(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】水系耐食コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 127/08 20060101AFI20220425BHJP
C09D 127/06 20060101ALI20220425BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20220425BHJP
C09D 133/02 20060101ALI20220425BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220425BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220425BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220425BHJP
【FI】
C09D127/08
C09D127/06
C09D133/06
C09D133/02
C09D7/61
C09D7/63
C09D7/65
(21)【出願番号】P 2018548345
(86)(22)【出願日】2017-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2017056033
(87)【国際公開番号】W WO2017157963
(87)【国際公開日】2017-09-21
【審査請求日】2020-02-14
(32)【優先日】2016-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パン, ヤンゾン
(72)【発明者】
【氏名】シャポト, アグネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルヴェッケン, イヴ
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-145340(JP,A)
【文献】特開2010-131897(JP,A)
【文献】特開昭58-13665(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181593(WO,A1)
【文献】特開昭59-207946(JP,A)
【文献】特開昭56-122874(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第1558411(GB,A)
【文献】特開昭53-78293(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105062245(CN,A)
【文献】国際公開第2005/080515(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性コーティング組成物であって、
- (i)塩化ビニリデン(VDC)、(ii)塩化ビニル(VC)、(iii)アルキル基中に1~12個の炭素原子を有する1種又は複数のアルキル(メタ)アクリレート[モノマー(MA)]、及び(iv)1種又は複数の脂肪族α-β不飽和カルボン酸[モノマー(AA)]由来の繰り返し単位から本質的になるコポリマーであって、モノマー(AA)由来の繰り返し単位の割合は、前記コポリマーの総重量に対して少なくとも1.0重量%のものである、コポリマー[コポリマー(A)]の水性ラテックスであって、
(A)前記コポリマー(A)は、約120℃で2時間にわたる熱処理後の前記水性ラテックスの固体残留物の合計塩化物含有量が、前記コポリマー(A)の総重量に対して1000ppm未満のものであるように、脱塩化水素化に対して安定であり、
(B)前記コポリマー(A)は、(j)60℃で48時間にわたる加熱を含む熱処理後
の結晶化度(CI)対(jj
)熱処理前
の結晶化度の比率(CI
熱処理後/CI
熱処理前)が1.15未満であるように、加熱時にいかなる有意な結晶化も生じない、水性ラテックスと、
- アルカリ土類金属酸化物で修飾された(ポリ)リン酸のアルミニウム塩を含む少なくとも1種の耐食顔料[顔料(P)]と、
- 少なくとも一種の非イオン性界面活性剤[界面活性剤(NS)]と、
- 顔料(P)とフィラー(I)とを網羅する全体の顔料体積濃度(PVC)が、乾燥されたコーティング組成物に対して決定された場合に20~40体積%に含まれるような量の、顔料(P)と異なる少なくとも1種の無機フィラー[フィラー(I)]と
を含む水性コーティング組成物。
【請求項2】
コポリマー(A)中、前記コポリマーの総重量に対して、
(i)VDC由来の繰り返し単位の量は、50.0~90.0重量%のものであり、
(ii)VC由来の繰り返し単位の量は、5.0~30.0重量%のものであり、
(iii)モノマー(MA)由来の繰り返し単位の量は、2.0~25.0重量%のものであり、
(iv)モノマー(AA)由来の繰り返し単位の量は、1.0~3.0重量%のものである、請求項1に記載の水性コーティング組成物。
【請求項3】
コポリマー(A)中、前記コポリマーの総重量に対して、モノマー(AA)由来の繰り返し単位の量は、1.2~2.5重量%のものである、請求項2に記載の水性コーティング組成物。
【請求項4】
モノマー(MA)は、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシルからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項5】
モノマー(AA)は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸の中から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項6】
顔料(P)は、アルカリ土類金属酸化物で修飾されたトリポリリン酸二水素アルミニウムリン酸塩、メタリン酸アルミニウムからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項7】
水性コーティング組成物の総重量に対して1重量%以下のZnを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤(NS)は、芳香族基を含まないものの中から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項9】
前記フィラー(I)は、平板形状の粒子及び/又は非平板形状(針状、楕円形、円形、球形、不規則な形状、又はこれらの組み合わせ)の粒子を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物。
【請求項10】
平板形状のフィラーは、陶土、マイカ、タルク、これらの組み合わせなどの粘土の1種又は複数を含む、請求項9に記載の水性コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物を製造する方法であって、
(i)前記コポリマー(A)の
水性ラテックスが残される一方、
顔料(P)、界面活性剤(NS)及びフィラー(I)が水性担体中で均一になるまで組み合わされ且つ混合される工程、
(ii)その後、前記残された
水性ラテックスが混合物に添加されて均一になるまで更に混合される工程
を含む方法。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項に記載の水性コーティング組成物を使用することを含む、基材をコーティングする方法。
【請求項13】
前記基材は、建物の要素、貨物コンテナ、床材料、壁、家具、自動車の構成要素、積層体、装置の構成要素、電気器具を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
基材材料は、金属、金属合金、金属間組成物、金属含有複合材料を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記水性コーティング組成物を基材表面の少なくとも一部に塗布して、濡れた状態のコーティングを形成することと、前記濡れた状態のコーティングを乾燥させて、乾燥されたコーティングを得ることとを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記水性コーティング組成物は、刷毛塗り、噴霧、スピンコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬、及びグラビアコーティングからなる群から選択される手法を使用して前記基材に塗布される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年3月18日出願の欧州特許出願公開第16305299.6号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は、水性コーティング組成物と、基材及び特に金属含有基材上に保護コーティングを形成するために使用される方法とに関する。より詳しくは、本発明は、極めて優れた仕上がり及び腐食からの保護を与える、大きいコーティング厚で金属に直塗りコーティングとして塗布され得る水性コーティング組成物を伴うコーティング組成物、方法、及びコーティングシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、腐食又は錆からの鉄系金属の保護において、基材の保護コーティングで使用するための水性又は水系コーティング組成物は周知である。
【0004】
保護コーティング組成物の重要な潜在的用途は、貯蔵タンク、大きい配管の構成要素、建築要素(橋の部材、建物の要素)、及び特に需要の多い使用分野である一貫輸送貨物のために使用されるコンテナなど、非常に大きいサイズの構造体へのこれらの利用であることから、特に有利であるものは、周囲温度より大幅に高い温度での硬化/固化のための「焼成」時間を全く必要としない組成物である。
【0005】
一貫輸送貨物コンテナ(貨物コンテナ又は輸送コンテナとも呼ばれる)は、国間などの場所間で製品及び原材料を移動させるための再利用可能な輸送及び貯蔵ユニットである。一貫輸送貨物コンテナは、海上輸送、貨物電車輸送、及び貨物トラック輸送間などの一貫輸送を容易にするために標準化されている。
【0006】
貨物コンテナは、その寿命中に過酷な腐食環境を経験する。海上輸送される場合、コンテナは、塩水の腐食作用に曝される。自然に曝される場合、コンテナは、風、太陽、霰、雨、砂、熱等に耐えなければならない。太陽に曝されたコンテナは、80℃又は更により高い温度へと焼かれる場合がある。
【0007】
したがって、貨物コンテナは、合理的な寿命にわたり、コンテナがこの曝露に耐えることができるように製造されなければならない。1つの戦略として、コンテナは、ステンレス鋼、耐候性鋼(耐候性鋼であるCOR-TENブランドの鋼材としても知られる)などの耐食性材料から製造され得る。そのような耐食性材料から製造された場合でも、一般的には、劣化からの更なる保護として、コンテナ上に耐久性のある耐摩耗性且つ耐食性のコーティングを更に付与することが依然として必要とされる。
【0008】
歴史的には、多くの提案されている水系システムは、適用可能な性能の要求及び/又は基準を満足することができなかったため、輸送コンテナの保護のために、ほとんどは溶剤系のコーティングシステムが使用されてきた。特に、コーティングの塗布された膜がより長期間濡れたままであること及び/又は均一に乾燥しないことから、水性コーティングは、多様な湿度条件で塗布するのが困難であり、また一般的に、これは、各塗布工程によって達成し得る最大のコーティング厚に限定され、その結果、長い中間の乾燥/一体化工程を要する複数回の塗布を必要とする。
【0009】
この枠組み内において、国際公開第2007/079757号パンフレット(PHOENIX INTERNATIONAL A/S)19/07/2007は、水系プライマーと、前記プライマーを使用して、鉄又は鋼材を腐食から保護する方法とを開示している。この水系プライマーは、1種以上のアクリルモノマー及び1種以上の塩化モノマーを主成分とする1種以上のアクリルコポリマーのバインダーと、耐食顔料と、他の従来の添加剤とを含む。耐食顔料として、トリリン酸アルミニウム、リン酸バリウム、リン酸亜鉛、リンケイ酸塩、及びイオン交換顔料が挙げられている。
【0010】
特開平07145340号公報(TEIKA CORP)6/06/1995は、熱による変色に対する改善された耐性を有するコーティング膜を付与することができるコーティング組成物に関し、前記コーティング組成物は、樹脂の主成分として塩化ビニル/塩化ビニリデンコポリマーエマルション樹脂を使用し、これに、樹脂の固形分を基準として3~35重量%の、トリポリリン酸二水素アルミニウム又はメタリン酸アルミニウムと、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ土類金属化合物との(100:1)~(1:1)の重量比の混合物を添加することによって調製される。
【0011】
国際公開第2012/121760号パンフレット(VALSPAR SOURCING,INC.)13/09/2012は、様々な基材上にたるみ抵抗性の濡れた状態の層又はコーティングを形成するために使用可能である、一貫輸送貨物コンテナなどの金属含有基材の腐食からの保護のために有効な水系コーティング及び/又はコーティングシステムを提供している。バインダーは、好ましくは、ポリ塩化ビニリデン樹脂である。前記コーティング組成物中には、リンケイ酸バリウム、リンケイ酸カルシウム、チタン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、縮合リン酸カルシウム、トリリン酸アルミニウム等などの1種以上の耐食剤が組み込まれ得る。
【0012】
それにもかかわらず、先行技術の全ての手法において、耐食要件に対応するために多層コーティングアセンブリが必要であるとして教示されている。
【0013】
実際、多段階のコーティングは、前記大きい部材上に耐食コーティングを形成するプロセスの煩雑さ及び所要時間を増やすことになる。
【0014】
環境への意識の高まりに伴い、各コーティング操作での厚いコーティングの塗布によって貨物コンテナ又は他の基材(例えば、鉄道車両又はトラックなどの車両)を保護するための水系コーティングシステムの使用を可能とし、その結果、塗布に要する時間及び煩雑さを減らし、場合により一回のみの塗布工程によって直ちに使用可能である、腐食から保護された部材が提供される、改良された技術の開発が強く望まれている。
【発明の概要】
【0015】
ある実施形態では、本発明は、1段階塗布により、極めて優れたコーティング仕上がり(割れなし)であり、且つ適切な防食性を有する厚いコーティング(300μm超、好ましくは400μm超)を金属基材上に形成するために使用可能な水系コーティング組成物を提供する。コーティングシステムは、一貫輸送貨物コンテナなどの金属含有基材の腐食からの保護のために特に有効である。
【0016】
本発明の水性コーティング組成物は、
- (i)塩化ビニリデン(VDC)、(ii)塩化ビニル(VC)、(iii)アルキル基中に1~12個の炭素原子を有する1種又は複数のアルキル(メタ)アクリレート[モノマー(MA)]、及び(iv)1種又は複数の脂肪族α-β不飽和カルボン酸[モノマー(AA)]由来の繰り返し単位から本質的になるコポリマーであって、モノマー(AA)由来の繰り返し単位の割合は、コポリマーの総重量に対して少なくとも1.0重量%のものである、コポリマー[コポリマー(A)]の水性ラテックスであって、
(A)前記コポリマー(A)は、約120℃で2時間にわたる熱処理後の水性ラテックスの固体残留物の合計塩化物含有量が、コポリマー(A)の総重量に対して1000ppm未満のものであるように、脱塩化水素化に対して安定であり、
(B)前記コポリマー(A)は、(j)60℃で48時間にわたる加熱を含む熱処理後のその結晶化度(CI)対(jj)そのような熱処理前のその結晶化度の比率(CI熱処理後/CI熱処理前)が1.15未満であるように、加熱時にいかなる有意な結晶化も生じない、水性ラテックスと、
- アルカリ土類金属酸化物で修飾された(ポリ)リン酸のアルミニウム塩を含む少なくとも1種の耐食顔料[顔料(P)]と、
- 少なくとも一種の非イオン性界面活性剤[界面活性剤(NS)]と、
- 顔料(P)とフィラー(I)とを網羅する全体の顔料体積濃度(PVC)が、乾燥されたコーティング組成物に対して決定された場合に20~40体積%に含まれるような量の、顔料(P)と異なる少なくとも1種の無機フィラー[フィラー(I)]と
を含む。
【0017】
本出願人は、驚くべきことには、前述のコポリマー(A)の水性ラテックスを、上述のPVCが得られるように顔料(P)、界面活性剤(NS)、フィラー(I)と組み合わせることにより、良好な仕上がり及び良好な耐食性を有する厚いコーティング層の金属表面上への塗布を促進することを可能にする、300μm以上、最大で500μmより大きい臨界亀裂膜厚を有するコーティング組成物が得られることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のコーティング組成物は水性である。すなわち、担体として水が使用される。水に加えて、本発明の水性コーティング組成物の水性担体は、水に対して少量で1種又は複数の追加的な液体の補助担体を任意選択的に含み得る。補助担体の例としては、特にブチルセルロース、アルコール(例えば、ブタノール)、アルコールエステル、グリコールエーテル、又はエステル、及びこれらの組み合わせなどの水混和性有機溶媒が挙げられる。
【0019】
コポリマー(A)は、(i)塩化ビニリデン(VDC)、(ii)塩化ビニル(VC)、(iii)アルキル基中に1~12個の炭素原子を有する1種又は複数のアルキル(メタ)アクリレート[モノマー(MA)]、及び(iv)1種又は複数の脂肪族α-β不飽和カルボン酸[モノマー(AA)]由来の繰り返し単位から本質的になり、コポリマーの総重量に対して、
(i)VDC由来の繰り返し単位の量は、50.0~90.0重量%、好ましくは65.0~85.0重量%のものであり、
(ii)VC由来の繰り返し単位の量は、5.0~30.0重量%、好ましくは7.5~25.0重量%のものであり、
(iii)モノマー(MA)由来の繰り返し単位の量は、2.0~25.0重量%、好ましくは5.0~20.0重量%のものであり、
(iv)モノマー(AA)由来の繰り返し単位の量は、1.0~3.0重量%、好ましくは1.2~2.5重量%のものである。
【0020】
コポリマー(A)は、上で列挙した繰り返し単位から本質的になる。すなわち、鎖末端、欠陥、又は他の重合された不純物のみが、前記コポリマー(A)の特性を変更しない範囲で許容され得る。
【0021】
コポリマー(A)中で使用され得る好適なモノマー(MA)の中でも、特にアクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシルを挙げることができる。好ましいモノマー(MA)は、アクリル酸2-エチルヘキシルである。
【0022】
モノマー(AA)は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びシトラコン酸の中から選択され得る。それにもかかわらず、通常、アクリル酸が好ましいことが理解される。
【0023】
コポリマー(A)は、公知の方法に従って水性乳化重合法によって調製され得る。
【0024】
本明細書で定義される結晶化度又はCIは、コーティングされた膜の減衰全反射赤外スペクトルを得ることによる赤外分光法を使用して決定される。結晶化度は、シリコン微結晶を用いるHarrick製のμATR Split Peaユニットと併用されるPerkin Elmer製のFTIR Spectrum One分光光度計を使用して測定され得る。同様にゲルマニウム又はダイヤモンドの結晶を使用して類似した手順を行うこともできる。この方法では、コポリマー(A)の水性ラテックスのサンプルを室温で乾燥させて、適切な支持材上に長方形の形状の少なくとも2枚の膜試験片を作製する。CI
熱処理前の決定のための膜試験片に対して、そのままIR-ATR決定を行う一方、CI
熱処理後の決定のための膜試験片に対して、60℃で48時間にわたる換気式オーブン中での熱処理が行われる。膜試験片は、膜のコポリマー(A)でコーティングされている側が結晶に対してシリコン結晶の表面に直接接触するように配置される。試験片の異なる部分で少なくとも3回繰り返して行われる。参照ビームアテニュエイターは、1150cm
-1で85%に設定され、サンプルは、950cm
-1~1150cm
-1でスキャンされる(少なくとも50スキャン)。バックグラウンドとみなされるベースラインの吸光度は、1120m
-1(A
1120)で測定され、それぞれ結晶フラクションと無関係なコポリマー(A)についての参照ピーク及び結晶相に特異的なピークの典型である1040cm
-1(A
1040)及び1070cm
-1(A
1070)でのピークが測定される。結晶化度は、次式に従ってA
1042とA
1120との差をA
1070とA
1120との差で割ることによって計算される。
決定は、0.02未満だけ異なる結果が得られるまで少なくとも2回繰り返される。上で詳述した熱処理前後の試験片についての決定により、CI
熱処理後/CI
熱処理前の比率を決定することができ、これは、コポリマー(A)がアニーリング後に結晶化する傾向を表す。値が大きいほど結晶化能力が大きい。
【0025】
前述したように、コポリマー(A)は、(j)60℃で45時間にわたる加熱を含む熱処理後のその結晶化度対(jj)そのような熱処理前のその結晶化度の比率(CI熱処理後/CI熱処理前)が1.15未満であるように、いかなる有意な結晶化も生じないことが必須である。
【0026】
通常、この比率は、1.10未満であり、更に好ましくは1.05未満である。CI熱処理後/CI熱処理前の比率が約1.0であることが見出されたコポリマー(A)の水性ラテックスで最適な結果が得られた。
【0027】
この特徴は、塗布及び乾燥段階全体(通常、例えば、約50℃などの室温よりも高い温度で行われる)中に確実にアモルファス挙動を示すために不可欠であり、これにより、割れも欠陥も有さない、厚さが大きくても滑らかで連続的な膜が確実に形成される。
【0028】
コポリマー(A)の結晶化挙動を調整するための方法は公知であり、コポリマー自体のモノマーの組成を調整することを含む。
【0029】
そのような結晶化挙動を有する市販のコポリマー(A)ラテックスは、市場で入手可能である。
【0030】
前述したように、前記コポリマー(A)は、約120℃で2時間にわたる熱処理後の水性ラテックスの固体残留物の合計塩化物含有量が、コポリマー(A)の総重量に対して1000ppm未満のものであるように、脱塩化水素化に対して安定である。この特性が満たされない場合、塩化物イオンが一体化挙動を妨げ、1回の塗布での厚い層の生成を妨害する場合がある。
【0031】
コポリマー(A)の水性ラテックスに塩化物成分がないことは、次の通りに決定される:膜を得るために水性ラテックスの試験片を105℃で約4時間乾燥させ、それから1×1.5cmの大きさの試験片を回収する。前記試験片を、超純水が入っているバブラーと接続されたガラス管内に入れ、4Nl/hで窒素を流しながら約120℃において2時間オーブン中で熱処理する。加熱サイクルの終わりにバブラーを速やかに系から取り外し、塩化物成分を、ブロモフェノール及びジフェニルカルバゾン指示薬を使用するHg(NO3)2を用いた滴定によって測定する。そのようにして得られた結果は、コポリマー(A)の重量に対する塩化物のppmで表される。
【0032】
約120℃で2時間にわたる熱処理後の水性ラテックスの固体残留物の合計塩化物含有量は、コポリマー(A)の重量に対して好ましくは950ppm未満、より好ましくは900ppm未満、更に好ましくは850ppm未満である。
【0033】
水性コーティング組成物全体としての脱塩化水素化に対する耐性は、HCl捕捉剤を添加することによって増加され得るものの、コポリマー(A)のラテックスが脱塩化水素化に対する低い傾向を本質的に有することは必要不可欠なままであり、これは、ラテックスの製造条件及びコポリマー(A)の組成を適切に調整することによって達成することができる。
【0034】
本出願人は、この脱塩化水素化に対する耐性が、本発明の水性コーティング組成物中において、改善された臨界コーティング膜厚及び極めて優れた耐食性を有するコーティングを得るために相乗的に寄与することを実際に見出した。
【0035】
水性ラテックスは、通常、水性ラテックスの総重量に対して通常少なくとも58重量%、好ましくは少なくとも59%のコポリマー(A)の含有率を有する。
【0036】
本発明の水性コーティング組成物は、アルカリ土類金属酸化物で修飾された(ポリ)リン酸のアルミニウム塩を含む1種又は複数の耐食顔料[顔料(P)]を含む。
【0037】
顔料(P)は、アルカリ土類金属酸化物で修飾されたトリポリリン酸二水素アルミニウムリン酸塩、メタリン酸アルミニウム等からなる群から選択され得る。アルカリ土類酸化物修飾剤は、通常、(ポリ)リン酸のアルミニウム塩の製造時に行われるMgO又はCaOによる修飾である。
【0038】
非常に有用な顔料(P)は、化合物K-White450Hであり、これは、Mgで修飾されたトリリン酸アルミニウムである。
【0039】
通常、顔料(P)は、亜鉛を含まない。Zn誘導体/Znで修飾されている化合物は、耐食塗料中の成分として特に有用であると見なされてきたものの、本発明のコーティング組成物は、Znを含まない場合でも極めて優れた防食性を得られることが見出された。
【0040】
Znがコポリマー(A)の分解に関して触媒的に活性であり得ることも公知であり、そのため、本発明の水性コーティング組成物からこの金属を排除することが有利である。
【0041】
したがって、水性コーティング組成物は、水性コーティング組成物の総重量に対して通常1重量%以下のZn、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下のZnを含む。
【0042】
本発明の水性コーティング組成物は、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤[界面活性剤(NS)]を含む。
【0043】
本発明に好適な非イオン性非フッ素化界面活性剤[界面活性剤(NS)]は、当該技術分野で公知である。好適な界面活性剤(NS)の例は、特にNonionic Surfactants.Edited by SCHICK,M.J..Marcel Dekker,1967.p.76-85及び103-141に見ることができる。本明細書の残りにおいて、「非イオン性非フッ素化界面活性剤」及び「界面活性剤(NS)」という表現は、本発明の目的のために、複数形と単数形との両方で理解される。
【0044】
本発明の界面活性剤(NS)は、好ましくは、芳香族基を含まないものの中から選択される。芳香族部位を含む非イオン性界面活性剤は、一般的にコーティングの焼成時の熱分解で有害な有機芳香族化合物(ベンゼン、トルエン、又はキシレン等)へ変換されることが周知である。そのため、芳香族部位を含む界面活性剤が含まれない分散系は、より環境に優しい製品であると認識される。
【0045】
界面活性剤(NS)は、有利には、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド由来の繰り返し単位を含むアルコールポリエーテルからなる群から選択され得る。
【0046】
本発明の非イオン性界面活性剤は、有利には、以下の式(I)を満たす:
(式中、Rは、C
1~C
18アルキル基であり、p及びnは互いに等しいか異なり、p及びnの少なくとも一方が0でないことを条件として0又は3~24の範囲であり得る)。
【0047】
特定の実施形態によれば、p及びnは、両方とも0と異なる。すなわち、非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの両方の由来する繰り返し単位を含む。通常、これらの実施形態によれば、非イオン性界面活性剤は、エチレンオキシド繰り返し単位の分離された配列と、プロピレンオキシド繰り返し単位の分離された配列とを含むブロック構造を有する。
【0048】
特定の実施形態によれば、界面活性剤(NS)は、以下の式(II)を満たす:
(式中、R°は、C
1~C
15アルキル基であり、及びqは、5~15の範囲である)。
【0049】
本発明の水性コーティング組成物は、上で定義したPVCが20~40体積%であるような量で、顔料(P)と異なる少なくとも1種のフィラー(I)を追加的に含む。
【0050】
特に好ましいものは、PVCが少なくとも25、好ましくは少なくとも27、及び/又は最大37、好ましくは最大35体積%のものである水性コーティング組成物である。
【0051】
フィラー(I)は、平板形状、針状、楕円形、円形、球形、不規則な形状、又はこれらの組み合わせなどの様々な形状を有し得る。
【0052】
顔料(P)とフィラー(I)との最適な添加は、通常、有益な性能及びコーティング組成物の塗布特性(空気、水分、及び気体の取り込みの防止等であり、これがない場合には塗布時の気泡の生成又は乾燥後のブリスター及び剥離が生じ得る)をもたらし、また、濡れた状態のコーティングのたるみを低減するチキソトロピー特性の付与に寄与し得ると考えられる。
【0053】
使用され得る好適なフィラー(I)としては、特にBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、遷移金属、ランタノイド金属、アクチノイド金属、S、Ge、Ga、Sn、Pb、これらの組み合わせ又は混合物等の1種以上の水不溶性化合物が挙げられる。不溶性化合物としては、硫酸塩、水酸化物、炭化物、窒化物、酸化物、酸窒化物、酸炭化物、ケイ酸塩、修飾ケイ酸塩、炭酸塩等が挙げられる。
【0054】
フィラー(I)は、平板形状の粒子及び/又は非平板形状(針状、楕円形、円形、球形、不規則な形状、又はこれらの組み合わせ)の粒子を含み得る。
【0055】
平板形状の粒子は、非常に優れた増粘特性を有し、非常に優れたたるみ抵抗を付与し、且つ空気の放出に役立つと一般に認識されている。平板形状のフィラーの例としては、陶土、マイカ、タルク、これらの組み合わせ等などの粘土の1種又は複数が挙げられる。
【0056】
場合により平板形状の粒子と組み合わせて、様々な非平板形状の粒子を本発明の水性コーティング組成物中で使用することができるであろう。これらの例としては、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ti、遷移金属、ランタノイド金属、アクチノイド金属、S、Ge、Ga、Sn、Pb、これらの組み合わせ又は混合物等の1種又は複数の硫酸塩、炭化物、窒化物、酸窒化物、酸炭化物、酸化物、炭酸塩が挙げられる。
【0057】
更に、フィラー(I)として金属酸化物着色顔料を使用することもでき、例示的な金属酸化物顔料としては、Cr2O3、Al2O3、V2O3、Ga2O3、Fe2O3、Mn2O3、Ti2O3、In2O3、TiBO3、NiTiO3、MgTiO3、CoTiO3、ZnTiO3、FeTiO3、MnTiO3、CrBO3、NiCrO3、FeBO3、FeMnO3、FeSn(BO3)2、AlBO3、Mg3Al2Si3O12、NdAlO3、LaAlO3、MnSnO3、LiNbO3、LaCoO3、MgSiO3、ZnSiO3、Mn(Sb、Fe)O3が挙げられる。
【0058】
コポリマー(A)のラテックス、顔料(P)、界面活性剤(NS)、及びフィラー(I)とは別に、本発明のコーティング組成物は、当該技術分野で公知の1種又は複数の従来の添加剤及び/又は助剤も含み得る。その例としては、限定するものではないが、融合助剤、増粘剤、消泡剤、安定化剤、湿潤剤、保存料、分散剤、フラッシュさび抑制剤、殺生物剤、殺菌剤、帯電防止剤、pH調整剤、粘度調整剤等が挙げられる。
【0059】
本発明の水性コーティング組成物を製造するために幅広い手法を使用することができる。例示的な手法によれば、コポリマー(A)のラテックスが残される一方、他の成分が水性担体中で均一になるまで組み合わされ且つ混合される。その後、残されたラテックスが混合物に添加されて均一になるまで更に混合される。
【0060】
本発明の水性コーティング組成物は、多様な基材をコーティングするために使用され得る。例示的な基材としては、建物の要素、貨物コンテナ、床材料、壁、家具、自動車の構成要素、積層体、装置の構成要素、電気器具が挙げられる。例示的な基材の材料としては、金属、金属合金、金属間組成物、金属含有複合材料が挙げられる。例示的な金属及び合金としては、アルミニウム、鋼材、耐候性鋼材、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0061】
本発明は、本発明の水性コーティング組成物を使用することを含む、上で詳述した基材をコーティングする方法に更に関する。
【0062】
予め基材を洗浄して、グリース、ほこり、及び他の汚染物質を除去することが望ましい場合がある。
【0063】
本発明の方法は、有利には、上で詳述した水性コーティング組成物を基材表面の少なくとも一部に塗布して、濡れた状態のコーティングを形成することを含む。
【0064】
本発明の水性コーティング組成物は、刷毛塗り、噴霧、スピンコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティング、浸漬、グラビアコーティングなどの任意の適切な手法を使用して基材に塗布され得る。
【0065】
このようにして得られた濡れた状態のコーティングは、その後、乾燥されたコーティングを得るために乾燥される。
【0066】
必要に応じて、1つ以上の追加的な本発明の水性組成物のコーティング層を塗布することができる。それにもかかわらず、本発明の水性コーティング組成物の有利なCCTのために、300μm以上、また400μm以上、更には500μm以上のコーティング厚を得るには1層のコーティングで十分である。
【0067】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0068】
以下の実施例に関連して本発明を以降で説明するが、その目的は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0069】
原材料
DIOFAN(登録商標)P520 PVDCは、約1.05重量%の量のAAを含み、約56重量%の固体含有率を有するVDC/VC/2EHA/AAの水性ラテックスである。この水性ラテックスは、いくらかの脱塩化水素化現象を経験し、その結果、そのフリーの塩化物含有量は、通常、1500ppmを超える。更に、これは再結晶現象を経て、CI熱処理後/CI熱処理前の比率が1.43となる。
【0070】
DIOFAN(登録商標)P580 PVDCは、約60重量%の固体含有率を有する、VDC/VC/2EHA/AAが重量基準で68/22.25/8/1.75である水性ラテックスである。この水性ラテックスは、脱塩化水素化に対して特に安定であり、その結果、そのフリーの塩素含有量は、常に1000ppm未満である。更に、これは再結晶現象を生じず、そのため、CI熱処理後/CI熱処理前の比率は約1.0である。
【0071】
K White 84は、Tayca Corporation,Osaka,Japanから市販されている耐食顔料である、Zn及びSiO2で修飾されたトリリン酸アルミニウムである。
【0072】
K White 450Hは、Tayca Corporation,Osaka,Japanから市販されている耐食顔料である、Mgで修飾されたトリリン酸アルミニウムである。
【0073】
Bayferrox(登録商標)318Mは、Lanxessから市販されている微粉化酸化鉄黒色顔料である。
【0074】
Byk(登録商標)035は、Byk Chemie,Wessel,Germanyから市販されている消泡剤である。
【0075】
Byk(登録商標)151は、Byk Chemie,Wessel,Germanyから市販されている、アニオン性の多官能性ポリマーのアルキルオールアンモニウム塩界面活性剤の溶液である。
【0076】
Synperionic(登録商標)PE F87は、Uniqema,Gouda,The Netherlandsから市販されている、24のHLB値、14.6mg KOH/gのヒドロキシル価、及び6.75のpHを有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドコポリマーを主成分とする非イオン性界面活性剤である。
【0077】
Texanol(登録商標)は、Eastmannから市販されている融合助剤であるエステル-アルコール(2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)である。
【0078】
ProxelTMLV保存料は、Lonzaから市販されている、工業用の水を主成分とする製品を、細菌、酵母、及び真菌による腐敗に対して予防するための、薬効範囲が広い殺生物剤である。
【0079】
Surfynol(登録商標)104Eは、分散剤として使用される、エチレングリコール中に2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールが入っている50/50(重量比)の溶液である。
【0080】
Luzenac(登録商標)10M0は、IMERYS Talcから市販されている粉末状タルクである。
【0081】
配合物調製のための基本手順
水、消泡剤、分散剤、及び安定化剤/界面活性剤から製造したベース液を、室温で5分間にわたり全ての成分を混合することによって調製した。次に、Cowlesブレードを使用する高速混合により、顔料及び他の無機フィラーを前記ベース液中に混ぜ込んだ。最後に、コポリマー(VDC)の水性ラテックスを場合により追加的な成分(融合助剤、安定化剤/界面活性剤、殺生物剤等)と一緒に添加した。詳細は下の表に示される。
【0082】
基本的なコーティング手順及びCCT(臨界コーティング膜厚)の決定
このようにして得た配合物を、圧縮空気のKremlin M 22G HPAガン(4barの吸入圧力及び20cmの破砕距離を使用)を使用して、150~100mm2のサイズのステンレス鋼製の板状試験片上に噴霧した。ステンレス鋼製の板状試験片は、水平に保持し、コーティングは、垂直に対して約30°の流れ角で行った。
ガンのダイは、粘度に応じて調整された1.2~2.2mmであり、その結果、鋼製の板状試験片の表面全体を被覆する粉砕コーティングトライアングルを得た。コーティングされた層を室温で5分間乾燥させ、次に強制熱風循環(T=50℃;V=5m/秒)下で更に20分乾燥させた。
【0083】
臨界コーティング膜厚は、乾燥後に干割れの存在をチェックすることによって反復することにより決定した。干割れが見られない場合、干割れによる欠陥が確認できるまでスプレーコーティングを繰り返してコーティングの厚さを増加させた。
【0084】
比較例1
水(16.63重量部)、消泡剤であるByk(登録商標)035(0.2重量部)、分散剤であるByk(登録商標)151(0.52重量部)、及びSurfynol(登録商標)104EとSynperionic(登録商標)PE F87との混合物である界面活性剤(それぞれ0.31及び2.08重量部)の混合物をベース液として使用した。Luzernac 10M0(19.50重量部)、K-white 84(5.19重量部)、及びBayferrox(登録商標)130M(3.12重量部)をこの中に分散させ、次に49.89重量部のDIOFAN(登録商標)P580ラテックス、0.49重量部のTexanol(登録商標)、0.97重量部のSynperionic(登録商標)PE F87、0.1重量のProxelTMLV、及び0.99重量部のNaNO2を補った。
【0085】
この配合物のPVCは30体積%であり、密度は1.43g/lであり、固体含有率は59重量%であった。
【0086】
配合物の粘度は820cPであり、そのpHは5.6であり、そのCCTは90μm未満であることが分かった。
【0087】
この実施例は、コポリマー(A)が、上で列挙した全ての特性を有するものの、アルカリ土類修飾されているリン酸アルミニウムではない耐食顔料を用いて配合された場合、大きいCCTをもたらすことができないことを示す。
【0088】
比較例2
水(16.98重量部)、消泡剤であるByk(登録商標)035(0.2重量部)、分散剤であるByk(登録商標)151(0.50重量部)、Synperionic(登録商標)PE F87界面活性剤(2.00重量部)、及びAMP95中和剤(0.50重量部)の混合物をベース液として使用した。Luzernac(登録商標)10M0(18.37重量部)、K-white 450H(4.99重量部)、及びBayferrox(登録商標)130M(1.50重量部)をこの中に分散させ、次に54.86重量部のDIOFAN(登録商標)P520ラテックスを補った。
【0089】
レオロジー調整剤であるRheolate255(0.1重量部)を添加することによって粘度を調整した。
【0090】
この配合物のPVCは30体積%であり、密度は1.37g/lであり、固体含有率は57重量%であった。
【0091】
配合物の粘度は2000cPであり、そのpHは7.27であり、そのCCTは180μm未満であることが分かった。
【0092】
この実施例は、脱塩化水素化に対してあまり安定ではなく、そのため、フリーの塩化物を含み、一体化/加熱条件下で結晶化する傾向を有するコポリマー(VDC)ラテックスが、アルカリ土類酸化物で修飾されたトリリン酸アルミニウム耐食顔料を用いて配合された場合でも大きいCCTをもたらすことができないことを示す。
【0093】
実施例3:
水(17.25重量部)、消泡剤であるByk(登録商標)035(0.2重量部)、分散剤であるByk(登録商標)151(0.51重量部)、及びSynperionic(登録商標)PE F87界面活性剤(2.03重量部)、及びAMP 95中和剤(0.51重量部)の混合物をベース液として使用した。Luzernac(登録商標)10M0(20.05重量部)、K-white 450H(5.07重量部)、及びBayferrox(登録商標)130M(1.52重量部)をこの中に分散させ、次に52.76重量部のDIOFAN(登録商標)P580ラテックスを補った。
【0094】
レオロジー調整剤であるRheolate255(0.1重量部)を添加することによって粘度を調整した。
【0095】
この配合物のPVCは30体積%であり、密度は1.39g/lであり、固体含有率は60重量%であった。
【0096】
配合物の粘度は3000cPであり、そのpHは6.89であり、そのCCTは500μm超であることが分かった。
【0097】
この実施例は、脱塩化水素化に対して非常に安定であり、その結果、1000ppm未満の量のフリーの塩素を含む、一体化/加熱条件下で結晶化しないコポリマー(VDC)ラテックスが、アルカリ土類酸化物で修飾されたトリリン酸アルミニウム耐食顔料を用いて配合された場合、大きいCCTをもたらすことができることを示す。