(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】ブローヘッド
(51)【国際特許分類】
C03B 9/36 20060101AFI20220425BHJP
【FI】
C03B9/36
(21)【出願番号】P 2020030405
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000222222
【氏名又は名称】東洋ガラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島田 多祥
(72)【発明者】
【氏名】大屋 祐一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 幸男
(72)【発明者】
【氏名】平野 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 明
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-302258(JP,A)
【文献】特開2019-081668(JP,A)
【文献】特開2014-224031(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016308(WO,A1)
【文献】特開平08-026743(JP,A)
【文献】特開平11-199239(JP,A)
【文献】特開2000-344532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスびんのブロー成形において、上下に延びる合せ面を有し、底型を挟持する仕上型の上方に配置され、前記仕上型から上方に突出したパリソンの口部に空気を吹き込むブローヘッドであって、
下方に向けて開口したスカート部を下部に有し、前記スカート部と前記仕上型の上面とで前記口部を受容するチャンバを形成するヘッド本体と、
前記スカート部の内側に設けられ、前記口部に圧縮空気を吹き込むノズルと、
前記スカート部の内側に上下に移動可能に支持され、前記口部の上端面に当接可能な当接部材と、
前記スカート部と前記当接部材との間に設けられ、前記当接部材を下方に付勢する付勢部材とを有するブローヘッド。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記当接部材の上面とスカート部の内面との間に介装されたばねである請求項1に記載のブローヘッド。
【請求項3】
前記当接部材は、面が上下を向く円板状に形成され、中央に前記ノズルが通過するための貫通孔を有する請求項1又は請求項2に記載のブローヘッド。
【請求項4】
前記当接部材は、その下面に前記貫通孔から径方向外方に延びる溝を有し、
前記チャンバは、前記当接部材によって上室と下室に区画され、
前記スカート部は前記上室と前記下室とを接続する通路を有する請求項3に記載のブローヘッド。
【請求項5】
前記スカート部の内面には、スナップリングが着脱可能に装着され、
前記スナップリングは、前記当接部材の下面の外周部に当接し、前記当接部材の下方への移動を規制する請求項3又は請求項4に記載のブローヘッド。
【請求項6】
前記当接部材は、カーボンから形成されたプレートと、前記プレートの下面の前記外周部に設けられたワッシャとを有し、
前記当接部材は、前記ワッシャにおいて前記スナップリングに当接する請求項5に記載のブローヘッド。
【請求項7】
前記ヘッド本体は、前記ノズルに圧縮空気を供給するための空気通路と、前記空気通路に設けられたエアフィルタとを有する請求項1~請求項6のいずれか1つの項に記載のブローヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスびんのブロー成形において、上下に延びる合せ面を有する仕上型の上方に配置され、仕上型から上方に突出したパリソンの口部に空気を吹き込むブローヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスびんの成形方法としてブロー成形法が公知である。特許文献1に記載されているように、ブロー成型法において、パリソンからガラスびんを成形するときには、仕上型、底型、及びパリソンに圧縮空気を吹き込むブローヘッドが使用される。仕上型は上下に延びる合せ面を有し、底型と協働してびんの外形を形成する。パリソンは、その口部が仕上型から上方に突出するように仕上型に支持される。ブローヘッドは、パリソンの口部を覆うように、仕上型の上端に配置される。ブローヘッドからパリソンの口部に圧縮空気が供給されることによってパリソンは仕上型の形状に応じて膨張し、ガラスびんが成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスびんが成形された後、仕上型が側方に互いに分離することによって、ガラスびんを仕上型から取り出すことが可能になる。このとき、仕上型とガラスびんとの間に生じる摩擦力によって、ガラスびんが仕上型に引っ張られ、ガラスびんが底型上で傾斜することがある。ガラスびんが傾斜すると、ガラスびんと仕上型及び底型とが干渉し、ガラスびんにびりと言われる疵が発生するという問題がある。仕上型が分離するときのガラスびんの傾斜を抑制するために、ブローヘッドによってガラスびんの口部を底型側に押える対策が考えられる。しかし、ガラスびんは寸法誤差を有すると共に温度低下に伴って収縮するため、ガラスびんとブローヘッドとの隙間を無くすことは困難である。そのため、ガラスびんの傾斜を抑制することは難しい。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、仕上型が分離するときのガラスびんの傾斜を抑制することができるブローヘッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、ガラスびん(C)のブロー成形において、上下に延びる合せ面(14A)を有し、底型(12)を挟持する一対の仕上型(14)の上方に配置され、前記仕上型から上方に突出したパリソン(P)の口部(P1)に空気を吹き込むブローヘッド(20)であって、下方に向けて開口したスカート部(22)を下部に有し、前記スカート部と前記仕上型の上面とで前記口部を受容するチャンバ(26)を形成するヘッド本体(21)と、前記スカート部の内側に設けられ、前記口部に圧縮空気を吹き込むノズル(42)と、前記スカート部の内側に上下に移動可能に支持され、前記口部の上端面に当接可能な当接部材(45)と、前記スカート部と前記当接部材との間に設けられ、前記当接部材を下方に付勢する付勢部材(51)とを有する。
【0007】
この態様によれば、付勢部材によって下方に付勢された当接部材がガラスびんの口部を下方に向けて押さえ付けるため、仕上型が開くときのガラスびんの傾斜を抑制することができる。ガラスびんの傾斜が抑制されることによって、ガラスびんと仕上型との干渉が抑制され、ガラスびんに疵が生じることを抑制することができる。
【0008】
上記の態様において、前記付勢部材は、前記当接部材の上面とスカート部の内面との間に介装されたばねであるとよい。
【0009】
この態様によれば、付勢部材の構成を簡素かつ小型化することができる。
【0010】
上記の態様において、前記当接部材は、面が上下を向く円板状に形成され、中央に前記ノズル(42)が通過するための貫通孔(46)を有するとよい。
【0011】
この態様によれば、ノズルと干渉しないように当接部材を配置することができる。
【0012】
上記の態様において、前記当接部材は、その下面に前記貫通孔から径方向外方に延びる溝(45E)を有し、前記チャンバは、前記当接部材によって上室(26A)と下室(26B)に区画され、前記スカート部は前記上室と前記下室とを接続する通路(57、58)を有するとよい。
【0013】
この態様によれば、通路によって、ノズルから供給される圧縮空気によって当接部材の上面及び下面に加わる圧力の差を低減することができる。これにより、付勢部材に必要な付勢力を小さくすることができる。また、圧縮空気が下室に供給されるため、圧縮空気によってガラスびんの口部の外周部を冷却することができる。
【0014】
上記の態様において、前記スカート部の内面には、スナップリング(49)が着脱可能に装着され、前記スナップリングは、前記当接部材の下面の外周部に当接し、前記当接部材の下方への移動を規制するとよい。
【0015】
この態様によれば、スナップリングを取り外すことによって当接部材をスカート部から取り外すことができ、当接部材のメンテナンスを容易にすることができる。
【0016】
上記の態様において、前記当接部材は、カーボンから形成されたプレート(45A)と、前記プレートの下面の前記外周部に設けられたワッシャ(45C)とを有し、前記当接部材は、前記ワッシャにおいて前記スナップリングに当接するとよい。
【0017】
この態様によれば、当接部材はカーボンで形成されたプレートで口部に当接することができる。カーボンは、熱衝撃に対して比較的耐性が高いため、プレートは口部から断続的に受ける熱によって破損し難くなる。また、ワッシャを設けたことによって、カーボンで形成されたプレートとスナップリングとの接触を避けることができ、プレートの剥離を抑制することができる。
【0018】
上記の態様において、前記ヘッド本体は、前記ノズルに圧縮空気を供給するための空気通路(32)と、前記空気通路に設けられたエアフィルタ(53)とを有するとよい。
【0019】
この態様によれば、パリソンに近い位置で圧縮空気から異物を除去することができ、異物を確実に除去することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、仕上型が分離するときのガラスびんの傾斜を抑制することができるブローヘッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】仕上型、底型、及びブローヘッドを示す断面図
【
図4】エアフィルタを省略して示すブローヘッドの平面図
【
図6】仕上型が退避位置に移動したときのブローヘッド、ガラスびん、及び底型を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。ブローヘッドは、パリソンからガラスびんをブロー成形するときに、パリソンに圧縮空気を吹き込む装置である。ブローヘッドは、ガラス容器の成形装置の一部を構成する。成形装置は、ガラスゴブからパリソンを成形する工程と、パリソンからガラス容器を成形する工程とを実行する。
【0023】
図1に示すように、成形装置1は、基台2に回転可能に支持されたアーム3を有する。アーム3は、水平方向に延びる回転中心を有し、初期位置と、初期位置に対して180°回転した反転位置との間で回転する。アーム3の先端には、少なくとも1つの口型4が支持されている。各口型4は、上下に延びる合せ面を有する割型と、一対の割型の間に配置されるガイドリングとを有する。一対の割型及びガイドリングのそれぞれは、アーム3に支持されている。基台2には、口型4が初期位置にあるときに、ガイドリングを通過して、割型間に突入するプランジャが設けられている。
【0024】
各口型4の上方には、粗型5がそれぞれ配置されている。一対の粗型5は、上下に延びる合せ面を有し、下端部において口型4を側方から挟み込むように配置される。一対の粗型5は、合せ面にパリソンPの側部P2に対応した形状を形成する。粗型5の上端開口は、バッフル6によって開閉可能に閉じられる。
【0025】
ガラスゴブからパリソンPを成形する工程は、例えばブロー成形によって行う。最初に、バッフル6を退避させた状態で口型4及び粗型5内にゴブが投入される。次に、バッフル6が粗型5の上端を閉じ、バッフル6がいわゆるセッツルエアーである圧縮空気を噴射してゴブを口型4に押し付けてパリソンPの口部P1を形成する。このとき、口部P1の外周面には、雄ねじP4及びビードP5が形成される。ビードP5は、口部P1の外周面に対して径方向外方に突出すると共に、周方向に延びて環状をなす凸部である。
【0026】
次に、口型4の割型及びプランジャの間から口部P1の内部に圧縮空気が噴射される。これにより、ゴブが膨張し、粗型5及びバッフル6に押し付けられてパリソンPの側部P2及び底部P3が形成され、パリソンPが形成される。次にバッフル6とプランジャとが退避すると共に、一対の粗型5が互いに分離し、パリソンPが露出する。この状態で、パリソンPは口部P1において口型4に支持される。そして、アーム3が反転位置に移動することによって、パリソンPは口部P1が上端に位置するように反転し、口型4に吊るされた状態になる。他の実施形態では、パリソンPを成形するために、ブロー成形に代えて、プレス成形やナローネックプレス成形が使用されてもよい。
【0027】
基台2において、反転位置にある口型4の下方にはディストリビュータプレート10が設けられている。ディストリビュータプレート10の上面には、それぞれガラス容器Cの底部を形成するための底型12が配置される。ディストリビュータプレート10と底型12とは、互いに嵌合する係合部によって相対位置が定められている。
【0028】
図2に示すように、底型12の上面には、成形するガラス容器Cの底部の表面に対応した形状を有する底部金型面12Aが形成されている。
【0029】
底型12の上方には、一対の仕上型14がそれぞれ配置されている。一対の仕上型14のそれぞれは、上下に延びると共に互いに当接する合せ面14Aと、合せ面14Aに形成された側部金型面14Bとを有する。側部金型面14Bは、成形するガラス容器Cの側部C2の表面に対応した形状を有する(
図6参照)。各側部金型面14Bは、各仕上型14の上端面14Cに到達している。各上端面14Cは、互いに協働して平面を形成する。各仕上型14の下部には、底型12側方から挟持する挟持部14Dが形成されている。
【0030】
一対の仕上型14は、図示しない支持装置に支持され、それぞれの合せ面14Aが互いに当接した成形位置と、それぞれの合せ面14Aが互いに分離し、底型12から離れた退避位置との間で移動可能になっている。一対の仕上型14が成形位置にあるときに、底型12が各仕上型14の挟持部14Dに挟持される。これにより、一対の仕上型14と底型12の相対位置が定まる。このとき、底型12及び一対の仕上型14は、上下に延びる軸線Aに沿って配置されている。各仕上型14が成形位置にあるときに、底部金型面12Aと側部金型面14Bのそれぞれとは滑らかに接続し、成形するガラス容器Cの表面(外形)に対応した形状を形成する。
【0031】
底型12及び一対の仕上型14は、ガラス容器Cを成形する容器成形金型を構成する。側部金型面14B及び底部金型面12Aは、ガラス容器Cの表面を形成するために使用される。底型12及び一対の仕上型14は、例えば鋳鉄等の金属によって形成されている。
【0032】
一対の仕上型14が退避位置にあるときに、アーム3が反転位置に移動することによって、口型4に吊るされたパリソンPは底型12の上方に配置される。このとき、一対の仕上型14は、軸線Aを中心として互いに相反する方向に離れている。この状態で、一対の仕上型14が退避位置から成形位置に移動することによって、パリソンPは一対の仕上型14の各側部金型面14Bの間に配置される。このとき、パリソンPの口部P1は一対の仕上型14の上端面14Cから上方に突出した状態になる。口型4の割型が互いに分離すると、口型4はパリソンPを離し、パリソンPは一対の仕上型14に支持される。このとき、パリソンPのビードP5が各仕上型14の上端面14Cに係止されることによって、パリソンPの各仕上型14に対する下方への移動が規制される。口型4がパリソンPを離した後、アーム3が初期位置に移動することによって、口型4は仕上型14の上方から離脱する。
【0033】
図2~
図4に示すように、ブローヘッド20は、ヘッド本体21を有する。ヘッド本体21は、下方に向けて開口したスカート部22を下部に有する。スカート部22は、バルク状のベース部24と、ベース部24から下方に延びる円筒形の側壁部25とを有する。ベース部24は、上下に厚みを有する円板状に形成されている。ベース部24及び側壁部25は、軸線Aに沿って配置されている。ベース部24及び側壁部25は、下方に向けて開口したチャンバ26を形成する。
【0034】
ベース部24の上部には、係止凸部28が上方に向けて突設されている。係止凸部28には、ブローヘッド20を移動させるブローヘッド支持装置30が係合する。ベース部24の中央には、軸線Aに沿って上下に延びる中心孔32が形成されている。中心孔32は、ベース部24及び係止凸部28を上下に貫通している。
【0035】
図3に示すように、中心孔32は、第1孔部33、第2孔部34、及び第3孔部35を上端から順に有する。第1~第3孔部33~35は、それぞれ直径が一定の円孔であり、互いに同軸に配置されている。第2孔部34の直径は第1孔部33及び第3孔部35のそれぞれの直径より小さく形成されている。他の実施形態では、第3孔部35が省略され、第2孔部34が中心孔32の下端を形成してもよい。また、第1~第3孔部33~35のそれぞれは、径が異なる複数の部分から構成されてもよい。
【0036】
第2孔部34の内周面には、雌ねじ34Aが形成されている。第2孔部34及び第3孔部35には、上下に延び、両端が開口した円筒形のスリーブ41が挿入されている。スリーブ41は、その外周面の上端部に雄ねじ41Aを有する。スリーブ41の雄ねじ41Aは第2孔部34の雌ねじ34Aと螺合している。スリーブ41の外径は、第3孔部35の直径及び第3孔部35の直径のそれぞれよりも小さい。そのため、スリーブ41の外周面と第3孔部35の内周面との間には、隙間が形成されている。スリーブ41の下端は、中心孔32の下端から外方に突出し、チャンバ26内に位置する。
【0037】
スリーブ41の内側には、上下に延びるノズル42が挿入されている。ノズル42は、両端が開口した円筒形に形成されている。ノズル42の外周面の上端部には雄ねじ42Aが形成され、スリーブ41の内周面の上端部には雌ねじ41Bが形成されている。ノズル42の雄ねじ42Aがスリーブ41の雌ねじ41Bに螺合することによって、ノズル42はスリーブ41の内側に支持されている。また、ノズル42の上端には、上端に径方向外方に突出したフランジ42Bが設けられている。フランジ42Bがスリーブ41の上端面に当接することによって、スリーブ41に対するノズル42の位置が定まる。ノズル42の下端は、スリーブ41の下端よりも下方に延出し、スカート部22の内側、すなわちチャンバ26内に配置されている。
【0038】
スリーブ41の下端部の内周面とノズル42の外周面との間には、隙間44が形成されている。隙間44を形成するために、スリーブ41の下端部の内径はスリーブ41の他の部分の内径に対して大きく形成されているとよい。隙間44は、スリーブ41の内周面に沿って円筒形に形成されている。スリーブ41の下端部には、径方向に貫通する複数の連通孔41Cが形成されている。連通孔41Cは、隙間44とスリーブ41の外周部とを接続する。
【0039】
他の実施形態では、スリーブ41はノズル42に一体に形成されてもよい。すなわち、スリーブ41が省略され、ノズル42が第2孔部34に直接に螺合してもよい。
【0040】
ブローヘッド20は、スカート部22の内側、すなわちチャンバ26内に上下に移動可能に支持された当接部材45を有する。当接部材45は、面が上下を向く円板状に形成されている。当接部材45の外周面は、スカート部22の内周面に摺接している。当接部材45は、スカート部22の内側のチャンバ26を上室26Aと下室26Bに区画する。当接部材45の中心には、上下に貫通する貫通孔であるノズル挿通孔46が形成されている。ノズル42は、ノズル挿通孔46を通過して当接部材45の上下に延びている。ノズル挿通孔46の内径は、ノズル42の外径よりも大きく形成されており、ノズル42とノズル挿通孔46との間には隙間が形成されている。
【0041】
当接部材45は、面が上下を向く円板状のメインプレート45Aと、メインプレート45Aの上面に結合された板状のライナープレート45Bとを有する。メインプレート45Aは、熱衝撃に強い素材から形成されていることが好ましい。例えば、メインプレート45Aは、熱伝導率が高い素材から形成されていることが好ましい。本実施形態では、メインプレート45Aはカーボンによって形成されている。また、メインプレート45Aは、熱衝撃に強い構造を有することが好ましい。他の実施形態では、メインプレート45Aは金属から形成され、下面がローレット加工されているとよい。
【0042】
図3及び
図5に示すように、本実施形態では、当接部材45は、メインプレート45Aの下面の外周部に設けられ、ワッシャ45Cを有する。ワッシャ45Cは、例えば金属から形成されているとよい。ワッシャ45Cは、メインプレート45Aの外周に沿って環状に形成されている。メインプレート45Aの下面の外周部には、ワッシャ45Cを受容するための受容溝45Dが形成されているとよい。
【0043】
図3に示すように、スカート部22を形成する側壁部25の内周面には、周方向に延びる環状のリング溝48が形成されている。リング溝48には、スナップリング49が着脱可能に装着されている。スナップリング49は、C字形に形成され、径方向内方に弾性変形することができる。スナップリング49の外周部はリング溝48内に突入し、スナップリング49の内周部は側壁部25の内周面に対して径方向内方に突出している。スナップリング49の内周部の上面が当接部材45の外周部の下面に当接することによって、当接部材45の下方への移動が規制される。当接部材45は、下面においてスナップリング49に当接する下限位置と、上面においてスリーブ41の下端に当接する上限位置との間で上下に移動することができる。当接部材45の上下へのストローク長は、例えば1mm以上10mm以下であるとよい。
【0044】
図3及び
図5に示すように、当接部材45は、その下面にノズル挿通孔46から径方向外方に延びる少なくとも1つの溝45Eを有する。溝45Eは、例えば軸線Aを中心として90°間隔で配置されているとよい。また、他の実施形態では、当接部材45には、上下に貫通する複数の連通孔(不図示)が形成されてもよい。
【0045】
図3に示すように、スカート部22と当接部材45との間には、スカート部22に対して当接部材45を下方に付勢する付勢部材51が設けられている。付勢部材51は、当接部材45の上面とスカート部22の内面との間に介装されたばねであるとよい。本実施形態では、付勢部材51は、圧縮コイルばねである。付勢部材51は、耐熱性合金から形成された圧縮コイルばねであることが好ましい。付勢部材51である圧縮コイルばねは、軸線Aに沿ってスリーブ41の外周に配置され、上端が第2孔部34と第3孔部35との境界に設けられた下方を向く肩面35Aに当接し、下端が当接部材45の上面に当接している。
【0046】
中心孔32の第1孔部33の上端部には、エアフィルタ53が挿入されている。エアフィルタ53は、空気が通過可能なメッシュや多孔質部材から形成され、通過する空気から異物を取り除く。本実施形態では、第1孔部33の上端部が下端部に対して径が大きく形成され、エアフィルタ53は第1孔部33の上端部に嵌め込まれている。
【0047】
ブローヘッド20の上端部がブローヘッド支持装置30に結合され、第1孔部33の上端部がブローヘッド支持装置30に形成された圧縮空気供給通路30Aに接続される。圧縮空気供給通路30Aは、制御弁を介してコンプレッサ等の圧縮空気の供給源に接続されている。
【0048】
スカート部22のベース部24には、スカート部22の外周面から第2孔部34の内周面に径方向に延びるねじ孔55が形成されている。ねじ孔55には、回り止めねじ56が挿入されている。回り止めねじ56の先端は、第2孔部34内に突入し、スリーブ41の外周面に当接している。これにより、スリーブ41のヘッド本体21に対する回転が規制される。
【0049】
図3に示すように、スカート部22のベース部24及び側壁部25には、第1孔部33と下室26Bとを接続する第1空気通路57が形成されている。第1空気通路57は、側壁部25の内周面において、リング溝48より下側の部分に開口している。また、スカート部22のベース部24及び側壁部25には、上室26Aと、第1孔部33とを接続する第2空気通路58が形成されている。本実施形態では、第2空気通路58は第3孔部35を介して上室26Aに接続している。
【0050】
ブローヘッド支持装置30は、ブローヘッド20を退避位置と使用位置との間で移動させる。ブローヘッド20が退避位置にあるとき、仕上型14及び底型12へのパリソンPの配置、及び仕上型14及び底型12から成形したガラスびんの取り出しが可能になる。
【0051】
パリソンPが仕上型14及び底型12に配置されたときに、ブローヘッド20は使用位置に移動する。ブローヘッド20は、使用位置において、軸線A上に配置され、各仕上型14の上端面14C上に配置される。このとき、スカート部22の側壁部25の下端面が各仕上型14の上端面14Cに当接し、スカート部22がパリソンPの口部P1を覆う。このとき、パリソンPの口部P1の開口端面である上端面は、当接部材45の下面に当接し、付勢部材51の付勢力に抗して当接部材45を上方に押し上げる。これにより、パリソンPはビードP5において仕上型14の上端面14Cに支持され、口部P1の上端面において当接部材45によって下方に押される。すなわち、パリソンPは仕上型14と当接部材45とによって上下方向に挟持される。
【0052】
ブローヘッド20が使用位置にあるときに、圧縮空気供給通路30Aを介して圧縮空気供給源から圧縮空気がブローヘッド20の第1孔部33に供給される。圧縮空気は、第1孔部33においてエアフィルタ53を通過し、異物が除去される。その後、圧縮空気は、ノズル42を通過して、パリソンPの口部P1の内側に供給される。これにより、パリソンPは、各仕上型14の側部金型面14B及び底型12の底部金型面12Aに沿うように膨張し、ガラスびんCに成形される。このとき、第1孔部33に供給された圧縮空気の一部は、第1空気通路57を通過して下室26Bに供給される。下室26Bに供給された圧縮空気の一部は、スカート部22の側壁部25の下端面と各仕上型14の上端面14Cとの当接部に形成された微小な隙間を通過して、スカート部の外部に排出される。また、ガラスびんC内に供給された圧縮空気の一部は、当接部材45の下面の溝45Eを通過して下室26Bに流れる。また、ガラスびんC内に供給された圧縮空気の一部は、ノズル挿通孔46とノズル42との隙間を通過し、スリーブ41の下端面と当接部材45の上面との間を通過して上室26Aに流れる。スリーブ41の下端面と当接部材45の上面とが接触している場合には、ノズル挿通孔46とノズル42との隙間に流れた圧縮空気は、隙間44及び連通孔41Cを通過して上室26Aに流れる。これらにより、圧縮空気がブローヘッド20に供給されているときにも、上室26Aと下室26Bとの圧力は概ね等しくなる。また、ガラスびんC内の圧力と上室26Aの圧力とは概ね等しくなる。これらにより、当接部材45が圧縮空気から受ける上向きの力を低減することができる。その結果、付勢部材51が発生するべき付勢力を小さくすることができる。また、下室26Bに圧縮空気が供給されることによって、ガラスびんCの口部C1の外周部が冷却される。
【0053】
ガラスびんCが成形された後、ブローヘッド20が使用位置に維持された状態で、各仕上型14が退避位置に移動する。このとき、付勢部材51に下向きに付勢された当接部材45はガラスびんCの口部C1の上端面を下方に押す。これにより、
図6に示すように、ガラスびんCは底型12と当接部材45との間で挟持される。そのため、ガラスびんCは、各仕上型14との間に生じる摩擦力によって横向きの力を受けても、傾斜することなく直立姿勢を維持することができる。これにより、ガラスびんCと仕上型14又は底型12との干渉が避けられ、ガラスびんCに疵が生じることを抑制することができる。
【0054】
当接部材45は、スナップリング49によってスカート部22に支持されている。スナップリング49は、着脱が可能であるため、当接部材45の交換等のメンテナンスが容易である。また、スナップリング49を使用したことによって、当接部材45の支持構造を簡素にすることができる。
【0055】
当接部材45は、カーボンで形成されたメインプレート45AにおいてパリソンP及びガラスびんCの口部P1、C1に当接する。カーボンは、熱衝撃に対して比較的耐性が高いため、メインプレート45Aは口部P1、C1から断続的に受ける熱によって破損し難くなる。また、ワッシャ45Cを設けたことによって、メインプレート45Aとスナップリング49との接触を避けることができ、メインプレート45Aの剥離を抑制することができる。
【0056】
ブローヘッド20は、ガラスびんCの成形時において口部C1の上方への移動を抑制することができる。これにより、成形されたガラスびんCの高さ寸法のばらつきや口部C1の傾斜を抑制することができる。
【0057】
ヘッド本体21にエアフィルタ53が設けられているため、エアフィルタ53とパリソンP(ガラスびんC)との距離を短くすることができる。これにより、エアフィルタ53を通過した後の圧縮空気に異物が混入しにくくなり、パリソンP(ガラスびんC)が異物に曝されることを確実に防止することができる。
【0058】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、付勢部材51は、板ばね等の他のばねであってもよい。また、ばね等の付勢部材51に代えて、エアシリンダが当接部材45を下方に付勢してもよい。また、当接部材45の上側に圧力室が形成され、圧力室に圧縮空気が供給されることによって当接部材45が下方に付勢されてもよい。
【0059】
1 :成形装置
12 :底型
14 :仕上型
14A :合せ面
14C :上端面
20 :ブローヘッド
21 :ヘッド本体
22 :スカート部
24 :ベース部
25 :側壁部
26 :チャンバ
26A :上室
26B :下室
41 :スリーブ
42 :ノズル
45 :当接部材
45A :メインプレート
45B :ライナープレート
45C :ワッシャ
45E :溝
46 :ノズル挿通孔
48 :リング溝
49 :スナップリング
51 :付勢部材
53 :エアフィルタ
57 :第1空気通路
58 :第2空気通路
A :軸線
C :ガラス容器
P :パリソン
P1、C1 :口部