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特許7062768濃度勾配前駆体を製造するための材料投入スケジューリング方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】濃度勾配前駆体を製造するための材料投入スケジューリング方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20220425BHJP
   B01J 19/24 20060101ALI20220425BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20220425BHJP
   H01M 4/525 20100101ALN20220425BHJP
   H01M 4/505 20100101ALN20220425BHJP
   H01M 4/36 20060101ALN20220425BHJP
【FI】
B01J19/00 J
B01J19/24 Z
C01G53/00 A
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020535244
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 KR2018015779
(87)【国際公開番号】W WO2019132331
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-07-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0180061
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(73)【特許権者】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】リュ、 ファン ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 キ スン
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126548(US,A1)
【文献】特表2010-510056(JP,A)
【文献】特表2007-520414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02,14/00-19/32
C01G 25/00-47/00,49/10-99/00
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1供給槽と第2供給槽の材料を混合器で予め混合して反応器に投入する方式の濃度勾配前駆体製造装置を使用して濃度勾配前駆体を製造するための材料投入スケジューリング方法であって
(a)第1供給槽(Q1)材料の総量と第2供給槽(Q2)材料の総量を合算した値を総工程時間(Tr)で割って前記混合器(Q3)から前記反応器への供給流量を計算する段階と、
(b)総工程時間(Tr)の間の前記第1供給槽(Q1)の材料供給流量を各時間別に次第に減少するパターンになるように下記数式1を使用して計算する段階と、
各時間別Q1材料供給流量(FQ1t)=2×(Q1材料総量-Q3に予め貯蔵されているQ1材料の量-既に投入されたQ1材料の量)/(Q1の材料全部を供給するのに必要な時間(TQ1)-Q1材料の投入に既にかかった時間)------------数式1
(c)前記第1供給槽(Q1)材料の供給流量変化率が一定になる投入量を計算する段階と、
(d)記第1供給槽(Q1)材料の供給流量を補正する段階と、
(e)前記混合器(Q3)の供給流量から前記(d)段階で補正された第1供給槽(Q1)材料の供給流量を引いて前記第2供給槽(Q2)材料の供給流量を計算する段階と
を含む材料投入スケジューリング方法。
【請求項2】
前記(a)段階と(b)段階との間に、
(f)前記混合器(Q3)に予め投入されている前記第1供給槽(Q1)の材料の量を考慮して前記第1供給槽(Q1)の材料全部を供給するのにかかる時間を計算する段階をさらに含む、請求項1に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項3】
前記(b)段階と(c)段階との間に、
b-1)前記第1供給槽(Q1)材料供給流量変化率が一番目と二番目供給段階の間および最後の供給段階とその直前の供給段階を除いた残り供給段階の間では同一なのか判断する段階をさらに含む、請求項1または2に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項4】
前記(b-1)段階で前記第1供給槽(Q1)材料供給流量変化率が一番目と二番目との供給段階の間および最後の供給段階とその直前の供給段階を除いた残り供給段階との間で同一でないと判断されれば、前記(b)段階を再び行う、請求項に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項5】
前記(b-1)段階と(c)段階との間に、
b-2)全ての供給段階の前記第1供給槽(Q1)の材料供給流量を合算する段階と、
b-3)前記第1供給槽(Q1)から前記混合器(Q3)に投入しなければならない材料総量より前記第1供給槽(Q1)の材料供給流量の合算がさらに大きいかを判断する段階と
をさらに含む、請求項3または4に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項6】
前記(b-3)段階で前記第1供給槽(Q1)から前記混合器(Q3)に投入しなければならない材料総量より前記第1供給槽の材料供給流量の合算がさらに大きくない場合には前記(c)段階を行わず前記(b)段階で計算されたパターンを前記第1供給槽(Q1)材料の投入スケジュールに決定し、さらに大きい場合には前記(c)段階を行う、請求項に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項7】
前記(d)段階と前記(e)段階との間に(h)前記第1供給槽(Q1)材料の供給流量合計と前記第1供給槽(Q1)から前記混合器(Q3)に投入しなければならない材料総量の差が所定値以下なのかを判断する段階をさらに含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項8】
前記(h)段階で前記第1供給槽(Q1)材料の供給流量合計と第1供給槽(Q1)材料から前記混合器(Q3)に投入しなければならない材料の総量との差が所定値以下でなければ、前記(c)段階と(d)段階を再び行う、請求項に記載の材料投入スケジューリング方法。
【請求項9】
前記第1供給槽(Q1)の材料はニッケルとコバルト混合溶液であり、前記第2供給槽(Q2)の材料はニッケル、コバルトおよびマンガン混合溶液である、請求項1に記載の材料投入スケジューリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2017年12月26日付韓国特許出願第10-2017-0180061号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、濃度勾配前駆体の製造装置およびその材料投入スケジューリング方法に関し、詳しくは、混合器を使用して二つの材料を予め混合して反応器に投入する濃度勾配前駆体の製造装置と、その材料投入スケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0003】
反復充電が可能なリチウム二次電池の場合、エネルギー密度が在来式電池に比べて非常に高い反面、高温で正極活物質の結晶構造が不安定で熱的特性がぜい弱であるという短所がある。したがって、このような短所を解決するための方法として、金属組成が濃度勾配を有する前駆体製造方法が研究されてきた。
【0004】
濃度勾配を有する前駆体は、図1に示したように、コア部分は同一な組成比の物質から形成し、シェル部分は放射状に組成比が次第に変化するように形成した前駆体をいう。
【0005】
このような濃度勾配前駆体製造のために、従来は、図2に示したように、Q1供給槽(Feed Tank)からQ2供給槽(Feed Tank)に組成比の異なる金属溶液を投入した後、Q1供給槽からQ2供給槽に定めた固定流量で反応時間持続的に投入し、Q2供給槽は与えられた反応時間内に混合された金属溶液全部を反応器に投入して濃度勾配を調節する方式で工程を行った。即ち、それぞれの供給槽に組成比の異なる金属溶液を別に準備した後、そのうちの一つの供給槽に他の供給槽の金属溶液を投入して混合した後、反応器に供給することによって、濃度勾配を有する前駆体を製造する方式を使用してきた。しかし、このような従来の方式ではQ1供給槽、Q2供給槽および反応器が一つのセットをなさなければならなくて製造設備の生産性を高めるのに限界がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術的課題は、生産性を画期的に向上することができる濃度勾配前駆体製造装置を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の技術的課題は、均一な濃度勾配前駆体を製造することができる材料投入スケジューリング方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法は、第1供給槽と第2供給槽の材料を混合器で予め混合して反応器に投入する方式の濃度勾配前駆体製造装置で材料投入スケジュールを作成するために使用し、(a)前記混合器の供給流量を計算する段階;(b)総工程時間の間の前記第1供給槽の材料供給流量を供給段階別に次第に減少するパターンになるように計算する段階;(c)前記第1供給槽材料の供給流量差が一定になるようにする最適量を計算する段階;(d)前記最適量を各供給段階に逆順に再分配して前記第1供給槽材料の供給流量を補正する段階;(e)前記混合器の供給流量から前記(d)段階で補正された第1供給槽材料の供給流量を引いて前記第2供給槽材料の供給流量を計算する段階を含む。
【0009】
前記(a)段階と(b)段階の間に、(f)前記混合器に予め投入されている前記第1供給槽の材料の量を考慮して前記第1供給槽の材料全部を供給するのにかかる時間を計算する段階をさらに含むことができる。
【0010】
前記(b)段階と(c)段階の間に、(e)前記第1供給槽の材料供給流量差が一番目と二番目供給段階の間および最後の供給段階とその直前の供給段階を除いた残り供給段階の間では同一なのか判断する段階をさらに含むことができる。
【0011】
前記(e)段階で前記第1供給槽の材料供給流量差が一番目と二番目供給段階の間および最後の供給段階とその直前の供給段階を除いた残り供給段階の間で同一でないと判断されれば、前記(b)段階を再び行うことができる。
【0012】
前記(e)段階と(c)段階の間に、(f)全ての供給段階の前記第1供給槽の材料供給流量を合算する段階;および(g)前記第1供給槽から前記混合器に投入しなければならない材料総量より前記第1供給槽の材料供給流量の合算がさらに大きいかを判断する段階をさらに含むことができる。
【0013】
前記(g)段階で前記第1供給槽から前記混合器に投入しなければならない材料総量より前記第1供給槽の材料供給流量の合算がさらに大きくない場合には前記(c)段階を行わず前記(b)段階で計算されたパターンを前記第1供給槽材料の投入スケジュールに決定し、さらに大きい場合には前記(c)段階を行うことができる。
【0014】
前記(d)段階と前記(e)段階の間に(h)前記第1供給槽材料の供給流量合計と前記第1供給槽から前記混合器に投入しなければならない材料総量の差が所定値以下なのかを判断する段階をさらに含むことができる。
【0015】
前記(h)段階で前記第1供給槽材料の供給流量合計と第1供給槽から前記混合器に投入しなければならない材料の総量との差が所定値以下でなければ、前記(c)段階と(d)段階を再び行うことができる。
【0016】
前記第1供給槽の材料はニッケルとコバルト混合溶液であり、前記第2供給槽の材料はニッケル、コバルトおよびマンガン混合溶液であってもよい。
【0017】
本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造装置は、第1材料を貯蔵する第1供給槽;第2材料を貯蔵する第2供給槽;前記第1供給槽と前記第2供給槽から供給される前記第1材料と第2材料を混合する複数の混合器;および前記複数の混合器から供給される混合材料を共沈反応させる複数の反応器を含み、前記複数の混合器と前記複数の反応器は1:1対応する。
【0018】
前記複数の混合器には、前記第1材料が所定量予め投入されていてもよく、前記第1材料はニッケルとコバルト混合溶液であり、前記第2材料はニッケル、コバルトおよびマンガン混合溶液であってもよく、前記反応器では共沈反応が起こり得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態による濃度勾配前駆体製造装置と材料投入スケジューリング方法を使用すれば、反応時間が変更されても常に均一な濃度勾配を有する前駆体を製造することができるようになることによって前駆体の品質を向上させることができ、濃度勾配に対する事前検証を実施することによって、前駆体品質の偏差を最少化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】濃度勾配前駆体の概念図である。
図2】従来の技術による濃度勾配前駆体製造装置を概略的に示した図である。
図3】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造装置の概念図である。
図4】濃度勾配前駆体製造装置に理想的な反応時間による材料投入量グラフである。
図5】本発明の一実施形態による前駆体製造装置に理想的な反応時間による材料投入量グラフである。
図6】Q1供給槽の材料供給量を単純に総工程時間の間に順次減少するパターンで計算した場合の反応時間による材料投入量グラフである。
図7】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法のフローチャートである。
図8】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法を通じてQ1供給槽の材料供給量の投入スケジュールを修正していく過程を示すグラフである。
図9A】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法を使用して作成した反応時間が22時間である共沈工程の材料投入スケジュールグラフである。
図9B図9Aの材料投入スケジュールによって製造された前駆体のシェル部分組成比グラフである。
図10A】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法を使用して作成した反応時間が25時間である共沈工程の材料投入スケジュールグラフである。
図10B図10Aの材料投入スケジュールによって製造された前駆体のシェル部分組成比グラフである。
図11A】本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法を使用して作成した反応時間が30時間である共沈工程の材料投入スケジュールグラフである。
図11B図11Aの材料投入スケジュールによって製造された前駆体のシェル部分組成比グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付した図面を参照して本発明の様々な実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は様々な異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0022】
本発明を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一な参照符号を付けるようにする。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造装置の概念図である。図4は、濃度勾配前駆体製造装置に理想的な反応時間による材料投入量グラフである。図5は、本発明の一実施形態による前駆体製造装置に理想的な反応時間による材料投入量グラフである。図6は、Q1供給槽の材料供給量を単純に総工程時間の間に順次減少するパターンで計算した場合の反応時間による材料投入量グラフである。
【0024】
図3を参照すれば、本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造装置は、組成比が互いに異なる金属溶液を貯蔵する二つの供給槽Q1、Q2、これら二つの供給槽Q1、Q2から投入される組成比の異なる金属溶液を混合する複数の混合器Q3、そして複数の混合器Q3に1:1対応で連結されており、混合器Q3から混合された金属溶液の供給を受ける複数の反応器A、B、C、Dを含む。本実施形態では混合器Q3と反応器A、B、C、Dがそれぞれ4つと例示されているが、これらの個数は必要によって増減できる。このような濃度勾配前駆体製造装置では、二つの供給槽Q1、Q2から投入される組成比の異なる金属溶液を混合器Q3で先に混合して反応器A、B、C、Dに投入して工程を行う。このような装置では、混合器Q3と反応器A、B、C、Dの個数のみ増減して効率的に製造容量を増減することができる。
【0025】
このような濃度勾配前駆体製造装置では、混合器Q3から反応器A、B、C、Dに投入される混合材料の投入量は一定であるが、二つの供給槽Q1、Q2から混合器Q3に投入する供給流量は濃度勾配を作るために投入量が互いに反対のパターンに順次変化しなければならない。混合器Q3から反応器に投入される流量は、下記数式1で簡単に表現できる。
【0026】
Q3供給流量=(Q1総量+Q2総量)/反応時間-------数式1
【0027】
混合器Q3供給流量は反応時間始終常に一定に投入されるが、二つの供給槽Q1、Q2から混合器Q3に投入する供給流量は混合器Q3で濃度勾配が作られる混合比率にならなければならないため投入スケジュールが互いに異なる。図4は、二つの供給槽Q1、Q2から混合器Q3に投入する供給流量の最も理想的なスケジュールを示すグラフである。
【0028】
しかし、混合器Q3には第1供給槽Q1の金属溶液が予め一定量(本実施形態では500kg)満たされている状態で反応が始まる。これによって、反応中に第1供給槽Q1の材料投入量は第2供給槽Q2より500kg少なく投入され、第1供給槽Q1内にある材料を全て消耗した後には混合器Q3に入っている材料500kgが反応器に投入される。したがって、図5のような材料供給グラフが作られなければならない。
【0029】
しかし、前駆体濃度変化を与えるためには、図1に示されているように、前駆体のコア(core)部分は一定の組成で組成の変化があってはならなく、シェル(Shell)部分は各金属溶液別に濃度の変化が特定の傾きを有しなければならない。第1供給槽Q1の材料投入量が各時間帯別に一定に変化するようにするためには第1供給槽Q1の材料投入量を全体反応時間に対して順次に減少するパターンで計算するが、混合器Q3に予め投入されている第1供給槽Q1の初期材料500kgによって、図6に示したように、最初投入段階1時間の間の投入流量と二番目の投入段階1時間の投入流量の間の差と二番目の投入段階以後の投入段階の間の1時間の投入流量差が異なって計算される。このような差は、初期反応によって形成される前駆体コアと接した部分の濃度が他の部分に比べて急に変化する原因になる。詳しく説明すれば、図6は30時間反応のための材料投入スケジュールであり、混合器Q3から反応器A、B、C、Dへの供給流量は221.77kg/hで固定である。初期前駆体コア領域の組成比を固定させるためにコア組成溶液のみ1時間投入し、その以後には一定の流量差でコア組成溶液の投入量を減少させなければならない。この時、減少するコア組成溶液の投入量を計算することにおいて、混合器Q3の時間当り供給流量221.77kg/hとコア組成溶液総量から混合器Q3に予め投入されている500kgを引いたコア組成溶液の投入量(第1供給槽Q1から投入される材料量)を計算の基礎に使用して二番目投入段階1時間投入するコア組成溶液流量を計算する。しかし、混合器Q3の時間当り供給流量221.77kg/hは第1供給槽Q1から投入される材料量でないコア組成溶液総量に基づいて計算された量であるため、2時間目に投入されるコア組成溶液の流量減少幅が2時間目以後のコア組成溶液の流量減少幅に比べて大きく計算される。下記表1は図6の初期6時間までの投入スケジュールに対する詳細流量値を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
表1を参照すれば、一番目投入流量と二番目投入流量の差は29.51kg/hであり、二番目以後からは7.80kg/hの傾きで一定に減少する。しかし、このような一番目投入流量と二番目投入流量の急激な変化は前駆体コアと接した部分の濃度が他の部分に比べて急に変化する原因になる。このような問題を解決するために、本発明の一実施形態では次のような材料投入スケジューリング方法を設けた。
【0032】
図7は、本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法のフローチャートである。図8は、本発明の一実施形態による濃度勾配前駆体製造のための材料投入スケジューリング方法を通じてQ1供給槽の材料供給量の投入スケジュールを修正していく過程を示すグラフである。
【0033】
図7を参照すれば、まず、総工程時間(Tr)、Q1材料総量(コア材料総量、本実施形態ではニッケルとコバルトの混合溶液を使用する)、Q2材料の総量(本実施形態ではニッケル、コバルト、マンガンの混合溶液を使用する)、Q3に予め貯蔵されているQ1材料の量を確認する(S1)。
【0034】
その次に、Q1材料総量とQ2材料の総量を合算した値を総工程時間(Tr)で割ってQ3の供給流量を計算する(S2)。
【0035】
その次に、総工程時間(Tr)からQ3に予め貯蔵されているQ1材料を消尽するのに必要な時間(Q3に予め貯蔵されているQ1材料の量をQ3の供給流量で割った値)を引いて、Q1供給槽の材料全部を供給するのに必要な時間(TQ1)を計算する(S3)。
【0036】
その次に、総工程時間(Tr)の間にQ1供給槽からQ3に供給しなければならない材料の流量を次第に減少するパターンで計算する(S4)。この時、各時間別(供給段階別)Q1流量(FQ1t)は下記数式2を使用して計算する。
【0037】
FQ1t=2×(Q1材料総量-Q3に予め貯蔵されているQ1材料の量-既に投入されたQ1材料の量)/(Q1供給槽の材料全部を供給するのに必要な時間(TQ1)-Q1投入に既にかかった時間)--------------数式2
【0038】
上記過程を通じて計算されたQ1供給槽からQ3に供給しなければならない材料の流量変化をグラフで示すと、図8のS4となる。
【0039】
その次に、Q1供給槽からQ3に供給しなければならない材料の流量の差が、一番目と二番目供給段階(Q1材料供給開始後、1時間目と2時間目)の間および最後の供給段階とその直前供給段階を除いて残り供給段階の間では同一であるかを判断する(S5)。ここで‘いいえ’と判断されるとS4段階を再び行い、‘はい’である場合にはその次の段階S6に移行する。
【0040】
その次に、S4段階で計算された時間別(供給段階別)Q1流量(FQ1t)を全て合算する(S6)。
【0041】
その次に、S6段階で計算されたQ1流量(FQ1t)の総合がQ1供給総量(Q1材料総量-Q3に予め貯蔵されているQ1材料の量)より大きいかを判断する(S7)。ここで‘いいえ’と判断されると、S6段階で計算されたQ1の流量(FQ1t)をQ1の供給スケジュールと決定してS11段階に移行し、‘はい’であればS8段階に移行する。
【0042】
その次に、Q1の流量(FQ1t)差が一番目と二番目供給段階(Q1材料供給開始後、1時間目と2時間目)まで含んで一定になるようにする最適量を計算する(S8)。このような最適量の計算は、反復的な推定値入力を通じて計算するか、図8に示されたS8直線を示す数式を作成し、各時間値を代入して計算することができる。
【0043】
その次に、S8段階で計算された最適量とS4段階で計算された時間別(供給段階別)Q1流量(FQ1t)の差を計算しその値を供給段階を逆順に配列して、S8段階で計算された最適量から引くことによって、各供給段階のQ1の補正された流量を得る(S9)。各供給段階のQ1の補正された流量をグラフに示すと、図8のS9となる。
【0044】
その次に、各供給段階のQ1の補正された流量を全て合算した値からQ1供給総量を引いた値が予め設定されている所定値より小さいかを判断する(S10)。ここで、‘いいえ’と判断されると、S8とS9段階を再び行い、‘はい’であれば、Q1の補正された流量をQ1の供給スケジュールと決定してS11段階に移行する。
【0045】
その次に、Q3の供給流量からS10段階で決定されたQ1の供給スケジュールを引くことによって、Q2の供給流量を計算する(S11)。
【0046】
以上の材料投入スケジューリング方法を使用すれば、反応時間が変更されても常に均一な濃度勾配を有する前駆体を製造することができる。図9A図10A図11Aはそれぞれ、反応時間が22時間、25時間、30時間である共沈工程の材料投入スケジュールを本発明の実施形態によって計算して得られた結果である。図9B図10B図11Bから分かるように、本発明の実施形態による材料投入スケジューリング方法を通じて得られたスケジュールを使用すれば、コア付近でも均一な濃度勾配を有するように前駆体を形成することができる。
【0047】
以上で本発明の好ましい実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B