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特許7062607健全性評価システムおよび健全性評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】健全性評価システムおよび健全性評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20220425BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019047396
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020148672
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲村 岳
(72)【発明者】
【氏名】藁科 正彦
(72)【発明者】
【氏名】片山 洋
(72)【発明者】
【氏名】栗原 麻貴子
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-315147(JP,A)
【文献】特開2018-141663(JP,A)
【文献】特開2014-163866(JP,A)
【文献】特開2016-090544(JP,A)
【文献】特開2004-125776(JP,A)
【文献】特開2005-049225(JP,A)
【文献】特開2009-258036(JP,A)
【文献】特開2014-134436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 99/00
G01H 17/00
G01M 7/00- 7/06
G01M 13/04-13/045
G01M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価の対象となる対象物を支持する支持構造物に設けられ、前記支持構造物のひずみ量を計測するひずみ計測部と、
前記ひずみ計測部で計測された前記支持構造物のひずみ量に基づいて前記対象物に作用する支点反力の大きさを算出する支点反力算出部と、
前記支点反力の大きさに基づいて前記対象物に生じた応力またはひずみ量を算出する応力ひずみ算出部と、
前記対象物に生じた応力またはひずみ量に基づいて前記対象物の健全性を評価する対象物評価部と、
を備える、
健全性評価システム。
【請求項2】
前記対象物は、断熱材で覆われた配管である、
請求項1に記載の健全性評価システム。
【請求項3】
前記対象物に設けられたマーカが写る画像を撮影するカメラと、
前記画像に基づいて前記マーカの変位を計測するマーカ変位計測部と、
を備え、
前記対象物評価部は、前記マーカ変位計測部で計測された変位に基づいて前記対象物の健全性を評価する、
請求項1または請求項に記載の健全性評価システム。
【請求項4】
前記支持構造物を床面に固定する固定部に設けられ、前記固定部に生じた加速度を計測する固定部加速度計測部を備え、
前記対象物評価部は、前記固定部に生じた加速度に基づいて前記対象物の健全性を評価する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項5】
前記対象物が建築物の複数の階層に亘って設置されており、
前記建築物に設けられ、前記階層間の変位を計測する階層間変位計測部を備え、
前記対象物評価部は、前記階層間の変位に基づいて前記対象物の健全性を評価する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項6】
前記対象物が建築物の複数の階層に亘って設置されており、
前記建築物の階層毎に設けられ、それぞれの前記階層の加速度を計測する階層加速度計測部を備え、
前記対象物評価部は、前記階層毎に生じた加速度に基づいて前記対象物の健全性を評価する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項7】
前記対象物が設置された建築物に設けられ、前記建築物の階層間の変位を計測する階層間変位計測部と、
前記階層間の変位に基づいて前記建築物の健全性を評価する建築物評価部と、
を備える、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項8】
前記対象物が設置された建築物に設けられ、前記建築物のそれぞれの階層の加速度を計測する階層加速度計測部と、
前記階層毎に生じた加速度に基づいて前記建築物の健全性を評価する建築物評価部と、
を備える、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項9】
前記対象物が複数の前記支持構造物により支持され、かつ前記ひずみ計測部がそれぞれの前記支持構造物に設けられており、
前記対象物評価部は、それぞれの前記ひずみ計測部で計測された前記支持構造物のひずみ量に基づいて前記対象物の損傷部位を特定する、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の健全性評価システム。
【請求項10】
評価の対象となる対象物を支持する支持構造物に設けられたひずみ計測部により前記支持構造物のひずみ量を計測するステップと、
前記ひずみ計測部で計測された前記支持構造物のひずみ量に基づいて前記対象物に作用する支点反力の大きさを算出するステップと、
前記支点反力の大きさに基づいて前記対象物に生じた応力またはひずみ量を算出するステップと、
前記対象物に生じた応力またはひずみ量に基づいて前記対象物の健全性を評価するステップと、
を含む、
健全性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、健全性評価システムおよび健全性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力プラントの配管系が設計基準を超える地震動を受けた場合に、原子力プラントの再起動にあたり弾塑性挙動を考慮して配管系の健全性評価が行われている。例えば、診断対象の構造物に計測センサを取り付けておき、このセンサで計測した入力荷重に基づいて健全性を評価する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-163866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子力プラントでは、高温の蒸気または液体を輸送する配管系があり、配管本体が高温となるもの、または配管本体が断熱材で覆われるものがある。その場合には、計測センサを配管本体に直接取り付けることができず、地震時に配管本体に生じた振動を計測することができない。そのため、配管系の健全性を充分に評価することができないという課題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、このような事情を考慮してなされたもので、対象物の状態を計測する計測部を対象物に直接設けることなく、その健全性を評価することができる健全性評価技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る健全性評価システムは、
評価の対象となる対象物を支持する支持構造物に設けられ、前記支持構造物のひずみ量を計測するひずみ計測部と、前記ひずみ計測部で計測された前記支持構造物のひずみ量に基づいて前記対象物に作用する支点反力の大きさを算出する支点反力算出部と、前記支点反力の大きさに基づいて前記対象物に生じた応力またはひずみ量を算出する応力ひずみ算出部と、前記対象物に生じた応力またはひずみ量に基づいて前記対象物の健全性を評価する対象物評価部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態により、対象物の状態を計測する計測部を対象物に直接設けることなく、その健全性を評価することができる健全性評価技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】断熱材で覆われた配管本体を示す断面図。
図2】マーカが設けられた配管系を示す側面図。
図3】配管系が設置された建築物を示す断面図。
図4】第1実施形態の健全性評価システムを示すブロック図。
図5】第1実施形態の健全性評価処理を示すフローチャート。
図6】第2実施形態の健全性評価システムを示すブロック図。
図7】第2実施形態の健全性評価処理を示すフローチャート。
図8】第3実施形態の健全性評価システムを示すブロック図。
図9】第3実施形態の健全性評価処理を示すフローチャート。
図10】第4実施形態の健全性評価システムを示すブロック図。
図11】第4実施形態の健全性評価処理を示すフローチャート。
図12】第5実施形態の健全性評価システムを示すブロック図。
図13】第5実施形態の健全性評価処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本実施形態を添付図面に基づいて説明する。まず、第1実施形態の健全性評価システムおよび健全性評価方法について図1図4図5を用いて説明する。
【0010】
図1の符号1は、健全性評価の対象となる配管系である。この配管系1は、原子力プラントなどの大規模な施設に設けられる。なお、本実施形態では、原子力プラントを例示しているが、火力プラントまたは工場などの施設に設けられる配管系1の評価を行っても良い。この配管系1は、金属材で形成された配管本体2を備える。本実施形態では、地震が発生した場合に、配管系1が充分な健全性を有しているか否かの評価を行う。
【0011】
なお、配管本体2が評価の対象となる対象物となっている。複数の配管本体2が接続されて配管系1が形成される。また、配管系1には、配管同士を接続する継手、またはバルブが含まれる。本実施形態では、配管系1を形成する配管本体2などの部材が地震の振動により損傷しているか否かを評価する。その評価結果に基づいて、配管系1の健全性が保たれているか否かが評価される。配管系1を構成する複数の配管本体2のうち、1つの配管本体2が損傷している場合には、その配管系1の健全性が失われていると評価される。
【0012】
配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送する管であり、その外周が断熱材3で覆われている。また、配管本体2は支持構造物4により支持されている。この支持構造物4は、固定部5により床面Uに固定されている。
【0013】
配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送するため、ひずみゲージなどのひずみを計測するひずみ計測部6を配管本体2に直に取り付けることができない。配管本体2が高温である場合に、その表面にひずみ計測部6を取り付けてしまうと、ひずみ計測部6が故障したり、正確な計測値を得られなかったりするためである。そこで、第1実施形態では、配管本体2にひずみ計測部6を直接設けることなく、配管本体2を支持する支持構造物4にひずみ計測部6を設けるようにしている。
【0014】
なお、第1実施形態では、外周が断熱材3に覆われた配管本体2を例示しているが、断熱材3に覆われていない配管本体2に適用しても良い。
【0015】
次に、第1実施形態の健全性評価システム10のシステム構成を図4に示すブロック図を参照して説明する。
【0016】
図4に示すように、第1実施形態の健全性評価システム10は、支持構造物4に取り付けられたひずみ計測部6と、評価用コンピュータ11とを備える。
【0017】
ひずみ計測部6は、支持構造物4のひずみ量を常に計測する。つまり、ひずみ計測部6は、地震前、地震発生中および地震後のいずれの期間でも支持構造物4のひずみ量を計測する。なお、配管本体2の健全性の評価を行うときには、地震発生中に計測された支持構造物4のひずみ量のみを用いても良いし、配管本体2が設置されてから現在までに累積的に算出される支持構造物4のひずみ量を用いても良い。
【0018】
評価用コンピュータ11には、複数の支持構造物4のそれぞれに取り付けられたひずみ計測部6が計測したひずみ量の値を示すひずみ計測値が入力される。評価用コンピュータ11は、それぞれのひずみ計測部6から入力されたひずみ計測値に基づいて、対応する支持構造物4に支持される配管本体2の健全性の評価を行う。
【0019】
評価用コンピュータ11は、メイン制御部12と記憶部13と情報入力部14と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17と表示部18とを備える。
【0020】
メイン制御部12は、評価用コンピュータ11を統括的に制御する。また、地震発生時にひずみ計測部6が計測したひずみ計測値を取得する。また、記憶部13は、評価関連情報を記憶するメモリまたはHDDで構成される。また、情報入力部14は、配管本体2の健全性の評価に必要な評価関連情報の入力を受け付ける。
【0021】
なお、評価関連情報には、例えば、支持構造物4のひずみ量と、配管本体2に作用する支点反力の大きさとの関係を示す情報が含まれる。さらに、配管本体2に作用する支点反力の大きさと、配管本体2に生じた応力またはひずみ量との関係を示す情報が含まれる。これらの情報は、支点反力算出部15または応力ひずみ算出部16で用いられる。
【0022】
支点反力算出部15は、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2に作用する支点反力(支持点反力)の大きさを算出する。
【0023】
応力ひずみ算出部16は、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。このようにすれば、ひずみ計測部6を対象物としての配管本体2に直接設けなくても、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出することができる。
【0024】
対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。つまり、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4の少なくともひずみ量に基づいて、配管本体2の健全性を評価する。なお、対象物評価部17は、配管本体2の損傷の有無を判定する。ここで、配管本体2が損傷していない場合は健全性を有すると評価され、配管本体2が損傷している場合は健全性が失われたと評価される。
【0025】
また、支持構造物4のひずみ計測値の時刻歴データに基づいて、配管本体2の累積損傷係数を求めることができる。対象物評価部17は、累積損傷係数に基づいて、配管本体2の健全性を評価しても良い。例えば、累積損傷係数が1以上(閾値以上)の場合は配管本体2が損傷しているものとし、累積損傷係数が1未満の場合は配管本体2が損傷していないものとする。
【0026】
なお、1つのひずみ計測部6が計測したひずみ量に基づいて1つの配管本体2の評価を行うのみならず、複数のひずみ計測部6が計測したひずみ量に基づいて1つの配管本体2の評価を行っても良い。例えば、配管本体2が複数の支持構造物4により支持されている場合がある。その場合に、ひずみ計測部6をそれぞれの支持構造物4に設けるようにし、これらのひずみ計測部6が計測したひずみ量に基づいて配管本体2の評価を行っても良い。する。
【0027】
そして、対象物評価部17は、それぞれのひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2におけるいずれの部分が損傷したかを特定することができる。このようにすれば、配管本体2の損傷部位を特定することができる。
【0028】
表示部18は、評価用コンピュータ11に設けられるディスプレイなどの表示装置で構成される。なお、ディスプレイはコンピュータ本体と別体であっても良いし、一体であっても良い。この表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。また、配管本体2の損傷部位を特定可能な情報を表示しても良い。
【0029】
なお、メイン制御部12と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17とは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0030】
次に、第1実施形態の健全性評価システム10が実行する健全性評価処理について図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図4に示すブロック図を適宜参照する。
【0031】
図5に示すように、まず、ステップS11において、ひずみ計測部6は、支持構造物4のひずみ量を計測する。そして、計測されたひずみ量の値を示すひずみ計測値が評価用コンピュータ11に入力される。なお、評価用コンピュータ11のメイン制御部12は、ひずみ計測部6が計測したひずみ計測値を取得する。
【0032】
次のステップS12において、支点反力算出部15は、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2に作用する支点反力(支持点反力)の大きさを算出する。
【0033】
次のステップS13において、応力ひずみ算出部16は、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0034】
次のステップS14において、対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。
【0035】
次のステップS15において、表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。
【0036】
第1実施形態では、高温の流体が流れ、ひずみ計測部6を直接設けることができない配管本体2の健全性を評価することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の健全性評価システム10Aおよび健全性評価方法について図2図6図7を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
図2に示すように、第2実施形態では、配管系1を形成する配管本体2の外周面に、マーカ21,22が設けられている。例えば、所定の距離をあけて2つのマーカ21,22が配管本体2に設けられている。なお、配管本体2に設けられるマーカ21,22の数は2つに限らず、1つでも良いし、3つ以上でも良い。
【0039】
なお、配管本体2が評価の対象となる対象物となっている。配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送するため、ひずみ計測部を配管本体2に直に取り付けることができない。そこで、第2実施形態では、マーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2の健全性を評価する。また、配管本体2は、断熱材3で覆われたものでも良いし(図1参照)、断熱材3で覆われていないものでも良い。
【0040】
また、配管本体2に設けられたマーカ21,22以外にも、基準点となる基準用マーカ23が設けられる。この基準用マーカ23は、プラント施設を構成する建築物の所定位置、例えば、床面Uなどに固定された基準物24に設けられる。
【0041】
マーカ21,22,23は、画像認識が可能な図形である。これらのマーカ21,22,23は、その位置を特定できるものであれば良い。なお、マーカ21,22,23は、塗料を用いて配管本体2または基準物24の表面に形成されたものであっても良いし、配管本体2の表面の一部が周囲と識別可能な形状に加工されたものであっても良い。
【0042】
また、天井Tには、カメラ25が設置されている。このカメラ25は、配管本体2と基準物24とを撮影可能な位置に設置される。例えば、配管本体2の斜め上方の位置から撮影しても良いし、配管本体2の直上位置から撮影しても良いし、配管本体2の真横から撮影しても良いし、配管本体2の真下から撮影しても良い。カメラ25は、マーカ21,22,23が写る画像を撮影する。なお、この画像は、静止画像であっても良いし、動画像であっても良い。
【0043】
第2実施形態では、カメラ25で撮影した画像に基づいて、それぞれのマーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3を算出する。そして、地震などの外力が配管本体2に加わった場合に、マーカ21,22の位置の変化、つまり、マーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、マーカ21,22同士の距離L3の変位量を計測する。この変位に基づいて配管本体2の健全性の評価を行う。なお、距離L1~L3の変位は、地震発生前の状態と地震発生後の状態とを比較したときの変位でも良いし、通常時(地震発生前または地震発生後)の状態と地震発生中の状態とを比較したときの変位でも良い。
【0044】
図6に示すように、第2実施形態の健全性評価システム10Aは、マーカ21,22,23が写る画像を撮影するカメラ25と、評価用コンピュータ11Aとを備える。
【0045】
評価用コンピュータ11Aは、メイン制御部12と記憶部13と情報入力部14とマーカ変位計測部19と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17と表示部18とを備える。
【0046】
なお、第2実施形態の記憶部13に記憶される評価関連情報には、例えば、マーカ21,22の変位量と、配管本体2に生じた応力またはひずみ量との関係を示す情報が含まれる。また、カメラ25の設置位置および撮影方向と、配管本体2との位置関係を示す情報が含まれる。
【0047】
評価用コンピュータ11Aには、カメラ25で撮影した画像を含むデータが入力される。複数のカメラ25がある場合は、それぞれのカメラ25で撮影した画像を含むデータが入力される。評価用コンピュータ11Aは、それぞれのカメラ25で撮影された画像に基づいて、その画像に写るマーカ21,22,23に対応する配管本体2の健全性の評価を行う。
【0048】
マーカ変位計測部19は、カメラ25が撮影した画像に基づいて、マーカ21,22の変位量を計測する。なお、計測するマーカ21,22の変位量は、マーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2の変位量と配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3の変位量との少なくともいずれか一方に基づく変位量となっている。
【0049】
応力ひずみ算出部16は、マーカ変位計測部19が算出したマーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0050】
なお、メイン制御部12と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17とマーカ変位計測部19とは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0051】
次に、第2実施形態の健全性評価システム10Aが実行する健全性評価処理について図7のフローチャートを用いて説明する。なお、図6に示すブロック図を適宜参照する。
【0052】
図7に示すように、まず、ステップS21において、カメラ25は、マーカ21,22,23が写る画像を撮影する。そして、撮影された画像が評価用コンピュータ11Aに入力される。なお、評価用コンピュータ11Aのメイン制御部12は、カメラ25が撮影した画像を取得する。
【0053】
次のステップS22において、マーカ変位計測部19は、カメラ25で撮影した画像に基づいて、それぞれのマーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3を算出する。そして、地震により生じたマーカ21,22の変位量を計測する。
【0054】
例えば、マーカ変位計測部19は、所定の画像処理を行い、画像に含まれるマーカ21,22,23の位置を特定する。そして、カメラ25の設置位置および撮影方向と、配管本体2との位置関係とに基づいて、マーカ21,22,23の物理的な位置(3次元座標位置)を特定するようにしている。
【0055】
次のステップS23において、応力ひずみ算出部16は、マーカ変位計測部19が計測した変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0056】
次のステップS24において、対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。
【0057】
次のステップS25において、表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。
【0058】
第2実施形態では、ひずみ計測部を対象物としての配管本体2に直接設けなくても、マーカ21,22,23が写る画像により対象物の健全性を評価することができる。
【0059】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の健全性評価システム10Bおよび健全性評価方法について図1図2図8図9を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0060】
図1に示すように、第3実施形態では、配管本体2を支持する支持構造物4を床面Uに固定する固定部5に、この固定部5に生じた加速度を計測する固定部加速度計測部7が設けられる。この固定部加速度計測部7は、地震発生中に生じた加速度を計測する。
【0061】
なお、配管本体2が評価の対象となる対象物となっている。配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送するため、ひずみ計測部を配管本体2に直に取り付けることができない。そこで、第3実施形態では、地震により固定部5に生じた加速度に基づいて、配管本体2の健全性を評価する。また、配管本体2は、断熱材3で覆われたものでも良いし、断熱材3で覆われていないものでも良い。
【0062】
第3実施形態では、固定部5に生じた加速度に基づく健全性の評価に加えて、前述の第1実施形態の支持構造物4のひずみ量に基づく配管本体2の健全性の評価、および前述の第2実施形態のマーカ21,22の変位に基づく配管本体2の健全性の評価を合わせて行う。
【0063】
また、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出するときに、支持構造物4のひずみ量に基づく値と、マーカ21,22の変位に基づく値と、固定部5に生じた加速度に基づく値とが算出される。それぞれの値が異なる場合には、それぞれの値の平均値を用いて健全性の評価をしても良いし、それぞれの値の最大値を用いて健全性の評価をしても良い。
【0064】
なお、支持構造物4のひずみ量に基づく評価と、マーカ21,22の変位に基づく評価と、固定部5に生じた加速度に基づく評価とのそれぞれの評価結果が異なる場合には、少なくとも1つの評価で配管本体2が損傷していると判定されれば、配管本体2の健全性が失われたと評価されるようにしても良い。
【0065】
図8に示すように、第3実施形態の健全性評価システム10Bは、支持構造物4に取り付けられたひずみ計測部6(図1参照)と、マーカ21,22,23が写る画像を撮影するカメラ25(図2参照)と、固定部5に設けられた固定部加速度計測部7と評価用コンピュータ11Bとを備える。
【0066】
固定部加速度計測部7は、固定部5に生じる加速度を常に計測する。つまり、固定部加速度計測部7は、地震前、地震発生中および地震後のいずれの期間でも固定部5に生じる加速度を計測する。なお、配管本体2の健全性の評価を行うときには、地震発生中に計測された加速度のみを用いても良いし、配管本体2が設置されてから現在までに累積的に計測された加速度を用いても良い。
【0067】
評価用コンピュータ11Bには、複数の固定部5のそれぞれに設けられた固定部加速度計測部7が計測した加速度の値が入力される。評価用コンピュータ11Bは、それぞれの固定部加速度計測部7から入力された加速度の値に基づいて、その固定部5に対応する配管本体2の健全性の評価を行う。
【0068】
評価用コンピュータ11Bは、メイン制御部12と記憶部13と情報入力部14と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17と表示部18とマーカ変位計測部19とを備える。
【0069】
なお、第3実施形態の記憶部13に記憶される評価関連情報には、例えば、固定部5に生じた加速度と、配管本体2に生じた応力またはひずみ量との関係を示す情報が含まれる。
【0070】
応力ひずみ算出部16は、固定部加速度計測部7から入力された加速度の値に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ変位計測部19が算出したマーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0071】
次に、第3実施形態の健全性評価システム10Bが実行する健全性評価処理について図9のフローチャートを用いて説明する。なお、図8に示すブロック図を適宜参照する。
【0072】
図9に示すように、まず、ステップS31において、ひずみ計測部6は、支持構造物4のひずみ量を計測する。そして、計測されたひずみ量の値を示すひずみ計測値が評価用コンピュータ11Bに入力される。なお、評価用コンピュータ11Bのメイン制御部12は、ひずみ計測部6が計測したひずみ計測値を取得する。
【0073】
次のステップS32において、支点反力算出部15は、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2に作用する支点反力(支持点反力)の大きさを算出する。
【0074】
次のステップS33において、カメラ25は、マーカ21,22,23が写る画像を撮影する。そして、撮影された画像が評価用コンピュータ11Bに入力される。なお、メイン制御部12は、カメラ25が撮影した画像を取得する。
【0075】
次のステップS34において、マーカ変位計測部19は、カメラ25で撮影した画像に基づいて、それぞれのマーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3を算出する。そして、地震により生じたマーカ21,22の変位量を計測する。
【0076】
次のステップS35において、固定部加速度計測部7は、固定部5に生じる加速度を計測する。そして、計測された加速度の値が評価用コンピュータ11Bに入力される。なお、メイン制御部12は、固定部加速度計測部7が計測した加速度の値を取得する。
【0077】
次のステップS36において、応力ひずみ算出部16は、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、固定部5に生じた加速度に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。ここで、算出した値がそれぞれ異なる場合には、その平均値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量とする。なお、算出した値のうちの最大値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量としても良い。
【0078】
次のステップS37において、対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。
【0079】
次のステップS38において、表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。
【0080】
第3実施形態では、ひずみ計測部を配管本体2に直接設けなくても、固定部5に生じた加速度により配管本体2の健全性を評価することができる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の健全性評価システム10Cおよび健全性評価方法について図1図2図3図10図11を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0082】
図3に示すように、第4実施形態では、配管系1を形成する配管本体2が、プラント施設を構成する建築物26の内部に設置される。なお、2階建ての建築物26を例示する。配管系1は、1階F1と2階F2との複数の階層に亘って設置されている。
【0083】
建築物26には、階層間の変位を計測する階層間変位計測部27が設けられる。階層間変位計測部27は、床面Uに固定される第1部28と天井Tに固定される第2部29とを有する。そして、レーザ光または赤外線などの所定の計測用媒体30を用いて、第1部28と第2部29との間に生じた水平方向の変位を検出する。
【0084】
また、階層間変位計測部27は、1階F1と2階F2のそれぞれの階層に設けられる。これら階層間変位計測部27により1階F1と2階F2の間の変位量を計測する。なお、階層間変位計測部27を1階F1のみに設けるようにし、この1階F1の床面Uと天井Tとの変位量を、1階F1と2階F2の間の変位量と見なしても良い。
【0085】
なお、配管本体2が評価の対象となる対象物となっている。配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送するため、ひずみ計測部を配管本体2に直に取り付けることができない。そこで、第4実施形態では、地震により生じた階層間の変位に基づいて、配管本体2の健全性を評価する。また、配管本体2は、断熱材3で覆われたものでも良いし、断熱材3で覆われていないものでも良い。
【0086】
第4実施形態では、階層間の変位に基づく健全性の評価に加えて、前述の支持構造物4のひずみ量に基づく配管本体2の健全性の評価、およびマーカ21,22の変位に基づく配管本体2の健全性の評価を合わせて行う。
【0087】
また、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出するときに、支持構造物4のひずみ量に基づく値と、マーカ21,22の変位に基づく値と、階層間の変位に基づく値とが算出される。それぞれの値が異なる場合には、それぞれの値の平均値を用いて健全性の評価をしても良いし、それぞれの値の最大値を用いて健全性の評価をしても良い。
【0088】
なお、支持構造物4のひずみ量に基づく評価と、マーカ21,22の変位に基づく評価と、階層間の変位に基づく評価とのそれぞれの評価結果が異なる場合には、少なくとも1つの評価で配管本体2が損傷していると判定されれば、配管本体2の健全性が失われたと評価されるようにしても良い。
【0089】
図10に示すように、第4実施形態の健全性評価システム10Cは、支持構造物4に取り付けられたひずみ計測部6(図1参照)と、マーカ21,22,23が写る画像を撮影するカメラ25(図2参照)と、建築物26のそれぞれの階層に設けられた階層間変位計測部27と評価用コンピュータ11Cとを備える。
【0090】
階層間変位計測部27は、建築物26の階層間の変位を常に計測する。つまり、階層間変位計測部27は、地震前、地震発生中および地震後のいずれの期間でも建築物26の階層間の変位を計測する。なお、配管本体2の健全性の評価を行うときには、地震発生中に計測された建築物26の階層間の変位のみを用いても良いし、配管本体2が設置されてから現在までに累積的に計測された建築物26の階層間の変位を用いても良い。
【0091】
評価用コンピュータ11Cには、建築物26のそれぞれの階層に設けられた階層間変位計測部27が計測した変位量が入力される。評価用コンピュータ11Cは、それぞれの階層間変位計測部27から入力された変位量に基づいて、これらの階層に亘って設けられた配管系1の配管本体2の健全性の評価を行う。
【0092】
評価用コンピュータ11Cは、メイン制御部12と記憶部13と情報入力部14と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17と表示部18とマーカ変位計測部19とを備える。
【0093】
なお、第4実施形態の記憶部13に記憶される評価関連情報には、例えば、建築物26の階層間の変位量と、配管本体2に生じた応力またはひずみ量との関係を示す情報が含まれる。
【0094】
応力ひずみ算出部16は、階層間変位計測部27から入力された建築物26の階層間の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ変位計測部19が算出したマーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0095】
次に、第4実施形態の健全性評価システム10Cが実行する健全性評価処理について図11のフローチャートを用いて説明する。なお、図10に示すブロック図を適宜参照する。
【0096】
図11に示すように、まず、ステップS41において、ひずみ計測部6は、支持構造物4のひずみ量を計測する。そして、計測されたひずみ量の値を示すひずみ計測値が評価用コンピュータ11Cに入力される。なお、評価用コンピュータ11Cのメイン制御部12は、ひずみ計測部6が計測したひずみ計測値を取得する。
【0097】
次のステップS42において、支点反力算出部15は、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2に作用する支点反力(支持点反力)の大きさを算出する。
【0098】
次のステップS43において、カメラ25は、マーカ21,22,23が写る画像を撮影する。そして、撮影された画像が評価用コンピュータ11Cに入力される。なお、メイン制御部12は、カメラ25が撮影した画像を取得する。
【0099】
次のステップS44において、マーカ変位計測部19は、カメラ25で撮影した画像に基づいて、それぞれのマーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3を算出する。そして、地震により生じたマーカ21,22の変位量を計測する。
【0100】
次のステップS45において、階層間変位計測部27は、建築物26の階層間の変位量を計測する。そして、計測された建築物26の階層間の変位量が評価用コンピュータ11Cに入力される。なお、メイン制御部12は、階層間変位計測部27が計測した建築物26の階層間の変位量を取得する。
【0101】
次のステップS46において、応力ひずみ算出部16は、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、建築物26の階層間の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。ここで、算出した値がそれぞれ異なる場合には、その平均値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量とする。なお、算出した値のうちの最大値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量としても良い。
【0102】
次のステップS47において、対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。
【0103】
次のステップS48において、表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。
【0104】
第4実施形態では、建築物26の階層同士が互いに変位した場合に、その影響を考慮して配管本体2の評価を行うことができる。
【0105】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態の健全性評価システム10Dおよび健全性評価方法について図1図2図3図12図13を用いて説明する。なお、前述した実施形態に示される構成部分と同一構成部分については同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0106】
図3に示すように、第5実施形態では、建築物26のそれぞれの階層に生じた加速度を計測する階層加速度計測部31が設けられる。これらの階層加速度計測部31は、地震発生中に生じた加速度を計測する。これらの階層加速度計測部31は、1階F1と2階F2のそれぞれの階層に設けられる。
【0107】
なお、配管本体2が評価の対象となる対象物となっている。配管本体2は、高温の蒸気または高温の水を輸送するため、ひずみ計測部を配管本体2に直に取り付けることができない。そこで、第5実施形態では、地震によりそれぞれの階層に生じた加速度に基づいて、配管本体2の健全性を評価する。また、配管本体2は、断熱材3で覆われたものでも良いし、断熱材3で覆われていないものでも良い。
【0108】
第5実施形態では、階層に生じた加速度に基づく健全性の評価に加えて、前述の支持構造物4のひずみ量に基づく配管本体2の健全性の評価、マーカ21,22の変位に基づく配管本体2の健全性の評価、および階層間の変位に基づく健全性の評価を合わせて行う。
【0109】
さらに、第5実施形態では、配管本体2の健全性の評価に加えて、建築物26の健全性の評価も合わせて行う。例えば、階層間の変位に基づいて建築物26の健全性の評価を行うとともに、階層に生じた加速度に基づいて建築物26の健全性の評価を行う。
【0110】
また、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出するときに、支持構造物4のひずみ量に基づく値と、マーカ21,22の変位に基づく値と、階層間の変位に基づく値と、階層に生じた加速度に基づく値とが算出される。それぞれの値が異なる場合には、それぞれの値の平均値を用いて健全性の評価をしても良いし、それぞれの値の最大値を用いて健全性の評価をしても良い。
【0111】
なお、支持構造物4のひずみ量に基づく評価と、マーカ21,22の変位に基づく評価と、階層間の変位に基づく評価と、階層に生じた加速度に基づく評価とのそれぞれの評価結果が異なる場合には、少なくとも1つの評価で配管本体2が損傷していると判定されれば、配管本体2の健全性が失われたと評価されるようにしても良い。
【0112】
また、建築物26の健全性の評価を行うときに、階層間の変位に基づく評価と、階層に生じた加速度に基づく評価とのそれぞれの評価結果が異なる場合には、少なくとも1つの評価で建築物26が損傷していると判定されれば、建築物26の健全性が失われたと評価されるようにしても良い。
【0113】
図12に示すように、第5実施形態の健全性評価システム10Dは、支持構造物4に取り付けられたひずみ計測部6(図1参照)と、マーカ21,22,23が写る画像を撮影するカメラ25(図2参照)と、建築物26のそれぞれの階層に設けられた階層間変位計測部27(図3参照)と、建築物26のそれぞれの階層に設けられた階層加速度計測部31と、評価用コンピュータ11Dとを備える。
【0114】
階層加速度計測部31は、建築物26の各階層に生じた加速度を常に計測する。つまり、階層加速度計測部31は、地震前、地震発生中および地震後のいずれの期間でも建築物26の各階層間に生じた加速度を計測する。なお、配管本体2の健全性の評価を行うときには、地震発生中に計測された加速度のみを用いても良いし、配管本体2が設置されてから現在までに累積的に計測された加速度を用いても良い。
【0115】
評価用コンピュータ11Dには、建築物26のそれぞれの階層に設けられた階層加速度計測部31が計測した加速度が入力される。評価用コンピュータ11Dは、それぞれの階層加速度計測部31から入力された加速度に基づいて、これらの階層に亘って設けられた配管系1の配管本体2の健全性の評価を行う。
【0116】
評価用コンピュータ11Dは、メイン制御部12と記憶部13と情報入力部14と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17と表示部18とマーカ変位計測部19と建築物評価部20とを備える。
【0117】
応力ひずみ算出部16は、階層加速度計測部31から入力された加速度の値に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ変位計測部19が算出したマーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、階層間変位計測部27から入力された建築物26の階層間の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。
【0118】
建築物評価部20は、建築物26の階層間の変位に基づいて建築物26の健全性を評価する。また、建築物26の階層毎に生じた加速度に基づいて建築物26の健全性を評価する。
【0119】
また、建築物評価部20は、建築物26の階層間の変位または階層毎に生じた加速度に基づいて、いずれの階層が損傷したかを特定することができる。このようにすれば、損傷した階層を特定することができる。
【0120】
なお、第5実施形態の記憶部13に記憶される評価関連情報には、例えば、建築物26の各階層に生じた加速度と、配管本体2に生じた応力またはひずみ量との関係を示す情報が含まれる。
【0121】
なお、メイン制御部12と支点反力算出部15と応力ひずみ算出部16と対象物評価部17とマーカ変位計測部19と建築物評価部20とは、メモリまたはHDDに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることで実現される。
【0122】
次に、第5実施形態の健全性評価システム10Dが実行する健全性評価処理について図13のフローチャートを用いて説明する。なお、図12に示すブロック図を適宜参照する。
【0123】
図12に示すように、まず、ステップS51において、ひずみ計測部6は、支持構造物4のひずみ量を計測する。そして、計測されたひずみ量の値を示すひずみ計測値が評価用コンピュータ11Dに入力される。なお、評価用コンピュータ11Dのメイン制御部12は、ひずみ計測部6が計測したひずみ計測値を取得する。
【0124】
次のステップS52において、支点反力算出部15は、ひずみ計測部6で計測された支持構造物4のひずみ量に基づいて、配管本体2に作用する支点反力(支持点反力)の大きさを算出する。
【0125】
次のステップS53において、カメラ25は、マーカ21,22,23が写る画像を撮影する。そして、撮影された画像が評価用コンピュータ11Dに入力される。なお、メイン制御部12は、カメラ25が撮影した画像を取得する。
【0126】
次のステップS54において、マーカ変位計測部19は、カメラ25で撮影した画像に基づいて、それぞれのマーカ21,22から基準用マーカ23までの距離L1,L2、または、配管本体2に設けられた2つのマーカ21,22の間の距離L3を算出する。そして、地震により生じたマーカ21,22の変位量を計測する。
【0127】
次のステップS55において、階層間変位計測部27は、建築物26の階層間の変位量を計測する。そして、計測された建築物26の階層間の変位量が評価用コンピュータ11Dに入力される。なお、メイン制御部12は、階層間変位計測部27が計測した建築物26の階層間の変位量を取得する。
【0128】
次のステップS56において、階層加速度計測部31は、建築物26の各階層に生じた加速度を計測する。そして、計測された建築物26の各階層に生じた加速度が評価用コンピュータ11Dに入力される。なお、メイン制御部12は、階層加速度計測部31が計測した建築物26の各階層に生じた加速度を取得する。
【0129】
次のステップS57において、応力ひずみ算出部16は、支点反力算出部15が算出した支点反力の大きさに基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、マーカ21,22の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、建築物26の階層間の変位量に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。また、建築物26の各階層に生じた加速度に基づいて、配管本体2に生じた応力またはひずみ量を算出する。ここで、算出した値がそれぞれ異なる場合には、その平均値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量とする。なお、算出した値のうちの最大値を配管本体2に生じた応力またはひずみ量としても良い。
【0130】
次のステップS58において、対象物評価部17は、応力ひずみ算出部16で算出した応力またはひずみ量に基づいて配管本体2の健全性を評価する。
【0131】
次のステップS59において、建築物評価部20は、建築物26の階層間の変位量に基づいて、建築物26の健全性を評価する。また、建築物26の各階層に生じた加速度に基づいて、建築物26の健全性を評価する。ここで、少なくともいずれか一方で健全性が失われたと評価された場合には、建築物26の健全性が失われたと評価される。
【0132】
次のステップS60において、表示部18は、対象物評価部17で評価された配管本体2の評価結果を表示する。
【0133】
第5実施形態では、配管本体2の評価を建築物26の階層の加速度により行うことができる。また、配管本体2が設置された建築物26の評価を階層間の変位により行うことができる。また、配管本体2が設置された建築物26の評価を階層毎に生じた加速度により行うことができる。
【0134】
本実施形態に係る健全性評価システムを第1実施形態から第5実施形態に基づいて説明したが、いずれか1の実施形態において適用された構成を他の実施形態に適用しても良いし、各実施形態において適用された構成を組み合わせても良い。
【0135】
なお、本実施形態において、基準値(閾値)を用いた任意の値(累積損傷係数)の判定は、「任意の値が基準値以上か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値を超えているか否か」の判定でも良い。或いは、「任意の値が基準値以下か否か」の判定でも良いし、「任意の値が基準値未満か否か」の判定でも良い。また、基準値が固定されるものでなく、変化するものであっても良い。従って、基準値の代わりに所定範囲の値を用い、任意の値が所定範囲に収まるか否かの判定を行っても良い。また、予め装置に生じる誤差を解析し、基準値を中心として誤差範囲を含めた所定範囲を判定に用いても良い。
【0136】
なお、本実施形態のフローチャートにおいて、各ステップが直列に実行される形態を例示しているが、必ずしも各ステップの前後関係が固定されるものでなく、一部のステップの前後関係が入れ替わっても良い。また、一部のステップが他のステップと並列に実行されても良い。
【0137】
本実施形態のシステムは、CPU、ROM、RAM、HDDなどのハードウェア資源を有し、CPUが各種プログラムを実行することで、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて実現されるコンピュータで構成される。さらに、本実施形態の健全性評価方法は、プログラムをコンピュータに実行させることで実現される。
【0138】
本実施形態のシステムは、専用のチップ、FPGA(Field Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを高集積化させた制御装置と、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)などの記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)などの外部記憶装置と、ディスプレイなどの表示装置と、マウスまたはキーボードなどの入力装置と、通信インターフェースとを備える。このシステムは、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成で実現できる。
【0139】
なお、本実施形態のシステムで実行されるプログラムは、ROMなどに予め組み込んで提供される。もしくは、このプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータで読み取り可能な非一過性の記憶媒体に記憶されて提供するようにしても良い。
【0140】
また、このシステムで実行されるプログラムは、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせて提供するようにしても良い。また、このシステムは、構成要素の各機能を独立して発揮する別々のモジュールを、ネットワークまたは専用線で相互に接続し、組み合わせて構成することもできる。
【0141】
なお、本実施形態では、高温の流体が流れる配管本体2の健全性の評価を、その支持構造物4に設けられたひずみ計測部6に基づいて行っているが、その他の態様であっても良い。例えば、極低温の流体が流れる配管本体2の健全性の評価を、その支持構造物4に設けられたひずみ計測部6に基づいて行っても良い。
【0142】
なお、本実施形態のマーカ21,22,23として、マトリックス型二次元コード、所謂QRコード(登録商標)を用いても良い。また、マーカ21,22,23には、対応するマーカ21,22,23を個々に識別可能なマーカIDを示す情報が含まれても良い。
【0143】
なお、本実施形態では、地震が発生した場合に、対象物が充分な健全性を有しているか否かの評価を行うようにしているが、地震以外の振動に基づいて対象物が振動したときに充分な健全性を有しているか否かの評価を行うようにしても良い。例えば、飛翔体が衝突することにより発生する振動に基づいて対象物が振動したときに充分な健全性を有しているか否かの評価を行うようにしても良い。
【0144】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、評価の対象となる対象物を支持する支持構造物に設けられ、支持構造物のひずみ量を計測するひずみ計測部を備えることにより、対象物の状態を計測する計測部を対象物に直接設けることなく、その健全性を評価することができる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
1…配管系、2…配管本体、3…断熱材、4…支持構造物、5…固定部、6…ひずみ計測部、7…固定部加速度計測部、10(10A,10B,10C,10D)…健全性評価システム、11(11A,11B,11C,11D)…評価用コンピュータ、12…メイン制御部、13…記憶部、14…情報入力部、15…支点反力算出部、16…応力ひずみ算出部、17…対象物評価部、18…表示部、19…マーカ変位計測部、20…建築物評価部、21,22,23…マーカ、24…基準物、25…カメラ、26…建築物、27…階層間変位計測部、28…第1部、29…第2部、30…計測用媒体、31…階層加速度計測部、F1…1階、F2…2階、L1~L3…距離、T…天井、U…床面。
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