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特許7062769低圧注入での高流量システムおよびその針セット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】低圧注入での高流量システムおよびその針セット
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20220425BHJP
   A61M 5/158 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
A61M5/168 500
A61M5/158 500Z
【請求項の数】 41
(21)【出願番号】P 2020536640
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 US2018067497
(87)【国際公開番号】W WO2019133603
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-10-22
(31)【優先権主張番号】62/611,642
(32)【優先日】2017-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/229,212
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516059547
【氏名又は名称】レプロ-メッド システムズ、インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】シールフォン、アンドリュー
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-509423(JP,A)
【文献】特表2012-509749(JP,A)
【文献】特開平07-275370(JP,A)
【文献】米国特許第03064648(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0256625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/158
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リザーバから患者に所与の圧力の既知の流量で液体を投与するための高流量低圧注入システムの針セットであって、前記液体は最大投与流量を有し、
第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、前記可撓性チューブ要素は前記液体に関して層流を提供するために前記第1の長さに沿って平均の第1の内径を有し、前記可撓性チューブ要素は前記可撓性チューブ要素を通過する液体の既知の流量を生成するために前記第1の長さに沿った前記平均の第1の内径によって凡そ確立された事前定義された流量を有し、前記既知の流量は前記液体の前記最大投与流量を超えず、前記平均の第1の内径は前記第1の長さにわたって一定である、可撓性チューブ要素と、
第2の長さおよび第2の内径を有する針であって、前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記液体の前記層流を維持するために前記可撓性チューブ要素の第2の端部と直接流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有する針と、を含み、
前記針の第2の端部は外径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項2】
前記可撓性チューブ要素と前記針とを通して前記リザーバから前記患者に流れる層流状態の粘性流体に関して、前記可撓性チューブ要素及び前記針は、約50ml/hrと90ml/hrとの間の急速な流量を許容する、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項3】
前記流量は、少なくとも100ml/hrである、請求項2に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項4】
前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも50%大きい、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項5】
前記可撓性チューブ要素の前記第1の長さは、約609.6mmである、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項6】
前記針は、約24.13mmの最大の第2の長さを有する、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項7】
前記針は、薄い壁の26-ゲージ針である、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項8】
前記針は、約0.24mmの内径を有する、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項9】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部に直接的に結合される、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項10】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部の外径付近まで狭められる、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項11】
狭め要素は、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と前記針の第2の端部との間に配置される、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項12】
前記液体は、流体ポンプによってリザーバから針セットに分配される、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項13】
前記流体ポンプは、定圧力ポンプである、請求項12に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項14】
前記流体ポンプによって提供される圧力は、約96.52kPaを超えない、請求項12に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項15】
前記可撓性チューブ要素の第1の端部は、フレアルアーを含む、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項16】
前記針は、三尖針である、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項17】
前記第1の部分及び前記第2の部分は、概して互いに垂直である、請求項1に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項18】
リザーバから患者に所与の圧力の既知の流量で液体を投与するための高流量低圧注入システムの針セットであって、前記液体は最大投与流量を有し、
約609.6mmの第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、前記可撓性チューブ要素は前記液体に関して層流を提供するために前記第1の長さに沿って少なくとも0.81mmの平均の第1の内径を有し、前記可撓性チューブ要素は前記可撓性チューブ要素を通過する液体の既知の流量を生成するために前記第1の長さに沿った前記平均の第1の内径によって凡そ確立された事前定義された流量を有し、前記既知の流量は前記液体の前記最大投与流量を超えず、前記平均の第1の内径は前記第1の長さにわたって一定である、可撓性チューブ要素と、
約24.13mmの第2の長さおよび約0.24mmの第2の内径を有する針であって、前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記液体の前記層流を維持するために前記可撓性チューブ要素の第2の端部と直接流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有し、前記第1の部分及び前記第2の部分は概して互いに垂直である、針と、を含み、
前記針の第2の端部は外径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項19】
前記可撓性チューブ要素と前記針とを通して前記リザーバから前記患者に流れる層流状態の粘性流体に関して、前記可撓性チューブ要素及び前記針は、約50ml/hrと90ml/hrとの間の急速な流量を許容する、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項20】
前記針は、薄い壁の26-ゲージ針である、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項21】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部に直接的に結合される、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項22】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部の外径付近まで狭められる、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項23】
狭め要素は、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と前記針の第2の端部との間に配置される、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項24】
前記液体は、流体ポンプによってリザーバから針セットに分配される、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項25】
前記流体ポンプは、定圧力ポンプである、請求項24に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項26】
前記流体ポンプによって提供される圧力は、約96.52kPaを超えない、請求項24に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項27】
前記可撓性チューブ要素の第1の端部は、フレアルアーを含む、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項28】
前記針は、三尖針である、請求項18に記載の高流量低圧注入システムの針セット。
【請求項29】
リザーバから患者に所与の圧力の既知の流量で液体を投与するための高流量低圧注入システムであって、前記液体は最大投与流量を有し、
リザーバから液体を投与するための流体ポンプと、
第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、前記可撓性チューブ要素は、前記リザーバから受ける、既知の粘度を有する液体に層流を提供するために前記第1の長さに対して選択された平均の第1の内径を有し、前記可撓性チューブ要素は前記可撓性チューブ要素を通過する液体の既知の流量を生成するために前記第1の長さに沿った前記平均の第1の内径によって凡そ確立された事前定義された流量を有し、前記既知の流量は前記液体の前記最大投与流量を超えず、前記平均の第1の内径は前記第1の長さにわたって一定である、可撓性チューブ要素と、
第2の長さおよび特定の深さで患者の組織への流量を最大化するように選択された第2の内径を有する針であって、前記特定の深さへの前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記液体の前記層流を維持するために前記可撓性チューブ要素の第2の端部と直接流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有し、前記第1の部分及び前記第2の部分は概して互いに垂直である、針と、を含み、
前記針の第2の端部は外径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システム。
【請求項30】
前記可撓性チューブ要素と前記針とを通して前記リザーバから前記患者に流れる層流状態の粘性流体に関して、前記可撓性チューブ要素及び前記針は、約50ml/hrと90ml/hrとの間の急速な流量を許容する、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項31】
前記可撓性チューブ要素の前記第1の長さは、約609.6mmである、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項32】
前記針は、約24.13mmの最大の第2の長さを有する、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項33】
前記針は、薄い壁の26-ゲージ針である、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項34】
前記針は、約0.24mmの内径を有する、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項35】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部に直接的に結合される、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項36】
前記可撓性チューブ要素の第2の端部は、前記針の第2の端部の外径付近まで狭められる、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項37】
狭め要素は、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と前記針の第2の端部との間に配置される、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項38】
前記流体ポンプは、定圧力ポンプである、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項39】
前記可撓性チューブ要素の第1の端部は、フレアルアーを含む、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項40】
前記流体ポンプによって提供される圧力は、約96.52kPaを超えない、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【請求項41】
前記針は、三尖針である、請求項29に記載の高流量低圧注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連アプリケーションの相互参照
この出願は、2017年12月29日に提出された米国特許仮出願第62/611,642号の米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、注入用の液体を患者に投与するのに望ましい場合がある液体流(liquid fluid flow)のためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、低圧で高流量を提供することによって過剰摂取から保護するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
液体医薬品の投与のための注入システムは広く使用され、患者と介護者の両方に信頼される。このような投与は、通常、2つの方法のいずれかで行われる。1つ目は、患者の組織に直接配置されたシリンジ及び針で実行される単純な注射の形での、医療提供者または他のオペレータからの即時の投与である。
【0004】
このタイプの即時投与の場合、医薬品の量は、典型的には、医療提供者または他のオペレータによって測定され、投与速度は、典型的には、それらがプランジャを押し下げる速度に基づく。過剰投薬が発生する可能性があるが、投与速度が即時投与での問題になることはほとんどない。
【0005】
2番目の選択肢は、段階的または長期的な投与用であり、シリンジまたは他のリザーバが長期にわたる投与のために特定の医療用チューブに接続される。このような時間ベースの投与では、医薬品の過剰投薬および/または過剰摂取が非常に現実に起こり得る。シリンジまたは液体バッグなどの他の薬剤リザーバは、多くの異なるタイプの薬剤での使用に容易かつ一般的に適合されるが、製造業者によって決定されるそのような薬剤の適切な投与の流量は、大きく異なる場合がある。より詳細には、ある医薬品を患者に注入するのに安全な流量は、別の異なる医薬品または患者には適切でない場合がある。
【0006】
多くの場合、投与される化合物の性質により、医薬品は粘性液体として提供され得る。純水、注射用滅菌水(SWFI)または通常の生理食塩水(一般にNS注入液と呼ばれるす)と比較すると、一部の医薬品の粘度は、水又はNSと同じ特性で流れないため、問題を引き起こす可能性がある。そのような粘性流体を用いても、患者が適切な治療を受けることを確実にするために、投与速度は重要である。
【0007】
注入システム市場及びコミュニティでは、針自体が患者の組織に送達するための流体の流速はどれくらい速いか又はどれくらい急速であるかを制限する要因であると長い間信じられてきた。
【0008】
しかし、迅速な流体投与速度に重大な懸念のある少なくとも2つの問題がある。針が制限要因であると信じ、伝統的に速い流速のために、24ゲージ針などのより大きな針を使用することが皮下投与の標準的な慣行となっている。針が大きいほど、患者の組織への外傷が大きくなる。そして、速い流速用にはおそらく望ましいが、患者の視点から見れば、24ゲージなどの大きなゲージの針は、26ゲージ針などの小さなゲージ針よりも痛みが多く、あまり望ましくはない。
【0009】
多くの注入システムや治療計画では複数の針を同時に使用する場合があるため、複数の大きなゲージの針を使用すると、患者の不快感がさらに高まる。
【0010】
また、高圧電子ポンプシステムを使用することも一般的である。このようなシステムは効果的ではあるが、多くのユーザにとっては非常に高額なコストになる場合がある。加えて、ほとんどのプログラム可能な電子ポンプは、一定流量の原理に基づく。これらのシステムは圧力に関係なく同じ流量を維持しようとするため、これらのシステムは一般に警告システムを組み込んでおり、ポンプが一定の流量を維持しようとすると、ユーザ及び/又はオペレータに圧力の任意の危険な増加を警告する。
【0011】
投与を見て閉塞がある場合、警報が出ても、患者は、負傷及び/又は医薬品の過剰摂取を受ける可能性がある。実際、特定の流量を維持するための努力において、定流量ポンプは、彼又は彼女の組織が(皮下に関して)既に飽和している場合、血管が(静脈内で)閉塞される場合、またはそうでなければ指定された速度で流体を受け取ることができない場合、患者に液体を送り続けることによって、患者に不注意で害を与え得る。
【0012】
したがって、上記で特定された課題の1つまたは複数を克服することができる方法およびシステムが必要である。
【発明の概要】
【0013】
我々の発明は、新規の高流量低圧注入システムの針セットシステムおよび方法を提供することにより、従来技術の問題を解決する。
【0014】
特に、本発明の一実施形態によれば、一例として、リザーバから患者に液体を投与するための高流量低圧注入システムの針セットであって、第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、第1の内径を有する可撓性チューブ要素と、第2の長さおよび第2の内径を有する針であって、前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有する針と、を含み、前記針の第2の端部は外径を有し、前記可撓性チューブ要素は、前記第1の長さに沿って平均の第1の内径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システムの針セットが提供される。
【0015】
さらに別の実施形態では、リザーバから患者に液体を投与するための高流量低圧注入システムの針セットであって、24”の第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、0.33”の第1の内径を有する可撓性チューブ要素と、0.95”の第2の長さおよび約0.0094”の第2の内径を有する針であって、前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有し、前記第1の部分及び前記第2の部分は概して互いに垂直である、針と、を含み、前記針の第2の端部は外径を有し、前記可撓性チューブ要素は、前記第1の長さに沿って平均の第1の内径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システムの針セットが提供される。
【0016】
さらに別の実施形態の場合、リザーバから患者に液体を投与するための高流量低圧注入システムであって、リザーバから液体を投与するための流体ポンプと、第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、前記リザーバから受ける、既知の粘度を有する液体に層流を提供するために第1の長さに対して選択された第1の内径を有する可撓性チューブ要素と、第2の長さおよび特定の深さで患者の組織への流量を最大化するように選択された第2の内径を有する針であって、前記特定の深さへの前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有し、前記第1の部分及び前記第2の部分は概して互いに垂直である、針と、を含み、前記針の第2の端部は外径を有し、前記可撓性チューブ要素は、前記第1の長さに沿って平均の第1の内径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、高流量低圧注入システムが提供される。
【0017】
さらに別の実施形態では、リザーバから患者に液体を投与するための高流量低圧注入システムの針セットを用いる方法であって、リザーバから液体を駆動するために液体を含む前記リザーバをポンプに結合するステップと、高流量低圧注入システムの針セットを提供するステップであって、前記高流量低圧注入システムの針セットは、第1の長さと前記リザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部とその反対の第2の端部とを有する可撓性チューブ要素であって、第1の内径を有する可撓性チューブ要素と、第2の長さおよび第2の内径を有する針であって、前記患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分と、前記可撓性チューブ要素の第2の端部と流体連通する第2の端部を提供する第2の部分とを有する、針と、を含み、前記針の第2の端部は外径を有し、前記可撓性チューブ要素は、前記第1の長さに沿って平均の第1の内径を有し、前記平均の第1の内径は、前記針の第2の端部の前記外径よりも少なくとも25%大きい、提供するステップと、前記高流量低圧注入システムの針セットを前記リザーバに結合し、前記針を前記患者に配置し、前記ポンプを作動するステップと、を含む、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1A、1Bおよび1Cは、少なくとも1つの実施形態の高流量低圧注入システムにおける一般的な図である。
図2図2は、少なくとも1つの実施形態の高流量低圧注入システムの管および針部分の第2の端部の拡大斜視図である。
図3図3は、本発明の様々な実施形態の針要素の3つのバージョンを示す。
図4図4は、少なくとも1つの実施形態の高流量低圧注入システムの概念的なシステム図である。
図5図5は、少なくとも1つの実施形態の使用中の高流量低圧注入システムの更なる一般的な図である。
図6図6は、概念的な回路図である。
図7図7は、少なくとも1つの実施形態の高流量低圧注入システムの少なくとも1つの実施形態を比較するための性能データの表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な説明に進む前に、本教示は限定ではなく例としてのみであることを理解されたい。本明細書の概念は、高流量低圧システム、針セット、またはそれらに関連する要素を提供するための特定のシステムまたは方法での使用または用途に限定されない。したがって、本明細書に記載される手段は、例示的な実施形態に関して図示および説明される説明の便宜のためであるが、本明細書の原理は、他のタイプの高流量低圧注入システムおよび方法に等しく適用できることを理解および認識されよう。
【0020】
本発明は、図を参照して以下の説明において好ましい実施形態に関して説明されており、図中、同様の番号は同じまたは同様の要素を表す。さらに、同じまたは類似の要素の番号付けに関して、先行する値は、例えば要素100は最初に図1に現れるなど、要素が最初に識別および記述される図を識別することが理解されよう。
【0021】
次に図1を参照すると、本発明の少なくとも1つの実施形態の高流量低圧注入システムの針セット100(以下、HFLPIS100)が示される。
【0022】
このHFLPIS100のシステムおよび方法の説明を容易にするために、図に示されるように、HFLPIS100の向きは、図1に示されるように互いに直交する3つの軸を有する座標系を参照する。軸は、HFLPIS100の中心になるように選択された座標系の原点で相互に交差する。しかし、全ての図に示されている軸は、例示の明確及び簡潔さのためにそれらの実際の場所からオフセットされる。
【0023】
示されるように、HFLPIS100は、主に、可撓性チューブ要素(flexible tubing element)102、針130、および以下に記載される少なくとも1つの実施形態においてより具体的にはフレアルアー112であるルアー112などのコネクタ112から構成される。
【0024】
医学界では、針セットは、医薬品または他の液体のリザーバに取り付けるためのコネクタ112、コネクタ112から実際の針130を液体が患者に流れ込む可撓性チューブ要素102に取り付けるアセンブリまで延びる可撓性チューブ要素102などのいくつかの構成要素を含むデバイスであると理解および認識される。一般に、針130は金属針であると理解および認識されるが、本発明の範囲から逸脱することなく、針130を提供するために他の材料が使用され得る。
【0025】
一般的な日常業務では、「針」及び「針セット」という用語はしばしば同じ意味で使用される。たとえば、当事者はRMS HIgH-FoTM「針セット」を単にRMS HIgH-FoTM針と呼ぶ場合がある。しかし、これは正しくない。針セットアセンブリの先端に取り付けられた鋭い中空の針よりも単に複雑なためである。
【0026】
HFLPIS100の本発明に関して、本明細書に記載される利点は、少なくとも可撓性チューブ要素102および物理的な針130の組み合わせ、ならびに有利に組み合わされたときのそれらの様々な流量特性の結果として達成されることが理解および認識される。
【0027】
ニューヨーク州チェスターのRMSメディカルプロダクツは、針セットの技術と、特別に設計された流れ制御チューブによる流量制御とのパイオニアである。実際、RMSは、参照により本明細書に組み込まれるマルチフローユニバーサルチューブセットと題するUS2015/0374911号として公開された米国特許出願14/768,189号、参照により本明細書に組み込まれる「精密可変流量注入システムおよび方法」と題する米国特許出願公開第02/0256625号として公開された米国特許第15/052,727号に記載されるこれらのシステム及び方法など、流れ制御チューブの異なる流れの組み合わせを操作することで異なる流量が提供され得ることを認識している。
【0028】
医学界の注入領域内の一般的な見方とは大きく異なり、RMSは、HFLPIS100を有利に開発した。可撓性チューブ要素102と針130の両方は、小さな針を用いて低圧で有利な高流量を提供するように共同的に組み合わされる。実際、物理的な針自体を唯一の制限要因と見なすのは誤りである。
【0029】
図1、より具体的には図1A、及びHFLPIS100に関して、可撓性チューブ要素102は、例えば、コネクタ112すなわちフレアルアー112と、針130と接合される第1の端部106の反対側の第2の端部108とを提供するなどによって不図示のリザーバに接続するように構成および配置される、第1の長さ104と、第1の端部または入口106とを有することが理解されよう。
【0030】
可撓性チューブ要素102は、一般的な医療用チューブではないことを理解および認識されたい。チューブであるという性質により、チューブはチューブのサイズと長さに基づいて流量制限の要素を与える可能性があるが、一般的な医療用チューブの内径は非常に大きいため、最大投与流量を有する液体を扱うときの流量の低下による任意の影響は効果的に無視できる。
【0031】
対照的に、可撓性チューブ要素102は、可撓性チューブ要素102の非常に特定の既知の事前定義された流量を達成するように、特定の長さ104および内径110(図1B参照)を有するように特別に製造されている。さらに、少なくとも1つの実施形態では、内径110は、第1の端部106付近から第2の端部108付近まで、可撓性チューブ要素102の長さにわたって実質的に一定である。可撓性チューブ要素102は、可撓性流量チューブ、可撓性流れ制御チューブ、または流量制御チューブと呼ばれることもある。
【0032】
少なくとも1つの実施形態では、可撓性チューブ要素102は、約0.32”(インチ)~0.35”の内径110と、約23.75”~24.24”の長さ104とを有する24ゲージのチューブである。
【0033】
針130は、内径132、外径134および長さ136を有することが理解される。針130は、患者の組織を貫通するための鋭利な先端140を提供する第1の部分138と、可撓性チューブ要素102の第2の端部108と流体連通する第2の端部144を提供する第2の部分142とを有する。
【0034】
針の外径134は、可撓性チューブ要素102の内径110よりも著しく小さいことに留意されたい(図1Bおよび1Cを参照)。これは、針セットの従来の構成とは非常に対照的であり、針の外径は、チューブ要素の内径と実質的に同様であり、したがって、組み立てを容易にすることができる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、針130は、内径132および外径134を画定する材料の厚さがほぼ一定の金属針である。したがって、少なくとも1つの実施形態について、針130の内径132と可撓性チューブ要素102の平均内径110との間、および針130の外径134と可撓性チューブの平均内径110との間に比較関係が理解され得ることが理解および認識されよう。より具体的には、針130の内径132および外径134はそれぞれ、可撓性チューブ要素102の平均内径110より実質的に小さい。
【0036】
さらに、少なくとも1つの実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の内径132よりも少なくとも10%大きい。さらに別の実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の内径132よりも少なくとも25%大きい。さらに別の実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の内径132よりも少なくとも50%大きい。
【0037】
さらに、少なくとも1つの実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の外径134よりも少なくとも10%大きい。さらに別の実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の外径134よりも少なくとも25%大きい。さらに別の実施形態では、可撓性チューブ要素102の長さに沿った平均内径110は、第2の端部108から延びる針130の外径134よりも少なくとも50%大きい。
【0038】
より具体的には、針130の外径134と可撓性チューブ要素102の内径110との間の相対的なサイズの違いは、製造においてより大きな問題を提示し、この「小さな針」と「大きなチューブ要素」との組み合わせは、これまで容易に入手できず、または業界内でさえ検討されていなかった少なくとも部分的な理由である可能性が高い。さらに、針の外径134は、可撓性チューブ要素102の内径110よりも大幅に小さいため、従来の滑り嵌め(slip fit)および接着剤アセンブリは適用できない。
【0039】
針130の第2の端部144を可撓性チューブ要素102の第2の端部108との流体連通を達成するために、少なくとも1つの実施形態では、可撓性チューブ要素の第2の端部108は、可撓性チューブ要素102のより大きな内径を針130の実質的により小さな外径134に適合するように狭められる(necked down)。この狭め(neck down)または狭めるプロセスは、本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの方法で実行され得る。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、狭めは、針をよりよく保持するために、加熱下で可撓性チューブ要素102の第2の端部108をより小さい内径に圧縮することによって達成される。次に、この圧縮された端部は、接着剤で針130に封止/接着され得る。さらに別の実施形態では、少なくとも1つの中間要素146は、針130と、限定されないが、リング、シリンダ、ストリップ、スペーサ、接着剤または他のそのような材料などの可撓性チューブ要素102の内部との間に配置され得る。そして、さらに別の実施形態では、第2の端部108を圧縮することと、少なくとも1つの中間要素146を配置することとの組み合わせが利用され得る。
【0041】
可撓性チューブ要素102と同様に、針130は、既知の長さ136を有し、一貫した内径132は、針130に既知の流量(known flow rate)を提供する長さと組み合わされる。より具体的には、針130を通るチューブまたは穴(bore)の長さは、そのチューブまたはボアの内径と同様に要因(factor)であるため、短い針130は、HFLPIS100にとって非常に重要である。
【0042】
さらに、要約すると、少なくとも1つの実施形態について、第1の長さ104とリザーバに接続するように構造化及び配置された第1の端部106とその反対の第2の端部108とを有する可撓性チューブ要素102であって、第1の内径110を有する可撓性チューブ要素と、第2の長さ136および第2の内径132を有する針130であって、患者の組織の貫通のための鋭利な先端140を提供する第1の部分138と、可撓性チューブ要素102の第2の端部108と流体連通する第2の端部144を提供する第2の部分142とを有する針130と、を含み、針130の第2の端部144は外径134を有し、可撓性チューブ要素は、第1の長さ104に沿って平均の第1の内径110を有し、平均の第1の内径110は、針130の第2の端部の外径134よりも少なくとも25%大きい、HFLPIS100が提供される。
【0043】
少なくとも1つの実施形態では、針130は三尖針(tricuspid needle)130であり、図2でより完全に理解され得る。三尖針は、流れの大きい断面積を提供する。
【0044】
図2の斜視図に明確に示されているように、三尖針はまた、2つの鋭い縁200および202を提供する。2つの鋭い縁200および202は、組織を邪魔しないように押したり伸ばしたりする単一の点を持つ従来の針とは対照的に、縁200および202に沿って組織を切断することにより針130の患者の組織への通過を容易にするための切断縁として機能する。
【0045】
さらに、鋭い先端を有する典型的な針は、刃先が組織に穴を開けず、組織を邪魔にならないようにさせるため、組織の伸張、変形、引き裂きを引き起こすが、鋭い縁200および202を持つ三尖針は、メスと同じように組織を通過するため、組織の伸張、変形、および/または引き裂きを実質的に回避する。
【0046】
図2はさらに、一緒に及び流体連通において針130および可撓性チューブ要素102を取り付けるように、中間要素146が針130の外径134と可撓性チューブ要素102の第2の端部108の内径110との間に配置される実施形態を例示する。
【0047】
注入の目的で、針130が特定の深さまで貫通するように選択されることが一般的に重要である。これを容易にするために、針130はしばしば患者の皮膚と直接接触することを目的とする基部を有する-この接触により、選択された針130の深さが正しいことが保証される。さらに、針130は、基部から離れて延びる真っ直ぐな針であり得る。
【0048】
多くの場合、針130自体がこの基部の一部として組み込まれている。より具体的には、図3に示すように、少なくとも1つの実施形態では、針130は、可撓性チューブ要素102に結合するための第1の部分300と患者に配置される第2の部分302とを提供するために、約90度の角度に曲げられる。
【0049】
言い換えると、少なくとも1つの実施形態では、針130は、患者の組織の貫通のための鋭利な先端を提供する第1の部分300と、可撓性チューブ要素102と流体連通する第2の端を提供する第2の部分302とを有する。第1の部分300及び第2の部分302は、一般に互いに垂直である。
【0050】
内径に対する針130の長さ136は、上述のように流量を決定する際の要因であるため、限定されないが4mm、6mm、9mm、12mm、14mmおよび16mmなどの異なる有効な貫通長さの針130を提供するために、針130全体の長さは一定であり得ることが理解されよう。むしろ、第1の部分300と第2の部分302との間の屈曲が配置される場所であり、これは、第2の部分302の長さおよびそれに関連する貫通長さを決定するのに役立つ。
【0051】
図3に関して、針130、130Aおよび130Bが示されている-実質的に同じ長さ136を有し、針130Aおよび130Bは約90度の角度に曲げられており、針130Aの第1の部分300は針130Bの第1の部分300よりも短い。したがって、針130Aおよび130Bは、異なる貫通長さに対応すると理解される。
【0052】
さらに、「短い針」としての識別は、針要素が一般に2”以上である一般的なインスリン針投与セットよりもこの針130が実際に短いことを注入分野の人々に明確にするのを助けることを意図している。
【0053】
少なくとも1つの実施形態では、針130は、約0.0094”~0.0102”の内径132および約0.938”~0.962”の長さ136を有する26ゲージの針である。
【0054】
上記のように、少なくとも1つの実施形態では、可撓性チューブ要素102の注入口106は、ルアー112などのコネクタ112を提供し、少なくとも1つの実施形態では、フレアルアー112を提供する。ルアー112またはフレアルアー112は、HFLPIS100を通過して患者に入る医薬品を提供しているシリンジなどのリザーバに注入口を取り外し可能に結合することを可能にする。
【0055】
いくつかの実施形態では、リザーバと患者との間の距離をより大きくすることができるように、追加のチューブ要素がHFLPIS100とリザーバとの間に配置され得る。他の実施形態では、追加のチューブ要素は使用されなくてもよい。注入口106は、限定されないがFreedom60(登録商標)シリンジ注入ポンプなどの特定のポンプシステムによって受けられる。そのような実施形態では、注入口106のルアー112は、シリンジの先端を受けるように構成および配置され、シリンジは液体を提供するリザーバであることがさらに理解および認識される。
【0056】
フレアルアー112の使用は、有利には、HFLPIS100が、フレアルアー112を受けるように対応する基部を有するポンプまたは他のデバイスと共にのみ使用されることを確実にする。フレアルアー112としての注入口106は、米国特許出願62/274,487およびそれらに対する優先権を主張する通常の米国特許出願15/291,895に記載されたシステムおよび方法に従って達成され、それぞれ「医療用チューブ用のフレアルアーコネクタのためのシステムおよび方法」と題され、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
既知の特定の長さ104および既知の実質的に一貫した内径110を有する可撓性チューブ要素102の特定の有利な性質、ならびに既知の特定の長さ136および実質的に一貫した内径132を有する針に関して、針130および可撓性チューブ要素102は、全体として既知の流量を提供するために集合的に相互作用することが理解されよう。
【0058】
チューブを通る流量は、一般に、式#1によって予測される。
【0059】
【数1】
【0060】
ここで、Qは流量である。
【0061】
ΔPは圧力(チューブの長さ全体の差)である。
【0062】
Rは流れる流体が直面する抵抗である。
【0063】
可撓性チューブ要素102は、流線流としても知られる層流を提供するように特別に開発されている。層流は、流体が平行な層を流れるときに発生し、層の間で乱れない。低速では、流体は横方向に混ざらずに流れる傾向がある。これは、隣接する層が互いに滑り合うことを意味する。この層間の混合の欠如は、流体の横流、渦、または渦が存在しないことを意味する-流体の粒子の動きはごく普通であり、全ての粒子は可撓性流量チューブの側壁に対して直線的に移動する。
【0064】
流体力学に関して、レイノルズ数は、完全に発達した流れ条件が層流または乱流につながるかどうかを表す式の重要なパラメータである。レイノルズ数は、流体システムのスケールに関係なく、流体の剪断力に対する内力の比率、換言すると、流体システムのスケールにかかわらず、流体の粘度に比べて流体がどれだけ速く移動しているかである。層流は一般に、流体の動きが遅い場合や、流体の粘度が非常に高い場合に発生する。
【0065】
レイノルズ数と層流が発生する値との具体的な計算は、流体システムの配置(geometry)と流体パターンに依存する。この場合、主にパイプを通る流れの一般的な例に対応する可撓性チューブであり、レイノルズ数が式#2のように定義される。
【0066】
【数2】
【0067】
ここで:DHはパイプ(可撓性チューブ要素102)の水力直径であり、その特徴的な移動長さL(m)である。
【0068】
Qは体積流量(m/s)です。
【0069】
Aは、パイプ(可撓性チューブ要素102)のパイプ断面積(m)です。
【0070】
Vは、流体の平均速度である(SI単位:m/s)。
【0071】
μは流体の動的粘度である(Pa・s=N・s/m=kg/(m・s))。
【0072】
Vは流体の動粘性率である(V=μ/ρ)(m・s)。
【0073】
ρは流体の密度(kg/m)です。
【0074】
さらに、可撓性チューブ要素102は、HFLPIS100での使用のための意図された流体の層流を促す環境を提供するように、上記のレイノルズ方??程式に照らして特定の特性で設計される。言い換えると、当業者は、層流を促す環境を達成するために、可撓性チューブ要素102が特定の長さおよび一貫した内径で形成されることを理解するであろう。
【0075】
一般的なチューブは流量制御の重要な要素を与えないため、低流量は一般的な医療用チューブを介して方向付けられるが、低流量は一般的なチューブ以外の手段によって達成される。一般的な医療用チューブを通じて流量が増加すると、多くの場合、流量は一時的にならず、流量が一時的になり、不安定になる、または乱流になることもある。どちらの場合でも、流量は一定ではなく、問題がある可能性がある。
【0076】
層流を提供するように構成および配置されることによるHFLPIS100に関して、可撓性チューブ要素102は、以下でさらに説明されるように、HFLPIS100に非常に有利である、一貫した所定の流量を付与および維持することができる。HFLPIS100、より具体的には可撓性チューブ要素102に関して、層流は、2300未満のレイノルズ数の流体の流れとして定義される。もちろん、遷移流および乱流は、状況によっては2300未満で観測される場合があることが理解および認識される。
【0077】
層流を有利に提供する可撓性チューブ要素102の性質は、患者に注入される液体がニュートン流体である状況でさらに強化される。ニュートン流体は、その流れから発生する粘性応力が、時間の経過に伴う変形の変化率である局所ひずみ率に線形に比例する流体である。水、有機溶剤、蜂蜜は、一定の温度で加えられる剪断の量に関係なく、粘度が一定に保たれるニュートン流体のいくつかの例である。注入治療は一般的に患者に特定の薬剤または組成物を提供することを目的としているため、HFLPIS100での使用が望まれる液体の多くはニュートン流体である。そのため、細かい粒子の流れの制御を提供するHFLPIS100の能力はさらに向上する。
【0078】
上記の層流の原理を紹介したので、HFLPIS100によって提供される針セットシステム全体について、予測される流量は、針だけでなく、針セットシステム全体に基づくべきであることがさらに理解される。
【0079】
さらに、予測される流量は、式#3のように、Hagen Poiseuilleの式によって決定される。
【0080】
【数3】
【0081】
ここで、Qは流量である。
【0082】
rはチューブの半径である。
【0083】
ΔPは圧力(チューブの長さ全体の差)である。
【0084】
μは粘度である。
【0085】
Lは長さである。
【0086】
この式は、予測される流体の流量が、注入口から出口までの圧力の差と直径の4乗に直接的に比例し、可撓性チューブ要素102の粘度と長さに反比例することを示す。
【0087】
【数4】
【0088】
ここで、Vはシリンダを流れる流体の平均速度である。
【0089】
ρは、流体の密度である。
【0090】
IDは、シリンダの内径である。
【0091】
μは、流体の粘度である。
【0092】
【数5】
【0093】
【数6】
【0094】
【数7】
【0095】
したがって、レイノルズ数は内径の3乗に比例する。したがって、本発明は、上述のように層流を確実にするために、可撓性チューブ要素102の内径110を一般的な医療用チューブよりも十分に小さくするように特に縮小した。
【0096】
チューブ(パイプ)を通る流体の流れを決定するためのこの式の使用は、ニュートンの仮定を満たす流体に依存する。具体的には、流体は層流(レイノルズ数<2300)のままであり、長さは直径よりはるかに長くなる。これらの仮定が全て満たされている場合、異なる要素の流量が電気回路と同じ線に沿って計算されることができる。
【0097】
電気回路は、要素またはグループとして計算されることができる。針セットは、より小さなチューブ(針130)と、ルアーコネクタに接続されたより長いより大きなチューブ(可撓性チューブ要素102)とからなる要素のそのようなサブセットの1つである。
【0098】
これは、HFLPIS100を使用する注入システムの概念化されたモデルを示す図4に関連して以下の例を検討することにより、より完全に理解され得る。図4に示されるように、注入システムは、システムを介して薬剤を駆動するための圧力を提供することになるポンプ400によって開始される。上記のように、様々な実施形態において、HFLPIS100は、医薬品に大きな流量を課さない従来のチューブ要素402に接続され得る。この従来のチューブ要素の目的は、第1の場所でのポンプの便利な配置及び第二の場所での受け入れ患者の快適な配置及び位置付けを可能にすることである。
【0099】
従来のチューブ要素402は、HFLPIS100に結合される。この例示的な実施形態は、可撓性チューブ要素102としての24ゲージのチューブ要素と、26ゲージの針130とを組み込む。ひとたび、流量Qが各構成要素について計算されると、総流量Qtotalが式#4によって示されるように計算される。
【0100】
【数8】
【0101】
以下の例示的な計算では、以下が想定される。
【0102】
●ポンプ300の最小、通常、および最大背圧は、それぞれ、13.3PSI、13.5PSI、及び13.7PSIである。
【0103】
●水の粘度は1mPa sです。
【0104】
●26ゲージの針の内径は0.0094”~0.0102”である。
【0105】
●26ゲージの針の長さは0.938”~0.962”である。
【0106】
●24ゲージのチューブの内径は0.032”~0.035”である。
【0107】
●24ゲージのチューブの長さは23.75”~24.24”である。
【0108】
この例では、圧力は以下のようになる。
【0109】
は13.5PSIであり、Pは0(ATM)であり、ΔPは13.5PSIである。
【0110】
構成要素-従来のチューブ要素302、可撓性チューブ要素102及び針130の抵抗と、流量Qとは、以下のように決定される。
【0111】
【数9】
【0112】
【数10】
【0113】
【数11】
【0114】
total=R+R+R
【0115】
【数12】
【0116】
【数13】
【0117】
【数14】
【0118】
比較のために、最小および最大流量値の両方が、上述のように、可撓性チューブ要素102および針130の最小および最大寸法に基づいて示される。最初に、最小合計流量。
【0119】
【数15】
【0120】
【数16】
【0121】
【数17】
【0122】
【数18】
【0123】
N26min=~1078ml/hr
【0124】
【数19】
【0125】
【数20】
【0126】
T24min=5741ml/hr
【0127】
【数21】
【0128】
ここで、最大総流量。
【0129】
【数22】
【0130】
【数23】
【0131】
【数24】
【0132】
【数25】
【0133】
N26max=~1600ml/hr
【0134】
【数26】
【0135】
【数27】
【0136】
T24max=~8850ml/hr
【0137】
【数28】
【0138】
さらに、この構成によって許容される流量の明らかな範囲は、~907ml/hrから~1360ml/hrである。
【0139】
HFLPIS100の有利な性質をさらに比較および理解するために、26ゲージのチューブを備えた26ゲージの針を含むRMS HigHFlo 26針セットに関して同じ計算が実行される。
【0140】
【数29】
【0141】
【数30】
【0142】
【数31】
【0143】
【数32】
【0144】
さらに、上記の計算に関して、RMS Super 26ニードルセットなどのHFLPIS100の少なくとも1つの実施形態では、理想的な条件下では、流量は通常のHIgHFlo 26G針セットより2.8倍速いことが理解される。
【0145】
もちろん、これらの流量は、実行される注入のタイプについて、製造業者または医師によって意図される規定の流量に戻されてもよいことが理解及び認識される。実際に、様々な実施形態では、従来のチューブ要素402は、上記の出願14/768,189によって提示されるような流れ制御チューブシステムに結合または置換されてもよく、これは次にHFLPIS100に結合される。
【0146】
この結果は非常に有利であり、HFLPIS100の実施形態が実際に低圧で高流量を提供できることを確認する。より具体的には、上記の材料が示すように、チューブの端部にある針が流量の最後の構成要素であるという誤解に基づく想定基準とは対照的に、流体の流れが層流状態のままである場合、式を組み合わせることは、流量を予測するために安全に使用され得る。
【0147】
流体の流れが層流から分岐し始める場合、圧力の増加に伴って流量が増加するが、その関係は線形から非常に高い圧力まで分岐することになる。圧力の増加に伴う流量の増加はほとんどないが、これは通常、RMS Freedomシステムなどの意図された注入システムでHFLPISが使用される場合、注入に使用されるレベルをはるかに超える圧力で発生する。
【0148】
少なくとも1つの実施形態では、図5に示されるように、HFLPIS100は、患者502への医薬品の投与のための注入システム500の一部として組み込まれる。さらに、少なくとも1つの実施形態では、HFLPIS100は、ニューヨーク州チェスターのRMS Medical Productsによって提供されるFreedom60(登録商標)シリンジ注入ポンプなどの定圧ポンプ504での使用を意図している。Freedom60(登録商標)などの定圧システムは、HFLPIS100と組み合わせると、患者への液体の意図しない投与率や安全でない投与率を防ぐのに非常に有利である。
【0149】
図5に示される概念的な注入療法セッションの場合、リザーバ506はポンプ504内に配置され、リザーバは医薬品などの液体508を提供する。リザーバ506の出口は、上記のように米国特許第2016/0256625号に一致する流れ制御チューブ要素として示されている第1のチューブ510に結合されているが、通常の非流れ調節チューブも使用され得る。このチューブは、使用される場合、その後、HFLPIS100に結合され、その針130は患者502内に配置される。もちろん、様々な実施形態では、第1のチューブ510は完全に省略されてもよく、HFLPIS100は、リザーバ506の出口に直接接続されてもよい。
【0150】
一定流量システムでは、圧力が流れの制限に応じて増加するが、そのような制限が患者の組織内の圧力の増加であるか、投与システムの要素であるかは関係ない。これは、危険な圧力で液体を投与することをもたらし得る。そのため、静脈内投与の場合、患者は、これらに限定されないが、浸潤、血管外漏出、静脈虚脱、アナフィラキシー、過剰摂取、ヒスタミン反応、罹患率、および死亡率を含む、広範な症状に苦しむ可能性がある。HFLPIS100が意図されている皮下投与の場合、安全でない圧力の影響により、痛み、腫れ、発赤、かゆみ、漏れ、および一般的な不快感などの部位反応が生じる。
【0151】
対照的に、Freedom60(登録商標)などの定圧システムでは、チューブにつまみ、注入システムの閉塞、または患者の身体の閉塞(SQの組織の飽和またはIVの静脈の崩壊など)がある場合、このようなイベントは結果として流れに対する抵抗をもたらし、圧力ではなく流量に影響する。つまり、圧力が増加すると流量が減少する。定圧システムは、図6に示す電気システムの理論モデルと比較され得る。
【0152】
例示的な電気システム600の場合、抵抗が602に増加すると、電流は即座に比例して減少することになる。定圧注入システムはこれと同じ結果を生み出す。流れに対する抵抗が増加した場合、システムは流量を下げることですぐに調整することになる。これは、設計上、患者が非常に高い圧力の液体に曝されなくすることを保証する。
【0153】
さらに、HFLPIS100は、所定の流量以下のリザーバからの液体の流量の上限を確立するため、HFLPIS100の実施形態は、定圧システムでの注入治療に適している。HFLPIS100の実施形態がFreedom60(登録商標)などの定圧ポンプと組み合わされると、追加の利点が提供され得る。
【0154】
定速または定流量の電動ポンプでの使用に関して、HFLPIS100はまた既存のオプションよりも有利である。より具体的には、HFLPIS100の低い抵抗は圧力を低く保つことになり、流量を維持するための過度の高圧からの一部のポンプへの損傷を抑制し、投与を停止しシステムのリセットを要求することによって患者や介護者に不便をかける可能性のある潜在的に不要な警報からの一部のポンプへの損傷を抑制し、および/または注入時に必要な薬を遅らせる。さらに、HFLPIS100は、定速または定流量の電気ポンプによって提示される潜在的な危険の解決策として認識されるべきではない。ただし、そのようなリスクの可能性や頻度を減らすのに役立ち得る。
【0155】
HFLPIS100の実施形態を説明してきたが、HFLPIS100を使用する少なくとも1つの方法に関連する他の実施形態がここで議論される。説明される方法は、本明細書で説明される順序で実行される必要はないが、これは、HFLPIS100を使用する1つの方法の単なる例示であることが理解されよう。一般に、少なくとも1つの実施形態では、方法は、液体を収容するリザーバを、リザーバから液体を駆動するためのポンプに結合することから始まる。次に、上述のHFLPIS100の実施形態も提供される。HFLPIS100はリザーバに結合され、針は患者の中に配置される。ポンプの作動により、HFLPIS100は付随的に注入を低圧高流量で行うことを許容し、より小さな針130を使用すると、これがそうでなければ従来の注入針セットで許容される。
【0156】
HFLPIS100に関する本発明の実施形態の試験は、HFLPIS100の利点を実証した。この試験データの選択は、図7に表700として示されている。表700に示されているデータは、以下のテスト手順を通じて取得された。
【0157】
8ユニットのRMS 24ゲージ針サブアセンブリ、RMS 26ゲージ針サブアセンブリ、およびRMS Super26針サブアセンブリ(HFLPIS100の実施形態)は、それぞれ8ユニットのRMS F120、F900、F1200、およびF2400チューブに接続された。各タイプのユニットは、それぞれ3つの異なるロットから供給された。針とチューブの組み合わせを、水で満たされた60mlのシリンジに合わせて設定し、13.5PSIに加圧して、Freedom60(登録商標)ポンプ、チューブ、および針のセットアップをシミュレートした。
【0158】
流れは、測定の開始時と測定の終了時に重量を記録した天秤に設置されたビーカーに収集された。この質量流量は、テストの開始時に測定されたテスト流体の温度での水の密度で割ることにより、体積流量に変換された。24ゲージの針、26ゲージの針、およびSuper26の個々の流量が計算された。これらの計算値は、表700に表示される。Super26と26ゲージの間の流量の増加率は、最後から2番目の行にリストされる。Super26と24ゲージの針の間の流量の減少率が最後の列に表示される。平均流量と平均が最後の行に表示される。Super26は、初期テストで設定された26ゲージの針セットと比較して、流量がほぼ90%増加していることは注目に値する。これは、例えばHFLPIS100の実施形態など、Super26針サブアセンブリの26ゲージ針につながるチューブの内径を大幅に拡大するという新しいステップの大きな利点を示す。
【0159】
本明細書の範囲から逸脱することなく、上記の方法、システム、および構造に変更を加えることができる。したがって、上記の説明に含まれる、および/または添付の図面に示される事項は、限定的な意味ではなく、例示的なものとして解釈されるべきであることに留意されたい。実際、当業者には明らかなように、他の多くの実施形態が実現可能であり、可能である。以下の請求項は、本明細書で論じられる実施形態によってまたはそれに限定されないが、それらの用語および均等論によってのみ制限される。
図1A-1C】
図2
図3
図4
図5
図6
図7