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特許7062739距離測定型光電センサ及び目標物の検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】距離測定型光電センサ及び目標物の検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20220425BHJP
   G01S 7/4861 20200101ALI20220425BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S7/4861
G01C3/06 120Q
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020172745
(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公開番号】P2021063808
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2020-11-30
(31)【優先権主張番号】10 2019 127 667.5
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シュミッツ
(72)【発明者】
【氏名】インゴルフ ブラウネ
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-178976(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0064331(US,A1)
【文献】特開2017-49230(JP,A)
【文献】特開2007-114831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
G01C 1/00-1/14
5/00-15/14
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の目標物(52)を検出するための距離測定型光電センサ(10)であって、光パルス(16)を送出するための発光器(12)と、前記光パルス(16)で前記監視領域(20)を周期的に走査するための偏向ユニット(18)と、前記監視領域(20)内の物体により直反射又は拡散反射された光パルス(22)から受信信号を生成するための受光器(26)と、光パルス(16、22)の光伝播時間から物体の距離を測定し、異なる強度の光パルス(16)を送出するように構成された制御及び評価ユニット(34)とを備えるセンサにおいて、
特定の反射率を有する目標物(52)を検出するために、前記制御及び評価ユニット(34)が更に、前記反射率及び射程に適合した光パルス(16)を送出し、目標物(52)と他の物体との間に目標物(52)と他の物体を区別するために十分な信号の差が作り出されるように前記光パルス(16)の強度制御するように構成されていることを特徴とするセンサ(10)。
【請求項2】
前記センサ(10)がレーザスキャナであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ(10)。
【請求項3】
前記目標物が再帰反射器であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ(10)。
【請求項4】
前記制御及び評価ユニット(34)が光パルス(16)の強度を前記発光器(12)の電流の強さで設定するように構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項5】
前記受光器(26)に感度の異なる複数の受信チャネルが割り当てられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項6】
前記制御及び評価ユニット(34)が、前記光パルス(16)の強度を長い射程及び非常に短い射程に向かって増大させるように構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項7】
前記制御及び評価ユニット(34)が、最初に、及び/又は、物体若しくは目標物(52)が認識されない間、最大射程に対応する強度で光パルス(16)を送出するように構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項8】
前記制御及び評価ユニット(34)が、物体を検出したらそれに続いて該物体の測定距離に対応する強度の光パルス(16)を送出するように構成されていることを特徴とする請求項に記載のセンサ(10)。
【請求項9】
前記制御及び評価ユニット(34)が最初は最小強度で光パルス(16)を送出するように構成されていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項10】
前記制御及び評価ユニット(34)が、少なくとも1つの別の光パルス(16)の強度を、物体が検出されるまで又は該強度が最大射程に相当するまで増大させるように構成されていることを特徴とする請求項に記載のセンサ(10)。
【請求項11】
前記制御及び評価ユニット(34)が、光パルス(16)がある目標物(52)のために設定された強度を持つとき、前記受信信号の強度に基づいて目標物(52)とそれ以外の物体を区別するように構成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項12】
前記制御及び評価ユニット(34)が、設定された前記光パルス(16)の強度を同じ周期的走査又は次の周期的走査の間に前記目標物(52)の角度範囲内で維持するか、該目標物(52)の距離の予想値に適合させるように構成されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項13】
前記制御及び評価ユニット(34)が、前記目標物(52)がもはや検出されなくなったら前記光パルス(16)の最初の強度に戻るように構成されていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項14】
前記制御及び評価ユニット(34)が、目標物(52)の検出中にもその距離を測定し、その距離が変化したら前記光パルス(16)の強度を適合させるように構成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載のセンサ(10)。
【請求項15】
複数の車両(50)を備えるシステム(50、10、52)において、各車両が少なくとも1つの請求項1~14のいずれかに記載のセンサ(10)及び少なくとも1つの目標物(52)を備え、事故回避のために前記センサ(10)による前記目標物(52)の検出に基づいて前記車両(50)の相互の位置が認識されることを特徴とするシステム。
【請求項16】
監視領域(20)内の目標物(52)の検出方法であって、異なる強度の光パルス(16)を送出し、前記監視領域(20)を走査するために前記光パルス(16)を周期的に偏向させ、前記監視領域(20)内の物体により直反射又は拡散反射された光パルス(22)を受信して受信信号を生成し、該受信信号を評価することで、送出されて再び受信された光パルス(16、22)の光伝播時間から、検知された物体の距離を測定する方法において、
特定の反射率を有する目標物(52)を検出するために、前記反射率及び射程に適合した光パルス(16)を送出し、目標物(52)と他の物体との間に目標物(52)と他の物体を区別するために十分な信号の差が作り出されるように前記光パルス(16)の強度制御することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は15のプレアンブルに記載の距離測定型光電センサ、特にレーザスキャナ、及び目標物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
距離測定型レーザスキャナが物体検出のために多くの用途で用いられている。レーザから発せられた光線が偏向ユニットを用いて監視領域を塗りつぶすように周期的に掃引される。その光が監視領域内にある物体の表面で拡散反射され、スキャナ内で評価される。周期的な走査は通常、送出された光線が回転中の回転ミラーに当たることにより達成される。発光器、受光器並びに付属の電子機器及び光学系は装置内に固定的に取り付けられており、一緒に回転運動を行うことはない。ただし、代案として、回転ミラーを、一緒に回転する走査ユニットで置き換えることも考えられる。例えば特許文献1では発光器と受光器を持つ測定ヘッド全体が回転する。
【0003】
偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推量され、更に光伝播時間と光速を用いてレーザスキャナから物体までの距離が推量される。監視領域が1つの走査平面であれば、この極座標で全ての考えられる物体位置が2次元的に捕らえられる。仰角方向の走査運動を追加したり、仰角方向に互いにずれた複数の走査光線を用いたりすれば、監視領域が3次元領域に拡大される。光伝播時間を測定する基本的な原理は2つ知られている。位相ベースの方法では、発射光が変調され、該発射光に対する受信光の位相のずれが評価される。パルスベースの方法では、レーザスキャナが、送出された光パルスが再び受光されるまでの経過時間を測定する。
【0004】
様々な用途において、レーザスキャナの任務は特定の協力する標的を選択的に検出することにある。例えば、工場施設の輸送システムにおいてレーザスキャナ及び協力する標的が各車両に取り付けられ、それらの車両が協力する標的を検出することにより互いに認識し合い、互いに避け合ったり早めにブレーキをかけたりする。レーザスキャナが協力する標的をより早く、より確実に検出すればするほど、車両は必要な制動距離を考慮しつつより高速に走行できる。そして当然ながら、車両が高速になるほど工場施設の生産性は高まる。
【0005】
原理的にはこれらの要求は、協力する標的として再帰反射器を用いることにより満たされる。再帰反射器により反射される光パルスは、鏡状の金属面等も含めて他のいかなる物体による反射パルスよりも強い。なぜならそれらは必ず一定の後方散乱特性を示すから、つまり全ての光を反射するわけではないからである。しかし、この強度差を認識することが確実にできるわけではない。それは特に、受光器が比較的安価に設計されており、狭いダイナミックレンジしか持たないことが典型的だからである。ある点を過ぎると飽和状態になるため、光パルスをより強くしても信号振幅はもうわずかしか増大せず、ある時点からは全く増大しなくなる。より高価な受光器を用いればより広いダイナミックレンジをカバーできるが、短い射程にある反射器と最大の射程にある暗い標的という両極端の間での信号の強弱変化に完全に対応することはできない。
【0006】
再帰反射器を認識する公知の方法の1つは偏光の使用である。発光路において偏光子で直線偏光を生成する一方、受光路にはそれに対して90°回転させた偏光フィルタを配置する。再帰反射器の表面での反射で偏光方向が90°回転するから、この受信光だけが通過でき、他の物体の表面で反射又は散乱された光は除去される。これに相当するレーザスキャナであって、オーバーヘッドコンベアの輸送ユニットに付された協力する標的を検出するためのものが特許文献2から知られている。
【0007】
しかしその場合、偏光フィルタのための追加コストとその調整のための製造コストが発生する。また、光路内の光学素子が偏光を妨げないように配慮しなければならない。特に前面パネルには応力による複屈折がないようにする必要がある。それは可能であり、特許文献3でも説明されているが、これもまた追加のコストを意味する。
【0008】
レーザスキャナには広いダイナミックレンジが必要であることは公知であり、これについては数多くの解決のアプローチがある。しかしそれらは協力する標的の検出に関するものではない。例えば特許文献4は、本来の距離測定の前に受信強度に関する情報を取得してそれに発信強度を適合させるために、その都度事前パルスを送出するレーザスキャナに関するものである。これにより達せられるレベル調整は多くの場合、協力する標的を他の物体から区別するにはまだ適していないし、またそれは特許文献4の目的でもない。また、その適合化は事前パルスの受信強度だけに基づいて行われており、そのパルスから距離情報は測定されない。それどころか、そもそも後続の測定で光伝播時間を測定できるようにするための前提として事前パルスを評価する特許文献4の観点からすると、それは無意味であろう。
【0009】
特許文献5では、各測定が2回ずつ、即ち弱いパルスで1回、強いパルスで1回行われる。弱いパルスでも受信信号において十分な信号雑音比が得られる間はその弱いパルスから光伝播時間が測定され、そうでなければ強いパルスから光伝播時間が測定される。これもまたダイナミックレンジを扱う方法の1つであるが、協力する物体を他の物体から区別するためのものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】DE 197 57 849 B4
【文献】WO 2018/150999 A1
【文献】DE 10 2018 104 787 A1
【文献】EP 1 936 400 B1
【文献】EP 2 395 368 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
故に、本発明の課題は冒頭で述べた種類のセンサを用いた目標物の検出を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1又は15に記載の距離測定型光電センサ、特にレーザスキャナ、及び監視領域内の目標物の検出方法に関するにより解決される。パルスベースの光伝播時間法のために、発光器を用いて光パルスを送出し、偏向ユニットにより周期的に偏向させることで監視領域を走査する。偏向ユニットは回転ミラー又は可動式の走査ヘッドとして構成したり、例えば固体スキャナの場合のように運動が全くない又はマイクロメカニカルな運動しかない構成にしたりできる。拡散反射又は直反射されて戻ってくる光パルスから受信信号を生成し、その光伝播時間から距離を特定するためにその受信信号を評価する。発光器は様々な強度の光パルスが送出されるように制御され、それにより各測定がそれぞれ予め与えられた強度の光パルスで行われる。
【0013】
本発明の出発点となる基本思想は、目標物のみ、特に協力する標的のみが特定の反射率で検出されるということ、そして更に、受信信号において目標物と他の物体との間の区別ができるように光パルスの強度が制御されるということにある。従って目標物とは特定の反射率により定義される物体のクラスである。この特定の反射率は、それに基づいて目標物をそれと認識できるような特性である。特に、少なくともその反射率を示す目標物だけが検出されることになる。
【0014】
本発明では、できるだけ全ての検出を受光器の線形領域内にとどめておくという一般的な制御は問題ではない。むしろそれは、自身の現在の距離において最も新しく検出された特定の反射率を持つ目標物に対して、送出された光パルスがちょうど適切な強度を示す、という特殊な制御である。他の物体から区別可能な受信信号が目標物から生じるような強度を見つけ出すため、光パルスを変化させる。特に発光エネルギーは、該エネルギーにより制限される射程内で目標物がどうにか検出される程度で十分である。他の物体については受信パルスが弱すぎるため、それが目標物とは無関係であることが分かる。この射程及びそれから導出される光パルスの強度は、いわば特定の距離区間だけを検査して目標物を探すものであって、センサの最大射程までの測定可能な距離の全スパンを一度に探すものではない。これにより本センサは検出において十分に選択的になる。
【0015】
本発明には目標物と他の標的との間、つまり協力する標的と協力しない標的との間に十分な信号の差が作り出されるという利点がある。これにより短い応答時間で目標物を非常に確実に認識することができる。同時に本発明は、既存のセンサをベースとして、製造コストを大幅に増大させることなく安価に実現できる。偏光は特に必要ないが、二つの手段の組み合わせで更に良い結果を得るために偏光を行うことも考えられる。
【0016】
前記目標物は再帰反射器であることが好ましい。そうすると前記特定の反射率は非常に高くなり、いかなる明るさの拡散反射性の物体よりも高く、また光沢のある表面や鏡状の表面よりも高くなる。故に再帰反射器は目標物を他の物体から区別する上で好適である。ただし本発明では、任意の反射器、つまり再帰反射のない反射器を単なる拡散反射性の物体から区別したり、明るい物体を暗い物体から区別したりすることも可能である。
【0017】
制御及び評価ユニットは光パルスの強度を発光器の電流の強さで設定するように構成されていることが好ましい。このようにすれば簡単に利用できる制御量となる。発光器にはレーザ光源がよく用いられるため、その場合はレーザ電流を変化させる。調節は連続的に行ってもよいし、射程の階級毎に段階的に行ってもよい。
【0018】
受光器には感度の異なる複数の受信チャネルが割り当てられていることが好ましい。そのために複数の受光素子、例えば異なるバイアス電圧で駆動されることにより異なる感度を持つ複数のAPDを設けることができる。また、付随する増幅部品の増幅率を異ならせることにより前記感度を達成することもできる。また、受信信号を電気的に分岐させ、各分岐路(これらが受信チャネルとなる)においてゲインを異ならせることも考えられる。
【0019】
制御及び評価ユニットは、光パルスの強度を長い射程及び非常に短い射程に向かって増大させるように構成されていることが好ましい。長い射程はセンサにより数メートル程度から始まり、数百メートル又はそれ以上に至る。それに従えば、短い射程とは1メートル程度又は数メートル程度までの近接領域を意味する。ある特定の射程に対して必要となる強度(特に発光器を制御するための電流の強さ)の依存性はいわゆるフェードアウト曲線で記述できる。この曲線はある一定の距離で極小値を示す。この距離はセンサにかなり近い。ただし、一見するとそれはゼロになると期待されるかもしれないがそうではなく、発光ローブと受光ローブが初めて完全に重なる一定の距離にある。つまり、それより手前の近接領域では重なりが不十分であるため信号損失があり、それを光パルスの強度を高めることで補償するのである。遠隔領域では距離に従った受信強度の低下を補償するための適合化が行われる。再帰反射器の反射には指向性があるため、その低下は拡散性の反射や光沢のある表面での反射の場合ほどは大きくない。フェードアウト曲線に基づいて、所望の射程に対する適切な設定値を、連続的又は射程の階級毎のいずれの形でも読み取ることができる。
【0020】
制御及び評価ユニットは、最初に、及び/又は、物体若しくは目標物が認識されない間、最大射程に対応する強度で光パルスを送出するように構成されていることが好ましい。この態様では光パルスの適切な強度が高い方から見つけ出される。そのためにまず、センサ及びその仕様による最大射程のために用意された最も強い光パルスを用いて全監視領域をカバーする。このような強さの光パルスだけを用いた検出は、従来のレーザスキャナのやり方に相当するものでもあるため、まだ決して目標物と他の物体を区別できることを保証するものではない。これは全ての物体をまとめて認識するための最初のステップに過ぎず、その後で光パルスの強度の変更による適合化が行われる。この強い光パルスは、より良い情報がまだ利用できないとき、特にセンサが測定を始めたときや物体が検出されない間に常に用いられる。周期的な偏向における前の角度ステップにおいてか、前の走査周期においてかを問わず、既に目標物が検出されているなら、後述のいくつかの実施形態にあるように、別の強度の光パルスを用いた測定を実行することができる。なぜなら、少なくとも1度は目標物の認識に成功した強度が1つ、出発点として既に分かっているからである。
【0021】
制御及び評価ユニットは、物体を検出したらそれに続いて該物体の測定距離に対応する強度の光パルスを送出するように構成されていることが好ましい。物体の検出によりセンサは情報を得たわけだから、次の測定では実際の距離に対応する射程に強度を適合させることができる。これにより、目標物がその特定の反射率によって他の物体から区別可能な受信信号を生じさせることが保証される。
【0022】
制御及び評価ユニットが最初は最小強度で光パルスを送出するように構成されており、特に該最小強度が、光パルスが最も良く拡散反射又は直反射されるような射程に対応していることが好ましい。この態様では、代わりに、光パルスの適切な強度が低い方から見つけ出される。最小の強度は、極端な近接領域ではなく、一定の距離にある最高感度の点に対応しているということを思い出されたい。これについては先にフェードアウト曲線との関係で既に説明した。
【0023】
制御及び評価ユニットは、少なくとも1つの別の光パルスの強度を、物体が検出されるまで又は該強度が最大射程に相当するまで増大させるように構成されていることが好ましい。光パルスの強度を段階的に増大させることにより、言わば物体がちょうど初めて検出されるような形になる。高い方から光パルスの適切な強度を見つけ出す場合は、次のステップで適正な強度を用いるために十分な情報が最初の測定で直ちに得られる。低い方からの場合は段階的な適合化が必要である。なぜならこの場合、エネルギーが不十分な間は何も測定されないからである。センサの最大射程に対応する強度の光パルスでも物体が検出されなければ、その走査角度には監視領域に何もないという測定結果となり、次の走査角度において可能なら物体を見つけ出すために、最小強度で最初からやり直す。
【0024】
制御及び評価ユニットは、光パルスがある目標物のために設定された強度を持つとき、受信信号の強度に基づいて目標物とそれ以外の物体を区別するように構成されていることが好ましい。高い方又は低い方から光パルスの強度が適切に設定された後は、目標物とそれ以外の物体を確実に区別するための前提が整う。目標物は明確な受信パルスを生成する一方、他の物体は全く又はいずれにせよ弱い受信パルスしか生成しない。前記区別は閾値によるか、レーザスキャナに関して受信パルスの検出のために知られているそれ以外の全ての方法で行われるが、ここでは感度が特定の反射率を持つ目標物のために特別に設定されており、従来のレーザスキャナのように任意の物体のために設定されてはいないという違いがある。低い方から徐々に走査する場合は物体の距離も基準として考慮することができる。即ち、強度が目標物の射程に対応して繰り返し高められた。このとき、エネルギーがまず、より低い反射率の物体をより近くの距離で検出するのに十分になることが考えられる。それが目標物であるとしたら、強度を設定する対象となった射程の近くで見つかるはずである。
【0025】
制御及び評価ユニットは、設定された光パルスの強度を同じ周期的走査又は次の周期的走査の間に目標物の角度範囲内で維持するか、該目標物の距離の予想値に適合させるように構成されていることが好ましい。ここまで記載してきた態様では、目標物を検出したらその都度、又は低い方から徐々に走査する場合には物体の検出なしで最大強度に達した後にも、再び最初の強度で測定を行うようになっている。しかし実際には、目標物を検出した角度範囲内での測定で該目標物に再び当たることが期待される。従って、その目標物がまだ検出される間は一度設定された強度を維持し、その後でようやく最初の強度に戻ることが考えられる。これは同じ周期的走査内で局所的に徐々に近づくようなやり方である。もっとも、目標物を複数回の周期的走査内で追跡すること(物体追跡)も考えられる。それにはあらゆる強力な公知のアルゴリズムが利用できる。例えばカルマンフィルタを基にして、目標物が次の周期的走査においてどの角度範囲及びどの距離で見つかるかを履歴から予測するアルゴリズムである。その場合、目標物の距離の変化が予測されたら、そこまで設定されていた強度をそれに適合させる。このような最適化により、より多くの回数の測定を目標物の認識に利用し、適切な強度の設定のために失われる測定の回数を減らすことができる。
【0026】
制御及び評価ユニットは、目標物がもはや検出されなくなったら光パルスの最初の強度、特に最小又は最大強度に戻るように構成されていることが好ましい。ある目標物のための強度の設定を維持してもよいのは、その都度の走査が実際にその目標物に当たる間だけである。従って、目標物の角度範囲から外れたり、追跡アルゴリズムが目標物を見失ったりしたら、再び最初と同様に目標物を探す。
【0027】
制御及び評価ユニットは、目標物の検出中にもその距離を測定し、その距離が変化したら光パルスの強度を適合させるように構成されていることが好ましい。目標物が大きな距離変化につながるような輪郭を持っていたり、新たな角度ステップにおいて、最初に検出された目標物の手前に別の目標物があったりすることが考えられる。複数の周期的走査にわたる物体追跡の場合は目標物が近づいたり遠ざかったりする可能性がある。これらいずれの場合も、最初に設定された強度をその目標物に対して固定的に用いてはならず、続けて適合化を行わなければならない。
【0028】
有利な発展形態では、複数の、特にレールに拘束された車両を備えるシステムにおいて、各車両が少なくとも1つの本発明に係るセンサ及び少なくとも1つの目標物、特に再帰反射器を備え、事故回避のために前記センサによる前記目標物の検出に基づいて車両の相互の位置が認識される。前記再帰反射器は目標物である。前記車両は例えば物流又は輸送システムの無人搬送車(automated guided vehicle: AGV)又は他の輸送ユニットであって自由に又はレール上を走行するものである。好ましい例はファウンドリ等のオーバーヘッドコンベアであり、その個々の搬送台車が前記車両である。車両同士がそのレーザスキャナで再帰反射器を検出し合い、危険なほど距離が近い場合は特に早めにブレーキをかけることにより事故を回避する。
【0029】
目標物は反射率の異なる複数の部分領域から成る符号化部を備えていることが好ましい。特に、該目標物は無反射の部分領域を有する再帰反射器である。このようにすると、走査中に検出と非検出の間の特有の切り替わり、つまり符号が生じ、それを同定や、鏡状の表面での反射との区別のために追加的に利用することができる。
【0030】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0031】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】レーザスキャナの概略断面図。
図2】高い強度から出発して光パルスの強度を設定するための模範的なフロー図。
図3】低い強度から出発して光パルスの強度を設定するための模範的なフロー図。
図4】検知された物体の距離に依存した信号強度と、適切なレーザ電流の模範的な等級分けを示す図。
図5】レーザスキャナと再帰反射器を有し、相手の再帰反射器を検出することにより互いに認識し合う車両の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1はレーザスキャナ10として構成された本発明に係るセンサの概略断面図である。発光器12は、例えば赤外又は他の波長領域のレーザ光源を備えており、発光光学系14を用いて光パルスを含む発射光16を生成する。この光は偏向ユニット18の表面で監視領域20へと方向転換される。光パルスは非常に短く、例えば0.5~2.5nsの範囲、また技術的に可能であればより短くすることが好ましい。光パルスは個別パルスでもよいし、数個のパルス、バースト又は二重パルスから成る簡単な符号でもよい。
【0034】
発射光16が監視領域20内で物体に当たると、直反射又は拡散反射された光22が再びレーザスキャナ10まで戻り、そこで偏向ユニット18を経由し、受光光学系24を用いてフォトダイオード又はAPD(アバランシェフォトダイオード)等の受光器26により検出される。受光器26の受信信号は、実施形態に応じて、例えば閾値を用いて直接アナログ又はデジタル的に評価されるか、AD変換器(好ましくはパルス幅の少なくとも1/5の分解能を持つもの)においてデジタル化されて評価のために一時保存される。
【0035】
偏向ユニット18は本実施形態では回転ミラーとして構成されており、モータ28の駆動により連続的に回転する。あるいは発光器12及び受光器26を含む測定ヘッドが回転してもよい。更なる代わりの構造形態として回転プリズムや傾けられる液体レンズを用いるものがある。巨視的に動く部分がない固体スキャナも考えられる。これには、MEMSや光学フェイズドアレイ、音響光学変調器等を用いて走査を行うものや、発光器12の特定の光源と受光器26の特定の画素を狙いを定めて作動させることに動きをエミュレートするものがある。後者の場合、例えば発光器12はVCSELアレイ、受光器26はSPADアレイである。
【0036】
こうして、発光器12により生成された発射光16は、回転運動により生じる監視平面20を塗りつぶすように掃引する。発光光学系14と受光光学系24の構成も、例えば偏向ユニットとして光線形成型ミラーを用いたり、レンズの配置を変えたり、レンズを追加したりする等、様々に変更できる。特に、自動コリメーション型の配置になったレーザスキャナも知られている。図示した実施形態では発光器12と受光器26が共通の回路基板30上に収まっているが、これも一例に過ぎない。というのも、専用の回路基板を設けたり、例えば互いに高さをずらした配置に変えたりできるからである。
【0037】
受光素子が1つしかない受光器26の代わりに複数の受光素子(特にAPD)を設けてもよい。このようにすると、例えば各APDへのバイアス電圧を異ならせること及び/又は後段のゲインを異ならせることにより、共同でより大きなダイナミックレンジをほぼ線形的に検出するような複数の受信信号が生成される。あるいは、受信信号を電気的に分岐させる。そうするとレーザスキャナ10はもはや1つだけの受信チャネルではなく、例えば高感度、中感度及び無感度の受信チャネルというように、感度の異なる複数の受信チャネルを各時点で持つ。
【0038】
モータ28又は偏向ユニット18の各時点での回転位置は角度測定ユニット32を通じて検出される。該ユニットはここでは模範例として一緒に回転するコード板とフォーク状光遮断機の形をしている。監視領域20からの反射光22が受光器26により受光されると、角度測定ユニット32により測定される偏向ユニット18の角度位置から監視領域20内における物体の角度位置を推定することができる。加えて、光パルスが発射されてから監視領域20内で物体に反射された後、受光されるまでの光伝播時間を算出し、光の速度を用いてレーザスキャナ10から物体までの距離を推定することが好ましい。
【0039】
この評価は評価ユニット34において行われる。該ユニットはそのために発光器12、受光器26、モータ28及び角度測定ユニット32と接続されている。これにより、前記角度及び距離を通じて監視領域20内にある全ての物体の二次元極座標が利用可能になる。
【0040】
制御及び評価ユニット34はまた、すぐ後で述べるように、特定の反射率を持つ目標物、特に再帰反射器を他の物体から区別するように構成されており、そのために、送出される光パルスの強度を変化させる。あるいは、少なくとも評価のこの部分は、必要な測定及び制御データをインターフェイス36経由で上位のシステムと交換することにより、外部で行うことも可能である。
【0041】
まず、数値例に基づき、レーザスキャナ10の機能の仕方を、特に鏡状の面と再帰反射器を検出する場合について更にやや深く考察する。偏向ユニット18は一定の回転数frotで回転する(ここではfrot=50Hz)。発光器12から光パルスが送出される測定繰り返し数が走査の角度分解能を決定する。ここでは0.1°毎に1個の光パルスが生成されるようにその数を選ぶものとする。この場合、1回転の間の測定数はNmess=360°/0.1°=3600となる。正確な角度割り当ては角度測定ユニット32を用いて行われる。従って測定周期はTrep=1/frotmess=5.6μsとなる。
【0042】
本発明に係るレーザスキャナ10が特定の反射率を持つ目標物を最善の形で区別する方法について、再帰反射器の例を挙げて説明する。金属的で非常に光沢のある物体の場合にとりわけ取り違えの恐れがある。確かに、再帰反射器からは発射光16がより高い割合でレーザスキャナ10まで戻ってくる。なぜなら金属性の反射器の場合、拡散反射する物体の場合と同様に、距離に応じた典型的な1/rの低下があるからである。この低下は具体的な金属性の表面に応じて大きかったり小さかったりする。しかしその差は20%~30%に過ぎないと見ておくべきである。
【0043】
この信号差は、受信信号が本当にそれを捕らえている限りは原理的に区別可能である。しかし、各物体の拡散反射率が様々であることやその距離に違いがあることから信号の強弱変化が6桁を超えるため、それは非常に難しい。従来は、遠方にある反射率の低い物体をも検出するために、光パルスが最大の強さを持つようにレーザスキャナ10を設計していた。そうすると、近くに再帰反射器があるという極端な場合には受光器26が完全に過負荷の状態になるため、光パルスの強さは受信信号における振幅にはもはや表れず、代わりにパルス幅が大きくなる。そのため、その信号差は実際には全く分解されないか、いずれにせよ不十分にしか分解されない。また、この記載における光パルスの強さは、強度、即ち受信信号の振幅又はレベルを通じて定義される。代わりにエネルギーを光パルスの面積で表したとしても、パルス形状が一定であれば、受光器が過負荷の状態でない限り、面積は振幅で直接等級分けされる。
【0044】
本発明は、非常に低い発光エネルギーで測定を行えば再帰反射器だけが検出されるという考えに基づいている。そのために、弱められた光パルスが測定に用いられる。該光パルスは、仕様上の最小サイズの再帰反射器がどうにか許容可能なひねり状態にあるという場合に対応して設計されている。再帰反射器の実際の距離に対する適切な発光エネルギーを見つけ出すために、この距離は例えば、図2で説明するように、まだ過負荷の状態にある測定で予め特定されるか、図3で説明するように、レーザスキャナ10がその距離を繰り返し慎重に探る。
【0045】
こうして再帰反射器が線形領域において検出される。これにより、不利な場合でも20%~30%はある前述の信号差に基づいて確実な区別が可能となる。実際にレーザ電流は発光器12の発振閾値より上で変えることができる。先に挙げた5.6μsという測定周期の場合、例えばNPulse=5通りの異なるエネルギーILaserでの発光が可能であり、それは適切な発光エネルギーを特定するために様々な接近の仕方の余地を生む。この状態でもなおパルス毎にtmess=TDelta/NPulse=1.1μsという測定時間が利用可能であり、これは少なくとも20mまでの距離をカバーするのに十分である。区分の例として、ILaser1=50mW、ILaser2=100mW、ILaser3=200mW、ILaser4=400mW、ILaser5=800mWが考えられる。また、受光器26のAPDへのバイアス電圧を調節する等、受光路においてゲインを操作することによっても発光エネルギーは実質的に変わる。
【0046】
図2は適切な発光エネルギーを見つけ出すために高い方から、つまり強い光パルスから出発して近づくというやり方の模範例のフロー図である。強い光パルスを用いて、まだ過負荷の状態にある試験的な測定において物体の正しい距離を測定し、それに続いて再帰反射器に狙いを定めた検出に合うように制御された測定を行う。
【0047】
ステップS1ではそのためにまず光パルスの強度が最も強い値に設定される。この強度は、再帰反射器が最大限に不利なひねり状態にあってその実効面積が小さくなり、しかもレーザスキャナ10の最大射程にあったとしても、なお物体を検出するのに十分でなければならない。
【0048】
この最大強度の光パルスを用いて次にステップS2で測定が行われる。即ち、光パルスが送出され、それが物体に当たれば再び受信される。この測定は最大射程までいかなる物体に対しても反応する。
【0049】
ステップS3では、拡散反射又は直反射された光パルスが受信されて物体が検出されたかどうかが調べられる。検出されなかった場合、ステップS1で次の測定のためにまた最大強度が設定される。物体が検出されたらステップS4においてその距離が光伝播時間法で測定される。
【0050】
ステップS5で、今度は光パルスの強度が、前記測定された距離において再帰反射器がちょうどまだ確実に検出されるような値に設定される。そしてステップS6でそれに対応する測定が行われる。
【0051】
ステップS7では、ステップS3で検出された物体が目標物つまり再帰反射器であるか否かが判定される。ここではステップS2とS5の2つの測定が同じ物体を検知しているという暗黙の仮定があるが、これは角度ステップが極めて小さいことから容認される。上記の数値例では測定の間隔はわずか1.1μs又は0.02°である。光パルスの強度はステップS5により、再帰反射器がちょうどまだ認識されるように設定されている。それより反射率が低い他の物体はこの強度の光パルスでは無視されるか、いずれにしてもより低い区別可能な受信信号レベルで検出される。加えて、光パルスが適切な強度であるため、受光路が少なくとも広い範囲で線形の領域内にとどまる。故に、受信信号において再帰反射器の受信パルスを確実に検出できる。なぜなら、20%~30%の信号差は線形的な検出により実際に受信信号において再現され、しかもそれは確実な区別のために十分な信号差だからである。
【0052】
ステップS3で見つかった物体がステップS7により目標物ではないとされたら、次の測定が再びステップS1において最大強度で始まる。そうでなければステップS8で目標物が検出される。それに付随する角度位置と距離はいずれも既知であるから、後続の評価ではそれに応じた対応が可能である。その後はステップS1において最大強度で次の測定が行われ、上記手順が同様に継続される。後で代わりの実施形態について説明するが、そこでは目標物を検出した後、単純に初期状態には戻らない。
【0053】
図3は適切な発光エネルギーを見つけ出すために低い方から、つまり弱い光パルスから出発して近づくという別のやり方の模範例のフロー図である。ここではレーザスキャナ10はまず最も弱い光パルスから探索を始め、全ての考え得る物体の中で最初の物体としての再帰反射器が検出されるまで、光パルスを徐々に強くして次第に長い距離を探索してゆく。
【0054】
ステップS1’では光パルスの強度が最も弱い値に設定される。そのエネルギーは最適な距離にある再帰反射器を検出するに足りるに過ぎない。後でまた図4とそのいわゆるフェードアウト曲線を参照して説明するが、この最適な距離は必ずしも最短距離ではなく、レーザスキャナ10から一定の距離にある可能性がある。
【0055】
ステップS2’ではこの最小強度の光パルスで測定が行われ、そのときに物体が検出されたかどうかがステップS3’で調べられる。検出されていなければステップS4’で光パルスの強度が上げられる。強度が上がると、次の測定ではより遠くの位置において又はフェードアウト曲線に従って近接領域内のより近い位置において再帰反射器を検出することが可能になる。
【0056】
ステップS5’では更に、この新たな高い強度が既に最大値を超えているかどうかが調べられる。超えていない間はステップS2’からS4’までの繰り返しループでパルスを徐々に強くしながら再帰反射器を探す。強度の最大値を超えたら、この走査方向には再帰反射器がないことが明らかであるから、新たな走査方向で再帰反射器を探すために、ステップS1’において強度の最も弱い値からやり直す。
【0057】
ステップS3’で物体が検出されたら、ステップS6’で受信信号が調べられ、その物体が目標物又は再帰反射器であるかどうかが判定される。それにはまず、ごく普通の方法でその受信レベルを例えば閾値を用いて評価すればよい。その閾値は再帰反射器の反射率に応じて設定されている。そうなるとそれは図2のステップS7の評価に相当するものとなり、ただ送出される光パルスの強度値の適切な値を違うやり方で見つけ出したに過ぎない。ステップS6’で追加的に物体の距離を測定することも可能である。再帰反射器であればこの距離はこの強度で送出された光パルスの射程の限界付近にあるはずである。距離がそれより近ければそれは他の物体である。なぜなら、その近い距離に再帰反射器があったとしたらもっと早い繰り返しのときにより低い強度の光パルスで既に検出されていたはずだからである。
【0058】
ステップS7’では目標物が検出される。その角度位置と距離はいずれも既知であるから、後続の評価ではそれに応じた対応が可能である。その後はステップS1’において最小強度で次の測定が行われ、上記手順が同様に継続される。
【0059】
既に図2で示唆したように、目標物を検出した後は始め最大又は最小強度での測定を再び行わないことにより、上記方法を最適化することができる。例えば、初期値に向かって強度を一定の分量しか増大又は減少させないようにすることもできる。あるいは、その後の測定で目標物が認識される間は光パルスの強度の値を最適化された値に維持し、目標物が認識されなくなってから再び部分的又は完全に初期値に戻す。その際、第2の、より近い再帰反射器が認識されるように、測定された距離を引き続き監視すべきである。
【0060】
一旦設定した強度を一時的に維持することは、偏向ユニット18が1回転する間の物体追跡の簡単な例である。もっと複雑な方法も考えられる。後続の回転の際には先に検出された再帰反射器の角度部分が既に分かっているから、その走査範囲では光パルスの強度の開始値として最小値又は最大値よりも良い値を用いることができる。その際、合間に生じる再帰反射器の相対的な移動を見込んで一定の許容差を設けることができる。また、再帰反射器がその後に取るであろう角度位置と距離を履歴から予測するという物体追跡も考えられる。このような最適化措置により応答時間が短くなる。なぜなら、強度の校正のために失われる走査の回数が減るからである。また、信頼性チェックが可能になるため、個々のノイズを目標物と誤認することがなくなる。
【0061】
図4は、検知された物体の距離に依存した信号強度と、既に何度も話題にしたフェードアウト曲線を示している。距離領域毎に光パルスの強度を設定するため、増大する適切なレーザ電流l1~l5を表す様々なグレースケールの背景が各距離領域に付されている。即ち、ある特定の距離領域で再帰反射器が検出されたら、それに対して付随するレーザ電流が設定されることになる。図示した曲線は再帰反射器と金属的な鏡状の物体とを区別する基準となる閾値を示している。曲線の具体的な推移及び付随するレーザ電流はレーザスキャナの具体的な構成に依存するものであり、図は単なる模範例に過ぎない。
【0062】
図4の曲線の推移によると、レーザスキャナ10の発光ローブと受光ローブが初めて完全に重なり合う距離領域がある。そこでは最小のエネルギー又は最小のレーザ電流l1で動作が可能である。より長い距離の方に向かうと必要な発光エネルギーが大きくなるが、それは不連続に段階l2~l5に設定する代わりに連続的に調節することもできる。一方、近接領域においても、そもそも有意義な信号を受信するために強度を上げる必要がある。それは、発光ローブと受光ローブの重なりが小さくなり、ある時点から付随的になるからである。
【0063】
図5は応用例を示している。車両50にはそれぞれ少なくとも1つのレーザスキャナ10と、少なくとも1つの協力する標的又は再帰反射器52とが装備されている。車両50は例えば、自由に又はレールに拘束された状態で運動する工場施設又は物流施設内の無人搬送車(automated guided vehicle: AGV)又は他の走行可能な輸送ユニットである。好ましい応用においては、それは、特にマイクロシステム技術又は半導体製造(ファウンドリ)の分野におけるオーバーヘッドコンベアの搬送台車である。レーザスキャナ10は他の車両50の再帰反射器52をその都度検出し、それに基づいて車両同士の相対位置を認識する。そして、車両50が互いに避け合ったり、速度を適応させたり、緊急時にブレーキ動作を発動したりすることにより衝突が回避される。
【0064】
更に、検出が正確であるほど、そして応答時間が短いほど、車両50はより高速で走行できる。なぜなら、各車両が互いにより早めに、より標的を重視して反応するからである。その際、静的な検出だけでなく、上述のような複雑な評価も有用である。例えば、物体追跡により、前方を走る車両50が加速したため、ブレーキ等は不要であるばかりか加速さえ可能である、ということが確認できる。必要なデータ解析は車両50毎に自律的に行うことが好ましいが、上位の制御装置がそれを担当又は支援することもできる。
【0065】
別の実施形態では、反射領域と無反射又は吸収領域が切り替わる箇所を少なくとも1つ設けることにより、再帰反射器52がパターンで符号化される。これにより雑音妨害がより良好に抑制される。車両50同士がその符号化部を基にして互いに個体を認識したり、走行指示を受けたりすること、例えば特定の最小間隔を符号化した再帰反射器52を持つ車両50に対してその最小間隔を維持することさえも考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5