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特許7062618フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法
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  • 特許-フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】フィルムコーティング組成物並びに経口固形製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/32 20060101AFI20220425BHJP
   A61K 9/32 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019135928
(22)【出願日】2019-07-24
(62)【分割の表示】P 2016557493の分割
【原出願日】2015-09-30
(65)【公開番号】P2019178173
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2019-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2014225026
(32)【優先日】2014-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015080261
(32)【優先日】2015-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)第31回製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集,第62~63頁,発行日平成26年10月10日 (2)第31回製剤と粒子設計シンポジウム,開催日 平成26年10月23日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594146788
【氏名又は名称】日本酢ビ・ポバール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】川田 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 将利
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-197410(JP,A)
【文献】特開2004-026675(JP,A)
【文献】特表2011-516455(JP,A)
【文献】国際公開第2014/017507(WO,A1)
【文献】特開2008-201711(JP,A)
【文献】国際公開第2010/110018(WO,A1)
【文献】特開昭59-042325(JP,A)
【文献】国際公開第2011/025035(WO,A1)
【文献】松本晶一ら,ポリ酢酸ビニル部分ケン化物のケン化度分布の分別,高分子化学,日本,1961年,第18巻、第191号,p169-174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(A)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
【請求項2】
JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(B)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とし、経口固形製剤が、下記式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.76~0.87質量%である。
【化1】
[式中、R およびR の一方は水素であって、他方は、水難溶性塩の形態である分岐しているまたは分岐していないC -C -アルキルである。]
【請求項3】
ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.760.80質量%である、請求項2記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項4】
ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項5】
ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項6】
経口固形製剤が、下記式Iで表される化合物の塩、L-システイン又はその塩、及び、バルプロ酸又はその薬理学的に許容可能な塩を含まない、請求項1、4及び5のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【化2】
[式中、RおよびRの一方は水素であって、他方は、水難溶性塩の形態である分岐しているまたは分岐していないC-C-アルキルである。]
【請求項7】
経口固形製剤が、錠剤である請求項1~6のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
【請求項8】
薬物を含有する錠剤に対して、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
【請求項9】
薬物を含有する錠剤に、請求項1~7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬用経口固形製剤に用いるフィルムコーティング組成物並びにこれを被膜として用いた経口固形製剤及びその製造方法に関するもので、更には生産性が高く、ガスバリア性の高い医薬用経口固形製剤を製造するためのフィルムコーティング組成物、経口固形製剤及びその製造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコーティングや糖衣コーティングは、医薬用経口固形製剤において、薬物の不快な味に対するマスキング、酸素の遮断、防湿又は製品としての美観の向上等の目的で、薬物を含有する錠剤等の被覆用に、広く用いられる技術である。
【0003】
フィルムコーティングは、糖衣コーティングに比べて、短時間で簡便に実施でき、またコーティング皮膜の厚みを薄くできることから、錠剤の大きさを小さくでき、得られた経口固形製剤の服用性に優れるという点でも有用である。
【0004】
フィルムコーティングに用いられる基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する)をはじめとした様々なポリマーが用いられているが、近年ポリビニルアルコール(以下、PVAとも略記する)が注目されている。PVAフィルムは防湿性やガスバリア性に優れているため、臭いの強い薬物や酸化されやすい薬物、又は吸湿しやすい薬物を含む固形製剤にPVAのフィルムコーティングを施すことで、保存安定性の向上や臭気のマスキング効果を奏することができる。
【0005】
一般に、医薬用あるいは医薬グレードとして市販されているPVAは、けん化度の範囲が85.0モル%~89.0モル%の、いわゆる部分けん化タイプのPVAである。これは、日本、米国、ヨーロッパの公定書に記載されているPVAのけん化度規格の共通部分が85.0モル%~89.0モル%であり、近年、医薬品のグローバル化が進む中で、製薬会社は日米欧3極で医薬品としての承認を受けるために、原料として使用するPVAも日本、米国、ヨーロッパのけん化度規格に合致した85.0モル%~89.0モル%のPVAが望ましいという背景があるとともに、経口製剤に使用されるPVAとして、水溶性の高い部分けん化タイプのPVAが好適であるという理由があると考えられる。
しかしながら、これら医薬用で市販されているけん化度が85.0モル%~89.0モル%のPVAをコーティング基剤として用いた場合、PVA水溶液の粘着性が高いため、コーティング中に固形製剤同士が付着したり、また固形製剤がコーティング機内に付着してしまうため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。
【0006】
PVAの粘着性を改善するための方法として、特許文献1には、けん化度が90モル%以上のPVAと水等を含むコーティング用組成物が開示されている。また、特許文献2には、PVAと水溶性ポリオキシエチレン類とを含有するフィルムコーティング組成物が開示されており、実施例には部分けん化タイプPVAとポリエチレングリコールとのフィルムコーティング組成物が例示されている。
さらに、本発明者らは、PVAとセルロース誘導体を含有するフィルムコーティング組成物を用いてコーティングを行う方法を開示している(特許文献3)。
これらのいずれの方法も、PVAの粘着性を改善し、けん化度が85.0モル%~89.0モル%の部分けん化タイプのPVA単独でコーティングを行った時よりもスプレー速度を上げられるため、コーティング時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭59-42325号公報
【文献】特開平8-59512号公報
【文献】特開2013-253030号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1のPVAは、米国の薬局方(USP)のけん化度規格を満たしておらず、グローバル展開を図る医薬品の原料として使用できないという問題がある上、けん化度が85.0モル%~89.0モル%のPVAに比べて、水溶性が低いため、速溶解性の経口固形製剤に使用できないという問題がある。
また、特許文献2や特許文献3に記載の方法は、PVA以外の成分としてポリオキシエチレン類やセルロース誘導体を含んでいるため、これらと相互作用を起こすような薬物を含む固形製剤のコーティングには使用することができないという問題がある。さらに、ポリオキシエチレン類やセルロース誘導体等のPVA以外の添加剤を加えることは、PVAが本来有する防湿性やガスバリア性を低下させる要因にもなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記現状に鑑み、日米欧の公定書に記載されているPVAのけん化度規格に合致する、すなわち、けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるPVAを使用し、PVA以外の添加剤を加えずにコーティングを行った場合にも、コーティング中の錠剤同士の付着が発生しにくく、生産性が高くなるという特徴を有したフィルムコーティング組成物、それを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、同じけん化度であっても、よりけん化度分布が広いPVAを用いてコーティングを行うことで、コーティング時に粘着性が発現されにくいことを見出し、けん化度分布を示す指標において、特定の要件を満たす85.0モル%~89.0モル%のPVAを用いることで生産性に優れたフィルムコーティング組成物として使用でき、コーティング皮膜が従来のPVAと同様に、優れた防湿性、ガスバリア性を発現することを見出し、さらに研究を重ねて本発明を完成した。
【0011】
即ち、本発明は、以下の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物等に関する。
[1]JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(A)又は要件(B)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[2]JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(A)及び要件(B)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(A):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。
要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。
[3]JIS K6726に従って測定した平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であるポリビニルアルコール系重合体を含む経口固形製剤用フィルムコーティング組成物であり、当該ポリビニルアルコール系重合体が、以下に示す要件(C)を満たす、ポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
要件(C):検出器が荷電化粒子検出器、カラムがThermo Scientific社のAcclaimTM300(カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5~7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である液体クロマトグラフィを用いて以下の測定条件でポリビニルアルコール系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間Ti[分]の時の検出強度をPi[pA]としたとき、式(1)と式(2)においてTiとPiを用いて表されるTとTが式(3)を満たす。
[測定条件]
・ポリビニルアルコール系重合体水溶液濃度:0.1質量%
・ポリビニルアルコール系重合体水溶液注入量:2μL
・カラム温度:50℃
・流速:1.0ml/分
・溶離液:水とメタノールの混合溶媒
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分~10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5~15:85へと一定の割合で変化し、かつ、測定時間10分~15分における溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85で一定である。
[式]
= Σ(Ti×Pi)/Σ(Pi) 式(1)
= Σ(Ti 2×Pi)/Σ(Ti×Pi) 式(2)
{(T/T)-1}×1000>20 式(3)
[4]ポリビニルアルコール系重合体が、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であるという要件を満たすポリビニルアルコール系重合体であることを特徴とする前記[1]~[3]のいずれか1項に記載の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物。
[5]薬物を含有する錠剤に対して、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物で被覆されていることを特徴とする経口固形製剤。
[6]薬物を含有する錠剤に、前記[1]~[4]のいずれか1項に記載のフィルムコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、錠剤表面に当該フィルムコーティング組成物を被覆させる工程を含むことを特徴とする経口固形剤の製造方法。
[7]被覆量が錠剤全量に対して1~10質量%である、前記[5]記載の経口固形製剤。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、日米欧で医薬製剤に使用でき、PVA単独でコーティングを行った場合にも、錠剤同士の粘着が発現されにくく、それによりコーティング時間を短縮でき、かつ防湿性に優れ、水溶性の高いコーティング皮膜を形成することができるフィルムコーティング組成物、それを用いた経口固形製剤及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】液体クロマトグラフィを用いて、平均けん化度88.2モル%、4質量%水溶液粘度が5.3mPa・sのPVA系重合体の測定を行った際の保持時間5.0分~12.0分における保持時間と検出強度のチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
[PVA系重合体]
まず本発明の経口固形製剤用フィルムコーティング組成物に用いるPVA系重合体について詳しく説明する。
本発明で用いられるPVA系重合体は、平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%であって、かつ、けん化度分布が従来のPVA系重合体より広いことが好ましい。
PVA系重合体の平均けん化度は、JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される。
【0015】
本発明におけるけん化度分布を表す指標としては2つあげられる。1つ目は、PVA系重合体が完全に溶解している水溶液に一定量の1-プロパノールを添加して混合した際に析出するPVA成分と析出しないPVA成分の量により表す方法であり、水溶液の透明度や濃度により規定することができる。本発明におけるこの指標については、以下の要件(A)と要件(B)のいずれか、又は両方を満たすPVA系重合体を用いることが好ましく、その要件の意味について説明する。
【0016】
「要件(A):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを130.0ml加え、撹拌して得られる液の20℃における液の透明度が50.0%以下である。」
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌する方法が好ましい。
また、1-プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
【0017】
尚、前記「20℃における液の透明度」とは、例えば、20℃で所定時間(例えば、30分間又はそれを超える時間、30分から1時間程度)放置して液中の気泡が目視では確認できない程度に抜けた液の透明度を示す。
該透明度は、好ましくは30.0%以下であり、より好ましくは20.0%以下である。
【0018】
ここで、透明度の測定は、JIS K0115で規定される分光光度計を用い、光路長20mmの石英又はガラス製吸収セルを使用し、水を対照として430nmの透過率を求めるという方法で実施される。
ここで求められる透明度の意味としては、けん化度の高いPVA成分は1-プロパノールに溶解しにくいため、PVA系重合体水溶液に一定量の1-プロパノールを添加すると、高けん化度成分が析出し、濁り成分となるため、前記条件で透明度が50.0%以下になることということは、高けん化度成分を多く含んでいること、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
【0019】
「要件(B):ポリビニルアルコール系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られる上澄み液の濃度が0.75質量%以上である。」
前記撹拌は、均一に行われることが好ましい。
前記撹拌方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーを用いて500rpmで撹拌することが好ましい。
また、1-プロパノールの滴下速度は、特に限定されないが、例えば10ml/minが好ましい。
【0020】
前記上澄み液の濃度は、好ましくは0.75質量%以上であり、より好ましくは0.80質量%以上である。
【0021】
ここで、前記上澄み液は、例えば、PVA系重合体の5.0質量%水溶液100.0gに対して、1-プロパノールを230.0ml加え、撹拌した液を、20℃で24時間静置して得られた液の液層から、該液の全量に対して30~60重量%を採取することにより得ることができる。
【0022】
ここで、上澄み液濃度の測定方法としては、例えば、当該上澄み液約80gを沈殿成分が含まれないようにスポイトを用いてゆっくりとシャーレ上に採取し、60℃で5時間乾燥した後、105℃で24時間乾燥し、採取した液の重量と乾燥前後の重量の変化から算出することができる。
ここで求められる上澄み液濃度の意味としては、けん化度の低いPVA成分は、1-プロパノールを加えて析出しにくいため、PVA系重合体水溶液に一定量の1-プロパノールを添加すると、低けん化度成分は液中に溶解した状態で存在する。すなわち、上澄み液の濃度が0.75質量%以上になるということは、低けん化度側のけん化度分布が広いことを示す。
【0023】
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVA系重合体は、通常は、平均けん化度が85.0モル%~89.0モル%の範囲にあって、かつ、前記の要件(A)を満たす、すなわち高けん化度側のけん化度分布が広いものであるか、前記の要件(B)を満たす、すなわち低けん化度側のけん化度分布が広いものであり、要件(A)と要件(B)の両方を満たす、すなわち高けん化度側、低けん化度側の両方の分布が広いことが好ましい。
本発明のフィルムコーティング組成物に用いられるPVA系重合体は、前記要件(A)及び/又は前記要件(B)を満たすため、けん化度分布が広いものである。
【0024】
使用するPVA系重合体の要件(A)の条件で測定される透明度が50.0%以下の場合、このようなPVA系重合体を用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きにくく、コーティング不良を防止でき、コーティング時間を短くできるため好ましい。
【0025】
また、使用するPVA系重合体の要件(B)の条件で測定される上澄み液濃度が0.75質量%より以上の場合、このようなPVA系重合体を用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きにくく、コーティング不良を防止でき、コーティング時間を短くできるため好ましい。
【0026】
本発明におけるけん化度分布を表す指標として2つ目にあげられるのは、PVA系重合体を荷電化粒子検出器を用いた液体クロマトグラフィで測定し、保持時間と検出強度の相関関係により表す方法である。本発明におけるこの指標については、以下の要件(C)を満たすPVA系重合体を用いることが好ましく、その要件の意味について説明する。
【0027】
「要件(C):検出器が荷電化粒子検出器、カラムがThermo Scientifi社のAcclaimTM300(カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5~7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である液体クロマトグラフィを用いて以下の測定条件でポリビニルアルコール系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間Ti[分]の時の検出強度をPi[pA]としたとき、式(1)と式(2)においてTiとPiを用いて表されるTとTが式(3)を満たす。
[測定条件]
・PVA系重合体水溶液濃度:0.1質量%
・PVA系重合体水溶液注入量:2μL
・カラム温度:50℃
・流速:1.0ml/分
・溶離液:水とメタノールの混合溶媒
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分~10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5~15:85へと一定の割合で変化し、かつ、測定時間10分~15分における溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85で一定である。
【0028】
[式]
= Σ(Ti×Pi)/Σ(Pi) 式(1)
= Σ(Ti 2×Pi)/Σ(Ti×Pi) 式(2)
{(T/T)-1}×1000>20 式(3)」
【0029】
上記要件において、使用する荷電化粒子検出器と液体クロマトグラフィについて特に制限はないが、例えば、荷電化粒子検出器としてはThermo Scientific社の CORONA VEOを使用することができる。また、液体クロマトグラフィとしてはThermo Scientific社のULTIMATE3000を使用することができる。
【0030】
荷電化粒子検出器を用いた液体クロマトグラフィによってPVA系重合体の測定を行った場合、カラムから分離したPVAを含む試料溶液が荷電化粒子検出器内部において窒素で噴霧及び乾燥されることにより微粒子化され、そのPVA微粒子がNイオンで荷電化され測定されることにより、検出される。
【0031】
本発明の液体クロマトグラフィで使用するカラムとしては、通常は、オクタデシルシリル基で表面が修飾された化学結合型多孔性球状シリカゲルが固定相として充填されている逆相系ODSカラムであるThermo Scientific社のAcclaimTM300 (カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5~7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))である。
【0032】
測定試料であるPVA系重合体は、精製水に溶解し、水溶液として測定される。PVA系重合体水溶液濃度は、通常は、0.1質量%である。
測定条件は、通常は、流速が1ml/分、カラム温度が50℃、PVA系重合体水溶液の注入量が2μLである。
【0033】
溶離液としては、通常は、水とメタノールの混合溶媒を用いる。
さらに、通常は、溶離液にグラジエントをかけて測定を行う。
測定時間ごとの溶離液のグラジエント条件としては、通常は、測定時間0分における溶離液中の水とメタノールの混合比が95:5であり、0分~10分にかけて一定の割合(例えば、水とメタノールの混合比において、水の割合を1分間あたり8ずつ減らし、メタノールの割合を1分間あたり8ずつ増やす)で水とメタノールの比率を変化させ、10分における水とメタノールの混合比が15:85となるように変化させ、測定時間10分~15分においては、溶離液中の水とメタノールの混合比が15:85の一定の比率とする。
【0034】
溶離液中における水の割合が多い時間帯においては、PVA系重合体中の高けん化度成分が分離されていき、メタノールの割合が増えてくるにつれて徐々にPVA系重合体中の低けん化度成分が分離されていく。
カラム中にデッドスペース部分が存在している場合、0~10分のみのグラジエントでは正確な測定が行えない可能性があるため、通常は、それを防ぐために上記条件で5分間溶離液を流す。
15分以降は、カラム中に残る低けん化度成分を追い出すために、水とメタノールの混合比を5:95として5分間流すのが好ましく、引き続きPVA系重合体の測定を行う際は、7分から10分間程度、水とメタノールの混合比を95:5の一定として溶離液を流し、カラム内部を初期状態に平衡化させるのが好ましい。
【0035】
上記条件下でPVA系重合体の試料を測定すると、保持時間と検出強度の相関を示すグラフを得ることができる。このグラフから、上記測定条件下において試料溶液を何も打たずに測定を行った時に得られるいわゆるベースラインのピークを差し引いてベースライン補正を行うことで、保持時間ごとの検出強度のグラフが得られる。
図1に、JIS K6726に従って測定した平均けん化度が88.2モル%、JIS K6726に従って測定した4質量%水溶液粘度が5.3mPa・sのPVA(日本酢ビ・ポバール製 JP-05)の測定を行った際の保持時間5.0分~12.0分における保持時間(Retention time)と検出強度(Intensity)のチャートを示す。
【0036】
本発明においては、検出器から送られてきた信号をデータ処理装置が受け取る際の頻度を示すデータサンプリング周期が500ミリ秒、すなわち0.5秒に一回の割合で検出強度のデータを得ることが好ましく、データのサンプリング周期が2秒より短いことがより好ましい。これらのデータをプロットすることにより、図1のようなチャートが得られる。
【0037】
本液体クロマトグラム条件では、溶離液中の水の割合が高い測定初期には、サンプルPVA系重合体中の高けん化度成分が溶出し、溶離液中のメタノールの割合が増えるにつれて低けん化度成分が溶出するため、コロナ検出器で検出される保持時間毎のイオン強度のチャートとしては、けん化度分布が狭いPVA系重合体の場合、保持時間9.5分近辺にピークトップを有するシャープなピークが得られるが、同じけん化度であってもけん化度分布の広いPVA系重合体を測定した場合、ピークトップの位置は変わらないが、ブロードなピークが得られる。
【0038】
得られた保持時間と検出強度の全データにおいて、保持時間Ti[分]における検出強度をPi[pA]とした場合、式(1)、式(2)のようなTとTで表記することができる。ここで示すTおよびTは、ゲル浸透クロマトグラフィ(以下、GPCと略記する)を用いた分子量分布測定における、数平均分子量Mおよび重量平均分子量Mに相当する意味合いのものである。
これらTおよびTを用いて、分子量分布測定におけるいわゆる多分散度M/Mに相当するT/Tを用いることにより、けん化度の分布の広がりを式(3)のように規定することができる。
【0039】
式(3)における{(T/T)-1}×1000の値としては、通常は20より大きく、25よりも大きいこと(例えば、25~90)がより好ましく、30より大きいこと(例えば、30~85)がさらに好ましい。
すなわち、{(T/T)-1}×1000で表される値が大きいほど、けん化度分布が広いPVA系重合体であり、この値が20を超えるPVA系重合体を用いたてコーティングを行った場合、錠剤同士の付着が起こりにくいため、コーティング時のスプレー速度を高めることができ、それによりコーティング時間を短縮させることができる。
一方、{(T/T)-1}×1000≦20以下となるPVA系重合体は、けん化度分布が狭く、このようなPVA系重合体を用いてコーティング試験を行っても、錠剤同士の付着が起きやすく、コーティング不良が起こったり、コーティング時間が長くなってしまう。
【0040】
本発明で用いられるPVA系重合体は、上記要件(A)~(C)の少なくとも1つ、好ましくは2つ、さらに好ましくは3つを充足する。
従来、けん化度分布を定量的に測定することは難しかったが、本発明では上記要件(A)、(B)又は(C)によってけん化度分布を測定できることが見出された。
【0041】
本発明で用いられるPVA系重合体の製造方法としては、ビニルエステル系モノマーの重合体をけん化する等の公知の方法が用いられ、かかるビニルエステル系モノマーとしては、酢酸ビニルが挙げられる。
【0042】
酢酸ビニルの重合方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられるが、溶剤としてメタノールを用いた溶液重合が工業的に好ましい。該溶液重合には、過酸化物系、アゾ系等の公知の開始剤を用いることができ、酢酸ビニルとメタノールの配合比、重合収率を変えることにより、得られるポリ酢酸ビニルの重合度を調整することができる。また、本発明のPVA系重合体を得るための原料として、市販のポリ酢酸ビニル樹脂を使用することもできる。
【0043】
得られたポリ酢酸ビニルのけん化方法としては、従来から公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いたけん化方法を適用することができ、中でもポリ酢酸ビニルのメタノール溶液又はポリ酢酸ビニルのメタノール、水、酢酸メチル等の混合溶液に水酸化ナトリウム等のアルカリを加えて、撹拌して混合しながら、ポリ酢酸ビニルのアセチル基を加アルコール分解する方法が、工業的に好ましい。
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液分を分離し、固形物を乾燥することによりPVA系重合体を得ることができる。
【0044】
本発明で用いられるPVA系重合体は、けん化反応を通常より不均一な系で行うことで製造することができる。具体的な方法としては、けん化時のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液の濃度を高くして(例えば、55質量%以上)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌速度を低くして(例えば、20rpm以下)けん化を行う方法、アルカリを添加して混合する際の撹拌及び混合時間を短縮してけん化を行う方法、アルカリ量を増やして短時間でけん化を行う方法、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と添加するアルカリの温度を調整する等して、けん化反応系に温度勾配又は温度分布を与えてけん化する方法が挙げられる。
【0045】
その他にも、けん化反応速度に影響を与える水、酢酸メチル等の溶剤を不均一な状態になるように添加して、けん化反応を行う方法等があり、これらの操作を行うことで、作成したPVA系重合体中のけん化度にムラが生じやすくなり、それにより従来の方法で作成したPVA系重合体と同じ平均けん化度であっても、けん化度分布が広いPVA系重合体を製造することができる。
【0046】
また、上記方法以外にも、加重平均けん化度が目的の値になるようにけん化度の異なる2種以上のPVA粉末を配合したPVAも、PVA系重合体の一形態として本発明において使用することができる。
この場合、PVA系重合体は、例えば、2種のPVA(a)とPVA(b)とを混合することにより、得ることができる。
JIS K6726のけん化度測定方法に従って測定される、PVA(a)の平均ケン化度は、例えば85モル%以上(例えば、85~99モル%)、好ましくは88モル%以上(例えば、88~99モル%)、より好ましくは90モル%以上(例えば、90~99モル%)、さらに好ましくは92モル%以上(例えば、92~99モル%)のPVA(a)である。
PVA(b)の前記平均ケン化度は、例えば99モル%以下(例えば、60~99モル%)、好ましくは95モル%以下(例えば、60~95モル%)、より好ましくは90モル%以下(例えば、65~90モル%)、さらに好ましくは88モル%以下(例えば、65~88モル%)である。
PVA(a)とPVA(b)の混合割合は、PVA(a):PVA(b)の質量比が、例えば5:95~95:5、好ましくは10:90~90:10、より好ましくは15:85~85:15、さらに好ましくは20:80~80:20である。
また、PVA(a)とPVA(b)の混合によって得られるPVA系重合体の加重平均けん化度(すなわち、PVA(a)のけん化度をAモル%、PVA(b)のけん化度をBモル%、PVA(a)とPVA(b)の混合割合をA’:B’とした時、加重平均けん化度C=(A×A’+B×B’)/100)は、例えば83~89モル%であり、好ましくは85~89モル%であり、より好ましくは86~89モル%である。
【0047】
本発明で用いられるPVA系重合体は、主として医薬用経口固形製剤のフィルムコーティング組成物に用いられることから、けん化度の範囲としては、医薬品添加物規格、米国薬局方及びヨーロッパ薬局方の3つの公定書に記載されているPVAのけん化度の規格内に入ることが求められ、また、体内で速やかに溶解することが求められるため、85.0モル%~89.0モル%である。平均けん化度が85.0モル%未満の場合は、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用できず、また、疎水性基の割合が多くなることから、親水性が低下したり、水溶液を調製する際に高温で析出する傾向が出てくるため、取扱いが難しくなるという問題がある。一方、平均けん化度が89.0モル%よりも大きい場合、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用できず、PVAの水酸基の増加に伴う結晶性の向上により、水への溶解性が低下し、経口固形製剤のフィルムコーティングに使用した際、溶出速度が低下するという問題がある。
【0048】
本発明で用いられるPVA系重合体の重合度は特に制限はないが、4質量%水溶液粘度(JIS K6726に従って測定)は、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下が好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下がさらに好ましい。
4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上の場合、コーティング後に錠剤表面に形成されるフィルムの強度が高くなるため、好ましい。4質量%水溶液粘度が10mPa・sより以下の場合、粘度が低いため、コーティング時のスプレー速度を上げることができ、生産性が向上するため、好ましい。
本発明のコーティング組成物は、必要に応じて、通常医薬製剤に用いられる薬物、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、クエン酸トリエチル等の可塑剤、酸化チタン、タルク、コロイダルシリカ等の無機化合物、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の滑択剤、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のポリマー、界面活性剤、着色剤、顔料、甘味料、コーティング剤、消泡剤及びpH調製剤等の添加剤を加えても良い。これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを添加する場合の含有量は、PVA系重合体100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは20質量部以下である。
【0049】
[経口固形製剤]
本発明の経口固形製剤は、薬物を含有する錠剤と、錠剤を被覆する本発明のフィルムコーティング組成物を少なくとも含む。
前記薬物は、経口投与可能な薬物であれば特に限定されるものではない。
【0050】
薬物を含有する錠剤には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤等、通常この分野で常用され得る種々の添加剤を配合してもよい。賦形剤としては、白糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられ、結合剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷん等が挙げられる。崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース及び結晶セルロース・カルメロースナトリウム等が挙げられる。また、滑択剤、凝集防止剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。更に、医薬化合物の溶解補助剤としては、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸等の有機酸等が挙げられる。これら添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。また、これら添加剤の含有量は、薬剤の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0051】
本発明における経口固形製剤は、薬物を含有する錠剤に本発明のフィルムコーティング組成物を被覆させることで作成することができる。
【0052】
次に、本発明の経口固形製剤の製造方法について説明する。
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を用いることができる。一般的に行われているのはスプレーコーティングであるが、その場合は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置等を用いて行うことができ、これらの装置に付帯するスプレー装置にはエアースプレー、エアレススプレー等を用いることができる。
【0053】
本発明のフィルムコーティング組成物の錠剤への被覆方法としては、例えば上述したコーティング装置を用い、薬物を含有する錠剤に、必要に応じて添加剤を添加した本発明のフィルムコーティング組成物を水又はエタノール等の有機溶媒あるいはこれらの混合液に溶解もしくは分散させた溶液を調整し、乾燥と同時に該溶液を塗布又は噴霧して錠剤表面へ被覆する方法等が挙げられる。
【0054】
錠剤の表面にコーティングされるフィルムコーティング組成物の被覆量は、固形製剤の種類、形、大きさ、表面状態、更に固形製剤中に含まれる薬剤及び添加剤の性質等によって異なるが、錠剤全量に対して、好ましくは1~10質量%、更に好ましくは1~7質量%、特に好ましくは2~6質量%である。被覆量が少なすぎると、完全な皮膜が得られず、十分な防湿効果、酸素バリア性、臭気マスキング効果が得られない。一方、被覆量が多すぎるとコーティングに要する時間が長くなるという問題がある。
【0055】
本発明の経口固形製剤は、本発明のフィルムコーティング組成物によって形成されるフィルム層の下にヒドロキシプロピルメチルセルロース等の通常、医薬製剤のコーティングに常用され得る種々のポリマーを成分として含有する組成物を用いてアンダーコーティングを行ったり、本発明のフィルムコーティング組成物によって形成される皮膜層の上に、医薬製剤のコーティングに常用され得る種々のポリマーを成分として含有する組成物を用いてオーバーコーティングを行う等して、複数の成分を含むフィルムを形成させた多層フィルムコーティング経口固形製剤としても良い。
【実施例
【0056】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
【0057】
<液体クロマトグラフィ測定条件>
・検出器:荷電化粒子検出器
・カラム:Thermo Scientific社、AcclaimTM300(カタログ番号:060266、炭素含量:8%、最大圧力:4500psi、粒子径:3μm、細孔径:300Å、固定相:C18、表面積:100m/g、長さ:150mm、直径:4.6mm、pH:2.5~7.5、材質:Glass Lined Tubing(グラスライニング管))
・PVA系重合体水溶液濃度:0.1質量%
・PVA系重合体水溶液注入量:2μL
・カラム温度:50℃
・流速:1.0ml/分
・溶離液:水とメタノールの混合溶媒
・溶離液のグラジエント条件:測定時間0分~10分において溶離液中における水とメタノールの混合比が95:5~15:85へと一定の割合(水とメタノールの混合比において、水の割合を1分間あたり8ずつ減らし、メタノールの割合を1分間あたり8ずつ増やす)で変化させ、かつ、測定時間10分~15分における溶離液中の水とメタノールの混合比を15:85一定とする。
上記条件でPVA系重合体を測定し、ベースライン補正を行った後に得られる保持時間と検出強度の関係において、データサンプリング周期を500ミリ秒とした時に保持時間5.0分から12.0分の間に得られる全データにおける保持時間Ti[分]の時の検出強度をPi[pA]としたとき、式(1)と式(2)においてTiとPiを用いて表されるTとTが式(3)を満たす。
[式]
= Σ(Ti×Pi)/Σ(Pi) 式(1)
= Σ(Ti 2×Pi)/Σ(Ti×Pi) 式(2)
{(T/T)-1}×1000>20 式(3)
【0058】
<PVA系重合体の合成方法>
(比較合成例1)
市販のポリ酢酸ビニル樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JMR-30LL 重合度590)を100℃で真空乾燥して水分を除去した後、メタノールに溶解し、ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液を得た。この溶液500質量部を40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液16質量部を加え、プロペラタイプの撹拌翼を用いて300rpmで、1分間撹拌した後、40℃で40分間静置することでけん化反応を行った。得られたゲル状物を粉砕し、メタノール570質量部と酢酸メチル230質量部及び水17質量部からなる混合溶媒に浸漬し、ゆっくりと撹拌しながら更に1時間、40℃でけん化反応を行ったのち、pHが8~9になるように1質量%酢酸水溶液を加えて中和を行った後、固形物と液分を分離し、固形物を60℃で8時間乾燥し、PVA系重合体を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA系重合体の平均けん化度は88.3モル%で、4質量%水溶液粘度は5.3mPa・sであった。また、このPVA系重合体の5.0質量%水溶液100gに1-プロパノールを130ml加え、均一に撹拌して得られる液の20℃における透明度は99.4%であり、このPVA系重合体の5.0質量%水溶液100gに1-プロパノールを230ml加え、均一に撹拌した液を20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.62質量%であった。さらに、このPVA系重合体を上記測定条件でLC-CADを用いて測定したところ、式(3)で表される{(T/T)-1}×1000の値は12であった。比較合成例1の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0059】
(合成例1)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を60rpmで、30秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
JIS K6726の方法で測定したこのPVA系重合体の平均けん化度は88.2モル%で、4質量%水溶液粘度は5.2mPa・sであった。また、このPVA系重合体の5.0質量%水溶液100gに1-プロパノールを130ml加え、均一に撹拌して得られる液の20℃における透明度は18.5%であり、このPVA系重合体の5.0質量%水溶液100gに1-プロパノールを230ml加え、均一に撹拌した液を20℃で24時間静置した後の上澄み液濃度は、0.83質量%であった。さらに、このPVA系重合体を上記測定条件でLC-CADを用いて測定したところ、式(3)で表される{(T/T)-1}×1000の値は43であった。合成例1の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0060】
(合成例2)
ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液に水酸化ナトリウム溶液を加えて撹拌する際、撹拌速度を20rpmで、60秒間行い、通常の条件よりも不均一になるように混合を実施した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。
合成例2の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0061】
(合成例3)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液濃度を55質量%とし、この溶液500質量部に添加する水酸化ナトリウム溶液を23質量部とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。合成例3の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0062】
(合成例4)
けん化反応を行う際、ポリ酢酸ビニルのメタノール溶液と水酸化ナトリウムとの混合液の容器の上半分にバンドヒーターを巻いて50℃に加熱し、けん化反応時の温度が上半分を50℃、下半分が室温(25℃)になるように温度勾配を設け、静置する時間を50分とした以外は比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。合成例4の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0063】
(合成例5)
ポリ酢酸ビニルの46質量%メタノール溶液500質量部をそれぞれ別の容器に250質量部ずつに分け、40℃に加温し、35℃に調整した水酸化ナトリウムの3質量%メタノール溶液を、一方には10質量部、もう一方には6質量部を加え、いずれも同時に300rpmで1分間撹拌した後、40℃で40分静置して別々にけん化反応を行って得られたゲル状物を一緒に粉砕した以外は、比較合成例1と同様にして、PVA系重合体を得た。合成例5の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0064】
(合成例6)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL-05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)40質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT-05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)60質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。合成例6の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0065】
(合成例7)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP-05 けん化度:87.5モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)90質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JT-05 けん化度:94.0モル%、4質量%水溶液粘度:5.6mPa・s)10質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。合成例7の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0066】
(合成例8)
市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JL-05E けん化度:80.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.1mPa・s)8質量部と市販のPVA樹脂(日本酢ビ・ポバール製 JP-05 けん化度:88.8モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)92質量部をポリエチレン袋に入れ、袋を約100回振り、PVA粉末を均一に混合して、けん化度分布の広いPVA系重合体を作成した。合成例8の平均けん化度、4質量%水溶液粘度、1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0067】
<コーティング条件>
装置:ハイコーター(HC-FZ-Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70-80℃
排気温度:44-52℃
給気空気量:0.6m/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
【0068】
<コーティング時間の評価>
コーティング試験において、コーティング溶液をスプレー塗布する際のスプレー速度を3.0g/minで開始し、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続して貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。一方、初期のスプレー速度3.0g/minで錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。さらに、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
【0069】
<水蒸気透過度の評価>
固形分濃度が12質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、25℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80-5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に従った方法で25℃、65%相対湿度差の水蒸気透過度を測定した。
【0070】
(実施例1)
合成例1のPVA系重合体30質量部を精製水220質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌してコーティング溶液を調製した(PVA系重合体濃度:12質量%)。このコーティング溶液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
合成例1のPVA系重合体を用いたフィルムコーティング液の最大スプレー速度は4.85g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は52分であった。また、水蒸気透気度は、32g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0071】
(実施例2~8)
合成例1のPVA系重合体に代えて、それぞれ合成例2~8のPVA系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
【0072】
(比較例1)
合成例1のPVA系重合体に代えて、比較合成例1のPVA系重合体を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
(比較例2)
合成例1のPVA系重合体に代えて、市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP-05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)を使用した以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。なお、使用したJP-05の1-プロパノールを添加した時の透明度と上澄み液濃度およびLC-CADで測定したときの式(3)の値を表1に示す。
【0074】
(比較例3)
市販の部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 JP-05 けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)24質量部とPEG6000(和光純薬工業、平均分子量5400~6600)6質量部をポリエチレン製の袋に入れ、100回以上混合し、均一なフィルムコーティング組成物を作成した。このフィルムコーティング組成物を精製水220質量部に添加し、80℃まで加温しながら1時間撹拌し、その後30分間冷却してコーティング液を調製した(PVA:PEG6000=8:2 水溶液濃度:12質量%)。このコーティング液を用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表2から明らかなように、実施例1~7で使用された、要件(A)及び/又は(B)を満たす合成例1~8のけん化度分布の広いPVA系重合体を使用することにより、比較例1~2と比較して、スプレー速度を速くすることができ、短時間で錠剤に所定量のフィルムコーティングを施すことができる。このようにスプレー速度が速いことは、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが発生しにくいことを意味する。すなわち、本発明のフィルムコーティング組成物は、錠剤にコーティングする際の錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが発生しにくいものであることが確認された。
また、実施例1~8のコーティング組成物によって形成されるフィルムは、従来のPVAと同様の低い水蒸気透過性を有しており、さらに、可塑剤を含むことによって生産性を向上させた比較例3のようなPVAと可塑剤を含むコーティング組成物から形成されるフィルムに比べて水蒸気透過度が低くなっていることから、本発明のフィルムコーティング組成物を用いることで、防湿性の高い皮膜を形成した錠剤の製造を短時間で製造することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のフィルムコーティング組成物は、日米欧で医薬製剤に使用でき、PVA単独でコーティングを行った場合にも、錠剤同士の粘着が発現されにくく、それによりコーティング時間を短縮でき、かつ防湿性に優れ、水溶性の高いコーティング皮膜を形成することができるため、本発明のフィルムコーティング組成物を用いて経口固形製剤を製造することは、工業的に極めて有用である。
図1