(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
C11D 3/386 20060101AFI20220425BHJP
C11D 1/14 20060101ALI20220425BHJP
C11D 1/22 20060101ALI20220425BHJP
C11D 1/29 20060101ALI20220425BHJP
C11D 1/74 20060101ALI20220425BHJP
C11D 1/75 20060101ALI20220425BHJP
C11D 1/72 20060101ALI20220425BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220425BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20220425BHJP
C11D 3/04 20060101ALI20220425BHJP
C11D 3/33 20060101ALI20220425BHJP
C12P 1/00 20060101ALN20220425BHJP
C12N 9/20 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
C11D3/386
C11D1/14
C11D1/22
C11D1/29
C11D1/74
C11D1/75
C11D1/72
C11D3/20
C11D3/30
C11D3/04
C11D3/33
C12P1/00 A
C12N9/20
(21)【出願番号】P 2020157959
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】500447978
【氏名又は名称】台灣中油股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】蔡昌廷
(72)【発明者】
【氏名】陳勁中
(72)【発明者】
【氏名】曽怡静
(72)【発明者】
【氏名】鄭新耀
(72)【発明者】
【氏名】蔡承佳
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080851(JP,A)
【文献】特表2015-525248(JP,A)
【文献】国際公開第02/101033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
C12N 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄剤組成物であって、米糠酵素粗抽出物と、界面活性剤と、防腐剤を含み、そのうち、該米糠酵素粗抽出物が、
米糠と、蒸留水とTriton X-100を含む酵素抽出液を提供する工程と、
該米糠と該酵素抽出液を1:8~1:2の割合で混合し、攪拌及び遠心分離して米糠リパーゼ酵素抽出液を得る工程と、
該米糠リパーゼ酵素抽出液中の硫酸アンモニウム濃度が40wt%~60wt%に達するまで、硫酸アンモニウムを該米糠リパーゼ酵素抽出液に徐々に添加し、継続的に撹拌して米糠リパーゼ酵素溶液を得る工程と、
該米糠リパーゼ酵素溶液にアルコール水溶液を20wt%~50wt%添加し、攪拌して静置した後、遠心分離または重力沈降により、該米糠酵素粗抽出物を得る工程により製造され、
そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.4wt%~20wt%の間であ
り、
該洗浄剤組成物がさらに安定剤を含み、
該安定剤が、2.5wt%のプロピレングリコール、2.5wt%のクエン酸ナトリウム、0.1wt%の塩化カルシウム二水和物、1.5wt%のグリシン、及び2.5wt%のグリセリンを含み、
該洗浄剤組成物の総重量に対して、該界面活性剤の含有量範囲は4wt%~15wt%の間であり、
該洗浄剤組成物の総重量に対して、該防腐剤の含有量範囲は0.2wt%~0.6wt%の間である、ことを特徴とする、洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記酵素抽出液の総重量に対して、Triton X-100の含有量範囲は0.01wt%~1wt%の間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.5wt%~15wt%の間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が5wt%~10wt%の間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.5wt%~2wt%の間である、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecyl benzene sulfonate)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(sodium α-olefin sulfonate)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルジメチルアミンオキシド(lauryl dimethyl amine oxide)、脂肪アルコールエトキシレート(fatty alcohol ethoxylates)で構成される群より選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記防腐剤が、メチルパラベン(methylparaben)、フェノキシエタノール(phenoxyethanol)、安息香酸(benzoic acid)、安息香酸ナトリウム(sodium benozte)で構成される群より選択される、ことを特徴とする、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物と、被洗浄衣類を接触させる工程を含む、ことを特徴とする、洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関し、特に、米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物に関する。このほか、本発明は該洗浄剤組成物を使用した洗浄方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
現有技術において、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどの工業用酵素は、食品、飼料、製紙、紡織、洗浄剤、ヘルスケア製品、バイオマスエネルギー等の産業で広く使用されている。洗浄剤における酵素の応用は、最初に1913年ドイツのRohm社が豚の膵臓から抽出したトリプシンをBumus洗浄剤に添加し、ヒトのタンパク質汚れや食品のタンパク質汚れを分解するためにプロテアーゼを使用した。しかしながら、トリプシンはアルカリ性環境下で活性を失うため、デンマークのNovo Nordisk社とオランダのGist-Brocade社はそれぞれBacillus licheniformisni由来する耐アルカリ性セリンプロテアーゼ(alkaline serine protease)を洗浄剤に添加して、製品名AlcalseとMaxataseという洗浄剤をそれぞれ開発し、アルカリ性条件下でも高い洗浄力を発揮できるようにした。
【0003】
その後、1970年代に入ると、ヨーロッパの洗剤開発者は洗濯用粉末洗剤の処方にアミラーゼを添加することを試み、アミラーゼが澱粉質の汚れに含まれるα-1,4グルコシド結合を加水分解する特性と、水中の鉄イオン及び澱粉質の汚れに混ざったその他の汚れに対して具備する再沈殿防止作用を利用して、チョコレートなどの食品残渣によって衣類に形成されたシミの除去に役立てようとした。しかしながら、アミラーゼの活性はpH6~7が最も高く、かつ最適な温度は75℃~85℃であるため、アミラーゼは高温洗浄に適用できるのみであり、低温洗浄環境には適さない。
【0004】
低温環境下ではアミラーゼで衣類を洗浄できないという問題を解決するために、1987年、日本のライオン社は洗濯用粉末洗剤にリパーゼを添加した。リパーゼは襟や袖口の皮脂汚れや食品汚れの脂質汚れをグリセリンと脂肪酸に分解し、皮脂汚れや脂質汚れを界面活性剤で乳化させて、容易に除去できるようにした。しかしながら、リパーゼは油と水の界面で作用するため、洗浄効果を得るためには繰り返し洗う必要があり、1回の洗浄でリパーゼの汚れを落とす効果を発揮させることは困難である。
【0005】
また、大量の水分を含む液体洗浄剤において、極性溶媒や荷電した界面活性剤は、酵素の三次構造を破壊し、タンパク質の変性を引き起こして、酵素の分解や不活性化を招く。
【0006】
米糠は玄米を白米に精米する加工過程における産物で、玄米の総重量の約8%~10%を占めており、台湾の米の年間生産量約150万~170万トンで計算すると、玄米を完全に白米に精米した場合、約12万~15万トンの米糠を生産することができる。しかしながら、米糠は経済的価値が非常に低い副産物であるため、農業廃棄物として廃棄されることが多い。
【0007】
このため、農業廃棄物とされる米糠をいかに利用し、常温での洗浄力が強く、高温耐性、有機溶剤耐性に優れた、安定した酵素洗浄剤組成物を開発するかが、この分野で解決が待たれる課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、農業廃棄物とされる米糠を有効利用し、米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的及びその他目的を達成するため、本発明の洗浄剤組成物は、米糠酵素粗抽出物と、界面活性剤と、防腐剤を含み、そのうち、該米糠酵素粗抽出物が、 米糠と、蒸留水とTriton X-100を含む酵素抽出液を提供する工程と、
該米糠と該酵素抽出液を1:8~1:2の割合で混合し、攪拌及び遠心分離して米糠リパーゼ酵素抽出液を得る工程と、
該米糠リパーゼ酵素抽出液中の硫酸アンモニウム濃度が40wt%~60wt%に達するまで、硫酸アンモニウムを該米糠リパーゼ酵素抽出液に徐々に添加し、継続的に撹拌して米糠リパーゼ酵素溶液を得る工程と、
該米糠リパーゼ酵素溶液にアルコール水溶液を20wt%~50wt%添加し、攪拌して静置した後、遠心分離または重力沈降により、該米糠酵素粗抽出物を得る工程により製造され、
そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.4wt%~20wt%の間である。
【0010】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該酵素抽出液の総重量に対して、Triton X-100の含有量範囲は0.01wt%~1wt%の間とすることができる。
【0011】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲は0.5wt%~15wt%の間とすることができる。
【0012】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲は5wt%~10wt%の間とすることができる。
【0013】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲は0.5wt%~2wt%の間とすることができる。
【0014】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecyl benzene sulfonate)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(sodium α-olefin sulfonate)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルジメチルアミンオキシド(lauryl dimethyl amine oxide)、脂肪アルコールエトキシレート(fatty alcohol ethoxylates)で構成される群より選択することができる。
【0015】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該界面活性剤の含有量範囲は4wt%~15wt%の間とすることができる。
【0016】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該防腐剤は、メチルパラベン(methylparaben)、フェノキシエタノール(phenoxyethanol)、安息香酸(benzoic acid)、安息香酸ナトリウム(sodium benozte)で構成される群より選択することができる。
【0017】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該防腐剤の含有量範囲は0.2wt%~0.6wt%の間とすることができる。
【0018】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物はさらに安定剤を含有することができる。
【0019】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該安定剤は、トリエタノールアミン、ソルビトール、プロピレングリコール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩化カルシウム二水和物、グリシン、グリセリンを含むことができる。
【0020】
上述の洗浄剤組成物において、そのうち、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該プロピレングリコールの含有量範囲は1.5wt%~6wt%の間、該クエン酸の含有量範囲は0.01wt%~6wt%の間、該クエン酸ナトリウムの含有量範囲は0.1wt%~6wt%の間、該塩化カルシウム二水和物の含有量範囲は0.05wt%~0.5wt%の間、該グリシンの含有量範囲は0.5wt%~4wt%の間、該グリセリンの含有量範囲は1.5wt%~6wt%の間とすることができる。
【0021】
上述の目的及びその他目的を達成するため、本発明はさらに、上述の洗浄剤組成物を被洗浄衣類と接触させる工程を含む、洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の洗浄剤組成物で衣類を洗浄し、達成される衣類洗浄百分率は市販の妙管家襟汚れ用洗剤(中国語名:妙管家衣領精)及び毛宝酵素襟汚れ用洗剤(中国語名:毛寶酵素衣領精)より明らかに優れている。
【0023】
本発明の具体的な実施例で、米糠酵素粗抽出物を0.5%、1%、2%、5%または10%含有する洗浄剤組成物は、例えばマジックペンや口紅などの油性汚れ、マスタードなどのソース汚れ、インク等のドライクリーニング溶剤に不溶性の汚れが付着した、白いタオル、白い綿麻混紡布製の汚染布、または市販の標準汚染布に対し、汚染布を揉まない状況下で、いずれも市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤より優れた洗浄能力を提供できることが証明されている。
【0024】
また、本発明のその他具体的な実施例においても、本発明が提供する安定剤処方を含む洗浄剤組成物は、米糠酵素粗抽出物に高温耐性と有機溶剤耐性の安定性を具備させる効果を有することが証明されている。このため、本発明は米糠から米糠酵素粗抽出物を獲得し、かつ市販の妙管家襟汚れ用洗剤及び毛宝酵素襟汚れ用洗剤の洗浄能力より優れた洗浄剤組成物を製造することができ、現有技術における酵素洗浄剤が常温下で強力な洗浄力、高温耐性と有機溶剤耐性の安定性を提供できないという問題点を解決することができる。このほか、米糠は農業廃棄物として扱われることが多いため、本発明は農業廃棄物のリサイクルに成功し、資源の持続的利用、省エネルギー、二酸化炭素削減という目的を同時に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の比較例A及び実施例A-1の洗浄剤組成物、市販の妙管家襟汚れ用洗剤、米糠酵素粗抽出物粉末1%を添加した妙管家襟汚れ用洗剤及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白タオル上の口紅、マスタードまたはインク等の汚れに対する洗浄効果を示す表である。
【
図2】本発明の比較例B、実施例B-1及び実施例B-2の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上のマジックペンまたはインク等の汚れに対する洗浄効果を示す表である。
【
図3】本発明の比較例B及び実施例B-2の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、市販のJB-02タンパク汚染布またはJB-03皮脂汚染布等標準汚染布に対する洗浄効果を示す表である。
【
図4】本発明の比較例B、実施例B-3及び実施例B-4の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅またはインク等の汚れに対する、水洗い後の洗浄効果を示す表である。
【
図5】本発明の比較例B、実施例B-3の洗浄剤組成物、市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び米糠酵素粗抽出物粉末0.5%を添加した毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅またはインク等の汚れに対する、水洗いを経た後の洗浄効果を示す表である。
【
図6】本発明の比較例B、実施例B-4及び実施例B-5の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅またはインク等の汚れに対する、水洗い後の洗浄効果を示す表である。
【
図7】本発明の比較例Bと実施例B-4の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅またはインク等の汚れに対する、See Clean洗濯用洗剤(中国語名:洗可麗洗衣精)で洗浄した後の洗浄効果を示す表である。
【
図8】本発明の比較例B、実施例B-4及び実施例B-5の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅汚れに対する、See Clean洗濯用洗剤で洗浄した後の洗浄効果を示す表である。
【
図9】本発明の比較例C、実施例C-1、実施例C-2及び実施例C-3の洗浄剤組成物、市販のSee Clean洗濯用洗剤、米糠酵素粗抽出物2%を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤または市販のPersil洗濯用洗剤の、白い綿麻混紡布上の口紅またはインク等の汚れに対する洗浄効果を示す表である。
【
図10】本発明の比較例C、実施例C-2、実施例C-3及び実施例C-4の洗浄剤組成物、市販のSee Clean洗濯用洗剤、米糠酵素粗抽出物3%を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤または市販のPersil洗濯用洗剤の、白い綿麻混紡布上のマジックペンまたはインク等の汚れに対する洗浄効果を示す表である。
【
図11】本発明の比較例Bの洗浄剤組成物と安定剤処方D1を混合した後、4℃及び45℃で1~6週間静置した後に測定した酵素活性を示すグラフである。
【
図12】本発明の比較例Bの洗浄剤組成物と異なる安定剤処方を混合した後、45℃で1週間静置した後に観察した層分離現象を示す表である。
【
図13】本発明の比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤で白い綿麻混紡布上のマジックペン、口紅またはインク等の汚れを5分間処理してから、水洗いした後の洗浄効果を示す表である。
【
図14】本発明の比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤で白い綿麻混紡布上のマジックペン、口紅またはインク等の汚れを5分間処理してから、See Clean洗濯用洗剤で洗浄した後の洗浄効果を示す表である。
【
図15】本発明の比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤で白い綿麻混紡布上のマジックペン、口紅またはインク等の汚れを20分間処理してから、水洗いした後の洗浄効果を示す表である。
【
図16】本発明の比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤で白い綿麻混紡布上のマジックペン、口紅またはインク等の汚れを20分間処理してから、See Clean洗濯用洗剤で洗浄した後の洗浄効果を示す表である。
【
図17】F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して45
oCで1週間及び13週間放置した後のリパーゼ活性を示すグラフである。
【
図18】F襟汚れ用洗剤配合に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して45
oCで3週間、5週間及び13週間放置した後のリパーゼ活性を示すグラフである。
【
図19】F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して45
oCで1週間及び49週間放置した後のリパーゼ活性を示すグラフである。
【
図20】F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して25
oCで1週間及び49週間放置した後のリパーゼ活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、特定の具体的な実施例を挙げて本発明の実施方法を説明する。この技術分野を熟知した者であれば本明細書に開示された内容から本発明のその他利点と効果を理解できるであろう。本発明はその他の異なる具体的な実施例により施行または応用することもでき、本明細書中の各細部も異なる観点と応用に基づいて、本発明の要旨を逸脱することなく、各種の修飾及び変更が可能である。
【0027】
文中に別途説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される単数形式の「一」及び「該」は複数の含意を含む。
【0028】
文中に別途説明がない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「または」は、「及び/または」の含意を含む。
【0029】
本発明で使用するTriton X-100は、非イオン性界面活性剤であり、そのIUPAC名称は2-[4-(2,4,4-trimethylpentan-2-yl)phenoxy]ethanol(2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノール)で、化学式はC14H22O(C2H4O)nである。
【0030】
本発明が提供する米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物は、そのうち、該米糠酵素粗抽出物が、米糠、酵素抽出液の異なる割合に基づいて、米糠を酵素抽出液中に添加し、30~60分間撹拌した後、遠心分離して米糠リパーゼ酵素抽出液を得ることができ、そのうち、該米糠、酵素抽出液の割合が1:8~1:2の間であり、かつ該酵素抽出液が蒸留水とTriton X-100(該酵素抽出液の総重量に対して、Triton X-100の含有量範囲は0.01wt%~1wt%の間)を含む、工程により製造される。該米糠リパーゼ精製の第1段階は、該米糠リパーゼ酵素抽出液中の硫酸アンモニウム濃度が40wt%~60wt%に達するまで、硫酸アンモニウムを該米糠リパーゼ酵素抽出液に徐々に添加し、継続的に30~60分間撹拌して、米糠リパーゼ精製の第1段階が完了した米糠リパーゼ酵素溶液を得る工程を含む。該米糠リパーゼ精製の第2段階は、得られた米糠リパーゼ酵素溶液をアルコール水溶液に添加して30~60分間撹拌し、10分間静置した後、遠心分離または重力沈降させて、米糠リパーゼ精製の第2段階が完了した米糠リパーゼ精製酵素沈澱が得られ、そのうち、該アルコールの濃度が20wt%~50wt%の間であり、該米糠酵素粗抽出物を得る工程を含む。該洗浄剤組成物の総重量に対して、そのうち、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.4wt%~20wt%の間である。具体的な一実施例において、米糠酵素粗抽出物が、リパーゼ、エステラーゼを含む。
【0031】
具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の最低含有量は、0.4wt%、0.5wt%、1wt%、1.2wt%、1.5wt%、1.8wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、4wt%、5wt%、8wt%または10wt%であり、該米糠酵素粗抽出物の最高含有量は、20wt%、18wt%、16wt%、15wt%、14wt%、12wt%または10wt%である。
【0032】
具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、そのうち、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.5wt%~15wt%の間である。別の具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が1wt%~12wt%の間である。別の具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が2wt%~10wt%の間である。別の具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が5wt%~8wt%の間である。さらに別の具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、該米糠酵素粗抽出物の含有量範囲が0.5wt%~2wt%の間である。
【0033】
具体的な一実施例において、洗浄剤組成物がさらに、界面活性剤と、防腐剤を含み、そのうち、界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecyl benzene sulfonate)、ラウレス硫酸ナトリウム(sodium laureth sulfate)、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム(sodium α-olefin sulfonate)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ラウリルジメチルアミンオキシド(lauryl dimethyl amine oxide)、脂肪アルコールエトキシレート(fatty alcohol ethoxylates)またはその組み合わせを含むが、これらに限定されず、防腐剤が、メチルパラベン(methylparaben)、フェノキシエタノール(phenoxyethanol)、安息香酸(benzoic acid)、安息香酸ナトリウム(sodium benozte)またはその組み合わせを含むが、これらに限定されない。具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、界面活性剤の含有量範囲が4wt%~15wt%の間であり、かつ防腐剤の含有量範囲が0.2wt%~0.6wt%の間である。
【0034】
具体的な一実施例において、洗浄剤組成物がさらに安定剤を含み、そのうち、安定剤が、トリエタノールアミン、ソルビトール、プロピレングリコール、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩化カルシウム二水和物、グリシン、グリセリンを含む。具体的な一実施例において、該洗浄剤組成物の総重量に対して、プロピレングリコールの含有量範囲が1.5wt%~6wt%の間、該クエン酸の含有量範囲が0.01wt%~6wt%の間、該クエン酸ナトリウムの含有量範囲が0.1wt%~6wt%の間、該塩化カルシウム二水和物の含有量範囲が0.05wt%~0.5wt%の間、該グリシンの含有量範囲が0.5wt%~4wt%の間、該グリセリンの含有量範囲が1.5wt%~6wt%の間である。
【0035】
具体的な一実施例において、洗浄剤組成物が液体である。具体的な一実施例において、洗浄剤組成物が洗濯用洗剤または襟汚れ用洗剤である。
【0036】
(調製例1)米糠酵素粗抽出物の調製
【0037】
本調製例の米糠酵素粗抽出物の抽出方法は、次を含む。
【0038】
米糠と酵素抽出液を1:4の割合で混合し、60分間撹拌した後、連続型遠心分離機で分離し、米糠リパーゼ酵素抽出液を得る。そのうち、該酵素抽出液が99.9wt%の蒸留水と0.1wt%のTriton X-100で構成される。その後、該米糠リパーゼ酵素抽出液中の硫酸アンモニウム濃度が60wt%に達するまで、硫酸アンモニウムを該米糠リパーゼ酵素抽出液に徐々に添加し、60分間撹拌して米糠リパーゼ酵素溶液を得る。最後に、50wt%のアルコール水溶液を米糠リパーゼ酵素溶液に加え、60分間撹拌して10分間静置した後、重力沈降させ、最後に沈澱物を冷凍乾燥して米糠酵素粗抽出物の粉末を得る。
【0039】
(調製例2)洗浄剤組成物の調製
調製例1で得た米糠酵素粗抽出物の粉末を、界面活性剤、防腐剤、水と混合し、本発明の洗浄剤組成物を調製する。本発明の洗浄剤組成物の実施例は、下の表1と表2に示すとおりであり、そのうち、表1の洗浄剤組成物は襟汚れ用洗剤として用いることができ、表2の洗浄剤組成物は洗濯用洗剤として用いることができる。このほか、表1と表2では米糠酵素粗抽出物の粉末を含有しない比較例も対照として提供している。
【0040】
【0041】
【0042】
(調製例3)米糠酵素粗抽出物の安定剤の調製
【0043】
異なる重量パーセントのプロピレングリコール、クエン酸ナトリウム、塩化カルシウム二水和物、グリシン、グリセリンを混合し、洗浄剤組成物の安定剤処方を調製する。得られた安定剤処方を下の表3に示す。
【0044】
【0045】
(調製例4)自家汚染布の作製
【0046】
8cm×5cmの白いタオルまたは白い綿麻混紡布に口紅(一筋描き、1回繰り返す)、200μLのマスタードまたは100μLのインク等の汚れをそれぞれ付着させ、1時間静置する。
【0047】
(試験方法1)汚れ洗浄効果の数値化分析
【0048】
Canon EOS 60Dカメラに3方向の発光ダイオード(LED)光源を組み合わせた撮影ボックスで撮影を行う。ボックスの3つの光源を最大にしたうえで洗浄力テストサンプルを入れ、感光度ISO 100、絞り8.0、シャッタースピード1/200秒の条件で撮影を行う。その後、画像調整ソフトウェア(Photoshop)を使用してテストサンプルの汚れの洗浄前後の画像を分析した。各サンプルの白い区域(明度値が最高)と汚れた区域(明度値が最低)をそれぞれ分析し、白い区域と汚れた区域の明度値を相互に減算して、相対明度値を得る。洗浄効果は汚れの洗浄百分率で表す。汚れの洗浄百分率は以下の公式で得られる。
【数1】
【0049】
(試験方法2)米糠酵素粗抽出物の酵素活性分析
【0050】
18.45mlの1MのK2HPO4と11.55mlの1MのKH2PO4を混合し、脱イオン水を総体積が300mlになるまで加え、0.1Mリン酸カリウム緩衝溶液(pH7)を調製する。40mgのパルミチン酸p-ニトロフェニル(para-nitrophenyl palmitate、p-NPP)を12mlのイソプロピルアルコールに溶解し、8.8mMのp-NPP溶液(即ち、溶液A)を得て、光を避けて-30℃で保存する。0.8889gのTriton X-100と0.2222gのアラビアガム(gum arabic)を200mlの0.1Mリン酸カリウム緩衝溶液に混合し、溶液Bを得る。0.2mlの溶液Aと3mlの溶液Bを混合した後、振盪させ、かつ均一になるまで徹底的に混合し、p-NPP基質溶液を得る。
【0051】
適切な希釈を経た被測定サンプル0.1mlと、p-NPP基質溶液3.2mlを混合し、35℃の水浴中で20分間振盪させた後、5分間沸騰水浴させ、酵素反応を中止させる。6000rpmの回転速度で10分間遠心分離し、上清液を取ってOD400の吸光値を測定する。
【0052】
(試験例1)洗浄剤組成物の洗浄能力試験
【0053】
試験例1は、米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物の洗浄能力を試験するため、汚れ洗浄効果の数値化分析試験を利用して、襟汚れ用洗剤の比較例A及び実施例A-1の洗浄剤組成物の口紅、マスタードまたはインク等の汚れが付着した白いタオル(自家汚染布)に対する洗浄能力を試験する。かつ市販の妙管家襟汚れ用洗剤と毛宝酵素襟汚れ用洗剤での洗浄をポジティブコントロール、水での洗浄をネガティブコントロールとする。本試験例の洗浄方法は手もみ洗いで、各汚染布を二つ折りにし、同一人が手で10回もみ洗いした後、汚染布を開いて90度旋回させ、二つ折りにして再度10回もみ洗いし、室温下で20分間静置する。900mlの水を入れたビーカー中に各汚染布を浸し、撹拌機を利用して240rpmの回転速度で15分間撹拌した後、汚水を捨てて900mlの水に交換し、再び240rpmの回転速度で15分間撹拌して、洗濯機での洗浄の流れを模擬する。最後に汚水を捨てて少量の水で汚染布を濯いだ後、汚染布を開いて干し、写真を撮って記録する。結果は
図1及び表4に示すように、グループ1と2及びグループ3と4を比較した結果、1%の米糠酵素粗抽出物が比較例Aの洗浄剤組成物及び妙管家襟汚れ用洗剤の汚れに対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ2~5の比較結果によると、実施例A-1の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の妙管家襟汚れ用洗剤、1%米糠酵素粗抽出物粉末を添加した妙管家襟汚れ用洗剤及び市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤の洗浄能力より明らかに優れていることが示された。本試験例の結果は、1%米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物が白いタオルの自家汚染布に対して市販の妙管家襟汚れ用洗剤及び毛宝酵素襟汚れ用洗剤より優れた洗浄能力を提供することを実証している。
【0054】
【0055】
(試験例2)
【0056】
試験例2は5%または10%等異なる濃度の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物の洗浄能力を試験するため、汚れ洗浄効果の数値化分析試験を利用して、襟汚れ用洗剤の比較例B、実施例B-1及び実施例B-2の洗浄剤組成物のマジックペンやインク等の汚れが付着した白い綿麻混紡布(自家汚染布)、または中国山西省太原市の中国日用化学工業研究院から購入したJB-02タンパク汚染布またはJB-03皮脂汚染布等の標準汚染布に対する洗浄能力を試験する。かつ市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤での洗浄をポジティブコントロール、水での洗浄をネガティブコントロールとする。本試験例の洗浄方法は、洗浄試験機ターゴトメーター(Terg-o-Tometer)で洗浄を行う。洗浄試験機のガラスカップ内に1000mlの水を入れ、各汚染布をそれぞれ水中に入れて、200rpmの正回転及び逆回転で15分間撹拌し、汚水を捨てて1000mlの水に交換した後、再び200rpmの正回転及び逆回転で15分間撹拌し、洗濯機での洗浄の流れを模擬する。最後に汚水を捨てて少量の水で汚染布を濯いだ後、汚染布を開いて干し、写真を撮って記録する。結果は
図2及び表5に示すように、グループ6~8を比較した結果、5%及び10%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ7~10の比較結果によると、実施例B-1及び実施例B-2の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より優れていることが示された。
【0057】
【0058】
また、
図3及び表6に示すように、グループ11~12を比較した結果、10%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の標準汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ12~14の比較結果によると、実施例B-2の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より優れていることが示された。本試験例の結果は、5%または10%米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物が、白い綿麻混紡布の自家汚染布または市販の標準汚染布に対して、汚染布を揉む必要がない状況下で、市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤より優れた洗浄能力を提供することを実証している。
【0059】
【0060】
(試験例3)
【0061】
試験例3は0.5%、1%または2%等異なる濃度の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物の洗浄能力を試験するため、汚れ洗浄効果の数値化分析試験を利用して、比較例B、実施例B-3、実施例B-4、実施例B-5の洗浄剤組成物の口紅やインク等の汚れが付着した白い綿麻混紡布の自家汚染布に対する洗浄能力を試験する。本実施例の洗浄方法は、洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて20分間静置した後、洗浄試験機内に入れ、水による水洗いを行う、またはSee Clean洗濯用洗剤を加えて洗浄する。
【0062】
水による水洗いの結果は
図4及び表7に示すように、グループ15~17を比較した結果、0.5%及び1%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ16~19の比較結果によると、実施例B-3及び実施例B-4の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より明らかに優れていることが示された。
【0063】
【0064】
また、
図5及び表8に示すように、グループ20~24の比較結果によると、実施例B-3の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤、0.5%米糠酵素粗抽出物を添加した市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水より明らかに優れていることが示された。
【0065】
【0066】
また、
図6及び表9に示すように、グループ25~27を比較した結果、1%及び2%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ26~28の比較結果によると、実施例B-4及び実施例B-5の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水より明らかに優れていることが示された。
【0067】
【0068】
See Clean洗濯用洗剤で洗浄した結果は
図7及び表9に示すように、グループ30と31を比較した結果、1%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ31~33の比較結果によると、実施例B-4の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より明らかに優れていることが示された。
【0069】
【0070】
また、
図8及び表11に示すように、グループ34~36を比較した結果、1%及び2%の米糠酵素粗抽出物が比較例Bの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示された。このほか、グループ35~38の比較結果によると、実施例B-4及び実施例B-5の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より明らかに優れていることが示された。
【0071】
【0072】
上述の結果は、0.5%、1%または2%の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物で汚れを処理した後、汚染布を揉まない状況下で、水またはSee Clean洗濯用洗剤で洗浄を行うと、市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤と比較していずれもより高い洗浄効果を備えていることを示している。このほか、グループ15~18の結果によると、0.5%または1%の米糠酵素粗抽出物を添加した場合自家汚染布の洗浄能力を顕著に向上することができ、かつグループ26と27及び35と36の結果によると、低濃度の米糠酵素粗抽出物を添加することで汚れの洗浄効果を達成できることが分かる。
【0073】
試験例1~3の結果から、本発明の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物を襟汚れ用洗剤としたときの洗浄能力は、市販の毛宝酵素襟汚れ用洗剤より明らかに優れており、本発明の洗浄剤組成物内の米糠酵素粗抽出物がより優れた衣類の洗浄効果を確実に提供することが実証されている。
【0074】
(試験例4)
【0075】
試験例4は0.5%、1%、2%または3%等異なる濃度の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物の洗浄能力を試験するため、汚れ洗浄効果の数値化分析試験を利用して洗濯用洗剤の比較例C、実施例C-1、実施例C-2及び実施例C-3の洗浄剤組成物及び2%米糠酵素粗抽出物を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤の、口紅またはインク等の汚れが付着した白い綿麻混紡布(自家汚染布)に対する洗浄能力を試験する。かつ市販のSee Clean洗濯用洗剤または市販のPersil洗濯用洗剤での洗浄をポジティブコントロール、水での洗浄をネガティブコントロールとする。本実施例の洗浄方法は、各汚染布を各洗浄剤組成物、市販のSee Clean洗濯用洗剤、2%の米糠酵素粗抽出物を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤、市販のPersil洗濯用洗剤または水に浸漬し、洗浄試験機内に入れて洗浄する。結果は
図9及び表12に示すように、グループ39~42を比較した結果、0.5%、1%及び2%の米糠酵素粗抽出物が比較例Cの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示され、特に1%の米糠酵素粗抽出物を含有する実施例C-2はより優れた汚れの洗浄能力を示している。このほか、グループ43と44を比較した結果、2%の米糠酵素粗抽出物が市販のSee Clean洗濯用洗剤の自家汚染布に対する洗浄能力を同様に強化したことが分かる。さらに、グループ39~46を比較した結果、実施例C-1、実施例C-2及び実施例C-3の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販のSee Clean洗濯用洗剤、市販のPersil洗濯用洗剤及び水の洗浄能力より優れていることが分かる。
【0076】
【0077】
(試験例5)
【0078】
試験例5は、1%、2%または3%等異なる濃度の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物を市販のPersil洗濯用洗剤及び3%の米糠酵素粗抽出物を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤の洗浄能力と比較するため、汚れ洗浄効果の数値化分析試験を利用して洗濯用洗剤の比較例C、実施例C-2、実施例C-3及び実施例C-4の洗浄剤組成物及び3%米糠酵素粗抽出物を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤の、マジックペンまたはインク等の汚れが付着した白い綿麻混紡布(自家汚染布)に対する洗浄能力を試験する。かつ市販のSee Clean洗濯用洗剤または市販のPersil洗濯用洗剤での洗浄をポジティブコントロール、水での洗浄をネガティブコントロールとする。本実施例の洗浄方法は、各汚染布を各洗浄剤組成物、市販のSee Clean洗濯用洗剤、3%の米糠酵素粗抽出物を添加した市販のSee Clean洗濯用洗剤、市販のPersil洗濯用洗剤または水に浸漬し、洗浄試験機内に入れて洗浄する。結果は
図10及び表13に示すように、グループ47~50を比較した結果、1%、2%及び3%の米糠酵素粗抽出物が比較例Cの洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力を明らかに強化したことが示され、特に3%の米糠酵素粗抽出物を含有する実施例C-4はより優れた汚れの洗浄能力を示している。このほか、グループ51と52を比較した結果、3%の米糠酵素粗抽出物が市販のSee Clean洗濯用洗剤の自家汚染布に対する洗浄能力を同様に強化したことが分かる。さらに、グループ48~54を比較した結果、実施例C-2、実施例C-3及び実施例C-4の洗浄剤組成物の洗浄能力が市販のSee Clean洗濯用洗剤、市販のPersil洗濯用洗剤及び水の洗浄能力より優れていることが分かる。
【0079】
【0080】
試験例4及び試験例5の結果から、本発明の米糠酵素粗抽出物を含有する洗浄剤組成物を洗濯用洗剤としたときの洗浄能力は、市販のSee Clean洗濯用洗剤及び5種類の酵素を添加したPersil洗濯用洗剤の洗浄能力より明らかに優れ、かつ米糠酵素粗抽出物は市販のSee Clean洗濯用洗剤の洗浄能力を高めており、本発明の洗浄剤組成物内の米糠酵素粗抽出物が極めて優れた衣類の洗浄効果を確実に提供することが実証されている。
【0081】
(試験例6)洗浄剤組成物の安定性試験
【0082】
試験例6-1:安定剤処方の洗浄剤組成物の襟汚れ用洗剤処方における米糠酵素粗抽出物の安定性に対する影響を試験するため、5gの米糠酵素粗抽出物粉末を3mlの水に加えて静置し、米糠酵素粗抽出物上澄み液を取得する。1mlの米糠酵素粗抽出物上澄み液を取り、比較例Bの洗浄剤組成物を加えて総体積10mlとし、4℃(対照群)及び45℃で1週間、4週間、6週間静置した後、米糠酵素粗抽出物の酵素活性を測定する。結果は表14及び
図11に示すように、グループ55~60を比較すると、処方D1を添加した洗浄剤組成物の比較例Bを45℃で1~6週間静置したときの酵素活性は、4℃で1~6週間静置したときの酵素活性に近く、かつ処方D1を添加した洗浄剤組成物の比較例Bを4℃と45℃で6週間静置したときの酵素活性とあまり差異がないことが分かる。しかしながら、洗浄剤組成物の比較例Bと安定剤処方D1を混合し、4℃または45℃で1週間静置した後(グループ55と58)、いずれも層分離現象が発生した(結果は未表示)。本実施例の結果によると、安定剤処方D1は米糠酵素粗抽出物を含有する比較例Bの洗浄剤組成物の酵素活性を安定させるが、層分離現象を回避することはできないことが実証された。
【0083】
【0084】
試験例6-2:異なる安定剤処方の洗浄剤組成物に含まれる米糠酵素粗抽出物の安定性に対する影響を試験するため、4℃(対照群)及び45℃で1週間静置した後、米糠酵素粗抽出物の酵素活性を測定する。米糠酵素粗抽出物の酵素活性を測定する方法は試験例6-1と同じであり、結果は表15に示すように、4℃の環境に静置した対照群と比較して、グループ61(洗浄剤組成物の比較例Bと調製例3で得た安定剤処方D1の混合)が45℃で1週間静置した後、米糠酵素粗抽出物の酵素活性が若干低下した以外、グループ62と63の洗浄剤組成物は45℃で1週間静置した後、米糠酵素粗抽出物の酵素活性はいずれも低下していない。このほか、
図12に示すように、グループ61と63の洗浄剤組成物の比較例Bと安定剤処方D1またはD3の混合は、45℃で1週間静置した後、いずれも層分離現象が発生したが、グループ62の洗浄剤組成物の比較例Bと安定剤処方D2の混合は45℃で1週間静置した後、層分離の現象は観察されなかった。本実施例の結果によると、安定剤処方D2は米糠酵素粗抽出物を含有する比較例Bの洗浄剤組成物の酵素活性を安定させ、かつ層分離現象を回避できることが実証された。
【0085】
【0086】
(試験例7)安定剤処方を含有する洗浄剤組成物の洗浄効果試験
【0087】
安定剤処方を添加した洗浄剤組成物の洗浄能力を試験するため、汚れ洗浄効果の数値化分析を利用し、表16に示す襟汚れ用洗剤に使用する比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物の、マジックペン、口紅またはインク等の汚れが付着した白い綿麻混紡布の自家汚染布に対する洗浄能力を試験する。本実施例の洗浄方法は、洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて5分間または20分間静置した後、洗浄試験機内に入れ、水による水洗いを行う、またはSee Clean洗濯用洗剤を加えて洗浄する。
【0088】
【0089】
比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて5分間静置した後、水で洗浄した結果を
図13と表17に示す。比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて5分間静置した後、See Clean洗濯用洗剤で洗浄した結果を
図14と表18に示す。グループ64~67またはグループ68~71を比較した結果、実施例E-1の洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力は、比較例Eの洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より明らかに優れており、かつSee Clean洗濯用洗剤で洗浄した洗浄効果は、水で洗浄した洗浄効果より優れていることが示された。
【0090】
【0091】
【0092】
このほか、比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて20分間静置した後、水で洗浄した結果を
図15と表19に示す。比較例E及び実施例E-1の洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤または水を汚れの上に吹き付けて20分間静置した後、See Clean洗濯用洗剤で洗浄した結果を
図16と表20に示す。グループ72~75またはグループ76~79を比較した結果、実施例E-1の洗浄剤組成物の自家汚染布に対する洗浄能力は、比較例Eの洗浄剤組成物、毛宝酵素襟汚れ用洗剤及び水の洗浄能力より明らかに優れており、かつSee Clean洗濯用洗剤で洗浄した洗浄効果は、水で洗浄した洗浄効果より優れていることが示された。
【0093】
【0094】
【0095】
さらに、表18のグループ69と表20のグループ77を比較した結果、実施例E-1の洗浄剤組成物で20分間処理した後は、実施例E-1の洗浄剤組成物で5分間処理したものより優れた洗浄能力が発揮されることが示されている。
【0096】
(試験例8)
【0097】
試験例8は異なる酵素安定剤処方のリパーゼ活性に対する影響の試験であり、その結果を表21と
図17に示す。
【0098】
【0099】
表21と
図17は、F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して45
oCで1週間及び13週間放置した後のリパーゼ活性を示している。
【0100】
表21中の安定剤処方は、詳しくは次の通りである。
【表22】
【0101】
表21で使用された酵素は次の通りである。
Lipo: novozymesリパーゼLipolase 100L 1%
Lipex: novozymesリパーゼLipex 100L 1%
MDA: novozymesn 3-in-1酵素 Medley advance 1%
RBL:フリーズドライ玄米皮リパーゼ 10%
【0102】
図17で使用されているコードは次の通りである。
F0:実施例F-0
F1:実施例F-1
F2:実施例F-2
F3:実施例F-3
F4:実施例F-4
1:1週間放置
13:13週間放置
Lo:Lipolase
Lx:Lipex
LoM:Lipolase+MDA
LxM:Lipex+MDA
R:RBL
RM:RBL+MDA
RL:RBL+ Lipolase
【0103】
試験例8の試験結果から、次のことが分かる。
1.本試験例のリパーゼ活性測定結果から、F襟汚れ用洗剤処方の添加、または安定剤の未添加を問わず、RBL+Lipoはいずれも活性が比較的高い傾向を示し、RBL単独添加またはRBL+MDAは、次に活性が高い傾向を示した。
2.本試験例のリパーゼ活性測定結果から、2.5%プロピレングリコールのみの添加は酵素のF-0に対する保護力が最低でF-1が最高であり、その他F-2、F-3、F-4の酵素安定剤は酵素の活性維持能力において差異が小さいことが分かった。
3.本試験例の1週間、13週間のリパーゼ活性結果から、酵素は45oCで13週間放置しても活性に対する影響が小さいことが分かった。
【0104】
(試験例9)
【0105】
試験例9は異なる酵素安定剤処方のリパーゼ活性に対する影響の試験であり、その結果を表23と
図18に示す。
【0106】
【0107】
表23と
図18は、F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して45
oCで3週間、5週間及び13週間放置した後のリパーゼ活性を示している。表23の安定剤処方及び使用された酵素は表21で述べた通りである。
図18で使用されているコードは次の通りである。3:3週間放置;5:5週間放置、その他は
図17で述べた通りである。
【0108】
試験例9の試験結果から、次のことが分かる。
1.本試験例のリパーゼ活性測定結果から、F襟汚れ用洗剤処方は安定剤の添加または未添加を問わず、RBL+Lipoはいずれも活性が比較的高い傾向を示し、RBL単独添加またはRBL+MDAは、次に活性が高い傾向を示した。
2.本試験例のリパーゼ活性測定結果から、2.5%プロピレングリコールのみを添加したF-0またはF-1~F-4の酵素安定剤を添加したものは酵素活性維持能力において差異が小さいことが分かった。
3.本試験例の3週間、5週間、13週間のリパーゼ活性結果から、酵素は45oCで13週間放置しても活性に対する影響が小さいことが分かった。
【0109】
(試験例10)
【0110】
試験例10は異なる酵素安定剤処方のリパーゼ活性に対する影響の試験であり、その結果を表24、
図19、
図20に示す。
【0111】
【0112】
表24、
図19と
図20は、F襟汚れ用洗剤処方に異なる酵素安定剤処方を組み合わせた後、異なる酵素を添加して25
oCと45
oCで1週間及び49週間放置した後のリパーゼ活性を示している。表24の安定剤処方及び使用された酵素は表21で述べた通りである。
図19と
図20で使用されているコードは次の通りである。49:49週間放置、その他は
図17で述べた通りである。
【0113】
試験例10の試験結果から、次のことが分かる。
1.本試験例のリパーゼ活性測定結果は45oCの熱処理1週間または49週間後、F襟汚れ用洗剤にRBL酵素を添加した処方(F+RBL、F+RBL+Lipo、F+RBL+MDA)は、安定剤の添加または未添加を問わず、いずれも活性が比較的高い傾向を示し、かつ45oCで49週間まで放置した場合RBL酵素を添加した処方の活性にはあまり影響がないことが示された。
2.本試験例のリパーゼ活性測定の結果から、室温(25oC)で1週間及び49週間放置した後、RBL、RBL+MDAは安定剤の添加または未添加を問わず、酵素活性に対していずれも明らかな影響はなく、RBL+Lipo、Lipo+MDA、Lipex+MDAまたはLipo、Lipex単独添加は、2.5%のプロピレングリコールのみを添加したF-0の酵素に対する保護力が最低で、F-4が最高であり、その他F-1、F-2、F-3酵素安定剤は酵素活性維持能力において差異が小さいことが分かった。RBL+Lipoのリパーゼ活性は単独のRBL、LipoまたはLipo+MDAのリパーゼ活性より高かった。
3.本試験例の1、49週間のリパーゼ活性結果から、RBLまたはRBL+MDAは25oCまたは45oCで49週間まで放置した場合酵素活性に対する影響はあまりなく、RBL+Lipoは45oCで49週間まで放置した場合活性が第1週の68~82%で、F-3安定剤処方でのみ影響がないことが分かった。
【0114】
上述の実施例は例示的に本発明の製法を説明したのみであり、本発明を限定するものではない。関連技術を熟知する者であれば本発明の要旨と範疇を逸脱せずに、上述の実施例に対して修飾と変更が可能であろう。このため、本発明の権利保護範囲は、後述の実用新案登録請求の範囲に記載されたとおりである。