(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】haNKセツキシマブ併用及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/704 20060101AFI20220425BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20220425BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220425BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220425BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220425BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220425BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220425BHJP
A61K 45/06 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
A61K31/704 ZMD
A61K35/17 Z
A61K38/20
A61K39/00 H
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/06
(21)【出願番号】P 2020508476
(86)(22)【出願日】2018-08-14
(86)【国際出願番号】 US2018046735
(87)【国際公開番号】W WO2019036485
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2020-04-01
(32)【優先日】2017-08-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518203696
【氏名又は名称】ナントセル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】スーン-シオン,パトリック
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】CytRx Corporation Announces Global Strategic License With NantCell Inc. For Aldoxorubicin, An Albumin Mediated Chemotherapeutic,CISION PR Newswire, Jul 28, 2017,https://www.prnewswire.com/news-releases/cytrx-corporation-announces-global-strategic-license-with-nantcell-inc-for-aldoxorubicin-an-albumin-mediated-chemotherapeutic-300495897.html
【文献】The generation and analyses of a novel combination of recombinant adenovirus vaccines targeting three tumor antigens as an immunotherapeutic,Oncotarget. 2015; 6:31344-31359.,https://doi.org/10.18632/oncotarget.5181
【文献】An NK cell line (haNK) expressing high levels of granzyme and engineered to express the high affinity CD16 allele,Oncotarget. 2016; 7:86359-86373.,https://doi.org/10.18632/oncotarget.13411
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61P 35/00
A61K 31/704
A61K 38/20
A61K 39/00
A61K 39/395
A61P 43/00
A61K 35/17
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する患者の治療
をするための化学療法組成物であって、
ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含む免疫療法組成物
、抗体および免疫刺激性スーパーカインと組み合わせて使用するための、アルドキソルビシンを含む化学療法組成物
であり、
前記ワクチン成分が、ブラキウリ、MUC1、及びCEAからなる群から選択される腫瘍関連抗原であり、
前記細胞傷害性細胞成分が、NK-92誘導体細胞であり、
前記抗体が、セツキシマブであり、かつ
前記免疫刺激性スーパーカインが、ALT803である、
化学療法組成物。
【請求項2】
腫瘍を有する患者の治療をするための免疫療法組成物であって、
アルドキソルビシンを含む化学療法組成物、抗体および免疫刺激性スーパーカインと組み合わせて使用するための、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含む免疫療法組成物であり、
前記ワクチン成分が、ブラキウリ、MUC1、及びCEAからなる群から選択される腫瘍関連抗原であり、
前記細胞傷害性細胞成分が、NK-92誘導体細胞であり、
前記抗体が、セツキシマブであり、かつ
前記免疫刺激性スーパーカインが、ALT803である、
免疫療法組成物。
【請求項3】
アベルマブ、ベバシズマブ、カペシタビン、シスプラチン、シクロホスファミド、5-FU、ロイコボリン、Nab-パクリタキセルおよびネシツムマブからなる群から選択される少なくとも1つの薬剤をさらに組み合わせて使用するための、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ワクチン成分が、改変細菌、改変酵母、及び改変ウイルスのうちの少なくとも1つを含み、及び前記ワクチン成分が、腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を更に含む、請求項1
~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ワクチン成分が、改変細菌、改変酵母、及び改変ウイルスのうちの少なくとも2つを含み、及び前記ワクチン成分が、腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を更に含む、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞傷害性細胞成分がhaNK細胞及びT細胞のうちの少なくとも1つ
を含んでなり、前記haNK細胞又は前記T細胞が、キメラ抗原受容体及びCD16高親和性変異体のうちの少なくとも1つを発現するように遺伝子操作されている、請求項1~
5のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項7】
抗
体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を
さらに組み合わせて使用するための、請求項1~
6のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項8】
前記抗体が前記細胞傷害性細胞成分にカップリングされる、請求項
7に記載の
組成物。
【請求項9】
前記抗体が、成長因子受容体、血管成長受容体、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープのうちの少なくとも1つに特異的に結合する、請求項
7又は8に記載の
組成物。
【請求項10】
チェックポイント阻害に干渉する又はそれを下方制御する前記タンパク質が、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストである、請求項
7~9のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項11】
前記細胞傷害性細胞成分がhaNK細胞及びT細胞のうちの少なくとも1つ
を含んでなり、前記haNK細胞又は前記T細胞が、キメラ抗原受容体及びCD16高親和性変異体のうちの少なくとも1つを発現するように遺伝子操作されている、請求項1に記載の
組成物。
【請求項12】
抗
体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を
さらに組み合わせて使用するための、請求項1に記載の
組成物。
【請求項13】
前記抗体が前記細胞傷害性細胞成分にカップリングされる、請求項12に記載の
組成物。
【請求項14】
前記抗体が、成長因子受容体、血管成長受容体、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープのうちの少なくとも1つに特異的に結合する、請求項12又は13に記載の
組成物。
【請求項15】
チェックポイント阻害に干渉する又はそれを下方制御する前記タンパク質が、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストである、請求項12~14のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項16】
前記腫瘍が固形腫瘍である、請求項1~15のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項17】
免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカインを
さらに組み合わせて使用するための、請求項1~16のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項18】
前記免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカインが、IL-2、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニス
ト、IL-21、IPS1、及びLMP1からなる群から選択される、請求項17に記載の
組成物。
【請求項19】
前記ワクチン成分と前記細胞傷害性細胞成分とが少なくとも1日空けて投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項20】
前記患者が、過去の白金系化学療法及び抗PD-1/PD-L1療法のうちの少なくとも一方の治療歴を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項21】
前記患者の分子プロファイル
が決定され、前記分子プロファイルがHER2発現レベル又はRAS突然変異状態を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項22】
腫瘍を有する患者の治療
をするための免疫療法組成
物であって、
アルドキソルビシンを含む化学療法組成物、抗体および免疫刺激性スーパーカインと組み合わせて使用するための、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含
む免疫療法組成物であり、
前記ワクチン成分が、ブラキウリ、MUC1、及びCEAからなる群から選択される腫瘍関連抗原であり、
前記細胞傷害性細胞成分が、NK-92誘導体細胞であり、
前記抗体が、セツキシマブであり、
前記免疫刺激性スーパーカインが、ALT803であり、かつ
前記免疫療法組成物が
、成長因子受容体、血管成長受容体、癌関連抗原、癌特異抗原、若しくは癌特異的及び患者特異的ネオエピトープに特異的に結合する抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を更に含む、
免疫療法組成物。
【請求項23】
腫瘍を有する患者の治療をするための化学療法組成物であって、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含む免疫療法組成物、抗体および免疫刺激性スーパーカインと組み合わせて使用するための、アルドキソルビシンを含む化学療法組成物であり、
前記ワクチン成分が、ブラキウリ、MUC1、及びCEAからなる群から選択される腫瘍関連抗原であり、
前記細胞傷害性細胞成分が、NK-92誘導体細胞であり、
前記抗体が、セツキシマブであり、
前記免疫刺激性スーパーカインが、ALT803であり、かつ
前記免疫療法組成物が、成長因子受容体、血管成長受容体、癌関連抗原、癌特異抗原、若しくは癌特異的及び患者特異的ネオエピトープに特異的に結合する抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を更に含む、
化学療法組成物。
【請求項24】
前記ワクチン成分が、改変細菌、改変酵母、及び改変ウイルスのうちの少なくとも1つを含み、及び前記ワクチン成分が、腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を更に含む、請求項22
または23に記載の組成物。
【請求項25】
前記細胞傷害性細胞成分がhaNK細胞及びT細胞のうちの少なくとも1つ
を含んでなり、前記haNK細胞又は前記T細胞が、キメラ抗原受容体及びCD16高親和性変異体のうちの少なくとも1つを発現するように遺伝子操作されている、請求項22~24のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項26】
前記細胞傷害性細胞成分が、抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質とカップリングされる、請求項22~25のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項27】
前記抗体が、成長因子受容体、血管成長受容体、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープのうちの少なくとも1つに特異的に結合する、請求項26に記載の
組成物。
【請求項28】
チェックポイント阻害に干渉する又はそれを下方制御する前記タンパク質が、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストである、請求項26に記載の
組成物。
【請求項29】
前記ワクチン成分と前記細胞傷害性細胞成分とが、前記患者に共投与されるように製剤化される、請求項22~28のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項30】
前記ワクチン成分と前記細胞傷害性細胞成分とが、前記患者に別々に投与するように製剤化される、請求項22~28のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項31】
免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカイン
をさらに組み合わせて使用するための、請求項22~30のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項32】
前記免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカインが、IL-2、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニス
ト、IL-21、IPS1、及びLMP1からなる群から選択される、請求項31に記載の
組成物。
【請求項33】
前記患者が、過去の白金系化学療法及び抗PD-1/PD-L1療法のうちの少なくとも一方の治療歴を有する、請求項22~32のいずれか一項に記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年8月15日に出願された本発明者らの同時係属中の米国仮特許出願第62/545,744号明細書に対する優先権を主張するものであり、この仮特許出願は全体として本明細書に援用される。
【0002】
本発明の分野は、特に本発明が標的化型ドキソルビシンとの併用での免疫療法薬に関することに伴い、癌治療用組成物及び方法である。
【背景技術】
【0003】
以下の説明には、本発明の理解に有用となり得る情報が含まれる。これは、本明細書に提供される情報のいずれかが現在特許請求されている発明の先行技術である、若しくはそれと関連性がある、又は具体的若しくは暗黙的に参照されるいずれかの刊行物が先行技術であると認めるものではない。
【0004】
本明細書において特定される全ての刊行物は、個別の刊行物又は特許出願がそれぞれ参照によって援用されることが具体的且つ個別的に示されたものとするのと同程度に参照によって援用される。援用される参考文献中の用語の定義又は使用が、本明細書に提供される当該用語の定義と矛盾する、又はそれに反する場合、本明細書に提供される当該用語の定義が適用され、その参考文献中の当該用語の定義は適用されない。
【0005】
セツキシマブ(ERBITUX(商標)、ヒト上皮成長因子受容体に対するモノクローナル抗体)は、転移性結腸直腸癌、転移性非小細胞肺癌及び頭頸部癌の治療用に、並びに放射線療法と併用した頭頸部扁平上皮癌(SCCHN)の治療への使用に、又は先行する白金系療法を受けた患者において単剤として、承認されている。EGFRシグナル伝達の直接的な阻害に加え、抗体のFc部分を介した細胞傷害性エフェクター細胞の動員による抗体依存性細胞傷害(ADCC)が、セツキシマブの重要な作用様式であると考えられている。
【0006】
セツキシマブの見かけ上の二重標的化を利用して、膠芽腫に対するセツキシマブをベースとしたキメラ抗原受容体を有する遺伝子改変NK92細胞が報告された(例えば、OncoImmunology 2016を参照のこと)。同様に、CD16のV158変異体を有する高親和性NK(haNK)細胞が、これらの細胞は照射後であっても高レベルのグランザイム及び高レベルの溶解活性を有するため、潜在的に有効性が高い治療モダリティとして報告されている。これらの細胞がセツキシマブと併せて種々の癌細胞に対して使用され、有意な抗体依存性細胞媒介性細胞傷害を示した(Oncotarget,2016,Vol.7,(No.52),pp:86359-86373)。少なくとも概念上は有望であるが、かかる手法を用いた免疫応答は、使用する抗体の標的化された効果になおも限られている。加えて、腫瘍微小環境が抑制的である場合、かかる標的化された手法であっても、予想ほど有効でないこともある。
【0007】
アルドキソルビシン(ドキソルビシンの(6-マレイミドカプロイル)ヒドラゾン)はプロドラッグ型のドキソルビシンであり、様々なタンパク質のチオール基、特に個体への注射時にアルブミンのシステインチオールC34にコンジュゲートすることができる。ヒドラジン基の酸に不安定な性質に起因して、ドキソルビシン-アルブミンコンジュゲートが癌微小環境によく見られるとおりの酸性環境に直面すると、ドキソルビシンがアルブミンから加水分解的に切断される。従って、アルドキソルビシンは腫瘍微小環境中に遊離ドキソルビシンを特異的に放出することが期待される。有利には、循環アルブミンもまた、腫瘍に優先的に蓄積する傾向があり、これは腫瘍新生血管系の内皮を通じたgp60媒介性トランスサイトーシスに起因する可能性が最も高い。従って、アルドキソルビシンは、腫瘍微小環境を特異的に標的化するための魅力的な治療モダリティを呈すると考えられる。
【0008】
これを受けて、膠芽腫の第二選択治療(臨床試験識別番号NCT02014844)、カポジ肉腫(臨床試験識別番号2029430)、進行又は転移性膵管腺癌(臨床試験識別番号NCT01580397)、及び転移性小細胞肺癌(臨床試験識別番号NCT02200757)の治療を含め、様々な臨床試験が行われている。アルドキソルビシンはまた、転移性又は局所進行肉腫の治療のためイホスファミドとの併用でも報告されている(臨床試験識別番号NCT02235701)。注目すべきことに、アルドキソルビシンは、免疫療法剤との併用では使用されておらず、これは恐らくは、DNA損傷応答からの有害作用が疑われるとともに、ドキソルビシンに曝露した様々な細胞でエピジェネティック調節及びメタトランスクリプトミック調節が解除されることが理由である。
【0009】
従って、癌の治療におけるアルドキソルビシンの併用が限られていることが当該技術分野において公知であるとしても、特に免疫療法組成物との併用での、改良された併用療法の提供がなおも必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の主題は、特に転移性腫瘍における腫瘍を治療するための、免疫療法組成物と化学療法組成物との併用の様々な組成物、方法、及び使用に関する。特に注目すべきことに、アルドキソルビシンを含む化学療法組成物の共投与によって腫瘍に対する免疫応答が亢進しており、ここで免疫療法組成物は、1つ以上の腫瘍関連抗原に対する癌ワクチンとNK細胞ベースの療法薬とを含む。有利には、haNK細胞並びにアルドキソルビシンの両方の治療利益とも、低酸素腫瘍微小環境による悪影響を受けない。実際、ドキソルビシン(酸性腫瘍微小環境でアルドキソルビシンから優先的に放出される)を使用すると、低酸素腫瘍微小環境によく見られる骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)を減少させることができ、又は更には消失させることさえできる。
【0011】
本発明の主題の一態様において、本発明者らは、腫瘍を有する患者の治療方法を企図する。この方法では、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含む免疫療法組成物及びアルドキソルビシンを含む化学療法組成物が提供される。次に、この免疫療法組成物及び化学療法組成物が、腫瘍(例えば、固形腫瘍、転移性腫瘍等)を治療するのに十分な用量及びスケジュールで患者に投与される。好ましくは、かかる方法で治療される患者は、過去の白金系化学療法及び過去の抗PD-1/PD-L1療法のうちの少なくとも一方の治療歴を有する。
【0012】
特に好ましい態様において、ワクチン成分は、改変細菌、改変酵母、及び改変ウイルスのうちの少なくとも1つ又は2つを含む。ワクチン成分は、腫瘍関連抗原(例えば、ブラキウリ、MUC1、及びCEA)をコードする組換え核酸を含むことが好ましい。更にまた、細胞傷害性細胞成分がhaNK細胞及びT細胞のうちの少なくとも一方であり、このhaNK細胞又はT細胞は、キメラ抗原受容体及びCD16高親和性変異体のうちの少なくとも一方を発現するように遺伝子操作されていることが好ましい。
【0013】
好適な方法はまた、抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を投与するステップを含んでもよく、この抗体又はタンパク質は、例えばhaNK細胞のCD16を介して細胞傷害性細胞成分にカップリングされてもよい。例えば、好適な抗体は、成長因子受容体、血管成長受容体、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープに選択的に結合することになる。加えて、チェックポイント阻害に干渉する又はそれを下方制御するタンパク質は、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストであってもよい。
【0014】
所望に応じて、企図される方法はまた、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IL-15等)又は免疫刺激性スーパーカイン(superkine)(例えば、ALT803)を投与するステップも含み得る。最も典型的には、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とは少なくとも1日空けて投与されることが企図される。しかしながら、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とは同時に又は少なくとも同じ日に投与されることが企図される。任意選択で、この方法に係る治療前及び治療後に、患者の分子プロファイル、特にHER2発現レベル又はRAS突然変異状態を含むものを決定してもよく、これは、治療が成功する可能性の決定、治療における抗体タイプの決定、及び更なる治療計画のための指針を与え得る。
【0015】
本発明の主題の別の態様において、本発明者らは、腫瘍を有する患者の治療における免疫療法組成物とアルドキソルビシンを含む化学療法組成物との使用を企図する。好ましくは、かかる方法で治療される患者は、過去の白金系化学療法及び過去の抗PD-1/PD-L1療法のうちの少なくとも一方の治療歴を有する。免疫療法組成物はワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とを含み、更に任意選択で、成長因子受容体、血管成長受容体、癌関連抗原、癌特異抗原、若しくは癌特異的及び患者特異的ネオエピトープに特異的に結合する抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質を含む。
【0016】
特に好ましい態様において、ワクチン成分は、改変細菌、改変酵母、及び改変ウイルスのうちの少なくとも1つ又は2つを含む。ワクチン成分は、腫瘍関連抗原(例えば、ブラキウリ、MUC1、及びCEA)をコードする組換え核酸を含むことが好ましい。更にまた、細胞傷害性細胞成分がhaNK細胞及びT細胞のうちの少なくとも1つであり、このhaNK細胞又はT細胞は、キメラ抗原受容体及びCD16高親和性変異体のうちの少なくとも一方を発現するように遺伝子操作されていることが好ましい。一部の実施形態において、細胞傷害性細胞成分は、抗体又はチェックポイント阻害に干渉する若しくはそれを下方制御するタンパク質とカップリングされる。この抗体は、成長因子受容体、血管成長受容体、免疫チェックポイント阻害薬、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープのうちの少なくとも1つに特異的に結合することが好ましい。また、チェックポイント阻害に干渉する又はそれを下方制御するタンパク質が、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストであることも好ましい。
【0017】
一部の実施形態において、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とは、患者に共投与されるように製剤化される。他の実施形態において、ワクチン成分と細胞傷害性細胞成分とは、患者に別々に投与されるように製剤化される。
【0018】
本使用は、治療における免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカインの使用を更に含み得る。最も好ましくは、免疫刺激性サイトカイン又は免疫刺激性スーパーカインは、IL-2、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニスト(ALT803)、IL-21、IPS1、及びLMP1からなる群から選択される。
【0019】
以下の好ましい実施形態の詳細な説明から、添付の図面と併せて、本発明の主題の様々な目的、特徴、態様及び利点が更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】転移性膵癌と診断された患者#1に対する癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療後の患者の血中における正規化した糖鎖抗原(CA)19-9(CA19-9)レベルのグラフを示す。x軸は日数(時間)を表し、y軸は量を表す。
【
図2】転移性膵癌と診断された患者#2に対する癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療後の患者の血中における正規化した糖鎖抗原(CA)19-9(CA19-9)レベルのグラフを示す。x軸は日数(時間)を表し、y軸は量を表す。
【
図3】転移性膵癌と診断された患者#3に対する癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療後の患者の血中における癌胎児性抗原(CEA)レベルのグラフを示す。x軸は日数(時間)を表し、y軸は量を表す。
【
図4】転移性膵癌と診断された患者#4に対する癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療後の患者の血中における正規化した糖鎖抗原(CA)19-9(CA19-9)レベルのグラフを示す。x軸は日数(時間)を表し、y軸は量を表す。
【
図5】転移性膵癌と診断された患者#5に対する癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療後の患者の血中における正規化した糖鎖抗原(CA)19-9(CA19-9)レベルのグラフを示す。x軸は日数(時間)を表し、y軸は量を表す。
【
図6】患者#6の癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療前及び治療後のPETスキャン写真を示す。
【
図7】患者#6の癌ワクチン及び細胞傷害性細胞治療前及び治療後の横断PETスキャン写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで本発明者らは、免疫療法組成物及びアルドキソルビシンを含む化学療法剤の有効性が、これらの2つの薬剤を癌患者に共投与することにより、場合によっては相乗的にすら(即ち、単に相加的に留まらない程度まで)亢進させ得ることを発見した。別の見方をすれば、本発明者らは更に、免疫療法組成物とアルドキソルビシンを含む化学療法剤とを含む治療レジメンを提供することにより、患者の腫瘍、特に転移性腫瘍をより有効に治療し得ることを見出した。アルドキソルビシンはドキソルビシンの前駆体であるため、及びドキソルビシンは免疫抑制薬として報告されているため、かかる知見は予想外であり、むしろ驚きでさえある(例えば、Ann Plast Surg.2012 Feb;68(2):215-21を参照のこと)。従って、特に好ましい態様において、本発明者らは、i)ワクチン成分及び細胞傷害性細胞成分を含む免疫療法組成物と、ii)アルドキソルビシンを含む化学療法組成物とを含む治療レジメンを提供し得ること、及び腫瘍を治療するのに十分な用量及びスケジュールでこの免疫療法組成物及び化学療法組成物を投与することにより、かかる治療レジメンを用いて腫瘍を治療し得ることを企図する。
【0022】
本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍」は、人体の1つ以上の解剖学的部位に位置し得る又は見出され得る1つ以上の癌細胞、癌組織、悪性腫瘍細胞、又は悪性腫瘍組織を指し、且つそれらと同義的に使用される。本明細書で使用されるとき、用語「結合する」は、10-6M以下又は10-7M以下のKDによる高親和性での2つの分子間の相互作用を「認識する」及び/又は「検出する」という用語を指し、且つそれと同義的に使用される。本明細書で使用されるとき、用語「提供する」又は「提供すること」は、製造する、生成する、置く、使用を可能にする、又はすぐに使用できるようにすることを指し、且つそうすることの任意の行為を含む。
【0023】
本明細書で使用されるとき、用語「共投与すること」又は「共投与」は、患者に2つ以上の薬剤を単一の治療レジメンで投与することを指す。従って、薬剤Aと薬剤Bとを共投与するとは、患者に薬剤Aと薬剤Bとを単一の製剤で、又は2つの別個の製剤で同時投与することを指し得る。また、薬剤Aと薬剤Bとを共投与するとは、薬剤Aと薬剤Bとを単一の腫瘍を標的化する目的で単一の治療レジメンに従い投与することも指し得る。例えば、患者Aについての腫瘍の治療用治療レジメンは、1日目に薬剤Aを投与し、2日目に薬剤Bを投与することを含み、かかる投与が2週間繰り返され得る。かかる例では、薬剤A及び薬剤Bは患者Aに共投与されると見なされる。
【0024】
最も好ましい態様において、ワクチン成分は、腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を含む改変細菌、改変酵母、又は改変ウイルスのうちの少なくとも1つ、又はそのうちの少なくとも2つである。腫瘍微小環境において免疫細胞による免疫応答を誘発することのできる任意の好適な腫瘍関連抗原が企図される。従って、腫瘍関連抗原としては、限定はされないが、MUC1、CEA、ブラキウリ、RAS(例えば、突然変異RAS(例えば、G12V、Q61R及び/又はQ61L突然変異等を有するRAS))などの腫瘍関連抗原、PSA、PSMA、HER2などの腫瘍特異抗原、又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオ抗原若しくはネオエピトープを挙げることができ、これらは患者のオミクスデータから同定することができる。一部の実施形態において、改変細菌、改変酵母、又は改変ウイルスの各々は、単一の腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を含み得る。他の実施形態において、改変細菌、改変酵母、又は改変ウイルスのうちの少なくとも1つは、ポリトープとして2つ以上の腫瘍関連抗原をコードする組換え核酸を含み得る。
【0025】
本明細書で使用されるとき、ポリトープとは、単一のポリペプチドとして発現する2つ以上の抗原のタンデムアレイを指す。好ましくは、2つ以上のヒト疾患関連抗原はリンカー又はスペーサーペプチドによって分離されている。リンカー又はスペーサーには、任意の好適な長さ及び順序のペプチド配列を使用することができる。しかしながら、リンカーペプチドの長さは3~30アミノ酸、好ましくは5~20アミノ酸、より好ましくは5~15アミノ酸であることが好ましい。また本発明者らは、2つの抗原間にポリトープの可動性を付与するため、グリシンリッチ配列(例えば、gly-gly-ser-gly-gly等)が好ましいことも企図する。
【0026】
一部の実施形態において、ワクチン成分の組換え核酸はまた、1つ以上の共刺激分子をコードする1つ以上の核酸配列も含み得る。共刺激分子としては、B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、CD30L、CD40、CD40L、CD48、CD70、CD112、CD155、ICOS-L、4-1BB、GITR-L、LIGHT、TIM3、TIM4、ICAM-1、LFA3(CD58)、及びSLAMファミリーのメンバーを挙げることができる。その上、核酸は更に、サイトカイン(例えば、IL-2、IL-7、IL-12、IL-15、IL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)、及び/又はIL-15スーパーアゴニスト/IL-15RαSushi-Fc融合複合体)をコードする配列を含み得る。それに代えて、又は加えて、核酸は更にまた、SMACの少なくとも1つの成分(例えば、CD2、CD4、CD8、CD28、Lck、Fyn、LFA-1、CD43、及び/又はCD45又はそのそれぞれの結合カウンターパート)をコードする配列も含み得る。所望の場合、加えて核酸は、EBVのLMP1の膜貫通ドメインがIPS-1のシグナル伝達ドメインに融合しているキメラタンパク質など、STING経路のアクチベーターをコードする配列を含み得る。かかる改変は、適応免疫応答を活性化させる追加的なシグナルを提供することにより、適応免疫応答の発生を更に一層亢進させると考えられる。
【0027】
本明細書で企図される組換え核酸がウイルス、酵母、又は細菌発現ベクターに限定される必要はないことが企図される。或いは、組換え核酸としてはまた、DNAワクチンベクター、線状化DNA、及びmRNAも挙げることができ、これらは全て、当該技術分野において周知のプロトコルに従い好適な細胞にトランスフェクトすることができる。
【0028】
ワクチン成分を作成する任意の好適な方法が企図される。最も典型的には、腫瘍関連抗原をコードする核酸配列が発現ベクターに置かれ得る。ベクターに組換え核酸が挿入されて、患者の抗原提示細胞(例えば樹状細胞等)に核酸を送達することができるようになり、又は細菌若しくは酵母において核酸配列が転写されて、その核酸配列によってコードされる組換えタンパク質を全体として、又は断片として、抗原提示細胞に送達することができるようになる。タンパク質を発現させるために使用することのできる任意の好適な発現ベクターが企図される。特に好ましい発現ベクターとしては、少なくとも1k、好ましくは2k、より好ましくは5k塩基対のカセットサイズを担持し得るものを挙げることができる。
【0029】
従って、一実施形態において、好ましい発現ベクターとしては、ウイルスベクター(例えば、任意選択でE1及び/又はE2b遺伝子が欠失した又は非機能性である非複製組換えアデノウイルスゲノム)が挙げられる。発現ベクターがウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、特にE1及びE2bが欠失したAdV)である場合、次には組換え核酸を含む組換えウイルスは、典型的には投薬量単位当たり106~1013ウイルス粒子、及びより典型的には109~1012ウイルス粒子のウイルス力価の滅菌注射用組成物として製剤化された医薬組成物中の治療ワクチンとして個々に、又は組み合わせで使用し得ることが企図される。或いは、ウイルスは、エキソビボで患者(又は他のHLA適合)細胞を感染させるために用いられてもよく、そのように感染させた細胞は、次には患者に輸注される。更なる例において、ウイルスによる患者の治療は、裸の形態の、又はネオエピトープ、ネオエピトープ類、腫瘍関連抗原又はウイルスと同じペイロードを標的とする抗体を発現するキメラ抗原受容体を担持する、同種移植される又は自家性のナチュラルキラー細胞又はT細胞を伴い得る。患者由来のNK-92細胞株を含むナチュラルキラー細胞はまた、CD16を発現してもよく、抗体とカップリングすることができる。
【0030】
更に別の実施形態において、発現ベクターは、遺伝子操作された細菌で発現させることのできる細菌ベクターであってもよく、これは、人体への導入時にヒト細胞においてエンドトキシン反応を引き起こさない十分に低いレベルで及び/又はCD-14媒介性敗血症を生じさせるのに不十分なレベルでエンドトキシンを発現する。改変リポ多糖類を有する一つの例示的細菌株としては、ClearColi(登録商標)BL21(DE3)エレクトロコンピテント細胞が挙げられる。この細菌株は、遺伝子型F-ompT hsdSB(rB- mB-)gal dcm lon λ(DE3[lacI lacUV5-T7遺伝子1 ind1 sam7 nin5])msbA148 ΔgutQΔkdsD ΔlpxLΔlpxMΔpagPΔlpxPΔeptAのBL21である。これに関連して、幾つかの特異的欠失突然変異(ΔgutQ ΔkdsD ΔlpxL ΔlpxMΔpagPΔlpxPΔeptA)がLPSからリピドIVAへの改変をコードする一方、1つの付加的補償突然変異(msbA148)が、LPS前駆体リピドIVAの存在下における細胞の生存の維持を可能にすることが理解されなければならない。これらの突然変異はLPSからのオリゴ糖鎖の欠失を生じさせる。より具体的には、6つのアシル鎖のうちの2つが欠失する。LPSのこれらの6つのアシル鎖は、ミエロイド系分化因子2(MD-2)と複合体化したToll様受容体4(TLR4)によって認識されるトリガーであり、NF-κBの活性化及び炎症誘発性サイトカインの産生を引き起こす。4つのアシル鎖しか含有しないリピドIVAは、TLR4によって認識されず、従ってエンドトキシン反応を惹起しない。エレクトロコンピテントBL21細菌を例として提供するが、本発明者らは、遺伝子改変細菌がまた化学的にコンピテントな細菌であってもよいことを企図する。それに代えて、又は加えて、発現ベクターはまた、酵母、好ましくはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)(例えば、GI-400系列の組換え免疫療法酵母株等)で発現することのできる酵母ベクターであってもよい。
【0031】
本発明者らは、上記に記載されるとおりの組換え核酸を有する組換えウイルス、細菌又は酵母を任意の薬学的に許容可能な担体に更に製剤化(例えば、好ましくは滅菌注射用組成物として製剤化)して医薬組成物を形成し得ることを更に企図した。医薬組成物が組換えウイルスを含む場合、組成物のウイルス力価は投薬量単位当たり104~1012ウイルス粒子であることが好ましい。しかしながら、代替的な製剤もまた本明細書における使用に好適と見なされ、本明細書においてはあらゆる公知の投与経路及び投与方式が企図される。医薬組成物が組換え細菌を含む場合、組成物の細菌力価は投薬量単位当たり102~103、103~104、104~105細菌細胞が好ましい。医薬組成物が組換え酵母を含む場合、組成物の細菌力価は投薬量単位当たり102~103、103~104、104~105酵母細胞が好ましい。
【0032】
本明細書で使用されるとき、ウイルス、細菌又は酵母製剤を「投与する」という用語は、ウイルス、細菌又は酵母製剤の直接投与及び間接投与の両方を指し、ここで製剤の直接投与は、典型的には医療専門家(例えば、医師、看護師等)によって実施され、及び間接投与は、直接投与(例えば、注射、注入、経口送達、局所送達等による)のため製剤を医療専門家に提供する又は利用可能にするステップを含む。
【0033】
一部の実施形態において、ウイルス、細菌又は酵母製剤は、皮下、真皮下注射、又は静脈内注射を含めた全身注射によって投与される。他の実施形態において、全身注射が効率的でない可能性がある場合(例えば、脳腫瘍に対して等)、製剤は腫瘍内注射によって投与されることが企図される。
【0034】
製剤投与の用量及びスケジュールに関して、用量及び/又はスケジュールは、ウイルス、細菌又は酵母のタイプ、疾患のタイプ及び予後(例えば、腫瘍型、サイズ、部位)、患者の健康状態(例えば、年齢、性別等を含む)に応じて変わり得ることが企図される。用量及びスケジュールは変わり得るが、製剤が宿主正常細胞にいかなる重大な毒性作用ももたらさず、しかし免疫応答を誘発するには十分であるように選択及び調節され得る。従って、好ましい実施形態において、製剤の最適な又は所望の投与条件は、所定の閾値を基準として決定することができる。例えば、所定の閾値は、特定のタイプのサイトカイン(例えば、IFN-γ、TNF-β、IL-2、IL-4、IL-10等)の所定の局所又は全身濃度であってもよい。
【0035】
例えば、医薬組成物が組換えウイルスを含む場合、腫瘍溶解性ウイルス製剤の企図される用量は、少なくとも106ウイルス粒子/日、又は少なくとも108ウイルス粒子/日、又は少なくとも1010ウイルス粒子/日、又は少なくとも1011ウイルス粒子/日である。一部の実施形態において、ウイルス製剤の単一用量は、少なくとも1日1回又は1日2回(各回の投与につき半分の用量)、少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヵ月にわたって、又は任意の他の所望のスケジュールで投与することができる。他の実施形態において、ウイルス製剤の用量はスケジュール中に漸増させるか、又はスケジュール中に漸減させることができる。なおも他の実施形態において、ウイルス製剤の一続きの投与を複数行うのに間隔を空けることができる(例えば、連続3日の各1投与、及び7日の間隔を置いて別の連続3日の各1投与等)。
【0036】
一部の実施形態において、医薬製剤の投与は2つ以上の異なる段階:プライミング投与及びブースト投与であってもよい。プライミング投与の用量は後続のブースト投与よりも高い(例えば、少なくとも20%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%)ことが企図される。更にまた、プライミング投与の用量が後続のブースト投与よりも低いことも企図される。加えて、複数のブースト投与がある場合、各ブースト投与が異なる用量を有する(例えば、漸増用量、漸減用量等)。
【0037】
企図される細胞傷害性細胞成分に関して、細胞成分は好ましくはNK細胞(及びそのあらゆる誘導体)、NKT細胞、及び/又は細胞傷害性T細胞(例えば、CD8+ T細胞等)であることに留意しなければならない。一部の実施形態において、細胞傷害性細胞成分は、患者にとってナイーブな又は同種異系のNK、NKT、又は細胞傷害性T細胞を含み得る。例えば、NK細胞はまた、患者から入手されるか若しくは患者の前駆細胞から産生されてもよく、又は細胞バンクから入手されてもよい(好ましくはアロタイプ適合)。更なる例において、細胞成分はまた活性化T細胞であってもよく、これは患者から単離されるか(及びアネルギー性の場合、任意選択で再活性化させる)、又はドナー若しくは細胞培養物から単離されてもよい。適切な場合、かかるT細胞はまた、腫瘍細胞に対する細胞の特異性を増加させるためキメラ抗原受容体及び/又はCD16を発現するように遺伝子改変されてもよい。他の実施形態において、細胞傷害性細胞成分は、患者にとって異種の細胞、好ましくは不死化され、遺伝子操作された細胞を含み得る。例えば、特に企図されるNK細胞としては、aNK細胞(複数の抑制性受容体を欠く活性化NK-92誘導体細胞)、haNK細胞(高親和性CD16変異体(例えば、V158変異体等)を含むNK-92誘導体細胞、及びtaNK細胞(キメラ抗原受容体を含むNK-92誘導体細胞)が挙げられ、これらは当該技術分野において公知である(例えば、NantKwest,Inc.,9920 Jefferson Blvd.;Culver City,CA 90232)。加えて、また、NK細胞の細胞傷害性が低酸素条件下(例えば腫瘍微小環境)でも活性なままであるように、NK92細胞がIL-2を発現して細胞内に(例えば小胞体に)保持するように更に遺伝子改変されることも好ましい。
【0038】
特に、企図される方法においてhaNK細胞が用いられる場合、低酸素環境中でhaNK細胞の細胞傷害活性は大部分が維持されることが理解されなければならず、このことは典型的に低酸素である腫瘍微小環境において特に有利である。従って、特に好ましい方法は、haNK細胞にカップリングされた抗体を伴う又は伴わないhaNK細胞の投与を含む。別の見方をすれば、腫瘍微小環境において、その環境が低酸素の場合であっても、標的化した細胞溶解活性を実現することができる。更に、以下で更により詳細に考察するとおり、haNK細胞死滅活性はアルドキソルビシンによって更に増加させるか、又は少なくとも維持することができる。
【0039】
企図される細胞傷害性細胞は、典型的には輸注1回当たり1~5×109細胞の量で患者に投与され、haNK細胞が使用される場合、この細胞には抗体又はタンパク質が「負荷」され、そのようにして標的特異性が付与され、又は腫瘍における免疫応答が誘発及び/又は促進され得ることが理解されなければならない。容易に理解されるであろうとおり、かかる「負荷」は、抗体をhaNK細胞上の高親和性CD16変異体に結合させることにより実現されることになる。それに代えて又は加えて、抗体は細胞傷害性細胞と別個に投与されてもよく、あらゆる投与方法が本明細書における使用(例えば、静脈内注射)に好適と見なされることに留意しなければならない。
【0040】
腫瘍細胞を特異的に標的化することのできる任意の好適な抗体が企図される。例示的抗体としては、成長因子受容体(例えば、HER2等)、血管成長受容体(例えば、VEGFR-1、VEGFR-2等)、腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、並びに腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープに特異的及び/又は選択的に結合するものを挙げることができる。例えば、企図されるhaNK細胞は、セツキシマブ(EGFRに結合する)と会合させるか、又はセツキシマブと共投与してもよい。加えて、細胞傷害性細胞は、CTLA-4、PD-1、TIM1受容体、2B4、又はCD160の抗体又はアンタゴニストを挙げることができる免疫チェックポイント阻害薬に対する結合タンパク質を負荷するか、又はそれと共投与することができる。
【0041】
一部の実施形態において、抗体及び/又は免疫チェックポイント阻害薬に対するアンタゴニストであるタンパク質は、切断可能若しくは切断不可能のいずれかのリンカーを介して、及び/又は直接若しくは間接的に、細胞傷害性免疫細胞にカップリングされてもよい。例えば、リンカーは、3~30アミノ酸、好ましくは5~20アミノ酸、より好ましくは5~15アミノ酸である短い長さのペプチドであってもよい。好ましくは、かかる短いペプチドリンカーはグリシンリッチ配列(例えば、gly-gly-ser-gly-gly等)を有して可動性を付与する。別の例において、リンカーは、腫瘍微小環境で、及び/又は免疫系の活性化時に優先的に切断される切断可能リンカーであってもよく、企図される。一つの好ましい切断可能リンカーは、弱酸性環境(例えば、3~6のpH、4~6のpH、4.5~5.5のpH等)で切断可能であり、しかし中性pHでは安定である。例えば、好ましい酸に不安定なリンカーとしては、チマレアミド酸(thimaleamic acid)リンカー及び酸で切断可能なヒドラジンリンカー(例えば、ヒドラジンリンカー等)が挙げられる。酸に不安定なリンカーを介して細胞傷害性免疫細胞にカップリングした抗体又は結合タンパク質/分子は、弱酸性腫瘍微小環境で放出させることができ、従ってこの抗体又は結合タンパク質/分子は腫瘍微小環境において腫瘍細胞を選択的及び特異的に標的化できることが企図される。
【0042】
このように企図されるリンカーは、免疫担当細胞に直接又は間接的にカップリングさせることができる。リンカーの直接的なカップリングに関して、リンカーを細胞にコンジュゲートする方法は、リンカーの化学構造及び成分に応じて変わることができ、任意の好適なコンジュゲーション方法が企図される。一部の実施形態において、リンカーは、好ましくは細胞の正常機能に干渉することなく、免疫担当細胞の膜タンパク質に直接コンジュゲートすることができる。更に、リンカーがカップリングされる細胞膜タンパク質は、カップリングされたリンカーが膜タンパク質の再生処理に起因してエンドサイトーシスを受けないように、比較的長い半減期を有することが好ましい。かかる実施形態において、リンカーはN-ヒドロキシスクシンイミジル-PEG(PEG-NHS)にコンジュゲートすることができ、それによりリンカーは、細胞表面にアミノ基を有するあらゆる種類の膜タンパク質と共有結合的に結合する。或いは、リンカーをPEGとコンジュゲートしてPEG-糖脂質を形成するか、又はアルキル側鎖を担持するポリ(ビニルアルコール)とコンジュゲートして(PVA-アルキル)、コンジュゲートされるリンカーを免疫担当細胞の膜脂質二重層に疎水性相互作用でアンカリングすることができる。
【0043】
更に、本明細書に提供される方法及び使用を1つ以上の免疫刺激性サイトカイン及び/又は免疫刺激性スーパーカインで更に増強し得ることが企図される。特に好ましいサイトカインとしては、IL-2、IL-7、IL-15、IL-17、IL-21、IL-15、IPS1、及びLMP1、及びそのスーパーアゴニストバージョンが挙げられる。例えば、スーパーカインの場合、IL-15スーパーアゴニスト(IL-15N72D)、及び/又はIL-15スーパーアゴニスト/IL-15RαSushi-Fc融合複合体(ALT803)が特に好ましい。
【0044】
最も好ましくは、企図される化合物及び組成物は、時間的/空間的に編成された免疫療法製剤の併用を用いて投与されることにより腫瘍微小環境を調節し、自然、適応免疫系を活性化し、及び免疫原性細胞死(ICD)を更に誘導するものであり、これらは全て、アルドキソルビシンによって(相乗的に)亢進させることができる。これに関連して、特に、アルドキソルビシンがドキソルビシンのマレイミドカプロイルヒドラゾンプロドラッグ形態であり、これは利用可能なチオール基(例えばアルブミンにおけるC34)に共有結合的に結合する反応基を含むこと、及び加水分解切断時にドキソルビシンを放出する酸に不安定なヒドラジン結合を有することが認識されなければならない。従って、アルドキソルビシンが低酸素酸性腫瘍微小環境に曝露されると、腫瘍微小環境中にドキソルビシンが優先的に放出される。かかる優先性は、アルドキソルビシンをアルブミンにカップリングすることにより更に亢進し、アルブミンは腫瘍微小環境中へと(典型的にはgp60媒介性トランスサイトーシスを介して)再循環する。特定の癌では、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)が、免疫抑制を編成するその「選択的活性化」(又はM2)表現型に主に起因して、腫瘍進行の促進において極めて重要な役割を果たすことが知られている。有利には、ドキソルビシンはM2マクロファージ及びMDSCに対抗する。
【0045】
これを受けて、及び他の企図される選択肢の中でも特に、好ましい治療成分としては、(a)腫瘍微小環境に(例えばトランスサイトーシスによって)侵入して腫瘍抑制環境に打ち勝つためのナノ粒子アルブミン結合(Nab)化学療法併用、(b)腫瘍関連抗原及び/又は患者特異的及び腫瘍特異的ネオ抗原を免疫担当細胞に直接又は間接的に送達して未熟樹状細胞を患者特異的且つ腫瘍特異的に活性化することにより適応免疫応答を誘導し及び/又は亢進させる抗原産生ワクチン実体(例えば、組換えアデノウイルス、細菌、及び/又は酵母)、(c)内因性であっても(例えば、IL-15又はIL-15スーパーアゴニストでの刺激による)及び/又は外因性であってもよい(例えば、aNK、haNK、taNK細胞などの遺伝子改変NK細胞)、自然免疫応答を誘導し及び/又は亢進させるためのナチュラルキラー細胞、及び(d)好ましくはワクチン、細胞療法、及び融合タンパク質(例えば、遺伝子操作された融合タンパク質サイトカイン刺激物質及び/又はチェックポイント阻害薬)によって活性化する、長期寛解を持続させるための内因性活性化メモリーT細胞及び/又はNK細胞を挙げることができる。
【0046】
免疫療法組成物(ワクチン成分及び細胞傷害性細胞成分)及び化学療法組成物(アルドキソルビシン)の任意の好適な投与順序が企図される。例えば、免疫療法組成物及び化学療法組成物は両方とも、同時に若しくは同じ日に(例えば、1時間以内、3時間以内、6時間以内、12時間以内、24時間以内等に)又は異なる日に(例えば、少なくとも1日空けて、少なくとも2日空けて等)患者に投与することができる。これらの組成物の最も好ましい投与スケジュールは、以下の例に提供する。
【0047】
本発明者らは、概して、本明細書に提供される治療が、哺乳類、特にヒトの固形癌及び血液由来癌を含めた様々な癌に好適となるであろうことを企図する。加えて、本発明者らは更に、本明細書に提供される治療が、ワクチン成分及び/又は細胞傷害性細胞成分による標的となるはずの腫瘍関連抗原、腫瘍特異抗原、及び/又は腫瘍特異的及び患者特異的ネオエピトープを発現する腫瘍細胞を持つ患者に好適となるであろうことを企図する。別の見方をすれば、本発明者らは、患者の腫瘍細胞の分子プロファイルを治療前及び/又は治療後に決定して治療に最も好適なワクチン成分及び/又は細胞傷害性細胞成分を同定し、治療が成功する可能性を予測し、及び/又は治療の有効性を決定し得ることを企図する。従って、分子プロファイルとしては、1つ以上の腫瘍関連遺伝子のゲノミクスプロファイル、特に患者の腫瘍から同定される及び/又は当該技術分野において公知のかかる腫瘍関連遺伝子における1つ以上の突然変異(例えば、RASにおけるG12V、Q61R及び/又はQ61L突然変異等)を挙げることができる。好適な分子プロファイルとしてはまた、腫瘍組織において過剰発現又は過少発現する1つ以上の腫瘍関連遺伝子(例えばHER2)のトランスクリプトミクスプロファイルも挙げることができる。患者の腫瘍のゲノミクス及び/又はトランスクリプトミクスプロファイルを入手する任意の好適な方法が企図される。特に好ましい方法には、患者の体液(例えば、血清、全血等)から入手した腫瘍関連遺伝子に由来する1つ以上のセルフリーDNA及び/又はセルフリーRNAを同定及び/又は定量化すること、及び腫瘍の分子的特徴及び/又は腫瘍予後とのその関係を決定することが含まれる。
【実施例】
【0048】
実施例I:進行脊索腫を有する対象における免疫療法
実施例Iで使用される治療組成物及びモダリティには、以下の表1に示すとおりの様々な生体分子及び組成物が含まれる。
【0049】
【0050】
治療は、以下に記載するとおり、誘導相と維持相との2相で投与される。対象は、最長1年又は対象に進行性疾患(PD)若しくは許容できない毒性(用量減量によって修正可能でない)が生じるまで誘導治療を継続する。誘導相で完全奏効(CR)を示す者が、本試験の維持相に進む。対象は本試験の維持相に最長1年留まり得る。対象にPD又は許容できない毒性(用量減量によって修正可能でない)が生じるまで、維持相で治療を継続する。誘導相及び維持相の両方を含めた、試験治療を受ける最長時間は2年である。
【0051】
スクリーニング時、初期誘導相の終了時(治療開始から8週間後)、及び長期にわたる可能性のある誘導相及び維持相の間(奏効に応じて)、腫瘍生検及び探索的腫瘍分子プロファイリングを行うことができる。探索的免疫学及びctDNA/ctRNA分析のため誘導相で4週間毎及び維持相で8週間毎にルーチンの採血時に別個の血液チューブを収集することができる。固形癌効果判定基準(RECIST)バージョン1.1及び免疫関連効果判定基準(irRC)に従い標的及び非標的病変のコンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、又は陽電子放射断層撮影法(PET)-CTによってスクリーニング時に腫瘍を評価し、誘導相の間は8週間毎及び維持相の間は12週間毎に腫瘍奏効を評価する。
【0052】
誘導相:誘導相は、2週間サイクルを最長1年の治療期間にわたって繰り返すことからなる。治療レジメンには、ALT-803、アベルマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、シクロホスファミド、アルドキソルビシン、ETBX-051、ETBX-061、GI-6301、haNK細胞、nab-パクリタキセル、ω3酸エチルエステル類、トラベクテジン、及び放射線療法が含まれる。最初の4回の2週間サイクルの間に同時にSBRTが提供されることになる。放射線照射は、SBRTを用いて5ヵ所以下の実行可能な腫瘍部位に投与される。試験治療の誘導相は以下の投与レジメンに従い行われる。
【0053】
毎日:ω3酸エチルエステル類(経口[PO]1日2回[BID][3×1gカプセル及び2×1gカプセル])。
【0054】
1日目、2週間毎:ベバシズマブ(5mg/kg IV)。
【0055】
1~5及び8~12日目、2週間毎:シクロホスファミド(50mg PO BID)。
【0056】
1及び8日目、2週間毎:Nab-パクリタキセル(75mg IV);アルドキソルビシン(25mg/m2 IV);トラベクテジン(0.2mg/m2 IV)。
【0057】
5、19、33日目(3用量は2週間毎、次にその後8週間毎):ETBX-051及びETBX-061(5×1011ウイルス粒子[VP]/ワクチン/用量 皮下[SC]);GI-6301(40酵母単位[YU]/ワクチン/用量 SC)、ETBX-051/ETBX-061の投与から2時間後。
【0058】
8日目、毎週:セツキシマブ(250mg IV)。
【0059】
8日目、2週間毎:アベルマブ(10mg/kg IV 1時間かけて)。
【0060】
8、22、36、50日目(4用量は2週間毎):SBRT(8Gyを超えないこと、正確な線量は放射線腫瘍医が決定する)。
【0061】
9日目、2週間毎:ALT-803(10μg/kg SC haNK注入の30分前)。
【0062】
9及び11日目、2週間毎:haNK(2×109細胞/用量 IV)。
【0063】
維持相:維持相の継続期間は、誘導相における最終回の治療の完了後最長1年である。維持相には2週間サイクルの繰り返しが含まれる。治療レジメンは、ALT-803、アベルマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、シクロホスファミド、ETBX-051、ETBX-061、GI-6301、haNK細胞、nab-パクリタキセル、ω3酸エチルエステル類、及びトラベクテジンからなる。試験治療の維持相は以下の投与レジメンに従い行われることになる。
【0064】
毎日:ω3酸エチルエステル類(PO BID[3×1gカプセル及び2×1gカプセル])。
【0065】
1日目、2週間毎:ベバシズマブ(5mg/kg IV);Nab-パクリタキセル(75mg IV);アベルマブ(10mg/kg IV 1時間かけて);セツキシマブ(250mg IV);トラベクテジン(0.2mg/m2 IV)。
【0066】
1~5及び8~12日目、2週間毎:シクロホスファミド(50mg PO BID)。
【0067】
2日目、2週間毎:ALT-803(10μg/kg SC)(haNK注入の30分前);haNK(2×109細胞/用量 IV)。
【0068】
5日目、その後8週間毎:ETBX-051及びETBX-061、(5×1011VP/ワクチン/用量 SC);GI-6301(40YU/ワクチン/用量 SC)、ETBX-051の投与から2時間後。
【0069】
本明細書での使用に好適な更なる方法、組成物、使用、及び考慮点については、2017年6月30日に出願された本発明者らの同時係属中の国際特許出願第PCT/US17/40297号明細書に記載される。
【0070】
実施例II:NANT扁平上皮癌(SCC)ワクチン:白金系化学療法及び抗プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)/プログラム死リガンド1(PD-L1)による治療中又は治療後に進行したSCCを有する対象において自然高親和性ナチュラルキラー(haNK)細胞療法をアデノウイルス及び酵母ベースのワクチンと組み合わせてT細胞応答を誘導する分子情報に基づく統合免疫療法。
【0071】
実施例IIで使用される治療組成物及びモダリティには、以下の表2に示すとおりの様々な生体分子及び組成物が含まれる。
【0072】
【0073】
本例の治療は、白金系化学療法及び抗PD-1/PD-L1療法による治療を過去に受けたことがある、治療中又は治療後に腫瘍が進行した患者に提供される。本例の治療は、以下に記載するとおり、誘導相と維持相との2相で投与される。対象は誘導治療を最長1年継続する。誘導相で完全奏効(CR)を示す者が、本試験の維持相に進む。1年の時点で進行中の安定(SD)又は進行中の部分奏効(PR)が得られている対象は、維持相に進んでもよい。対象は本試験の維持相に最長1年留まり得る。対象がPD又は許容できない毒性(用量減量で修正されない)を生じるか、同意を撤回するまで、又は治療継続がもはや対象の最大の利益でなくならない限り、維持相で治療を継続する。誘導相及び維持相の両方を含めた、試験治療を受ける時間は最長2年である。
【0074】
本試験での治療前、治療開始8週間後、及び長期にわたる可能性のある誘導相及び維持相の間(奏効に応じて)に収集した試料に関して探索的腫瘍分子プロファイリングを行う。探索的免疫学及びctDNA/ctRNA分析のため誘導相で6週間毎及び維持相で8週間毎にルーチンの採血時に別個の血液チューブを収集する。
【0075】
固形癌効果判定基準(RECIST)に従い標的及び非標的病変のコンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、又は陽電子放射断層撮影法-コンピュータ断層撮影法(PET-CT)によってスクリーニング時に腫瘍を評価し、誘導相の間は8週間毎、及び維持相の間は12週間毎に腫瘍奏効を評価する。
【0076】
前向き腫瘍分子プロファイリングを行うことによりHER2発現及びRAS突然変異状態に関して情報を入手し、これはETBX-021及びGI-4000を投与するかどうかを決定するために使用されることになる。ETBX-021及びGI-4000投与は、腫瘍分子プロファイリングの結果が利用可能になり次第、開始することができる。全ての対象が、その腫瘍分子プロファイルに関わらず、他の全ての薬剤の投与を受ける。前向き腫瘍分子プロファイリングはまた、本試験での治療前に収集されるFFPE腫瘍組織及び全血(腫瘍組織に対する対象対応正常対照)に関して実施することもできる)。対象は、その腫瘍がHER2を過剰発現する場合(≧750アトモル/μgの腫瘍組織、質量分析法を伴う定量的プロテオミクスによって決定したとき)、ETBX-021の投与を受ける。対象は、全ゲノムシーケンシングによって決定したとき、その腫瘍が特異的RAS突然変異に関して陽性である場合、GI-4000の投与を受ける。
【0077】
本例の治療レジメンは、2相:誘導相及び維持相である。誘導相の目的は、腫瘍細胞に対する免疫応答を刺激し、腫瘍微小環境における免疫抑制を軽減することである。維持相の目的は、腫瘍細胞に対する進行中の免疫系活性を持続させて、長続きする治療応答を生じさせることである。
【0078】
誘導相:誘導相における治療は、以下のとおりの治療レジメンに示される3週間サイクルを最長1年の治療期間にわたって繰り返すことからなる。
【0079】
1日目、3週間毎:ベバシズマブ(5mg/kg IV)、ロイコボリン(20mg/m2 IVボーラス)、Nab-パクリタキセル(125mg IV)、シスプラチン(40mg/m2 IV 1時間かけて)。
【0080】
1~5日目、3週間毎:5-FU(1,500mg/m2持続静脈内注入、85~96時間かけて)、シクロホスファミド(25mg経口[PO]1日2回[BID])
【0081】
5日目(±1日)、3サイクルは3週間毎、次にその後9週間毎:ETBX-011、ETBX-021、ETBX-051、及びETBX-061(1×1011ウイルス粒子[VP]/ワクチン/用量 皮下[SC])。
【0082】
上記に記載されるとおり、前向き腫瘍分子プロファイリングにより、ETBX-021を投与するかどうかを決定し得ることが理解されなければならない。
【0083】
8日目:アルドキソルビシンHCl(80mg/m2 IV、30分かけて)、シスプラチン(20mg/m2 IV 1時間かけて)、SBRT(8Gyを超えないこと、正確な線量は放射線腫瘍医が決定する;最初の2サイクルのみ)、及びセツキシマブ(250mg/m2 IV)又はネシツムマブ(400mg IV)。セツキシマブは頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の対象に投与されることになり、一方、ネシツムマブは扁平上皮非小細胞肺癌(NSCLC)の対象に投与されることになる点が注記される。
【0084】
8~12日目、3週間毎:シクロホスファミド(25mg PO 毎日[QD])。
【0085】
9日目、3週間毎:アベルマブ(10mg/kg IV 1時間かけて)、ALT-803(10μg/kg SC haNK注入の少なくとも30分前)、haNK(2×109細胞/用量 IV)。
【0086】
11日目、3週間毎:haNK(2×109細胞/用量 IV)。
【0087】
11日目、3サイクルは3週間毎及びその後9週間毎:GI-4000、GI-6207、GI-6301(40酵母単位[YU]/ワクチン/用量 SC)。上記に記載されるとおり、前向き腫瘍分子プロファイリングにより、GI-4000を投与するかが決定されることになる。
【0088】
15日目、3週間毎:SBRT(8Gyを超えないこと、正確な線量は放射線腫瘍医が決定する;最初の2サイクルのみ)。
【0089】
16日目、3週間毎:ALT-803(10μg/kg SC haNK注入の少なくとも30分前)、haNK(2×109細胞/用量 IV)、セツキシマブ(250mg/m2 IV)又はネシツムマブ(400mg IV)。
【0090】
18日目、3週間毎:haNK(2×109細胞/用量 IV)。
【0091】
維持相:維持相の継続期間は、誘導相における最終回の治療の完了後最長1年となる。維持相は、以下のとおりの治療レジメンに示す2週間サイクルの繰り返しからなることになる。
【0092】
1日目、2週間毎:アルドキソルビシンHCl(60mg/m2 IV、30分かけて)、ベバシズマブ(5mg/kg IV)、Nab-パクリタキセル(100mg IV)。
【0093】
1~5日目、2週間毎:カペシタビン(650mg/m2 PO BID)。
【0094】
1~5及び8~12日目、2週間毎:シクロホスファミド(25mg PO BID)。
【0095】
2日目、2週間毎:アベルマブ(10mg/kg IV 1時間かけて)、セツキシマブ(250mg/m2 IV)又はネシツムマブ(400mg IV)、ALT-803(10μg/kg SC)(haNK注入の少なくとも30分前)、haNK(2×109細胞/用量 IV)。セツキシマブは、HNSCCの対象に投与されることになり、一方、ネシツムマブは扁平上皮NSCLCの対象に投与されることになる。
【0096】
5日目(±1日)、その後8週間毎:ETBX-011、ETBX-021、ETBX-051、ETBX-061(1×1011VP/ワクチン/用量 SC)、GI-4000、GI-6207、GI-6301(40YU/ワクチン/用量 SC)、Ad-5系ワクチンの投与から2時間後。
【0097】
本発明者らは、いかなる特定の理論によっても拘束されることを望むものではないが、低用量メトロノミック化学療法(LDMC)、ベバシズマブ、セツキシマブ又はネシツムマブ、癌ワクチン、低線量放射線療法、IL-15スーパーアゴニスト、NK細胞療法、及びチェックポイント阻害薬を組み合わせる上記の治療レジメンが、免疫原性細胞死(ICD)を最大化し、癌細胞に対する自然及び適応免疫応答を増強及び維持し得ることを企図する。具体的には、本発明者らは、かかる治療レジームが、1)腫瘍微小環境における免疫抑制を軽減すること、2)ICDシグナルを誘導し、協調させること、3)樹状細胞及びT細胞をコンディショニングすること、4)自然免疫応答を亢進させること、及び5)免疫応答を維持することにより、免疫編集のエスケープ段階を妨げ得ることを企図する。
【0098】
より具体的には、本発明者らは、腫瘍微小環境中で免疫抑制に寄与するTreg、MDSC、及びM2マクロファージの密度を低線量放射線療法によって減少させることができるため、腫瘍微小環境における免疫抑制を軽減し得ることを企図する。ベバシズマブもまた、腫瘍微小環境において形態学的変化を引き起こす原因であり、リンパ球輸送を促進する。ICDシグナルは、LDMCとして誘導し、協調させることができ、及び低線量放射線療法は腫瘍細胞の抗原性を増加させることができる。加えて、ベバシズマブがTMEを変化させ、これにより一層効率的な抗原特異的T細胞応答が実現し、腫瘍細胞がICDを受け易くなる。更に、セツキシマブ、ネシツムマブ、及びアベルマブを使用すると、ADCC及び細胞傷害性T細胞活性が亢進されることになる。
【0099】
本発明者らは更に、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞応答を亢進させる癌ワクチン及びIL-15スーパーアゴニストによって樹状細胞及びT細胞をコンディショニングし得ることを企図する。加えて、自然免疫系を増強することのできるNK細胞療法により、並びに内因性の及び導入されたNK細胞の活性を亢進させることのできるIL-15スーパーアゴニストにより、自然免疫応答が亢進し得る。少分割照射線量による放射線療法は腫瘍細胞NKリガンドを上方制御し、NK細胞の腫瘍細胞傷害性を亢進させることができる。最後に、長期抗癌免疫応答を促進することのできるチェックポイント阻害薬により、免疫応答を維持することができる。従って、本治療レジメンは、腫瘍成長を可能にする個別的だが補完的な機構を同時に標的化する薬剤を組み合わせることにより、抗癌活性を最大化し、治療に対する応答の持続期間を延ばすことを目指す。
【0100】
本発明者らは、ワクチン成分、細胞傷害性細胞成分、及び/又はアルドキソルビシンを使用したかかる併用治療及び治療レジメンが、転移癌と診断された一部の患者の腫瘍の治療において有効であることを発見した。一例では、肝臓及び肺への転移を有する膵癌と診断された、過去に標準的化学療法が失敗している35歳男性患者が、13サイクルにわたるNANT癌ワクチンと細胞傷害性免疫細胞(最初はaNKにより、凍結保存haNKへと展開した)との併用治療で治療された。治療前及び治療全体を通じて患者の血中の糖鎖抗原(CA19-9)レベルを決定した。
図1に示すとおり、CA19-9レベルは約320日間の治療で約750から約220へと有意に低下した。この患者はまた体重も10ポンド増加し、無痛状態を保った。加えて、治療開始以来6.5ヵ月の間に腫瘍サイズが減少した。治療中、用量制限毒性(DLT)を認めることはできなかった。
【0101】
別の例では、膵癌と診断された、過去に標準的化学療法が失敗している50歳女性患者が、12サイクルにわたるNANT膵癌ワクチンと細胞傷害性免疫細胞(最初はaNKにより、凍結保存haNKへと展開した)との併用治療で治療された。治療前及び治療全体を通じて患者の血中の糖鎖抗原(CA19-9)レベルを決定した。
図2に示すとおり、CA19-9レベルは約220日間の治療で約1300から約220へと(標準化した値では129から34へと、50%超)有意に低下した。この患者はまた体重も12ポンド増加し、無痛状態を保った。治療中、用量制限毒性(DLT)を認めることはできなかった。
【0102】
なおも別の例では、肝臓への転移を伴う膵癌と診断された、過去に標準的化学療法が失敗している63歳男性患者が、8サイクルにわたるNANT膵癌ワクチン(例えば、臨床試験識別番号NCT03136406を参照のこと)と細胞傷害性免疫細胞(最初はaNKにより、凍結保存haNKへと展開した)との併用治療で治療された。治療前及び治療全体を通じて患者の血中のCEAレベルを決定した。
図3に示すとおり、CEAレベルは約260日間の治療で約450から約200へと(標準化した値では45から20へと、50%超)有意に低下した。患者は無痛状態を保った。治療中、用量制限毒性(DLT)を認めることはできなかった。
【0103】
なおも別の例では、肝臓及び肺への転移を伴う膵癌と診断された、過去に標準ケア化学療法が失敗している66歳女性患者が、4サイクルにわたるNANT膵癌ワクチンと細胞傷害性免疫細胞(凍結保存haNK)との併用治療で治療された。治療前及び治療全体を通じて患者の血中の糖鎖抗原(CA19-9)レベルを決定した。
図4に示すとおり、CA19-9レベルは約1100から約650へと(約85日間の治療で有意に低下した。治療中、用量制限毒性(DLT)を認めることはできなかった。患者はまた、8週間の治療でRECISTに従う腫瘍サイズの23%の低下も示した。
【0104】
なおも別の例では、肝臓及び腹膜への転移を伴う膵癌と診断された、過去に標準ケア化学療法が失敗している40歳男性患者が、17サイクルにわたるFOLFIRINOX(5-FU、ロイコボリン、イリノテカン、及びオキサリプラチン)と1サイクルにわたるNANT膵癌ワクチン及び細胞傷害性免疫細胞(凍結保存haNK)との併用治療で治療された。治療前及び治療全体を通じて患者の血中の糖鎖抗原(CA19-9)レベルを決定した。
図5に示すとおり、CA19-9レベルは約1400から約100へと(約150日間の治療で有意に低下した。治療中、用量制限毒性(DLT)を認めることはできなかった。
【0105】
なおも別の例では、HNSCCと診断された56歳男性患者(HPVの既往歴有り)。この患者は当初シスプラチン及び放射線照射で治療され、後にペンブロリズマブ及びニボルマブで治療された。この患者を6サイクルにわたる実施例IIに示すとおりの治療レジメンで治療した。
図6(左が治療後である)及び
図7(右が治療後である)に示すとおり、照射していない腎臓標的病変のサイズが8週間の治療で46%減少した(
図6に矢印で示され、及び
図7に点線を付した範囲に示されるとおり)。
【0106】
一部の実施形態において、本発明の特定の実施形態を説明し、特許請求するために使用される成分の量、濃度などの特性、反応条件などを表す数字は、一部の例では用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。従って、一部の実施形態において、明細書の記載及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって達成しようとする所望の特性に応じて変わり得る近似である。一部の実施形態において、数値パラメータは、報告される有効桁数を考慮して、且つ通常の丸め処理法を適用することにより解釈されなければならない。本発明の一部の実施形態の広い範囲を示す数値の範囲及びパラメータが近似であるにも関わらず、具体的な例に示される数値は、実行可能な限りにおいて正確に報告される。本発明の一部の実施形態に提示される数値は、そのそれぞれの検査測定値に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含み得る。
【0107】
本明細書で使用されるとき、語句「A及びBのうちの少なくとも一方」は、「A」及び「B」の性質に関わらず、「A」及び/又は「B」を指すことが意図される。例えば、一部の実施形態において、「A」は単一の個別的な種であってよく、一方、他の実施形態において「A」は、「A」と称される属の範囲内にある単一の種を表してもよい。同様に、一部の実施形態において、「B」は単一の個別的な種であってよく、一方、他の実施形態において「B」は、「B」と称される属の範囲内にある単一の種を表してもよい。
【0108】
本明細書における記載において、及び以下の特許請求の範囲全体を通じて使用されるとき、「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」の意味には、文脈上特に明確に指示されない限り、複数形の参照が含まれる。また、本明細書における記載において使用されるとき、「~の中に(in)」の意味には、文脈上特に明確に指示されない限り、「~の中に(in)」及び「~の上に(on)」が含まれる。本明細書における値の範囲の記載は単に、その範囲内に含まれる別々の各値に個別に言及する簡略化した方法として供されることが意図されるに過ぎない。本明細書に特に指示されない限り、範囲に伴う各個別の値は、それが本明細書に個別に記載されたものとして本明細書に援用される。
【0109】
本明細書に記載される方法は全て、本明細書に特に指示されない限り、又は文脈上特に明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書において特定の実施形態に関連して提供される一部及び全部の例、又は例を示す文言(例えば「など」)の使用は、単に、本発明をより分かりやすく説明し、且つ本来特許請求される本発明の範囲に制限をかけないことが意図されるに過ぎない。本明細書における文言が、本発明の実施に不可欠な何らかの特許請求されていない要素を指示していると解釈されてはならない。
【0110】
当業者には、既に記載されているものに加えて、本明細書における発明概念から逸脱することなく更に多くの変形例が可能であることは明らかなはずである。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨を除き、本発明の主題は限定されるべきでない。更に、明細書及び特許請求の範囲の両方の解釈に際し、用語は全て、文脈に合わせて可能な限り最も広義に解釈されなければならない。詳細には、用語「~を含む(comprises)」及び「~を含んでいる(comprising)」は、要素、成分、又はステップへの非排他的な言及であり、言及される要素、成分、又はステップが存在してもよく、又は利用されてもよく、又は明示的に言及されない他の要素、成分、若しくはステップと組み合わされてもよいことを示していると解釈されなければならない。本明細書の特許請求の範囲が、A、B、C....及びNからなる群から選択される何かのうちの少なくとも1つに言及する場合、その文は、その群からの1つの要素のみが必要であり、A+N、又はB+N等ではないと解釈されなければならない。