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特許7062599強力な抗腫瘍活性を有するTLR9を標的化する球状核酸
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】強力な抗腫瘍活性を有するTLR9を標的化する球状核酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/60 20170101AFI20220425BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220425BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220425BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A61K47/60
A61K31/7125
A61K39/395 N ZMD
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/28
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2018558352
(86)(22)【出願日】2017-05-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017031423
(87)【国際公開番号】W WO2017193084
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】62/333,139
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/480,936
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516025298
【氏名又は名称】イグジキュア オペレーティング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Exicure Operating Company
【住所又は居所原語表記】2430 N.Halsted Street,4th Floor,Chicago,IL 60614,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ナラガトラ,スバラオ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン,バート
(72)【発明者】
【氏名】カンディマラ,エカンバー
【審査官】梅田 隆志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/057898(WO,A1)
【文献】RADOVIC-MORENO, A.F., et al.,Proceedings of the National Academy of Science,2015年,Vol.112, No.13,pp.3892-3897.
【文献】LIN, A.Y., et al.,PLOS ONE,2013年,Vol.8, No.5, e63550,pp.1-9.
【文献】MANGSBO, S.M., et al.,Journal of Immunotherapy,2010年,Vol.33, No.3,pp.225-235.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/60
A61K 31/7125
A61K 39/395
A61K 47/10
A61K 47/24
A61K 47/28
A61P 35/00
A61P 35/02
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)を含む癌を処置するための医薬組成物であって、
医薬組成物は、癌を有する対象に癌を処置するための有効量で投与され、
IS-SNAは、コアおよびオリゴヌクレオチドシェルを含み、
コアは、脂質から構成されるリポソーム系コアであり、およびオリゴヌクレオチドシェルは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成され、
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列5’-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3’(配列番号5)を含むCpGオリゴヌクレオチドであり、
CpGオリゴヌクレオチドは、2つのヘキサエチレングリコールを含むリンカーによってコレステロールにそれぞれコンジュゲーションされ、
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、外向きに放射状に方向づけられるように、コアの外面上に位置し、
コレステロールは、CpGオリゴヌクレオチドをリポソーム系コアの脂質にアンカーし、および
CpGオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結部のそれぞれは、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結部である、前記医薬組成物
【請求項2】
リポソーム系コアが、脂の1つの型から構成される、または、2-10個の異なる脂質から構成される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
リポソーム系コアが、中性の脂質から構成され、ここで、中性の脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)である、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
少なくとも25個の免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、コアの外面上にある、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
25~50個の免疫刺激性オリゴヌクレオチドがコアの外面上にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
リンカーが、追加のオリゴエチレングリコールをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
対象に少なくとも4回投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
対象に4-12週間に渡って毎週投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
コアが、直径約20nmである、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
IS-SNAが、サイトカイン分泌を誘導する、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
IS-SNAが、TH1型サイトカイン分泌を誘導する、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
サイトカインが、インターロイキン(IL)-6、IL-12、インターフェロン(IFN)-α、またはIFN-γである、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
サイトカイン分泌が、インビトロで誘導される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
サイトカイン分泌が、インビボで誘導される、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象にチェックポイント阻害剤抗体とともに投与される、請求項1~14のいずれか項に記載の医薬組成物であって、任意にここで、医薬組成物およびチェックポイント阻害剤抗体は同日に投与される、医薬組成物およびチェックポイント阻害剤抗体は異なる日に投与される、チェックポイント阻害剤抗体は医薬組成物の前に投与される、または、チェックポイント阻害剤抗体は医薬組成物の後に投与される、前記医薬組成物
【請求項16】
医薬組成物およびチェックポイント阻害剤抗体の組み合わせ投与が、対象の生存に対して相乗的な効果を生成する、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
チェックポイント阻害剤抗体が、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合蛋白質、もしくはその組み合わせ、または小分子からなる群から選択される、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
チェックポイント阻害剤抗体が、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはその組み合わせからなる群から選択されるチェックポイント蛋白質を阻害する、請求項15~17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
チェックポイント阻害剤抗体が、抗PD-1抗体、抗PDL1抗体、または抗CTLA-4抗体である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項20】
抗PD-1抗体がBMS-936558(ニボルマブ)またはペムブロリズマブ(ラムブロリズマブ)である、抗PDL1抗体がMPDL3280A(アテゾリズマブ)である、または抗CTLA-4抗体がイピリムマブである、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
抗PD-1抗体が、ペムブロリズマブ(ラムブロリズマブ)である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
IS-SNAの免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、IS-SNAに結合されていない直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと比べて、対象の制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増大させる、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項23】
癌が、有毛細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚T細胞性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、悪性メラノーマ、有棘細胞癌、腎細胞癌、前立腺癌、膀胱細胞癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、または結腸癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項24】
癌が、皮膚癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項25】
IS-SNAが、静脈内注射、腫瘍内注射、または皮下投与経路によって投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項26】
癌が、有棘細胞癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項27】
癌が、肝臓癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項28】
IS-SNAが、対象の細胞のTLR9受容体を標的化し、任意にここで、対象は、哺乳動物またはヒトである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項29】
免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)であって、
IS-SNAは、コアおよびオリゴヌクレオチドシェルを含み、
コアは、脂質から構成されるリポソーム系コアであり、およびオリゴヌクレオチドシェルは、免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成され、
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、配列5’-TCGTCGTTTTGTCGTTTTGTCGTT-3’(配列番号5)を含むCpGオリゴヌクレオチドであり、
CpGオリゴヌクレオチドは、2つのヘキサエチレングリコールを含むリンカーによってコレステロールにそれぞれコンジュゲーションされ、
免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、外向きに放射状に方向づけられるように、コアの外面上に位置し、
コレステロールは、CpGオリゴヌクレオチドをリポソーム系コアの脂質にアンカーし、および
CpGオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結部のそれぞれは、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結部である、前記IS-SNA。
【請求項30】
リンカーが、追加のオリゴエチレングリコールをさらに含む、請求項29に記載のIS-SNA。
【請求項31】
少なくとも25個の免疫刺激性オリゴヌクレオチドが、コアの外面上にある、請求項29または30に記載のIS-SNA。
【請求項32】
25~50個の免疫刺激性オリゴヌクレオチドがコアの外面上にある、請求項29~31のいずれか一項に記載のIS-SNA。
【請求項33】
コアが、脂質の1つの型から構成される、または、2-10個の異なる脂質から構成される、請求項29~32のいずれか一項に記載のIS-SNA。
【請求項34】
コアが、中性の脂質から構成され、ここで、中性の脂質は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)である、請求項29~33のいずれか一項に記載のIS-SNA。
【請求項35】
コアが、直径約20nmである、請求項29~34のいずれか一項に記載のIS-SNA。
【請求項36】
請求項29に記載のIS-SNAを含む、医薬組成物。
【請求項37】
IS-SNAがサイトカイン分泌を誘導任意にここで、IS-SNAは、TH1型サイトカイン分泌を誘導する、請求項36に記載の医薬組成物。
【請求項38】
サイトカインが、インターロイキン(IL)-6、IL-12、インターフェロン(IFN)-α、またはIFN-γである、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項39】
サイトカイン分泌が、インビトロで誘導される、請求項37に記載の医薬組成物。
【請求項40】
サイトカイン分泌が、インビボで誘導される、請求項37に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年5月6日出願の「TLR-TARGETED SPHERICAL NUCLEIC ACIDS HAVING POTENT ANTITUMOR ACTIVITY」と題するU.S.仮出願通しNo.62/333,139および2017年4月3日出願の「TLR-TARGETED SPHERICAL NUCLEIC ACIDS HAVING POTENT ANTITUMOR ACTIVITY」と題するU.S.仮出願通しNo.62/480,936の米国特許法119条(e)の下における優先権を請求し、これらはそれらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
免疫系は、病原体および老化したまたは悪性の宿主細胞を包含する外来性の、有害な、および不必要な物質をクリアランスするための、高度に進化した精密な内在性のメカニズムである。治療または予防目的のために免疫系を調節することは、特定の免疫細胞の活性を調節する化合物を導入することによって可能であるということが公知である。開発されつつある免疫刺激性化合物のうち、Toll様受容体(TLR)のアゴニストは傑出したポテンシャルを実証してきた。モノホスホリル脂質A(MPL)などのTLR4のアゴニストは、いくつかの場合には、種々の国において治験および承認の後期段階に達している。これらの有望な結果にもかかわらず、細胞内病原体および癌をクリアランスし得る応答を安全で有効に(effective)誘導し得る化合物、例えば細胞性免疫の誘導因子の、明瞭で有意な必要が尚ある。TLR3、TLR7/8、およびTLR9のアゴニストは、Th1細胞性免疫応答を誘導するそれらの強力な能力が原因で優秀なポテンシャルを有する。合成TLR7/8アゴニストのイミキモドは、表在癌腫および性器疣贅を包含する種々の皮膚疾患を処置するために承認されており、種々の他の適応症について開発されつつある。類似に、TLR9のアゴニストは、満たされていない大きい医学的必要を有する種々の疾患の処置について、臨床開発の種々の段階にある。しかしながら、有効性の不足、オフターゲットホスホロチオエート効果、および毒性が原因の懸念は、TLR7/8および9アゴニストの有効な臨床トランスレーションを遅めてきた。
【発明の概要】
【0003】
本開示のいくつかの側面は、コアの外面上に位置する免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドシェルを有するコアとチェックポイント阻害剤とを含む、免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)を包含する。
【0004】
いくつかの態様において、コアは中実または中空コアである。別の態様において、コアは中実コアであり、金および銀を包含する貴金属、鉄およびコバルトを包含する遷移金属、シリカを包含する金属酸化物、ポリマー、またはその組み合わせから構成される。他の態様において、コアは中実のポリマー系コアであり、ポリマー系コアは、両親媒性ブロックコポリマー、ポリスチレン、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)を包含する疎水性ポリマー、および他の生体適合性ポリマーから構成される。
【0005】
いくつかの態様において、コアはリポソーム系コアである。別の態様において、リポソーム系コアは1つ以上の脂質から構成され:スフィンゴ脂質、例えば、種々の長さおよび飽和状態のスフィンゴシン、スフィンゴシンリン酸、メチル化スフィンゴシンおよびスフィンガニン、セラミド、セラミドリン酸、1-Oアシルセラミド、ジヒドロセラミド、2-ヒドロキシセラミド、スフィンゴミエリン、グリコシル化スフィンゴ脂質、スルファチド、ガングリオシド、スフィンゴリン脂質、およびフィトスフィンゴシン、ならびにそれらの誘導体、リン脂質、例えば、種々の長さ、飽和状態のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、環式LPA、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、イノシトールリン酸、LPI、カルジオリピン、リゾカルジオリピン、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸、(ジアシルグリセロ)リン酸、エーテル脂質、ジフィタニルエーテル脂質、およびプラズマローゲン、ならびにそれらの誘導体、ステロール、例えば、異なる長さ、飽和状態のコレステロール、デスモステロール、スティグマステロール、ラノステロール、ラトステロール、ジオスゲニン、シトステロール、チモステロール、チモステノール、14-デメチル-ラノステロール、コレステロール硫酸、DHEA、硫酸DHEA、14-デメチル-14-デヒドロ(dehydr)ラノステロール、シトスタノール、カンペステロール、アニオン性エーテル脂質、カチオン性エーテル脂質、ランタニドキレート脂質、A環置換オキシステロール、B環置換オキシステロール、D環置換オキシステロール、側鎖置換オキシステロール、二重置換オキシステロール、コレスタン酸誘導体、フッ素化ステロール、蛍光ステロール、スルホン酸化ステロール、リン酸化ステロール、および多価不飽和ステロール、ならびにその誘導体から選択される。他の態様において、リポソーム系コアは脂質の1つの型から構成される。別の態様において、リポソーム系コアは2-10個の異なる脂質から構成される。
【0006】
いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤はリポソーム系コアに組み込まれる。別の態様において、チェックポイント阻害剤は組成物中においてIS-SNAと合剤化される。他の態様において、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合蛋白質、もしくはその組み合わせ、または小分子からなる群から選択される。別の態様において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはその組み合わせからなる群から選択されるチェックポイント蛋白質を阻害する。チェックポイント阻害剤は、いくつかの態様において、抗PD-1抗体である。いくつかの態様において、抗PD-1抗体はBMS-936558(ニボルマブ)である。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤は抗PDL1抗体である。別の態様において、抗PDL1抗体はMPDL3280A(アテゾリズマブ)である。別の態様において、チェックポイント阻害剤は抗CTLA-4抗体である。他の態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0007】
いくつかの態様において、免疫刺激性(immunostimulartory)オリゴヌクレオチドの1つ以上は、配列番号4、配列番号5、配列番6、および配列番号7からなる群から選択される配列を含む。
【0008】
本開示のいくつかの側面は、癌を処置するための方法を包含し、静脈内注射によって、癌を有する対象に、コアとコアの外面上に位置する免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドシェルとを含む免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)を、癌を処置するための有効量で投与することを包含する。
【0009】
いくつかの態様において、IS-SNAは対象に少なくとも4回投与され、各投与は少なくとも3日離れている。他の態様において、IS-SNAは対象に4-12週間に渡って毎週投与される。
【0010】
いくつかの態様において、方法は、対象にチェックポイント阻害剤を投与することをさらに包含する。他の態様において、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤は同日に投与される。別の態様において、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤は異なる日に投与される。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤はIS-SNAの前に投与される。
【0011】
いくつかの態様において、IS-SNAはサイトカイン分泌を誘導する。いくつかの態様において、IS-SNAはTH1型サイトカイン分泌を誘導する。ある種の態様において、IS-SNAの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、IS-SNAに連結されていない直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと比べて、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増大させる。
【0012】
いくつかの態様において、IS-SNAは本明細書に記載されるIS-SNAのいずれかである。いくつかの態様において、IS-SNAは対象の細胞のTLR9受容体を標的化する。
【0013】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0014】
いくつかの態様において、癌は、胆道癌;脳の癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば小細胞および非小細胞);メラノーマ;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌からなる群から選択される。
【0015】
本開示の他の側面は、癌を処置するための方法を提供し、癌を有する対象に、癌を処置するための有効量で、コアとコアの外面上に位置する免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドシェルとを含む免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)、およびチェックポイント阻害剤を投与することを包含する。
【0016】
いくつかの態様において、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤の組み合わせ投与は、対象の生存に対して相乗的な効果を生成する。
【0017】
他の態様において、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤は同日に投与される。別の態様において、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤は異なる日に投与される。他の態様において、チェックポイント阻害剤はIS-SNAの前に投与される。
【0018】
いくつかの態様において、IS-SNAはサイトカイン分泌を誘導する。いくつかの態様において、IS-SNAはTH1型サイトカイン分泌を誘導する。ある種の態様において、IS-SNAの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、IS-SNAに連結されていない直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと比べて、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増大させる。
【0019】
いくつかの態様において、IS-SNAは本明細書に記載されるIS-SNAのいずれかである。いくつかの態様において、IS-SNAは対象の細胞のTLR9受容体を標的化する。
【0020】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0021】
いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合蛋白質、もしくはその組み合わせ、または小分子からなる群から選択される。別の態様において、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはその組み合わせからなる群から選択されるチェックポイント蛋白質を阻害する。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤は抗PD-1抗体である。別の態様において、抗PD-1抗体はBMS-936558(ニボルマブ)である。いくつかの態様において、チェックポイント阻害剤は抗PDL1抗体である。別の態様において、抗PDL1抗体はMPDL3280A(アテゾリズマブ)である。他の態様において、チェックポイント阻害剤は抗CTLA-4抗体である。いくつかの態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0022】
いくつかの態様において、IS-SNAはサイトカイン分泌を誘導する。いくつかの態様において、IS-SNAはTH1型サイトカイン分泌を誘導する。ある種の態様において、IS-SNAの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、IS-SNAに連結されていない直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと比べて、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増大させる。
【0023】
いくつかの態様において、IS-SNAは本明細書に記載されるIS-SNAのいずれかである。いくつかの態様において、IS-SNAは対象の細胞のTLR9受容体を標的化する。
【0024】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0025】
本開示は、他の側面において、癌を処置するための方法を提供し、腫瘍内または皮下注射によって、癌を有する対象に、コアとコアの外面上に位置する免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドシェルとを含む免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)を、癌を処置するための有効量で投与することを包含し、IS-SNAは対象に少なくとも4回投与され、各投与は少なくとも3日離れている。
【0026】
いくつかの態様において、コアは中実または中空コアである。他の態様において、コアは中実コアであり、金および銀を包含する貴金属、鉄およびコバルトを包含する遷移金属、シリカを包含する金属酸化物、ポリマー、またはその組み合わせから構成される。別の態様において、コアは中実のポリマー系コアであり、ポリマー系コアは、両親媒性ブロックコポリマー、ポリスチレン、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)を包含する疎水性ポリマー、および他の生体適合性ポリマーから構成される。
【0027】
いくつかの態様において、コアはリポソーム系コアである。他の態様において、リポソーム系コアは1つ以上の脂質から構成され:スフィンゴ脂質、例えば、種々の長さおよび飽和状態のスフィンゴシン、スフィンゴシンリン酸、メチル化スフィンゴシンおよびスフィンガニン、セラミド、セラミドリン酸、1-Oアシルセラミド、ジヒドロセラミド、2-ヒドロキシセラミド、スフィンゴミエリン、グリコシル化スフィンゴ脂質、スルファチド、ガングリオシド、スフィンゴリン脂質、およびフィトスフィンゴシン、ならびにそれらの誘導体、リン脂質、例えば、種々の長さ、飽和状態のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、環式LPA、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、イノシトールリン酸、LPI、カルジオリピン、リゾカルジオリピン、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸、(ジアシルグリセロ)リン酸、エーテル脂質、ジフィタニルエーテル脂質、およびプラズマローゲン、ならびにそれらの誘導体、ステロール、例えば、異なる長さ、飽和状態のコレステロール、デスモステロール、スティグマステロール、ラノステロール、ラトステロール、ジオスゲニン、シトステロール、チモステロール、チモステノール、14-デメチル-ラノステロール、コレステロール硫酸、DHEA、硫酸DHEA、14-デメチル-14-デヒドロ(dehydr)ラノステロール、シトスタノール、カンペステロール、アニオン性エーテル脂質、カチオン性エーテル脂質、ランタニドキレート脂質、A環置換オキシステロール、B環置換オキシステロール、D環置換オキシステロール、側鎖置換オキシステロール、二重置換オキシステロール、コレスタン酸誘導体、フッ素化ステロール、蛍光ステロール、スルホン酸化ステロール、リン酸化ステロール、および多価不飽和ステロール、ならびにその誘導体から選択される。いくつかの態様において、リポソーム系コアは脂質の1つの型から構成される。他の態様において、リポソーム系コアは2-10個の異なる脂質から構成される。
【0028】
いくつかの態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドはCpGオリゴヌクレオチドである。他の態様において、CpGオリゴヌクレオチドはBクラスCpGオリゴヌクレオチドである。別の態様において、CpGオリゴヌクレオチドはCクラスCpGオリゴヌクレオチドである。いくつかの態様において、CpGオリゴヌクレオチドはAクラスCpGオリゴヌクレオチドである。他の態様において、CpGオリゴヌクレオチドは、AクラスCpGオリゴヌクレオチド、BクラスCpGオリゴヌクレオチド、およびCクラスCpGオリゴヌクレオチドの混合物である。さらなる態様において、CpGオリゴヌクレオチドは長さが4-100ヌクレオチドである。
【0029】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドシェルのオリゴヌクレオチドは外向きに放射状に方向づけられている。他の態様において、オリゴヌクレオチドシェルはSNAあたり5-1,000オリゴヌクレオチドの密度を有する。別の態様において、オリゴヌクレオチドシェルはSNAあたり100-1,000オリゴヌクレオチドの密度を有する。尚別の態様において、オリゴヌクレオチドシェルはSNAあたり500-1,000オリゴヌクレオチドの密度を有する。
【0030】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは少なくとも1つのヌクレオシド間ホスホロチオエート連結部を有する。他の態様において、CpGオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結部のそれぞれはホスホロチオエートである。
【0031】
いくつかの態様において、IS-SNAはサイトカイン分泌を誘導する。いくつかの態様において、IS-SNAはTH1型サイトカイン分泌を誘導する。ある種の態様において、IS-SNAの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、IS-SNAに連結されていない直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドと比べて、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の比を増大させる。
【0032】
いくつかの態様において、IS-SNAは本明細書に記載されるIS-SNAのいずれかである。いくつかの態様において、IS-SNAは対象の細胞のTLR9受容体を標的化する。
【0033】
いくつかの態様において、対象は哺乳動物である。ある種の態様において、対象はヒトである。
【0034】
本開示は、他の側面において、障害を処置するための方法を提供し、障害を有する対象に、障害を処置するための有効量で、コアとコアの外面上に位置する免疫刺激性オリゴヌクレオチドから構成されるオリゴヌクレオチドシェルとを包含する免疫刺激性球状核酸(IS-SNA)、およびチェックポイント阻害剤を経鼻または筋肉内投与することを包含する。ある種の態様において、障害は癌である。
【0035】
本発明の限定のそれぞれは本発明の種々の態様を包摂し得る。ゆえに、いずれか1つの要素または要素の組み合わせが関わる本発明の限定のそれぞれは、本発明の各側面に包含され得るということが予期されている。本発明は、その適用において、次の記載において説明または図面において図解されているコンポーネントの構築および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様、および種々のやり方で実践または実施されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
付随する図面は同縮尺で描画されることを意図されてはいない。図面において、種々の図において図解されている同一のまたは同一に近い各コンポーネントは、同類の数字によって表される。明瞭性の目的のために、あらゆる図面においてあらゆるコンポーネントが標識されるわけではない。図面において:
図1図1は、CT26腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの皮下および腫瘍内送達(3.2および6.4mg/kg)のための研究設計の模式図である。
図2図2は、CT26腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの皮下送達(3.2および6.4mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長および生存(平均±SD、群あたりN=8)を示している。
図3図3は、CT26腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの腫瘍内送達(3.2および6.4mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長および生存(平均±SD、群あたりN=8)を示している。
図4図4は、MC38腫瘍含有(containining)C57bl/6マウスにおけるIS-SNAの腫瘍内送達(0.8、3.2、および6.4mg/kg)のための研究設計の模式図である。
図5図5は、MC38腫瘍含有(containining)C57bl/6マウスにおけるIS-SNAの腫瘍内送達(0.8、3.2、および6.4mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長曲線(平均±SD、群あたりN=10)を示している。
図6図6は、MC38腫瘍含有(containining)C57bl/6マウスにおけるIS-SNAの腫瘍内送達(0.8、3.2、および6.4mg/kg)後のもたらされた生存曲線(平均±SD、群あたりN=10)を示している。
図7図7は、EMT-6腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの静脈内送達(0.8mg/kg)のための研究設計の模式図である。
図8図8は、EMT-6腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの静脈内送達(0.8mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長曲線(平均±SD、群あたりN=8)を示している。
図9図9は、EMT-6腫瘍含有(containining)Balb/cマウスにおけるIS-SNAの静脈内送達(0.8mg/kg)後のもたらされた生存曲線(平均±SD、群あたりN=8)を示している。
図10図10は、EMT-6腫瘍保有Balb/cマウスにおけるIS-SNAの皮下送達(0.8mg/kg)のための研究設計の模式図である。
図11図11は、EMT-6腫瘍保有Balb/cマウスにおけるIS-SNAの皮下送達(0.8mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長曲線(平均±SD、群あたりN=8)を示している。
図12図12は、IS-SNAの皮下送達(0.8mg/kg)後の、EMT-6腫瘍保有Balb/cマウスの所属リンパ節(平均±SD、群あたりN=8)における制御性T細胞に対するエフェクターの比を示している。
図13図13は、B16F10メラノーマ含有C57bl/6マウスにおけるIS-SNAの皮下送達(0.8mg/kg)のための研究設計の模式図である。
図14図14は、B16F10メラノーマ含有C57bl/6マウスにおけるIS-SNAの皮下送達(0.8mg/kg)後のもたらされた腫瘍成長曲線(平均±SD、群あたりN=10)を示している。
図15図15A-15Cは、取り込みおよびTLR9アゴニストSNAによるTLR9活性化を示している。図15Aでは、ヒトPBMCを、フルオレセイン標識したSNA1または直鎖状オリゴ2 TLR9アゴニストオリゴヌクレオチドによって処置した。24時間後に、細胞に結びついたフルオレセイン標識化合物を有する細胞の画分をフローサイトメトリーによって算定した。図15Bは、TLR9アゴニストによるレポーター細胞のヒトTLR9の活性化を示している。hTLR9-HEK-Blueレポーター細胞をSNA1、直鎖状オリゴ2、またはコントロールSNA5(CpGの代わりにGpCを含有)によって4時間に渡って処置した。培地を取り替え、細胞を追加の20時間インキュベーションした。NF-κΒ活性化をQUANTI-Blueレポーターアッセイを用いて算定した。3つの独立した実験の平均±SEMを示す。P値:*<0.05、**<0.005、****<0.0001。図15CはTLR9アゴニストSNAの特異性を示している。TLRなし(ヌル1)、hTLR3、hTLR7、hTLR8、またはhTLR9を過剰発現するHEK-Blueレポーター細胞を、5μM SNA1または85nMポリI:C(hTLR3)、0.5μM SNA1または1μM R848(hTLR7、hTLR8)、5μM SNA1または5μMコントロールSNA5(hTLR9)、および5μM SNA1または10μg/mL PMA(ヌル1)によって24時間に渡って処置した。NF-κΒ活性化を図17Bレジェンドに記載されているように算定した。n=3または4つの独立した繰り返しの平均+SEMを見せている。***P<0.001、****P<0.0001。
図16図16は、ヒトPBMCによるSNAおよび直鎖状フォーマットのTLR9アゴニストオリゴヌクレオチドの取り込みを示している。ヒトPBMCをフルオレセイン標識したSNA1または直鎖状オリゴ2によって処置した。24時間後に、フローサイトメトリーを用いて、細胞あたりの細胞に結びついたオリゴの量を算定した。平均+SEM、n=4つのドナー。P値:**<0.01、****<0.0001。
図17図17A-17Dは、直鎖状オリゴヌクレオチドと比較したTLR9アゴニストSNAによる、初代白血球におけるおよびマウスのインビボにおけるサイトカイン誘導を示している。多重ELISAを用いて、TLR9アゴニストによって24時間に渡って処置された初代白血球の細胞培養物上清(図17Aおよび17B)またはTLR9アゴニストの皮下投与後のマウス血清(図17Cおよび17D)中のサイトカインを定量した;4匹のマウスの平均+SEMを示している。図17Aは、SNA3、直鎖状オリゴ4、またはPBSによって処置されたマウス脾細胞を示している。細胞をIFN-γについては10μMオリゴヌクレオチドまたは1μMオリゴヌクレオチドによって処置した。デュプリケートのウェルの平均+SDを見せており、n=3つの独立した実験を表している。図17Bは、2.5μM SNA1、直鎖状オリゴ2、コントロールSNA5、またはPBSによって処置されたヒトPBMCを示している。7-13個の独立したドナーの平均のおよび個々の応答を示している。対応のあるT検定P値*<0.05、**<0.01。図17Cは、マウスにおける3mg/kg SNA3での血清中サイトカイン応答の時系列を示している。図17Dは、マウスにおけるSNA3に対する用量依存的な血清中サイトカイン応答を示している。
図18図18A-18Bは、TLR9アゴニストSNAによる初代白血球におけるサイトカイン誘導を示している。多重ELISAを用いて、TLR9アゴニストによって24時間に渡って処置された初代白血球の細胞培養物上清中のサイトカインを定量した。図18Aは、SNA3、直鎖状オリゴ4、またはPBSによって処置されたマウス脾細胞におけるTH2およびTH17サイトカイン誘導を示している。細胞を10μMオリゴヌクレオチドによって処置した。デュプリケートのウェルの平均+SDを見せており、n=3つの独立した実験を表している。図18Bは、SNA1およびコントロールSNA5による初代hPBMCにおけるサイトカイン誘導の用量反応を示している。1つのドナーからのデュプリケートのウェルの平均+SEMを示しており、7つの独立した実験(ドナー)を表している。
図19図19A-19Bは、TLR9アゴニストSNAに対するインビボのマウス血清中サイトカイン応答を示している。多重ELISAを用いて、皮下投与後のマウス血清中のサイトカインを定量した。4匹のマウスの平均+SEMを示している。図19Aは、SNA1の7.5mg/kgの投与後の時系列を示している。図19BはSNA1およびコントロールSNA5に対する用量反応を示している。
図20図20A-20Cは、非ヒト霊長類における皮下投与されたSNA1およびコントロールSNA5に対するインビボ応答を示している。カニクイザルに、指示されている投薬量でSNA1またはコントロールSNA5を投与した。n=4匹のサルの平均+SEMを見せている。図20Aは、投薬の24hr後のPBMCのフローサイトメトリーによって測定された免疫細胞活性化を示している。図20Bは投薬の12hr後の血清中サイトカインレベルを示している。図20Cは1mg/kg投薬量における血清中サイトカイン誘導の時系列を示している。
図21図21は、非ヒト霊長類における皮下投与されたSNA1へのインビボの血液学的変化を示している。カニクイザルに、指示されている投薬量でSNA1を皮下注射した。n=4匹のサルの平均+SEMを見せている。
図22図22A-22Fは、MC38腫瘍を保有するマウスにおけるSNA単独治療および抗PD-1との組み合わせを示している。マウスにMC38大腸細胞を皮下接種して、脇腹腫瘍を確立した。SNAおよび抗PD-1の投薬は腫瘍が100mm3に達した後に始まり、合計で5回の投薬(矢印によって指示されている)のために3日毎に行われた。SNAを、指示されている投薬量レベルで腫瘍内注射した。抗PD-1を5mg/kgで腹腔内投与した。n=8匹のマウスの平均腫瘍体積+SEMを見せている。****第23日にp<0.0001 vs. ビヒクル。第23日のビヒクルと比較した腫瘍成長阻害(TGI)。図22AはSNA3単独治療を示している。図22Bは抗PD-1とのSNA3組み合わせを示している。図22Cおよび22Dは、毎週1回または2回の投薬によるSNA3単独治療および組み合わせ治療を示している。毎週1回の投薬はフックによって指示されている。図22EはSNA1またはSNA3単独治療を示している。図22Fは、MC38大腸細胞による腹腔内(IP)負荷後の、抗PD-1との組み合わせとしてSNA3(1.6mg/kg、毎週2回)によって先に処置されたマウスの生存を示している。SNA3+抗PD-1 n=4匹のマウス、ナイーブマウスn=6。
図23図23は、MC38腫瘍を保有するマウスにおけるSNA3投与に対するサイトカイン応答を示している。SNA3の最初の(第9日)投薬の4時間後に、MC38腫瘍を保有するマウスにおける血清中サイトカイン応答を算定した。n=4匹のマウスの平均のおよび個々の応答を見せている。P値:*<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
図24図24A-24Fは、単独治療としておよび抗PD-1との組み合わせとしてSNAによって処置されたEMT6腫瘍を示している。EMT6脇腹腫瘍を保有するマウスにおいて、100mm3の平均腫瘍体積(MTV)において(図24A-24C)または腫瘍接種の3日後に(d3)(図24D)始まり、SNA3、SNA1、コントロールSNA5、または直鎖状オリゴ4を3日毎に(図24A、24B、24D)または毎週(図24C)皮下注射した(合計5回の投薬が矢印によって指示されている)。図24AはSNA3単独治療を示している。MTV+SEM、n=8匹のマウス。*P<0.05、****P<0.0001 vs ビヒクルd27。図24Bは、両方の脇腹に腫瘍を保有するマウスにおけるSNA3単独治療を示している。MTV+SEM、n=16。*P<0.05、****P<0.0001 vs ビヒクルd34。図24CはSNA1またはコントロールSNA5単独治療を示している。MTV+SEM、n=10。****P<0.0001 vs ビヒクルd25。図24DはSNA3+抗PD-1の組み合わせを示している。d3に始まり、5日毎に、SNA3または直鎖状オリゴ4は皮下注射し、10mg/kg抗PD-1は腹腔内注射した(3回の投薬;白抜き矢印)。MTV+SEM、n=8。TGI vsビヒクルd27。図24Eは、爾後に逆側の脇腹に同じ腫瘍細胞株(EMT6)を再負荷したマウスを示している。MTV+SEM、n=7。図24Fは、爾後に同じ組織(4T1乳)または非類似組織(CT26大腸)からの別個の腫瘍細胞株を負荷したマウスを示している。MTV+SEM、それぞれn=3。
図25図25A-25Dは、EMT6腫瘍を保有するマウスにおけるSNAによって誘導される抗腫瘍免疫のバイオマーカーを示している。マウスにEMT6乳腫瘍細胞を皮下接種して、脇腹腫瘍を確立した。腫瘍接種の3日後に始まり、SNA3または直鎖状オリゴ4を3日毎に皮下注射し、抗PD-1を5日毎に注射した。図25Aは腫瘍成長を示している。平均腫瘍体積+SEMを見せている。第27日におけるP値およびTGIをPBSと比較している。****P<0.0001。図25B-25D:腫瘍接種後の第10日の5匹のマウスから、図25B:腫瘍を免疫組織化学による検査のために取り除き、図25C:所属リンパ節をフローサイトメトリー算定のために取り除き、図25D:腫瘍をmMDSCについてフローサイトメトリー算定によって検査した。P値:*<0.05、**<0.01、***<0.001 vs PBS;#<0.05、##<0.01、###<0.001 vs 抗PD-1;^^^<0.001 vs SNA3。
図26図26は、静脈内投与されたSNAに対するマウスの血清中サイトカイン応答を示している。多重ELISAを用いて、7.5mg/kg SNA1の皮下(s.c.)または静脈内(i.v.)投与後のマウス血清中のサイトカインを定量した。n=4匹のマウスの平均のおよび個々の応答を見せている。P値 vs PBS:*<0.05、**<0.01、***<0.001、****<0.0001。
図27図27A-27Cは、EMT6腫瘍を保有するマウスにおけるSNAの静脈内投与を示している。マウスにEMT6乳腫瘍細胞を皮下接種して、脇腹腫瘍を確立した。腫瘍接種の3日後に、SNA3を、指示されている投薬量レベルで、合計で5回の投薬(投薬イベントは矢印によって指示されている)のために3日毎に、単独治療として(図27A)および抗PD-1抗体との組み合わせとして(図27B)静脈内注射した。n=8匹のマウスの平均+SEMを見せている。第20日におけるP値 vsビヒクル:**<0.01、***<0.001、****<0.0001。第20日におけるTGIをビヒクルと比較している。図27Cは、SNA組み合わせ治療の静脈内投与によって処置したマウスにおけるEMT6腫瘍再負荷を示している。第65日に、SNA+抗PD-1組み合わせ治療群の生存マウスに、反対側の脇腹において1×(100万個)または2×(200万個)EMT6細胞を皮下に再負荷した。n=6匹のマウスの平均+SEMを見せている。第95日におけるP値 vsナイーブマウス:****<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0037】
単独治療としてならびに/またはチェックポイント阻害剤および他の治療薬との組み合わせとして癌を処置するための、本明細書においてIS-SNAと言われる免疫刺激性球状核酸の使用が本明細書に記載される。IS-SNAは、球状の脂質二重層の周りに密に充填され放射状に方向づけられた免疫刺激性オリゴヌクレオチドからなる薬剤の新規クラスである。これらの構造は、補助的な送達ビヒクルまたはトランスフェクション試薬の必要なしに、スカベンジャー受容体および脂質ラフトと係合することによって、細胞に入る能力を発揮する。
【0038】
意外なことに、本発明に従うと、静脈内経路によって投与されるときには、IS-SNAが免疫刺激性オリゴヌクレオチドを腫瘍に有効に送達することができるということが発見された。TLR9を標的化する直鎖状の免疫刺激性オリゴヌクレオチドの先立つ研究は、治験において健康なヒトボランティアの治療性の免疫応答を生成しなかった(1)。それゆえに、免疫刺激性オリゴヌクレオチドが静脈内経路によって対象に送達され、免疫応答を生成し得るのみならず、かかる静脈内投与されたオリゴヌクレオチドが強力な抗腫瘍活性を示したということは、本明細書においてそれが発見されたときに実に意外であった。本明細書において説明されている例において示されているように、EMT-6腫瘍モデルにおけるIS-SNAの静脈内投与は、負のコントロールと比較して腫瘍体積の有意な縮減を示した。これらの知見は、癌の処置のためのIS SNAの静脈内送達の実現可能性を実証している。
【0039】
IS-SNAの抗腫瘍効果は、種々のシンジェニックマウス腫瘍モデル、例えばCT26大腸癌、MC38結腸癌、EMT-6乳癌、およびB16F10メラノーマにおける単独治療として、ならびにEMT-6およびB16F10モデルにおけるa-PD-1との組み合わせ治療として、調べられてきた。異なる投与経路が癌患者を処置することに向いているかどうかを算定するために、IS-SNAの数個の投与経路(皮下、腫瘍内、および静脈内)が本明細書において腫瘍モデルに用いられた。興味深いことに、インビボ腫瘍モデルにおけるIS-SNAの皮下および腫瘍内送達は類似のロバストな抗腫瘍活性を示し、IS-SNAの両方の投与経路が望ましいということを示唆した。加えて、MC38腫瘍モデルにおける6.4mg/kg投薬量でのIS-SNAの腫瘍内送達は腫瘍退縮に至った。
【0040】
本明細書においては、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤の組み合わせがインビボ投与されたときに相乗的な治療応答をもたらすということもまた発見された。PD-1などのチェックポイント阻害剤は免疫制御および末梢性寛容の維持に役割を果たすことが示されている(2)。腫瘍細胞上に発現されたPD-L1のT細胞上のPD-1との相互作用は、T細胞活性化を減弱させ、それによって腫瘍に対するT細胞の抗腫瘍活性を損なうことが示されている。PD-1およびPD-L1相互作用を阻害する数個のモノクローナル抗体が、多くの腫瘍において抗腫瘍活性を実証してきた。しかしながら、応答率はある種の腫瘍型においてはより低い-例えば、トリプルネガティブ乳癌患者においては18%の応答率のみである(3)。本発明の組み合わせ治療は、チェックポイント阻害剤治療の有効性を改善することによって、癌患者に膨大な利益を提供するであろう。具体的には、本明細書においては、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤(すなわちPD1阻害剤)の組み合わせが、a-PD-1活性に抵抗性である2つの動物モデル(EMT-6乳癌およびB16F10メラノーママウス腫瘍モデル)において強力な抗腫瘍応答を生成したということが実証された。例に示されている結果は、PD-1阻害剤との組み合わせとしてのIS-SNAがこれらのモデルの両方においてIS-SNA単独よりも強力な抗腫瘍効果を提供するということを実証している。結果は、腫瘍体積の減少および生存時間の増大両方の点で相乗的であった。一緒になって、これらの研究は、チェックポイント阻害剤との組み合わせとして、免疫腫瘍学薬剤としてのIS-SNAの有用性を実証している。
【0041】
それゆえに、いくつかの側面において、本発明はIS-SNAおよびチェックポイント阻害剤の組み合わせ治療に関する。IS-SNAは、チェックポイント阻害剤と併せて投与され得る。用語「と併せて」または「併用投与される」は、患者または対象への2つの治療薬の送達が関わる治療を言う。2つの治療は、単一組成物として一緒に、同じもしくは異なる投与経路を用いて別個の組成物として同時に、または同じもしくは異なる投与経路を用いて異なる時間に送達され得る。
【0042】
いくつかの態様においては、IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤両方が対象に投与される。両方の投与のタイミングは様々であり得る。いくつかの態様においては、チェックポイント阻害剤はIS-SNAの投与の爾後に投与されるということが好ましい。いくつかの態様において、IS-SNAは、チェックポイント阻害剤の投与に先立って、およびそれと実質的に同時にまたはその後にのどちらかで、対象に投与される。IS-SNAおよびチェックポイント阻害剤の投与は互いと相互排他的でもまたあり得、その結果、処置期間の間のいずれかの所与の時間においてそれらの薬剤の1つのみが対象において活性である。代替的にはかつ好ましくは、いくつかの場合には、2つの薬剤の投与は重なり合い、その結果、両方の薬剤が対象において同時に活性である。
【0043】
いくつかの態様において、IS-SNAは毎週または隔週の原則で投与され、チェックポイント阻害剤はより高頻度で(例えば毎日の原則で)投与される。しかしながら、IS-SNAの投薬量が十分に縮減される場合には、IS-SNAは、縮減された投薬量でではあるが、チェックポイント阻害剤と同じくらい高頻度に投与されるということが可能である。
【0044】
いくつかの場合には、IS-SNAおよび/またはチェックポイント阻害剤は、腫瘍を取り除くための手術に実質的に先立ってまたはその後に投与される。本明細書において用いられる「実質的に先立ってまたはその後に」は、腫瘍を取り除くための手術に少なくとも6ヶ月、少なくとも5ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも3ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも1月、少なくとも3週間、少なくとも2週間、少なくとも1週間、少なくとも5日、もしくは少なくとも2日先立ってまたはその後に、を意味する。
【0045】
類似に、IS-SNAは、チェックポイント阻害剤の投与に直ちに先立ってまたはその後に(例えば、投与の48時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、4時間以内、3時間以内、2時間以内、1時間以内、30分以内、または10分以内に)、あるいはチェックポイント阻害剤と実質的に同時に(例えば、対象がチェックポイント阻害剤を受容している時間の間に)投与され得る。
【0046】
本発明の他の態様において、IS-SNAは定型的なスケジュールで投与される。チェックポイント阻害剤もまた定型的なスケジュールで投与され得るが、代替的には、必要に応じて投与され得る。本明細書において用いられる「定型的なスケジュール」は、前もって決定された指定された時期を言う。定型的なスケジュールは、スケジュールが前もって決定されている限り、長さが同一であるかまたは異なる複数の時期を包摂し得る。例えば、定型的なスケジュールには、毎日の原則、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、6日毎、毎週の原則、隔週の原則、毎月の原則、隔月の原則、またはその間の日もしくは週のいずれかの決まった数、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月毎などのIS-SNAの投与が関わり得る。代替的には、前もって決定された定型的なスケジュールには、最初の週には毎日の原則、次に数ヶ月間は毎月の原則の、それから、その後は3ヶ月毎のIS-SNAの投与が関わり得る。適当なスケジュールに一定の日の投与が関わるということが予め決定されている限りは、いずれかの具体的な組み合わせは、定型的なスケジュールによってカバーされるであろう。
【0047】
チェックポイント蛋白質は、PD-1、TIM-3、VISTA、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、およびLAG3を包含するが、これに限定されない。CTLA-4、PD-1、およびそのリガンドは、T細胞機能および他の細胞機能の全ての段階において重要な役割を果たす補助シグナル伝達分子のCD28-B7ファミリーのメンバーである。CTLA-4、細胞傷害性Tリンパ球関連蛋白質4(CD152)は、T細胞増殖をコントロールすることに関わっている。
【0048】
PD-1受容体は活性化T細胞(およびB細胞)の表面上に発現され、正常な状況下においては、樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞の表面上に発現されているそのリガンド(PD-L1およびPD-L2)に結合する。この相互作用はT細胞内にシグナルを送り、それを阻害する。癌細胞は、それらの表面上にPD-L1の発現の高いレベルを駆動することによって、この系を利用する。これは、それらがPD-1経路のコントロールを握り、腫瘍微小環境に入り得るPD-1を発現するT細胞をスイッチオフすることを許し、それゆえに抗癌免疫応答を抑制する。ペムブロリズマブ(以前はMK-3475およびラムブロリズマブ、商品名Keytruda)は癌免疫治療に用いられるヒト抗体である。これはPD-1受容体を標的化する。
【0049】
IDO、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼは、トリプトファン異化酵素であり、これはTおよびNK細胞を抑制し、Tregおよび骨髄系由来サプレッサー細胞を生み出し活性化し、腫瘍血管新生を促進する。TIM-3、T細胞免疫グロブリンドメイン・ムチンドメイン3は、そのリガンド、ガレクチン-9との相互作用によって細胞死の引き金を引くことによってTh1/Tc1機能の負の制御因子として作用する。VISTAはT細胞活性化のVドメインIg抑制因子。
【0050】
チェックポイント阻害剤は、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、融合蛋白質、もしくはその組み合わせ、または小分子などの分子であり得る。例えば、チェックポイント阻害剤は、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、B-7ファミリーリガンド、またはその組み合わせであり得るチェックポイント蛋白質を阻害する。チェックポイント蛋白質のリガンドは、CTLA-4、PDL1、PDL2、PD1、B7-H3、B7-H4、BTLA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、2B4、CD160、CGEN-15049、CHK1、CHK2、A2aR、およびB-7ファミリーリガンドを包含するが、これに限定されない。いくつかの態様において、抗PD-1抗体はBMS-936558(ニボルマブ)である。他の態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブ(商品名Yervoy。以前はMDX-010およびMDX-101として公知)である。
【0051】
IS-SNAは密に充填された放射状に方向づけられた核酸から構成され、それらは免疫応答を刺激し、具体的にはTLR9などのToll様受容体(TLR)を刺激する。いくつかの態様において、IS-SNAはTLRのアゴニスト(TLRアゴニスト)である。本明細書において用いられるTLRアゴニストは、TLRと相互作用しその活性を刺激する核酸分子である。IS-SNAは、いくつかの態様において、TLR-9を標的化する免疫刺激性球状(sperical)核酸である。
【0052】
Toll様受容体(TLR)は、哺乳動物の自然免疫において重大な役割を果たす高度に保存されたポリペプチドのファミリーである。TLR1-TLR10と呼称される少なくとも10個のファミリーメンバーが同定されている。種々のTLRの細胞質ドメインは、Toll-インターロイキン1(IL-1)受容体(TIR)ドメインを特徴とする。Medzhitov R et al. (1998) Mol Cell 2:253-8.TLRによる微生物侵入の認識は、Drosophilaおよび哺乳動物において進化的に保存されているシグナル伝達カスケードの活性化の引き金を引く。TIRドメイン含有アダプター蛋白質MyD88は、TLRと結びつき、IL-1受容体関連キナーゼ(IRAK)および腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連因子6(TRAF6)をTLRにリクルートすることが報告されている。MyD88依存的なシグナル伝達経路はNF-κΒ転写因子およびc-Jun NH2末端キナーゼ(Jnk)分裂促進因子活性化蛋白質キナーゼ(MAPK)の活性化に至ると信じられており、免疫活性化および炎症性サイトカインの産生における重大なステップである。総説については、Aderem A et al. (2000) Nature 406:782-87を見よ。
【0053】
TLRは免疫細胞の種々の型および種々の組織において差次的に発現されると信じられている。例えば、ヒトTLR7は胎盤、肺、脾臓、リンパ節、扁桃腺、および形質細胞様前駆樹状細胞(pDC)に発現されることが報告されてきた。Chuang T-H et al. (2000) Eur Cytokine Netw 11:372-8);Kadowaki N et al. (2001) J Exp Med 194:863-9.ヒトTLR8は肺、末梢血白血球(PBL)、胎盤、脾臓、リンパ節、および単球に発現されることが報告されてきた。Kadowaki N et al. (2001) J Exp Med 194:863-9;Chuang T-H et al. (2000) Eur Cytokine Netw 11:372-8.報告によれば、ヒトTLR9は脾臓、リンパ節、骨髄、PBL、ならびにpDC、およびB細胞に発現される。Kadowaki N et al. (2001) J Exp Med 194:863-9;Bauer S et al. (2001) Proc Natl Acad Sci USA 98:9237-42;Chuang T-H et al. (2000) Eur Cytokine Netw 11:372-8.
【0054】
ヒトおよびマウスTLR9のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は公知である。例えば、GenBankアクセッションNo.NM_017442、AF259262、AB045180、AF245704、AB045181、AF348140、AF314224、NM_031178;ならびにNP_059138、AAF72189、BAB19259、AAF78037、BAB19260、AAK29625、AAK28488、およびNP_112455を見よ。その全ての内容は参照によって本明細書に組み込まれる。ヒトTLR9は少なくとも2つのアイソフォームで存在することが報告されており、1つは1032アミノ酸、他方は1055アミノ酸の長さである。マウスTLR9は1032アミノ酸の長さである。TLR9ポリペプチドは、ロイシンリッチリピート領域を有する細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、およびTIRドメインを包含する細胞内ドメインを包含する。
【0055】
本明細書において用いられる用語「TLR9シグナル伝達」は、TLR9を介するシグナル伝達に関連する細胞内シグナル伝達のいずれかの側面を言う。本明細書において用いられる用語「TLR9によって媒介される免疫応答」は、TLR9シグナル伝達に関連する免疫応答を言う。TLR9によって媒介される免疫応答はTLR9シグナル伝達に関連する応答である。この応答は、TLR8によって媒介される免疫応答によって達成されるよりも低いレベルでではあるが、少なくともIFN-γおよびIL-12の産生/分泌をさらに特徴とする。
【0056】
用語「TLR9アゴニスト」は、TLR9シグナル伝達を増大させることができるいずれかの薬剤(すなわち、TLR9のアゴニスト)を言う。TLR9アゴニストは、限定なしに、特に免疫刺激性オリゴヌクレオチド、具体的にはCpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドを包含する。
【0057】
本明細書において用いられる「免疫刺激性オリゴヌクレオチド」は、免疫応答を誘導することができる免疫刺激性モチーフまたはバックボーンを含有するいずれかの核酸(DNAまたはRNA)である。免疫応答の誘導は、免疫細胞の数もしくは活性のいずれかの増大、またはサイトカインなどの免疫因子の発現もしくは絶対レベルの増大を言う。免疫細胞は、NK細胞、CD4+Tリンパ球、CD8+Tリンパ球、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、および他の抗原提示細胞を包含するが、これに限定されない。
【0058】
本明細書において用いられる用語「CpGオリゴヌクレオチド」、「免疫刺激性CpG核酸」、または「免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチド」は、免疫細胞を活性化することができるいずれかのCpG含有オリゴヌクレオチドを言う。典型的には、CpGジヌクレオチドの少なくともCは非メチル化である。免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドは、U.S.Pat.No.6,194,388;6,207,646;6,218,371;6,239,116;6,339,068;6,406,705;および6,429,199を包含するいくつもの登録特許および公開特許出願に記載されている。
【0059】
いくつかの態様において、CpGオリゴヌクレオチドは長さが4-100ヌクレオチドである。他の態様において、CpGオリゴヌクレオチドは長さが4-90、4-80、4-70、4-60、4-50、4-40、4-30、4-20、または4-10ヌクレオチドである。
【0060】
いくつかの態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは、修飾バックボーン、例えばホスホロチオエート(PS)バックボーンを有する。他の態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドはホスホジエステル(PO)バックボーンを有する。まだ他の態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは混合されたPOおよびPSのバックボーンを有する。
【0061】
CpGオリゴヌクレオチドは、Aクラスオリゴヌクレオチド、Bクラスオリゴヌクレオチド、またはCクラスオリゴヌクレオチドであり得る。「Aクラス」CpG免疫刺激性オリゴヌクレオチドは公開PCT出願WO01/22990に記載されている。これらのオリゴヌクレオチドは、B細胞活性化にはわずかな効果を有しながら、インターフェロン-アルファの高いレベルを誘導する能力を特徴とする。AクラスCpG免疫刺激性核酸は、Yamamotoおよび同僚によって記載されているヘキサマーパリンドロームGACGTC、AGCGCT、またはAACGTTを含有し得る。Yamamoto S et al. J Immunol 148:4072-6 (1992).従来のAクラスオリゴヌクレオチドはポリGリッチな5'および3'末端と中心のパリンドローム領域とを有する。典型的には、5'および3'末端のヌクレオチドは安定化されたヌクレオチド間連結部を有し、中心のパリンドローム領域はホスホジエステル連結部を有する(キメラ型)。
【0062】
BクラスCpG免疫刺激性核酸は、ヒトB細胞を強く活性化するが、さらなる改変なしではインターフェロン-αを誘導するわずかな効果を有する。従来、Bクラスオリゴヌクレオチドは配列5' TCN1TX1X2CGX3X4 3'(配列番号9)を包含し、X1はGまたはAであり;X2はT、G、またはAであり;X3はTまたはCであり、X4はTまたはCであり;Nはいずれかのヌクレオチドであり、N1およびN2はそれぞれ約0-25個のNの核酸配列である。典型的には充分に安定化され、かつある種の好ましい塩基文脈における非メチル化CpGジヌクレオチドを包含するBクラスCpGオリゴヌクレオチドは、B細胞を活性化する点では強力であるが、IFN-αおよびNK細胞活性化を誘導する点では比較的弱い。例えば、U.S.特許No.6,194,388;6,207,646;6,214,806;6,218,371;6,239,116;および6,339,068を見よ。
【0063】
1つの態様において、BクラスCpGオリゴヌクレオチドは少なくとも式:
5' X1X2CGX3X4 3'(配列番号11)
によって表され、X1、X2、X3、およびX4はヌクレオチドである。1つの態様において、X2はアデニン、グアニン、またはチミンである。別の態様において、X3はシトシン、アデニン、またはチミンである。
【0064】
別の態様において、本発明は単離されたBクラスCpGオリゴヌクレオチドを提供し、少なくとも式:
5' N1X1X2CGX3X4N2 3'(配列番号10)
によって表され、X1、X2、X3、およびX4はヌクレオチドであり、Nはいずれかのヌクレオチドであり、N1およびN2はそれぞれ約0-25個のNからできている核酸配列である。1つの態様において、X1X2はジヌクレオチドであり:GpT、GpG、GpA、ApA、ApT、ApG、CpT、CpA、CpG、TpA、TpT、およびTpGからなる群から選択され;X3X4はジヌクレオチドであり:TpT、ApT、TpG、ApG、CpG、TpC、ApC、CpC、TpA、ApA、およびCpAからなる群から選択される。好ましくは、X1X2はGpAまたはGpTであり、X3X4はTpTである。他の態様において、X1もしくはX2または両方はプリンでありかつX3もしくはX4または両方はピリミジンであるか、あるいはX1X2はGpAでありかつX3もしくはX4または両方はピリミジンである。別の好ましい態様において、X1X2は:TpA、ApA、ApC、ApG、およびGpGからなる群から選択されるジヌクレオチドである。まだ別の態様において、X3X4は:TpT、TpA、TpG、ApA、ApG、GpA、およびCpAからなる群から選択されるジヌクレオチドである。別の態様において、X1X2は:TpT、TpG、ApT、GpC、CpC、CpT、TpC、GpT、およびCpGからなる群から選択されるジヌクレオチドであり;X3はAおよびTからなる群から選択されるヌクレオチドであり、X4はヌクレオチドであるが、X1X2がTpC、GpT、またはCpGであるときにX3X4はTpC、ApT、またはApCではない。
【0065】
別の好ましい態様において、CpGオリゴヌクレオチドは配列5' TCN1TX1X2CGX3X4 3'(配列番号9)を有する。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、いくつかの態様において、GpT、GpG、GpA、およびApAからなる群から選択されるX1X2を包含し、X3X4はTpT、CpT、およびTpCからなる群から選択される。
【0066】
Cクラス免疫刺激性核酸は、ユニークで望ましい刺激効果を免疫系の細胞に対して有する少なくとも2つの別個のモチーフを含有する。これらのODNのいくつかは、従来の「刺激性」CpG配列と「GCリッチ」または「B細胞中和」モチーフとを両方有する。これらの組み合わせモチーフ核酸は、B細胞活性化および樹状細胞(DC)活性化の強い誘導因子である従来の「クラスB」CpG ODNに関連する効果と、IFN-αおよびナチュラルキラー(NK)細胞活性化の強い誘導因子だが、B細胞およびDC活性化の比較的不良な誘導因子であるAクラスCpG ODNに関連する効果との間のどこかに在る免疫刺激効果を有する。Krieg AM et al. (1995) Nature 374:546-9;Ballas ZK et al. (1996) J Immunol 157: 1840-5;Yamamoto S et al. (1992) J Immunol 148:4072-6.好ましいクラスB CpG ODNは多くの場合にホスホロチオエートバックボーンを有し、好ましいクラスA CpG ODNは混合またはキメラ型のバックボーンを有する一方で、組み合わせモチーフ免疫刺激性核酸のCクラスは、安定化された、例えば、ホスホロチオエート、キメラ型、またはホスホジエステルバックボーンどちらかを有し得る。いくつかの好ましい態様において、それらは半柔軟なバックボーンを有する。
【0067】
刺激性ドメインまたはモチーフは式:5' X1DCGHX2 3'(配列番号12)によって定義される。DはC以外のヌクレオチドである。Cはシトシンである。Gはグアニンである。HはG以外のヌクレオチドである。
【0068】
X1およびX2は0から10ヌクレオチドの長さのいずれかの核酸配列である。X1はCGを包含し得、そのケースでは、好ましくはこのCGに直ちに先行するTがある。いくつかの態様において、DCGはTCGである。X1は長さが好ましくは0から6ヌクレオチドである。いくつかの態様において、X2はいずれかのポリGまたはポリAモチーフを含有しない。他の態様において、免疫刺激性核酸はポリT配列を5'末端または3'末端に有する。本明細書において用いられる「ポリA」または「ポリT」は、それぞれ4つ以上の連続したAまたはTのストレッチ、例えば5' AAAA 3'または5' TTTT 3'を言うものとする。
【0069】
本明細書において用いられる「ポリG末端」は、核酸の5'末端または3'末端に生ずる4つ以上の連続したGのストレッチ、例えば5' GGGG 3'を言うものとする。本明細書において用いられる「ポリG核酸」は式5' X1X2GGGX3X4 3'(配列番号13)を有する核酸を言うものとし、X1、X2、X3、およびX4はヌクレオチドであり、好ましくはX3およびX4の少なくとも1つはGである。
【0070】
この式によるB細胞刺激性ドメインのいくつかの好ましい設計は、TTTTTCG、TCG、TTCG、TTTCG、TTTTCG、TCGT、TTCGT、TTTCGT、TCGTCGTを含む。
【0071】
核酸の第2のモチーフはPまたはNどちらかと言われ、X1の直ちに5'またはX2の直ちに3'に位置する。
【0072】
NはB細胞中和配列であり、これはCGGトリヌクレオチドで始まり、少なくとも10ヌクレオチドの長さである。B細胞中和モチーフは、そのCGがCによって先行もしくはGによって後続される少なくとも1つのCpG配列を包含するか(Krieg AM et al. (1998) Proc Natl Acad Sci USA 95: 12631-12636)、またはそのCGのCがメチル化されているCG含有DNA配列である。本明細書において用いられる「CpG」は、3'グアニン(G)によって後続およびリン酸結合によって連結された5'シトシン(C)を言うものとする。5' CG 3'の少なくともCは非メチル化でなければならない。中和モチーフは、さもなければ非刺激性のあるモチーフ中に存在するときには免疫刺激能の何らかの度合いを有するが、他の免疫刺激性モチーフの文脈に存在するときには他のモチーフの免疫刺激性ポテンシャルを縮減するように働くモチーフである。
【0073】
Pは、少なくとも10ヌクレオチドの長さのGCリッチパリンドローム含有配列である。本明細書において用いられる「パリンドローム」および同義で「パリンドローム配列」は、逆位リピート、すなわちABCDEE'D'C'B'A'(配列番号14)などの配列を言うものとし、その中のAおよびA'、BおよびB'などは、通常のワトソン・クリック塩基対を形成することができる塩基である。
【0074】
本明細書において用いられる「GCリッチパリンドローム」は、少なくとも3分の2のGおよびCという塩基組成を有するパリンドロームを言うものとする。いくつかの態様において、GCリッチドメインは好ましくは「B細胞刺激性ドメイン」の3’にある。それゆえに、10塩基の長さのGCリッチパリンドロームのケースでは、パリンドロームは少なくとも8つのGおよびCを含有する。12塩基の長さのGCリッチパリンドロームのケースでもまた、パリンドロームは少なくとも8つのGおよびCを含有する。14merのGCリッチパリンドロームのケースでは、パリンドロームの少なくとも10塩基はGおよびCである。いくつかの態様において、GCリッチパリンドロームはもっぱらGおよびCから作られる。
【0075】
いくつかの態様において、GCリッチパリンドロームは少なくとも81%のGおよびCという塩基組成を有する。それゆえに、かかる10塩基の長さのGCリッチパリンドロームのケースでは、パリンドロームはもっぱらGおよびCから作られる。かかる12塩基の長さのGCリッチパリンドロームのケースでは、パリンドロームの少なくとも10塩基(83%)がGおよびCであるということが好ましい。いくつかの好ましい態様において、12塩基の長さのGCリッチパリンドロームはもっぱらGおよびCから作られる。14merのGCリッチパリンドロームのケースでは、パリンドロームの少なくとも12塩基(86%)はGおよびCである。いくつかの好ましい態様においては、14塩基の長さのGCリッチパリンドロームはもっぱらGおよびCから作られる。GCリッチパリンドロームのCは非メチル化であり得、またはそれらはメチル化され得る。
【0076】
一般的に、このドメインは、少なくとも3つのCおよびG、より好ましくはそれぞれの4つ、最も好ましくはそれぞれの5つ以上を有する。このドメイン中のCおよびGの数は同一である必要はない。CおよびGは、それらが自己相補的な二重鎖またはパリンドローム、例えばCCGCGCGGを形成する能力があるように配置されるということが好ましい。これはAまたはTによって分断され得るが、自己相補性は例えばモチーフCGACGTTCGTCG(配列番号2)またはCGGCGCCGTGCCG(配列番号3)のように少なくとも部分的に保たれているということが好ましい。相補性が保たれていないときには、非相補的な塩基対がTGであるということが好ましい。好ましい態様においては、パリンドロームの一部ではないせいぜい3つの、好ましくはせいぜい2つの、最も好ましくは1つのみの連続した塩基がある。いくつかの態様において、GCリッチパリンドロームは少なくとも1つのCGGトリマー、少なくとも1つのCCGトリマー、または少なくとも1つのCGCGテトラマーを包含する。
【0077】
球状核酸(SNA)は良く定義された高分子のクラスであり、ナノ粒子コア、すなわち無機金属系コアの周りに放射状に核酸を組織化することによって形成される(Mirkin CA, Letsinger RL, Mucic RC, & Storhoff JJ (1996), A DNA-based method for rationally assembling nanoparticles into macroscopic materials. Nature 382(6592):607-609.)。これらの構造は、補助的な送達ビヒクルまたはトランスフェクション試薬の必要なしに、クラスAスカベンジャー受容体(SR-A)および脂質ラフトと係合することによって、細胞に入る能力を発揮する(Patel PC, et al. (2010) Scavenger receptors mediate cellular uptake of polyvalent oligonucleotide-functionalized gold nanoparticles. Bioconjugate chemistry 21(12):2250-2256.)。ひとたび細胞内にあると、従来のSNAの核酸コンポーネントはヌクレアーゼ分解に抵抗し、より長い細胞内寿命に至る。さらにその上に、SNAは、それらの多機能的な化学構造が原因で、多価的な様式でそれらの標的に結合する能力を有する(Choi CH, Hao L, Narayan SP, Auyeung E, & Mirkin CA (2013) Mechanism for the endocytosis of spherical nucleic acid nanoparticle conjugates. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110(19):7625-7630;Wu XA, Choi CH, Zhang C, Hao L, & Mirkin CA (2014) Intracellular fate of spherical nucleic acid nanoparticle conjugates. Journal of the American Chemical Society 136(21):7726-7733)。
【0078】
本明細書においては、IS-SNAとして製剤化された免疫刺激性オリゴヌクレオチドが向上した癌治療特性を有するということが発見された。中実および/または脂質コアの周りに密に充填されたオリゴヌクレオチドシェルを組み込むIS-SNAが本発明に従って開発された。それらのユニークな分子は、オリゴヌクレオチドおよび任意に他の治療または診断試薬をある細胞に、具体的には複数の細胞に効率的な様式で、効率的に送達するために用いられ得、向上した治療応答をもたらす。SNAにパッケージされた分子は、スカベンジャー受容体によって媒介されるエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、効率的で急速なエンドソーム蓄積をもたらすであろう。
【0079】
典型的には、本発明のナノ構造は、コアとオリゴヌクレオチドのシェルとを有するナノ粒子からできており、これは、それらがコアから外向きに放射状に向くようにCpGオリゴヌクレオチドを配置することによって形成される。好ましくは、5'または3'末端がコアから外向きに面してオリゴヌクレオチドが配置されているかどうかに依存して、オリゴヌクレオチドの5'または3'末端どちらかに取り付けられる疎水性(例えば脂質)アンカー基が、脂質に基づくナノ粒子にオリゴヌクレオチドを埋め込むために用いられる。アンカーは、脂質ナノ粒子への挿入を駆動し、オリゴヌクレオチドを脂質にアンカーするように作用する。
【0080】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドシェルの少なくとも25、50、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900、もしくは1,000個の免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはそのいずれかの範囲の組み合わせがコアの外面上にある。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドシェルはSI-SNAあたり1-1,000、5-1,000、100-1,000、500-1,000、10-500、50-250、または50-300オリゴヌクレオチドの密度を有する。
【0081】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドシェルの免疫刺激性オリゴヌクレオチド同士は、構造的に同一の免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。他の態様において、オリゴヌクレオチドシェルの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは少なくとも2つの構造的に異なる免疫刺激性オリゴヌクレオチドを有する。ある種の態様において、オリゴヌクレオチドシェルの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは2-50、2-40、2-30、2-10、または2-10個の異なるヌクレオチド配列を有する。
【0082】
いくつかの態様においては、オリゴヌクレオチドの少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%がナノ構造の表面上に位置する。オリゴヌクレオチドシェルは、リポソーム系コアの外面表面の利用可能な表面積の少なくとも10%が免疫刺激性オリゴヌクレオチドを包含するときに形成される。いくつかの態様においては、リポソーム系の外面表面の利用可能な表面積の少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、または100%が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを包含する。オリゴヌクレオチドシェルの免疫刺激性オリゴヌクレオチドは種々の方向に方向づけられ得る。いくつかの態様において、免疫刺激性オリゴヌクレオチドは外向きに放射状に方向づけられている。
【0083】
いくつかの態様においては、オリゴヌクレオチドシェルの免疫刺激性オリゴヌクレオチドの少なくとも10%が脂質アンカー基によってナノ粒子に取り付けられる。脂質アンカーは、脂質膜へのオリゴヌクレオチドまたは核酸の挿入またはアンカーを可能にする疎水性基からなる。いくつかの態様においては、オリゴヌクレオチドシェルのオリゴヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、または100%が、脂質アンカー基によって脂質ナノ粒子に取り付けられる。いくつかの態様において、脂質アンカー基はコレステロールである。他の態様において、脂質アンカー基は、ステロール、パルミトイル、ジパルミトイル、ステアリル、ジステアリル、C16アルキル鎖、胆汁酸、コール酸、タウロコール酸、デオキシコール酸、オレイルリトコール酸、オレオイルコレン酸、糖脂質、リン脂質、スフィンゴ脂質、イソプレノイド、例えばステロイド、ビタミン、例えばビタミンE、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂肪酸エステル、または当分野において公知の他の脂質である。
【0084】
いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドはオリゴヌクレオチドと脂質アンカー基との間にリンカーを有する。リンカーの限定しない例はテトラエチレングリコールである。
【0085】
ナノ構造はコアを包含する。コアは、中実または中空コア、例えばリポソーム系コアであり得る。中実コアは中空の中心を有さない球状形状の材料である。本明細書において用いられる用語球状は一般的形状を言い、完璧な球体または円形形状を必須とせず、またはそれに限定されない。それは欠陥を包含し得る。
【0086】
中実コアは当業者に公知の多種多様な材料から構築され得:貴金属(金、銀)、遷移金属(鉄、コバルト)、および金属酸化物(シリカ)を包含するが、これに限定されない。加えて、それらのコアは不活性、常磁性、または超磁性(supramagentic)であり得る。それらの中実コアは、記載されている材料の純粋な組成物から、または材料のいずれかの数の混合物の組み合わせとしてもしくは材料の層状組成物としてどちらかで構築され得る。加えて、中実コアは、ポリマー系コア、例えば両親媒性ブロックコポリマー、疎水性ポリマー、例えばポリスチレン、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、および当業者に公知の他の生体適合性ポリマーからでき得る。好ましくは(preferrably)、中実コアは脂質二重層によって囲まれる。
【0087】
コアは代替的には中空コアであり得、これは少なくとも何らかの空間をシェル材料の中心領域に有する。中空コアはリポソーム系コアを包含する。本明細書において用いられるリポソーム系コアは、脂質二重層を形成する脂質またはリン脂質のコンポーネントによって形成された、中心に所在するコア区画を言う。「リポソーム」は種々のサイズおよび構造の人工の自己閉鎖した小胞構造であり、1つまたは数個の膜が水性コアをカプセル封入している。最も典型的には、リポソーム膜は脂質二重層の膜から形成され、親水性頭部基は水性環境に向かって方向づけられ、脂質鎖は親油性コアに埋め込まれる。リポソームは、他の両親媒性モノマーおよびポリマー分子、例えばブロックコポリマーのようなポリマーまたはポリペプチドからも形成され得る。ユニラメラベシクルはリポソームであり、水性空間を封入する単一の膜によって定義される。対照的に、オリゴまたはマルチラメラベシクルは数個の膜から組み立てられている。典型的には、膜は大体4nmの厚さであり、リン脂質などの天然または合成起源の両親媒性脂質からできている。任意に、膜特性はステロールまたはコール酸誘導体などの他の脂質の組み込みによって改変され得る。
【0088】
脂質二重層は脂質分子の2つの層からできている。層中の各脂質分子は隣接する脂質二重層に対して実質的に平行に方向づけられ、二重層を形成する2つの層は、水相に露出したそれらの分子の極性末端と、互いに隣接する非極性末端とを有する。リポソーム系コアの水性中心領域は、空であるか、あるいは水、水性エマルション、オリゴヌクレオチド、または他の治療もしくは診断薬剤、例えば抗微生物薬剤によって充分にまたは部分的に満たされ得る。
【0089】
「脂質」は、脂肪、脂質、原形質のアルコール・エーテル可溶性の構成成分を包摂する総称的な用語としてのその従来の意味を言い、それらは水に不溶性である。通常は、脂質は親水性および疎水性部分からなる。水中において、脂質は自己組織化して二重層の膜を形成し得、親水性部分(頭部基)は水相に向かって方向づけられ、親油性部分(アシル鎖)は二重層のコアに埋め込まれる。脂質は2つの親水性部分をも含み得る(双頭型両親媒性分子)。そのケースでは、膜は二重層ではなく単一の脂質層から形成され得る。本文脈における脂質の典型例は、脂肪、脂肪油、精油、ろう、ステロイド、ステロール、リン脂質、糖脂質、スルホ脂質、アミノ脂質、脂質色素、および脂肪酸である。用語は、天然に生ずるおよび合成の脂質両方を包摂する。本発明とのつながりで好ましい脂質は:ステロイドおよびステロール、具体的にはコレステロール、ホスファチジル、ホスファチジルコリン、およびホスファチジルエタノールアミンを包含するリン脂質、ならびにスフィンゴミエリンである。脂肪酸があるところでは、それらは長さが約12-24炭素鎖であり、最高で6つまでの二重結合を含有し得る。脂肪酸はバックボーンに連結され、これはグリセロールに由来し得る。1つの脂質中の脂肪酸同士は異なり得(非対称)、または1つの脂肪酸鎖のみが存在し得る。例えばリゾレシチンである。具体的には非カチオン性脂質が天然供給源、例えば卵黄、ウシ心臓、脳、肝臓、または大豆から精製されたレシチン(ホスファチジルコリン)に由来するときには、混合製剤もまた可能である。
【0090】
リポソーム系コアは、当業者に公知の1つ以上の脂質から構築され得:スフィンゴ脂質、例えば、種々の長さおよび飽和状態のスフィンゴシン、スフィンゴシンリン酸、メチル化スフィンゴシンおよびスフィンガニン、セラミド、セラミドリン酸、1-Oアシルセラミド、ジヒドロセラミド、2-ヒドロキシセラミド、スフィンゴミエリン、グリコシル化スフィンゴ脂質、スルファチド、ガングリオシド、スフィンゴリン脂質、およびフィトスフィンゴシン、ならびにそれらの誘導体、リン脂質、例えば、種々の長さ、飽和状態のホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、リゾホスファチジン酸、環式LPA、ホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、リゾホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、リゾホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、イノシトールリン酸、LPI、カルジオリピン、リゾカルジオリピン、ビス(モノアシルグリセロ)リン酸、(ジアシルグリセロ)リン酸、エーテル脂質、ジフィタニルエーテル脂質、およびプラズマローゲン、ならびにそれらの誘導体、ステロール、例えば、異なる長さ、飽和状態のコレステロール、デスモステロール、スティグマステロール、ラノステロール、ラトステロール、ジオスゲニン、シトステロール、チモステロール、チモステノール、14-デメチル-ラノステロール、コレステロール硫酸、DHEA、硫酸DHEA、14-デメチル-14-デヒドロ(dehydr)ラノステロール、シトスタノール、カンペステロール、アニオン性エーテル脂質、カチオン性エーテル脂質、ランタニドキレート脂質、A環置換オキシステロール、B環置換オキシステロール、D環置換オキシステロール、側鎖置換オキシステロール、二重置換オキシステロール、コレスタン酸誘導体、フッ素化ステロール、蛍光ステロール、スルホン酸化ステロール、リン酸化ステロール、および多価不飽和ステロール、ならびにそれらの誘導体を包含するが、これに限定されない。
【0091】
オリゴヌクレオチドはコアの外面上に位置する。典型的には、コア上に位置するオリゴヌクレオチドはコアにカップリングされると言われる。カップリングされるのは直接的または間接的であり得る。オリゴヌクレオチドはコアに可逆的または不可逆的にカップリングされ得る。可逆的にカップリングされる化合物同士は、感受性の連結部を用いて互いに結びつけられる。感受性の連結部は、生理条件下における分離に対して感受性であるものである。例えば、ワトソン・クリック塩基対形成は感受性の連結部である。切断可能なリンカーもまた感受性の連結部である。
【0092】
それゆえに、本発明のいくつかの側面において、IS-SNAは、癌を有する対象の処置のためのスタンドアローン治療、組み合わせ治療として、またはワクチンとして有用である。IS-SNAは、癌の処置のためのチェックポイント阻害剤または抗原もしくは他の治療薬ありまたはなしで投与され得る。
【0093】
癌を有する対象は検出可能な癌性細胞を有する対象である。癌は悪性または非悪性の癌であり得る。癌または腫瘍は、胆道癌;脳の癌;乳癌;子宮頸癌;絨毛癌;結腸癌;子宮内膜癌;食道癌;胃癌;上皮内新生物;リンパ腫;肝臓癌;肺癌(例えば小細胞および非小細胞);メラノーマ;神経芽腫;口腔癌;卵巣癌;膵臓癌;前立腺癌;直腸癌;肉腫;皮膚癌;精巣癌;甲状腺癌;および腎臓癌、ならびに他の癌腫および肉腫を包含するが、これに限定されない。1つの態様において、癌は、有毛細胞性白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚T細胞性白血病、多発性骨髄腫、濾胞性リンパ腫、悪性メラノーマ、有棘細胞癌、腎細胞癌、前立腺癌、膀胱細胞癌、または結腸癌である。
【0094】
対象は、ヒトまたは脊椎動物を意味するものとし、犬、猫、馬、牛、豚、羊、ヤギ、七面鳥、鶏、霊長類、例えばサル、および魚(養殖種)、例えばサケを包含するが、これに限定されない。それゆえに、本発明は非ヒト対象の癌および腫瘍を処置するためにもまた用いられ得る。癌は愛玩動物(すなわち猫および犬)の死の主因の1つである。
【0095】
本明細書において用いられる用語処置する、処置される、または処置することは、癌などの障害について用いられるときには、疾患の発生に対する対象の抵抗性を増大させる、または換言すると対象が疾患を発生するであろう見込みを減少させる予防処置、および疾患と戦う(例えば、癌を縮減または消去する)、または疾患がより悪くなることを防止するための、対象が疾患を発生した後の処置を言う。
【0096】
IS-SNAは癌抗原を包含するように改変され得る。代替的には、癌抗原はIS-SNAと併せて投与され得る。用語抗原は、宿主免疫系によって外来性であると認識される分子のいずれかの型を幅広く包含する。本明細書において用いられる癌抗原は、MHC分子の文脈において抗原提示細胞の表面上に発現されたときに免疫応答を誘起することができる、腫瘍または癌細胞表面に結びついたペプチドまたは蛋白質などの化合物である。癌抗原は、例えばCohen, et al., 1994, Cancer Research, 54: 1055に記載されているように癌細胞の粗抽出物を調製することによって癌細胞から、抗原を部分精製することによって、組換えテクノロジーによって、または公知の抗原のデノボ合成によってのいずれかで、調製され得る。癌抗原は、組換え的に発現される抗原、丸ごとの腫瘍もしくは癌の免疫原性部分、または丸ごとの腫瘍もしくは癌を包含するが、これに限定されない。かかる抗原は単離され得、または組換え的にもしくは当分野において公知のいずれかの他の手段によって調製され得る。
【0097】
IS-SNAは、抗癌治療と共担持もまたされ得、またはそれと併せて投与され得る。抗癌治療は癌治療薬、放射線、および外科手術を包含する。本明細書において用いられる「癌治療薬」は、癌を処置する目的のために対象に投与される薬剤を言う。本明細書において用いられる「癌を処置する」は、癌の発生を防止すること、癌の症状を縮減すること、および/または確立された癌の成長を阻害することを包含する。他の側面において、癌治療薬は、癌を発生するリスクを縮減する目的のために、癌を発生するリスクがある対象に投与される。癌の処置のための治療薬の種々の型が本明細書に記載される。本明細書の目的のためには、癌治療薬は、化学療法薬剤、免疫療法薬剤、チェックポイント阻害剤、癌ワクチン、ホルモン治療、および生物学的応答調節物質として分類される。
【0098】
加えて、本発明の方法は、IS-SNAと一緒に1つよりも多くの癌治療薬の使用を包摂することが意図される。例として、適宜、IS-SNAは、化学療法薬剤、チェックポイント阻害剤、および免疫療法薬剤両方と投与され得る。代替的には、癌治療薬は免疫療法薬剤および癌ワクチン、または化学療法薬剤および癌ワクチン、または化学療法薬剤、免疫療法薬剤、および癌ワクチンを包摂し得、全て、癌を有するかまたは癌を発生するリスクがある対象を処置する目的のために1つの対象に投与される。
【0099】
化学療法薬剤は、メトトレキサート、ビンクリスチン、アドリアマイシン、シスプラチン、非糖含有クロロエチルニトロソ尿素、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダカルバジン、タキソール、fragyline、メグルミン(Meglamine)GLA、バルルビシン、カルムスチンおよびポリフェプロサン(poliferposan)、MMI270、BAY12-9566、RASファルネシル(famesyl)トランスフェラーゼ阻害剤、ファルネシル(famesyl)トランスフェラーゼ阻害剤、MMP、MTA/LY231514、LY264618/ロメトレキソール(Lometexol)、Glamolec、CI-994、TNP-470、ハイカムチン/トポテカン、PKC412、Valspodar/PSC833、Novantrone/ミトキサントロン(Mitroxantrone)、Metaret/スラミン、Batimastat、E7070、BCH-4556、CS-682、9-AC、AG3340、AG3433、Incel/VX-710、VX-853、ZD0101、ISI641、ODN698、TA2516/マリマスタット(Marmistat)、BB2516/マリマスタット(Marmistat)、CDP845、D2163、PD183805、DX8951f、Lemonal DP2202、FK317、Picibanil/OK-432、AD32/バルルビシン、メタストロン/ストロンチウム誘導体、テモダール/テモゾロミド、Evacet/リポソーム系ドキソルビシン、Yewtaxan/パクリタキセル、タキソール/パクリタキセル、Xeload/カペシタビン、フルツロン/ドキシフルリジン、Cyclopax/経口パクリタキセル、経口タキソイド、SPU-077/シスプラチン、HMR1275/Flavopiridol、CP-358(774)/EGFR、CP-609(754)/RAS癌遺伝子阻害剤、BMS-182751/経口白金、UFT(テガフール・ウラシル)、Ergamisol/レバミゾール、Eniluracil/776C85/5FU増強剤、Campto/レバミゾール、Camptosar/イリノテカン、Tumodex/Ralitrexed、ロイスタチン/クラドリビン、Paxex/パクリタキセル、Doxil/リポソーム系ドキソルビシン、Caelyx/リポソーム系ドキソルビシン、Fludara/フルダラビン、ファルモルビシン/エピルビシン、DepoCyt、ZD1839、LU79553/Bis-ナフタルイミド(Naphtalimide)、LU103793/ドラスタチン(Dolastain)、Caetyx/リポソーム系ドキソルビシン、Gemzar/ゲムシタビン、ZD0473/Anormed、YM116、ヨウ素シード、CDK4およびCDK2阻害剤、PARP阻害剤、D4809/Dexifosamide、Ifes/Mesnex/イホスファミド(Ifosamide)、Vumon/テニポシド、Paraplatin/カルボプラチン、プラチノール(Plantinol)/シスプラチン、ベプシド/エトポシド、ZD9331、タキソテール/ドセタキセル、グアニンアラビノシドのプロドラッグ、タキサンアナログ、ニトロソ尿素、アルキル化剤、例えばメルファラン(melphelan)およびシクロホスファミド、アミノグルテチミド、アスパラギナーゼ、ブスルファン、カルボプラチン、クロラムブシル(Chlorombucil)、シタラビンHCl、ダクチノマイシン、ダウノルビジンHCl、エストラムスチンリン酸エステルナトリウム、エトポシド(VP16-213)、フロクスウリジン、フルオロウラシル(5-FU)、フルタミド、ヒドロキシ尿素(ヒドロキシカルバミド)、イホスファミド、インターフェロンアルファ-2a、アルファ-2b、ロイプロリド酢酸塩(LHRH放出因子アナログ)、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミンHCl(ナイトロジェンマスタード)、メルカプトプリン、Mesna、ミトタン(o.p'-DDD)、ミトキサントロンHCl、Octreotide、Plicamycin、プロカルバジンHCl、ストレプトゾシン、タモキシフェンクエン酸塩、チオグアニン、チオテパ、ビンブラスチン硫酸塩、Amsacrine(m-AMSA)、アザシチジン、Erthropoietin、ヘキサメチルメラミン(HMM)、インターロイキン2、Mitoguazone(メチル-GAG;メチルグリオキサールbis-グアニルヒドラゾン;MGBG)、ペントスタチン(2'デオキシコホルマイシン)、Semustine(メチル-CCNU)、Teniposide(VM-26)、ならびにビンデシン硫酸塩からなる群から選択され得るが、その通りに限定はされない。
【0100】
免疫療法薬剤は、Ributaxin、Herceptin、Quadramet、Panorex、IDEC-Y2B8、BEC2、C225、Oncolym、SMART M195、ATRAGEN、Ovarex、Bexxar、LDP-03、ior t6、MDX-210、MDX-11、MDX-22、OV103、3622W94、抗VEGF、Zenapax、MDX-220、MDX-447、MELIMMUNE-2、MELIMMUNE-1、CEACIDE、Pretarget、NovoMAb-G2、TNT、Gliomab-H、GNI-250、EMD-72000、LymphoCide、CMA676、Monopharm-C、4B5、ior egf.r3、ior c5、BABS、抗FLK-2、MDX-260、ANA Ab、SMART 1D10Ab、SMART ABL364Ab、およびImmuRAIT-CEAからなる群から選択され得るが、その通りに限定はされない。
【0101】
癌ワクチンは、EGF、抗イディオタイプ癌ワクチン、Gp75抗原、GMKメラノーマワクチン、MGVガングリオシドコンジュゲートワクチン、Her2/neu、Ovarex、M-Vax、O-Vax、L-Vax、STn-KHL theratope、BLP25(MUC-1)、リポソーム系イディオタイプワクチン、Melacine、ペプチド抗原ワクチン、毒素/抗原ワクチン、MVAに基づくワクチン、PACIS、BCGワクチン(vacine)、TA-HPV、TA-CIN、DISCウイルス、およびImmuCyst/TheraCysからなる群から選択され得るが、その通りに限定はされない。
【0102】
モノクローナル抗体などの免疫療法薬剤と併せてのIS-SNAの使用は、ADCCの有意な向上、ナチュラルキラー(NK)細胞の活性化、およびIFNαレベルの増大を包含するいくつものメカニズムによって長期生存を増大させる能力がある。IS-SNAは、モノクローナル抗体との組み合わせとして用いられるときには、生物学的な結果を達成するために要求される抗体の投薬量を縮減するように働く。
【0103】
本発明の製剤は医薬的に受け入れられる溶液中において投与され、定型的には、これは塩、緩衝剤、保存料、適合性担体、アジュバント、および任意に他の治療成分の医薬的に受け入れられる濃度を含有し得る。
【0104】
治療への使用のためには、IS-SNAの有効量が、IS-SNAを所望の表面に送達するいずれかのモード、例えば経粘膜、全身によって対象に投与され得る。本発明の医薬組成物を投与することは、当業者に公知のいずれかの手段によって成し遂げられ得る。好ましい投与経路は、経口、非経口、筋肉内、鼻腔内、舌下、気管内、吸入、眼内、経膣、および直腸を包含するが、これに限定されない。いくつかの態様において、好ましい経路は静脈内注射、腫瘍内注射、および皮下を包含する。
【0105】
医薬組成物は、好適な固体またはゲル相の担体または賦形剤をもまた含み得る。かかる担体または賦形剤の例は、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、種々の糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、およびポリエチレングリコールなどのポリマーを包含するが、これに限定されない。
【0106】
IS-SNAならびに任意に他の治療薬および/または抗原は、そのままで(ニートで)または医薬的に受け入れられる塩の形態で投与され得る。薬に用いられるときに、塩は医薬的に受け入れられるべきであるが、医薬的に受け入れられない塩は、その医薬的に受け入れられる塩を調製するために便利に用いられ得る。かかる塩は、次の酸から調製されるものを包含するが、これに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、リンゴ酸、酢酸、サリチル酸、p-トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン-2-スルホン酸、およびベンゼンスルホン酸。かかる塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、例えばカルボン酸基のナトリウム、カリウム、またはカルシウム塩としてもまた調製され得る。
【0107】
好適な緩衝剤は:酢酸および塩(1-2%w/v);クエン酸および塩(1-3%w/v);ホウ酸および塩(0.5-2.5%w/v);ならびにリン酸および塩(0.8-2%w/v)を包含する。好適な保存料は、塩化ベンザルコニウム(0.003-0.03%w/v);クロロブタノール(0.3-0.9%w/v);パラベン(0.01-0.25%w/v)、およびチメロサール(0.004-0.02%w/v)を包含する。
【0108】
本発明の医薬組成物は、IS-SNAの有効量と任意に抗原および/または他の治療薬剤とを含有し、任意に、医薬的に受け入れられる担体中に包含される。用語医薬的に受け入れられる担体は、ヒトまたは他の脊椎動物への投与にとって好適である1つ以上の適合性の固体または液体フィラー、希釈剤、またはカプセル封入物質を意味する。用語担体は、活性成分が適用を容易化するために組み合わせられる、天然または合成の有機または無機成分を指す。医薬組成物のコンポーネントは、所望の医薬的効率を実質的に損なうであろう相互作用がないような様式で、本発明の化合物と、および互いと混ぜ合わせられることもまたできる。
【0109】
本発明は、その適用において、次の記載において説明または図面において図解されているコンポーネントの構築および配置の詳細に限定されない。本発明は、他の態様、および種々のやり方で実践または実施されることができる。また、本明細書において用いられる言い回しおよび術語は記載の目的のためであり、限定すると見なされるべきではない。本明細書において、「包含する」、「含む」、または「有する」、「含有する」、「関わる」、およびその変形の使用は、その後に挙げられている項目およびその均等物、ならびに追加の項目を包摂することを意味されている。
【0110】
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの均等物を、認識するか、またはせいぜい定型的な実験作業を用いて確かめる能力があるであろう。かかる均等物は次の請求項によって包摂されることを意図されている。
【0111】
特許文書を包含する本明細書において開示される全ての参照は、それらの全体が参照によって組み込まれる。
【実施例
【0112】
例1.TLR9を標的化する球状核酸は、単独治療としておよび抗PD-1抗体との組み合わせとして、シンジェニック腫瘍モデルにおいて強力な抗腫瘍活性を示す
結果
実験1:IS-SNAの皮下および腫瘍内投与(CT26腫瘍)
IS-SNAを、CT26腫瘍(サイズ~100mm3)保有Balb/cマウスに腫瘍内投与した。IS-SNAを3.2または6.4mg/kgで第10、13、16、19、および22日に投薬した(図1)。腫瘍サイズが2000mm3に達するまで、腫瘍体積を週あたり2回測定した。結果は、IS-SNAの腫瘍内および皮下送達両方が用量依存的な様式で強い抗腫瘍効果を発揮したということを指示している。結果は、増大したIS-SNA投薬量によるマウスの増大した生存をもまた指示している。
IS-SNAは、皮下(図2)または腫瘍内送達(図3)どちらかについて抗腫瘍効果の類似のレベルを示した。
【0113】
実験2:IS-SNAの腫瘍内投与(MC38腫瘍)
IS-SNAを、~100mm3のMC38腫瘍を保有するC57bl/6マウスに腫瘍内投与した。IS-SNAを0.8、3.2、または6.4mg/kgで第9、12、15、18、および21日に投薬した(図4)。腫瘍サイズが2000mm3に達するまで、腫瘍体積を週あたり2回測定した。結果は、IS-SNAが強力な抗腫瘍効果を用量依存的な様式で発揮したということを指示している。IS-SNAは6.4mg/kg投薬量においてMC38腫瘍成長を完全に退縮させる能力があった(図5)。結果は、用量依存的な様式でのマウスの増大した生存をもまた指示している(図6)。
【0114】
実験3:PD-1との組み合わせとして静脈内投与されたIS-SNA(EMT-6腫瘍)
IS-SNA抗腫瘍効果を、EMT-6乳癌の~100mm3サイズ腫瘍を保有するBalb/cマウスにおいて、単独治療としておよびチェックポイント阻害剤a-PD-1との組み合わせとしてモニタリングした。IS-SNAを0.8mg/kgで第10、13、16、19、および21日に静脈内(IV)投与し、a-PD-1を10mg/kgで第3、6、10、13、17、20、23、および27日に腹腔内に与えた(図7)。腫瘍サイズが2000mm3に達するまで、腫瘍体積を週あたり2回測定した。結果は、IS-SNAの静脈内投与が、単独でおよびチェックポイント阻害剤との組み合わせとして両方で、強い抗腫瘍応答を行使し得るということを指示している(図8)。加えて、IS-SNAおよびa-PD-1の組み合わせ群はIS-SNA単独よりも向上した動物生存を有し、a-PD-1抵抗性のEMT-6乳癌モデルにおける組み合わせの相乗的効果を示唆している(図9)。
【0115】
実験4:PD-1との組み合わせとして皮下投与されたIS-SNA(EMT-6腫瘍)
IS-SNA抗腫瘍効果を、~4mm3サイズEMT-6乳癌腫瘍を保有するBalb/cマウスにおいて、単独治療としておよびチェックポイント阻害剤a-PD-1との組み合わせとしてモニタリングした。IS-SNAを0.8mg/kgで第3、6、9、12、および15日に腫瘍細胞接種部位の周りに皮下投与し(腫瘍周辺)、a-PD-1を10mg/kgで第3、8、および13日に腹腔内に与えた(図10)。腫瘍サイズが2000mm3に達するまで、腫瘍体積を週あたり2回測定した。5匹の動物の所属リンパ節におけるTエフェクター/T制御性の比(Teff/Treg)を第10日に測定して、メカニズム的理解を探った。結果は、IS-SNAの皮下投与が、単独でおよびチェックポイントのブロックとの組み合わせとして両方で、強い抗腫瘍応答を行使し得るということを示唆している。IS-SNAおよびa-PD-1の組み合わせは、動物における腫瘍成長を完全に退縮させた(図11)。メカニズム的キャラクタリゼーション結果は、Teff/Tregの平均値がIS-SNA+a-PD-1ではIS-SNA単独と比較して高いということを示し、組み合わせ群のより高い抗腫瘍効果が予想されたメカニズムによるということを示唆した(図12)。
【0116】
実験5:PD-1との組み合わせとして皮下投与されたIS-SNA(B16F10腫瘍)
IS-SNA抗腫瘍効果を、~4mm3サイズのB16F10メラノーマ腫瘍を保有するC57BL/6マウスにおいて、単独治療としておよびチェックポイント阻害剤a-PD-1との組み合わせとしてモニタリングした。IS-SNAを0.8mg/kgで第3、6、9、12、および15日に腫瘍細胞接種部位(腫瘍周辺)に皮下投与し、a-PD-1を10mg/kgで第3、7、11、および15日に腹腔内に与えた(図13)。腫瘍サイズが2000mm3に達するまで、腫瘍体積を週あたり2回測定した。結果は、IS-SNAの皮下投与が、単独でおよびチェックポイントのブロックとの組み合わせとして両方で、強力な抗腫瘍応答を行使し得るということを示唆している。IS-SNAおよびa-PD-1の組み合わせは、動物における腫瘍成長を完全に退縮させた(図14)。
【0117】
材料および方法
オリゴヌクレオチド合成.オリゴヌクレオチドは自動の固体支持体ホスホロアミダイト合成を用いて合成した。IS-SNA配列は5-T*C*C*A*T*G*A*C*G*T*T*C*C*T*G*A*C*G*T*T-(SP18)-(SP18)-コレステロール(配列番号1)であり、*=「PS」置換かつSP18=ヘキサエチレングリコールスペーサー18分子
リポソーム合成.リポソームは、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)(137mM NaCl、10mM リン酸、2.7mM KCl、pH7.4、hyclone)によって水和された1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)の押し出しによって、50nmポアを有する47mm直径ポリカーボネート膜(Sterlitech)を用いて合成した。リポソーム直径はMalvern Zetasizer Nano(Malvern Instruments)を用いる動的光散乱を用いて測定した。DOPC濃度はホスファチジルコリン定量キット(Sigma)を用いて決定した。
SNA合成(IS-SNA).SNAを作るためには、オリゴヌクレオチドをリポソームに対して100:1比で混合すること、次に4hの室温でのインキュベーションによって、コレステロールをコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドをリポソームの表面に取り付けた。それから、リポソームを300KDa透析膜(Spectrum Labs)によるKrosFlo透析濾過系を用いてTFFによって濃縮した。リポソーム濃度はDOPC濃度、リポソーム直径、およびホスファチジルコリン頭部基面積(0.71nm2)を用いて計算した。オリゴ濃度は、リポソームを100%メタノール中に溶解することによって、UV分光光度計によって決定した。この平均担持はリポソームあたり100オリゴヌクレオチドであると決定された。
マウス腫瘍モデル.CT26モデル(実験1)については、7から8週齢雌Balb/cマウス(Charles River)に1×106個のCT26腫瘍細胞を脇腹に皮下接種した。
MC38モデル(実験2)については、7から8週齢雌C57BL/6マウス(Charles River)に1×106個のMC38腫瘍細胞を脇腹に皮下接種した。
EMT-6モデル(実験3および4)については、7から8週齢Balb/cマウス(Charles River)に1×106個のEMT-6腫瘍細胞を脇腹に皮下接種した。
B16F10モデル(実験5)については、7から8週齢雌C57BL/6マウス(Charles River)に0.2×106個のB16F10腫瘍細胞を脇腹に皮下接種した。
腫瘍サイズはキャリパーを用いて2次元で毎週2回測定し、体積は式:
腫瘍体積=(幅2×長さ)/2
を用いてmm3で提示した。
IS-SNAおよびa-PD-1(クローン:RMP1-14、カタログ:BE0146、アイソタイプ:ラット2A3、Bioxcell)の投薬スケジュールは対応する実験の模式図に示されている。防止モデルでは、IS-SNAを腫瘍細胞接種後の第3日にスタートして投薬し、一方、確立された腫瘍モデルでは、IS-SNAの投薬は群の平均腫瘍体積が100mm3腫瘍サイズに達したときにスタートした。ある種の実験においては、腫瘍および腫瘍所属リンパ節を浸潤免疫細胞の測定のために収穫した。群間における統計的比較は、GraphPad Prism 6.05を用いてSidakの(2元配置ANOVA)ポストホック多重比較によるANOVAによって行った。群間の違いはp<0.05のときに有意と考えられた。
FACS分析.浸潤(infiltrate)免疫細胞を、各収集サンプルからFACS分析によってキャラクタリゼーションした。簡潔には、収集サンプルを機械的解離によって処理し、100μL染色緩衝液(PBS、0.2%BSA、0.02%NaN3)中に調製した。それから、選ばれたマーカーを狙う抗体を、各抗体についてサプライヤーによって記載された手続きに従って追加した。
マウスサンプルによる免疫細胞の集団のキャラクタリゼーションのためのFACS分析に用いた抗体およびそれらのそれぞれのアイソタイプは、下の表に挙げられている。混合物を暗所において室温で20から30分間に渡ってインキュベーションし、洗浄し、200μL染色緩衝液中に再懸濁した。サンプルはコントロールアイソタイプ抗体によってもまた処理した。
インキュベーション期間の終わりに、必要な場合には細胞を透過処理緩衝液によって洗浄し、遠心し、参照マイクロビーズ溶液(PKH26、Ref P7458、Sigma。染色緩衝液によって1/2希釈した)中に再懸濁した。全てのサンプルはFACS分析まで氷上で保管し、光から保護した。染色された細胞を、波長405、488、および633nmの3つの励起レーザーを備えるCyFlow(登録商標)spaceフローサイトメーター(LSRII、BD Biosciences)によって分析した。FACSデータは、10,000個のmCD45+イベントが各サンプルについて記録されるまで、または2分という最大継続期間に渡ってどちらかで取得した。全てのイベントは取得の間にセーブした。
【表1】

【表2-1】

【表2-2】
【0118】
参照
【数1】
例2.TLR9を標的化する球状核酸は、サルにおける免疫応答とマウスにおける抗PD-1抗体による抗腫瘍免疫とを誘導する
【0119】
要約
TLR9アゴニストは抗腫瘍活性について臨床評価されてきたが、あまり成功はなかった。球状核酸(SNA)は、ナノ粒子コア上のオリゴヌクレオチドの密な球状配置に基づく新規薬剤であり、直鎖状の治療オリゴヌクレオチドの限界を克服する。TLR9アゴニストSNAは、直鎖状オリゴヌクレオチドと比較して、細胞取り込みおよびTLR9活性化をインビトロで増大させた。インビボでは、マウスおよびサルにおいて、SNAは直鎖状オリゴヌクレオチドと比較して高いTH1型サイトカインを誘導した。マウス腫瘍モデルでは、SNAは腫瘍成長を阻害し、マウス生存を延長した。SNAおよび抗PD-1の組み合わせは、どちらかの薬剤単独と比較して抗腫瘍効果を向上させた。SNA処置されたマウス腫瘍組織および所属リンパ節は、増大した細胞傷害性T細胞ならびに縮減されたTregおよび単球様MDSCを示した。腫瘍再負荷は腫瘍特異的な免疫記憶を実証した。これらの研究は、単独治療としておよびチェックポイント阻害剤との組み合わせとして、有望な癌免疫治療としてのTLR9アゴニストSNAを支持している。
【0120】
序論
自然免疫系による病原体および危険シグナルの認識はパターン認識受容体(PRR)に依存する。Toll様受容体(TLR)はPRRのクラスの1つである。ヒトでは、11個のTLR、TLRl-11が同定されている。TLR9はヒトB細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC)のエンドソーム区画に発現されている。TLR9は、CpGモチーフと言われる特定の配列文脈に存在する非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する細菌性および合成のオリゴヌクレオチド(オリゴ)を認識する(1-5)。CpGオリゴヌクレオチドによるTLR9刺激は、TH1型の自然および適応免疫応答の生成をもたらす(6、7)。TLR9アゴニストは、配列特徴とそれらが生成する特定の免疫刺激性プロファイルとに基づいてA、B、およびCクラスに分類される(8)。TLR9アゴニストの全ての3つの型は癌および感染性疾患の前臨床(8-10)および臨床試験(11)において鋭意に評価されてきた。
自然および適応免疫応答両方を刺激するTLR9アゴニストのポテンシャルは腫瘍学コミュニティーの注目を集め、3ダース超の治験がTLR9アゴニストを用いて癌患者に行われてきた。TLR9アゴニストのBクラスに属するCpG7909(ODN2006、PF-3512676、およびProMuneとしてもまた公知)は最も鋭意に研究された(12)。CpG7909を包含する今までに評価されたTLR9アゴニストは、それらの不良な細胞取り込みゆえに、単独治療として十分な抗腫瘍応答を生成することもせず、他の承認抗癌剤と組み合わせられたときに有効性を改善することもなかった(12、13)。
SNAは核酸の三次元配置であり、密に充填されたオリゴヌクレオチドが中心のナノ粒子コア上に放射状に配置されている(14、15)。SNAプラットフォームは高度に適応性であり、免疫刺激性および免疫制御性オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、ならびにmiRNAを包含する種々の核酸クラスに用いられ得る(16)。加えて、SNAは、ペプチド、蛋白質、または標的化抗体をオリゴヌクレオチドと一緒にナノ粒子上に包含するように設計され得る(17-19)。中心のナノ粒子コアは、SNAを形成するための構造的要素として機能し、金、シリカ、または脂質二重層を包含する種々の材料からでき得る(16)。他の普通に用いられるオリゴヌクレオチド送達系、例えばカチオン性脂質、ポリマー、またはリポソームによるカプセル封入とは違って、SNA上のオリゴヌクレオチドは外的に露出しており、TLR9などの膜貫通受容体を包含するそれらの標的との相互作用のために難なく利用可能である。SNAは、スカベンジャー受容体によって細胞に取り込まれ、TLR9が発現されるエンドソーム内に送達されることが示されている(20-22)。
SNA特性を利用して、TLR9アゴニストオリゴヌクレオチドを中性のDOPC脂質コアの周りのSNAとして製剤化し(表3)、それらの免疫刺激性プロファイルをマウスおよび非ヒト霊長類(NHP)においてインビトロおよびインビボで、抗腫瘍有効性をマウス腫瘍モデルにおいて算定した。TLR9アゴニストSNAは、細胞に基づくアッセイにおいてTLR9の特異的活性化を示し、インビトロおよびインビボでTH1型サイトカインを誘導し、単独治療としておよび抗PD-1チェックポイント阻害剤(CPI)との組み合わせとして両方で、マウス腫瘍モデルにおける抗腫瘍免疫を促進した。SNAは、SNA処置されたマウスの腫瘍微小環境(TME)および所属リンパ節(DLN)において、細胞傷害性T細胞を増大させかつ制御性T細胞および単球様骨髄系由来サプレッサー細胞(mMDSC)を縮減することによって、抗腫瘍免疫を促進した。
【表3-1】

【表3-2】
結果
【0121】
直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してSNAの増大した細胞取り込み
SNAおよびSNAフォーマットではない直鎖状オリゴヌクレオチドの細胞取り込みを、ヒト末梢血単核細胞(hPBMC)を蛍光標識SNA1または直鎖状オリゴ2とインキュベーションすることによって研究した。フローサイトメトリーによって測定すると、蛍光標識SNA1による処置後には、直鎖状オリゴ2よりもPBMCの大きい画分がフルオレセイン陽性であった(図15A)。加えて、SNA処置された細胞の平均蛍光強度はより優れており、SNAフォーマットとして送達されたときには、各細胞が直鎖状オリゴよりもオリゴヌクレオチドの優れた数を取り込むということを指示した(図16)。
【0122】
直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してSNAによる優れたTLR9活性化
SNA1および直鎖状オリゴ2によるTLR9活性化を、ヒトTLR9によって安定にトランスフェクションされたHEK293細胞において評価した。インキュベーションの4時間の後に、TLR9活性化は、SNA1では1.25μMの濃度において直鎖状オリゴ2よりも約2倍優れていた(図15B)。測定されたEC50はSNA1および直鎖状オリゴ2についてそれぞれ0.88および2.59μMであった。直鎖状オリゴ2と比較してSNA1の高いTLR9活性化は、先の実験において観察されたSNAの増大した細胞取り込みと整合している。
【0123】
TLR9アゴニストSNAの特異性
SNAによる刺激がTLR9特異的であることを確認するために、TLRなし(ヌル)、あるいはRNAに基づく核酸を認識するヒトTLR3、TLR7、もしくはTLR8、またはTLR9によって安定にトランスフェクションされたHEK293レポーター細胞を用いた。TLR9を発現するHEK細胞のみがSNA1によって刺激されている(図15C)。そのCpGジヌクレオチドがGpCジヌクレオチドに取り替えられているコントロールSNA5は、TLR9をうまく活性化せず、SNA中のCpGジヌクレオチドがTLR9の効率的な相互作用および刺激のために要求されるということを示唆した。TLR3、TLR7、またはTLR8を発現するHEK細胞はSNA1ではなくそれらのそれぞれのリガンドによって活性化されており(図15C)、SNA1がそれらの特定のTLRを刺激しないということを示唆している。SNA1とのTLRヌル細胞のインキュベーションはいずれかの活性化を示さず、SNA1による刺激がTLR9特異的であるということをさらに確認した。
【0124】
マウスおよびヒト初代細胞培養物におけるTLR9アゴニストSNAによるサイトカイン誘導
細胞株におけるSNAアゴニストのより優れた細胞取り込みおよびTLR9特異的活性化を確立したので、それから、マウス脾細胞においてTLR9アゴニストによって誘導されるサイトカインプロファイルを研究した。初代マウス脾細胞をSNA3または直鎖状オリゴ4と一晩インキュベーションしたときには、両方の化合物で、細胞培養物上清中のTH1型サイトカイン、IL-2、IL-6、IL-12、IFN-γ、TNF-α、およびIL-10のレベルの増大が観察された(図17A)。IL-3、IL-4、IL-5、またはIL-17などのTH2型サイトカインは、観察されなかったかまたはわずかに観察された(図18A)。一般的に、IL-10を例外として、マウス脾細胞においては直鎖状オリゴ4よりもTH1型サイトカインの高いレベルがSNA3によって誘導された(図17A)。
類似に、複数の健康なヒトボランティアPBMC培養物について、ヒト特異的SNA1および直鎖状オリゴ2によって実験を実施した。一般的に、直鎖状オリゴ2と比較して、TH1型サイトカイン、IL-6、IL-12、IFN-γ、TNF-α、IP-10、およびIL-10の高いレベルが、SNA1によって初代hPBMCにおいて誘導された(図17B)。コントロールSNA5は、PBSコントロールに類似のサイトカイン誘導のバックグラウンドレベルを示した(図17B)。さらに、ヒトPBMCにおけるサイトカイン誘導は用いたSNA1の濃度に依存した(図18B)。
【0125】
マウスにおけるインビボのSNAによるサイトカイン誘導
次に、C57BL/6マウスへのSNA3および直鎖状オリゴ4の皮下投与後の全身性のサイトカイン誘導のレベル、速度論、および型を算定した。SNA3および直鎖状オリゴ4両方はマウスにおける全身性のTH1型サイトカイン応答を誘導した。直鎖状オリゴTLR9アゴニストに対するピークの血清中サイトカイン応答は、先に報告されているように投与の2および6hr後の間に生じた(23-25)。しかしながら、SNA3に対するピークのサイトカイン応答は投与の8および12hr後の間に生じた(図17C)。マウスにおけるサイトカイン誘導の類似の時系列が、ヒトTLR9選択的なSNA1によって観察された(図19A)。SNA3はTH1型サイトカイン、IL-6、IL-12、およびIFN-γ、ならびにケモカイン、MIP-1α、MCP-1、およびRANTESを誘導し、誘導は投与されたSNA3の投薬量に依存した(図17D)。予想されたようにより低い程度までではあるが、SNA1もまたマウスにおける用量依存的なサイトカイン誘導を示した(図19B)。そのCpGジヌクレオチドがGpCジヌクレオチドに取り替えられているコントロールSNA5はサイトカイン応答を刺激せず(図19B)、CpGジヌクレオチドの存在がTLR9によって媒介されるサイトカイン誘導のために要求されるということを指示した。
【0126】
非ヒト霊長類におけるインビボのTLR9アゴニストSNAの免疫応答プロファイル
TLR9の発現はげっ歯類および霊長類において異なるので(26-29)、NHPにおけるインビボのSNA1の免疫応答プロファイルを評価した。カニクイザルにおけるSNA1の皮下投与は、B細胞およびpDC活性化両方の用量依存的な増大ならびにpDC成熟をSNA投与後の24hrに誘導した(図20A)。SNA1は同じ時点においてNK細胞、T細胞、およびmDCの活性化をもまた示した(図20A)。SNA1投与は用量依存的な血清中サイトカイン誘導に至った(図20B)。しかしながら、ピーク濃度は、サイトカイン型および投与されるSNAの投薬量にもまた依存して8から16hrまで様々であった(図20C)。インビトロのマウスおよびヒト初代細胞培養物ならびにインビボのマウス研究において見られたように、NHPにおいてTH1型サイトカインプロファイルが観察された。加えて、循環血液細胞集団のレベルの一過的変化が、研究した全ての投薬量レベルで観察された。霊長類において他のTLR9アゴニストで報告されているように(30、31)、循環血液細胞集団はSNA投与後の72-96hr以内に投薬前レベルに戻った(図21)。
【0127】
TLR9アゴニストSNAによる腫瘍免疫治療
それぞれNHPおよびげっ歯類におけるインビボのSNA1およびSNA3による強い持続的なTH1型サイトカイン誘導を見たので、マウス腫瘍モデルにおけるSNA3の有効性を算定した。MC38大腸腫瘍を保有するマウスに、平均腫瘍体積(MTV)が約100mm3に達したときから始まって、SNA3の0.2、0.8、および1.6mg/kgを、合計で5回のために毎週2回腫瘍内注射した。全ての3つの投薬量レベルにおいて、統計的に有意な用量依存的な腫瘍成長阻害(TGI)があった(図22A)。最も高い投薬量においては、88%のTGIが観察された。TGIに付随して、マウス生存の用量依存的な増大が、ビヒクル群のマウスと比較してSNA3処置群において観察された。メディアン生存は、ビヒクル群の23日と比較して、最も低い投薬量の群では約40日、2つのより高い投薬量の群では>50日であった。これらの結果は、TLR9アゴニストSNAが強力なTGIを示し、マウス生存を延長するということを実証している。腫瘍内投与後のSNAによる自然免疫サイトカイン誘導を算定するために、別個の研究において、最初の投薬の投与後の4時間における腫瘍保有マウスのSNA3に対する血清中サイトカイン応答を測定した。用量依存的なTH1型サイトカイン誘導が腫瘍保有マウスの血清中に観察された(図23)。
【0128】
抗PD-1との組み合わせとしてのTLR9アゴニストSNAによる腫瘍免疫治療
腫瘍治療は、免疫応答の阻害を縮減することによって機能し、それによって抗腫瘍免疫応答の拡大を許すCPIの利用可能性が原因で、近年大いに利益を得てきた(32)。残念ながら、CPIは患者の10-30%においてのみ有効であり(33、34)、そのため、CPI有効性を向上させるための組み合わせ治療の強い必要がある。免疫応答の拡大を支持するCPIとの、免疫応答を促進する免疫刺激性TLR9アゴニストSNAの組み合わせは、それらの2つの治療アプローチのメカニズムを相乗化するための合理的アプローチである。腫瘍内への0.2mg/kg投薬量でのSNA3および腹腔内への5mg/kg投薬量での抗PD-1抗体の組み合わせを、MC38大腸腫瘍モデルにおいて投与した。両方の薬剤を、MTVが約100mm3であるときにスタートして、合計で5回のために週2回投与した。SNAおよび抗PD-1の組み合わせ処置の相乗性が観察され、SNA3および抗PD-1単独治療のそれぞれ77%および80%のTGIと比較して、最高で93%までのTGIであった(図22B)。組み合わせ処置のマウスのメディアン生存は、両方の単独治療群の約40日またはビヒクル群の約23日と比較して>50日であった。
上の実験において、SNA3は5回のために週2回投与された。次に、マウスMC38大腸腫瘍モデルにおいて、単独治療としてまたは抗PD-1との組み合わせとしてどちらかで、SNA3の1.6mg/kg投薬量を、5回のために週1回または2回投与することによって、腫瘍成長に対するSNA投薬スケジュールのインパクトを算定した。SNA単独治療の毎週1回の投薬スケジュールは、毎週2回処置群のものに類似のTGIおよびマウス生存を示した(図22C)。SNA+抗PD-1組み合わせ治療の毎週1回および毎週2回の投薬もまた算定した。88-90%のTGIが1.6mg/kg SNA単独治療によって達成されたので、組み合わせ治療群では90-94%のTGIへの小さい追加の増加のみがあった。SNA単独治療で見られたように、SNA+抗PD-1組み合わせ治療の毎週1回の投薬はSNA+抗PD-1組み合わせ治療の毎週2回の投薬に類似のTGIを示した(図22D)。
ヒトTLR9アゴニストはマウスTLR9と係合することが公知であるので、それぞれヒトおよびマウス選択的なSNA1および3の抗腫瘍効果をMC38腫瘍モデルにおいて比較した。本研究の投薬量レベルはマウスにおける2つの化合物の血清中サイトカイン用量反応研究に基づいて選択した(図17Dおよび図19B)。これらの研究に基づいて、SNA3と比較して、50%高い投薬量がSNA1にとって適当であることが予期された。MC38腫瘍モデル研究を、ヒト(SNA1)およびマウス(SNA3)選択的なSNAのそれぞれ2.4mg/kgおよび1.6mg/kgの投薬量で実施した。予想されたように、SNA1およびSNA3は、単独治療として(図22E)および抗PD-1との組み合わせとして、互いに類似のTGIおよびマウス生存を生成した。これらの結果は、SNA1の抗腫瘍有効性と、異なるオリゴヌクレオチド配列を有するSNA構造の有用性とを実証している。
数個の処置群のマウスは研究の終わり(第50日)まで生存したので、毎週2回のSNA3(1.6mg/kg)+抗PD-1処置群(図22Dを見よ)の生存マウスに、腹腔内においてMC38腫瘍細胞を再負荷した。コントロールとして、同一の様式でナイーブマウスの群に負荷した。コントロール群の全てのナイーブマウスは腫瘍成長を示し、6匹のうち5匹は腫瘍の重さが原因で腫瘍接種の日から39日以内に屠殺した。一方、先に処置された群のマウスは腫瘍成長を示さず、処置群における強い腫瘍特異的記憶応答を示唆した(図22F)。
【0129】
EMT6乳癌モデルにおけるSNA単独治療
次に、TLR9アゴニストSNAの有効性を、抗PD-1抗体処置に対して非感受性である腫瘍モデル(34)、マウスEMT6乳癌モデルにおいて算定した。マウスに第0日にEMT6腫瘍細胞を接種した。MTVが100mm3であった腫瘍接種の10日後に始まり、SNA3を合計で5回のために3日毎に0.8および3.2mg/kg投薬量で皮下投与した。MC38モデルのように、EMT6乳癌モデルにおいてもまた、SNA処置は用量依存的な統計的に有意なTGIをもたらした(図24A)。さらに、SNA3による腫瘍成長の阻害はマウスの延長した生存をもたらした。ビヒクル群のマウスは33.5日というメディアン生存を示し、0.8および3.2mg/kg SNA3投薬群のマウスのメディアン生存はそれぞれ39および>50日であった。
それから、SNA治療の抗腫瘍効果を反対側の腫瘍によって算定した。マウスに第0日に両方の脇腹にEMT6腫瘍を接種し、処置はMTVが100mm3に達した第10日に始まった。SNA3を1つの脇腹の腫瘍近くの皮下注射によって腫瘍周辺に3.2mg/kgで投与し、両方の脇腹の腫瘍の腫瘍成長をモニタリングした。SNA3単独治療による処置は両方の脇腹の腫瘍の有意なTGIをもたらした(図24B)。
加えて、ヒト特異的SNA1および負のコントロールSNA5の有効性をEMT6モデルにおいて研究した。100mm3のEMT6腫瘍を保有するマウスに、SNA1またはコントロールSNA5を3.6mg/kgで5週間に渡って毎週1回腫瘍内注射した。SNA3で見られたように、SNA1単独治療によって処置されたマウス(図24C)は、コントロールSNA5では観察されなかった統計的に有意なTGIを発揮した。SNA1単独治療は腫瘍保有マウスの生存の付随的増大をもまたもたらし、全てのマウスは>42日生存した。一方、ビヒクルおよびコントロールSNA5によって処置されたマウスのメディアン生存はそれぞれ31.5および35.5日であった。
【0130】
EMT6モデルにおける抗PD-1による組み合わせ治療
次に、SNA3および抗PD-1の組み合わせの効果をEMT6腫瘍モデルにおいて研究した。SNA3または直鎖状オリゴ4を、腫瘍接種後の第3日にスタートして、合計で5回のために3日毎に0.8mg/kgの投薬量で皮下投与した。抗PD-1を、腫瘍接種後の第5日にスタートして、合計で3回のために5日毎に10mg/kgの投薬量で、単独でまたはSNA3もしくは直鎖状オリゴ4との組み合わせとしてどちらかで腹腔内投与した。抗PD-1単独はビヒクルと比較してTGIを示さなかった(図24D)。先の報告はEMT6腫瘍が抗PD-1処置に対して抵抗性であるということを示しており、本観察はそれらの研究と整合している(35)。抗PD-1と組み合わせた直鎖状オリゴ4はTGIへのわずかなインパクトを有した。一方、抗PD-1と組み合わせたSNA3は8匹のマウスのうち7匹において腫瘍の完全な退縮をもたらし(図24D)、マウスは>44日生存した。
第44日に、コントロールとしてのナイーブマウスの群と一緒に、SNA3+抗PD-1処置群の生存マウスに、逆側の脇腹にEMT6腫瘍細胞を再負荷した。コントロール群のナイーブマウスは予想されたように腫瘍を発生した。対照的に、SNA3+抗PD-1によって先に処置されたマウスは腫瘍成長を示さず、最高で第104日まで生存し(図24E)、SNA3+抗PD-1処置後にこれらのマウスにおいて腫瘍特異的な適応記憶応答が確立されたということを指示した。第104日に、生存マウスに異所性腫瘍細胞のCT26大腸または4T1乳腫瘍細胞どちらかを負荷した。これらの異所性腫瘍はナイーブコントロールマウスのケースのように成長し(図24F)、SNA+抗PD-1処置が異所性のCT26および4T1腫瘍ではなくEMT6腫瘍に対する腫瘍特異的な適応免疫応答に至ったということを指示した。
【0131】
腫瘍保有マウスのSNA処置は制御性およびエフェクターT細胞応答を変調させる
SNAならびにSNAおよび抗PD-1の組み合わせによって誘導される抗腫瘍免疫の背後のメカニズムを理解するために、TMEおよびDLNにおけるT細胞応答をEMT6腫瘍モデルにおいて検査した。腫瘍接種後の第10日に(SNAの3回目の投薬の1日後に)、EMT6腫瘍を保有するマウスを免疫学的算定のために屠殺した(図25A-25D)。FoxP3制御性T細胞(Treg)およびCD8エフェクターT細胞(Teff)を、腫瘍については免疫組織化学によって、DLNについてはフローサイトメトリーによって測定した。TGIを示したSNA単独治療が(図25A)、周辺部腫瘍におけるTregを減少および深部腫瘍におけるTeffを増大させ(図25B)、DLNにおけるTeff:Treg比を増大させる(図25C)ということが観察された。EMT6腫瘍成長を阻害する点で有効ではなかった抗PD-1単独治療は、TMEにおけるT細胞レベルの変化を誘導しなかったが、DLNにおけるTreg細胞の増大およびTeff:Treg比の減少に至った。最も強いTGIを発揮した抗PD-1とのSNAの組み合わせは、周辺部腫瘍Tregを縮減し、周辺部および深部腫瘍Teffを増大させ、抗PD-1単独によって誘導される増大したDLN Tregを防止するかまたは後退させ、DLN Teff:Treg比を増大させた。これらのデータは、SNAおよび抗PD-1による組み合わせ治療におけるTeffおよびTregレベルと腫瘍成長の阻害との間の明瞭な相関を示唆している。加えて、これらの腫瘍におけるmMDSCのレベルを検査した。SNA単独治療後の腫瘍における縮減されたmMDSC、ならびにSNAおよび抗PD-1による組み合わせ治療後のさらなる縮減の傾向が観察された(図25D)。
【0132】
EMT6腫瘍保有マウスにおけるSNAの静脈内投与
健康なボランティアにおけるTLR9アゴニストCpG7909の静脈内投薬はサイトカイン応答を誘導しなかった(31)。初めのステップとして、SNAによって皮下または静脈内処置されたマウスにおける血清中サイトカイン誘導を比較した。類似のサイトカインプロファイルが観察されたが、SNA1が静脈内投与されたときにはサイトカイン応答は早期に(4 vs. 10hr)生ずる(図26)。それから、TLR9アゴニストSNAがEMT6腫瘍を保有するマウスに静脈内投与されたときに抗腫瘍効果を示すであろうかどうかを問うた。SNA3(0.25、1、または2mg/kg)の静脈内投与は、単独で(図27A)または腹腔内投与された抗PD-1との組み合わせとしてどちらかで、用量依存的なTGIに至った(図27B)。加えて、マウス生存はTGIに付随して増大した。ビヒクルおよび抗PD-1単独治療群両方のマウスは34日という類似のメディアン生存を示した。0.25mg/kg SNA3においては、メディアン生存は単独治療として42日、抗PD-1と組み合わせたときに58.5日であった。1および2mg/kg投薬量レベルにおいては、メディアン生存は単独治療としておよび抗PD-1との組み合わせとして両方で>63日であった。これらの結果は、TLR9アゴニストSNAが単独治療としてまたは抗PD-1との組み合わせとしてどちらかでのIV投与後に有効であるということを実証している。
さらに、SNAの静脈内投与が腫瘍特異的な長期記憶応答にもまた至るかどうかを評価するために、SNA3(1および2mg/kg群)の抗PD-1組み合わせ治療群からの生存マウスに、それぞれ1×または2×EMT6腫瘍細胞を爾後に負荷した。再負荷に用いた腫瘍細胞数にかかわらず、腫瘍は拒絶され、腫瘍成長を示さなかった(図27C)。
考察
【0133】
TLR9アゴニストは、B細胞増殖、Ig産生、TH1型サイトカイン誘導、および表面マーカー活性化を包含する自然および適応免疫応答を促進することが示されている。TLR9アゴニストの異なるクラスによって誘導される特異的な免疫応答プロファイルに基づいて、それらは、前臨床および臨床試験において、癌、喘息およびアレルギー、感染性疾患の処置として、ならびにワクチンアジュバントとして鋭意に評価されてきた(13)。BクラスTLR9アゴニストのCpG7909、ISS1018、IMO-2055、およびMGN1703は、あり得る癌治療として、治験において、単独治療としてならびにペプチド、モノクローナル抗体、放射線治療、および化学治療との組み合わせとして評価されてきた(13、36-38)。しかしながら、単独治療としてまたは抗癌剤との組み合わせとしてどちらでも臨床的利益は観察されず、より強力なTLR9アゴニストの必要を明白にした。
【0134】
SNAは薬剤の新規クラスであり、その中ではオリゴヌクレオチドがナノ粒子上に密に充填され、直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してオリゴヌクレオチドの三次元的配置に至る。SNAは、増大した細胞取り込みを容易化し、ヌクレアーゼ分解に抵抗することが示されている(17、39)。ゆえに、公知のTLR9アゴニスト、例えば腫瘍モデルおよび/または治験において鋭意に研究されてきたSNA構造(それぞれSNA1およびSNA3)を造る直鎖状オリゴ2および4を選択して、免疫腫瘍学適用の点でSNAの幅広い治療有用性を確立した。
【0135】
本研究は、SNAフォーマットで提示されたオリゴヌクレオチド(SNA1)が、SNAフォーマットではない同じオリゴヌクレオチド(直鎖状オリゴ)よりも全身循環中の免疫細胞によって効率的に取り込まれるということを明瞭に実証した。これらの結果は、RAW264.7細胞へのSNAのより優れた取り込みという早期の観察と整合しており(17)、初代細胞によるSNAの効率的な取り込みを示している。さらにその上に、SNA1は、細胞株においてTLR9を選択的に、かつ直鎖状オリゴヌクレオチドよりも強力に刺激した。増大したTLR9活性化は、直鎖状オリゴヌクレオチドと比較して、SNAフォーマットのオリゴヌクレオチドの増大したi)細胞取り込みおよびii)ヌクレアーゼ安定性に帰せられ得る。SNAは、SNAのオリゴヌクレオチドへのヌクレアーゼの減少したアクセス性および活性に至るナノ粒子構造の周りの増大した負電荷密度および塩勾配の結果として、直鎖状オリゴヌクレオチドよりも優れたヌクレアーゼ安定性を発揮するということが示されている(39)。
【0136】
初代マウス脾細胞およびヒトPBMCにおいて、それぞれSNA3およびSNA1はTH2ではなくTH1型サイトカイン分泌を誘導する。サイトカイン誘導は時間およびSNA用量依存的である。げっ歯類およびヒト初代細胞両方において、SNAは直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してサイトカインの比較的高いレベルを誘導する。そのCpGジヌクレオチドがGpCジヌクレオチドに取り替えられているコントロールSNAでは、サイトカイン分泌が観察されないか、またはそのバックグラウンドレベルが観察される。これらの結果は、SNAフォーマットのCpGオリゴヌクレオチドがTLR9と選択的に相互作用し、直鎖状のCpGオリゴヌクレオチドよりも効率的にTLR9によって媒介される免疫応答を誘導するということを確立している。
【0137】
インビトロ研究を越えて、SNAがマウスおよびNHPにおいてインビボでTLR9によって媒介される免疫応答を誘導するということが実証された。マウスにおけるSNAの単一の投薬は全身性のTH1型サイトカイン誘導に至り(40)、これらの結果はインビトロの研究とも整合している。加えて、SNAは、同じ配列の直鎖状オリゴヌクレオチドと比較して、マウスにおけるゆっくりで長持ちなサイトカイン誘導プロファイルを示す。直鎖状のCpGオリゴヌクレオチドは投与後の4-8hr以内にサイトカインのピークレベルを誘導することが示されており、これは誘導されるサイトカインの型に依存して12-16hrまでに投薬前レベルに戻る(23-25)。対照的に、SNAはサイトカイン誘導のよりゆっくりとした速度論を示し、ピークレベルは投与の10-16hr後であった。これは、サイトカイン型に依存して、20-24hr、または場合によっては24hrよりも長くまでに投薬前レベルに戻る。SNAによるサイトカイン誘導のよりゆっくりとした速度論は、直鎖状オリゴヌクレオチドと比較してリンパ管から所属リンパ節へのゆっくりとした通過に至るナノ粒子構造の結果であり得るという仮説が立てられる。皮下投与経路に加えて、筋肉内、静脈内、および経鼻投与経路が研究され、類似のTH1型サイトカインプロファイルがマウスにおいて観察されている。
【0138】
TLR9は霊長類(B細胞およびpDC)よりもげっ歯類(B細胞、pDC、マクロファージ、単球、およびmDC)において広く発現されている(27、29)。概念実証として、本研究は、カニクイザルにおけるSNAの急性投与がいずれかの有害事象なしに用量依存的な免疫応答を誘導したということを実証している。NHPに投薬されたSNA投薬量は、有意な局所注射部位反応および臨床パラメータの変化なしに良く忍容された(モニタリングされた臨床観察は材料および方法の項に挙げられている)。SNA投与は、処置の24hr以内に、循環中のpDC集団の成熟、ならびにNK細胞、B細胞、T細胞、mDC、およびpDCの活性化に至った。免疫細胞活性化は用量依存的であり、4.5mg/kg投薬量においてピークになり、それから6mg/kgという最も高い投薬量において鈍った。これらの結果は、TLR9アゴニストがベル形状の用量反応曲線を生成するという先の報告と整合している(8、41、42)。なぜなら、免疫制御回路は炎症応答誘導の閾レベル後に活性化されるからである(10、43)。IP-10は霊長類におけるTLR9活性化の最も確かなバイオマーカーであることが示されている(44)。この観察と整合して、SNAは迅速でロバストな用量依存的なIP-10誘導をNHPにおいて誘導した。NHPへのSNA投与は、24hr以内に、リンパ球、白血球、単球、および好酸球減少ならびに好中球増大によって決定される全身循環の一過的な血液学的変化をもまたもたらす。予想されたように、これらの血液学的変化は翌日または2日に投薬前レベルに戻る。末梢血のこれらの血液学的変化は、霊長類における他のTLR9アゴニストおよびヒトにおける組換えサイトカインについての報告結果ともまた整合している(45-47)。これらの結果は、SNAがTLR9と係合し、げっ歯類およびNHPにおいていずれかの有害事象なしに、強力なTLR9によって媒介される免疫応答を誘導するということを実証している。
【0139】
マウス腫瘍モデルにおいては、TLR9アゴニストSNAの投与は、MC38大腸およびEMT6乳癌モデルにおいて腫瘍成長の用量依存的な縮減および生存の増大を誘導する。マウスおよびヒト特異的SNA両方はマウスにおいて活性であるが、予想されたように、マウス特異的SNAはより低い投薬量レベルにおいて活性である。
【0140】
CPIは、ある種の免疫阻害性蛋白質をブロックすることによって機能する治療薬のクラスであり、抗腫瘍免疫応答が発生または拡大することを許す。CPI治療はCTLA-4、PD-L1、およびPD-1チェックポイント蛋白質を標的化するFDA承認薬物によって近年盛んであり、他の標的が開発中である。しかし、患者の相当数は処置後に再燃するか、またはCPI処置に全く応答しない(33、34)。数個の研究が、CPI処置からの腫瘍エスケープは、消耗したエフェクターT細胞、機能的に損なわれた抗原提示細胞(APC)、および/またはMDSCなどの腫瘍支持細胞型の浸潤の結果であり得るということを示している(48)。TLR9アゴニストは迅速な自然および長期の適応免疫応答を生成することが公知である。TLR9アゴニストは、APCならびにCD4およびCD8 T細胞を包含する免疫細胞の幅広い活性化を生成し、TMEにおいてはTregおよびMDSCを抑制することが示されている(49-51)。ゆえに、TLR9アゴニストSNAの使用は、より大きい患者集団を有効に処置するためにCPIと組み合わせるための合理的アプローチであり得る。予想されたメカニズムと整合して、SNAは抗PD-1感受性(MC38)および非感受性(EMT6)腫瘍モデル両方において抗PD-1との相乗性を示し、増大したTGIおよびマウス生存がある。
【0141】
腫瘍保有マウスへのSNAの投与は、血清中のサイトカイン誘導によって決定される迅速な用量依存的な自然免疫応答を示し、それらは、死んでいく腫瘍から放出される腫瘍関連抗原の存在下において適応免疫応答を橋渡しするために要求される。TLR9アゴニストSNAによって処置されたMC38またはEMT6腫瘍を保有するマウスは同じ腫瘍細胞による再負荷に対して感受性ではなく、SNA処置が処置される腫瘍細胞に対する免疫記憶の形成を誘導するということを指示している。しかしながら、異所性腫瘍細胞株CT-26または4T1による負荷は腫瘍成長をもたらし、免疫記憶応答が腫瘍特異的であるということを確認している。
【0142】
メカニズム的には、抗PD-1非感受性EMT6腫瘍モデルでは、SNA処置はTMEおよびDLN両方において、制御性T細胞に対するエフェクターT細胞の増大した比に至った。抗PD-1単独治療は制御性T細胞を増大させたが、この効果はTLR9アゴニストSNAによる組み合わせ処置においては克服される。さらに、SNA処置後のTME/DLNにおけるTregおよびmMDSCの縮減は、組み合わせ処置群で観察された増大した抗腫瘍有効性を支持し得る。腫瘍内、皮下、または静脈内投与経路によるSNA抗腫瘍活性が本腫瘍モデル研究から明らかである。これらの研究は、ナノ粒子に基づくSNAが種々の投与経路によってヒトに活用され得るということを実証している。
【0143】
一緒にすると、本結果は、TLR9アゴニストSNAが、マウスおよび非ヒト霊長類においてインビトロおよびインビボで、初代免疫細胞によって取り込まれ、SNAフォーマットではない同じ配列のTLR9アゴニスト(直鎖状オリゴ)よりも優れた程度までTLR9を活性化するということを実証している。TLR9アゴニストSNAは、皮下、腫瘍内、および静脈内投与経路によって、用量依存的な腫瘍成長阻害を示し、単独治療として腫瘍保有マウスの生存を延長し、組み合わせ処置として抗PD-1有効性を向上させる。単独でまたはCPIとの組み合わせとしてどちらかでのTLR9アゴニストSNAの作用モードは、迅速な自然免疫応答、次にTMEおよび/またはDLNにおける腫瘍特異的な適応免疫応答の誘導、リンパ球の増大した浸潤、増大したエフェクター細胞集団、ならびに減少したTregおよびmMDSCによってである。過去の癌免疫治療のための直鎖状TLR9アゴニストの失敗とは対照的に、ここで報告されている研究は、単独治療としておよびCPIとの組み合わせとして、癌の処置のためのあり得る候補としてのTLR9アゴニストSNAの使用を強く支持している。
材料および方法
【0144】
DNA合成および精製
コレステロールをコンジュゲーションしたCpGおよびGpCオリゴヌクレオチドをSNA合成に用いた。コレステロール-CpGおよびGpCオリゴヌクレオチドは5'から3'の方向に合成し、直鎖状のCpGオリゴヌクレオチドは、適当な固体支持体上においてβ-シアノエチルホスホロアミダイトケミストリーを用いて3'から5'の方向に合成した。合成は0.2から2.2mモルスケールでAKTA oligopilot plus 100合成機(GE Healthcare)によって実施した。dA、dC、dG、T、スペーサー-18(ヘキサエチレングリコール)、およびTEG-コレステロールの要求される3'および5'-ホスホロアミダイトは、ChemGenes Corporation(Wilmington、MA)から得た。フェニルアセチルジスルフィド(PADS)を酸化剤として用いて、ホスホロチオエートバックボーンを得た。合成後に、オリゴヌクレオチドを固体支持体から切断し、アンモニア溶液を用いる標準的なプロトコールによって脱保護し、RP-HPLCによって精製し、濃度を260nmにおけるUV吸光度を用いて測定した(Cary 100 Bio UV-可視分光光度計)。合成した全てのオリゴヌクレオチドは、分子質量についてはMALDI-TOF質量分析(Brucker Autoflex III)、純度についてはAE-HPLCによってキャラクタリゼーションした。研究に用いたオリゴヌクレオチドの純度は90%から98%の範囲であった(オリゴヌクレオチドキャラクタリゼーションデータについては表4を見よ)。3'末端T上にフルオレセイン標識を有するオリゴヌクレオチドは上に記載されているプロトコールを用いて合成した。化合物を比濁時間分析アッセイによってエンドトキシンについて試験し、エンドトキシンのレベルは<1エンドトキシン単位/mgであった。
【表4-1】

【表4-2】
【0145】
SNA合成
SNAを合成するための全てのステップは無菌環境で行い、用いた試薬はエンドトキシン不含であった。SNAは、コレステロールをコンジュゲーションしたオリゴヌクレオチドの30倍モル過剰を1×PBS中の21±2nm DOPCリポソームに追加することによって合成し、4℃で一晩インキュベーションして、リポソームあたり約30個のオリゴヌクレオチドを得た。SNAサイズをDLSによってZetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、マルバーン、UK)を用いて測定した。
【0146】
蛍光標識オリゴヌクレオチド合成および取り込み
オリゴヌクレオチド合成は上に記載されているように、ただし3'末端チミジン上にはフルオレセイン標識をして行った。SNA合成は上に記載されているように行ったが、3'末端チミジン上にフルオレセイン標識を有する3'-コレステロールオリゴヌクレオチドは、リポソームあたり100個のオリゴヌクレオチドの比で50nm DOPCリポソーム上に担持させた。
【0147】
レポーター細胞株
HEK-Blueレポーター細胞(ヌル1、hTLR3、hTLR7、hTLR8、hTLR9)はInvivoGen(サンディエゴ、CA)から得、サプライヤーの説明書に従って培養した。細胞を、別様に指示されているところを例外として培地交換なしで、テキストに指示されているようにTLRアゴニストSNA、直鎖状オリゴヌクレオチド、またはコントロールGpC SNAによって24時間に渡って処置した;アゴニストのより短い処置のためには、細胞培養培地をその時点で取り除き、細胞を完全培地によって洗浄し、それからフレッシュな完全培地を追加した。正のコントロールとして、hTLR3-HEK-Blue細胞を85nM低分子量ポリI:C(InvivoGen)によって処置し、hTLR7-HEK-BlueおよびhTLR8-HEK-Blueを1μM R848によって処置し、ヌル1-HEK-Blueを10μg/mL PMA(InvivoGen)によって処置した。アゴニストの追加後の24時間に、サプライヤーの説明書に従ってQUANTI-Blue(商標)レポーターアッセイ(InvivoGen)を用いてTLR活性化を定量した。
【0148】
初代細胞単離、培養、およびサイトカイン分析
初代マウス脾細胞はC57BL/6マウスから得た。初代ヒトPBMCは、Zen-Bio(リサーチ・トライアングル・パーク、NC)によって健康なボランティアから得られ常温で一晩輸送されたバフィーコート画分から、Ficoll(Ficoll-Paque(登録商標)PREMIUM媒体(1.078g/ml密度Max.);GE Healthcare)勾配密度遠心法を用いて処理した。マウス脾細胞およびhPBMC両方はフレッシュで(すなわち未凍結で)用いた。初代細胞をTLR9アゴニスト化合物によって一晩処置した。細胞培養物上清のサイトカインレベルをマウスまたはヒト多重サイトカインアレイ(Quansys、ローガン、UT)を用いて測定した。
【0149】
マウス血清サイトカイン分析
インビボのマウス血清サイトカイン研究は、Avastus承認のIACUCプロトコールに従ってAvastus Preclinical Services(ケンブリッジ、MA)において実施した。雌の6週齢C57BL/6マウスにTLR9アゴニスト化合物を皮下注射した。指示されている時間に、または特定されていない場合には10時間において、全血を得、処理して血清を得た。マウス血清中のサイトカインレベルは上に記載されているようにマウス多重サイトカインアレイ(Quansys)を用いて測定した。
【0150】
非ヒト霊長類研究
非ヒト霊長類研究は、MPI Research承認のIACUCプロトコールに従ってMPI Research(マッタワン、MI)において行った。各処置群は体重2-4kgの2-4年齢の2匹の雄および2匹の雌カニクイザルからなった。化合物を第1日に皮下投与した。血液を、投薬前に、および指示されている時点において、フローサイトメトリーによる分析、血液学、および血清中サイトカイン分析のために採った。最後の血液サンプルの収集後に、追加の投薬または化合物による処置に先立って追加の≧14日間に渡って、動物をモニタリングした。研究動物の臨床的モニタリングは少なくとも毎日2回行われ、皮膚、毛、眼、耳、鼻、口腔、胸部、腹、外性器、手足、呼吸系および循環系効果、唾液分泌などの自律神経系効果、振戦、痙攣、ハンドリングに対する反応性、および非通常的な行動を包含する神経系効果の評価を包含したが、これに限定されなかった。
血液学のためには、血液を、投薬前に、ならびに投薬後24、48、72、いくつかのケースにおいては96および168hrに採った。血液学的血液細胞計数および分類はMPI Researchにおいて行った。
フローサイトメトリーのためには、血液を投薬前におよび投薬の24hr後に採り、フレッシュで用いた。フローサイトメトリーはFlowMetric(ドイルスタウン、PA)においてBD FACS Aria機を用いて行われ、CD3+Tリンパ球、CD3+CD69+活性化Tリンパ球、CD3+CD4+ヘルパーTリンパ球、CD3+CD8+細胞傷害性Tリンパ球、CD3-CD16+ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3-CD16+CD69+活性化ナチュラルキラー(NK)細胞、CD3-CD20+Bリンパ球、CD3-CD20+CD86+活性化Bリンパ球、CD3/8/14/20-HLADR+CD11c-CD123+形質細胞様樹状細胞(pDC)、CD3/8/14/20-HLADR+CD11c-CD123+CD86+活性化pDC、CD3/8/14/20-HLADR+CD11c-CD123+CD83+成熟pDC、CD3/8/14/20-HLADR+CD11c+CD123-骨髄系樹状細胞(mDC)、CD3/8/14/20-HLADR+CD11c+CD123-CD83+活性化mDCを算定した。
血液を、投薬前に、ならびに投薬後の1、2、4、8、12、16、24、48、72、および168hrに採り、処理して血清を得た。血清中サイトカインレベルをボストン大学Analytical Instrumentation Core(ボストン、MA)においてMonkey Magnetic 29-Plexパネル(Thermo Fisher、ウォルサム、MA)を用いて算定した。
【0151】
MC38腫瘍モデル
MC38腫瘍研究はCrown Biosciences(カナポリス、NC)においてCrown Biosciences承認のIACUCプロトコールに従って実施した。MC38腫瘍細胞(1×106細胞)を7-8週齢雌C57BL/6マウスの右脇腹に接種した。処置は、ひとたび平均腫瘍体積がおよそ第9または10日に100mm3に達すると始まった。合計で5回の投薬のために投薬を毎週行った指示されている研究を例外として、SNAを、合計で5回の投薬のために3日毎に、指示されている投薬量レベルで腫瘍内注射によって投与した。抗PD-1(Bio X Cell、ウエストレバノン、NH)を5mg/kgでSNAと同日に腹腔内投与した。
MC38腫瘍細胞(1×106細胞)を、腹腔内負荷のために、ナイーブマウス(n=6)、または初めの腫瘍接種後の62日にSNA3(1.6mg/kg、毎週2回)+抗PD-1によって先に処置されたマウス(n=4)に接種した。
【0152】
EMT6腫瘍モデル
EMT6腫瘍研究はOncodesign承認のIACUCプロトコールに従ってOncodesign(ディジョン、仏国)において実施した。EMT6腫瘍細胞(1×106細胞)を6-7週齢雌BALB/Cマウスの右脇腹に接種した。処置は、その時間において平均腫瘍体積が約15mm3である腫瘍接種の3日後に、または平均腫瘍体積が腫瘍接種後の第10日に100mm3に達したときに始まった。SNAを、合計で5回の投薬のために3日毎に、腫瘍の周辺部(腫瘍周辺)に、指示されている投薬量レベルで皮下投与した。組み合わせ研究では、抗PD-1を、第5日に始まって合計で3回の投薬のために5日毎に10mg/kgで腹腔内投与した。
腫瘍内投薬による実験では、処置は、平均腫瘍体積が腫瘍接種後の第10日に100mm3に達したときに始まった。SNAを、腫瘍内注射によって、合計で5回の投薬のために7日毎に、指示されている投薬量レベルで投与した。
静脈内投薬による実験では、処置は腫瘍接種の3日後に始まった。SNAを、尾静脈への静脈内ボーラス注射によって、合計で5回の投薬のために3日毎に、指示されているように1-2mg/kgで投与した。
再負荷実験のためには、SNA3+抗PD-1によって先に処置されたマウス、またはナイーブマウスに、脇腹に1×106個のEMT6、CT26、または4T1腫瘍細胞を接種した。
【0153】
免疫組織化学
免疫組織化学はBiodoxis Laboratories(ロマンヴィル、仏国)において行った。FoxP3染色はホルマリン固定した腫瘍サンプルの5μm厚スライスによって行った。腫瘍のmm2あたりのFoxP3陽性細胞の数を計数した。CD8染色は凍結保存腫瘍サンプルによって行った。CD8浸潤を0-4スケールでスコアづけした。0は20×顕微観察野あたり0個のCD8細胞を指示し、1は1-5を指示し、2は6-10を指示し、3は11-20を指示し、4は>20を指示する。
【0154】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリーはOncodesignにおいて行った。フレッシュな解離した所属リンパ節細胞を次の抗体またはアイソタイプコントロールによって染色した。T細胞パネル:PD-1、FoxP3、CD4、IgG2b(Miltenyi Biotec、サンディエゴ、CA)、IgG2b、CD8a、IgG2a、CD25、IgG1、CD3、IgG2、CD45(BD Biosciences、サンノゼ、CA)、IgG1(Beckman Coulter、ブレア、CA)。MDSCパネル:CD274/PD-L1(Acris/Interchim、モントルコン、仏国)、IgG2a、CD3、IgG1、IgG2a、CD45、IgG2、CD11b、IgG2b(BD Biosciences)、Ly-6G、REAコントロールS、Ly-6C、IgG2a、Inside Stainキット(Miltenyi Biotec)、iNOS/NOS2(eBioscience、サンディエゴ、CA)、Arg1、IgG(R&D Systems、ミネアポリス、MN)。各サンプルについて、10,000個のCD45+イベントをCyFlow(登録商標)Spaceフローサイトメーターを用いて記録した。生白血球のゲーティング後に、各亜集団を親集団のパーセンテージとして見せた。
【0155】
参照
【数2-1】
【数2-2】
【数2-3】
【数2-4】
【数2-5】
【数2-6】
【0156】
均等物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様の多くの均等物を、認識するか、またはせいぜい定型的な実験作業を用いて確かめる能力があるであろう。かかる均等物は次の請求項によって包摂されることを意図されている。
【0157】
特許文書を包含する本明細書において開示される全ての参照は、それらの全体が参照によって組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21
図22A
図22B
図22C
図22D
図22E
図22F
図23-1】
図23-2】
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図25A
図25B
図25B-2】
図25C
図25C-2】
図25D
図26-1】
図26-2】
図27A
図27B
図27C
【配列表】
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