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特許7062612ワイヤレス電力伝送システム、送電器、受電器、コンピュータプログラム及びワイヤレス電力伝送制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ワイヤレス電力伝送システム、送電器、受電器、コンピュータプログラム及びワイヤレス電力伝送制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/20 20160101AFI20220425BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20220425BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220425BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20220425BHJP
【FI】
H02J50/20
H02J50/80
H02J7/00 301D
H02J50/40
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019064740
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020167796
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】樫木 勘四郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 明
【審査官】原 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-184383(JP,A)
【文献】特開2018-182809(JP,A)
【文献】特開2018-038263(JP,A)
【文献】特開2002-64403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス電力伝送システムにおいて、
電力伝送波により電力を送電する送電器と、
前記送電器から前記電力伝送波により電力を受電する受電器と、を備え、
前記受電器は、
無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成部と、
バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生部と、を備え、
前記送電器は、
前記返信信号を解析する返信信号解析部と、
前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御部と、を備える、
ワイヤレス電力伝送システムであって、
前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、
前記受電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ波により前記送電器へ送信する、
ワイヤレス電力伝送システム。
【請求項2】
前記送電器は、ビームステアリングにより複数の送電方向へ送電ビームを順次向けるビーム制御部を備える、
請求項1に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項3】
各受電器識別子が付与された複数の前記受電器を備え、
前記送電器は、前記複数の前記受電器の受電器識別子を時分割多重したアクセス制御信号を発生する信号発生器を備え、前記アクセス制御信号を送電信号として送信し、
前記バックスキャッタ波発生部は、自己の受電器識別子を受信したタイミングで前記バックスキャッタ波を発生する、
請求項1又は2のいずれか1項に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項4】
ミラー符号の周波数スペクトルの整数倍の複数の中心周波数を使用して前記複数の前記受電器の前記返信信号を周波数分割多重する、
請求項3に記載のワイヤレス電力伝送システム。
【請求項5】
ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器において、
バックスキャッタ通信により受電器から受信した返信信号であって前記送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す前記返信信号を解析する返信信号解析部と、
前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御部と、
を備える送電器であって、
前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、
前記送電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ通信により前記受電器から受信する、
送電器。
【請求項6】
送電器からワイヤレスで電力伝送波により電力を受電する受電器において、
前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成部と、
バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生部と、
を備える受電器であって、
前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、
前記返信信号生成部は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する、
受電器。
【請求項7】
ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器のコンピュータに、
バックスキャッタ通信により受電器から受信した返信信号であって前記送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す前記返信信号を解析する返信信号解析ステップと、
前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記送電器のコンピュータに、
先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信する電力伝送波送信ステップと、
前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ通信により前記受電器から受信する返信信号受信ステップと、
をさらに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項8】
送電器からワイヤレスで電力伝送波により電力を受電する受電器のコンピュータに、
前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成ステップと、
バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生ステップと、
を実行させるためのコンピュータプログラムであって、
前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、
前記返信信号生成ステップは、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する、
コンピュータプログラム。
【請求項9】
ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器と、前記送電器からワイヤレスで前記電力伝送波により電力を受電する受電器と、を備えるワイヤレス電力伝送システムのワイヤレス電力伝送制御方法であって、
前記受電器が、前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成ステップと、
前記受電器が、バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生ステップと、
前記送電器が、前記返信信号を解析する返信信号解析部と、
前記送電器が、前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御ステップと、
を含み、
前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、
前記受電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ波により前記送電器へ送信する、
ワイヤレス電力伝送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス電力伝送システム、送電器、受電器、コンピュータプログラム及びワイヤレス電力伝送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロ波空間伝送型ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transmission:WPT)技術が例えば非特許文献1に記載されている。従来のWPT技術では、受電器が送電器から送信される電力伝送波(送電信号)により受電することによって、ワイヤレスで電力伝送を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】庄木裕樹、「マイクロ波空間伝送型ワイヤレス電力伝送(WPT)システムの実用化に向けて」、総務省 電波有効利用成長戦略懇談会 第6回 ブロードバンドワイヤレスフォーラム、資料6-6、2018年2月28日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のWPT技術では、受電器が受電した受電電力により無線通信端末として例えばスマートフォンを充電する場合、充電中にスマートフォンが無線通信を開始すると、送電器から送信された電力伝送波が干渉波になってスマートフォンによる無線通信に悪影響を与える可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ワイヤレス電力伝送システムにおいて、送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末による無線通信に対して送電が悪影響を与えることを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、ワイヤレス電力伝送システムにおいて、電力伝送波により電力を送電する送電器と、前記送電器から前記電力伝送波により電力を受電する受電器と、を備え、前記受電器は、前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成部と、バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生部と、を備え、前記送電器は、前記返信信号を解析する返信信号解析部と、前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御部と、を備える、ワイヤレス電力伝送システムであって、前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、前記受電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ波により前記送電器へ送信する、ワイヤレス電力伝送システムである。
(2)本発明の一態様は、前記送電器は、ビームステアリングにより複数の送電方向へ送電ビームを順次向けるビーム制御部を備える、上記(1)のワイヤレス電力伝送システムである。
(3)本発明の一態様は、各受電器識別子が付与された複数の前記受電器を備え、前記送電器は、前記複数の前記受電器の受電器識別子を時分割多重したアクセス制御信号を発生する信号発生器を備え、前記アクセス制御信号を送電信号として送信し、前記バックスキャッタ波発生部は、自己の受電器識別子を受信したタイミングで前記バックスキャッタ波を発生する、上記(1)又は(2)のいずれかのワイヤレス電力伝送システムである。
(4)本発明の一態様は、ミラー符号の周波数スペクトルの整数倍の複数の中心周波数を使用して前記複数の前記受電器の前記返信信号を周波数分割多重する、上記(3)のワイヤレス電力伝送システムである。
【0007】
(5)本発明の一態様は、ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器において、バックスキャッタ通信により受電器から受信した返信信号であって前記送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す前記返信信号を解析する返信信号解析部と、前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御部と、を備える送電器であって、前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、前記送電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ通信により前記受電器から受信する、送電器である。
【0008】
(6)本発明の一態様は、送電器からワイヤレスで電力伝送波により電力を受電する受電器において、前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成部と、バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生部と、を備える受電器であって、前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、前記返信信号生成部は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する、受電器である。
【0009】
(7)本発明の一態様は、ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器のコンピュータに、バックスキャッタ通信により受電器から受信した返信信号であって前記送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す前記返信信号を解析する返信信号解析ステップと、前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記送電器のコンピュータに、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信する電力伝送波送信ステップと、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ通信により前記受電器から受信する返信信号受信ステップと、
をさらに実行させるためのコンピュータプログラムである。
【0010】
(8)本発明の一態様は、送電器からワイヤレスで電力伝送波により電力を受電する受電器のコンピュータに、前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成ステップと、バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生ステップと、を実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、前記返信信号生成ステップは、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する、コンピュータプログラムである。
【0011】
(9)本発明の一態様は、ワイヤレスで電力伝送波により電力を送電する送電器と、前記送電器からワイヤレスで前記電力伝送波により電力を受電する受電器と、を備えるワイヤレス電力伝送システムのワイヤレス電力伝送制御方法であって、前記受電器が、前記受電した電力により充電を行う対象である無線通信端末の動作状態を示す返信信号を生成する返信信号生成ステップと、前記受電器が、バックスキャッタ波により前記返信信号を前記送電器へ送信するバックスキャッタ波発生ステップと、前記送電器が、前記返信信号を解析する返信信号解析部と、前記送電器が、前記返信信号が前記無線通信端末のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する制御ステップと、を含み、前記送電器は、先頭の起動信号と、起動信号に次いで送信される質問信号と、質問信号に次いで送信されるアクセス制御信号とを含む前記電力伝送波を送信し、前記受電器は、前記電力伝送波に含まれる質問信号の質問内容である無線通信端末の動作状態に対する返答である無線通信端末の動作状態を示す返信信号をバックスキャッタ波により前記送電器へ送信する、ワイヤレス電力伝送制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ワイヤレス電力伝送システムにおいて、送電した電力により充電を行う対象である無線通信端末による無線通信に対して送電が悪影響を与えることを防止することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
図2】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの実施例を示す図である。
図3】一実施形態に係る電力伝送波及びバックスキャッタ信号の構成例を示す波形図である。
図4】一実施形態に係るアクセス制御信号の構成例を示す説明図である。
図5】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。
図7】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの実施例を示す図である。
図8】一実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
図9】従来のミラーサブキャリア方式を示す説明図である。
図10】一実施形態に係るミラーサブキャリア方式を示す説明図である。
図11】一実施形態に係るアクセス制御信号の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す実施形態では、ワイヤレス電力伝送技術としてマイクロ波空間伝送型ワイヤレス電力伝送技術を適用したワイヤレス電力伝送システムを例に挙げて説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。図1に示すワイヤレス電力伝送システムは、送電器1と受電器2を備える。送電器1は、電力伝送波A(送電信号)を送信する。受電器2は、送電器1から送信される電力伝送波Aにより受電する。受電器2が受電した受電電力は、例えば、充電対象機器の充電に利用される。図1には、充電対象機器の例として、スマートフォン等の携帯通信端末装置(以下、携帯端末と称する)3が示される。携帯端末3は、無線通信を行う無線通信端末である。携帯端末3は、受電器2に接続される。なお、充電対象機器は、携帯端末3以外の無線通信端末であってもよい。
【0016】
受電器2は、バックスキャッタ(Backscatter)通信により送電器1へ情報(返信信号)を伝達する。受電器2は、バックスキャッタ通信において、返信信号を含むバックスキャッタ信号Bを送電器1へ送信する。
【0017】
図1に示す送電器1は、搬送波発生部101と、変調器102と、信号発生器103と、WPTアンテナ104と、フィルタ105と、復調器106と、返信信号解析部107と、制御部108と、情報記憶部109とを備える。
【0018】
搬送波発生部101は、電力伝送波Aに使用される搬送波を発生する。変調器102は、信号発生器103が発生した信号により、搬送波発生部101が発生した搬送波を変調する。信号発生器103は、制御部108からの指示に応じて信号を発生する。WPTアンテナ104は、変調器102が変調した搬送波である電力伝送波Aを送信する。
【0019】
WPTアンテナ104は、受電器2から送信されたバックスキャッタ信号Bや自己が送信した電力伝送波Aの回り込み信号などを受信する。フィルタ105は、WPTアンテナ104が受信した信号から電力伝送波Aの回り込み信号を除去する。復調器106は、フィルタ105を通過したバックスキャッタ信号Bを復調する。返信信号解析部107は、バックスキャッタ信号Bの復調により得られた返信信号を解析する。
【0020】
制御部108は、送電器1の制御を行う。制御部108は、信号発生器103に対して信号の発生を指示する。制御部108は、返信信号が携帯端末3のアクティブ状態を示す場合に送電を停止する。情報記憶部109は、制御部108が使用する各種の情報を記憶する。
【0021】
図1に示す受電器2は、WPR(Wireless Power Receiver)アンテナ201、復調器202と、信号解析部203と、返信信号生成部204と、バックスキャッタ波発生部205とを備える。なお、図1には、受電器2の構成のうち、返信信号を送電器1へ送信するための構成が示される。
【0022】
WPRアンテナ201は、送電器1から送信された電力伝送波Aを受信する。復調器202は、WPRアンテナ201が受信した電力伝送波Aを復調する。信号解析部203は、電力伝送波Aの復調により得られた信号を解析する。信号解析部203は、当該信号の解析結果に基づいて、返信信号の生成を返信信号生成部204へ指示する。
【0023】
返信信号生成部204は、信号解析部203からの指示に応じて、返信信号を生成する。返信信号の例として、携帯端末3の動作状態や充電の要否などを示す返信信号が挙げられる。返信信号生成部204は、携帯端末3から通知された情報を使用して、返信信号を生成する。
【0024】
バックスキャッタ波発生部205は、バックスキャッタ波により返信信号を送電器1へ送信する。具体的には、バックスキャッタ波発生部205は、返信信号生成部204が生成した返信信号により変調したバックスキャッタ波であるバックスキャッタ信号Bを、WPRアンテナ201を介して送信する。
【0025】
図2は、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの実施例を示す図である。図2には、1台の送電器1と、3組の受電器2(2-1,2-2,2-3)及び携帯端末3(3-1,3-2,3-3)とが示される。送電器1は、ブロードビームCにより電力伝送波Aを送信する。各受電器2-1,2-2,2-3は、ブロードビームCにより電力伝送波Aを受信する。送電器1がブロードビームCにより送信した電力伝送波Aは、当該ブロードビームCにより3台の受電器2-1、2-2及び2-3で受信される。
【0026】
各受電器2-1,2-2,2-3は、自己のバックスキャッタ通信タイミングでバックスキャッタ信号Bを送電器1へ送信する。各受電器2-1,2-2,2-3のバックスキャッタ通信タイミングは、時分割される。各受電器2-1,2-2,2-3のバックスキャッタ通信タイミングが時分割されることにより、3台の受電器2-1、2-2及び2-3からそれぞれに送信されるバックスキャッタ信号Bが衝突することが回避される。
【0027】
図3は、本実施形態に係る電力伝送波及びバックスキャッタ信号の構成例を示す波形図である。図3において、電力伝送波Aは、起動信号(wake up信号)と質問信号とアクセス制御信号とを含む。起動信号、質問信号及びアクセス制御信号は、制御部108からの指示に応じて信号発生器103が生成した信号であって、搬送波発生部101が発生した搬送波の変調に使用される信号である。
【0028】
起動信号は、電力伝送波Aの先頭で送信される信号であって、受電器2を起動するための信号である。受電器2は、起動信号を受信することによって起動する。また、受電器2において、復調器202及び信号解析部203が動作するための電力には、起動信号により受電した受電電力が供給される。
【0029】
質問信号は、起動信号に次いで送信される信号であって、送電器1から受電器2へ質問内容を通知する信号である。質問内容の例として、携帯端末3の動作状態や充電の要否などが挙げられる。受電器2の信号解析部203は、質問信号の質問内容を返信信号生成部204へ通知して返信信号の生成を指示する。返信信号生成部204は、当該質問内容に対する返答を示す返信信号を生成する。
【0030】
アクセス制御信号は、質問信号に次いで送信される信号であって、複数の受電器2のバックスキャッタ通信タイミングを制御するための信号である。図4にアクセス制御信号の構成例が示される。図4に例示されるアクセス制御信号は、受電器識別子がID0からID9までの10台の受電器2のバックスキャッタ通信タイミングを制御するための信号である。各受電器2には、予め各受電器識別子が付与される。送電器1の情報記憶部109は、10台の受電器2の各受電器識別子ID0-ID9を記憶する。制御部108は、情報記憶部109内の10台の受電器2の各受電器識別子ID0-ID9を信号発生器103へ通知して、アクセス制御信号の発生を指示する。信号発生器103は、10個の受電器識別子ID0-ID9を時間間隔Tdで時分割多重したアクセス制御信号を発生する。時間間隔Tdは、例えば100ビット長の時間である。
【0031】
各受電器2(ID0-ID9)は、自己の受電器識別子が配置されたタイミングによりバックスキャッタ信号Bを送信する。例えば、受電器識別子ID0の受電器2は、受電器識別子ID0が配置された最初の時間間隔Tdに対応する所定のバックスキャッタ通信タイミングでバックスキャッタ信号Bを送信する。バックスキャッタ通信タイミングは、受電器識別子が配置された時間間隔Tdと同じ時間であってもよく、又は、当該時間間隔Tdから一定時間遅延した時間であってもよい。
【0032】
図3において、返信信号を含むバックスキャッタ信号は、受電器2のバックスキャッタ波発生部205がアクセス制御信号を利用して発生した信号である。図4に例示されるように、受電器2は、自己の受電器識別子が配置されたタイミングによりバックスキャッタ信号Bを送信する。図4中、アクセス制御信号の各受電器識別子の時間間隔Td内に符号Bで示されるのが、当該受電器識別子の受電器2から送信されたバックスキャッタ信号Bである。一方、符号Bがない(空白になっている)時間間隔Tdは、当該時間間隔Tdに該当する受電器識別子の受電器2からのバックスキャッタ信号Bがないことを示す。
【0033】
送電器1は、アクセス制御信号に含まれる受電器識別子の受電器2のうち、送電器1の送電可能範囲(電力伝送波Aが到達する範囲)の内に存在しない受電器2からのバックスキャッタ信号Bを受信しない。また、送電器1の送電可能範囲内に存在する受電器2であっても、故障等の不具合によってバックスキャッタ信号Bを送信することができない受電器2も存在し得る。
【0034】
次に図5を参照して本実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法を説明する。図5は、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0035】
(ステップS1) 送電器1は、電力伝送波Aの先頭で起動信号を送信する。受電器2は、電力伝送波Aの先頭の起動信号を受信すると、起動する。
【0036】
(ステップS2) 送電器1は、起動信号に次いで質問信号で変調した電力伝送波Aを送信する。受電器2は、質問信号を受信すると、当該質問信号の質問内容に対する返答を示す返信信号を生成する。ここでは、質問内容は、携帯端末3がアクティブ状態であるか否かと、携帯端末3が充電要の状態(満充電ではない状態)か否(満充電である状態)かとである。
【0037】
(ステップS3) 受電器2は、バックスキャッタ信号Bにより返信信号を送信する。送電器1は、当該バックスキャッタ信号Bにより当該返信信号を受信する。
【0038】
(ステップS4) 送電器1は、受信した返信信号に基づいて、アクティブ状態の携帯端末3が存在するか否かを判断する。この判断の結果、アクティブ状態の携帯端末3が存在する場合にはステップS6に進み、そうではない場合にはステップS5に進む。
【0039】
(ステップS5) 送電器1は、受信した返信信号に基づいて、全ての携帯端末3が満充電であるか否かを判断する。この判断の結果、全ての携帯端末3が満充電である場合にはステップS6に進み、そうではない場合にはステップS1に戻る。
【0040】
(ステップS6) 送電器1は、送電を停止する。具体的には、送電器1は、電力伝送波Aの送信を停止する。この後、図5の処理を終了する。
【0041】
上述した第1実施形態によれば、送電器1が送電した電力により充電を行う対象である携帯端末3がアクティブ状態である場合には送電が停止される。これにより、携帯端末3がアクティブ状態において行う無線通信に対して送電が悪影響を与えることを防止することができる。
【0042】
なお、上述したステップS6における送電の停止後に、再度、送電を開始する場合、運用者が送電器1に対して、送電を開始する送電開始操作を行う。送電開始操作は、例えば通信により遠隔で行うようにしてもよい。送電開始操作が行われると、送電器1は図5の処理を開始する。
【0043】
また、上述したステップS6における送電の停止後において、制御部108は、間欠的に送電を行うように制御を行ってもよい。例えば、制御部108は、一定の周期で送電を行い、当該送電における返信信号に基づいて全ての携帯端末3がアクティブ状態ではないと判断した場合に、図5の処理を開始して継続的な送電を行うようにしてもよい。
【0044】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの構成例を示すブロック図である。図6において図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。第2実施形態では、図6に示すワイヤレス電力伝送システムにおいて、送電器1aがビーム制御部120をさらに備える。受電器2は、上述した第1実施形態と同様の構成である。送電器1aにおいて、ビーム制御部120は、ビームステアリングにより複数の送電方向へ送電ビームを順次向ける制御を行う。
【0045】
図7は、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送システムの実施例を示す図である。図7には、1台の送電器1aと、4組の受電器2(2-1,2-2,2-3,2-4)及び携帯端末3(3-1,3-2,3-3,3-4)とが示される。送電器1aは、ビーム制御部120によるビームステアリングにより4つ送電方向へ順次、各送電ビームD-1,D-2,D-3,D-4を向ける。送電ビームD-1の方向には受電器2-1が存在する。送電ビームD-2の方向には受電器2-2が存在する。送電ビームD-3の方向には受電器2-3が存在する。送電ビームD-4の方向には受電器2-4が存在する。
【0046】
各受電器2-1,2-2,2-3,2-4は、自己の方向に向いた送電ビームにより電力伝送波Aを受信する。電力伝送波Aの構成は、上記した第1実施形態(図3図4)と同様である。各受電器2-1,2-2,2-3,2-4は、電力伝送波Aを受信した場合、自己のバックスキャッタ通信タイミングでバックスキャッタ信号Bを送電器1aへ送信する。図7に示される例では、送電器1aは、送電ビームD-3により電力伝送波Aを送信している。送電ビームD-3の方向に存在する受電器2-3は、送電ビームD-3により電力伝送波Aを受信し、電力伝送波Aのアクセス制御信号において自己の受電器識別子が配置されたタイミングによりバックスキャッタ信号Bを送信する。一方、送電ビームD-3の方向に存在しない受電器2-1,2-2及び2-4は、電力伝送波Aを受信しないので、送電ビームD-3の送信時にはバックスキャッタ信号Bを送信しない。
【0047】
次に図8を参照して本実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法を説明する。図8は、本実施形態に係るワイヤレス電力伝送制御方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0048】
(ステップS10) 送電器1aの制御部108は、ビーム制御部120に対して、送電方向(送電ビームの方向)を設定する。情報記憶部109には、予め、複数の送電方向及び送電順序を示す送電方向情報が格納される。制御部108は、送電方向情報の送電順序に従って、送電方向をビーム制御部120に設定する。ビーム制御部120は、制御部108から設定された送電方向に送電ビームを向ける制御を行う。
【0049】
図7の例では、最初のステップS10では送電ビームD-1が設定され、次のステップS10では送電ビームD-2が設定され、次のステップS10では送電ビームD-3が設定され、次のステップS10では送電ビームD-4が設定される。最終ビームの送電ビームD-4までが終了すると、再度繰り返し、ステップS10ごとに順次、送電ビームD-1から送電ビームD-4までが設定される。以下、図7の例において送電ビームD-1が設定された場合を例に挙げて説明する。
【0050】
(ステップS11) 送電器1aは、送電ビームD-1により電力伝送波Aの先頭で起動信号を送信する。受電器2-1は、送電ビームD-1により電力伝送波Aの先頭の起動信号を受信すると、起動する。
【0051】
(ステップS12) 送電器1aは、起動信号に次いで質問信号で変調した電力伝送波Aを送電ビームD-1により送信する。受電器2-1は、送電ビームD-1により質問信号を受信すると、当該質問信号の質問内容に対する返答を示す返信信号を生成する。ここでは、質問内容は、携帯端末3がアクティブ状態であるか否かと、携帯端末3が充電要の状態(満充電ではない状態)か否(満充電である状態)かとである。
【0052】
(ステップS13) 受電器2-1は、バックスキャッタ信号Bにより返信信号を送信する。送電器1aは、当該バックスキャッタ信号Bにより当該返信信号を受信する。
【0053】
(ステップS14) 送電器1aは、受信した返信信号に基づいて、アクティブ状態の携帯端末3が存在するか否かを判断する。この判断の結果、アクティブ状態の携帯端末3が存在する場合にはステップS17に進み、そうではない場合にはステップS15に進む。
【0054】
(ステップS15) 送電器1aの制御部108は、最終ビームの送電ビームD-4までが終了したか否かを判断する。この判断の結果、最終ビームの送電ビームD-4までが終了した場合にはステップS16に進む。一方、まだ最終ビームの送電ビームD-4までが終了していない場合にはステップS10に戻り、次の送電方向がビーム制御部120に設定される。
【0055】
(ステップS16) 送電器1aは、各送電ビームD-1,D-2,D-3,D-4の送信時に受信した返信信号に基づいて、全ての携帯端末3が満充電であるか否かを判断する。この判断の結果、全ての携帯端末3が満充電である場合にはステップS17に進み、そうではない場合にはステップS10に戻る。
【0056】
(ステップS17) 送電器1aは、送電を停止する。具体的には、送電器1aは、電力伝送波Aの送信を停止する。この後、図8の処理を終了する。
【0057】
上述した第2実施形態によれば、送電器1aが送電した電力により充電を行う対象である携帯端末3がアクティブ状態である場合には送電が停止される。これにより、携帯端末3がアクティブ状態において行う無線通信に対して送電が悪影響を与えることを防止することができる。
【0058】
また、受電器2が存在する方向に送電ビームを向けて電力伝送波Aを送信することにより、送電効率の向上を図ることができる。
【0059】
なお、制御部108は、送電ビーム(送電方向)ごとに携帯端末3の充電状況(満充電か否か)を管理し、全ての携帯端末3が満充電である送電ビーム(送電方向)をビーム制御部120に設定しないようにしてもよい。これにより、全ての携帯端末3が満充電である送電方向には送電ビームが送信されないので、電力の節約を図ることができる。
【0060】
また、上述したステップS17における送電の停止後に、再度、送電を開始する場合、運用者が送電器1aに対して、送電を開始する送電開始操作を行う。送電開始操作は、例えば通信により遠隔で行うようにしてもよい。送電開始操作が行われると、送電器1aは図8の処理を開始する。
【0061】
また、上述したステップS17における送電の停止後において、制御部108は、間欠的に送電を行うように制御を行ってもよい。例えば、制御部108は、一定の周期で各送電方向の送電ビームによる送電を行い、当該送電における返信信号に基づいて全ての携帯端末3がアクティブ状態ではないと判断した場合に、図8の処理を開始して継続的な送電を行うようにしてもよい。
【0062】
[第3実施形態]
第3実施形態は、上述した第1及び第2実施形態のバックスキャッタ通信に係る変形例である。第3実施形態では、バックスキャッタ通信に使用されるミラー符号(Miller code)の周波数スペクトルの整数倍の複数の中心周波数を使用して複数の受電器2のバックスキャッタ信号B(返信信号)を周波数分割多重する。
【0063】
図9は、従来のミラーサブキャリア方式を示す説明図である。従来のミラーサブキャリア方式では、図9に示されるように、電力伝送波Aは中心周波数f0のメイン周波数帯域を使用し、バックスキャッタ信号Bは電力伝送波Aの周波数帯域の両側のサブ周波数帯域を使用する。
【0064】
図10は、本実施形態に係るミラーサブキャリア方式を示す説明図である。本実施形態に係るミラーサブキャリア方式において、図10に示される電力伝送波Aは、図9と同様に、中心周波数f0のメイン周波数帯域を使用する。一方、バックスキャッタ信号について、本実施形態に係るミラーサブキャリア方式では、ミラー符号の周波数スペクトルの整数倍の各中心周波数に異なる受電器2のバックスキャッタ信号Bを割り当てる。図10の例では、中心周波数1倍のサブ周波数帯域に第1受電器2のバックスキャッタ信号B-1が割り当てられ、中心周波数2倍のサブ周波数帯域に第2受電器2のバックスキャッタ信号B-2が割り当てられ、中心周波数3倍のサブ周波数帯域に第3受電器2のバックスキャッタ信号B-3が割り当てられ、中心周波数4倍のサブ周波数帯域に第4受電器2のバックスキャッタ信号B-4が割り当てられる。これにより、図10の例では、4台の受電器2のバックスキャッタ信号B-1,B-2,B-3,B-4が周波数分割多重される。
【0065】
図11は、本実施形態に係るアクセス制御信号の構成例を示す説明図である。図11に例示されるアクセス制御信号は、図10に例示されるように、4台の受電器2のバックスキャッタ信号Bを周波数分割多重する場合のものである。図11に示されるアクセス制御信号において、1つの時間間隔Tdには4個の受電器識別子が配置される。例えば、図10において、アクセス制御信号の最初の時間間隔Tdには、4個の受電器識別子ID0-ID3が配置される。その4個の受電器識別子ID0-ID3の各配置位置は、各受電器識別子ID0,ID1,ID2,ID3に割り当てられたサブ周波数帯域「中心周波数1倍のサブ周波数帯域」,「中心周波数2倍のサブ周波数帯域」,「中心周波数3倍のサブ周波数帯域」,「中心周波数4倍のサブ周波数帯域」を示す。受電器識別子ID0-ID3の各受電器2は、自己の受電器識別子が配置されたアクセス制御信号の最初の時間間隔Tdのタイミングにより、自己に割り当てられたサブ周波数帯域でバックスキャッタ信号Bを送信する。これにより、受電器識別子ID0-ID3の各受電器2が送信したバックスキャッタ信号Bが周波数分割多重される。
【0066】
上述した第3実施形態によれば、バックスキャッタ通信において、複数の受電器2のバックスキャッタ信号B(返信信号)を周波数分割多重することにより、1回のバックスキャッタ通信において送電器1,1aへ情報を送信する受電器2の数を増やすことができる。これにより、送電器1,1aが多数の受電器2から情報を収集する際に要する時間を短縮することができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0068】
例えば、上述した実施形態では、携帯端末3を充電する場合に適用したが、送電器1,1aがバックスキャッタ通信により受電器2を介してデバイスから情報を収集するようにしてもよい。例えば、多数のIoTデバイス及び受電器2の組が設置された地域において、送電器1,1aがバックスキャッタ通信により受電器2を介してIoTデバイスから情報を収集する、情報収集システムを構成してもよい。この場合、受電器2は、IoTデバイスから取得したセンシングデータ等の情報を含むバックスキャッタ信号を送電器1,1aへ送信する。なお、IoTデバイスが受電器2を含むデバイスとして構成されてもよい。
【0069】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0070】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【符号の説明】
【0071】
1…送電器、2…受電器、3…携帯端末、101…搬送波発生部、102…変調器、103…信号発生器、104…WPTアンテナ、105…フィルタ、106,202…復調器、107…返信信号解析部、108…制御部、109…情報記憶部、120…ビーム制御部、201…WPRアンテナ、203…信号解析部、204…返信信号生成部、205…バックスキャッタ波発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11