(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】薬剤送達デバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20220425BHJP
A61M 5/145 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61M5/145 504
(21)【出願番号】P 2019534302
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084147
(87)【国際公開番号】W WO2018115313
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ-アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ステファン・ヴェルラーク
(72)【発明者】
【氏名】イラーリオ・メルツィ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-521819(JP,A)
【文献】国際公開第2015/166286(WO,A2)
【文献】特表2005-537112(JP,A)
【文献】特開2007-160095(JP,A)
【文献】特表2012-521818(JP,A)
【文献】特表2010-522577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/145
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達デバイスであって:
薬剤容器を収容するように配置されたハウジングであって、薬剤容器は該薬剤容器を封止し薬剤を変位させるためのピストンを有する、ハウジングと;
起動されたときピストンを押して薬剤を変位させるように配置された薬剤送達機構と;
第1のプーリと、該第1のプーリの周縁の上を通るケーブルとを含む駆動機構とを含み、
ここで、該ケーブルは、薬剤送達機構に連結され、回転部材に連結され、該薬剤送達機構が起動されたとき
、駆動機構は、薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材を回転させ
、エネルギー発生装置またはインジケータシステムを駆動する、前記薬剤送達デバイス。
【請求項2】
インジケータシステムは、インジケータ部材および目盛りを含み、インジケータ部材は、回転部材が回転するとインジケータ部材が目盛りに沿って動き、薬剤容器内に収容されている薬剤の量を示すように回転部材に配置される、請求項
1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項3】
目盛りの第1の端部は、満杯の薬剤容器を表し、目盛りの第2の端部は、空の薬剤容器を表す、請求項
2に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項4】
回転部材は、エネルギー発生装置に連結されたギアホイールである、請求項1に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項5】
エネルギー発生装置は、ダイナモを含む、請求項
4に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項6】
光源をさらに含み、ここで、該光源は、エネルギー発生装置によって電力供給される、請求項
4または
5に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項7】
駆動機構は、該駆動機構とピストンとの間に配置された板部材を含む、請求項1~
6の
いずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項8】
ケーブルは回転部材の
周縁の上を通る、請求項
1~7のいずれかに1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項9】
駆動機構は、ケーブルに連結されたラックギアと、該ラックギアに回転可能に係合された第1のピニオンギアとをさらに含み、板部材は、ケーブルに固定して取り付けられ、第1のピニオンギアは、
回転部材に回転可能に係合される、請求項
1~7のいずれかに1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項10】
駆動機構は、第2のプーリをさらに含み、ケーブルは、第2のプーリの周縁の上を通り、第2のプーリは、ラックギアを動かすように構成される、請求項
9に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項11】
薬剤送達デバイスは、ボーラス注射器である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項12】
薬剤容器は、液体薬剤を収容する、請求項1~
11のいずれか1項に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項13】
薬剤送達デバイス内でトルクを回転部材へ提供する方法であって、
薬剤送達デバイスは、
薬剤容器を収容するように配置されたハウジングであって、薬剤容器は該薬剤容器を封止し薬剤を変位させるためのピストンを有する、ハウジングと;
起動されたときピストンを押して薬剤を変位させるように配置された薬剤送達機構と;
第1のプーリと、該第1のプーリの周縁の上を通るケーブルとを含む駆動機構とを含み、
ここで、該ケーブルは、薬剤送達機構に連結され、回転部材に連結され、薬剤送達機構の起動により、該薬剤送達機構に連結された駆動機構が、
エネルギー発生装置またはインジケータシステムを駆動するように、薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材を回転させる、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者へ薬剤を送達するデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の注射による定期的な治療を必要とする様々な疾病が存在し、そのような注射は、注射デバイスを使用することによって実行することができる。薬剤の注射を送達するための様々な注射デバイスが、当技術分野では知られている。支持を集めている別のタイプの注射ポンプは、ボーラス注射デバイスである。いくつかのボーラス注射デバイスは、比較的大きい容量、典型的には少なくとも1ml、場合により数mlの薬剤とともに使用されることが意図される。そのような大容量の薬剤の注射には、数分またはさらには数時間かかる可能性がある。そのような大容量ボーラス注射デバイスを、大容量デバイス(LVD)と呼ぶことができる。通常、そのようなデバイスは、患者自身によって操作されるが、医療従事者によって操作されることもある。
【0003】
LVDなどの注射デバイスを使用するために、注射デバイスはまず、患者の皮膚の好適な注射部位で支持される。設置された後、患者または別の人物(使用者)によって、注射が開始される。典型的には、開始は、使用者が電気スイッチを操作することによって行われ、それによりコントローラがデバイスを動作させる。動作は、まず針を使用者に注射し、次いで使用者の組織内へ薬剤を注射することを含む。長く知られている液体薬剤に比べて、より粘性の高い注射可能な液体を含み、より大容量で投与される生物学的薬剤が、ますます開発されている。そのような生物学的薬剤を投与するためのLVDには、充填済みの使い捨て薬物送達デバイス、または別法として、患者もしくは医療従事者が使用前に薬物カートリッジを挿入しなければならない使い捨ての薬物送達デバイスが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
患者によって操作されるいくつかのLVDでは、最初から最後までの薬物送達プロセスが時間のかかるプロセスになり、注射プロセスが完了したかどうかを患者が判定するのが難しいことがある。いくつかの薬剤送達デバイスは、デバイス内に現在収容されている薬剤の量または薬剤容器が空かどうかを示す光源およびインジケータシステムを含む内蔵機器を備えている。内蔵機器を有するこれらのデバイスのいくつかでは、内蔵機器に電力供給するために電池が提供される。しかし、これらのデバイスは、薬剤を送達するために使用されるまで、比較的長期間にわたって収納されることが多い。問題は、この収納時間中に電池の腐食および漏れが生じ得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、薬剤送達デバイスであって:薬剤容器を収容するように配置されたハウジングであって、薬剤容器は薬剤容器を封止し薬剤を変位させるためのピストンを有する、ハウジングと;起動されたときピストンを押して薬剤を変位させるように配置された薬剤送達機構と;薬剤送達機構が起動されたとき薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材を回転させるように薬剤送達機構に連結された駆動機構とを含む、薬剤送達デバイスが提供される。
【0006】
回転部材は、インジケータシステムに連結することができる。
【0007】
インジケータシステムは、インジケータ部材および目盛りを含むことができ、ここで、インジケータ部材は、回転部材が回転するとインジケータ部材が目盛りに沿って動き、薬剤容器内に収容されている薬剤の量を示すように回転部材に配置される。
【0008】
目盛りの第1の端部は、満杯の薬剤容器を表すことができ、目盛りの第2の端部は、空の薬剤容器を表すことができる。
【0009】
回転部材は、エネルギー発生装置に連結されたギアホイールとすることができる。
【0010】
エネルギー発生装置は、ダイナモを含むことができる。
【0011】
薬剤送達デバイスは、光源をさらに含むことができ、ここで、光源は、エネルギー発生装置によって電力供給される。
【0012】
駆動機構は、駆動機構とピストンとの間に配置された板部材を含むことができる。
【0013】
駆動機構は、第1のプーリと、第1のプーリの周縁の上を通るケーブルとをさらに含むことができ、ケーブルは回転部材の上を進む。
【0014】
駆動機構は、第1のプーリと、第1のプーリの周縁の上を通るケーブルと、ケーブルに連結されたラックギアと、ラックギアに回転可能に係合された第1のピニオンギアとをさらに含むことができ、ここで、板部材は、ケーブルに固定して取り付けられ、第1のピニオンギアは、第1のギアホイールに回転可能に係合される。
【0015】
駆動機構は、第2のプーリをさらに含むことができ、ケーブルは、第2のプーリの周縁の上を通ることができ、第2のプーリは、ラックギアを動かすように構成される。
【0016】
薬剤送達デバイスは、ボーラス注射器とすることができる。
【0017】
薬剤容器は、液体薬剤を収容することができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、薬剤送達デバイス内でトルクを回転部材へ提供する方法が提供され、薬剤送達機構の起動により、薬剤送達機構に連結された駆動機構が、薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材を回転させる。
【0019】
本発明の上記その他の態様は、後述する実施形態から明らかになり、それらの実施形態を参照することによって解明される。
【0020】
本発明の例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図2】第2の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図3A】第3の実施形態による初期状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図3B】第3の実施形態による最終状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図4】第4の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図5A】第5の実施形態による初期状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図5B】第5の実施形態による最終状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図6A】第6の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図6B】第7の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【
図6C】第8の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例は添付の図面に示されており、図面全体にわたって同じ参照番号が同様の要素を指す。
【0023】
回転部材を回転させる駆動機構を有する薬剤送達デバイスが提供される。薬剤送達デバイスは、薬剤容器を収容するように配置されたハウジングであって、薬剤容器は薬剤容器を封止し薬剤を変位させるためのピストンを有する、ハウジングと;起動されたときピストンを押して薬剤を変位させるように配置された薬剤送達機構と;薬剤送達機構が起動されたとき薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材を回転させるように薬剤送達機構に連結された駆動機構とを含む。
【0024】
このトルクを提供して回転部材を回転させることによって、内部システムを駆動することができる。いくつかの実施形態によれば、内部機構は、インジケータシステムまたはエネルギー発生装置とすることができる。したがって、薬剤を患者へ送達するために使用されるエネルギーは、患者にデバイス内の薬剤の量を示すこと、または薬剤送達デバイス内の周辺システムに電力供給することなど、他の目的で取り入れることもできる。
【0025】
薬物送達デバイスは、本明細書に記載するように、薬剤を患者へ注射するように構成することができる。たとえば、送達は、皮下、筋肉内、または静脈内で行うことができる。そのようなデバイスは、患者または看護師もしくは医師などの医療従事者が操作することができ、様々なタイプの安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、封止されたアンプルを使用前に穿孔する必要のあるカートリッジ式のシステムを含むことができる。これらの様々なデバイスによって送達される薬剤の容量は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、「大」容量の薬剤(典型的には、約2ml~約10ml)を送達するための時間(たとえば、約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に付着するように構成された大容量デバイス(「LVD」)またはパッチポンプを含むことができる。
【0026】
特有の薬剤と組み合わせて、本明細書に記載するデバイスはまた、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることができる。たとえば、デバイスは、特定の時間(たとえば、自動注射器の場合は約3~約20秒、LVDの場合は約10分~約60分)の範囲内で薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様には、低レベルもしくは最小レベルの不快さ、または人的要因、保管寿命、有効期限、生体適合性、環境的考慮などに関係する特定の条件を含むことができる。そのような変動は、たとえば、薬物の粘性が約3cP~約50cPの範囲に及ぶことなど、様々な要因により生じることがある。したがって、薬物送達デバイスは、サイズが約25~約31ゲージの範囲の中空の針を含むことが多い。一般的なサイズは、27および29ゲージである。
【0027】
本明細書に記載する送達デバイスはまた、1つまたはそれ以上の自動機能を含むことができる。たとえば、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動化工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって提供することができる。エネルギー源は、たとえば、機械、空気圧、化学、または電気エネルギーを含むことができる。たとえば、機械エネルギー源は、エネルギーを貯蔵または解放するばね、てこ、エラストマー、または他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源は、組み合わせて単一のデバイスにすることができる。デバイスは、エネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換するギア、バルブ、または他の機構をさらに含むことができる。
【0028】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、薬剤を自動的に注射するように構成された機械エネルギー源(典型的には、自動注射器に見られる)および用量設定機構(典型的には、ペン注射器で見られる)を含むことができる。
【0029】
図1は、第1の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。以下、デバイスについて大容量デバイス(LVD)の文脈で説明するが、別法として別のタイプのボーラス注射器とすることもできることが理解されよう。
【0030】
本発明の第1の実施形態による薬剤送達デバイス10が、
図1に示されている。薬剤送達デバイス10は、出口を有する薬剤容器15を収容するハウジング11を含む。薬剤容器15は、液体薬剤16を収容し、液体薬剤16は、薬剤容器15内に位置するピストン、ストッパ、または栓14によって封止される。初期状態で、ピストン14は、薬剤容器15の出口から最も遠い位置に配置される。
【0031】
薬剤送達機構12もハウジング11内に配置され、薬剤送達機構12は、起動されたときピストン14を薬剤容器15の出口の方へ押すように配置される。薬剤容器15の出口は、流体経路に連結される。流体経路の一方の端部は、薬剤容器15の出口に連結され、流体経路の他方の端部は、針注射システム23に連結される。針注射システム23は中空の注射針を含み、ピストン14が薬剤容器15の出口の方へ流体経路を通って押されると、注射針を通って薬剤を変位させることができる。
【0032】
本実施形態では、薬剤送達機構12は駆動ばねを含み、駆動ばねは最初は圧縮状態にあり、ばねエネルギーを貯蔵しており、薬剤送達機構12が起動されたとき解放される。薬剤送達機構12とピストン14との間には、板部材13が配置される。板部材13は、ピストン14とともに可動であり、したがって薬剤送達機構12が起動されたとき板部材13およびピストン14に押す力をかける。本実施形態では、板部材13は、駆動機構の一部であるケーブル17に固定して取り付けられる。
【0033】
本実施形態では、駆動機構は、第1のプーリ18、ラックギア19、第1のピニオンギア21、および回転部材22をさらに含む。ケーブル17は、第1のプーリ18の周縁の上を通り、したがってケーブル17にかかる力の方向は、第1のプーリ18で逆になる。第1のピニオンギア21は、ラックギア19に回転可能に係合され、回転部材22は、第1のピニオンギア21に回転可能に係合される。
【0034】
この実施形態では、板部材13がケーブル17に固定して取り付けられているため、薬剤送達機構12によって第1の方向に(すなわち、
図1で右へ)かけられる押す力を受けて、板部材13が薬剤容器15の出口の方へ線形に動くと、ケーブル17にも第1の方向に線形の力がかけられる。この線形の力の方向は、第1のプーリ18で逆になり、したがって力は第2の方向にラックギア19に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。
【0035】
図1に示すラックギア19は、その表面に配置された複数の歯に匹敵する。第2の方向にラックギア19にかけられる線形の力により、ラックギア19は所定の空間内で線形に動く。本実施形態では、ラックギア19は、ケーブル17によって第2の方向の方へ引っ張られ、したがってラックギア19の複数の歯が、第1のピニオンギア21と噛合する。ラックギア19の複数の歯と第1のピニオンギア21との間の噛合作用により、第1のピニオンギア21が回転する。第1のピニオンギア21が回転すると、回転部材22と噛合し、回転部材22を回転させる。言い換えれば、この実施形態では、駆動機構の構成が、薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材22を回転させる。この実施形態では、第1のピニオンギア21と回転部材22との間の噛合を容易にするために、回転部材22はギアホイールであり、その周縁に複数の歯を含む。
【0036】
後の図面に対してさらに詳細に説明するように、回転部材22の回転を利用して、エネルギー発生装置および/またはインジケータシステムなどの内部装置またはシステムを駆動させる。
【0037】
図2は、第2の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【0038】
第2の実施形態の薬剤送達デバイス20は、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10に類似しており、インジケータ部材24および目盛り25を含むインジケータシステムが追加されている。この実施形態では、この斜視図において、インジケータ部材24が目盛り25の上に配置される。
【0039】
この実施形態では、インジケータシステムのインジケータ部材24は、回転部材22の表面に配置された狭く細長い部材であり、回転部材22の中心から外方へ延びる。インジケータ部材24は、回転部材22に固定して取り付けられており、したがって回転部材22が回転すると、インジケータ部材24の外端部が目盛り25に沿って動く。
【0040】
この実施形態では、目盛り25は回転目盛りであり、インジケータ部材24の外端部の掃引運動に適合するように湾曲した形状を有している。目盛り25の第1の端部は、薬剤容器15が満杯であることを表し、目盛り25の第2の端部は、薬剤容器15が空であることを表す。したがって、インジケータ部材24の外端部が目盛り25に沿って指し示すため、使用者は、この薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能である。
【0041】
薬剤送達機構12が起動されたとき薬剤送達機構12の駆動ばねが解放され、板部材13およびピストン14に押す力をかける。板部材13がケーブル17に固定して取り付けられているため、薬剤送達機構12によって第1の方向に(すなわち、
図2で右へ)かけられる押す力を受けて、板部材13が薬剤容器15の出口の方へ線形に動くと、ケーブル17にも第1の方向に線形の力がかけられる。この線形の力の方向は、第1のプーリ18で逆になり、したがって力は第2の方向にラックギア19に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。
【0042】
第2の方向にラックギア19にかけられる線形の力により、ラックギア19は所定の空間内で線形に動く。本実施形態では、ラックギア19は、ケーブル17によって第2の方向の方へ引っ張られ、したがってラックギア19の複数の歯が、第1のピニオンギア21と噛合する。ラックギア19の複数の歯と第1のピニオンギア21との間の噛合作用により、第1のピニオンギア21が回転する。第1のピニオンギア21が回転すると、回転部材22と噛合し、回転部材22を回転させる。言い換えれば、この実施形態では、駆動機構の構成の結果、回転部材22にトルクが提供される。
【0043】
したがって、薬剤容器15内に収容されている薬剤16が薬剤容器15の出口を通って変位させられるにつれて、インジケータ部材24の外端部は、目盛り25に沿って一方の端部から他方の端部へ掃引し、使用者は、薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能になる。
【0044】
薬剤送達デバイス20のハウジング11には、インジケータシステムに透過窓(
図2には図示せず)が提供され、使用者は、デバイス20の内部を見て、目盛り25に沿ってインジケータ部材24の外端部の位置を判定することが可能になる。
【0045】
図3Aおよび
図3Bは、第3の実施形態によるそれぞれ初期状態および最終状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【0046】
図3Aおよび
図3Bに示す第3の実施形態の薬剤送達デバイス30は、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10に類似しており、インジケータ部材26および目盛り27を含むインジケータシステムが追加されている。
【0047】
この実施形態では、インジケータシステムのインジケータ部材26は、回転部材22の表面に配置されたファン状の部材であり、回転部材22の中心から外方へ延びる。目盛り27は、インジケータ部材26の上に配置された平坦なカバー部材の弧状のアパーチャである。インジケータ部材26は、回転部材22に固定して取り付けられており、したがって回転部材22が回転すると、インジケータ部材26も回転し、弧状のアパーチャ(目盛り27)を覆う。
【0048】
この実施形態では、弧状の目盛り27は回転目盛りであり、回転するとインジケータ部材26の掃引運動に適合される。
図3Aに示すように、初期状態で、すなわち注射前、インジケータ部材26は弧状の目盛り27が実質上覆われていない位置にあり、これは薬剤容器15が満杯であることを表す。
図3Bに示すように、最終状態で、すなわち注射後、インジケータ部材26は弧状の目盛り27が完全に覆われた位置にあり、これは薬剤容器が空であることを表す。したがって、回転部材22の回転によりインジケータ部材26が回転すると、使用者は、この薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能である。
【0049】
薬剤送達機構12が起動されたとき薬剤送達機構12の駆動ばねが解放され、板部材13およびピストン14に押す力をかける。板部材13がケーブル17に固定して取り付けられているため、薬剤送達機構12によって第1の方向に(すなわち、
図3Aおよび
図3Bで右へ)かけられる押す力を受けて、板部材13が薬剤容器15の出口の方へ線形に動くと、ケーブル17にも第1の方向に線形の力がかけられる。この線形の力の方向は、第1のプーリ18で逆になり、したがって力は第2の方向にラックギア19に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。
【0050】
第2の方向にラックギア19にかけられる線形の力により、ラックギア19は所定の空間内で線形に動く。本実施形態では、ラックギア19は、ケーブル17によって第2の方向の方へ引っ張られ、したがってラックギア19の複数の歯が、第1のピニオンギア21と噛合する。ラックギア19の複数の歯と第1のピニオンギア21との間の噛合作用により、第1のピニオンギア21が回転する。第1のピニオンギア21が回転すると、回転部材22と噛合し、回転部材22を回転させる。言い換えれば、この実施形態では、駆動機構の構成の結果、回転部材22にトルクが提供される。
【0051】
したがって、薬剤容器15内に収容されている薬剤が薬剤容器15の出口を通って変位させられるにつれて、インジケータ部材26は、目盛り27に沿って掃引して弧状のアパーチャを覆い、使用者は、薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能になる。
【0052】
第2の実施形態と同様に、薬剤送達デバイス30のハウジング11には、インジケータシステムに透過窓(
図3Aおよび
図3Bには図示せず)が提供され、使用者は、デバイス30の内部を見て、目盛り27に対するインジケータ部材26の位置を判定することが可能になる。
【0053】
図4は、第4の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【0054】
第4の実施形態の薬剤送達デバイス40は、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10に類似しており、ウォームスクリュー28、エネルギー発生装置29、および光源31が追加されている。
【0055】
図4に示すように、この実施形態では、回転部材22はウォームホイールであり、ウォームスクリュー28を有するウォーム駆動配置(worm drive arrangement)を形成する。この実施形態では、ウォームホイール22は複数の歯を含み、それによりウォームスクリュー28の外面のねじ付き配置(threaded arrangement)に噛合する。このウォーム駆動配置では、回転運動が90°の角度だけ伝送される。具体的には、第1の軸におけるウォームホイール22の回転運動は、第2の軸におけるウォームスクリュー28の回転運動を引き起こし、第1の軸は第2の軸に直交している。
【0056】
ウォームスクリュー28は、エネルギー発生装置29に機械的に連結される。この実施形態では、エネルギー発生装置29は、機械的回転を直流電流に変換するように構成されたダイナモを含む。
【0057】
エネルギー発生装置29は、光源31に電気的に連結されており、この実施形態では、光源31は発光ダイオード(LED)である。したがって、エネルギー発生装置29がウォームスクリュー28の機械的回転を変換すると、光源31が電力供給される。
【0058】
薬剤送達機構12が起動されたとき薬剤送達機構12の駆動ばねが解放され、板部材13およびピストン14に押す力をかける。板部材13がケーブル17に固定して取り付けられているため、薬剤送達機構12によって第1の方向に(すなわち、
図4で右へ)かけられる押す力を受けて、板部材13が薬剤容器15の出口の方へ線形に動くと、ケーブル17にも第1の方向に線形の力がかけられる。この線形の力の方向は、第1のプーリ18で逆になり、したがって力は第2の方向にラックギア19に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。
【0059】
第2の方向にラックギア19にかけられる線形の力により、ラックギア19は所定の空間内で線形に動く。本実施形態では、ラックギア19は、ケーブル17によって第2の方向の方へ引っ張られ、したがってラックギア19の複数の歯が、第1のピニオンギア21と噛合する。ラックギア19の複数の歯と第1のピニオンギア21との間の噛合作用により、第1のピニオンギア21が回転する。第1のピニオンギア21が回転すると、回転部材22と噛合し、回転部材22を回転させる。言い換えれば、この実施形態では、駆動機構の構成の結果、回転部材22にトルクが提供される。
【0060】
したがって、薬剤容器15内に収容されている薬剤が薬剤容器15の出口を通って変位させられるにつれて、この実施形態ではウォームホイールである回転部材22は、ウォームスクリュー28と噛合し、回転運動を90°の角度だけ伝送する。ウォームスクリュー28が回転すると、ウォームスクリュー28が連結されているエネルギー発生装置によって、電流が生成される。本実施形態では、こうして生成されたエネルギーを使用して、光源31に電力供給する。
【0061】
代替実施形態では、第4の実施形態のエネルギー発生装置は、光源に直接連結するのではなく、キャパシタなどのエネルギー貯蔵装置に電気的に連結することができる。これらの代替実施形態では、エネルギー発生装置で生成されるエネルギー(直流電流)は、エネルギー貯蔵装置に貯蔵することができ、後にデバイスで内蔵機器に電力供給するために使用することができる。
【0062】
図5Aおよび
図5Bは、第5の実施形態によるそれぞれ初期状態および最終状態の薬剤送達デバイスの概略図である。
【0063】
図5Aおよび
図5Bに示す第5の実施形態の薬剤送達デバイス50は、第1の実施形態の薬剤送達デバイス10に類似している。しかし、単独のプーリを駆動機構内で使用する代わりに、この実施形態では、駆動機構は、第1のプーリ32および第2のプーリ33を含む。この実施形態では、ケーブル17はまず第1のプーリの周縁の上を通り、次いで第2のプーリ33の周縁の上を通り、したがってケーブル17と板部材13との間の連結部で第1の方向に(すなわち、
図5Aで右へ)ケーブル17に作用する線形の力は、第1のプーリ32で逆になり、次いで第2のプーリ33で再び逆になる。
【0064】
第2のプーリ33は、ラックギア19に回転可能に取り付けられ、ラックギア19とともに、デバイス50にも同時に可動に取り付けられ、したがってデバイス50内の所定の空間内でラックギア19とともに線形に動かすことができる。したがって、第2のプーリ33に引張り力がかけられると、第2のプーリ33およびラックギア19は、第1のプーリ32の方へ(すなわち、
図5Aおよび
図5Bで左へ)線形に動かされる。
【0065】
この実施形態では、ケーブル17の第1の端部は、板部材13に取り付けられ、板部材13は、薬剤送達機構12とピストン14との間に配置される。ケーブル17の第2の端部は、デバイス50のハウジング11内に固定して取り付けられる。したがって、薬剤送達機構12が起動されて板部材13およびピストン14を薬剤容器15の出口の方へ押すと、ケーブル17の第1の端部に押す力も作用し、したがってケーブル17は板部材13とともに線形に動く。
【0066】
この線形の力の方向は、第1のプーリ32で逆になり、したがって力は、第2の方向に第2のプーリ33に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。この力は、第2のプーリ33およびラックギア19を第2の方向の方へ引っ張るように作用し、したがってラックギア19の複数の歯が、第1のピニオンギア21と噛合する。第1のピニオンギア21が回転すると、回転部材22と噛合し、回転部材22を回転させる。言い換えれば、この実施形態では、駆動機構の構成の結果、回転部材22にトルクが提供される。薬剤送達機構12が板部材13およびピストン14を薬剤容器15の出口の方へ押すとき、第2の方向の方へ引張り力により、
図5Aおよび
図5Bに示すように、ラックギア19は、初期位置(
図5A)から最終位置(
図5B)へ動く。
【0067】
本実施形態では駆動機構内で2つのプーリを使用すると、第1の実施形態に比べて、より短いラックギアの使用が可能になるはずである。これは、デバイス内の他の構成要素のサイズまたは製造上の要件により特定の寸法的な制約を有するデバイスにとって有益である。
【0068】
図6Aは、第6の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
図6Bは、第7の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
図6Cは、第8の実施形態による薬剤送達デバイスの概略図である。
【0069】
それぞれ
図6A~6Cに示す第6、第7、および第8の実施形態は、類似の構成を適合させる。これらの実施形態では、薬剤送達デバイス60、70、80は各々、出口を有する薬剤容器15を収容するハウジング11を含む。薬剤容器15は、液体薬剤16を収容し、液体薬剤16は、薬剤容器15内に位置するピストン、ストッパ、または栓14によって封止される。初期状態で、ピストン14は、薬剤容器15の出口から最も遠い位置に配置される。
【0070】
薬剤送達機構12もハウジング11内に配置され、薬剤送達機構12は、起動されたときピストン14を薬剤容器15の出口の方へ押すように配置される。薬剤容器15の出口は、流体経路に連結される。流体経路の一方の端部は、薬剤容器15の出口に連結され、流体経路の他方の端部は、針注射システム23に連結される。針注射システム23は中空の注射針を含み、ピストン14が薬剤容器15の出口の方へ流体経路を通って押されると、注射針を通って薬剤を変位させることができる。
【0071】
第6、第7、および第8の実施形態では、薬剤送達機構12は駆動ばねを含み、駆動ばねは最初は圧縮状態にあり、ばねエネルギーを貯蔵しており、薬剤送達機構12が起動されたとき解放される。薬剤送達機構12とピストン14との間には、板部材13が配置され、したがって板部材13は、薬剤送達機構12が起動されたとき板部材13およびピストン14に押す力をかける。本実施形態では、板部材13は、駆動機構の一部であるケーブル17に固定して取り付けられる。
【0072】
本実施形態では、駆動機構は、第1のプーリ18および回転部材22をさらに含む。ケーブル17は、第1のプーリ18の周縁の上を通り、したがってケーブル17にかかる力の方向は、第1のプーリ18で逆になる。次いでケーブルは、回転部材22の周縁の上を通る。ケーブル17の第1の端部は、板部材13に固定して取り付けられ、ケーブル17の第2の端部は、回転部材22に固定して取り付けられる。したがって、薬剤送達機構12によって第1の方向に(すなわち、
図6A、6B、および6Cで右へ)かけられる押す力を受けて、板部材13が薬剤容器15の出口の方へ線形に動くと、ケーブル17にも第1の方向に線形の力がかけられる。この線形の力の方向は、第1のプーリ18で逆になり、したがって力は第2の方向に回転部材22に作用し、第2の方向は第1の方向とは反対である。
【0073】
言い換えれば、これらの実施形態では、駆動機構の構成が、薬剤送達機構の線形運動をトルクに変換して回転部材22を回転させる。第6および第7の実施形態では、回転部材22は、回転部材22の周縁とケーブル17との間の摩擦を最大にするために粗い外面を含むホイールである。第8の実施形態では、回転部材22は、ウォームスクリューと噛合するように配置されたウォームホイールである。これについて、
図6Cに対してさらに詳細に説明する。
【0074】
第6、第7、および第8の実施形態間の違いは、これらの実施形態の各々における回転部材22が、異なる内部システムに連結されていることである。
【0075】
図6Aに示すように、第6の実施形態では、回転部材22は、インジケータ部材24および目盛り25を含むインジケータシステムに連結されている。この実施形態では、インジケータシステムのインジケータ部材24は、回転部材の表面に配置された狭く細長い部材であり、回転部材22の中心から外方へ延びる。また、インジケータ部材24が目盛りの上に配置される。インジケータ部材24は、回転部材22に固定して取り付けられており、したがって回転部材22が回転すると、インジケータ部材24の外端部が目盛り25に沿って動く。
【0076】
この実施形態では、目盛り25は、インジケータ部材24の外端部の掃引運動に適合するように湾曲した形状を有している。目盛り25の第1の端部は、薬剤容器15が満杯であることを表し、目盛り25の第2の端部は、薬剤容器15が空であることを表す。したがって、薬剤送達機構12が板部材13を薬剤容器15の出口の方へ押すにつれて、インジケータ部材24の外端部が目盛り25に沿って指し示すため、使用者は、この薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能である。
【0077】
薬剤送達デバイス60のハウジング11には、インジケータシステムに透過窓(
図6Aには図示せず)が提供され、使用者は、デバイス60の内部を見て、目盛り25に沿ってインジケータ部材24の外端部の位置を判定することが可能になる。
【0078】
図6Bに示すように、第7の実施形態では、回転部材22は、インジケータ部材26および目盛り27を含むインジケータシステムに連結されている。
【0079】
この実施形態では、インジケータシステムのインジケータ部材26は、回転部材22の表面に配置されたファン状の部材であり、回転部材22の中心から外方へ延びる。目盛り27は、インジケータ部材26の上に配置された平坦なカバー部材の弧状のアパーチャである。インジケータ部材26は、回転部材22に固定して取り付けられており、したがって回転部材22が回転すると、インジケータ部材26も回転し、弧状のアパーチャ(目盛り27)を覆う。
【0080】
この実施形態では、弧状の目盛り27は、回転するとインジケータ部材26の掃引運動に適合される。したがって、回転部材22の回転によりインジケータ部材26が回転すると、使用者は、この薬剤容器15内に現在収容されている薬剤の量を判定することが可能である。
【0081】
図6Cに示すように、第8の実施形態では、回転部材22はウォームホイールであり、ウォームスクリュー28を有するウォーム駆動配置を形成する。この実施形態では、ウォームホイール22は複数の歯を含み、それによりウォームスクリュー28の外面のねじ付き配置に噛合する。このウォーム駆動配置では、回転運動が90°の角度だけ伝送される。具体的には、第1の軸におけるウォームホイール22の回転運動は、第2の軸におけるウォームスクリュー28の回転運動を引き起こし、第1の軸は第2の軸に直交している。
【0082】
ウォームスクリュー28は、エネルギー発生装置29に機械的に連結される。この実施形態では、エネルギー発生装置29は、機械的回転を直流電流に変換するように構成されたダイナモを含む。
【0083】
エネルギー発生装置29は、光源31に電気的に連結されており、この実施形態では、光源31は発光ダイオード(LED)である。したがって、エネルギー発生装置29がウォームスクリュー28の機械的回転を変換すると、光源31が電力供給される。
【0084】
上述したように、薬剤容器15内に収容されている薬剤が薬剤容器15の出口を通って変位させられるにつれて、この実施形態ではウォームホイールである回転部材22は、ウォームスクリュー28と噛合し、回転運動を90°の角度だけ伝送する。ウォームスクリュー28が回転すると、ウォームスクリュー28が連結されているエネルギー発生装置によって、電流が生成される。本実施形態では、こうして生成されたエネルギーを使用して、光源31に電力供給する。
【0085】
代替実施形態では、薬剤送達デバイスは、ボーラス注射器ではなくペン注射器とすることができる。
【0086】
代替実施形態では、インジケータシステム内で回転および/または湾曲目盛りの代わりに、線形の目盛りを使用することができる。
【0087】
代替実施形態では、駆動機構は、追加のギア要素を含むことができる。
【0088】
代替実施形態では、第8の実施形態のエネルギー発生装置は、光源に直接連結するのではなく、キャパシタなどのエネルギー貯蔵装置に電気的に連結することができる。これらの代替実施形態では、エネルギー発生装置で生成されるエネルギー(直流電流)は、エネルギー貯蔵装置に貯蔵することができ、後にデバイスで内蔵機器に電力供給するために使用することができる。
【0089】
代替実施形態では、薬剤送達デバイスは、ピストンと薬剤送達機構との間に板部材を含まなくてもよい。これらの代替実施形態では、代替の機械部材を使用して、薬剤送達機構および駆動機構を連結することができ、したがって薬剤送達機構の線形運動を駆動機構によってトルクに変換することができる。
【0090】
代替実施形態では、薬剤送達機構は、駆動ばねを含まなくてもよい。これらの代替実施形態では、他のタイプの駆動要素を使用して、薬剤容器内でピストンに押す力をかけることができる。たとえば、油圧機構を用いて、ピストンに押す力をかけることができる。別の例として、駆動ばねの代わりに弾性変形可能な材料を使用して、駆動力を提供することもできる。これらの代替実施形態のいくつかでは、薬剤送達機構は、プランジャ要素を含むことができる。
【0091】
代替実施形態では、薬剤送達デバイスは、ハウジングに透過窓を備えていなくてもよい。これらの代替実施形態では、薬剤送達デバイスのハウジングは、使用者がインジケータシステムの状態を見ることが可能になるように、透明材料から作ることができる。
【0092】
本出願では特定の構成の組合せに対して特許請求の範囲を考案したが、本明細書でいずれかの請求項に記載の同じ発明に関するか否か、および本発明と同じ技術的な問題のいずれかまたはすべてを軽減するか否かにかかわらず、本開示の範囲はまた、本明細書に明示的もしくは暗黙に開示したあらゆる新規な構成もしくはあらゆる新規な構成の組合せまたはあらゆるその一般化を含むことを理解されたい。本出願人は本明細書によって、本出願または本出願から派生するあらゆるさらなる出願の手続き中に、そのような構成および/または構成の組合せに対して新しい請求項を考案することができることを通知する。
【0093】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載する物質、考案、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0094】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0095】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組合せを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0096】
用語「薬物送達デバイス」は、薬物または薬剤をヒトまたは動物の体内に投薬するように構成されたあらゆるタイプのデバイスまたはシステムを包含するものである。それだけには限らないが、薬物送達デバイスは、注射デバイス(たとえばシリンジ、ペン型注射器、自動注射器、大容量デバイス、ポンプ、潅流システム、または眼内、皮下、筋肉内、もしくは血管内送達にあわせて構成された他のデバイス)、皮膚パッチ(たとえば、浸透圧性、化学的、マイクロニードル)、吸入器(たとえば鼻用または肺用)、埋め込み型デバイス(たとえば、薬物またはAPIコーティングされたステント、カプセル)、または胃腸管用の供給システムとすることができる。ここで説明される薬物は、たとえば24以上のゲージ数を有する、たとえば皮下針である針を含む注射デバイスでは特に有用であり得る。
【0097】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことができる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0098】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0099】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、元の物質と構造的に十分に類似しており、それによって同様の機能または活性(たとえば治療効果性)を有することができる任意の物質を指す。特に、用語「類似体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0100】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0101】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0102】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標)、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0103】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0104】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0105】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0106】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0107】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0108】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0109】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0110】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0111】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0112】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、配合、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明は、そのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。