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特許7062649毛細管血液中の血小板計数のための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】毛細管血液中の血小板計数のための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
G01N33/49 X
G01N33/49 S
G01N33/49 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019520432
(86)(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2017077998
(87)【国際公開番号】W WO2018086974
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】1651481-2
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】519130823
【氏名又は名称】ボウレ メディカル アーベー
【氏名又は名称原語表記】BOULE MEDICAL AB
【住所又は居所原語表記】Domnarvs-gatan 4 A,163 53 Spanga(SE)
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】セリン,マリエール
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン,マッツ
(72)【発明者】
【氏名】バッジ,ヨーナス
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0273064(US,A1)
【文献】特表2005-534895(JP,A)
【文献】特表2008-510578(JP,A)
【文献】特表2016-511424(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0002526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 1/00 - 1/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛細血管血液サンプル中の血小板数を測定するための方法であって、
a.サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプルを、非溶解緩衝液中で、1:10~1:2000の希釈係数によって希釈するステップと;
c.前記希釈されたサンプルを血小板凝集を低減するのに効率的な量のEDTAの存在下において23~300秒の継続時間にわたってインキュベートするステップと;
d.前記インキュベートされたサンプルからの前記血小板数を測定する前に、前記インキュベートされたサンプルを第2の希釈ステップにおいて、随意的に、希釈するステップと、
e.前記インキュベートされたサンプルからの前記血小板数を測定するステップと
を含み、
前記ステップb、c、eおよび随意的にdは、血小板計数のための一体型デバイス(100)中で行われる
方法。
【請求項2】
前記提供される毛細血管血液サンプルは、EDTAコートされたサンプリングデバイス中に収集された血液サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記希釈係数は、1:150~1:300である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記インキュベートされたサンプルは、前記インキュベートされたサンプルからの前記血小板数を測定する前に、第2の希釈ステップを受ける、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の希釈ステップは、1:100~1:300の第2の希釈係数によって前記サンプルを希釈するステップを伴う、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記インキュベートするステップは、0.1~5mM EDTAの存在下で行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記インキュベートするステップは、0.50~0.56mM EDTAの存在下で行われる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記インキュベートするステップの継続時間は、28~40秒である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルは、EDTA依存性偽性血小板減少症を患う患者由来ではない、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動デバイスを用いた毛細血管血液サンプルの分析の分野に関し、特に、かかるサンプルからの血小板(thrombocyte)数の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア環境においては毛細血管血液サンプルからの血液細胞数を測定するための方法およびデバイスがよく知られている。典型的なケースでは、毛細血管血液の(静脈血液とは対照的に)小さいサンプル(マイクロリットル)が、抗凝血剤、典型的にEDTAでコートされた細いガラス毛細管中に引き込まれる。次に、血液サンプルをもつガラス毛細管が自動デバイス中に置かれて、このデバイスが等張食塩水緩衝液中で希釈を行い、赤血球、様々なクラスの白血球および血小板(platelet(血小板)とも呼ばれる)などの細胞数の測定がその後に続く。
【0003】
本技術分野において、認識されている問題は、患者からの血小板数を自動一体型機器を用いて測定するために毛細血管血液サンプルを用いたときに、同じ患者からほぼ同じ時点でサンプリングされた静脈サンプルを用いて得られた数と比較して、結果が、しばしば誤低値を示すということである。この問題は、毛細管壁上にコートされたEDTAなどの強力な抗凝血剤の使用にも係わらず、血小板が凝集する傾向に由来する。
【0004】
この問題に対して提案された解決法は、特許文献1に記載され、この文献において、発明者らは、サンプルへのクロロキン塩の添加が凝集体の問題を軽減することを発見した。
【0005】
本発明の目的ではない、明確な別の問題は、EDTAによって誘起される血小板の凝集に起因していくらかの患者で血小板数が偽低値を示す稀な現象である、EDTA依存型偽性血小板減少症(PTCP:pseudothrombocytopenia)であり、これは、例えば、カナマイシンを用いて解決できる。この珍しいPTCP現象は、静脈サンプルと比較して毛細管サンプルからの数がより正確ではない一般的なケースとは別である。
【0006】
しかしながら、本分野では、特に、追加の試薬を用いる必要をなくし、実装する費用対効果の高い、一体型自動デバイスを用いた毛細血管血液からの血小板測定のための代わりのおよび/または改善された方法およびデバイスを提供することが依然として必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8,927,228号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の項目に関係する。以下の項目に開示される主題は、それらの主題が特許請求の範囲に開示されるのと同じように開示されると見做されるべきである。
【0009】
1.毛細血管血液サンプル中の血小板数を測定するための方法であって、
a.サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプルを、非溶解緩衝液中で、1:10~1:2000の希釈係数によって希釈するステップと;
c.希釈されたサンプルを血小板凝集を低減するのに効率的な量のEDTAの存在下において少なくとも23秒の継続時間にわたってインキュベートするステップと;
d.インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定する前に、インキュベートされたサンプルを第2の希釈ステップにおいて、随意的に、希釈するステップと、
e.インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定するステップと
を含み、
ステップb、c、eおよび随意的にdは、血小板計数のための一体型デバイス(100)中で行われる
方法。
【0010】
2.提供される毛細血管血液サンプルは、EDTAコートされたサンプリングデバイス中に収集された血液サンプルである、項目1に記載の方法。
【0011】
3.サンプリングデバイスは、EDTAコートされた毛細管である、項目2に記載の方法。
【0012】
4.希釈係数は、1:30~1:1000である、項目1~3のいずれかに記載の方法。
【0013】
5.希釈係数は、1:50~1:450である、項目1~4のいずれかに記載の方法。
【0014】
6.希釈係数は、1:150~1:300である、項目1~5のいずれかに記載の方法。
【0015】
7.希釈係数は、1:200~1:250である、項目1~6のいずれかに記載の方法。
【0016】
8.希釈係数は、1:225である、項目1~7のいずれかに記載の方法。
【0017】
9.インキュベートされたサンプルは、インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定する前に、第2の希釈ステップを受ける、項目1~8のいずれかに記載の方法。
【0018】
10.第2の希釈ステップは、1:50~1:1000の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目9に記載の方法。
【0019】
11.第2の希釈ステップは、1:100~1:300の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目10に記載の方法。
【0020】
12.第2の希釈ステップは、1:175~1:225の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目11に記載の方法。
【0021】
13.第2の希釈ステップは、1:200の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目12に記載の方法。
【0022】
14.非溶解緩衝液は、りん酸緩衝食塩水またはHEPES緩衝食塩水などの、緩衝生理食塩水溶液である、項目1~13のいずれかに記載の方法。
【0023】
15.インキュベーションは、少なくとも0.1mM EDTAの存在下で生じる、項目1~14のいずれかに記載の方法。
【0024】
16.インキュベーションは、少なくとも0.2mM EDTAの存在下で生じる、項目1~15のいずれかに記載の方法。
【0025】
17.インキュベーションは、少なくとも0.3mM EDTAの存在下で生じる、項目1~16のいずれかに記載の方法。
【0026】
18.インキュベーションは、少なくとも0.4mM EDTAの存在下で生じる、項目1~17のいずれかに記載の方法。
【0027】
19.インキュベーションは、少なくとも0.5mM EDTAの存在下で生じる、項目1~18のいずれかに記載の方法。
【0028】
20.インキュベーションは、0.2~4mM EDTAの存在下で生じる、項目1~19のいずれかに記載の方法。
【0029】
21.インキュベーションは、0.3~4mM EDTAの存在下で生じる、項目1~20のいずれかに記載の方法。
【0030】
22.インキュベーションは、0.3~0.7mM EDTAの存在下で生じる、項目1~21のいずれかに記載の方法。
【0031】
23.インキュベーションは、0.1~5mM EDTAの存在下で生じる、項目1~22のいずれかに記載の方法。
【0032】
24.インキュベーションは、0.2~4mM EDTAの存在下で生じる、項目1~23のいずれかに記載の方法。
【0033】
25.インキュベーションは、0.3~3mM EDTAの存在下で生じる、項目1~24のいずれかに記載の方法。
【0034】
26.インキュベーションは、0.3~2mM EDTAの存在下で生じる、項目1~25のいずれかに記載の方法。
【0035】
27.インキュベーションは、0.3~1mM EDTAの存在下で生じる、項目1~26のいずれかに記載の方法。
【0036】
28.インキュベーションは、0.4~0.7mM EDTAの存在下で生じる、項目1~27のいずれかに記載の方法。
【0037】
29.インキュベーションは、0.4~0.6mM EDTAの存在下で生じる、項目1~28のいずれかに記載の方法。
【0038】
30.インキュベーションは、0.50~0.56mM EDTAの存在下で生じる、項目1~29のいずれかに記載の方法。
【0039】
31.インキュベーション・ステップ継続時間は、23~300秒である、項目1~30のいずれかに記載の方法。
【0040】
32.インキュベーション・ステップ継続時間は、25~90秒である、項目1~31のいずれかに記載の方法。
【0041】
33.インキュベーション・ステップ継続時間は、27~60秒である、項目1~32のいずれかに記載の方法。
【0042】
34.インキュベーション・ステップ継続時間は、28~40秒である、項目1~33のいずれかに記載の方法。
【0043】
35.インキュベーション・ステップ継続時間は、30~36秒である、項目1~34のいずれかに記載の方法。
【0044】
36.インキュベーション・ステップ継続時間は、33秒である、項目1~35のいずれかに記載の方法。
【0045】
37.サンプルは、EDTA依存性偽性血小板減少症を患う患者由来ではない、項目1~36のいずれかに記載の方法。
【0046】
38.ステップb、c、eおよび随意的にdは、以下の項目のいずれかに記載のデバイス中で行われる、項目1~37のいずれかに記載の方法。
【0047】
39.毛細血管血液サンプル中の血小板数を測定するためのデバイス(100)であって、
a.サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを含んだサンプリングデバイスのための受液器(1、19);
b.前記サンプルを非溶解緩衝液中で希釈するための希釈要素(8);および
c.希釈されたサンプルからの血小板数を測定するための検出器(14、17);
を含み、デバイスは、動作の間に
i.サンプルが希釈要素(8)中で1:10~1:2000の希釈係数によって希釈される;および
ii.希釈されたサンプルが、希釈されたサンプルからの血小板数の検出器(14,17)における測定の前に、少なくとも23秒の継続時間にわたってインキュベートされる
ように構成されることを特徴とする、
デバイス(100)。
【0048】
40.インキュベーション継続時間は、23~300秒である、項目39に記載のデバイス。
【0049】
41.インキュベーション持続時間は、25~90秒である、項目39~40のいずれかに記載のデバイス。
【0050】
42.インキュベーション継続時間は、27~60秒である、項目39~41のいずれかに記載のデバイス。
【0051】
43.インキュベーション継続時間は、28~40秒である、項目39~42のいずれかに記載のデバイス。
【0052】
44.インキュベーション継続時間は、30~36秒である、項目39~43のいずれかに記載のデバイス。
【0053】
45.インキュベーション継続時間は、33秒である、項目39~44のいずれかに記載のデバイス。
【0054】
46.希釈係数は、1:30~1:1000である、項目39~45のいずれかに記載のデバイス。
【0055】
47.希釈係数は、1:50~1:450である、項目39~46のいずれかに記載のデバイス。
【0056】
48.希釈係数は、1:150~1:300である、項目39~47のいずれかに記載のデバイス。
【0057】
49.希釈係数は、1:200~1:250である、項目39~48のいずれかに記載のデバイス。
【0058】
50.希釈係数は、1:225である、項目39~49のいずれかに記載のデバイス。
【0059】
51.動作の間に、インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定する前にサンプルに第2の希釈ステップを受けさせるために配置された第2のおよび/またはさらなる1以上の希釈要素(9,13,16)を含む、デバイス項目39~50のいずれかに記載のデバイス。
【0060】
52.第2の希釈ステップは、1:50~1:1000の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目51に記載のデバイス。
【0061】
53.第2の希釈ステップは、1:100~1:300の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目52に記載のデバイス。
【0062】
54.第2の希釈ステップは、1:175~1:225の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目53に記載のデバイス。
【0063】
55.第2の希釈ステップは、1:200の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴う、項目54に記載のデバイス。
【0064】
56.サンプリングデバイスは、EDTAコートされた毛細管である、項目39~55のいずれかに記載のデバイス。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】Medonic M-series M32MおよびSwelab Alfa Plus Standardにおいて用いられる手順として例示された、典型的な自動血小板計数手順のフローチャートである。楕円は、サンプルを手で取り扱うことを象徴する。矩形は、細胞計数器による自動処理である。サンプリング:毛細管作用によって20μlの血液が毛細管(マイクロピペット)中に集められる。転送:サンプルがMPAデバイスの内部に入れられる。希釈1:希釈液でフラッシュすることによってサンプルが混合カップへ移され、それによって、第1の希釈物を作り出す(およそ4秒)。待機1:混合カップ中では混合物が均質になるために短い待機時間がある(標準プロトコルではおよそ10秒)。ここでは、PLT結果を安定させるために余分に時間が加えられた。転送1:第1の希釈物がこの希釈物のうちの20μlを分離するいわゆるシアバルブ(shear valve)へ移される(およそ3秒)。希釈2:希釈液でフラッシュすることによってサンプルが計数チャンバへ移され、それによって、第2の希釈物を作り出す(およそ4秒)。待機2:計数チャンバ中では、混合物が均質になるために短い待機時間がある(およそ7秒)。計数:サンプル中の細胞がコールター原理によって計数されて、分類される(およそ13秒)。
図2】標準的な手順を用いた、毛細血管血液からの血小板数の間の相対的な差を静脈血液分析と比較して示す大規模臨床研究を示す図である。
図3】15秒のインキュベーション時間を(毛細血管計数手順にのみ)追加した、発明の手順を用いた、毛細血管血液からの血小板数の間の相対的な差を静脈血液分析と比較して示す大規模臨床研究である。
図4】ドナー349の指穿刺サンプルについてのWBCヒストグラム、標準的なMPAサイクル対混合チャンバにおける15秒の遅延。標準的な手順と発明の手順との間のわずかな差を示す個人ドナーからの説明的な粒子数グラフである。まず初めに、明らかな血小板凝集がほとんどなく、従って、手順の間にほとんど差がない。
図5】ドナー350の指穿刺サンプルについてのWBCヒストグラム、標準的なMPAサイクル対混合チャンバにおける15秒の遅延。標準的な手順と発明の手順との間の実質的な差を示す個人ドナーからの説明的な粒子数グラフである。標準的な手順を用いると著しい血小板凝集があるが、本発明の手順によってこれが実質的に軽減される。
図6】血液サンプル中の細胞数を測定するための自動一体型デバイスの原理概略図および動作。
図7】血液サンプル中の細胞数を測定するための自動一体型デバイスの原理概略図および動作。
図8】血液サンプル中の細胞数を測定するための自動一体型デバイスの原理概略図および動作。
図9】血液サンプル中の細胞数を測定するための自動一体型デバイスの原理概略図および動作。
【発明を実施するための形態】
【0066】
定義
EDTAという用語は、カルシウムおよび他の2価金属陽イオンを結合するキレート剤である、エチレンジアミン四酢酸を指す。
【0067】
血小板(thrombocyte)および血小板(platelet)という用語は、同義で用いられる。
【0068】
毛細血管血液という用語は、被験者の毛細血管、典型的に指のパンクチャー(puncture)/穿刺(stick)からの血液サンプルを指す。毛細血管血液は、静脈からサンプリングされることによって規定される静脈血液、ならびに動脈からサンプリングされる動脈血液とは別である。採血源に加えて、サンプリング方法が毛細血管血液と静脈血液との間で異なり、各カテゴリーのサンプルについて別の特性につながる。
【0069】
MPAという用語は、Medonic M-series M32機器およびSwelab Alfa Plus機器のために設計され、これらの機器で用いられるアダプターデバイスを指す。MPAは、両端が開いた毛細管に含まれた少ない規定量の血液サンプルを受け入れて、次に、それを希釈することが意図される。この技術は、米国特許6284548(B1)号に記載される。
【0070】
通常、毛細血管血液からの血小板数の測定は、測定の前に希釈ステップを伴う。さらに、一体型機器を用いた自動分析のケースでは、機器のスループットを最適化するために、希釈後の測定が、数秒を超えない、最短可能時間内に行われる。しかしながら、かかる機器に用いられる既知のプロトコルは、希釈されたサンプルにクロロキン塩などの追加の試薬が加えられない限り、血小板凝集によって誤低値を示す血小板数につながる。
【0071】
本発明者らが思いがけなくも見出したのは、希釈された毛細血管血液サンプルを、血小板計数が行われる前に、いくつかの条件の下で、短い時間間隔(23秒以上)にわたってインキュベートすることによって、毛細血管血液サンプル中の血小板の問題となる凝集を後戻りさせることができることである(実施例1~5参照)。
【0072】
この発見は、クロロキン塩などの、追加の試薬を必要とせずにより正確な結果を与える、毛細血管血液サンプルからの血小板計数のための方法を提供する。従って、改善された方法では、既存の試薬およびキットをより正確な結果を伴って用いることができて、これは、多くの環境において実用上極めて重要である。さらに、多くの事例では、簡単なソフトウェア更新または他の小さい変更によって、血小板計数のための既存の自動一体型デバイスをより正確な方法に適合させることができ、その結果、本発明の方法は、実装する費用対効果が高い。
【0073】
血小板数を測定するための方法
第1の態様において、本発明は、毛細血管血液サンプル中の血小板数を測定するための方法であって、
a.サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプルを、非溶解緩衝液中で、1:10~1:2000の希釈係数によって希釈するステップと;
c.希釈されたサンプルを血小板凝集を低減するのに効率的な量のEDTAの存在下において少なくとも23秒の継続時間にわたってインキュベートするステップと;
d.インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定する前に、インキュベートされたサンプルを第2の希釈ステップにおいて、随意的に、希釈するステップと、
e.インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定するステップと
を含む、方法を提供する。
【0074】
毛細血管血液サンプルがサンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けるということは、血液サンプルがサンプリングされた直後に、好ましくは1秒未満以内に、EDTAと接触され、より好ましくはサンプルがEDTAを含んだ容器中に収集されることを意味する。抗凝血処置は、凝血を阻害するために十分な量のEDTAにさらされることを必然的に示唆する。
【0075】
提供される毛細血管血液サンプルは、サンプルに対して凝血阻害効果を有するのに十分な量のEDTAを含んだ、EDTAコートされたサンプリングデバイス中に収集された血液サンプルであってよい。サンプリングデバイスは、EDTAコートされた毛細管であってよい。
【0076】
非溶解緩衝液は、りん酸緩衝食塩水またはHEPES緩衝食塩水などの、緩衝生理食塩水溶液であってよい。それらが計数を妨げるほどまでに計数されることになる血小板を損傷または変化させない限り、多くの異なる既知のタイプの緩衝液が用いられてよい。
【0077】
本発明によれば、希釈、インキュベーションおよび測定ステップ(b、cおよびe)、ならびにあるとすれば随意的な第2の希釈ステップ(d)は、(他の血液パラメータに関する読み出しも随意的に含んだ)血小板計数のための自動化一体型デバイス(100)、例えば、以下に記載される第2の態様のデバイスを用いて行われる。かかるデバイスは、通常、性能を最適化するために最短可能時間内に分析を行うように設計されるので、本発明に従って一体型デバイスにインキュベーションのための余分の遅延を追加することは、従来の設計原理に反する。
【0078】
血液サンプルが取り込まれたEDTAコートされた毛細管の希釈ステップ前のインキュベーションが、0分と比較して、2分、6分および10分についても検査された(実施例3における表IIを参照)、すなわち、これらの4つすべての希釈前のインキュベーション、その後に、通常の分析サイクルが続いた。結果は、血小板数が6分まで増加を示し、その後に安定化するということであった。希釈前のインキュベーションは、従って、本発明の方法と同様の結果を、しかし、ずっとより遅い速度で与えることが可能であるように思われる。希釈されないサンプルの6分のインキュベーション後に見られる改善は、希釈後の数秒のみインキュベーションと同等である。迅速な結果および高スループットが大いに望ましいことを考慮すると、毛細管中のサンプルを単にインキュベートする選択肢と比較して、本発明の方法は、著しい改善を提供する。
【0079】
好ましくは、サンプルは、例えば、カナマイシンを用いて解決できる稀な現象である、EDTA依存性偽性血小板減少症を患う患者由来ではない。
【0080】
希釈およびEDTA濃度
先に論じられ、実施例3および5の下で示されるように、希釈が起こる前のインキュベーションによっても血小板数を改善できる。しかしながら、これは、時間性能の視点からずっと効果が低く、1:45000希釈におけるインキュベーションは、まったく効果がない。それゆえに、インキュベートされるサンプルは、最適結果のために、インキュベーションの間にある一定の範囲(1:10~1:2000)内に希釈されている必要がある。好ましくは、希釈係数は、1:30~1:1000、より好ましくは1:50~1:450、さらにより好ましくは1:150~1:300、なおより好ましくは1:175~1:225、および最も好ましくは1:225である。
【0081】
実施例4に示されるように、改善された結果を達成するためには、インキュベーションが血小板凝集を低減するのに効率的な量のEDTAの存在下において生じなければならない。EDTAは、溶液中で2価金属陽イオンを結合させる効果を有するので、各特定のケースにおいて何が効率的なEDTA濃度を構成するかは、非溶解緩衝液中の他の成分に依存する。Ca2+の結合、従って、遊離Ca2+濃度の低減は、EDTAの抗凝血作用の主要メカニズムであると一般に考えられている。理論によって束縛されることは望まないが、観察される血小板凝集に対するインキュベーションの効果の背後には2価陽イオン(特にCa2+)の結合活性があると理論付けられる。血小板凝集に関連する細胞付着分子のいくつかのクラス、例えば、インテグリンおよびカドヘリンは、Ca2+依存性であり、従って、かかる細胞接着分子によって仲立ちされるであろう凝集は、遊離Ca2+のレベルをある一定の閾値未満に低下されるのに十分なEDTA濃度によって阻害されるであろう。
【0082】
先の推論から明らかなように、希釈液中のより高いCa2+イオン濃度が意味するのは、十分に低い遊離Ca2+イオン濃度を達成するために、より高いEDTA濃度が必要とされるということである。従って、EDTAの効率的な量は、緩衝液中の2価金属陽イオン濃度に依存するであろう。Ca2+も結合させる他のキレート剤が存在すれば、必要とされるEDTA濃度はより低い。それゆえに、効果的なEDTA濃度は、緩衝液中に存在する他の化合物を考慮して決定される必要がある。本明細書における教示を考慮すると、目下の状況にとって効果的なEDTA濃度を決定することが当業者にとって日常的な設計および実験の問題である。
【0083】
好ましくは、インキュベーションは、少なくとも0.1mM EDTA、より好ましく少なくとも0.2mM EDTA、さらにより好ましくは0.3mM EDTA、なおより好ましくは少なくとも0.4mM EDTA、最も好ましくは少なくとも0.5mM EDTAの存在下で生じる。
【0084】
同様に好ましくは、インキュベーションは、0.2~4mM EDTA、より好ましく0.3~4mM EDTA、さらにより好ましくは0.3~0.7mM EDTAの存在下で生じる。
【0085】
インキュベーションは、0.1~5mM EDTA、好ましく0.2~4mM EDTA、より好ましくは0.3~3mM EDTA、さらにより好ましくは0.3~2mM EDTA、なおより好ましくは0.3~1mM EDTA、さらに一層好ましくは0.4~0.7mM EDTA、なおさらに一層好ましくは0.4~0.6mM EDTA、最も好ましくは0.50~0.56mM EDTAの存在下で生じてよい。
【0086】
インキュベーション時間
本文脈において、インキュベーションが意味するのは、他のアクティビティ(例えば、混合)が同時に進行しているか否かに係わらず、サンプルが希釈およびEDTA濃度の適切な有効限界内にあることである。
【0087】
この原理は、具体的な例の枠組みで説明されるときに最も良く理解されるが、これが本発明の範囲を限定すると理解されるべきではない。表Aに非限定的な仕方で示されるように、典型的な自動血小板測定方法は、継続時間が規定された、いくつかの取り扱いステップを含む。表Aに示されるケースでは、サンプルが機器(例えば、図9の機器)中に置かれて、分析プロセスが開始される。分析されることになるサンプルは、希釈液でフラッシュすることによって希釈要素へ移される。フラッシング・ステップは、4秒の継続時間を有し、最終結果1:225が4秒のうちに達成されるので、本発明の範囲内の第1の希釈物を達成するのに1秒未満かかると想定できる。標準的な手順は、第1の希釈物が均質になるのを許容するために10秒の混合/インキュベーション・ステップを必要とする。このインキュベーション・ステップが本発明の方法を最も直接的に延長させる(表A参照)。インキュベーション後に、第1の希釈物からアリコートが採取される。アリコート取り出しの継続時間は、示されるケースでは3秒であり、そのステップの間に、サンプルは、第1の希釈物と同じ希釈係数を依然として有し、従って、本発明の方法の文脈ではこのステップをインキュベーションの一部と考えることができる。
【0088】
アリコートは、次に、希釈液で計数チャンバへフラッシュされて、結果として、第2の希釈物を作り出す。フラッシング継続時間が4秒であり、希釈係数が1:225なので、特許請求の範囲において指定される希釈係数を超えてサンプルを希釈するためには多くても1秒かかると推論できる。第2の希釈物が混合することを許容されて、検出器中で細胞計数が行われる。
【0089】
従って、標準的な手順が、本発明にとって適切な希釈およびEDTA濃度の限界内で、サンプルを合計18秒間インキュベートすると見做すことができるのに対して、比較に示される本発明の方法は、合計33秒のインキュベーションをもたらす。
【0090】
【0091】
実施例3は、表Aに示される標準的なサイクルに従う機器中で行われた。実施例3の表Iに示されるように、インキュベーション・ステップに5秒の追加時間遅延が加えられたときに、血小板数における著しい改善を認めることができる。15秒の追加遅延以降、効果は、5秒におけるより良好であり、より長いインキュベーションでは同じままである。何か明確な上限があるようには思われないが、必要以上に長いインキュベーション期間は、分析時間を増加させて、スループットを低下させるので望ましくない。最適なインキュベーション期間は、約33秒であると思われる、なぜなら、このインキュベーション時間が血小板数に対して安定で、十分な効果を最短時間でもたらすからである。
【0092】
従って、インキュベーション・ステップ継続時間は、23~300秒、好ましくは25~90秒、より好ましくは27~60秒、さらにより好ましくは28~40秒、なおより好ましくは30~36秒、および最も好ましくは33秒であってよい。
【0093】
随意的な第2の希釈ステップ
実際上の理由から、インキュベーションの後であるが血小板数測定の前に第2の希釈ステップを行うことが望ましいであろう。計数デバイス(検出器)に依存して、測定が可能であるために追加の希釈が必要なことがある。表Aに示されるケースでは、1:200希釈を用いた第2の希釈ステップがあり、血小板数が測定される前に1:45000のトータル希釈をもたらす。
【0094】
第2の希釈ステップは、1:50~1:1000、好ましくは1:100~1:300、より好ましくは1:175~1:225、および最も好ましくは1:200の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴ってよい。
【0095】
血小板数を測定するデバイス
本発明の第1の態様による方法を行うように構成されることが可能な既存のデバイスが先行技術において知られ、市販されている。
【0096】
血球算定を行うために用いられる血液学デバイスの絶対多数が2つの希釈ステップを伴うシステムを用いる。かかるシステムを毛細血管血液サンプル用サンプリングデバイスのための受液器の追加によって容易に変更し、例えば、ソフトウェア更新によって、本発明の第1の態様の方法を行うようにそれを構成することができる。
【0097】
細胞の検出は、通常、「コールター原理」または「フローサイトメトリー原理」のいずれかによって達成される。いずれもよく知られた方法であり、いずれの方法も血小板数を測定するときの血小板の凝集によって損なわれる。
【0098】
下の表は、2段階希釈および血小板算定を、一体化され、自動化された仕方で、達成するために異なる手段を用いた、実施例に用いられるMシリーズM32システムを含む4つの代表的なシステム例をリストする。M-series M32システムによって例示される方法を行うために、ここで論じられるすべてのシステムを本明細書における教示からの手引きによって容易に変更できるであろう。
【0099】
各機器に採用される赤血球および血小板の細胞数を測定するための希釈要素および検出器が抽出概略図(図6~9)に示される。
【0100】

【0101】
図6~9における構成要素の説明
1:毛細血管血液サンプルを含んだサンプリングデバイスのための受液器、vacutainerまたはmicrotainerに含まれた血液サンプルのための血液入口である。この構成要素は、血液サンプルを含んだ毛細管を受け入れるようになっていてもよい、構成要素19参照。
【0102】
2~5:デバイス中の血液サンプルおよび周りの希釈液を移す、押すおよび引くためのシリンジ。
【0103】
6~7:希釈液のための容器。希釈液は、非溶解緩衝液であり、本発明とともに用いるために効率的な量のEDTAを含む。
【0104】
8~9:血液サンプルを非溶解緩衝溶液で希釈して混合するための希釈要素。
【0105】
10:デバイスの液体システム中の経路を開閉するためのバルブ。
【0106】
11:バルブを閉じるなどの他の動作が生じている間にサンプルを保持するための要素。
【0107】
12:その周りを流れている他の液体の中央にサンプルを注入するための注入針。
【0108】
13:流体力学的集束チャンバ、後端にポートを含み、このポートでは希釈液が注入針経由で注入されるサンプルより早い速度でチャンバ中に押し込まれる。これがサンプルを異なる流速によって希釈し、層流によってサンプルは、チャンバから出て行く液体流の正確に中心に集束される。この構成要素を第2の希釈要素と見做すことができる。
【0109】
14:血小板の数を測定するためにフローサイトメーターの仕組みを用いた検出器。フローサイトメーターは、光学的に透明なフローチャンネルを経由して焦点を通過する、細胞の流れの中央に集束されたレーザを用いる。レーザ光は、レーザ焦点を通過する細胞上で散乱し、散乱光強度および異なる角度における成分の分析が焦点を通過する細胞の数および細胞のタイプを我々に伝える。
【0110】
15:廃棄物
【0111】
16:非溶解緩衝液を用いたサンプルの最終的な希釈および混合のためのさらなる希釈要素。
【0112】
17:血小板の数を測定するためにコールター原理の仕組みを用いた検出器。コールター原理は、通常は60~80μmの直径の小孔、ならびに一方の側の陽極および他方の側の陰極を採用する。導電性希釈液中に浮遊されたサンプルが小孔を通して推し進められ、細胞が通過するときに、電極間を通過する電流における抵抗の変化を測定できる。抵抗の変化は、細胞のサイズに比例し、細胞のサイズがわかると、細胞を計数して分類することが可能である。
【0113】
18:シアバルブ。これは、異なる入口および出口へ接続できる容積が既知のチャンネルを有する回転バルブである。シアバルブは、一組の接続ポート経由でチャンネルを血液で満たし、その後にチャンネルが回転されて、特定の容積を剪断し、その容積を別の一組の接続ポートへ接続することによって動作する。
【0114】
19:毛細血管血液サンプルを含んだサンプリングデバイスのための受液器、指定された容積の毛細血管血液をもつ両端が開いた毛細管を受け入れることが意図されたマイクロピペットアダプターである(詳細については米国特許第6284548(B1)号参照)。毛細管中の血液を代わりに用いるために、血液入口からの血液を用いて第1の希釈物を作り出すために用いられる希釈液を、ノーマリークローズバルブ経由で、迂回させることができる。
【0115】
100:他の血液パラメータについての読み出しを随意的にもつ、血小板計数のための一体型デバイス。
【0116】
2つの槽をもつピペットシステム、血小板の算定についての原理概略図および動作(図6)。
血液入口1としての受液器は、血液サンプルを受け入れるための所定の位置にある。シリンジ2が特定の容積の血液サンプルを血液入口1中に引き込む。受液器血液入口1が希釈要素8上を移動する。シリンジ3が、第1の希釈物を作り出すために、サンプルを希釈液6とともに希釈要素8中に噴出する。受液器血液入口1が希釈要素8中に浸けられて、シリンジ2が特定の容積の第1の希釈物を血液入口1中に引き込む。血液入口1が第2の希釈要素9上を移動する。シリンジ3が、第2の希釈物を作り出すために、サンプルを希釈液6とともに第2の希釈要素9中に噴出する。バルブ10が開けられて、シリンジ4が第2の最終希釈物を第3の希釈要素16中に引き込む。バルブ10が閉じられて、廃棄物15として最終的に噴出される前に血小板細胞数を測定するために、シリンジ4がコールター原理を用いて希釈物を検出器17を通して押し進める。
【0117】
槽をもつピペットシステムおよびフロー注入、血小板の算定についての原理概略図および動作(図7
血液入口1として示される受液器は、サンプルを受け入れるための所定の位置にある。シリンジ2が特定の容積の血液サンプルを受液器血液入口1へ引き込む。受液器血液入口1が希釈要素8上を移動する。シリンジ3が、第1の希釈物を作り出すために、サンプルを希釈物6と一緒に希釈要素8中に噴出する。バルブ10が開けられて、シリンジ4が第1の希釈物を保持要素11中に引き込む。バルブ10が閉じられて、シリンジ4が第1の希釈物を注入針12経由で流体力学的集束チャンバ13中に移し、同時に、シリンジ5が希釈液7を流体力学的集束チャンバ13中に移す。シリンジ5から分注された希釈液とシリンジ4からの第1の希釈物との比がサンプルの第2の希釈物の比を規定し、第2の希釈物は、血小板細胞算定のためにフローサイトメトリー原理を用いて、検出器14を通して押し進められ、その後、廃棄物15として最終的に噴出されることになる。
【0118】
2つの槽をもつシアバルブシステム、血小板の算定についての原理概略図および動作(図8
シアバルブ18が血液入口1として示される受液器とシリンジ2とを接続する。シリンジ2が血液サンプルを受液器血液入口1経由でシアバルブ18中に引き込む。シアバルブ18が希釈液6と希釈要素8とを接続する。シリンジ2が希釈液6およびシアバルブ18中の血液を希釈要素8中に押し込み、第1の希釈物を作り出す。シアバルブ18がシリンジ2と希釈要素8とを接続する。シリンジ2が第1の希釈物をシアバルブ18中に引き込む。シアバルブ18が希釈液6と希釈要素16とを接続する。シリンジ2が希釈液6およびシアバルブ18中の第1の希釈物を希釈要素16中に押し込み、第2の最終希釈物を作り出す。シアバルブ18が受液器血液入口1とシリンジ2とを接続して、希釈要素へ/からの経路を閉じる。廃棄物15として最終的に噴出される前に血小板細胞数を測定するために、シリンジ3がコールター原理を用いて第2の最終希釈物を検出器17を通して押し進める。
【0119】
マイクロピペットアダプターをもつM-series M32Mおよび2つの槽をもつシアバルブシステム、血小板の算定についての原理概略図および動作(図9
2つの異なる希釈動作を行うことができる。
【0120】
動作の全体にわたってバルブ10が閉じられていれば、図8について記載されるような手順を行うことができる。
【0121】
希釈液をマイクロピペットアダプターを通して迂回させるためにバルブ10が用いられるならば、以下の手順を行うことができる。様々な段階の継続時間については上の表Aを参照。
【0122】
シアバルブ18は、すべての接続に対して閉じられる。血液サンプルをもつ毛細管が受液器、マイクロピペットアダプター19中に挿入される。バルブ10が開かれて、シリンジ2が希釈液6をバルブ10を通して推し進め、受液器マイクロピペットアダプター19中の血液を希釈要素8中に押し込んで、第1の希釈物を作り出す。デバイスは、本発明のインキュベーションをこの段階で行うように構成されてよい(表A参照)。バルブ10が閉じられる。
【0123】
この箇所からは、バルブ10が閉じられて図8におけるように手順が続く。
【0124】
シアバルブ18がシリンジ2と希釈要素8とを接続する。シリンジ2が第1の希釈物をシアバルブ18中に引き込む。シアバルブ18が希釈液6と(第2の)希釈要素16とを接続する。シリンジ2が希釈液6およびシアバルブ18中の第1の希釈物を希釈要素16中に押し込み、第2の最終希釈物を作り出す。シアバルブ18が血液入口1とシリンジ2とを接続して、希釈要素へ/からの経路を閉じる。廃棄物15として最終的に噴出される前に血小板細胞数を測定するために、シリンジ3がコールター原理を用いて第2の最終希釈物を検出器17を通して押し進める。
【0125】
すべてのこれらの血液学デバイスは、サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを含んだサンプリングデバイスのための受液器としての役割を果たすために、M-series M32Mによって例示されたように、第1の血液吸引ステップをアダプターで置き換えるか、あるいは並行アダプターを用いるかいずれかが可能であろう。このアダプターは、両端が開いた毛細管に含まれる少ない規定量の血液サンプルを受け入れて希釈することが意図されるであろう(適切なアダプターの例については米国特許6284548B1号参照)。
【0126】
従って、第2の態様において、本発明は、毛細血管血液サンプル中の血小板数を測定するためのデバイスであって、
a.サンプル収集においてEDTAによる抗凝血処置を受けた毛細血管血液サンプルを含んだサンプリングデバイスのための受液器(1、19);
b.前記サンプルを非溶解緩衝液中で希釈するための希釈要素(8);
c.希釈されたサンプルからの血小板数を測定するための検出器(14、17);
を含み、デバイスは、動作の間に
i.サンプルが希釈要素(8)中で1:10~1:2000の希釈係数によって希釈される;および
ii.希釈されたサンプルが、血小板数の測定を検出器(14,17)において行う前に、少なくとも23秒の継続時間にわたってインキュベートされる
ように構成されることを特徴とする、
デバイスを提供する。
【0127】
動作の間に、デバイスは、動作中のインキュベーションが血小板凝集を低減するのに効率的な量のEDTAの存在下において生じるように構成されてよい。動作の間に希釈要素(8)中で希釈のために用いられる非溶解緩衝液は、第1の態様の開示の下で指定されるような、効果的なEDTA濃度をもたらすEDTA濃度を有してよい。
【0128】
デバイスは、図1または表Aによる動作構成とともに、図9に示されるような物理的構成を有してよい。
【0129】
デバイスは、インキュベーション継続時間が23~300秒、好ましくは25~90秒、より好ましくは27~60秒、さらにより好ましくは28~40秒、なおより好ましくは30~36秒、および最も好ましくは33秒であるように構成されてよい。
【0130】
デバイスは、希釈係数が1:30~1:1000、好ましくは1:50~1:400、より好ましくは1:150~1:300、さらにより好ましくは1:200~1:250、最も好ましくは1:225であるように構成されてよい。
【0131】
デバイスは、例えば、図6、7、8および9に示されるように、動作の間に、インキュベートされたサンプルからの血小板数を測定する前にサンプルに第2のおよび/またはさらなる希釈ステップ(単数または複数)を受けさせるために配置された第2のおよび/またはさらなる希釈要素(9、13、16)を含んでよい。
【0132】
第2の希釈ステップは、1:50~1:1000、好ましくは1:100~1:300、より好ましくは1:175~1:225、および最も好ましくは1:200の第2の希釈係数によってサンプルを希釈するステップを伴ってよい。
【0133】
本開示に係わる一般的な態様
「含む(comprising)」という用語は、含むが、限定はされないと解釈されるべきである。本明細書に引用されるすべての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。表題および副題をもつ節への本開示の配置は、単に読み易さを改善するためであり、決して限定的であると解釈されるべきではなく、特に、分割は、異なる表題および副題の下の特徴を互いに組み合わせることを決して排除または制限するものではない。
【実施例
【0134】
以下の実施例は、本発明の範囲を限定していない。さらなる実験の詳細について、熟練した読者は、材料および方法の節を参照のこと。
【0135】
実施例1:延長された希釈後インキュベーション時間は、毛細血管血液からの血小板計数を改善する
製品開発の間に思いがけなくも発見されたのは、第1の希釈ステップ後のインキュベーション時間を15秒増加させると、同じ個人から静脈血液サンプルを用いて得られた真の値により近いという観点から、血小板数が改善するように思われたということである。
【0136】
(比較例として図2に提示される)以前のデータセットでは、健康なボランティアの圧倒的多数において、毛細血管血液から得られた血小板数は、静脈血液から得られた値より10~30%低いことが疑いもなく明らかであった。この効果は、血小板数がより高い個人においてより顕著であるように思われる(X軸に沿ったデータを参照)。
【0137】
この思いがけない発見は、同様ではあるがインキュベーションのために時間遅延が追加された実験を本発明者らが行うように促した。図3から明らかなのは、追加時間遅延が一貫して毛細血管の測定結果を静脈サンプルから得られた値に近付けることである。
【0138】
図1は、用いられた実際のプロトコルのフローを示す。
【0139】
実施例2:改善された血小板数は、低減された凝集に起因する
いくらかの個人ドナーが毛細血管および静脈サンプルの間で顕著な差を示すのに対して、他は示さない。毛細血管および静脈の粒子数の間で差を示さない個人ドナーからの粒子数の比較は、追加時間遅延が粒子頻度数の分布を著しくは変化させないことを示す(図4)。
【0140】
対照的に、毛細血管および静脈の粒子数の間で大きな差を示す個人ドナーでは、追加された15秒の時間遅延によって、30~45fLの範囲内の粒子数が大幅に低減されることがわかる(図5)。
【0141】
この範囲内では血小板凝集体が検出されることが文献から知られており、従って、追加時間遅延は、血小板凝集を低減することによって血小板数の精度を改善したと結論された。
【0142】
実施例3:効果的なインキュベーション時間
効果をさらに調べるために、異なる追加時間遅延が検査された。表Iにおける結果からわかるのは、5秒の追加遅延によって既に改善を認めうることである。追加遅延が15秒超のインキュベーション時間についてはさらなる改善が明らかでない。
【0143】

【0144】
別の実験では、混合の効果が調べられた。追加遅延は、15秒ごとの混合を伴って60秒に設定された。結果(表II)は、15秒の追加遅延と比較してさらなる改善を示さなかった。
【0145】

【0146】
強調されるべきは、毛細管中(すなわち、希釈前)のサンプルの数分間のインキュベーションが、下の表IIIに示されるように、PLT数に対して同様ではあるがずっとより遅い改善効果をもたらすことである。
【0147】

【0148】
これらの結果は、インキュベーションが希釈後に行われるときよりずっと遅い速度ではあるが、PLTが時間とともにどのように改善するかを示す。受入れ可能なPLT値に達するために要する時間は、市場において最適でなく、受け入れ可能でもない。
【0149】
実施例4:効果的なEDTA濃度が必要とされる、サンプリングにおいて必要とされるEDTA
システムで用いられる標準的な市販の希釈液が少量のEDTA(0.53mM)を含むので、本発明者らは、より高いEDTA濃度が結果をさらに改善するかどうかを実験した(表IV)。
【0150】

【0151】
留意すべきは、サンプルをもつ毛細管からある一定量のEDTAが持ち越されることである。「標準的なEDTA毛細管」は、100μgのKEDTAでコートされ、20μlの血液を収集する。K2EDTAのモル質量がおよそ368g/molであり、従って、毛細管は、約0.27μmolのEDTAを含む。すべてのEDTAが完全に溶出されると仮定すると、毛細管中の濃度は、最大で13.5mMである。1:225の標準的な希釈は、結果として、多くても0.06mMの毛細管由来のEDTAになるであろう。EDTAのない希釈液を用いることが効率的ではないので、効率的なEDTA濃度は、現在の条件下の濃度より高いはずであると結論できる。
【0152】
検査システムにおいて用いられる標準的な希釈緩衝液は、0.53mM EDTAを含み、効果的な量であることが示された。追加の3.1mM EDTAは、インキュベーション時間が非常に短いとき(5秒)でさえ、さらなる利益をもたらすように思われなかった。
【0153】
別の実験では、3.1mM EDTAを含んだ希釈液中でサンプルが1:45000に希釈されたときに、血小板数に対する効果がなかったことも注目された。希釈比の効果は、実施例5でさらに調べられた。
【0154】
実施例4:サンプル収集における抗凝血剤の存在の効果
比較のために、処理されていない毛細管中にサンプルが収集されて、血小板算定が行われた。興味深いことに、希釈液中の追加のEDTAの存在下においてさえ、血小板数は、より長いインキュベーションによって改善されなかった(表V)。プレーン毛細管中の収集は、血小板凝集に対して不可逆的な効果を引き起こすことがある。
【0155】

【0156】
さらに別の検査では、遅延のない標準的なサイクルを用いると、プレーン毛細管(EDTAなし)における結果は、EDTA毛細管を用いるより7%低かった。
【0157】
実施例5:効果的な希釈比
効果は、1:45000希釈ではもはや存在せず(実施例3参照)、何らかの希釈なしには存在しないので、異なる希釈比を比較するために実験が行われた。実際上の理由から、同じドナーを同じ機会に3つより多い希釈では試験できなかったことに留意されたい。
【0158】
表VIに示されるように、1:50~1:450の希釈を用いた実験は、すべて効果的であった。低い方の希釈(1:50~1:225)は、効果が幾分より不安定に見える1:450より、広がりの観点から、幾分より良好と思われる。
【0159】

【0160】
材料および方法
機器および校正物質
Medonic M-series M32C SN100778,fw vl.3に基づく実験的fw vl.3j5
Medonic M-series M32S SN100011,fw vl.3に基づく実験的fw vl.3j5
Swelab Alfa Plus Standard SN100779,fw vl.3に基づく実験的fw vl.3j5
Boule Con-Diff Normal Lot#21605-72
Boule Con-Diff Normal Lot#21608-72
Boule Calibrator(キャリブレーター)Lot#21606-34
【0161】
毛細管
Boule microcapillaries(マイクロ毛細管),Lot#15964507,exp.2019-02
EDTA-free glass micro capillaries,Gmbh+,Lot#1902542
【0162】
他の材料および試薬
K2-EDTA vacutainers Lot#A15013WK
様々な希釈液-EDTA濃度研究のためにDiluent(希釈液)Lot#1606-599が用いられた
BD 2.0mm Lancets(ランセット)Lot#N8R1259
【0163】
毛細管サンプリング手順
準備
・用いられることになるすべての材料が手元にあることをチェックする
・ドナーの椅子が肘掛けを有することをチェックする
・手を石鹸および水で洗う
・手を消毒用アルコールで消毒して、空気中で手を乾かす。
・保護手袋、実験着およびプラスチックエプロンを着用する
・ドナーが手順についてはっきり分かっていることを確かめる
手順
・指、可能であれば中指または薬指を選ぶ。
・サンプリングのための部位は、掌側の、中指または薬指の最も遠位の指骨のいずれかの側とすべきである。
・ドナーの手が冷たければ、それらを最初に温めるべきであり、ドナーの手は、温かく弛緩しているべきである
・指先を注射スワブで殺菌する
・アルコールを空気中で消散させる。
・好ましくは、Contact-Activated Lancet,Blue,High flow,BD Diagnosticを用いる
・サンプル手順の間、ドナーの掌を下に向ける。
・ランセットを先に示された部位に少しおいて、それを活性化させる。
・血液が自由に流れることができるように、直ぐにランセットを指から除去する。
・ランセットを処分する。
・血液の第1滴を拭き取る。
・より多くの血液を待って、次に、マイクロ毛細管に皮膚に触れることなくそれが満たされるまで採血させる。
注:決して指を強く押さないこと、血液が流れなければ、そのときには手をさらに温めて、手順を繰り返す。
【0164】
血小板測定手順
・ユーザマニュアルの指示に従って機器が正しく機能していることを確かめる。
・毛細管の外側に付いた任意の血液を注意深く拭き取る。
・機器中でMPAアダプターをそのホルダーから取り外して、マイクロ毛細管をその中に挿入する。
・アダプターを機器中に再挿入して、サンプルの自動測定が開始されることになる。
注:機器に関する指示一式については、ユーザマニュアル参照。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9