(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】バッテリーパックの温度を管理するための装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20220425BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20220425BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20220425BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20220425BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/663
B60H1/32 613C
F25B1/00 321L
F25B1/00 331Z
(21)【出願番号】P 2019555791
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(86)【国際出願番号】 FR2018050807
(87)【国際公開番号】W WO2018189449
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2019-12-02
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】ユグルタ、ブヌアリ
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111486(JP,A)
【文献】特開2013-164944(JP,A)
【文献】特開2014-203736(JP,A)
【文献】特開2003-097857(JP,A)
【文献】特表2011-518301(JP,A)
【文献】特開2013-060065(JP,A)
【文献】特表2014-509436(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0307723(US,A1)
【文献】特開2011-049139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/60-10/667
B60H1/00-3/06
F25B1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(200)に収納された少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品を備える自動車両用のバッテリーパックの温度
管理装置であって、
前記温度管理装置は、
前記少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品に熱接触する少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)であって、冷媒が通流することが意図されたバッテリーエバポレータ(204)と、
前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)に流体的に連結された膨張装置(203)と、を含み、
前記温度管理装置は、前記バッテリーパックの前記ハウジング(200)に堅固に接続された内部熱交換器(205)であって、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)を出る冷媒を過熱し且つ前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)に入る冷媒を冷却することが意図された内部熱交換器(205)を備え
、
前記バッテリーエバポレータ(204)は、前記冷媒が内部を流通する冷却プレートまたはチューブ(204’)を有する、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記膨張装置(203)は、冷媒の流れ方向において、前記内部熱交換器(205)の下流に且つ前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)の上流に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置は、コンプレッサ(101)と、前記コンプレッサ(101)の下流に配置されたコンデンサ(102)と、を更に備え、
前記内部熱交換器(205)は、前記コンデンサ(102)の下流に且つ前記コンプレッサ(101)の上流に配置されるとともに、最初に前記コンデンサ(102)の冷媒出口に連結され、次に前記コンプレッサ(101)の冷媒入口に連結される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記内部熱交換器(205)は、前記ハウジング(200)の内部に配置される、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの一項に記載の装置。
【請求項5】
前記膨張装置(203)は、前記ハウジング(200)の内部に配置される、
ことを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記内部熱交換器(205)は、前記ハウジング(200)の少なくとも1つの外壁に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちの一項に記載の装置。
【請求項7】
前記膨張装置(
203)は、前記ハウジング(200)の外壁に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記膨張装置(
203)は、サーモスタット膨張弁、電子膨張弁、又はチューブオリフィスである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のうちの一項に記載の装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の温度管理装置を含むバッテリーパック。
【請求項10】
自動車両の温度調整システムであって、
‐冷媒が循環する空調ループであって、コンプレッサと、コンデンサと、車室に向けて通流させることが意図された空気を冷却可能である内部エバポレータと、を備える空調ループと、
‐前記車両のバッテリーパックの少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品の温度管理専用のブランチであって、前記少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品との熱交換を実施可能である冷媒が通流することが意図されたバッテリーエバポレータ(204)と称される少なくとも1つのエバポレータと、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)に流体的に連結された膨張装置(203)と、を備えるブランチと、
を備え、
前記ブランチは、前記バッテリーパックの
ハウジング(200)に堅固に接続された内部熱交換器(205)であって、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)を出る冷媒を過熱し且つ前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータ(204)に入る冷媒を冷却することが意図された内部熱交換器(205)を備え
、
前記バッテリーエバポレータ(204)は、前記冷媒が内部を流通するプレートまたはチューブを有する、
ことを特徴とする温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気又はハイブリッドタイプの自動車両用のバッテリーの分野に関し、より具体的には、このタイプの車両におけるバッテリーパックの温度調節、特に冷却のための装置に関する。
【0002】
また、本発明は、このような温度管理装置を備えるバッテリーパック、及び車両のバッテリーパックの熱処理専用のブランチを備える自動車両の温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車やハイブリッド自動車の電気エネルギーは、単数又は複数のバッテリーにより供給される。
【0004】
このタイプの車両では、バッテリーは、いわゆるバッテリーパックを形成するように保護ハウジングに配置された複数の電気エネルギー貯蔵セル(電池)から形成される。
【0005】
バッテリーは、その動作中にヒートアップして損傷する危険があるという問題を有する。
【0006】
更に、温度が低すぎると、バッテリーの動作時間が大幅に短くなり得る。
【0007】
したがって、バッテリーの温度調節は重要なポイントである。
【0008】
実際に、バッテリーの寿命を最適化しつつ車両の信頼性、一充電走行距離及び性能を確保するには、バッテリーの温度を20度乃至40度に維持する必要がある。
【0009】
バッテリーの温度のこのような調節、特にその冷却は、温度調節装置により提供される。
【0010】
このような温度調節装置は、一般に、バッテリーパックのハウジング内部に組み込まれ、伝熱流体又は冷媒を利用する。
【0011】
冷媒の場合、これは、中で冷媒が通流するチューブタイプの単数又は複数の熱交換部品内を通流する。このような部品は、電池と熱接触した状態でバッテリーパックのハウジング内部に配置され、これにより熱伝導によって電池の熱が調節される。
【0012】
更に、車両には、内部空気流を所望の温度で供給することにより車室の内部空間を温度調節するように、暖房、換気及び/又は空調システムが多くの場合設けられている。
【0013】
バッテリー専用の温度調節装置は、内部空気流を所望の温度で供給することにより車室の内部空間を温度調節することが意図された空調ループからの冷媒の回路に連結されていることが多い。
【0014】
図1に示すように、車室の内部空間の温度調節専用の第1回路10すなわち空調ループと、バッテリーの温度管理専用の第2回路20とが、互いに並列に配置されている。
【0015】
従来的に、第1回路10は、冷媒をこの主ループ内で循環させるコンプレッサ101を備えている。これにより、冷媒は、膨張装置103すなわち膨張バルブ、及び車室に向けて通流させることが意図された空気を冷却可能なエバポレータ104を通過する前にコンデンサ102を通過し、その後コンプレッサ101に再び到着する。したがって、この主ループにおいて、冷媒は、コンデンサ102で熱を放出しエバポレータ104で熱を捕捉する熱力学的サイクルを実行する。
【0016】
更に、コンプレッサ101は、バッテリーの温度管理専用の第2回路20において、特にエバポレータの役割を果たす少なくとも1つ(本例では1つ)の熱交換部品204に冷媒を通流させることができる。これにより、冷媒は、バッテリーが放出した熱を吸収してこれを冷却することができる。
【0017】
エバポレータ204は、冷媒が内部を通流するプレート又はチューブで構成された熱交換コアを備えている。
【0018】
このエバポレータ204は、冷媒が熱交換コアを通過する回数に対応する複数の流路を含み得る。
【0019】
冷却サイクルにおいて、冷媒は、このエバポレータ204を出る時、過熱蒸気状態にある。この過熱は、液体状態の冷媒が第1空調回路10のコンプレッサ101に入らないように利用される。
【0020】
一般に、出口流路と称されるエバポレータ204内での冷媒の最終流路において、冷媒は過熱蒸気状態にされる。
【0021】
しかしながら、冷媒の過熱は、エバポレータ204の容量に対する効率低下をもたらす。なぜならば、その内部での最終流路は冷媒の過熱に部分的にしか寄与しないからである。
【0022】
更に、この最終流路が冷媒の過熱に部分的にしか寄与しないため、エバポレータ204の温度が不均一になり、この最終流路は部分的に高温になる。
【0023】
したがって、エバポレータ204と熱接触しているバッテリーの冷却が均一でなくなる。
【0024】
このため、本発明の目的の1つは、従来技術の欠点を克服することである。
【発明の概要】
【0025】
この目的のために、本発明は、ハウジングに収納された少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品を備える自動車両用のバッテリーパックの温度調節用装置であって、前記少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品に熱接触する少なくとも1つのバッテリーエバポレータであって、冷媒が通流することが意図されたバッテリーエバポレータと、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータに流体的に連結された膨張装置と、を含む温度管理装置を提案する。
【0026】
本発明によれば、前記温度管理装置は、前記バッテリーパックの前記ハウジングに堅固に接続された内部熱交換器であって、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータを出る冷媒を過熱することが意図された内部熱交換器を備える。
【0027】
したがって、本発明は、内部熱交換器を、単数又は複数の電池と熱接触した単数又は複数のバッテリーエバポレータが収容されているバッテリーパックの内部に、又はその外壁に追加することを提案する。
【0028】
内部熱交換器は、冷媒を過熱するようにエバポレータの出口に連結される。
【0029】
この結果、エバポレータはもはや冷媒を過熱するために使用されないので、バッテリーと接触してこれを冷却するためのエバポレータの全面に亘る優れた温度均一性が得られる。
【0030】
換言すれば、エバポレータは、その内部の冷媒の最終流路がもはや冷媒の過熱に寄与せず、標準的な熱エネルギー交換に寄与するため、より効率的である。これにより、バッテリーの動作及び寿命を最適化しつつ、バッテリーの冷却を均一にすることができる。
【0031】
本発明の特定の態様によれば、前記膨張装置は、冷媒の流れ方向において、前記内部熱交換器の下流に且つ前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータの上流に配置される。
【0032】
本発明の特定の態様によれば、前記装置は、コンプレッサと、前記コンプレッサの下流に配置されたコンデンサと、を更に備え、前記内部熱交換器は、前記コンデンサの下流に且つ前記コンプレッサの上流に配置されるとともに、最初に前記コンデンサの冷媒出口に連結され、次に前記コンプレッサの冷媒入口に連結される。
【0033】
したがって、内部熱交換器は、コンデンサからの冷媒ダクトのバッテリーエバポレータに割り当てられた膨張バルブの上流に、且つエバポレータからの冷媒ダクトのコンプレッサの上流に追加して配置される。
【0034】
これにより、バッテリーエバポレータからの冷媒は、コンプレッサの冷媒入口に戻る前に、内部熱交換器を通過する。
【0035】
内部熱交換器を追加することにより、(バッテリーエバポレータに割り当てられた膨張バルブの入口より前でコンデンサを出る高圧の流体の温度を下げることができるため)コンプレッサに入る前の過熱、及びバッテリーエバポレータの出力増加が可能となる。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、前記内部熱交換器は、前記ハウジングの内部に配置される。
【0037】
特定の態様によれば、前記膨張装置は、前記ハウジングの内部に配置される。
【0038】
代替例において、前記内部熱交換器は、前記ハウジングの少なくとも1つの外壁に取り付けられる。
【0039】
本発明の他の特定の実施形態において、前記膨張装置は、前記ハウジングの外壁に取り付けられる。
【0040】
内部熱交換器は、バッテリーパックのハウジングの少なくとも1つの内壁又は外壁に、例えばねじ留め又はクリップ留めされる。
【0041】
有利には、前記膨張装置は、サーモスタット膨張弁、電子膨張弁、又はチューブオリフィスである。
【0042】
更に、本発明は、上述の温度管理装置を含むバッテリーパックに関する。
【0043】
また、本発明は、自動車両の温度調整システムであって、
‐冷媒が循環する空調ループであって、コンプレッサと、コンデンサと、車室に向けて通流させることが意図された空気を冷却可能である内部エバポレータと、を備える空調ループと、
‐前記車両のバッテリーパックの少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品の温度管理専用のブランチであって、前記少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵部品との熱交換を実施可能である冷媒が通流することが意図されたバッテリーエバポレータと称される少なくとも1つのエバポレータと、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータに流体的に連結された膨張装置と、を備えるブランチと、
を備え、
前記ブランチは、前記バッテリーパックの前記ハウジングに堅固に接続された内部熱交換器であって、前記少なくとも1つのバッテリーエバポレータを出る冷媒を過熱することが意図された内部熱交換器を備える、温度調整システムに関する。
【0044】
本発明の他の特徴及び利点は、例示的且つ非限定的な例として、添付図面を参照してなされる以下の説明を読むことでより明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】従来技術による電気又はハイブリッド自動車両の温度調整システムの全体概略図。
【
図2】電気又はハイブリッド自動車両の温度調整システムの概略図であって、本発明によるバッテリーパックの温度調節用装置が使用されている図。
【
図3】本発明によるバッテリーパック及びバッテリー温度調節装置の全体概略図。
【
図4】第1実施形態によるバッテリーパック及びバッテリー温度調節装置の全体概略図。
【
図5】第2実施形態によるバッテリーパック及びバッテリー温度調節装置の全体概略図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書において、「バッテリー」とは、所望の容量及び電圧を有する発電機をなすように電気的に一体に連結された電気エネルギー貯蔵セル(電池)のセットを意味するが、必要に応じて単独の電気エネルギー貯蔵セルしか含まないこともあり得る。
【0047】
バッテリーを形成するこれらの電気エネルギー貯蔵セルは、いわゆるバッテリーパックを形成する保護ハウジングに配置される。
【0048】
更に、「上流に配置される」とは、冷媒又は伝熱流体の通流方向に対して、或る部品が他の部品の前に配置されることを意味する。
【0049】
逆に、「下流に配置される」とは、冷媒又は伝熱流体の通流方向に対して、或る部品が他の部品の後に配置されることを意味する。
【0050】
図2は、電気又はハイブリッドタイプの自動車両の温度調整システムを示す。温度調整システムには、駆動力を得るためのバッテリーが設けられている。
【0051】
本発明によるこの温度調整システムは、冷媒が中で循環する第1空調ループ10を備えている。その目的は、内部空気流を所望の温度で供給することにより車室の内部空間を温度調節することである。
【0052】
第1空調ループ10は、主に、冷媒をこのループで循環させるコンプレッサ101を備えている。これにより、冷媒は、内部エバポレータと称されるエバポレータ104であって、前記コンデンサ102の下流に配置されて車室に向けて通流させることが意図された空気を冷却可能であるエバポレータ104に割り当てられた膨張部材すなわち膨張バルブ103を通過する前に、前記コンプレッサ101の下流に配置されたコンデンサ102を通過する。
【0053】
従って、この第1空調ループにおいて、冷媒は、コンデンサ102で熱を放出しエバポレータ104で熱を捕捉する熱力学的サイクルを実行する。
【0054】
図2に示すように、コンデンサ101は、車両のバッテリーの熱管理専用の第2回路20すなわちブランチにおいて、特にエバポレータ204の役割を果たす少なくとも1つ(本例では1つ)の熱交換部品に冷媒を更に通流させることができる。これにより、冷媒は、バッテリーが放出した熱を吸収してこれを冷却することができる。
【0055】
バッテリー(図示せず)は、ハウジング200に収容されてバッテリーパックを形成している。
【0056】
エバポレータ204は、冷媒が内部を通流するプレート又はチューブで構成された熱交換コアを備えている。
【0057】
このエバポレータ204は、冷媒が熱交換コアを通過する回数に対応する複数の流路を含み得る。
【0058】
したがって、バッテリーの温度調節用装置は、車両のバッテリーとの間で熱交換を実施可能であるエバポレータ204と、本例においてハウジング200内に配置された内部熱交換器205と、内部熱交換器205の下流に且つエバポレータ204の上流に配置された膨張装置203であって、エバポレータ204に割り当てられた膨張装置203と、を備えている。
【0059】
従って、バッテリー専用のエバポレータ204は、空調ループ10からの冷媒を移送する回路に連結されている。
【0060】
内部熱交換器205及びバッテリーエバポレータ204は、内部エバポレータ104に対して並列に連結されている。
【0061】
内部熱交換器205は、コンデンサ102の下流に且つコンプレッサ101の上流に配置されるとともに、最初にコンデンサ102の冷媒出口に連結され、次にコンプレッサ101の冷媒入口に連結されている。
【0062】
内部熱交換器205により、コンデンサ102からの冷媒とバッテリーエバポレータ204からの冷媒との間の熱量交換が可能である。
【0063】
図3に示す実施形態において、温度調節回路は、冷媒が通流してエバポレータを形成する数個の熱交換用プレート又はチューブ、本例において冷却用プレート又はチューブ204’によって電池(図示せず)を冷却する。
【0064】
図示例において、冷却用の4つのプレート又は一連のチューブ204’が、熱伝導によって電池を冷却するように電池と直接接触した状態で又はしない状態で、ハウジング200内に鉛直方向に配置されている。
【0065】
しかしながら、冷却用プレート又はチューブ204’を、電池が各冷却プレート204’に載置されるように、ハウジング200の底部に配置してもよい。
【0066】
したがって、バッテリーと温度調節装置との間の熱交換は、冷却プレート/チューブ204’で行われる。
【0067】
冷却プレート/チューブ204’の個数は、図示されたものに限定されない。
【0068】
本実施形態において、内部熱交換器205は、ハウジング200のインターフェースに、空調回路に接続するための接続ユニット206の下流において配置されるとともに、冷媒を種々の冷却プレート/チューブ204’に分配ユニット(
図4及び
図5に図示)を介して供給する膨張部材203に連結されている。
【0069】
バッテリーの温度調節用装置の作動中、気相の冷媒はコンプレッサ101で圧縮され、少なくとも部分的に液相に変化するようにコンデンサ102に向けて通流する。
【0070】
次いで、冷媒は、膨張部材203により膨張し、バッテリーエバポレータ204に向けて通流する。
【0071】
冷媒は、バッテリーエバポレータ204を出ると、内部熱交換器205により過熱され、ここで気相に変換される。この目的は、コンプレッサ101による液体の吸収を防止し、コンプレッサ101の寿命を延ばすことである。
【0072】
したがって、単数又は複数の冷却プレート/チューブで構成されるバッテリーエバポレータ204において生成される/管理される過熱はないため、冷却プレート/チューブとバッテリーとの熱交換効率を最適化する気相の冷媒は、これらのプレート/チューブに存在しない。
【0073】
様々な代替案によれば、膨張部材は、サーモスタット膨張弁、電子膨張弁、又はチューブオリフィス(較正オリフィスとも称される)である。従来技術の解決策では、この膨張部材はバッテリーパックのハウジングの壁に配置されている。これに対し、本発明の文脈において、膨張部材はバッテリーパックのハウジングの内部に配置され得る。
【0074】
コンプレッサは、内部又は外部で制御される機械式、電気式、又は機械‐電気ハイブリッド式のいずれであってもよい。
【0075】
図4に示す実施形態において、内部熱交換器205、膨張部材203、分配ユニット203’及びエバポレータ204は、バッテリーパックのハウジング200の内部に配置されている。冷媒入口及び出口を有するインターフェースである接続ユニット206は、下流に配置された内部熱交換器205に連結されている。
【0076】
図5に示す実施形態において、内部熱交換器205及び膨張部材203は、バッテリーパックのハウジング200の外側においてその外壁に取り付けられている。分配ユニット203’及びエバポレータ204は、ハウジング200の内部に配置されている。接続ユニット206は、冷媒入口及び出口を有するインターフェースであり、下流に配置された内部熱交換器205に連結されている。
【0077】
図4及び
図5の実施形態において、内側熱交換器205は、ハウジング200に堅固に接続している。この目的のために、内部熱交換器205は、ねじ留め又はクリップ留め等によって、ハウジング200に可逆的に固定される。
【0078】
内部熱交換器205は、例えば、2つの同心チューブから構成される同軸交換器、又はプレート交換器であり得る。
【0079】
同軸交換器の外径は、放電出力に依存する。
【0080】
この放電出力が0乃至2.5kWの場合、同軸交換器の外径は8乃至12mm、好適には8乃至10mmである。
【0081】
放電出力が2.5kW乃至5kWの場合、同軸交換器の外径は10乃至24mm、好適には10乃至20mmである。
【0082】
これらの寸法は、バッテリーの温度調節用装置の性能を最適化するように、同軸タイプの内部熱交換器205の圧力損失を制限することを目的としている。
【0083】
内部熱交換器205及び膨張部材203は、バッテリーパックの内部に配置してもよいし、バッテリーパックの壁(カバー又は側壁)に可逆的な態様で堅固に取付接続してもよい。
【0084】
上述のように、温度管理装置の熱交換プレート/チューブの内部を通流する冷媒は、電池の放出した熱を吸収することができる。また、必要な場合、電池を加熱するように熱をもたらすこともできる。
【0085】
この目的のために、バッテリーの温度調節用ループは、例えば電気抵抗器や正温度係数抵抗器を使用する追加の加熱装置を備えている。
【0086】
このような追加の加熱装置により、充電を開始する前に電池の温度を上昇させる必要がある特に冬季の低温時に、電池の温度を調節することができる。
【0087】
したがって、本発明による温度調節/管理装置は、冷却用エバポレータの全面に亘るより良好な温度均一性を可能としつつより効率的なエバポレータを実現するため、バッテリーパックのより良好な温度管理を達成できることが明瞭に理解される。
【0088】
本発明によるバッテリーの温度調節/管理用装置は、バッテリーの寿命を最適化するとともに、車両の信頼性、一充電走行距離及び性能の確保を可能にする。
【0089】
使用される冷媒は、R134a、R1234yf、R744又は同等タイプの冷媒ガスであり得る。
【0090】
バッテリーエバポレータ204は内部エバポレータ104に対して並列配置されているため、これら2つのエバポレータは互いに独立して動作可能であることに留意されたい。
【0091】
したがって、内部及びバッテリーモジュールは、独立して温度調節可能である。
【0092】
更に、車両のバッテリーの温度管理専用の回路20は、空調ループから独立して使用可能であるとともに、このバッテリー温度管理用回路20専用のコンプレッサとコンデンサとを備え得る。
【0093】
この場合、内部熱交換器は、コンデンサの下流に且つコンプレッサの上流に配置されるとともに、最初にコンデンサの冷媒出口に連結され、次にコンプレッサの冷媒入口に連結される。
【0094】
バッテリーはモジュールのアセンブリを備え、モジュール自体は直列及び/又は並列の電池のアセンブリを備えている。
【0095】
電池は、円筒形、角柱形、又はフレキシブル(「パウチセル」)タイプであり得る。
【0096】
更に、バッテリーエバポレータは、プレート又はチューブを有し得る。