(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】タッチパネル装置、検出方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20220425BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
G06F3/041 422
G06F3/044 120
(21)【出願番号】P 2020171383
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2020-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000201814
【氏名又は名称】双葉電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】冬木 敏光
(72)【発明者】
【氏名】田畑 裕一
(72)【発明者】
【氏名】宮島 晶生
【審査官】木村 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124837(JP,A)
【文献】国際公開第2017/069061(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のセンシング領域に複数の送信電極と複数の受信電極が配設され、送信電極と受信電極によりセンサセルが形成されるタッチパネル装置であって、
前記センシング領域は非長方形とされ、
前記センシング領域には複数のセンサセルが行方向及び列方向に配列されており、
各センサセルは、各行のセンサセル数が同一で、かつ各列のセンサセル数が同一となるように、前記センシング領域の形状に応じた領域形状とされて
おり、
前記非長方形への変形の基準となる前記センシング領域の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの領域形状が、該基準長方形の頂点座標と前記センシング領域の頂点座標とから求められた変換係数を用いて前記センシング領域にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極と複数の受信電極が配設されている
タッチパネル装置。
【請求項2】
前記変換係数は、前記基準長方形の頂点座標と前記センシング領域の頂点座標を用いた双一次変換に基づいて算出される
請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
基板上のセンシング領域に複数の送信電極と複数の受信電極が配設され、送信電極と受信電極によりセンサセルが形成されるタッチパネル装置であって、
前記センシング領域は非長方形とされ、
前記センシング領域には複数のセンサセルが行方向及び列方向に配列されており、
各センサセルは、各行のセンサセル数が同一で、かつ各列のセンサセル数が同一となるように、前記センシング領域の形状に応じた領域形状とされており、
前記非長方形への変形の基準となる前記センシング領域の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの領域形状が、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの頂点座標と、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルと対応する前記センシング領域に配列されたセンサセルの頂点座標とから求められた変換係数を用いて前記センシング領域にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極と複数の受信電極が配設されている
タッチパネル装置。
【請求項4】
前記変換係数は、
該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの頂点座標と、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルと対応する前記センシング領域に配列されたセンサセルの頂点座標とを用いた双一次変換に基づいて算出される
請求項3に記載のタッチパネル装置。
【請求項5】
前記基板上に複数の前記センシング領域が形成される
請求項1から請求項4の何れかに記載のタッチパネル装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載のタッチパネル装置が実行する検出方法であって、
送信電極に入力した送信信号に基づく受信信号を受信電極から受信するステップと、
前記受信した受信信号から求められる各センサセルの容量値を用いて重心値を算出するステップと、
前記算出した重心値に基づいて前記センシング領域におけるタッチ位置座標を検出するステップと、をタッチパネル装置が実行する
検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチパネル装置、及び当該タッチパネル装置が実行する検出手法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル装置に関して各種の技術が知られている。
下記特許文献1には、第1の方向に延設された送信電極と、第1の方向と交差する第2の方向に延設された受信電極とが形成され、送信電極と受信電極の対により構成される検出領域から生じる容量の変化に基づいてユーザのタッチ位置を検出する静電容量方式のタッチパネル装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したタッチパネル装置を機器製品に実装するにあたり、実装するタッチパネルの外縁の形状は必ずしも長方形になるとは限らず、機器製品のデザインに応じて非長方形状に設計されることが多々見受けられる。
このような非長方形状のタッチパネルにおいては当該形状に収まるように送信電極と受信電極を配設することになるが、この場合、タッチパネルの外縁部分において送信電極と受信電極の配設スペースを十分に確保できないことがある。
そうなると、タッチパネル外縁部分においてタッチ位置検出に必要とされる容量変化を適切に取得することができず、タッチ位置検出精度の低下を招いてしまう。
【0005】
そこで本発明では、非長方形状のタッチパネルにおいてタッチ位置検出精度を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るタッチパネル装置は、基板上のセンシング領域に複数の送信電極と複数の受信電極が配設され、送信電極と受信電極によりセンサセルが形成されるタッチパネル装置であって、前記センシング領域は非長方形とされ、前記センシング領域には複数のセンサセルが行方向及び列方向に配列されており、各センサセルは、各行のセンサセル数が同一で、かつ各列のセンサセル数が同一となるように、前記センシング領域の形状に応じた領域形状とされているものである。
【0007】
センシング領域に各行のセンサセル数が同一、かつ各列のセンサセル数が同一となるように各センサセルを配列することで、センシング領域の形状に関わらずセンサセルが欠損しない。
【0008】
上記した本発明に係るタッチパネル装置は、前記非長方形への変形の基準となる前記センシング領域の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの領域形状が、該基準長方形の頂点座標と前記センシング領域の頂点座標とから求められた変換係数を用いて前記センシング領域にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極と複数の受信電極が配設されているものである。
【0009】
これにより、非長方形のセンシング領域の形状に合わせて各センサセルの領域形状が規則的に変形される。よって、センシング領域の外縁部分のセンサセルの配設スペースを十分に確保することができる。
ここで基準長方形とは、センシング領域を非長方形に変形するにあたり基準となる長方形のセンシング領域をいう。当該基準長方形のセンシング領域には、複数の長方形のセンサセルがそれぞれの形状を変えることなく行方向及び列方向に規則的に配設される。
【0010】
上記した本発明に係るタッチパネル装置は、前記非長方形への変形の基準となる前記センシング領域の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの領域形状が、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの頂点座標と、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルと対応する前記センシング領域に配列されたセンサセルの頂点座標とから求められた変換係数を用いて前記センシング領域にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極と複数の受信電極が配設されている。
【0011】
これにより、基準長方形の頂点座標に対応する頂点座標が特定できない形状にセンシング領域を変形する場合においても、非長方形のセンシング領域の形状に合わせて各センサセルの領域形状を変形することができる。
【0012】
上記した本発明に係るタッチパネル装置において、前記変換係数は、前記基準長方形の頂点座標と前記センシング領域の頂点座標を用いた双一次変換に基づいて算出されることが考えられる。
また、前記変換係数は、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルの頂点座標と、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルと対応する前記センシング領域に配列されたセンサセルの頂点座標とを用いた双一次変換に基づいて算出されることも考えられる。
【0013】
双一次変換を用いて算出された変換係数に基づいてセンシング領域を変形することで、領域内で数学的規則性を有するセンサセルの配設が可能とされる。
【0014】
上記した本発明に係るタッチパネル装置において、前記基板上に複数の前記センシング領域が形成されることが考えられる。
【0015】
これにより、センシング領域ごとに、それぞれのセンシング領域の形状に合わせて変形したセンサセルが配設される。
【0016】
本発明に係るタッチパネル装置は、送信電極に入力した送信信号に基づく受信信号を受信電極から受信するステップと、前記受信した受信信号から求められる各センサセルの容量値を用いて重心値を算出するステップと、前記算出した重心値に基づいて前記センシング領域におけるタッチ位置座標を検出するステップと、を実行する。
【0017】
これにより、センシング領域の形状に関わらずセンサセルが欠損しない状態で、タッチ位置座標を検出することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、非長方形状のタッチパネルにおいてタッチ位置の検出精度を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施の形態のタッチパネル装置のブロック図である。
【
図2】本実施の形態のタッチパネルの電極配置構造を示す図である。
【
図3】本実施の形態の基準長方形におけるセンシング領域を示す図である。
【
図4】本実施の形態の基準長方形におけるセンサセル構造を示す図である。
【
図5】本実施の形態の基準長方形におけるセンサ群領域を模式的に示す図である。
【
図6】本実施の形態の比較例におけるセンシング領域を示す図である。
【
図7】本実施の形態の比較例におけるセンサ群領域を模式的に示す図である。
【
図8】本実施の形態の非長方形におけるセンシング領域を示す図である。
【
図9】本実施の形態の非長方形におけるセンサセル構造を示す図である。
【
図10】本実施の形態の非長方形におけるセンサ群領域を模式的に示す図である。
【
図11】本実施の形態の基板上におけるセンシング領域の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について
図1から
図11を参照して説明する。各図面に記載された構成は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲であれば設計などに応じて種々な変更が可能である。また一度説明した構成は、それ以降同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0021】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.タッチパネル装置の構成>
<2.タッチパネルの電極配置構造>
<3.タッチパネルのタッチ位置検出手法>
<4.比較例>
<5.第1の実施の形態>
<6.変形例>
<7.第2の実施の形態>
<8.まとめ>
【0022】
<1.タッチパネル装置の構成>
実施の形態におけるタッチパネル装置1の構成例について
図1及び
図2を参照して説明する。
タッチパネル装置1は、各種機器においてユーザインターフェース装置として装着される。ここで各種機器とは、例えば電子機器、通信機器、情報処理装置、製造設備機器、工作機械、車両、航空機、建物設備機器、その他非常に多様な分野の機器が想定される。
タッチパネル装置1は、これらの多様な機器製品においてユーザの指などの導電体によるタッチパネル操作の情報を供給する動作を行うことになる。
【0023】
図1に示すように、タッチパネル装置1は、製品側MCU6に対してユーザのタッチパネル操作に関する情報を供給する動作を行う。製品側MCU6は、タッチパネル装置1が装着される機器における制御装置である。
【0024】
タッチパネル装置1は、タッチパネル2及びタッチパネル駆動装置3を有する。
タッチパネル駆動装置3は、センサ回路4及びMCU5を有する。
タッチパネル駆動装置3は、タッチパネル2と電気的に接続されており、タッチパネル2の駆動(センシング)を行う。
【0025】
また操作入力デバイスとして機器に搭載される際には、タッチパネル駆動装置3は、製品側MCU6と電気的に接続される。この接続によりタッチパネル駆動装置3は製品側MCU6にセンシングした操作情報を送信する。
【0026】
センサ回路4は、タッチパネル2に対して送信信号を入力するとともに、タッチパネル2から受信信号を受信する。
【0027】
図2は、センサ回路4とタッチパネル2の接続状態を模式的に示している。
タッチパネル2は、タッチ面を形成するパネル平面に、送信側の電極としてのn本の送信電極21-1から21-nが配設される。
また同じくパネル平面に、受信側の電極としてのm本の受信電極22-1から22-mが配設される。
なお、以下の説明において、送信電極21-1・・・21-n、受信電極22-1・・・22-mを特に区別しない場合は、総称して送信電極21、受信電極22と表記する。
【0028】
送信電極21-1・・・21-nと、受信電極22-1・・・22-mとは、図示するように交差して配設される場合もあれば、いわゆるシングルレイヤ構造として、以下の実施の形態で述べるように交差が生じないように配設される場合もある。
いずれにしても送信電極21と受信電極22が配設される範囲内でタッチ操作面が形成され、タッチ操作時の容量変化により操作位置が検出される構造となる。
【0029】
図2では、送信電極21と受信電極22の間で生じる容量の一部を容量Cとして例示している。タッチ操作面の全体に、送信電極21と受信電極22の間で生じる容量C(例えば交差位置における容量)が存在し、タッチ操作により容量変化が生じた位置がセンサ回路4により検出される。
なお、以下の説明において送信電極21と受信電極22の間で生じる容量Cを区別する場合は、容量C1,C2・・・のように符号末尾に数字を付して表記するものとする。
【0030】
センサ回路4は、選択した送信電極21-1・・・21-nに対して送信信号を出力する。またセンサ回路4は、選択した受信電極22-1・・・22-mからの受信信号を受信する。
センサ回路4では、受信電極22から受信した受信信号に基づく検出値(以下、容量検出値とも表記する。)が記憶され、MCU5が取得できるようにされている。
【0031】
図1に戻り、MCU5は、センサ回路4の設定、制御を行う。
またMCU5は、容量検出値をセンサ回路4から読み出すことで取得する。
そしてMCU5は、容量検出値を用いて重心値を算出し、算出した重心値に基づいた座標計算を行い、ユーザのタッチ操作位置情報としての座標値を製品側MCU6に送信する処理を行う。
【0032】
<2.タッチパネルの電極配置構造>
タッチパネル2の電極配置構造について、
図3及び
図4を参照して説明する。ここでは電極配置構造の一例としてシングルレイヤ電極構造の例について説明する。
なお、タッチパネル2の電極配置構造は、シングルレイヤ電極構造に限られず、例えば送信電極21と受信電極22を絶縁層を介して交差させた積層構造であってもよい。
【0033】
図3は、本実施の形態のタッチパネル2の電極配置構造を模式的に示している。
なお、以降の説明では、
図3に示す方向を上下左右方向として表記するものとし、
図3に示すX軸,Y軸に基づき各センサセルLの座標を表記するものとする。これは以降の
図4から
図11においても同様である。
【0034】
図3に示すように、タッチパネル2における基板上のセンシング領域10には、同一の長方形に形成された複数のセンサセルLが上下左右方向(行方向及び列方向)に規則的に配設され、集合マトリクスとしてのセンサパターンが構成される。各行のセンサセルLの数は同一であり、かつ各列のセンサセルLの数も同一となる。
【0035】
ここでセンシング領域10は長方形に形成されている。本実施の形態では、この長方形状のセンシング領域10を、後述するセンシング領域10を変形させるときの基準形状(以下、基準長方形とも表記する。)とする。
【0036】
センシング領域10に配置された各センサセルLから生じる容量検出値に基づいてユーザのタッチ位置が検出される。ここでの各センサセルLは、
図2における送信電極21と受信電極22が交差する部分に相当する。
【0037】
センシング領域10に配設されたセンサセルLの構造について
図4を参照して説明する。ここではセンサセルLの構造の例として
図3のセンサセルL4を挙げて説明する。
図4は、センサセルL4の領域形状を拡大して模式的に示したものである。なお、説明の便宜上、
図4では各部材の大きさ及び間隔を
図3よりも強調して示している。
センサセルL4は、送信電極21、受信電極22、及び余剰領域23を有している。
【0038】
送信電極21は、第1のコ字状部211、第1突出部212、第2突出部213、配線隣接部214、及び送信配線部215を有している。
第1のコ字状部211は右側に開口するコ字状に形成され、第1突出部212が第1のコ字状部211の上端部216から下方向に突出して形成されている。第2突出部213は第1突出部212の左側に離間して設けられ、第1のコ字状部211から下方向に突出して形成される。配線隣接部214は、第1のコ字状部211の下端部217から上方向に突出して形成される。配線隣接部214の反対側には送信配線部215が延設されている。
【0039】
受信電極22は、第2のコ字状部221、第3突出部222、第4突出部223、及び受信配線部224を有している。
第2のコ字状部221は左側に開口するコ字状に形成され、第3突出部222が第2のコ字状部221の下端部225から上方向に突出して形成されている。第4突出部223は第3突出部222の右側に離間して設けられ、第2のコ字状部221から上方向に突出して形成される。
受信配線部224は、第2のコ字状部221の上端部226と結線されている。受信配線部224は第1のコ字状部211の左端と離間して配設される。
【0040】
送信電極21と受信電極22は、第3突出部222から右方向に第2突出部213、第4突出部223、第1突出部212の順に並列配置される。このように、送信電極21と受信電極22は平面上に一層かつ櫛形形状に隣接して形成される。
また、送信電極21と受信電極22の隣接部分にはそれぞれ隙間が設けられている。その結果、送信電極21と受信電極22の間で容量Cが発生する。
【0041】
送信配線部215(送信電極21)は、
図3に示すような基板上のセンシング領域10の各列において、上下方向に配設されたセンサセルLごとに引き出される。各送信配線部215は下方向に向かって延設され、互いに離間して並列配置されている。
【0042】
各列における下端部のセンサセルLには、上方向に配設されたセンサセルLの数だけ送信配線部215が並列配設されており、上方向のセンサセルLに進むに従って、センサセルLに配置する送信配線部215の数は1つずつ少なくなる。
【0043】
上方向のセンサセルLに進むに従って送信配線部215の数が少なくなることで、上方向のセンサセルLには余剰領域23が形成される。余剰領域23には、例えば光学的な見栄えを考慮してダミー電極が配設される。
【0044】
各列で上下方向のセンサセルLごとに引き出され下方向に延設された複数の送信配線部215は、基板上の集合マトリクスにおける同じ行のセンサセルLごとに結線され、
図2に示すセンサ回路4に接続される。
センサ回路4は、選択した送信電極21(送信配線部215)に対してセンシング動作のための送信信号を出力する。
【0045】
受信配線部224(受信電極22)は、上下方向のセンサセルLごとの上端部226と共通に結線された一本の電極として下方向に引き出される。下方向に引き出された受信配線部224は、
図2に示すセンサ回路4に接続される。
センサ回路4は、選択した受信電極22(受信配線部224)からのセンシング動作のための受信信号を受信する。
【0046】
図3に示す基準長方形のセンシング領域10に配設された各センサセルLは、送信配線部215の数や余剰領域23の占める割合など、多少の相違点はあるにしても、おおむね上述したセンサセルL4と共通の構成を有している。
【0047】
<3.タッチパネルのタッチ位置検出手法>
センシング領域10におけるタッチ位置情報の検出手法について、
図5を参照して説明する。ここでは一例として、
図3に示すセンサセルL1からL9により形成されるセンサ群領域11においてタッチ位置座標を検出する場合について説明する。
図5では、センサ群領域11におけるセンサセルL1からL9の位置関係と、センサセルL1からL9に対応するそれぞれの容量(C1からC9)とが模式的に示されている。
【0048】
タッチパネル2のタッチ位置座標は、
図1のMCU5により演算される。
具体的にMCU5は、センサセルL1からL9のそれぞれに対応する容量C1からC9の容量検出値をセンサ回路4から読み出すことで取得する。
【0049】
そしてMCU5は、各容量Cの容量検出値を用いて重心値を算出し、算出した重心値に基づいた座標計算を行いうことでタッチ位置座標を演算する。
具体的にMCU5は、下記[式1]において、センサセルL1からL9のうちセンサセルLiのX座標を「xi」に、センサセルLiに対応する容量(C1からC9の何れか)の値を「ci」に代入することで、タッチ位置のX座標情報である座標Xtouchを演算する。
【0050】
【0051】
またMCU5は、下記[式2]において、センサセルL1からL9のうちセンサセルLiのY座標を「yi」に、センサセルLiに対応する容量(C1からC9の何れか)の値を「Ci」に代入することで、タッチ位置のY座標情報である座標Ytouchを演算する。
【0052】
【0053】
上述の演算により、MCU5は、タッチパネル2のセンシング領域10におけるタッチ位置座標を演算することができる。
【0054】
<4.比較例>
センシング領域10を基準長方形から非長方形に変形した場合におけるセンサセルLの配設手法の比較例について、
図6及び
図7を参照して説明する。
ここでは一例として、センシング領域10を
図3に示す基準長方形から
図6に示す台形(非長方形状)に変形させた例について説明する。
【0055】
図6は、比較例におけるタッチパネル2の電極配置構造を模式的に示している。また
図7は、比較例におけるセンサ群領域11を構成するセンサセルLと、各センサセルLに対応する容量Cとを模式的に示している。なお、
図7における一点鎖線はセンシング領域10の外縁を示しており、破線はセンサセルLにおける欠損部分を示している。
【0056】
図6に示すような台形のセンシング領域10における左右の外縁部では、傾斜によりセンサセルLの配設スペースが圧迫され、通常の形状で配設することが難しくなる。
例えばセンサ群領域11についてみると、傾斜に伴いセンサセルL1及びL4の送信電極21及び受信電極22が欠損している。
【0057】
センサ群領域11におけるタッチ位置座標を検出するには、
図7に示すセンサセルL1からL9のそれぞれに対応する容量C1からC9の値を上述の[式1]及び[式2]に代入する必要がある。
【0058】
しかしながら比較例ではセンサセルL1及びL4の電極部分が欠損してしまっているため、センサセルL1の容量C1、及びセンサセルL4の容量C4の容量検出値が変化してしまい(又は検出することができず)、[式1]及び[式2]を用いて検出されるタッチ位置座標の精度が低下してしまう。
【0059】
<5.第1の実施の形態>
センシング領域10におけるセンサセルLの配設手法の第1の実施の形態について、
図8から
図10を参照して説明する。
ここでは比較例と同様に、センシング領域10を
図3で示す基準長方形から
図8に示す台形(非長方形状)に変形させた例について説明する。
図8は、センシング領域10を台形に変形したときの電極配置構造を模式的に示している。
図9は、当該センシング領域10のセンサ群領域11におけるセンサセルL4を拡大して示している。
図10は、センサ群領域11を構成するセンサセルLと、各センサセルLに対応する容量Cとを模式的に示している。なお、説明の便宜上、
図9では各部材の大きさ及び間隔を
図8よりも強調して示している。
【0060】
本実施の形態では、センシング領域10の基準となる
図3に示すような基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に形成されるセンサセルLの各座標を、該基準長方形の頂点座標と、台形のセンシング領域10の頂点座標とから求められた変換係数を用いて、台形の領域内に形成されるセンサセルLの各座標に変換する。そして、変換した各座標を台形のセンシング領域10にマッピングし、当該マッピングに基づき複数の送信電極21と複数の受信電極22を配設する。
【0061】
基準長方形の領域内の各座標を台形のセンシング領域10の領域内の各座標に変換する手法の具体例について説明する。ここでは一例として各座標を双一次変換により演算する例について説明する。
【0062】
基準長方形の領域内の或る座標を(x,y)、当該基準長方形領域内の座標に対応する変形後の台形領域内の座標を(x’,y’)とすると、(x’,y’)の各座標は下記[式3]及び[式4]により算出される。
x’=a1x+b1y+c1xy+d1 ・・・[式3]
y’=a2x+b2y+c2xy+d2 ・・・[式4]
このとき上記[式3]及び[式4]において変換係数a1,b1,c1,d1,a2,b2,c2,d2は未知である。
【0063】
そこで、まず
図3のような基準長方形の各頂点座標である頂点P(x
1,y
1)、頂点Q(x
2,y
2)、頂点R(x
3,y
3)、頂点S(x
4,y
4)、及び
図8のような基準長方形の各頂点座標に対応する変形後の台形の各頂点座標である頂点P’(x
1’,y
1’)、頂点Q’(x
2’,y
2’)、頂点R’(x
3’,y
3’)、頂点S’(x
4’,y
4’)を[式3]にそれぞれ代入する。これにより下記4つの式からなる連立方程式が導かれる。
x
1’=a
1x
1+b
1y
1+c
1x
1y
1+d
1
x
2’=a
1x
2+b
1y
2+c
1x
2y
2+d
1
x
3’=a
1x
3+b
1y
3+c
1x
3y
3+d
1
x
4’=a
1x
4+b
1y
4+c
1x
4y
4+d
1
上記連立方程式により[式3]における変換係数a1,b1,c1,d1が算出される。
【0064】
また基準長方形の各頂点座標である頂点P(x1,y1)、頂点Q(x2,y2)、頂点R(x3,y3)、頂点S(x4,y4)、及び基準長方形の各頂点座標に対応する変形後の台形の各頂点座標である頂点P’(x1’,y1’)、頂点Q’(x2’,y2’)、頂点R’(x3’,y3’)、頂点S’(x4’,y4’)を[式4]にそれぞれ代入する。これにより下記4つの式からなる連立方程式が導かれる。
y1’=a2x1+b2y1+c2x1y1+d2
y2’=a2x2+b2y2+c2x2y2+d2
y3’=a2x3+b2y3+c2x3y3+d2
y4’=a2x4+b2y4+c2x4y4+d2
上記連立方程式により[式4]における変換係数a2,b2,c2,d2が算出される。
【0065】
以上により、[式3]及び[式4]における各変換係数が既知となる。これにより、[式3]及び[式4]に変形前の基準長方形における座標を代入することで、変形後の台形領域内における座標を得ることができる。
【0066】
続いて、基準長方形を構成するセンサセルLの各座標を[式3]及び[式4]に代入し、変形後の台形のセンシング領域10における各座標に変換しマッピングを行う。
当該マッピングに基づき送信電極21及び受信電極22を配設することで、
図8に示すような規則的に変換されたセンサセルLにより構成されるセンシング領域10が形成される。
【0067】
このように双一次変換を用いてセンシング領域10に配設するセンサセルLの形状を変形させることで、変形後のセンシング領域10の領域内に無理なくセンサセルLを配設することができる。
例えば
図9に示す台形の外縁付近のセンサセルL4をみると、比較例のような欠損は見られず、送信電極21及び受信電極22の配設領域が十分に確保されていることがわかる。
【0068】
従って、例えばセンサ群領域11におけるタッチ位置座標の検出にあたり、
図10に示すようなセンサセルL1からL9に対応するそれぞれの容量(C1からC9)の容量検出値が十分に検出される。当該検出した各容量Cの容量検出値を上述の[式1]及び[式2]に代入することで、タッチ位置座標を精度良く検出することができる。
以上より、本実施の形態によれば、センシング領域10が非長方形状に変形した場合であっても、タッチ位置座標の検出精度を維持したセンサパターンを生成することができる。
【0069】
<6.変形例>
第1の実施の形態では、変形前の基準形状の各頂点座標(
図3)と、変形後のセンシング領域10の各頂点座標(
図8)とから求められた変換係数を用いて、変形後のセンシング領域10の各センサセルLの座標を演算する例について説明したが、各センサセルLの座標の演算手法はこれに限られない。
例えば、変形前の基準長方形における長方形のセンサセルLの各頂点座標(
図3)と、これに対応する変形後のセンシング領域10のセンサセルLの各頂点座標(
図8)とから求められた変換係数を用いて、変形後のセンシング領域10の各センサセルLを構成する送信電極21及び受信電極22の形状を特定することができる。
【0070】
具体的には、変形前の長方形のセンサセルLの各頂点座標、及び変形後のセンサセルLの各頂点座標を[式3]に代入することで変換係数a1,b1,c1,d1を算出する。
また変形前の長方形のセンサセルLの各頂点座標、及び変形後のセンサセルLの各頂点座標を[式4]に代入することで変換係数a2,b2,c2,d2を算出する。
【0071】
そして、変形前のセンサセルLの領域内の送信電極21及び受信電極22を構成する領域の各点の座標を[式3]及び[式4]に代入することで、変形後のセンシング領域10内における座標に変換しマッピングを行う。
このようなマッピングを基準長方形の全てのセンサセルLについて行うことで、変形後のセンシング領域10内に配列される各センサセルLの領域形状を特定することができる。
当該マッピングに基づき送信電極21及び受信電極22を配設することで、本実施の形態の演算手法と同様に、規則的に変換されたセンサセルLにより構成されるセンシング領域10が形成される。
この演算手法は、センシング領域10を4頂点が特定できないような複雑な形状に変形する場合に特に有効である。
【0072】
<7.第2の実施の形態>
センシング領域10におけるセンサセルLの配設手法における第2の実施の形態について、
図11を参照して説明する。
第2の実施の形態は、タッチパネル2の基板上に複数のセンシング領域10を形成する例である。
図11は、基板上におけるセンシング領域10の配置例を示している。
なお、本実施の形態では、複数のセンシング領域10のそれぞれをセンシング領域10a,10b,10cのように区別して表記するものとする。また
図11では、説明の便宜上、各センサセルLにおける送信電極21や受信電極22等の構成の図示を省略している。
【0073】
本実施の形態では、
図11に示すように基板上の送信電極21及び受信電極22の配設領域を、複数のセンシング領域10a,10b,10cに分割する。
そして、分割したセンシング領域10ごとにセンサパターンを生成し、当該生成したセンサパターンに応じて送信電極21及び受信電極22を配設する。
【0074】
センシング領域10a,10b,10cは、基準長方形に対応する頂点を特定することができない形状をしている。そのため、上述の変形例のように、変形前の基準長方形における長方形のセンサセルLの各頂点座標と、これに対応する変形後のセンシング領域10のセンサセルLの各頂点座標とから求められた変換係数を用いて変形後のセンシング領域10の領域形状をマッピングすることで、各センサセルLの領域形状を変形する。
なお、センシング領域10が基準長方形に対応する頂点を特定できる形状である場合は、上述した第1の実施の形態の手法を適用することも可能である。
【0075】
本実施の形態によれば、基板上の領域を分割した各センシング領域10を別々に変形させることで各センシング領域10のタッチ位置座標の検出精度を維持することができる。従って、センサセルLを配設する基板の形状が複雑になった場合であっても基板全体のタッチ位置座標の検出精度を維持することができる。
【0076】
<8.まとめ>
以上の実施の形態のタッチパネル装置1は、基板上のセンシング領域10に複数の送信電極21と複数の受信電極22が配設され、送信電極21と受信電極22によりセンサセルLが形成されるタッチパネル装置1であって、センシング領域10は非長方形とされ、センシング領域10には複数のセンサセルLが行方向及び列方向に配列されており、各センサセルLは、各行のセンサセルLの数が同一で、かつ各列のセンサセルLの数が同一となるように、センシング領域10の形状に応じた領域形状とされている(
図3,
図8等参照)。
【0077】
センシング領域10に各行のセンサセルLの数が同一で、かつ各列のセンサセルLの数が同一となるように各センサセルLを配列することで、
図6に示すようなセンサセルLの欠損が生じない。
従って、
図10に示すように各センサセルLの容量検出値に基づく重心値の計算を精度を損なわずに行うことができる。これにより、非長方形状のセンシング領域10を有するタッチパネル2のタッチ位置検出精度を維持することができる。
【0078】
実施の形態のタッチパネル装置1は、非長方形への変形の基準となるセンシング領域10の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルLの領域形状が、該基準長方形の頂点座標(P,Q,R,S)とセンシング領域10の頂点座標(P’,Q’,R’,S’)とから求められた変換係数を用いてセンシング領域10にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極21と複数の受信電極22が配設されている(
図3,
図8等参照)。
【0079】
これにより、非長方形のセンシング領域10の形状に合わせて各センサセルLの形状が規則的に変形される。よって、
図8に示すようなセンシング領域10の外縁部分のセンサセルLの配設スペースを十分に確保することができる。
これにより、当該外縁部分のセンサセルLの容量変化の検出不良によるタッチ位置座標の検出精度の低下を解消し、非長方形状のセンシング領域10を有するタッチパネル2のタッチ位置の検出精度を維持することができる。
【0080】
実施の形態においては、上述の変形例で説明したように、非長方形への変形の基準となるセンシング領域10の基準長方形を想定したときに、該基準長方形の領域内に配列される長方形のセンサセルLの領域形状が、該長方形のセンサセルLの頂点座標とセンシング領域10に配列された該長方形のセンサセルLと対応するセンサセルLの頂点座標とから求められた変換係数を用いてセンシング領域10にマッピングされることで、非長方形に変形された状態となるように複数の送信電極21と複数の受信電極22を配設することもできる。
【0081】
これにより、例えば
図11のセンシング領域10a,10b、10cのような、基準長方形の頂点座標に対応する頂点座標が特定できない形状にセンシング領域10を変形する場合においても、非長方形のセンシング領域10の形状に合わせて各センサセルLの領域形状を変形することができる。従って、非長方形状のセンシング領域10を有するタッチパネル2のタッチ位置の検出精度を維持することができる。
【0082】
実施の形態におけるタッチパネル装置1において、上記変換係数は、基準長方形の頂点座標(P,Q,R,S)とセンシング領域10の頂点座標(P’,Q’,R’,S’)を用いた双一次変換に基づいて算出される(
図5,
図9,式3,式4等参照)。
【0083】
双一次変換を用いて算出された変換係数に基づいてセンシング領域10を変形することで、領域内で数学的規則性を有するセンサセルLの配設が可能とされ、非長方形のセンシング領域10を有するタッチパネル2におけるタッチ位置検出精度を維持することができる。
【0084】
第2の実施の形態におけるタッチパネル装置1には、基板上に複数のセンシング領域10a、10b、10cが形成される(
図11等参照)
【0085】
これにより、センシング領域10ごとに、それぞれのセンシング領域10の形状に合わせて変形したセンサセルLが配設される。
従って、複数のセンシング領域10を組み合わせることで、複雑な基板形状をしたタッチパネル2においてもタッチ位置検出精度を維持することができる。
【0086】
実施の形態におけるタッチパネル装置1は、送信電極に入力した送信信号に基づく受信信号を受信電極から受信するステップと、前記受信した受信信号から求められる各センサセルの容量値を用いて重心値を算出するステップと、前記算出した重心値に基づいて前記センシング領域におけるタッチ位置座標を検出するステップと、を実行する(
図3,
図8,式1,式2等参照)。
【0087】
これにより、センシング領域10の形状に関わらずセンサセルLが欠損しない状態で、タッチ位置座標を検出することができる。従って、非長方形のセンシング領域10を有するタッチパネル2におけるタッチ位置検出精度を維持することができる。
【0088】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明が上述の実施の形態に限定されるものではない。従って、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であり、その効果に限定されるものではなく他の効果を生じるものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 タッチパネル装置
2 タッチパネル
10 センシング領域
21 送電電極
22 受信電極
L センサセル