパラメータや条件を使用できる。他の実施例では、他の適切な接着剤24が使用される。
適切な接着剤24として使用できる接着剤は、布地と糸の弾性繊維の両方に接着するのに十分な程度まで、縫目又は裾を形成する布地内に浸透することができるものでなければならない。その結果、弾性繊維は所定の位置に保持され、滑りは生じない。他の実施例において、適切な接着剤24を布地18に塗布する方法を使用しても良い。接着剤24は、プラスチック、紙、又は他の適切で典型的な材料の裏当てシート26を含んでいても良い。
【0039】
種々の実施例において、ラミネートされた布地18のサンプルを、
図3に示した布地の細長片22にカットしたものが、縫目や裾の上に載置される。
布地の細長片22を形成するために、布地、接着剤24及び裏当てシート26の複合材料からなるサンプルをカットするのに種々の方法を用いることができる。1つの実施例では、超音波縫製プロセスを使用しても良い。この超音波縫製プロセスによれば、布地の細長片22の対向する縁28に、綻びがないように、サンプルの縁を同時に切断してシールするという望ましい態様がもたらされる利点がある。他の実施例では、他の適切な切断技術が用いられる。
布地の細長片22は、この布地の細長片22がシールに使用される縫目又は裾の寸法と関連して決定される幅を有する、細長片である。幾つかの実施例では、幅30は、約3cmであるが、他の実施例では、幅30が1~10cmでも良く、あるいは、さらに他の実施例では、別の寸法としても良い。
【0040】
図4~
図7は、本発明の種々の実施例において、縫目や裾を形成してシールするためのプロセスにおける、後続のステップの異なる実施例を示している。
図4~
図6は、縫目をシールするための1つの実施例を示し、
図7は、裾をシールするための1つの実施例を示している。
図2に示した2個の布地2の部片が、
図2に示した縁4や縁6のような縁で互いに縫い合わされ、1つの縫目が形成される。布地の各部片はそれぞれ、縫目を形成するようにつながれる縁で終端する端部を有する繊維を含んでいる。
布地の各部片はそれぞれ、
図4~
図6に示したような種々の向きで、つなぎ合わされる。縫製や他の適当な手段により、縫目が形成される。種々の実施例において、種々の異なる縫い方を採用すれば良い。
【0041】
図4において、布地の各片32は、各々の縁34において、相互につなぎ合わされる。幾つかの実施例において、布地の各片32は、
図2に示した布地2のようなものであり、縁34は
図2の縁4や縁6のようなものである。
布地片32の各々は、縁34において露出して終端する繊維の端部を有している。幾つかの実施例において、2つの布地片32は、同じ布地材料である。
幾つかの実施例において、布地片32は、同じ布地のシートから切り出された部片又はパネルを表わしており、幾つかの実施例において、布地片32は、各単一層、すなわち、
コーティング無しかつラミネート無しの布地の片である。
他の実施例において、布地片32は、異なる種類の布地であり、例えば、1つ若しくは複数の布地片32は、前記布地2のような弾性・天然繊維からなる織布でも良い。織布は、単一若しくは複数種の繊維からなる非弾性糸や弾性糸を形成するように混合された繊維を含む織布でも良い。複数の布地片32は、いろいろな衣服を作るために、縫目でつなぎ合わされる。
【0042】
図4において、複数の布地片32は、基本的に、端部と端部で互いにつなぎ合わされ、縁34は縫製により縫目を形成して互いにつなぎ合わせても良い。他の実施例では、縁34を互いにつなぎ合わせるために、他の技術を採用しても良い。
【0043】
縁34の他の構成例が、
図5~
図7に示されている。幾つかの実施例において、複数の布地片32を衣服の形につなぎ合わされた布地は、縫目を形成した後に、この部分が洗濯操作を受け、他の実施例では、複数の布地片32間に形成された縫目に布地の細長片22がつながれる後まで、この洗濯操作を延期しても良い。
図4において、さらに、裏当てシート26を取り除いた後の布地の細長片22が、既に形成された縫目の上に置かれる。
図3に示した裏当てシート26を取り除き、
図4~
図7に示したような、接着剤24付の布地の細長片22を形成するために、化学的あるいは機械的な方法を含む色々の方法を用いても良い。布地の細長片22は、複数の布地片32をつなぎ合わせることで形成された縫目を跨いでいる。
【0044】
布地の細長片22は、複数の布地片32間に形成された縫目に貼り付けられる。幾つかの実施例において、布地の細長片22を縫目に貼り付けて接合するために、圧力と熱が使用され、圧力は、矢印38、40で示す方向に沿って加えられる。幾つかの実施例においては熱溶接機が用いられ、他の実施例では、フラットアイロンプレスが使用される。
他の実施例では、
図4に示したような構成の布地の縫目に対して細長片22を固定するために、矢印38、40で示す方向に熱と圧力を加えるために、他の方法が使用される。前記実施例や他の実施例では、
図4に示したような布地の縫目に対して細長片22を固定するために、約140℃~約170℃の温度を使用しても良い。幾つかの実施例では、滞留時間として20~30分、矢印38、40で示す方向への圧力として、約2.8~4.2バールが用いられる。しかし、他の実施例では、他の方法や他の圧力を採用しても良い。
【0045】
前記熱と圧力は、縁34まで伸びた繊維の各端部を互いに接着又は溶融させるようにして、細長片22を縫目に接合するために使用される。これは、種々の弾性糸や非弾性糸が用いられ縁34で終端する実施例にも適用でき、さらに、弾性コアと非弾性のシースを含む糸を含み、縁34で終端する実施例にも適用できる。
弾性コアを有する本実施例によれば、この弾性コアが溶けてそれを覆う非弾性の縫目と接合される利点があるので、応力が作用しても、これらの要素のいずれも、縫目から引き離されない。
各実施例において、各弾性糸は、それらの縁で他の繊維糸に接合され接着されているので、応力が作用しても、それらは、縫目又は裾から引き離されない。
【0046】
図5~
図7は、上記したような縫目に細長片22が接合される他の構成例を示している。
図5において、複数の布地片32の各々の端部34は、オーバーラップ領域36で互いにオーバーラップし、縫目を形成する。オーバーラップ端部34は、縫製や他の種々の技術によって互いにつなぎ合わせれば良い。端部34をつなぎ合わせて縫目が形成された後、前記のように、布地の細長片22が縫目に貼られる。細長片22の幅30は、布地の細長片22がオーバーラップ領域36を跨ぎ、それにより、両布地片32間に縫目が形成されるようにして、選定される。
【0047】
図6は、2個の布地片32間に形成された縫目をシールするのに、布地の細長片22が使用される他の例を示している。
図6において、布地片32の縁部分は、2つの縁34が互いに面しないように、縫ってある。
図6の実施例において、2つの端面44が、図示のように、互いに接触し1つの縫目を形成するように、縫製又は他の適切な手段により結合されている。2個の布地片32は、まず、各々の縁34付近が縫い合わされ、それから、これらの縁34を折りたたむことにより端面44が形成される。あるいは、2個の布地片32を各々端面44が形成されるように折りたたみ、それから、互いに縫い合わせても良い。
図6の実施例では、布地の細長片22の幅30は、2個の布地片32の折りたたまれた縁34を超えて伸び、それにより、この幅は折りたたまれた縁34を含む縫目を跨いでいるという特徴がある。
【0048】
図4~
図6の各実施例において、布地の細長片22は縫目を跨いでおり、それにより、繊維が縫目から引き離される損傷、すなわち、縫目を形成するためにつなぎ合わされた
コーティング無しかつラミネート無しの両側の単一層の布地片が、引き離されることを、防止する。
【0049】
図4~
図6の各実施例に記載の縫目の構成に加えて、縫目を形成するためにつなぎ合わされた2個の布地片32の各縁34は、
図4~
図6に示した構成以外の色々の構成に変更できる。
【0050】
図7は、衣服の縁、例えば、パンツの脚の下端等に、裾が形成された実施例を示している。
図7において、衣服の外側の縁50に形成された裾は、布地片32の縁34を覆うように、布地の細長片22を裾に接合することによって、シールされる。この実施例によれば、布地片32は、外側の縁50に裾を形成するように、折りたたまれ、縫われる。布地の細長片22は、その後、上記したような技術や方法を用いて、布地片32の縁34を覆うように、裾に接合される。
【0051】
図8は、
図4に示した方法や構成により、布地の細長片22が2個の布地片32に張り付けられた後の、
図4の実施例を示している。
幾つかの実施例では、布地の細長片22を縫目に接合させるための熱や圧力により、各布地片32において、接着剤24が、部分的に浸透するか吸収される。
縁34に伸びる繊維の端部分、特に、布地の細長片22で覆われた繊維の部分は、布地の細長片22を布地に接合するのに使用される接着剤と高い温度とにより、一緒に接着又は溶けた状態となる。
これは、弾性繊維が、シースカバーを含む非弾性繊維と、接着及び/又は融着するようになる利点を含んでおり、それにより、衣服を着用する際に生じる応力の作用下でも、上述のように形成された縫目からこれらの要素のいずれもが引き離されることはない。
言い換えると、各布地片32を形成する繊維は、本発明の効果により、縫目からの引き戻しに対して抵抗する、すなわち、縫目から方向52、54への引き戻しに対して抵抗する機能を有する。
【0052】
図示はしていないけれども、
図5~
図7の各実施例において、各図に模式的に示したプロセスの態様は、継目や裾で布地片の端部の繊維を接着しそして溶融した結果として、布地の細長片22を継目または裾に接着させる、すなわち固定させる。これにより、布地片が縫目や裾をシールすることで裾からの滑りを防いでいる。このように、引き戻しが防止されるので、各布地片32の弾性糸と非弾性糸の双方が互いに固定位置に留まる。
【0053】
本発明の種々の実施例によれば、上記の通り、縫目や裾が形成されるように複数の布地片を結合することで、種々の衣服が製造される。伸縮性のある布地から作られる衣服は、本発明の種々の実施例に基づく、伸縮性のあるデニム布地を含んでいる。
【0054】
上記したデニムや他の布地に加えて、ベース布地、すなわち、布地片32や布地の細長片22を形成するのに用いられる布地18は、未染色の生地を含んでいても良い。また、染色された全てのタイプの布地は、インディゴ、反応的、顔料、及び硫黄を染み込ませた、布地を含んでいる。
さらに、伸縮性のある布地の衣服を作るのに使用される布地片32や布地18として、次のような繊維を含む布地を使用しても良い:
コットン:及び、ビスコース、レーヨン、モーダル、キュプロ(例えば、テンセルのようなブランドの繊維)など、さまざまなセルロース繊維を混ぜたコットン。
さらに、布地片32や布地18に使用される布地には、コットンや、リネン、ウール、カシミヤのような天然繊維、及び、コットンと、ポリエステル、PBT繊維、ナイロン6.0、ナイロン6.6のような人造繊維との混紡。(ナイロン6.6は、コーデュラ、t400などのブランドのある繊維を含むが、これらに限定されない)。
【0055】
さらに、布地には、主成分としての人造繊維や、ポリエステルやナイロンなどのフィラメント、織布としての、平織りの布地、ツイル、キャンバス(パナマ)、サテン、開示された繊維を用いて製造されたドビー型織布が含まれる。
さらに、布地には、ここで開示された種々の繊維を含む種々のタイプのニット布地や、エラスタンで、経糸方向又は緯糸方向、又は経糸方向と緯糸方向の両方に延伸する伸縮性のある織布が含まれる。
さらに、布地片32や布地18に使用される布地や、種々の衣服を製造する布地には、エラスタン、PBT繊維、t400、ポリエステルのような種々のエラストマー繊維を含む、伸縮性のあるニット布地が含まれる。
【0056】
種々の実施例において、布地片32や布地の細長片22を形成するのに用いられる布地18は、1オンス/平方ヤード(33.906グラム/平方メートル)から14オンス/平方ヤード(474グラム/平方メートル)の重量範囲のものが含まれる。しかし、これは、一例であり、他の種々の重量を使用しても良い。
【0057】
様々な実施例によれば、複数の布地のパネルが互いにつなぎ合わされて、複数の縫目や裾を含む衣服を形成する。
様々な実施例において、伸縮性布地で形成された衣類は、様々な種類のジーンズ、シャツ、ズボン、タイツ、キャップ、ショートパンツ、ならびに様々な他の種類のトレーニング及びファッション衣料を含む。
伸縮性織布はまた、スリーブ、圧縮靴下、又は着用者の身体上の様々な場所に着用される様々なバンドもしくはアイテムを形成するために使用され得る。
布地2の部片を互いに接合することによって、他の様々な最終製品を形成することができる。
【0058】
以上の記載は、本発明の実施例の原理を単に例示するものである。従って、当業者であれば、本明細書では明示的に説明も図示もしていないが本発明の原理を具体化し、その精神と範囲内に含まれる様々な構成を考案することができるだろう。
さらに、本明細書に列挙される全ての例及び条件付き言語は、主に教育学的な目的のみであり、本発明の原理及び本発明者らが技術を推進するために寄与する概念の理解を助けるために明示的に意図されており、そのような具体的に列挙された例や条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。
【0059】
さらに、本発明の原理、態様、及び実施例、ならびにその特定の例を列挙する本明細書中の全ての記述は、その構造的及び機能的等価物の両方を包含することを意図している。
さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物及び将来開発される均等物、すなわち構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことも意図されている。
【0060】
各実施例の説明は、添付の図面に関連して読まれることを意図しており、これらの図は、明細書全体の一部と見なされるべきである。
本明細書では、「下」、「上」、「水平」、「垂直」、「上に」、「下に」、「上へ」、「下へ」、「トップ」、「底」などの相対的用語その派生語(例えば、「水平に」、「下方に」、「上方に」など)は、その時説明されているような、又は考察中の図面に示されているような向きを指すと解釈されるべきである。
これらの相対的な用語は説明の便宜上のものであり、装置が特定の向きに構成又は操作されることを必要としない。
「接続された」や「相互接続された」などの取り付け、付着などに関する用語は、特に明記しない限り、構造が直接又は間接的に介在構造を介して互いに固定又は付着された関係、ならびに可動又は固定の両方の取り付け関係を指す。
【0061】
本発明を実施例に関して説明してきたが、それに限定されない。
むしろ、添付の特許請求の範囲は、本発明の等価物の範囲及び見通せる範囲から逸脱することなく、当業者によってなされ得る本発明の他の変形形態及び実施例を含むように広く解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0062】
2 布地、織布
4 縁
6 縁
8 繊維
10 経糸
12 緯糸
18 布地
22 布地の細長片
24 接着剤
26 裏当てシート
28 縁
30 細長片の幅
32 布地片
34 縁
36 オーバーラップ領域
38 方向
40 方向
44 端面
50 外側の縁
52 方向
54 方向