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▶ マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20220425BHJP
   H02K 3/24 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K3/24 C
【請求項の数】 36
(21)【出願番号】P 2019563859
(86)(22)【出願日】2018-05-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2018063143
(87)【国際公開番号】W WO2018211089
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】102017208566.5
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘルツ ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュトイラー ハンス ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゾンターク ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】マーキック ストージャン
(72)【発明者】
【氏名】ライセン アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】メドヴェセック アレックス
(72)【発明者】
【氏名】セヴァー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グラープヘア フィリップ
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-070199(JP,A)
【文献】特開2002-335648(JP,A)
【文献】特開2011-234433(JP,A)
【文献】実開昭57-007875(JP,U)
【文献】特開2016-226277(JP,A)
【文献】特開2015-033226(JP,A)
【文献】実公昭50-035284(JP,Y1)
【文献】実開平05-039178(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 9/19
H02K 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための電気機械(1)であって、
回転軸(D)に関して回転し、前記電気機械(1)の軸方向(A)を定義するロータ(3)と、ステータ巻き線(6)を有するステータ(2)と、
冷却剤分配室(4)と、該冷却剤分配室(4)と軸方向に間隔をおいて配置された冷却剤収集室(5)とを備え、
前記冷却剤分配室(4)は、冷却剤(K)を流通する少なくとも1つの冷却チャネル(10)を介して前記ステータ巻き線(6)を冷却するための前記冷却剤収集室(5)と流体的に連通し、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)は、熱結合するため電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック化合物(11)に填め込まれており、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)における第1軸端部(14a)若しくは第2軸端部(14b)又はその両方の一領域に配置されており、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)と熱結合するために、前記プラスチック化合物(11)に少なくとも一部が配置されており、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、前記軸方向(A)に沿った長軸断面においてU字状又はC字状の幾何学的形状を有し、
前記ステータ(2)の軸方向の両端に、互いに軸方向の反対に位置する第1軸受ブラケット(25a)と第2軸受ブラケット(25b)が配置され、
冷却剤分配室(4)及び/または冷却剤収集室(5)は、それぞれ、一部がプラスチック化合物(11)に配置され、他の一部が前記第1軸受ブラケット(25a)及び/または第2軸受ブラケット(25b)に配置され、
前記ステータ(2)は、前記軸方向(A)に沿って延び、前記ロータ(3)の外周方向(U)に沿って互いに間隔をおいて配置され、且つ、前記ステータ巻き線(6)を支えるステータ歯(8)を有し、
前記プラスチック化合物(11)は、少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)及び少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)を伴い、前記外周方向(U)に隣接する2つの前記ステータ歯(8)同士の間に形成された中間スペース(9)に配置され、
前記中間スペース(9)は、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)が配置された第1部分スペース(9c)と、少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)が配置された第2部分スペース(9d)とを含み、
位置決め補助部(27)は、少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)が前記第2部分スペース(9d)に位置決めされることによって、2つの前記部分スペース(9c、9d)の間に配置され、
前記位置決め補助部(27)は、前記外周方向(U)に隣接する2つの前記ステータ歯(8)に形成される2つの突起部(28a、28b)を含み、
2つの前記突起部(28a、28b)は、前記外周方向(U)に互いに対向し、且つ、前記冷却チャネル(10)の位置決めのために、前記中間スペース(9)内に突き出すことを特徴とする電気機械。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機械において、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)における第1軸端部(14a)若しくは第2軸端部(14b)又はその両方を、前記回転軸(D)に沿った長軸断面においてU字状又はC字状のように囲むことを特徴とする電気機械。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気機械において、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)における前記第1軸端部(14a)若しくは前記第2軸端部(14b)又はその両方の、径方向の外側及び径方向の内側に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、前記ロータ(3)の前記回転軸(D)に垂直な断面において、リング状の幾何学的形状を有していることを特徴とする電気機械。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)も、前記電気絶縁性プラスチックからなる少なくとも1つの前記プラスチック化合物(11)内に填め込まれていることを特徴とする電気機械。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの中間スペース9において、前記プラスチック化合物(11)は、単一のプラスチック(プラスチック材料)からなり、
前記中間スペース9に、電気絶縁性材料からなる付加的な電気絶縁体(15)が配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項7】
請求項に記載の電気機械において、
前記付加的な電気絶縁体(15)は、前記ステータ巻き線(6)とステータ歯(8)との間に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記電気絶縁性プラスチックは、熱硬化性を含むか若しくは熱硬化性であり、
及び/又は前記電気絶縁性プラスチックは、熱可塑性を含むか若しくは熱可塑性であることを特徴とする電気機械。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、該冷却チャネル(10)に配置された前記プラスチック化合物(11)を伴い、外周方向(U)に隣接するステータ歯(8)同士の間における少なくとも1つの中間スペース(9)に設けられていることを特徴とする電気機械。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、中間スペース(9)における前記各ステータ巻き線(6)の径方向の外側若しくは内側又はその両方に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、管本体内部空間(22)を囲む管本体(16)として形成されており、
前記管本体(16)には、前記管本体内部空間(22)を流体的に互いに分離された少なくとも2つの部分冷却チャネル(19)に分割する、少なくとも1つの分割要素(18)が形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項12】
請求項11に記載の電気機械において、
前記管本体(16)は、2つの幅広面(20)と、2つの幅狭面(21)とを有する平管(17)として形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の電気機械において、
管本体(16)は、平管(17)として形成されており、
前記軸方向(A)に垂直な断面において、前記平管(17)の少なくとも1つの幅広面(20)は、径方向(R)に実質的に垂直に延びていることを特徴とする電気機械。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、前記プラスチック化合物(11)内に、完全に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記ステータ(2)は、リング状のステータ本体(7)を含み、
前記軸方向(A)に延びると共に、外周方向(U)に沿って互いに間隔をおいて配置され、且つ、前記ステータ巻き線(6)を支えるステータ歯(8)は、前記ステータ本体(7)から突き出し、
少なくとも1つの前記プラスチック化合物(11)は、少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)と、少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)とを伴い、外周方向(U)に隣接する2つの前記ステータ歯(8)同士の間に形成された中間スペース(9)に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、前記プラスチック化合物(11)に設けられ、且つ、前記冷却剤(K)が流通可能な少なくとも1つの開口部(40)が形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項17】
請求項16に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記開口部(40)は、前記軸方向(A)に垂直な断面において、2つの幅広面(20)と2つの幅狭面(21)とを含む長方形状を有していることを特徴とする電気機械。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、ステータ本体(7)に配置され、且つ、前記冷却剤(K)が流通可能な少なくとも1つの開口部(40)が形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項19】
請求項18に記載の電気機械において、
前記冷却チャネル(10)を形成する前記開口部(40)は、中間スペース(9)を開放するように形成され、且つ、前記中間スペース(9)に配置された前記プラスチック化合物(11)によって、液密となるように閉じられることを特徴とする電気機械。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの冷却チャネル(10、10b)は、前記プラスチック化合物(11)に配置され、且つ、少なくとも1つの冷却チャネル(10、10a)は、ステータ本体(7)に配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか1項に記載の電気機械において、
冷却剤供給管(35)は、第1軸受ブラケット(25a)に形成され、且つ、前記冷却剤分配室(4)を、前記第1軸受ブラケット(25a)の外側に設けられた冷却剤入口(33)と流体的に結合し、
前記冷却剤供給管(35)は、前記ステータ(2)の回転可能な搭載のために、前記第1軸受ブラケット(25a)に設けられた第1軸受(32a)と熱的に結合され、
及び/又は冷却剤吐出管(36)は、第2軸受ブラケット(25b)に形成され、且つ、前記冷却剤収集室(5)を、前記第2軸受ブラケット(25b)の外側に設けられた冷却剤出口(34)と流体的に結合し、
前記冷却剤吐出管(36)は、前記ステータ(2)の回転可能な搭載のために、前記第2軸受ブラケット(25b)に設けられた第2軸受(32b)と熱的に結合されていることを特徴とする電気機械。
【請求項22】
請求項1~21のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記プラスチック化合物(11)は、前記電気絶縁性プラスチックからなる射出成形化合物であることを特徴とする電気機械。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記プラスチック化合物(11)は、単体として形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記プラスチック化合物(11)は、前記ステータ巻き線(6)における中間スペース(9)から軸方向に突き出すと共に、前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方を同時に且つ部分的に画する、少なくとも1つの巻き線部を少なくとも部分的に囲み、これにより、前記巻き線部は、前記電気機械(1)が作動中に前記冷却剤(K)に関して電気的に絶縁されることを特徴とする電気機械。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記冷却剤分配室(4)は、前記冷却剤収集室(5)と、多数の前記冷却チャネル(10)によって流体的に連通していることを特徴とする電気機械。
【請求項26】
請求項25に記載の電気機械において、
多数の前記冷却チャネル(10)は、前記軸方向(A)に互いに間隔をおいて延びていることを特徴とする電気機械。
【請求項27】
請求項25又は26に記載の電気機械において、
前記冷却チャネル(10)は、前記ステータ(2)の外周方向(U)に沿って互いに間隔をおいて配置されていることを特徴とする電気機械。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記冷却剤分配室(4)若しくは前記冷却剤収集室(5)又はその両方は、ステータ本体(7)又は前記ステータ(2)の軸方向にのみ延びる前記ステータ本体(7)又は前記ステータ(2)と隣接して配置され、前記ステータ本体(7)若しくは前記ステータ(2)の径方向(R)に沿って、前記ステータ本体(7)又は前記ステータ(2)を越えて突き出さないことを特徴とする電気機械。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)は、前記冷却剤(K)に関し、且つ、前記電気機械(1)の作動中のステータ本体(7)における前記各中間スペース(9)内の一領域に関し、電気的に絶縁するように形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項30】
請求項29に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)における電気的絶縁は、前記ステータ本体(7)に関し、前記プラスチック化合物(11)若しくは付加的な電気絶縁体(15)又はその両方によって完全に形成されていることを特徴とする電気機械。
【請求項31】
請求項又は30のいずれか1項に記載の電気機械において、
付加的な電気絶縁体(15)は、中間スペース(9)における前記軸方向(A)に沿って計られた全長にわたって前記中間スペース(9)内に延び、これにより、前記付加的な電気絶縁体(15)は、前記ステータ巻き線(6)を、ステータ本体(7)に関し、且つ、前記各中間スペース(9)を画するステータ歯(8)に関して絶縁することを特徴とする電気機械。
【請求項32】
請求項30または31に記載の電気機械において、
付加的な電気絶縁体(15)は、中間スペース(9)の外周に沿って、該中間スペース(9)の少なくとも全長にわたる該中間スペース(9)内の前記ステータ巻き線(6)を囲むことを特徴とする電気機械。
【請求項33】
請求項31又は32に記載の電気機械において、
少なくとも1つの前記冷却チャネル(10)は、管本体内部空間(22)を囲む管本体(16)として形成されており、
前記管本体(16)には、前記管本体内部空間(22)を、流体的に互いに分離された少なくとも2つの部分冷却チャネル(19)に分割する少なくとも1つの分割要素(18)が形成されており、
少なくとも1つの前記ステータ巻き線(6)は、前記プラスチック化合物(11)若しくは付加的な電気絶縁体(15)又はその両方によって、前記管本体(16)として形成された前記冷却チャネル(10)に関して電気的に絶縁されていることを特徴とする電気機械。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記ステータ(2)は、リング状のステータ本体(7)を含み、
電気絶縁性材料からなる前記プラスチック化合物(11)は、前記ステータ本体(7)における外周面(30)に配置され、且つ、前記外周面(30)にプラスチック被膜(11.1)を形成することを特徴とする電気機械。
【請求項35】
請求項1~34のいずれか1項に記載の電気機械において、
前記ステータ巻き線(6)は、分配巻き線の一部であることを特徴とする電気機械。
【請求項36】
車両であって、
請求項1~35のいずれか1項に記載の少なくとも1つの電気機械(1)を備えている車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械、特に車両のための電気機械と、上記タイプの機械を有する車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
上記タイプの電気機械は、通常、電気モータ又は発電機であってよい。該電気機械は、外部ロータ機械又は内部ロータ機械として実現されてもよい。
【0003】
一般的な電気機械は、例えば、以下の特許文献1に記載されている。該電気機械は、内部空間を囲むハウジングを含む。上記ハウジングは、該ハウジングにおける外周方向に回転するように回るシェルを有し、該ハウジングは、内部空間を径方向に画すると共に、軸方向の一方の面で内部空間を軸方向に画する後部側壁と、軸方向の他方の面で内部空間を軸方向に画する前部側壁とを有する。該電気機械のステータ(固定子)は、シェルと固定して結合されている。該電気機械のロータ(回転子)は、ステータ内に配置され、該ロータのロータ軸は、前部軸受によって前部側壁に回転可能に搭載されている。
【0004】
従来の電気機械のステータは、典型的には、該機械の作動中に電圧を印加されるステータ巻き線を含む。この際、熱が発生し、過熱及びこれに関連する損傷、さらには、熱によるステータの破壊を避けるために、発生した熱を放熱しなければならない。このため、従来の電気機械は、ステータを冷却する、特に上記のステータ巻き線を冷却する冷却装置を電気機械に備える構成が知られている。上記タイプの冷却装置は、冷却剤を流通し、且つ、ステータ巻き線の近傍のステータに配置された1つ又はそれ以上の冷却チャネルを含む。熱は、ステータ巻き線から冷却剤に熱移動することによってステータから消失される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第5214325号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、ステータから個々の冷却チャネルを流通する冷却剤への効率的な熱移動は、その構造に関して相当な出費にのみ関係することが不利となることが証明された。すなわち、これは、電気機械における製造コストに不利な影響をもたらす。
【0007】
従って、本発明は、この不利を実質的に、さらには完全に除く場合に、電気機械の改善された実施形態を創作することを目的とする。特に、電気機械のための改善された実施形態は、ステータにおけるステータ巻き線の改善された冷却による特徴によって、創作されようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、独立請求項における主題によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
従って、プラスチックからなるプラスチック化合物に電気機械のステータ巻き線を填め込むことが、本発明の根源的なアイデアである。プラスチック化合物の中には、冷却剤分配室及び冷却剤収集室も設けられ、該冷却剤は、ステータ巻き線によって生じた無駄な熱を、熱の相互作用により吸収する。ここで、該プラスチックは、ステータ巻き線から冷却剤への熱の移動のための熱移動媒体として利用される。
【0010】
特に、ステータ巻き線とステータを通して移動された冷却剤との良好な熱移動は、このようにして生じる。これはプラスチックが高熱伝導性を示す場合に、特に当てはまる。この目的のためには、いわゆる熱硬化性プラスチックが、特に好適である。プラスチックは、典型的には電気絶縁体の特徴をも有するため、冷却されるステータ巻き線の該プラスチックによる望まない短絡が起きないことが同時に保証される。従って、例えば、電気機械の高負荷作動中に生じるような、ステータに発生する多量の無駄な熱の場合でさえも、この無駄な熱がステータから消失できることを保証できる。このように、ステータにおける過熱の結果として、電気機械の損傷又は破壊すらも防ぐことができる。プラスチック化合物の中に形成された冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方(「冷却剤分配室及び/又は冷却剤収集室」と同義。)と共に、本発明に必須のプラスチック化合物の製造は、冷却対象のステータ巻き線がオーバモールドされる場合に、射出成形によって実行される。このため、ステータ巻き線及び冷却チャネルのプラスチック化合物への填め込みは、きわめて簡単に実現される。
【0011】
ステータ巻き線を冷却するために、プラスチック化合物内に形成された冷却剤分配室から出てくる冷却剤は、多数の冷却チャネルの間に分散され、該冷却チャネル内の冷却剤は、熱相互作用によって、ステータ巻き線から無駄な熱を吸収する。冷却チャネルを流通した後、冷却剤は、冷却剤収集室に集められてもよい。本発明に係る冷却剤分配室及び冷却剤収集室は、プラスチック化合物内に配置されているため、冷却剤分配室に存在する冷却剤は、冷却チャネルに分配されるよりも前に、既にステータ巻き線の冷却に使われていてもよい。これと対応して、冷却チャネルを流通した後に、冷却剤収集室に集められていた冷却剤にも当てはまる。ステータ巻き線における改善された冷却は、結果として達成される。従って、冷却剤分配室又は冷却剤収集室は、冷却対象のステータ巻き線と直接に隣接して配置されているため、冷却剤分配室又は冷却剤収集室における冷却対象のステータ巻き線との効果的な熱結合は、このようにして達成される。
【0012】
本発明に係る電気機械、特に車両のための電気機械は、回転軸に関して回転可能なロータを含む。回転軸は、該電気機械の軸方向を定義する。さらに、該電気機械は、多数のステータ巻き線を有するステータを含む。さらに、該電気機械は、冷却剤分配室と、上記冷却剤分配室と軸方向に間隔をおいて配置された冷却剤収集室とを含む。ステータ巻き線に生じた無駄な熱を冷却するために、冷却剤分配室は、冷却剤が流通し、且つ、少なくとも1つの冷却チャネルを介して冷却剤収集室と流体的に連通する。このように設けられた冷却チャネルは、少なくとも2つ、特に好ましくは多数であることが好ましい。冷却剤と熱結合するために、少なくとも1つのステータ巻き線は、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック化合物内の少なくともある領域に、好ましくは完全に填め込まれる。ここで、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、少なくとも1つのステータ巻き線における第1軸端部若しくは第2軸端部又はその両方の一領域に配置されている。冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、第1軸端部若しくは第2軸端部又はその両方における軸方向に延びるように配置されるのが好ましい。本発明によると、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、少なくとも1つのステータ巻き線と熱結合するために、プラスチック化合物に少なくとも部分的に形成され、従って、該プラスチック化合物によって少なくとも部分的に区画される。
【0013】
好ましい実施形態において、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、少なくとも1つのステータ巻き線における第1軸端部若しくは第2軸端部又はその両方を、回転軸に沿った長軸断面においてU字状又はC字状のように囲む。
【0014】
冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、回転軸に沿った長軸断面においてU字状又はC字状の幾何学的形状を有していると、特に好ましい。
【0015】
一の有利な改善において、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、少なくとも1つのステータ巻き線における第1軸端部若しくは第2軸端部又はその両方の、径方向の外側及び径方向の内側に配置されている。
【0016】
冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、ロータの回転軸に垂直な断面において、リング状の幾何学的形状を有することが、当を得て可能である。これにより、ステータに沿った外周方向に互いに間隔をおいた、多数の冷却チャネルの配置が可能となる。
【0017】
少なくとも1つのプラスチック化合物が、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方を、少なくとも部分的に画するのであれば、特に好ましい。これにより、別体のハウジングの用意を省くことができる。
【0018】
さらに好ましい実施形態において、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、プラスチック化合物内に、少なくとも部分的に、好ましくは全体に設けられた空洞によって形成されている。従って、冷却剤分配室又は冷却剤収集室を画する別体のカプセル若しくはハウジングの用意を省くことができる。これは、わずかでない有利に関係する。
【0019】
好ましい実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルも、電気絶縁性プラスチックからなる少なくとも1つのプラスチック化合物に填め込まれる。これにより、冷却チャネルを流通する冷却剤における各ステータ巻き線との良好な熱結合が確実となる。
【0020】
他の好ましい実施形態において、ステータは、軸方向に沿って延び、外周方向に沿って互いに間隔をおいて配置され、且つ、ステータ巻き線を支えるステータ歯を有する。本実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルを伴い、且つ、少なくとも1つのステータ巻き線を伴うプラスチック化合物は、外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間に形成された中間スペースに配置される。この手段により、ステータ巻き線と冷却チャネルとの間の良好な熱移動が、特に確実となる。これは、冷却チャネルが、冷却対象であるステータ巻き線における直近の中間スペースに配置されているからである。さらに、上記のステータ歯同士の間の上記中間スペースは、該プラスチック化合物の製造中に、プラスチック化合物からなるプラスチックに射出された鋳型のように用いられてもよい。これにより、プラスチック化合物の製造が単純化する。別体の鋳型の用意を省くことができるからである。
【0021】
さらに好ましい実施形態は、中間スペースが第1部分スペース及び第2部分スペースに分割されていることを提案する。本実施形態において、少なくとも1つのステータ巻き線は、第1部分スペースに配置される。少なくとも1つの冷却チャネルは、第2部分スペースに配置される。形成された2つの部分スペース同士の間は、少なくとも1つの冷却チャネルが第2部分スペースに位置決めされることによって、その位置決めが助けられる。この手段により、プラスチック化合物を形成するプラスチックによって、上記冷却チャネルがステータ巻き線6と共に、2つのステータ歯の間の中間スペースにオーバモールドされる際に、冷却チャネル(典型的には、管本体又は平管)の正確で安定した位置決めを行える。
【0022】
本実施形態の一の有利な改善において、位置決め補助部は、外周方向に隣接する2つのステータ歯に形成される2つの突起部を含む。2つの突起部は、ロータの外周方向に互いに対向し、且つ、冷却チャネルの位置決めのために、中間スペース内に突き出す。本実施形態により、プラスチック化合物からなるプラスチックによるオーバモールドをするよりも前に、中間スペース内の冷却チャネルにおける、特に精確な方向付けが可能となる。
【0023】
好ましい実施形態において、中間スペースに配置されたプラスチック化合物は、単一のプラスチック材料からなる。本実施形態において、電気絶縁性材料からなる付加的な電気絶縁体は、中間スペースに、好ましくはステータ巻き線又はプラスチック化合物とステータ歯との間に配置される。本実施形態においては、単一のプラスチック材料のみが、中間スペースに導入されなければならないため、上記プラスチックからのプラスチック化合物の製造は、単一の射出成形工程で行うことができる。従って、プラスチック化合物の製造は、とりわけ簡単となり、費用的に有利となる。
【0024】
プラスチック化合物からなる電気絶縁性プラスチックは、適切に、熱硬化性を含むか又は熱硬化性である。これに替えて、プラスチック化合物からなる電気絶縁性プラスチックは、熱可塑性を含んでもよく、又は熱可塑性であってもよい。また、熱硬化性と熱可塑性との組み合わせも、さらなる変形例として考えられる。
【0025】
プラスチック化合物は、適切に、実質的に且つ完全に中間スペースを満たす。このように、例えば空隙のような、熱移動の望まない減少を導くことになる、望まない中間スペースの形成を避けられる。
【0026】
好ましい実施形態において、少なくとも1つのプラスチック化合物は、中間スペースから軸方向に、好ましくはその両面から突き出す。従って、該プラスチック化合物は、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方を形成するために使用されてもよい。
【0027】
他の好ましい実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルが、径方向の外側に若しくは中間スペースにおける各ステータ巻き線の径方向の内側に又はその両方に配置される。これにより、該電気機械がステータ巻き線の冷却のためのほんの少ししかない構造的スペースを要求するように、冷却対象のステータ巻き線と接近する冷却チャネルの省スペース化の配置を可能とする。
【0028】
好ましい実施形態は、少なくとも1つの冷却チャネルが、管本体内部空間を囲む管本体として形成されることを提案する。この変形例において、管本体には、管本体内部空間を、流体的に互いに分離された少なくとも2つの部分冷却チャネルに分割する少なくとも1つの分割要素が形成される。管本体は、該管本体の機械的強度が増すように、上記分割要素によって強化されてもよい。
【0029】
管本体は、2つの幅広面と2つの幅狭面とを有する平管として、適切に形成されてもよい。
【0030】
一の有利な改善は、管本体が軸方向に延び、且つ、軸方向に垂直な断面において2つの幅広面と2つの幅狭面とを有する平管として形成されることを提案する。軸方向に垂直な断面において、平管の少なくとも1つの幅広面は、適切に、径方向に垂直に延びる。この場合、2つの幅広面の幅は、2つの幅狭面の幅の、好ましくは少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍であってもよい。
【0031】
少なくとも1つの冷却チャネルは、プラスチックからなるプラスチック化合物内に、とりわけ好ましくは完全に配置されていることが好ましい。
【0032】
さらに好ましい実施形態において、ステータは、軸方向に垂直な断面においてリング状であり、軸方向に延びると共にステータの外周方向に沿って互いに間隔をおき、ステータ巻き線を支えるステータ歯を有している。本実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルと少なくとも1つのステータ巻き線とを伴うプラスチック化合物は、外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間に形成された中間スペースに配置されている。この手段により、ステータ巻き線と冷却チャネルとの間の特に効果的な熱移動を確実にする。これは、中間スペースに配置された冷却チャネルが冷却対象のステータ巻き線の直近に位置しているからである。さらに、ステータ歯同士の間の中間スペースは、プラスチック化合物の製造中に、プラスチック化合物からなるプラスチックに射出される鋳型のように利用されてもよい。これにより、プラスチック化合物の製造を簡単にできる。別体の鋳型の用意をしなくて済むからである。
【0033】
さらに好ましい実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルは、プラスチック化合物に設けられ、且つ、冷却剤が流通可能な少なくとも1つ、好ましくは多数の開口部が形成されている。このような開口部が多数設けられることが極めて好ましい。冷却チャネルを画する分割管本体等の用意は、この変形例の場合に省略される。これは、製造費用の低減に関係する。上記の開口部は、好適な穴開け工具によってプラスチック化合物に形成された流通孔の形に実現してもよい。冷却チャネルを画する別体の管本体等の用意は、この変形例の場合に省略される。これは、製造費用の低減に関係する。
【0034】
少なくとも1つの開口部は、軸方向に垂直な断面において、2つの幅広面と2つの幅狭面とを含む長方形状を適切に有していてよい。このように、該開口部は平管の、有利な形状に設けられている。該平管は、今度は、冷却対象のステータ巻き線の直近の冷却チャネルにおける構造的省スペース化の配置を可能とする。
【0035】
さらに好ましい実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルは、ステータ本体に配置され、且つ、冷却剤が流通可能な少なくとも1つの開口部が形成されている。上記の開口部は、流通孔の形に実現されてもよい。該流通孔は、該電気機械の製造工程中に、好適な穴開け工具によってステータ本体に形成される。冷却チャネルを画する別体の管本体等の用意は、この変形例の場合に省略される。これは、製造費用の低減に関係する。
【0036】
さらに好ましい実施形態において、冷却チャネルを形成する開口部は、中間スペースを開放するように形成される。さらに、上記開口部は、中間スペースに配置されたプラスチック化合物によって、液密となるように閉じられる。この変形例において、開口部は、とりわけ容易に製造でき、製造プロセスにおいて有利な費用に関係する。
【0037】
少なくとも1つの冷却チャネルは、外周方向に関して、ステータ本体における2つの隣接するステータ歯の間の一領域に適切に配置される。これは、冷却チャネルが冷却対象のステータ巻き線と接近して配置されることを可能とする。この配置がステータ巻き線から冷却チャネルへの熱移動を改善する。
【0038】
他の好ましい実施形態において、少なくとも1つの冷却チャネルは、プラスチック化合物内に配置され、さらに、少なくとも1つの冷却チャネルは、ステータ本体に配置されている。この変形例は、特に小さい構造的スペースを要求する。ステータ本体及びプラスチック化合物の双方が、冷却チャネルを収容するのに利用するからである。
【0039】
他の好ましい実施形態において、ステータは、軸方向に互いに対抗して位置する第1軸受ブラケット及び第2軸受ブラケットの間に軸方向に沿って配置される。本実施形態において、冷却剤分配室の一部は、第1軸受ブラケットに配置される。これに代えて又はこれに加えて、冷却剤収集室の一部は、第2軸受ブラケットに配置される。
【0040】
他の好ましい実施形態において、冷却剤供給管は、第1軸受ブラケットに形成される。該冷却剤供給管は、冷却剤分配室を冷却剤入口と流体的に結合する。該冷却剤入口は、第1軸受ブラケットの外側、好ましくはその側面に設けられる。さらに、冷却剤吐出管は、第2軸受ブラケットに形成される。該冷却剤吐出管は、冷却剤収集室を冷却剤出口と流体的に結合する。該冷却剤出口は、第2軸受ブラケットの外側、好ましくはその側面に設けられる。冷却剤供給管は、特に好ましくは、第1軸受と熱的に結合されてもよい。該第1軸受は、ステータに回転可能に搭載されるために、第1軸受ブラケットに設けられる。これと類似的に、該冷却剤吐出管は、ステータに回転可能に搭載されるために、第2軸受ブラケットに設けられた第2軸受と熱的に結合されてもよい。
【0041】
プラスチック化合物は、特に好ましくは、電気絶縁性プラスチックからなる射出成形化合物である。射出成形の使用は、プラスチック化合物の製造を簡単化し、促進する。これは、該電気機械の製造における費用を有利に導く。
【0042】
全プラスチック化合物、すなわち、とりわけステータ歯と、冷却剤分配室及び冷却剤収集室を画する単体として形成されたプラスチック化合物との間の中間スペースに配置されたプラスチック化合物は、特に好ましい。この手段は、該電気機械の製造を簡単化し、有利な費用に関係する。
【0043】
冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方が、少なくとも1つのステータ巻き線と軸方向に隣接していると、特に好ましい。従って、冷却剤分配室又は冷却剤収集室が、軸方向に関して冷却対象のステータ巻き線と直接に近接して配置されるため、冷却剤分配室又は冷却剤収集室におけるステータ巻き線との効果的な熱結合が、このようにして達成される。
【0044】
さらに好ましい実施形態においては、冷却剤収集室若しくは冷却剤分配室又はその両方は、少なくとも1つのステータ巻き線と隣接し、好ましくは、第1軸端部若しくは第2軸端部又はその両方であって、その径方向の外側若しくは内側又はその両方、及び軸方向の端面側と隣接する。
【0045】
一の有利な改善において、ステータは、好ましくはリング状で、ステータ歯が突き出すステータ本体を含む。この改善において、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック化合物は、該ステータ本体における外周面に配置され、好ましくは、上記外周面にプラスチック被膜を形成する。このように、ステータは、周囲と電気的に絶縁されてもよい。従って、ステータ本体を収容する別体のハウジングの用意を省くことができる。ステータ本体におけるプラスチック化合物による少なくとも一端面、又はその両面の被膜も、任意の変形例が考えられる。さらなる変形例において、プラスチック化合物は、ステータ本体を好ましくは完全に封じ込めてもよい。
【0046】
一の好ましい実施形態において、プラスチック化合物は、少なくとも1つの巻き線部を、少なくとも部分的に囲む。該巻き線部は、少なくとも1つのステータ巻き線のうち、ステータ本体の中間スペースから軸方向に突き出すと共に、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方を同時に且つ部分的に画する。これにより、上記ステータ巻き線の巻き線部は、冷却剤に関して電気的に絶縁される。このようにして、該電気機械の作動中の該冷却剤のステータ巻き線との望まない短絡を防がれる。
【0047】
一の有利な改善において、冷却剤分配室は、冷却剤収集室と多数の冷却チャネルによって流体的に連通する。
【0048】
多数の冷却チャネルは、各々の場合、軸方向に互いに間隔をおいて適切に延びている。この手段により、ステータ巻き線における軸方向の全ての部分の冷却が確実となる。
【0049】
冷却チャネルは、ステータの外周方向に互いに間隔をおいて配置されていると好ましい。この手段により、全てのステータ巻き線が外周方向に沿って冷却されることが確実となる。
【0050】
他の好ましい実施形態において、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、上記ステータ本体の軸方向にのみ延びる該ステータ本体と隣接して配置される。好ましくは、本実施形態において、冷却剤分配室若しくは冷却剤収集室又はその両方は、上記ステータ本体若しくはステータの径方向に沿って、該ステータ本体又はステータを越えて突き出さない。この実施形態は、径方向においては、極めてわずかな構造的スペースしか要求しない。
【0051】
少なくとも1つのステータ巻き線が、冷却剤に関し、且つ、該電気機械の作動中のステータ本体における各中間スペース内の少なくとも一領域に関し、電気的に絶縁するように形成されていることが、特に好ましい。これが該電気機械の全てのステータ巻き線に当てはまることが極めて好ましい。このようにして、ステータ巻き線における、(該電気機械の作動中の)ステータ本体との及び冷却剤との望まない短絡を防がれる。
【0052】
ステータ本体に関する、好ましくは中間スペースを画するステータ歯にも関する、少なくとも1つのステータ巻き線の上記の電気的絶縁は、プラスチック化合物若しくは既に上述した付加的な電気絶縁体又はその両方によって完全に、特に適切に形成される。このようにして、さらなる電気絶縁体の用意を省くことができる。
【0053】
他の好ましい実施形態において、付加的な電気絶縁体は、中間スペースの軸方向に沿って計られた全長にわたって該中間スペース内に延びる。これにより、上記の付加的な電気絶縁体は、ステータ巻き線を、ステータ本体に関し且つ中間スペースを画するステータ歯に関し絶縁する。
【0054】
一の有利な改善において、付加的な電気絶縁体は、中間スペースの外周に沿って、該中間スペースの少なくとも全長にわたる中間スペース内のステータ巻き線を囲む。
【0055】
一の特に好ましい実施形態において、少なくとも1つのステータ巻き線は、管本体として形成された冷却チャネルに関しても電気的に絶縁されている。ここで、電気的な絶縁は、プラスチック化合物若しくは付加的な絶縁体又はその両方によって形成される。
【0056】
ステータ巻き線は、分配巻き線の一部であることが特に好ましい。
【0057】
さらに、本発明は、上記に提案したように、電気機械を有する車両、特に自動車両に関する。従って、上記で議論した電気機械の効果は、本発明に係る車両にも移譲できる。
【0058】
本発明に係るさらに重要な特徴及び効果は、従属請求項から、図面から、及び該図面に基づいた関連する図の記述から出来する。
【0059】
上記で言及した特徴及び以下の未だ議論していない特徴は、個々の指定された組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組み合わせであっても単独であっても使用できないことは自明である。
【0060】
本発明の、好ましい例示的な実施形態は、図面に例示されており、また、以下の記述に、より詳細に議論される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1図1は本発明に係る電気機械の一例であって、ロータの回転軸に沿った長軸断面図である。
図2図2図1の電気機械におけるステータのロータの回転軸に垂直な方向の断面図である。
図3図3図2のステータの詳細構成であって、外周方向に隣接する2つのステータ歯同士の間の中間スペースの一領域を示す断面図である。
図4図4図1の電気機械における一変形例であって、冷却チャネルを流れる冷却剤がロータの軸受の冷却にも用いられる様子を示す断面図である。
図5図5は2つのステータ歯同士の間のプラスチック化合物が詰められる中間スペースにおける、さらに異なる設計の変形例を示す断面図である。
図6図6は2つのステータ歯同士の間のプラスチック化合物が詰められる中間スペースにおける、さらに異なる設計の変形例を示す断面図である。
図7図7は2つのステータ歯同士の間のプラスチック化合物が詰められる中間スペースにおける、さらに異なる設計の変形例を示す断面図である。
図8図8は2つのステータ歯同士の間のプラスチック化合物が詰められる中間スペースにおける、さらに異なる設計の変形例を示す断面図である。
図9図9は2つのステータ歯同士の間のプラスチック化合物が詰められる中間スペースにおける、さらに異なる設計の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は本発明に係る電気機械1の断面構成の例示である。電気機械1は、車両、好ましくは道路車両に用いることが可能な大きさである。
【0063】
電気機械1は、図1に大いに概略的に示したに過ぎないロータ3と、ステータ2とを含む。例証となるために、ステータ2は、図1のII-II線に沿った回転軸Dに対して垂直な断面である図2に分けて例示されている。図1によると、ロータ3は、ロータ軸31を有し、且つ、多数の磁石(該磁石は図1にはその詳細は描かれていない。)を有していてもよい。該磁石の極性は、外周方向Uに沿って交互に並ぶ。ロータ3は、回転軸Dに関し回転可能であり、その位置はロータ軸31の中心長軸Mによって定義される。回転軸Dは、該回転軸Dと平行に延びる軸方向Aによって定義される。径方向Rは、軸方向Aに対して垂直である。外周方向Uは、回転軸Dの回りを回転する。
【0064】
図1から分かるように、ロータ3は、ステータ2の中に配置されている。従って、ここに示される電気機械1は、いわゆる内部ロータ機械である。しかしながら、いわゆる外部ロータ機械としての実現も、ロータ3がステータ2の外側に配置される場合に考えられる。ロータ軸31は、回転軸Dの回りを回転できるように、第1軸受32aと該第1軸受32aから軸方向に間隔をおいた第2軸受32bとにおいて、ステータ2に搭載されている。
【0065】
公知のように、ステータ2は、さらに、磁場を生成するために電圧を印加される多数のステータ巻き線6を含む。ロータ3は、該ロータ3の磁石によって生成される磁場と、ステータ巻き線6によって生成される磁場との磁気相互作用により回転する。
【0066】
ステータ2は、例えば鉄からなるリング状のステータ本体7を有してもよいことが、図2の断面図から分かる。特に、ステータ本体7は、多数のステータ本体薄板(図示せず。)によって形成してもよい。このステータ本体薄板は、軸方向Aに沿って互いに積層され、且つ、互いに接着されている。ステータ本体7における径方向の内側に軸方向Aに沿って延びると共に、ステータ本体7から径方向の内側に突き出し、且つ、外周方向Uに沿って互いに間隔をおいて配置された多数のステータ歯8が一体に形成されている。各ステータ歯8はステータ巻き線6を支える。個々のステータ巻き線6は、共に巻き線の配置を形成する。ステータ巻き線6によって形成される磁極の個数に依って、全ての巻き線の配置における個々のステータ巻き線6は、共に相応じて配線してもよい。
【0067】
電気機械1の作動中に、電圧が印加されるステータ巻き線6は、該電気機械1から無駄な熱が発生する。発生した無駄な熱は、過熱、及びこれに関連する損傷、さらには該電気機械1の破壊を防ぐために、該電気機械1から消失されなければならない。従って、ステータ巻き線6は、冷却剤Kによって冷却される。該冷却剤Kは、ステータ2を通して案内され、熱移動により該ステータ巻き線6から生じる無駄な熱を吸収する。
【0068】
冷却剤Kを、ステータ2を通して案内するために、電気機械1は、冷却剤Kが冷却剤入口33を介して導入される冷却剤分配室4を含む。冷却剤収集室5は、軸方向Aに沿って、冷却剤分配室4と間隔をおいて配置される。冷却剤分配室4は、多数の冷却チャネル10によって冷却剤収集室5と流体的に連通する。該冷却チャネル10は、図1の例示から分かるように、そのうちの1つに過ぎない。軸方向Aに対して垂直な断面において、図示はしていないが、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、それぞれ、リング状を有していてもよい。多数の冷却チャネル10は、外周方向Uに沿って互いに間隔をおいて配置されている。該冷却チャネル10は、各々の場合、リング状の冷却剤分配室4からリング状の冷却剤収集室5に軸方向Aに沿って延びる。従って、冷却剤分配室4内に冷却剤入口33を介して導入される冷却剤Kは、個々の冷却チャネル10に分配されてもよい。冷却チャネル10を流通し、ステータ巻き線6から熱を吸収した後、冷却剤Kは冷却剤収集室5に収集され、且つ、ステータ2に設けられた冷却剤出口34を介して、再度、電気機械1から放出される。
【0069】
図1及び図2の例示から分かるように、ステータ巻き線6は、外周方向Uに隣接する2つのステータ歯8同士の間に形成される各々の場合の中間スペース9に配置される。また、上記中間スペース9は、ステータ歯8と同様に軸方向Aに延びる、いわゆる「ステータ溝」又は「ステータスロット」としても、当業関係者に知られている。
【0070】
さて、図3の例示を対象とする、注意を払うべき事柄は、詳細な例示において、外周方向Uに隣接する2つのステータ歯8(以下、ステータ歯8a、8bとも参照する。)同士の間に形成される中間スペース9である。冷却チャネル10を流通する冷却剤Kに対して、ステータ巻き線6に生じる無駄な熱の伝導を改善するために、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック化合物11は、図3に対応して、各々の場合に、中間スペース9に設けられる。プラスチック化合物11が、電気絶縁性プラスチックからなる射出成形化合物であると、特に好ましい。射出成形プロセスの使用により、プラスチック化合物の製造が容易となり、且つ、促進される。図3の例示において、プラスチック化合物11は、単一のプラスチック材料により構成される。中間スペース9に配置された冷却チャネル10及び同一の中間スペース9に配置されたステータ巻き線6は、プラスチック化合物11に填め込まれる。該プラスチック化合物11は、例えば、熱硬化性又は熱可塑性により構成されてもよい。図3により、中間スペース9に配置されたステータ巻き線6は、第1ステータ歯8aによって支持される第1ステータ巻き線6aに各々の場合に部分的に属し、且つ、外周方向Uに第1ステータ歯8aと隣接する、第2ステータ歯8bによって支持される第2ステータ巻き線6bに部分的に割り当てられることは自明である。このシナリオを例示するために、図3に仮想分割線12を示す。図3における仮想分割線12の左側に示される巻き線ワイヤ13aは、第1ステータ歯8aによって支持される第1ステータ巻き線6aに属する。仮想分割線12の右側に示される巻き線ワイヤ13bは、第2ステータ歯8bによって支持される第2ステータ巻き線6bに属する。
【0071】
図3の詳細な例示からも分かるように、電気絶縁性材料からなる付加的な電気絶縁体15が、プラスチック化合物11と、ステータ本体7又は外周方向Uに中間スペース9を画する2つのステータ歯8a、8bと、の間に配置されている。紙からなる電気絶縁体15は、とりわけ低費用の証拠となる。このように、プラスチック化合物11が熱動過負荷による破断又は他の原因による損傷を生じた場合に、ステータ巻き線6の望まない短絡を、ステータ本体7の材料又はステータ歯8の材料(典型的には鉄若しくは他の好適な電気導電性材料)によって避けることができる。
【0072】
図3の詳細な例示に示されるように、冷却チャネル10は、各々、例えばアルミニウムからなり、管本体内部空間22を囲む管本体16によって形成してもよい。任意として、図3の詳細な例示に示すように、1つ又はそれ以上の分割要素18は、管本体16に形成されてもよい。該分割要素18は、冷却チャネル10を部分冷却チャネル19に分割し、該部分冷却チャネル19は互いに流体的に分割されている。このように、冷却剤Kへの改善された熱移動に関連して、冷却チャネル10内での該冷却剤Kの流動特性は、改善され得る。さらに、管本体16は、このように、付加的に且つ機械的に強化される。一例として、図3は、4つの部分冷却チャネル19が形成されるように、このような3つの分割要素18を例示する。異なる個数の分割要素18は、例示の変形例として自明的に可能である。冷却チャネル10を形成する管本体16は、平管17として形成される。該平管17は、ロータ3(図3を参照。)の回転軸Dに垂直な断面において、2つの幅広面20及び2つの幅狭面21を有する。図3に示すように、軸方向Aに垂直な断面において、平管17の2つの幅広面20は、径方向Rに対して垂直に延びる。2つの幅広面20の幅は、2つの幅狭面21の幅の少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍となる。
【0073】
図1図3の例において、冷却チャネル10は、各中間スペース9におけるステータ巻き線6の径方向の外側に配置される。従って、ロータ3の回転軸Dに対する冷却チャネル10の径方向の空間的配置は、回転軸Dに対するステータ巻き線6の空間的配置よりも遠い。しかしながら、冷却チャネル10における径方向の内側への配置をも考えられる。
【0074】
図3において、中間スペース9は、内部にステータ巻き線6が配置される第1部分スペース9cと、内部に冷却チャネル10が配置され、第1部分スペース9cを補って中間スペース9を形成する第2部分スペース9dとを含む。図3及び図4から分かるように、位置決め補助具27が2つの部分スペースの間に配置されてもよい。該位置決め補助具27によって、冷却チャネル10が第2部分スペース9d内に位置決めされる。上記位置決め補助具27は、2つのステータ歯8a、8bに形成され、外周方向Uに隣接し、且つ、中間スペース9を画する2つの突き出し部28a、28bを含む。該2つの突き出し部28a、28bは、外周方向Uに互いに対向し、冷却チャネル10の位置決めのために中間スペース9に突き出す。突き出し部28a、28bは、管本体16又は平管17として形成された冷却チャネル10を留める径方向の障害物として振る舞う。該径方向の障害物は、径方向の内側に、特に射出成形によってプラスチック化合物を製造する間に、冷却チャネル10の望まない移動を防ぐ。
【0075】
図1によると、電気絶縁性プラスチックからなるプラスチック化合物11は、ステータ本体7の外周面30にも配置してもよく、従って、該外周面30にプラスチック被膜11.1を形成してもよい。このように、典型的には、導電体ステータ本体薄板により形成される、ステータ2のステータ本体7は、周囲領域を電気的に絶縁されてもよい。従って、ステータ本体7を収容する別体のハウジングの用意を省くことができる。
【0076】
図1図3によると、電気機械1の製造のために、管本体16又は平管17によって形成された冷却チャネル10の場合は、まず、中間スペース9に導入される。続いて、例えば、紙からなる電気絶縁体15が中間スペース9に挿入される。続いて、ステータ巻き線6がステータ歯8に配置され、また、中間スペース9にも導入される。続いて、プラスチック化合物11を形成する、例えば熱硬化性のプラスチックによってオーバモールドされる。プラスチック化合物11の製造工程において、ステータ本体7も、すなわち、特に熱硬化性のプラスチック化合物11を形成するプラスチックによってオーバモールドされてもよい。同様に、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5が、射出成形工程中に製造される。
【0077】
以下、図1に再度言及する。回転軸Dに沿った長軸断面において、図1に例示するように、冷却剤分配室4は、各ステータ巻き線6における第1軸端部14aをU字状又はC字状のように、すなわち、その延伸軸に沿って径方向の内側及び径方向の外側を囲む。これと対応して、回転軸Dに沿った長軸断面において、冷却剤収集室5は、各ステータ巻き線6における第2軸端部14bをU字状又はC字状のように、すなわち、その延伸軸に沿って径方向の内側及び径方向の外側を囲む。このように、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、軸方向Aに沿った長軸断面において、U字状又はC字状の形状を有する。
【0078】
この変形例において、冷却チャネル10は、ステータ巻き線6における径方向の内側及び径方向の外側の双方に配置される。従って、その軸端部14a、14bを含む各ステータ巻き線6は、冷却チャネル10を介して、及び冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5を介して、冷却剤Kと熱接触する。これにより、特に、該電気機械1の作動中の高熱負荷を受ける場合に、その軸端部14a、14bを含むステータ巻き線6の効果的な冷却が可能となる。簡単化された変形例においては、ステータ巻き線6における径方向の内側に配置された冷却チャネル10を省くことができる。さらに簡単化された変形例においては、ステータ巻き線6における径方向の外側に配置された冷却チャネル10を省くことができる。
【0079】
図1の例示のように、一体物として形成されたプラスチック化合物11は、中間スペース9から軸方向の両面に突き出してもよい。これにより、冷却剤分配室4は、これに替えて又はこれに加えて冷却剤収集室5をも、各中間スペース9の軸方向の外側に配置された各ステータ巻き線6の軸端部14a、14bとの熱結合のためのプラスチック化合物11に填め込まれる。言い換えると、この設計の変形例において、一体のプラスチック化合物11は、各々の場合に少なくとも部分的に、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5を画定する。
【0080】
このように、それぞれ、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5に存在する冷却剤Kに対する効果的な熱移動は、通常、各ステータ巻き線6の、特に高熱負荷を受ける軸端部14a、14bの一領域でさえも実現できる。この手段により、ステータ巻き線6における2つの軸端部14a、14bの、とりわけ効果的な冷却が可能となる。
【0081】
さらに、図1によると、ステータ本体7及びステータ歯8を有するステータ2は、第1軸受ブラケット25a及び第2軸受ブラケット25bの間に軸方向に配置される。図1から分かるように、冷却剤分配室4の一部は、第1軸受ブラケット25aに配置され、冷却剤収集室5の一部は、第2軸受ブラケット25bに配置される。
【0082】
従って、冷却剤分配室4は、第1軸受ブラケット25a及びプラスチック化合物11の双方によって区画される。これと対応して、冷却剤収集室5は、第2軸受ブラケット25b及びプラスチック化合物11の双方によって区画される。
【0083】
冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、プラスチック化合物11に設けられた空洞41a、41bによって、各々の場合、部分的に形成されている。第1空洞41aは、第1軸受ブラケット25aに形成され、冷却剤分配室4を形成する空洞42aによって補われる。これと対応して、第2空洞41bは、第2軸受ブラケット25bに形成され、冷却剤収集室5を形成する空洞42bによって補われる。
【0084】
第1軸受ブラケット25aにおいて、冷却剤分配室4を冷却剤入口33と流体的に結合する冷却剤供給管35がさらに形成されていてもよい。冷却剤入口33は、第1軸受ブラケット25aの外側、特に図1に示されるように、その外周部に設けられる。これと対応して、第2軸受ブラケット25bにおいて、冷却剤収集室5を冷却剤出口34と流体的に結合する冷却剤吐出管36が形成されていてもよい。冷却剤出口34は、第2軸受ブラケット25bの外側、特に図1に示されるように、その外周部に設けられる。これにより、冷却剤分配室4の配置及び冷却剤収集室5の配置は、それぞれ、各ステータ巻き線6における第1軸端部14a及び第2軸端部14bのそれぞれの径方向の外側、及び軸方向Aに沿った上記軸端部14a、14bの延伸方向にも可能となる。このように、該電気機械1の作動中に、特に高熱負荷を受けるステータ巻き線6の軸端部14a、14bは、とりわけ効果的に冷却される。
【0085】
図4図3における回転軸の長軸断面であって、図1の一変形例を示す。電気機械1の作動中にロータ軸31及び2つの軸受32a、32bをも冷却するために、冷却剤供給管35は、第1軸受ブラケット25a内に配置された第1軸受32aと熱的に結合されてもよい。同様に、冷却剤吐出管36は、第2軸受ブラケット25b内に配置された第2軸受32bと熱的に結合されてもよい。このようにすると、軸受32a、32bを冷却するための、別体の冷却装置を省くことができ、これにより、費用的に有利となる。図4の例において、冷却剤入口33及び冷却剤出口34は、軸受ブラケット25a、25bのそれぞれの外側の端面26a、26bにそれぞれ設けられている。図4及び図1による変形例の場合、ステータ巻き線6は、径方向Rに関し冷却チャネル10の径方向の内側に配置される。該ステータ巻き線6は、第2軸受ブラケット25bに設けられた貫通部39を通して、ステータ2の内部から電気端子50により外部に案内される。これにより、上記ステータ巻き線6には、外部から電圧を印加できる。貫通部39は、径方向に関し、冷却剤分配室4又は冷却剤収集室5と回転軸Dとの間に配置される。
【0086】
図5図3の例の一改善を示す。図5の改善は、中間スペース9において冷却チャネル10が径方向の外側だけでなく、径方向の内側にも付加的に設けられている点が、図3の例と異なる。冷却チャネル10は、図3の例のように、管本体16として又は平管17として形成されてもよい。本改善例において、径方向の内側の冷却チャネル10は、2つの分割要素18と3つの部分冷却チャネル19を伴う平管17として例示されている。図3の例に関する上記の説明は、図5の例に対しても、適当に必要な変更を加えて適用する。
【0087】
さて、図6の例示を対象とする、注意を払うべき事柄は、詳細な例示において、外周方向Uに隣接する2つのステータ歯8(以下、ステータ歯8a、8bとも参照する。)同士の間に形成される中間スペース9である。冷却チャネル10を流通する冷却剤Kに対して、ステータ巻き線6に生じる無駄な熱の伝導を改善するために、プラスチックからなるプラスチック化合物11は、図6に対応して各々の場合に、中間スペース9に設けられる。中間スペース9に配置された冷却チャネル10、及び同一の中間スペース9に配置されたステータ巻き線6は、例えば、熱硬化性からなるか又は熱硬化性を含んでもよいプラスチック化合物11に填め込まれる。図6の例においては、単一のプラスチック材料からなるプラスチック化合物11が、中間スペース9に設けられる。
【0088】
図6により、中間スペース9に配置されたステータ巻き線6は、第1ステータ歯8aによって支持される第1ステータ巻き線6aに各々の場合に部分的に属し、且つ、外周方向Uに第1ステータ歯8aと隣接する、第2ステータ歯8bによって支持される第2ステータ巻き線6bに部分的に割り当てられることは自明である。このシナリオを例示するために、図6に、図3と類似的に1本の可能な仮想分割線12を示す。図6における仮想分割線12の左側に示される巻き線ワイヤ13aは、第1ステータ歯8aによって支持される第1ステータ巻き線6aに属する。従って、仮想分割線12の右側に示される巻き線ワイヤ13bは、第2ステータ歯8bによって支持される第2ステータ巻き線6bに属する。
【0089】
図6の例において、各中間スペース9に形成された冷却チャネル10は、プラスチック化合物11に設けられ、且つ、冷却剤Kが流通できる多数の開口部40によって実現される。開口部40(このような4個の開口部40は図6に例として示されたに過ぎない。)は、外周方向Uに沿って互いに間隔をおいて配置され、各々の場合、軸方向Aに延びる。開口部40は、好適な穴開け工具によって、プラスチック化合物11に形成された流通口として実現されてもよい。該開口部40は、回転軸Dに垂直な断面において、各々の場合に2つの幅広面20と2つの幅狭面21とを含む長方形状を有していてよい。2つの幅広面20の幅は、2つの幅狭面21の幅の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも4倍となる。このように、平管における有利な外形状は、繰り返す形状である。
【0090】
図6の詳細な例示からも分かるように、電気絶縁性材料からなる電気絶縁体15は、プラスチック化合物11とステータ本体7との間、又はプラスチック化合物11と外周方向Uにおいて中間スペース9を画する2つのステータ歯8同士との間で、各中間スペース9に配置される。このように、プラスチック化合物11が熱動過負荷による破断又は他の原因による損傷を生じた場合に、各ステータ巻き線6の望まない短絡を、ステータ本体7の材料又はステータ歯8の材料(典型的には鉄若しくは他の電気導電性材料)によって避けることができる。紙からなる電気絶縁体15は、とりわけ低費用の証拠となる。
【0091】
図6の例において、冷却チャネル10を形成する開口部40は、径方向Rに関し、プラスチック化合物11内においてステータ巻き線6の径方向の外側に配置される。従って、ロータ3の回転軸Dに対する冷却チャネル10の径方向の空間的配置は、回転軸Dに対するステータ巻き線6の空間的配置よりも遠い。図6に示すように、軸方向Aに垂直な断面において、開口部40の2つの幅広面20は、各々の場合に、径方向Rに垂直に延びる。
【0092】
図7図6の例の一変形例を示す。図7による電気機械1の場合、冷却チャネル10は、プラスチック化合物11に配置されるのではなく、ステータ2のステータ本体7に配置される。図7から分かるように、冷却チャネル10を形成する開口部40は、中間スペース9の径方向の外側で、且つ、ステータ本体7の外周方向Uに関して2つの隣接するステータ歯8a、8bの間に配置される。図6の例と類似的に、冷却チャネル10は、ステータ本体7に設けられた開口部40によって形成される。従って、冷却チャネル10は、ステータ本体7の製造中に、開口部40の形成によって、該ステータ本体7の内部又は該ステータ本体7を構成するステータ本体薄板の内部に形成されてもよい(開口部40は、好適な穴開け工具による貫通孔の形が好ましい)。
【0093】
図8図7の例の一変形例を示す。図8による変形例の場合も、冷却チャネル10を形成する開口部40は、ステータ2のステータ本体7に配置される。図8の例において、ステータ本体7に配置された開口部40は、中間スペース9に向かって開放されるように形成される。図8から分かるように、開口部40は、中間スペース9に対して液密となるように、且つ、中間スペース9に設けられたプラスチック化合物11によって閉じられる。
【0094】
図9図8の例の一改善を示す。図9による電気機械1の場合、冷却チャネル10は、ステータ本体7の内部とプラスチック化合物11の内部との両方に設けられている。ステータ本体7の内部に設けられた冷却チャネル10(以下、「径方向外側冷却チャネル」10aとも呼ぶ。)は、この言及が上記の図8に関する記述と合致するように、図8の例と類似的に形成される。プラスチック化合物11の内部に配置された冷却チャネル10も、以下、「径方向内側冷却チャネル」10bとも呼ぶ。従って、径方向Rに関し、ステータ巻き線6は、2つの冷却チャネル10a、10bの間に配置される。図9に詳細に例示されるように、径方向内側冷却チャネル10bは、例えばアルミニウムからなり、管本体内部空間22を囲む管本体16によって形成してもよい。図9に詳細に示すように、管本体16に形成され、冷却チャネル10を部分冷却チャネル19に分割し、且つ、互いに流体的に分割する1つ又はそれ以上の分割要素18は任意に可能である。このように、冷却チャネル10内の冷却剤Kにおける流動特性は、該冷却剤Kに対する改善された熱移動に関して向上できる。さらに、管本体16は、付加的に機械的に強化される。図9の例において、このような分割要素18は、例として3つの部分冷却チャネル19となるように例示されている。分割要素18の異なる個数も、変形例として可能であることは自明である。管本体16は、軸方向Aに垂直な断面において、2つの幅広面20及び2つの幅狭面21を持つ、平管17として形成されてもよい。この場合、2つの幅広面の幅は、2つの幅狭面の幅の、少なくとも4倍、好ましくは少なくとも10倍となる。幅広面20は、径方向Rに対して垂直に延びる。
【0095】
上記で議論した図3図9による変形例は、適切な場合に互いに組み合わせてもよい。
【0096】
プラスチック化合物11は、ステータ巻き線6における、ステータ本体7の中間スペース9から軸方向に突き出す巻き線部をも囲み、且つ、冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5をそれぞれ部分的に画する。これにより、各ステータ巻き線6又は該ステータ巻き線6の各巻き線部は、電気機械1が作動中に冷却剤Kが各冷却チャネル10を流通する際に、該冷却剤Kに関して電気的に絶縁される。
【0097】
冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、上記ステータ本体7の軸方向に該ステータ本体7と隣接して適切に配置される。冷却剤分配室4及び冷却剤収集室5は、好ましくは、上記ステータ本体7若しくはステータ2における径方向に沿って、該ステータ本体7又はステータ2を越えて突き出さない。
【0098】
ステータ巻き線6は、各々の場合、冷却剤Kに関し、及び電気機械1の作動中のステータ2のステータ本体7における各中間スペース9の内部の少なくとも一領域に関し、電極的に絶縁されるように設計されている。このようにして、ステータ巻き線6における(電気機械1の作動中の)ステータ本体7との及び冷却剤Kとの、望まない短絡を防がれる。このような、ステータ本体7に関する、好ましくは中間スペース9を画するステータ歯8にも関するステータ巻き線6の電極的絶縁は、プラスチック化合物11若しくは上記で説明した付加的な電気絶縁体15又はその両方によって、完全に且つ適切に形成される。
【0099】
付加的な電気絶縁体15は、中間スペース9内をその全体にわたって軸方向Aに計った場合に適切に延びる。これにより、上記の付加的な電気絶縁体15は、ステータ本体7に関して及びステータ歯8に関して、それぞれステータ巻き線6を絶縁する。
【0100】
付加的な電気絶縁体15は、中間スペース9の外周の境界に沿って、その少なくとも全長にわたり、該中間スペース9内でステータ巻き線6を適切に囲む。
【0101】
ステータ巻き線6は、また、管本体16として形成された冷却チャネル10に関しても電気的に絶縁される。ここで、電気的な絶縁はプラスチック化合物11によって、及びこれに替えて又はこれに加えて、付加的な電気絶縁体15によっても形成される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9