(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】マッチングスコア算出装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/10 20120101AFI20220425BHJP
【FI】
G06Q10/10 320
(21)【出願番号】P 2020526735
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2018024042
(87)【国際公開番号】W WO2020003355
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】502419269
【氏名又は名称】株式会社フォーラムエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 政博
【審査官】上田 威
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075690(JP,A)
【文献】特開2015-164022(JP,A)
【文献】特表2012-510654(JP,A)
【文献】特開2011-048612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品概念の上位下位の関係、物品の全体と部品の関係、および抽象概念の上位下位の関係のうち少なくとも一種の関係で階層化された複数の辞書ノードを含むツリー構造を有し、個々の辞書ノードにマッチング要素が割り当てられているマッチング辞書を記憶するメモリ機構と、
登録する辞書ノードの入力を受け付ける入力インターフェースと、
前記マッチング辞書と登録された辞書ノードに基づいてマッチングスコアを算出する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記マッチング辞書中の、人材に求められる辞書ノードを、希望ノードとして登録する処理と、
前記希望ノードを前記ツリー構造に当て嵌めて、登録された希望ノードを網羅するテクニカルツリーを生成する処理と、
前記マッチング辞書中の、対象人材が所持する辞書ノードを、所持ノードとして登録する処理と、
前記所持ノードを前記ツリー構造に当て嵌めて、登録された所持ノードを網羅するスキルツリーを生成する処理と、
前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々と前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々と
の、ツリー構造における
距離に基づいて、前記マッチングスコアを算出する処理と、
を実行することを特徴とするマッチングスコア算出装置。
【請求項2】
前記マッチングスコアを算出する処理は、前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々と前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々とが一致するか否かを前記マッチングスコアに反映させる処理を含むことを特徴とする請求項1に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項3】
前記マッチング辞書は、一のマッチング要素を取り扱うために使用される他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係、一のマッチング要素を取り扱うために要求される他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係、および一のマッチング要素と類似する他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係のうち少なくとも一種の横の関係を示す情報を更に含んでおり、
前記マッチングスコアを算出する処理は、前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々と前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々とに前記横の関係が認められるか否かを前記マッチングスコアに反映させる処理を含むことを特徴とする請求項1
または2に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項4】
前記入力インターフェースは、前記希望ノードの重要度の入力を受け付ける機能を有し、
前記マッチングスコアを算出する処理は、
前記重要度に基づいて前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々についての配点を算出する処理と、
前記希望ノードの夫々についてのスコアを前記配点に基づいて算出する処理と、
前記希望ノードの夫々についてのスコアの和を前記マッチングスコアとする処理と、
を含むことを特徴とする請求項1
乃至3の何れか1項に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項5】
前記入力インターフェースは、前記所持ノードの習熟度の入力を受け付ける機能を有し、
前記マッチングスコアを算出する処理は、前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々についての習熟度を前記マッチングスコアに反映させる処理を含むことを特徴とする請求項1乃至
4の何れか1項に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項6】
前記希望ノードは、採用したい人材に求める求人条件に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、職を求める対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記求人条件と前記対象人材との適合度に相当することを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項7】
前記処理装置は、
一の求人条件について、複数の対象人材の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする請求項
6に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項8】
前記処理装置は、
一の対象人材について、複数の求人条件の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一つ以上の求人条件の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする請求項
6に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項9】
前記希望ノードは、補充したい人材に求める能力条件に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、配置の候補者である対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記能力条件と前記対象人材との適合度に相当することを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項10】
前記処理装置は、
一の能力条件について、複数の対象人材の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする請求項
9に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項11】
前記処理装置は、
一の対象人材について、複数の能力条件の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一つ以上の能力条件の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする請求項
9に記載のマッチングスコア算出装置。
【請求項12】
前記希望ノードは、対象人材に適用すべき評価基準に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、実績を評価するべき対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記対象人材の評価結果に相当することを特徴とする請求項1乃至
5の何れか1項に記載のマッチングスコア算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マッチングスコア算出装置に係り、特に、人材の採用、配置、評価に利用可能なマッチングスコアを算出する装置として好適なマッチングスコア算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2003-162651号公報)には、求人情報と求職情報との一致度に基づいて、求人側の要求と求職側のスキルとのマッチングスコアを計算する人材マッチング装置が開示されている。特許文献1において、求人情報は、人材を求める求人側企業によって提供される。一方、求職情報は、人材群を派遣可能な求職側企業により提供される。
【0003】
求人情報には、例えば、業種、業務に用いられるオペレーティングシステム(OS)、開発言語、データベース(DB)、開発工程などの項目が含まれる。他方、求職情報には、例えば、求職者のコンピュータに関わる業務歴ごとに、職種、OS、開発言語、DB、開発工程などの項目が含まれる。
【0004】
特許文献1に記載の装置は、マッチングスコアを算出するにあたって、求職情報に含まれる情報についてテキストマイニング等の各種自然言語処理を行い、求職者の人物像を抽出する。例えば、資格、趣味、経験した職業が多い場合は、積極性が高くチャレンジ精神も高いという人物像が抽出される。
【0005】
一方で、この装置は、求人情報に含まれる各条件をキーワード化すると共に、それら各条件に重要度に応じたスコアを配分する。例えば、求人情報に含まれる「積極性」という条件がキーワード化され、重要度に応じた配点がこのキーワードに配分される。次いで、求職者の人物像から「積極性」に関する内容が抽出され、その結果に基づいたスコアが算出される。そして、このようにして算出されたスコアの合計点が求人側の企業と求職者のマッチングスコアとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の手法によれば、求人側企業の要求と、個々の求職者のスキルとの親和性を適切に数値化することができる。しかしながら、上記従来の手法では、求人情報と求職情報とが異なるフォーマットで提供される。そして、各種の自然言語処理等を導入して両者を対比することとしている。各種の自然言語処理を行うためには膨大なデータと膨大な処理が必要である。また、この種の自然言語処理には、ある程度の誤差が伴う。このため、上記従来の手法は、複雑な処理を要すると共に、マッチングスコアにある程度の誤差を重畳させ易い性質を有する。
【0008】
加えて、上記従来の手法では、求人情報に含まれるキーワードが求職者の人物像から抽出されなければ、そのキーワードに対するスコアはゼロとなる。具体的には、求人情報が例えば「自動車のエンジン構造部品」に関するスキルを要求している場合、求職者の情報からそのスキルが抽出されなければ、この項目に対するスコアはゼロとなる。
【0009】
しかしながら、例えば「自動車のアクスル/ブレーキ」に関するスキルを有する求職者は、「自動車」の基礎的知識を有しているのが通常である。このため、マッチングスコアにより求職者の能力を数値化するためには、「自動車のアクスル/ブレーキ」の設計経験を「自動車のエンジン構造部品」のスコアに僅かでも反映させることが適切である。この点、項目の関連性を考慮することのない上記従来の手法は、マッチングスコアの算出精度を高めるうえで更なる改善の余地を残すものであった。
【0010】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、人材に求める要素と人材が所持する要素とのマッチングスコアを、項目同士の関連性をも考慮しつつ、簡単な処理により精度良く算出することのできるマッチングスコア算出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、マッチングスコア算出装置であって、
物品概念の上位下位の関係、物品の全体と部品の関係、および抽象概念の上位下位の関係のうち少なくとも一種の関係で階層化された複数の辞書ノードを含むツリー構造を有し、個々の辞書ノードにマッチング要素が割り当てられているマッチング辞書を記憶するメモリ機構と、
登録する辞書ノードの入力を受け付ける入力インターフェースと、
前記マッチング辞書と登録された辞書ノードに基づいてマッチングスコアを算出する処理装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記マッチング辞書中の、人材に求められる辞書ノードを、希望ノードとして登録する処理と、
前記希望ノードを前記ツリー構造に当て嵌めて、登録された希望ノードを網羅するテクニカルツリーを生成する処理と、
前記マッチング辞書中の、対象人材が所持する辞書ノードを、所持ノードとして登録する処理と、
前記所持ノードを前記ツリー構造に当て嵌めて、登録された所持ノードを網羅するスキルツリーを生成する処理と、
前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々と前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々とが一致するか否か、並びにそれら両者にツリー構造における関連性が認められるか否かに基づいて、前記マッチングスコアを算出する処理と、
を実行することを特徴とする。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記マッチング辞書は、一のマッチング要素を取り扱うために使用される他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係、一のマッチング要素を取り扱うために要求される他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係、および一のマッチング要素と類似する他のマッチング要素と当該一のマッチング要素とを結び付ける横の関係のうち少なくとも一種の横の関係を示す情報を更に含んでおり、
前記マッチングスコアを算出する処理は、前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々と前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々とに前記横の関係が認められるか否かを前記マッチングスコアに反映させる処理を含むことを特徴とする。
【0013】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記入力インターフェースは、前記希望ノードの重要度の入力を受け付ける機能を有し、
前記マッチングスコアを算出する処理は、
前記重要度に基づいて前記テクニカルツリーに含まれる前記希望ノードの夫々についての配点を算出する処理と、
前記希望ノードの夫々についてのスコアを前記配点に基づいて算出する処理と、
前記希望ノードの夫々についてのスコアの和を前記マッチングスコアとする処理と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記入力インターフェースは、前記所持ノードの習熟度の入力を受け付ける機能を有し、
前記マッチングスコアを算出する処理は、前記スキルツリーに含まれる前記所持ノードの夫々についての習熟度を前記マッチングスコアに反映させる処理を含むことを特徴とする。
【0015】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記希望ノードは、採用したい人材に求める求人条件に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、職を求める対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記求人条件と前記対象人材との適合度に相当することを特徴とする。
【0016】
また、第6の発明は、第5の発明において、
前記処理装置は、
一の求人条件について、複数の対象人材の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする。
【0017】
また、第7の発明は、第5の発明において、
前記処理装置は、
一の対象人材について、複数の求人条件の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一つ以上の求人条件の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする。
【0018】
また、第8の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記希望ノードは、補充したい人材に求める能力条件に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、配置の候補者である対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記能力条件と前記対象人材との適合度に相当することを特徴とする。
【0019】
また、第9の発明は、第8の発明において、
前記処理装置は、
一の能力条件について、複数の対象人材の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする。
【0020】
また、第10の発明は、第8の発明において、
前記処理装置は、
一の対象人材について、複数の能力条件の夫々とのマッチングスコアが算出されるように、前記マッチングスコアを算出する処理を繰り返し実行し、更に、
算出された複数のマッチングスコアをスコア順に整理する処理と、
前記マッチングスコアの高い方から、前記スコア順に、一つ以上の能力条件の情報を出力する処理と、
を実行することを特徴とする。
【0021】
また、第11の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記希望ノードは、対象人材に適用すべき評価基準に含まれる個々の要素に対応し、
前記所持ノードは、実績を評価するべき対象人材が所持している個々の要素に対応し、
前記マッチングスコアは、前記対象人材の評価結果に相当することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、全ての希望ノードをマッチング辞書中で登録することにより、人材に求める要素を網羅するテクニカルツリーを生成することができる。また、全ての所持ノードをマッチング辞書中で登録することにより、対象人材が所持する項目を網羅するスキルツリーを生成することができる。テクニカルツリーとスキルツリーは、全く同じツリー構造を有するため、希望ノードの夫々に一致する所持ノードが存在するか否かは簡単かつ正確に判断することができる。同様に、それら両者に、ツリー構造における関連性が認められるか否かも簡単かつ正確に判断することができる。このため、本発明によれば、人材に求める項目と人材が所持する項目とのマッチングスコアを、項目同士の関連性をも考慮しつつ、簡単な処理により精度良く算出することができる。
【0023】
第2の発明によれば、「使用」で結び付く横の関係、「要求」で結び付く横の関係、および「類似」で結び付く横の関係の少なくとも一つの情報がマッチング辞書に与えられる。これらの横の関係で結び付くマッチング要素は、一方が他方を補うものとして理解することができる。このため、希望ノードに合致する所持ノードが存在しなくても、横の関係を示す所持ノードが存在していれば、その希望ノードについてもある程度のスコアを与えることが望ましい。本発明によれば、テクニカルツリーに含まれる希望ノードの夫々とスキルツリーに含まれる所持ノードの夫々とに上記横の関係が認められるか否かが考慮されるため、この要求を満たすことができる。
【0024】
第3の発明によれば、テクニカルツリーに含まれる希望ノードの夫々について、個々の重要度に応じた配点が与えられる。このため、本発明によれば、重要度の高い希望ノードを満たす対象人材について、高いマッチングスコアが算出され易くすることができる。従って、本発明によれば、より適した対象人材により高いマッチングスコアを付与することができる。
【0025】
第4の発明によれば、所持ノードの夫々についての習熟度をマッチングスコアに反映させることができる。このため、本発明によれば、希望ノードについて高い習熟度を有する対象人材について、高いマッチングスコアが算出され易くすることができる。従って、本発明によれば、より適した対象人材により高いマッチングスコアを付与することができる。
【0026】
第5の発明によれば、人材の採用を求める求人条件と、職を求める対象人材との適合度を適正に表すマッチングスコアを算出することができる。
【0027】
第6の発明によれば、一の求人条件について、マッチングスコアの高い方から、スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力することができる。このため、本発明によれば、採用希望者は、その出力に基づいて、採用するべき対象人材を極めて簡単に選別することができる。
【0028】
第7の発明によれば、一の対象人材について、マッチングスコアの高い方から、スコア順に、一つ以上の求人条件の情報を出力することができる。このため、本発明によれば、職を求める対象人材は、その出力に基づいて、自己に最適な就職先を極めて簡単に選別することができる。
【0029】
第8の発明によれば、補充したい人材に求める能力条件と、配置の候補者である対象人材との適合度を適正に表すマッチングスコアを算出することができる。
【0030】
第9の発明によれば、一の能力条件について、マッチングスコアの高い方から、スコア順に、一人以上の対象人材の情報を出力することができる。このため、本発明によれば、人材の補充を希望する部署は、その出力に基づいて、候補者の中から最適な対象人材を極めて簡単に選別することができる。
【0031】
第10の発明によれば、一の対象人材について、マッチングスコアの高い方から、スコア順に、一つ以上の能力条件の情報を出力することができる。このため、本発明によれば、配置先を求める対象人材は、その出力に基づいて、自己に最適な配置先を極めて簡単に選別することができる。
【0032】
第11の発明によれば、対象人材の所持ノードと評価基準とのマッチングスコアを算出することで、その対象人材が評価基準をどの程度満たしているかを正確に表す評価結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態1のマッチングスコア算出装置を含むネットワークの概要を説明するための図である。
【
図2】
図1に示す管理サーバのハードウェア構成を説明するための図である。
【
図3】スキルの関連性に従ってツリー構造とされたマッチング要素の集合を含むマッチング辞書の例を示す図である。
【
図4】本実施形態で用いられるマッチング辞書に含まれるuseの関係とrequireの関係を説明するための図である。
【
図5】本実施形態で用いられるマッチング辞書に含まれるsimilarの関係を説明するための図である。
【
図6】求人条件が反映されたテクニカルツリーを作成するために必要な辞書ノードを登録する際の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図7】求人条件に対応する辞書ノードを登録する処理を説明するための図(その1)である。
【
図8】求人条件に対応する辞書ノードを登録する処理を説明するための図(その2)である。
【
図9】求人条件に対応する辞書ノードを登録する処理を説明するための図(その3)である。
【
図10】求人条件に対応する辞書ノードがマッチング辞書に存在していなかった状況を説明するための図である。
【
図11】求人条件に対応する辞書ノードの重要度を登録する処理を説明するための図である。
【
図12】求人条件が反映されたテクニカルツリーと求職者の情報が反映されたスキルツリーとの照合結果からマッチングスコアが算出される様子を示す図である。
【
図13】実施の形態1において、特定の採用案件に関して、マッチングスコア順に求職者をランキングするために管理サーバが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図14】実施の形態2において、特定部署への人材配置に関して、マッチングスコア順に配置候補者をランキングするために管理サーバが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図15】実施の形態3において、特定の求職者に関して、マッチングスコア順に求人案件をランキングするために管理サーバが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図16】実施の形態4において、特定の配置候補者に関して、マッチングスコア順に配置部署をランキングするために管理サーバが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【
図17】実施の形態5において、評価基準に対する評価対象者の評価スコアを算出するために管理サーバが実行する処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
図1は、本発明の実施の形態1のマッチングスコア算出装置を含むネットワークの概要を説明するための図である。本実施形態のマッチングスコア算出装置は管理サーバ10を備えている。
【0035】
図2は、管理サーバ10のハードウェア構成を示す。管理サーバ10は、一般的なコンピュータシステムで構成されており、中央プロセッサ(CPU)18を備えている。CPU18には、通信バス20を介してROM22、RAM24、ストレージ26等のメモリ機構が接続されている。通信バス20には、更に、通信インターフェース28、並びに、ユーザインターフェースとなる操作部30及び表示部32が接続されている。管理サーバ10は、ROM22に格納されているプログラムをCPU18が実行することにより、マッチングスコア算出装置としての機能を実現する。
【0036】
管理サーバ10はネットワーク12を介して、複数の操作端末14と繋がっている。本実施形態の装置は、人材の採用を希望する企業と、就職を希望する対象人材との適合度を表すマッチングスコアを算出することを主たる目的として設計されている。操作端末14は、本装置の操作に習熟した操作担当者が、企業担当者から提供される求人条件を登録し、また求職者から提供される経歴・履歴等の情報を登録する際に用いられる。操作端末14は、管理サーバ10と同様に一般的なコンピュータシステムで構成されている。
【0037】
図3は、管理サーバ10が記憶するマッチング辞書36の一例を示す。マッチング辞書36には、ツリー構造に階層化された複数の辞書ノード38が含まれている。辞書ノード38には何れも、スキルの内容や分野を表すマッチング要素が割り当てられている。上下の関係線で結ばれた辞書ノードは、物品概念における上位と下位の関係、物品の全体と部分の関係、或いは抽象概念における上位と下位の関係を有している。
【0038】
例えば、「製品・部品」の辞書ノード38には、「自動車関連」を含む幾つかの製品または部品の辞書ノード38が結び付けられている。これらは物品概念の上位と下位の関係を有している。また、「自動車関連」の辞書ノード38には「内装部品」を含む幾つかの辞書ノード38が結び付けられている。これらは物品の全体と部品の関係を有している。更に、「職種」の辞書ノード38には、「生産」を含む幾つかの辞書ノード38が結び付けられている。これらは、抽象概念における上位と下位の関係を有している。
【0039】
マッチング辞書36に含まれる辞書ノード38は、ツリー構造の中での距離が短いほど関連が強いと判断することができる。例えば、共に「自動車」の下位に位置する「エンジン構造部品」と「アクスル/ブレーキ/車両ダイナミック制御」は、自動車に関する知識において共通しているため、密な関連を有する。
【0040】
一方、辞書ノード38の中には、ツリー構造の中では離れて位置していても互いに密接に関連しているものが存在する。マッチング辞書36には、それらの関連を表す3種類の横の関係線が含まれている。
【0041】
図4は、3種類の横の関係線のうち、useの関係線40とrequireの関係線42を示している。
図4に示す辞書ノード38のうち、例えば「自動二輪車」の「駆動機構」における「クラッチ」の取り扱いには「CAD」の使用が必要である。このように一の要素が他の要素を使用する関係が成立する場合は、一の要素から他の要素に向けてuseの関係線40が引かれる。また、「自動二輪」の「駆動機構」の取り扱いには「摩擦」の学問知識が必要とされる。このように、一の要素が他の要素を必要とする関係が成立する場合には、一の要素から他の要素に向けてrequireの関係線42が引かれる。
【0042】
図5は、3つ目の横の関係線、即ちsimilarの関係線44を示している。
図5において「産業用機器」の下位に位置する「ノギス」と、「自動車関連」の下位に位置する「ノギス」とは、スキルの観点からすれば実質的に同じ意味を有する。このように、一の要素と他の要素が実質的に同じ意味を有する場合には、それらの要素間にsimilarの関係線44が引かれる。
【0043】
以上説明した通り、本実施形態のマッチング辞書36には、ツリー構造に対応する縦の関係線に加えて、3種類の横の関係線40,42,44が含まれている。ツリー構造において近くに配置される辞書ノード38同士と同様に、それら横の関係線40,42,44の何れかで結ばれた辞書ノード同士も、互いに関連が強いと判断することができる。
【0044】
本実施形態において、マッチング辞書36に含まれる個々の辞書ノード38は、管理者により管理サーバ10を用いて入力される。管理者はこの際、ツリー構造を構成する縦の関係を特定し、また、必要であれば横の関係を特定して追加する辞書ノード38を入力する。
【0045】
[実施の形態1の基本動作]
次に、本実施形態のマッチングスコア算出装置の動作を説明する。
図6は、操作端末14を用いて操作担当者が、企業担当者から提供される求人条件を登録する際の流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態で用いられるマッチング辞書は、「製品・部品」「技術・ツール」「職種」「学問」の4つのカテゴリ別のツリー構造を有している。求人条件を登録する際には、先ず、それら4つのカテゴリの何れを登録するかが選択される。
【0046】
以下、船舶の部品を製造する企業から、「小型船外機用アクチュエータの設計」に携わるエンジニアの募集を依頼された場合の例を説明する。この場合は、職種が指定されているため、先ずは「職種」のカテゴリで辞書ノードを登録することとする(ステップ100)。
【0047】
本実施形態では、辞書ノードを登録する手法として、ワード検索とノード選択の2つの手法が準備されている(ステップ102)。ワード検索は、特定のワードを入力して該当する辞書ノードを呼び出す手法である。他方、ノード選択は、ツリー構造に沿ってマッチング辞書を確認し、人材に求める辞書ノードを選択して登録する手法である。
【0048】
図7は、ノード選択の手法で辞書ノードを登録する際に操作端末14のモニタに表示される画面の一例を示す。ここでは、操作担当者によって、業務内容として「小型船外機用アクチュエータの設計」が入力され(46)、カテゴリとして「職種」が選択され(48)、「ノード選択」のタブが選択されている(50)。「職種」の下位には「企画・研究」から「生産管理」まで幾つかの職種が列記されており、その中から「設計・開発」の辞書ノードが選択されている(52)。
【0049】
「設計・開発」が選択されると、その下位に位置する幾つかの辞書ノードが表示される。ここでは、それらの辞書ノードを、符号(54)を付した破線の枠内に示している。操作担当者は、それらの辞書ノードを企業の採用担当者に見せて、今回の求人条件に最も近いものの選択を促す。
図7は、最も近いものとして「造船設計」が選ばれ、そのノードが登録された状態を示している(56)。
【0050】
図6に示すフローチャートは、上記の処理をステップ104およびステップ106で表している。具体的には、「設計・開発」の分野で求人条件に合致する辞書ノードを探す処理が(ステップ104)に相当し、また、その結果として「造船設計」の辞書ノードを登録する処理が(ステップ106)に相当している。
【0051】
図6に示すフローチャートでは、ステップ106に続いて、周辺ツリーの確認(ステップ108)、縦横関係線の有無判断(ステップ110)、登録すべき用語の判断(ステップ112)が示されている。これらの処理は、後述するワード検索によるノード登録の場合と実質的に同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0052】
図8は、ワード検索の手法で辞書ノードを登録する際に操作端末14のモニタに表示される画面の一例を示す。ここでは、「小型船外機用アクチュエータの設計」に必要なスキルとして、企業担当者から「アクチュエータ」の製品知識が要求された場合について説明する。
【0053】
図8の上段では、辞書ノード検索の手法として、「ワード検索」のタブが選ばれている(58)。そして、検索すべきワードとして「アクチュエータ」が入力されている(60)。
【0054】
図8の下段は、「アクチュエータ」についての検索結果(62)が示されている。ここには、具体的には、「製品・部品」<「自動車関連」<「自動車」<「エンジン吸排気系部品」<「過給機」<「ターボチャージャー」<「アクチュエータ」から、「製品・部品」<「産業用機械」<「その他産業用機械」<「機械コンポーネント」<「空圧機器」<「アクチュエータ」まで、7つの結果が示されている。
【0055】
上記の結果は、「アクチュエータ」の辞書ノードが、船舶の分野には準備されていないが、他の分野には準備されていることが判る。この場合、操作担当者は、企業の求人担当者に対して、得られた結果の中で今回の求人案件に利用できるものがあるかを問い合わせる。その結果、例えば、「自動車」分野の「アクチュエータ」(64)なら、共通する知識が多く利用が可能である、といった回答が得られた場合は、これに対応する辞書ノードが登録される。
【0056】
図6に示すフローチャートは、上記の処理をステップ104、ステップ114およびステップ116で表している。具体的には、キーワード検索の結果(62)の中に「船舶」分野の「アクチュエータ」に対応する辞書ノードが存在するか否かを判断する処理が(ステップ104)に相当する。また、その判断が否定された場合に、他分野に利用可能な辞書ノードが存在するか否かを判断する処理が(ステップ114)に相当する。そして、「自動車」分野の「アクチュエータ」を登録する処理が(ステップ116)に相当する。
【0057】
図6に示すフローチャートでは、ステップ116の下方にも、上述したステップ106の場合と同様に、周辺ツリーの確認(ステップ108)、縦横関係線の有無判断(ステップ110)、および登録すべき用語の判断(ステップ112)が示されている。
【0058】
図9は、それらステップ108~112の処理に伴って操作端末14のモニタに表示される画面の一例を示す。より具体的には、
図9の上段は、上記「アクチュエータ」の登録後に、操作担当者が画面に表示した周辺ツリーを示す。操作担当者は、この画面を企業の採用担当者に見せて、「センサ/アクチュエータ」の下位に「アクチュエータ」と共に並んでいる辞書ノード(66)の中に、役に立つノードが存在するか否かを確認する。
【0059】
辞書ノード(66)の中に役に立つ辞書ノードが見つかれば、そのノードが登録される。また、それらの中に役に立つノードがなければ、操作担当者は、更に広い範囲で周辺の辞書ノードを表示してもよい。
図9の中段は、更に上位に遡って、「自動車」の下位に並ぶ辞書ノード(68)を画面に表示した例を示す。
【0060】
操作担当者は、辞書ノード(68)について、採用担当者に有用性を確認する。その結果、例えば「ステアリング」(70)について有用性が認められた場合は、その下位の辞書ノード(72)を更に展開して、必要なスキルの有無を確認してもよい。
図9の下段は、「ステアリング」の下位に広がる辞書ノード(72)の表示例を示す。そして、例えば、「電動パワーステアリング」(74)の知識が必要であることが判れば、その辞書ノード(74)が登録される。
【0061】
尚、上記の例では、縦の関係線のみを辿って周辺ツリーを展開することとしているが、その展開の手法はこれに限定されるものではない。例えば、登録した辞書ノードに横の関係線が繋がっている場合は、その横の関係線を辿って周辺ツリーを展開することとしてもよい。
【0062】
上記の処理中、
図9の上段、中段、または下段の画面を表示する行為、およびその画面中で縦横の関係線で繋がれた辞書ノード(66)、(68)、(72)を見つける行為は、
図6に示すフローチャートにおける(ステップ108)および(ステップ110)の処理に相当する。また、それらの辞書ノード(66)、(68)、(72)の中から登録すべき用語を見つけ出す行為が(ステップ112)の処理に相当する。
【0063】
企業の採用担当者からは、マッチング辞書中に登録されていない事項が要求される場合がある。
図10は、「小型船外機用アクチュエータの設計」に関わる本件において、マッチング辞書に含まれていない「コントロールレバー」が要求された場合に、操作端末14のモニタに表示される画面の例を示す。
【0064】
図10には、具体的には、検索ワードとして「コントロールレバー」が入力され、検索結果として「該当データが存在しません」のコメントが示された様子が表示されている(76)。この場合、操作担当者は、図示しないチャット機能を用いて、管理サーバ10に「コントロールレバー」に対応する辞書ノードの追加を要請する。
【0065】
上記の処理中、「コントロールレバー」を検索してその結果を確かめる行為は、
図6に示すフローチャート中、(ステップ102)、(ステップ104)および(ステップ114)の処理に相当する。また、「コントロールレバー」の追加を管理サーバ10に要請する行為が(ステップ118)に相当する。
図6に示すように、以上説明した処理は、求人条件に対応する全ての辞書ノードの登録が終わるまで繰り返し実行される(ステップ120)。以下、このようにして登録された辞書ノードを「希望ノード」と称する。
【0066】
本実施形態において、希望ノードを登録する際には、そのノードの重要度を選択することができる。
図11は、操作端末14のモニタに「重要度選択」の表示(78)がポップアップされた状態を示す。ここには、重要度が5段階で選択できる例を示している。個々の重要度は、例えば下記のように定義することができる。
★5:不可欠
★4:重要
★3:必要
★2:あれば助かる
★1:あれば助かるかも
【0067】
操作端末14からは、上述した手順と実質的に同じ手順で、就職を希望する求職者の情報を登録することができる。より具体的には、操作端末14からは、求職者が所持する個々の能力に対応する辞書ノードを登録することができる。この登録は、例えば、操作担当者が求職者にヒアリングを行い、その結果に基づいて行うことができる。また、操作担当者が、求職者から受け取った履歴書、経歴書等に基づいて上記の登録を行ってもよい。以下、このようにして登録される辞書ノードを「所持ノード」と称す。本実施形態では、所持ノードを登録する際に、希望ノードについての「重要度」と同様に所持ノードについての「習熟度」を付加情報として登録してもよい。
【0068】
図12は、テクニカルツリー80とスキルツリー82とを照らし合わせてマッチングスコアを算出する手法を説明するための図である。テクニカルツリー80は、求人条件に基づいて登録された希望ノード84をマッチング辞書のツリー構造に当て嵌めることで構成されている。他方、スキルツリー82は、求職者の情報に基づいて登録された所持ノード86をマッチング辞書のツリー構造に当て嵌めることで構成されている。
【0069】
図12に示す例では、テクニカルツリー80に3つの希望ノード84が登録されている。これらの希望ノード84は、何れも求人条件に基づいて重要度と共に登録されたものである。個々の希望ノード84には、その重要度に応じて配点が割り振られる。
図12の下段に示すテクニカルツリー80は、満点が100点であり、重要度2、5、3の希望ノード84に夫々20点、50点、30点の配点が付与された例を示している。
【0070】
尚、個々の希望ノード84の配点には、それらのノードのテクニカルツリー80内での階層の位置を反映させることとしてもよい。具体的には、例えば、より上位に位置する希望ノード84に高い配点を付与するように階層に応じた重み付けを施すこととしてもよい。或いは、より下位に位置する希望ノード84の配点が大きくなるように、その重み付けを設定してもよい。
【0071】
マッチングスコアを算出する過程では、次に、テクニカルツリー80に含まれる希望ノード84の夫々と、スキルツリー82に含まれる所持ノード86の夫々との距離が測定される。更に、その測定の結果に基づいて、希望ノード84の夫々に与えられた配点に対する係数が決定される。
【0072】
図12の下段に示すスキルツリー82は、上記の処理により設定される配点に対する係数の例を示している。ここでは、先ず、希望ノード84の夫々につき、ツリー構造における完全一致の箇所に所持ノード86が存在するかが判断される。完全一致の所持ノード86が存在する場合は、その希望ノード84の配点に対して1.0の係数が与えられる(符号88参照)。
【0073】
次に、希望ノード84の対応箇所と、階層の仲介無しに縦の関係線で繋がる位置に、所持ノード86が存在するか否かが判別される。この種の所持ノード86が存在する場合は、その希望ノード84の配点に対して0.6の係数が与えられる(符号90参照)。
【0074】
更に、希望ノード84の対応箇所と、階層を介して縦の関係線で繋がる位置、或いはその対応箇所と横の関係線(
図4、
図5参照)で繋がる位置に、所持ノード86が存在するか否かが判別される。この種の所持ノード86が存在する場合には、その希望ノード84の配点に対して0.2の係数が与えられる(図示なし)。
【0075】
そして、上記の関係を満たす所持ノード86が存在しない希望ノード84の配点には、0.0の係数が付与される(符号92参照)。
【0076】
以後、配点と係数の乗算値の和がマッチングスコアとして算出される。
図12に示す例の場合は、以下の計算式によりマッチングスコアが算出される。
マッチングスコア=20×0.0+50×1.0+30×0.6=68点
【0077】
尚、上記の例では、完全一致、仲介なし、仲介あり又は横の関係線、の3つに対して距離に応じた係数を与えることとしているが、係数付与の手法はこれに限定されるものではない。希望ノードと所持ノードとの距離を、より細かく分類して、より多種類の係数を導入することとしてもよい。
【0078】
また、上記の例では、所持ノード86の習熟度をマッチングスコアに反映させていないが、習熟度に応じた係数を導入して、習熟度をマッチングスコアに反映させることとしてもよい。この場合、習熟度が高い所持ノードほど1.0に近い係数を設定し、また、習熟度が低い所持ノードほど0.0に近い係数を設定する。そして、それらの係数を、個々の所持ノードに関わる配点に掛け合わせることで、習熟度をマッチングスコアに反映させることができる。
【0079】
上記の手法では、求人条件と求職者の情報が、互いに同じツリー構造を有するテクニカルツリーとスキルツリーにまとめられる。このため、この手法によれば、複雑な自然言語処理等を必要とすることなく、簡単な照らし合わせによって希望ノードと所持ノードが一致しているか否かを判断することができる。更に、上記の手法によれば、希望ノードと所持ノードの完全一致のみならず、両者の関連性をもマッチングスコアに反映させることができる。このため、この手法によれば、求人条件と求職者の情報との整合度を正確に表すマッチングスコアを容易な処理により得ることができる。
【0080】
[実施の形態1に固有の動作]
次に、
図13を参照して、本実施形態において管理サーバ10が実行する動作について説明する。本実施形態では、人材の採用を希望する企業から、複数の求職者を対象としたマッチングスコアの算出が依頼された場合について説明する。
【0081】
図13は、本実施形態において管理サーバ10が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。ここでは、
図13に示すルーチンの実行に先立って、
図6乃至
図11を参照して説明した手法により、求人条件に対応する希望ノードの登録と、全ての求職者についての所持ノードの登録とが終了しているものとする。
【0082】
図13に示すルーチンは、管理サーバ10に対してマッチングスコアの算出が要求されることにより起動される。このルーチンが起動されると、初期化処理に続いて、先ず、求人条件の読み込みが行われる(ステップ130)。より具体的には、求人条件に基づいて登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むテクニカルツリーが生成される。
【0083】
次に、求職者(i)についての情報が読み込まれる(ステップ132)。具体的には、求職者(i)について登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むスキルツリーが生成される。ここで、(i)は、複数の求職者の夫々に連番で割り振られた番号の一つである。本ルーチンの起動時に、(i)の値は初期化処理により最小値(例えば1)に設定される。
【0084】
次に、
図12を参照して説明した手法でツリーマッチングが実施される(ステップ134)。具体的には、本ステップでは以下の処理が実行される。
1.全ての希望ノードに付与される配点の合計が満点(例えば100点)となるように、個々の希望ノードの配点が、夫々の重要度に基づいて算出される。
2.テクニカルツリーとスキルツリーが照らし合わされ、希望ノードと所持ノードの距離に基づいて個々の希望ノードに付与された配点に対する係数が算出される。
【0085】
次に、以下の処理によりマッチングスコア(i)が算出される。
1.テクニカルツリーに含まれる全ての希望ノードについて、付与された配点と、付与された係数の乗算値が算出される。
2.上記の乗算値の合算値が、求職者(i)のマッチングスコア(i)として算出される。
【0086】
以上の処理が終わると、次に、全ての求職者についての処理が終わったか否かが判別される(ステップ138)。
【0087】
その結果、未だ全ての求職者について処理が終了していないと判別された場合は、(i)がインクリメントされた後(ステップ140)、再び上記ステップ132以降の処理が実行される。
【0088】
他方、上記ステップ138で、全ての求職者について処理が終了していると判別された場合は、算出された全てのマッチングスコア(i)がスコア順に整列される(ステップ142)。
【0089】
次いで、整列されたスコアの順で、求職者についての情報が出力される(ステップ144)。
【0090】
以上の処理によれば、マッチングスコアの高い順に、つまり今回の求人条件に対する適合度が高い順に、求職者の情報が提供される。このため、企業の採用担当者は、上から順に求職者情報をピックアップするだけで、多数の求職者の中から最適な人材を選び出すことができる。このように、本実施形態のマッチングスコア算出装置は、求人条件と求職者のマッチングスコアを簡単に正しく算出する効果に加えて、企業の採用担当者の作業負荷を著しく軽減するという効果をも達成することができる。
【0091】
ところで、上述した実施の形態1では、マッチングスコアの算出後に、全ての求職者の情報を出力することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、採用人数を予め管理サーバに入力しておき、その採用人数分の情報だけを出力することとしてもよい。このような処理によれば、採用に伴う作業をより一層効率化することができる。
【0092】
尚、上述した実施の形態1においては、辞書ノードに割り当てられる要素が前記第1の発明における「マッチング要素」に相当していると共に、「求職者」が前記第1の発明における「対象人材」に相当している。
【0093】
[実施の形態2]
次に、
図14を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態のマッチングスコア算出装置は、実施の形態1の場合と同様に
図1に示すハードウェア構成により実現することができる。本実施形態の装置は、人材補充を求める特定部署に最適な人材を配置するための材料として、マッチングスコアを算出する点に特徴を有している。
【0094】
上述した実施の形態1では、求人条件に基づいて希望ノードが登録され、求職者の情報に基づいて所持ノードが登録される。これに対して、本実施形態では、人材補充を求める特定部署が、その人材に求める能力条件に基づいて希望ノードが登録される。また、その部署への配置候補者が所持するスキル、経験、学歴等の情報に基づいて所持ノードが登録される。
【0095】
図14は、本実施形態において管理サーバ10が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。実施の形態1の場合と同様に、特定部署の希望ノードの登録と、全ての候補者の所持ノードの登録は、
図14に示すルーチンの実行に先立って終了しているものとする。
【0096】
図14に示すルーチンが起動されると、初期化処理に続いて先ず、人材配置を求める特定部署の能力条件が読み込まれる(ステップ150)。具体的には、特定部署から提供される能力条件に基づいて登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むテクニカルツリーが生成される。
【0097】
次に、特定部署への配置候補者(i)についての情報が読み込まれる(ステップ152)。具体的には、配置候補者(i)について登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むスキルツリーが生成される。ここで、(i)は、実施の形態1の場合と同様に、複数の候補者の夫々に連番で割り振られた番号の一つである。
【0098】
以下、ツリーマッチング(ステップ154)とマッチングスコア(i)の算出(ステップ156)とが、全ての候補者について実行される(ステップ158、160)。そして、その算出が終わると、マッチングスコアの大きい順に、候補者の情報が出力される(ステップ162、164)。これらの処理は、実質的に
図13に示すステップ134~144の処理と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0099】
以上の処理によれば、マッチングスコアの高い順に候補者の情報が出力される。このため、企業の配置担当者は、上から順に候補者情報をピックアップするだけで、多数の候補者の中から最適な人材を選び出すことができる。このように、本実施形態のマッチングスコア算出装置は、人材を求める部署と配置候補者のマッチングスコアを簡単に正しく算出する効果に加えて、企業の配置担当者の作業負荷を著しく軽減するという効果をも達成することができる。
【0100】
ところで、上述した実施の形態2では、マッチングスコアの算出後に、全ての候補者の情報を出力することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、特定部署への配置人数を予め管理サーバに入力しておき、その人数分の情報だけを出力することとしてもよい。このような処理によれば、配置に伴う担当者の作業をより一層効率化することができる。
【0101】
尚、上述した実施の形態2においては、「配置候補者」が前記第1の発明における「対象人材」に相当している。
【0102】
[実施の形態3]
次に、
図15を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態のマッチングスコア算出装置は、実施の形態1の場合と同様に
図1に示すハードウェア構成により実現することができる。本実施形態の装置は、特定の求職者が最適な就職先を選定するための材料としてマッチングスコアを算出する点に特徴を有している。
【0103】
本実施形態では、上述した実施の形態1の場合と同様に、求人条件に基づいて希望ノードが登録される。また、求職者が所持するスキル、経験、学歴等の情報に基づいて所持ノードが登録される。
【0104】
図15は、本実施形態において管理サーバ10が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態では、
図15に示すルーチンの実行に先立って、複数の求人条件の全てについての希望ノードの登録と、特定の求職者についての所持ノードの登録とが終了しているものとする。
【0105】
図15に示すルーチンが起動されると、初期化処理に続いて先ず、特定の求職者の情報が読み込まれる(ステップ170)。具体的には、特定の求職者から提供される情報に基づいて登録された全ての所持ノードが読み込まれ、それらを含むスキルツリーが生成される。
【0106】
次に、求人条件(i)が読み込まれる(ステップ172)。具体的には、求人条件(i)について登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むテクニカルツリーが生成される。ここで、(i)は、実施の形態1または2の場合と同様に、複数の求人条件の夫々に連番で割り振られた番号の一つである。
【0107】
以下、ツリーマッチング(ステップ174)とマッチングスコア(i)の算出(ステップ176)とが、全ての求人条件について実行される(ステップ178、180)。そして、その算出が終わると、マッチングスコアの大きい順に、求人条件の情報が出力される(ステップ182、184)。これらの処理は、実質的に
図13に示すステップ134~144の処理と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0108】
以上の処理によれば、マッチングスコアの高い順に求人情報の情報が出力される。このため、求職者は、上から順に求人情報をピックアップするだけで、多数の求人案件の中から自己に適した案件を効率的に選び出すことができる。このように、本実施形態のマッチングスコア算出装置は、求職者と求人条件とのマッチングスコアを簡単に正しく算出する効果に加えて、求職者が自己に適した応募先を絞り込むための作業負荷を著しく軽減するという効果をも達成することができる。
【0109】
ところで、上述した実施の形態3では、マッチングスコアの算出後に、全ての求人条件の情報を出力することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、求人条件の抽出数を予め管理サーバに入力しておき、その抽出数分の情報だけを出力することとしてもよい。このような処理によれば、求職者の作業をより一層効率化することができる。
【0110】
尚、上述した実施の形態3においては、「求職者」が前記第1の発明における「対象人材」に相当している。
【0111】
[実施の形態4]
次に、
図16を参照して本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態のマッチングスコア算出装置は、実施の形態1の場合と同様に
図1に示すハードウェア構成により実現することができる。本実施形態の装置は、特定の人材を最適な部署に配置するための材料としてマッチングスコアを算出する点に特徴を有している。
【0112】
本実施形態では、上述した実施の形態2の場合と同様に、人材を受け入れる部署が要求する能力条件に基づいて希望ノードが登録される。また、配置候補者が所持するスキル、経験、学歴等の情報に基づいて所持ノードが登録される。
【0113】
図16は、本実施形態において管理サーバ10が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態では、
図16に示すルーチンの実行に先立って、複数の能力条件の全てについての希望ノードの登録と、配置候補者についての所持ノードの登録とが終了しているものとする。
【0114】
図16に示すルーチンが起動されると、初期化処理に続いて先ず、配置候補者の情報が読み込まれる(ステップ190)。具体的には、配置候補者から提供される情報に基づいて登録された全ての所持ノードが読み込まれ、それらを含むスキルツリーが生成される。
【0115】
次に、能力条件(i)が読み込まれる(ステップ192)。具体的には、一の部署の能力条件(i)について登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むテクニカルツリーが生成される。ここで、(i)は、実施の形態1乃至3の場合と同様に、人材の受け入れ先である複数の部署の夫々に連番で割り振られた番号の一つである。
【0116】
以下、ツリーマッチング(ステップ194)とマッチングスコア(i)の算出(ステップ196)とが、全ての能力条件について実行される(ステップ198、200)。そして、その算出が終わると、マッチングスコアの大きい順に、能力条件を設定した部署の情報が出力される(ステップ202、204)。これらの処理は、実質的に
図13に示すステップ134~144の処理と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0117】
以上の処理によれば、マッチングスコアの高い順に部署の情報が出力される。このため、配置候補者は、或いは、その配置候補者の配置先を決定する職責を有する配置担当者は、上から順に部署情報をピックアップするだけで、複数の部署の中からその配置候補者に適した部署を効率的に選び出すことができる。このように、本実施形態のマッチングスコア算出装置は、配置候補者と各部署とのマッチングスコアを簡単に正しく算出する効果に加えて、配置交互者にとって最適な配置部署を絞り込むための作業負荷を著しく軽減するという効果をも達成することができる。
【0118】
ところで、上述した実施の形態4では、マッチングスコアの算出後に、全ての部署の情報を出力することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、絞込み数を予め管理サーバに入力しておき、その数だけを部署情報を出力することとしてもよい。このような処理によれば、人材の配置先を決めるための作業をより一層効率化することができる。
【0119】
尚、上述した実施の形態4においては、「配置候補者」が前記第1の発明における「対象人材」に相当している。
【0120】
[実施の形態5]
次に、
図17を参照して本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態のマッチングスコア算出装置は、実施の形態1の場合と同様に
図1に示すハードウェア構成により実現することができる。本実施形態の装置は、対象人材の人事評価の材料としてマッチングスコアを算出する点に特徴を有している。
【0121】
本実施形態では、対象人材の所持するスキル、経験、実績等の情報に基づいて所持ノードが登録される。他方、希望ノードは、人事考課に際してその対象人材に当て嵌めるべき評価基準に基づいて登録される。
【0122】
図17は、本実施形態において管理サーバ10が実行する処理の流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態では、
図17に示すルーチンの実行に先立って、評価基準に基づく希望ノードの登録と、人事考課の対象人材についての所持ノードの登録とが終了しているものとする。
【0123】
図17に示すルーチンが起動されると、初期化処理に続いて先ず、評価基準が読み込まれる(ステップ210)。具体的には、対象人材に当て嵌めるべき評価基準に基づいて登録された全ての希望ノードが読み込まれ、それらを含むテクニカルツリーが生成される。
【0124】
次に、評価の対象人材の実績等が読み込まれる(ステップ212)。具体的には、その対象者の実績等に基づいて登録された全ての所持ノードが読み込まれ、それらを含むスキルツリーが生成される。
【0125】
上記の処理に続いて、ツリーマッチング(ステップ214)とマッチングスコアの算出(ステップ216)とが順次実行される。これらの処理は、実質的に
図13に示すステップ134および136の処理と同様であるため、ここでは重複する説明を省略する。
【0126】
以上の処理が終わると、算出されたマッチングスコアが評価スコアとして出力される(ステップ218)。このようにして算出されたマッチングスコアは、対象人材の能力、実績等が、評価基準をどの程度満たしているかを正しく表した値となる。このため、その値は、客観的な評価結果として対象人材の人事考課に用いることができる。このように、本実施形態のマッチングスコア算出装置によれば、対象人材の人事考課に要する作業を効率化することができる。
【0127】
ところで、上述した実施の形態1乃至5では、管理サーバ10と操作端末14とをネットワーク12を介して繋げることとしているが、本発明の構成はこれに限定されるものではない。例えば、操作端末14の機能を管理サーバ10に持たせて、管理サーバ10だけでマッチングスコア算出装置を実現することとしてもよい。
【0128】
また、上述した実施形態1乃至5では、個々の辞書ノードに割り振るマッチング項目を、スキル、経験、学歴など、主として能力に関する項目としているが、マッチング項目の内容はこれに限定されるものではない。例えば、業務に対する姿勢、日常の行動パターン、業務の成果などに関わる項目をマッチング項目に含めることとしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 管理サーバ
14 操作端末
36 マッチング辞書
38 辞書ノード
40,42,44 横の関係線
80 テクニカルツリー
82 スキルツリー
84 希望ノード
86 所持ノード