(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】寝具や衣類の乾燥消毒装置
(51)【国際特許分類】
D06F 58/00 20200101AFI20220425BHJP
【FI】
D06F58/00 B
D06F58/00 C
(21)【出願番号】P 2021148580
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2021-09-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520116481
【氏名又は名称】大石 誠
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】特許業務法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】大石 誠
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-127992(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 58/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して
屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給
し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ高温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項2】
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して
屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給
し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ常温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項3】
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して
屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給
し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態よりも真空度の低い準真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ高温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項4】
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して
屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給
し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
使用者の指示に基づいて前記本体に前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
使用者の指示に基づいて前記本体に前記袋体内へ高温空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記対象物が濡れている場合、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が前記真空状態よりも真空度の低い準真空状態になるまで前記ファンを回転させることを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項6】
前記本体の前記流路には、前記制御部によって制御され、前記流路を開放から閉塞まで段階的に開閉可能な弁が備えられていることを特徴とする請求項
1から請求項5のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項7】
前記ファンは、リバーシブルフローファンであり、
前記リバーシブルフローファンの正転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して
屋外へ排出し、前記リバーシブルフローファンの逆転により前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給することを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の乾燥消毒装置。
【請求項8】
前記接続管は、前記袋体に設けられた第1接続管と、前記第1接続管に着脱自在に前記本体に設けられた第2接続管とからなり、
前記第1接続管には、前記袋体を密閉するための密閉栓が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項9】
前記接続管内に、前記接続管を横切るように格子部材が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項
8のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項10】
寸法又は形状の異なる複数の前記袋体を有し、
前記対象物の寸法又は形状に合わせて複数の前記袋体を交換可能であることを特徴とする請求項1から請求項
9のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項11】
複数の前記袋体の下に敷くための寸法又は形状の異なる複数の下敷板を有し、
前記袋体の寸法又は形状に合わせて複数の前記下敷板を交換可能であることを特徴とする請求項
10に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項12】
前記袋体には、前記対象物を出し入れするための開放部と、前記開放部を開閉自在に密封するためのファスナーと、前記ファスナーを外側から挟んで閉じるためのスライダーが備えられていることを特徴とする請求項1から請求項
11のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項13】
前記本体の前記流路には、前記本体外の空気を前記流路に取り込むための吸気口として前記流路に連通して設けられた分岐路と、前記流路と前記ダクトとの連通を遮断可能な第1弁と、前記流路と前記分岐路との連通を遮断可能な第2弁とを有し、
前記袋体の空気の吸引時は前記第1弁を開けて前記第2弁を閉じ、前記袋体への空気の供給時は前記第1弁を閉じて前記第2弁を開けることを特徴とする請求項1から請求項
12のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項14】
前記本体の前記流路には、前記袋体への空気の供給時に空気にマイナスイオンを付与するためのマイナスイオン発生器が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項
13のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【請求項15】
前記本体は、
外部のコンセントから得た電力を前記本体の各部に供給する電源部と、
使用者が前記本体を操作するための操作部と、
使用者によって入力された情報を記憶する記憶部と、
前記本体の情報を表示するための表示部と、
前記流路内の空気の圧力を検出するための圧力センサと、
前記流路内の空気の温度を検出するための第1温度センサと、
前記流路内の空気の湿度を検出するための湿度センサと、
前記本体外から前記流路内へ取り込んだ空気の温度を検出するための第2温度センサと、を有することを特徴とする請求項1から請求項
14のいずれか一項に記載の寝具や衣類の乾燥消毒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寝具や衣類の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行う乾燥消毒装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、布団や衣類がかさばらないように圧縮保存するための圧縮袋として防虫効果を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、布団や衣類の湿気を取るための布団乾燥機として殺虫機能を備えたものが提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-166596号公報
【文献】特開平5-068790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上述のような従来の圧縮袋は、厚みのある布団や衣類の内部に入り込んだダニ等の害虫の殺傷、害虫の死骸や糞の除去、雑菌やウイルスの除去や不活化ができないという問題がある。
また、上述のような従来の布団乾燥機は、殺虫のために布団に温風を吹き付ける時間が長く、50℃程度の温風で数時間かかってしまう。このため、布団に温風を吹き付けている間に害虫が布団の端や裏側、或いは人間の着衣や部屋へ逃げてしまう。さらに、布団から出た雑菌やウイルスが部屋の中を漂い部屋の空気を汚染してしまう。また、布団に吹き付けられた温風により部屋の温度、湿度が上昇してしまう。そして、温風の吹き付けが終わり布団の温度が低下すると害虫が再び布団へ戻ってきてしまうため、殺虫効果を十分に得られないという問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、室内の温度、湿度の上昇と空気汚染を防止しながら寝具や衣類をそれらの内部まで短時間で効果的に害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥することが可能な乾燥消毒装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ高温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置を提供する。
また、本発明は、
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ常温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置を提供する。
また、本発明は、
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
前記本体に、前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態よりも真空度の低い準真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
前記本体に、前記袋体内へ高温の空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置を提供する。
また、本発明は、
対象物を収納するための袋体と、前記袋体内の空気の吸引及び前記袋体内への空気の供給を行うための本体と、前記袋体と前記本体とを接続する接続管と、を有し、
前記本体は、前記接続管に連通する空気の流路と、前記流路内の空気を送り出すためのファンと、前記流路内の空気を加熱するためのヒータと、前記流路に連通しており前記袋体から吸引した空気を排出するためのダクトと、を備え、
前記ファンの回転により前記袋体内の空気を吸引して前記流路及び前記ダクトを介して屋外へ排出し、前記本体外の空気を前記流路に取り込み前記ヒータで加熱して前記袋体内へ供給し、
前記本体は、前記ファン及び前記ヒータの動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記袋体の空気の吸引時、前記袋体内が真空状態になるまで前記ファンを回転させ、
前記制御部は、
使用者の指示に基づいて前記本体に前記袋体内の空気を前記袋体が前記真空状態になるまで吸引して前記ダクトから排出させるステップと、
使用者の指示に基づいて前記本体に前記袋体内へ高温空気を注入させるステップと、を順に実行することを特徴とする寝具や衣類の乾燥消毒装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、室内の温度、湿度の上昇と空気汚染を防止しながら寝具や衣類をそれらの内部まで短時間で効果的に害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥することが可能な乾燥消毒装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の実施形態に係る乾燥消毒装置の構成を示す側面図である。
【
図2】
図2は本発明の実施形態に係る乾燥消毒装置の構成を示す上面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施形態に係る乾燥消毒装置における本体の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る乾燥消毒装置を添付図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示す本実施形態に係る乾燥消毒装置1は、布団やマットレス等の寝具、衣類等を対象物2としてダニ等の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行うものである。乾燥消毒装置1は、対象物2を収納するための袋体3と、袋体3の下に敷くための下敷板4と、袋体3内の空気の吸引と袋体3への高温空気の注入を行うための本体5、袋体3と本体5とを接続する接続管3a、5aとからなる。
【0010】
袋体3は、四角形状の圧縮袋であって、袋体3内への110℃の高温空気の注入と袋体3内の空気の真空状態までの吸引とを300回程度繰り返し実施することに耐え得る耐熱性と柔軟性を有し、熱伝導性が低く通気性を有しない透明な素材(例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)からなる。なお、袋体3の耐熱性を150℃までにすることで素材の選択肢が多くなり低コスト化できる。袋体3の真空状態については後に詳述する。
袋体3の一辺には接続管3aが一体的に備えられており、これと反対側の一辺は袋体3内へ寝具や衣類を出し入れするために開放されている。
【0011】
袋体3の接続管3aは、本体5の接続管5aを着脱自在に接続するための円筒状部材であり、耐熱性を有し熱伝導性の低い素材(例えば、耐熱ゴム、塩化ビニル、シリコン等)からなる。接続管3aには公知の密閉栓6が設けられており、使用者が手動で密閉栓6を開閉することで接続管3aを開放、閉塞することができる。なお、密閉栓6は高温に耐え得る素材(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル等)で構成することが好ましい。
接続管3a内の袋体3側端部には、接続管3aを横切るように格子部材32が備えられている。格子部材32は接続管3a中の空気の進行を妨げることがないように網目が大きく設計されており、耐熱性と柔軟性を有する素材(例えば、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)からなる。斯かる格子部材32を接続管3aに備えたことにより、本体5により袋体3内の空気が吸引された際に、当該空気とともに袋体3内の対象物2(特に、靴下やハンカチ等の衣類小物)が接続管3aを進行し、ひいては本体5の流路19へ入り込んで本体5の故障を招いてしまうことを効果的に防止できる。
【0012】
袋体3の開放された一辺の端部には2本の公知のファスナー(エアシール)7、7が設けられており、上述の密閉栓6を閉めてファスナー7、7を閉めることで袋体3を密閉することができる。詳しくは、ファスナー7は袋体3の対向する内側面にそれぞれ一体的に設けられた、開放された一辺に沿って延びる細長い不図示の凹部とこれに嵌合可能な細長い不図示の凸部との組み合わせからなる。袋体3の開放された一辺の端部には、袋体3の端部を外側から挟み込んで凹部と凸部とを嵌合させてファスナー7、7を容易に閉めるためのコ字形状の公知のスライダー8も備えられている。
【0013】
袋体3は、形状や寸法の異なるものが複数種類(例えば、本実施形態では同形で寸法の異なるものが5種類)用意されており、使用者は対象物2の大きさに適した寸法の袋体3を適宜選択することができる。より具体的には、1)敷布団、折り畳み可能なマットレス、毛布、掛布団、枕用、2)折り畳み式でないシングルサイズのマットレス用、3)折り畳み式でないセミダブルサイズのマットレス用、4)折り畳み式でないダブルサイズのマットレス用、5)衣類用として計5種類の袋体3が用意されていることが好ましい。なお、袋体3の形状は四角形状に限られるものでなく、例えば円形状や立方体形状等であってもよい。
【0014】
下敷板4は、耐熱性を有する素材からなる四角形状の板状部材である。下敷板4の素材には熱伝導率が低く軽量で安価なもの、例えばシリコンゴムや硬質塩化ビニル樹脂等が好ましい。下敷板4は、複数種類の袋体3に合わせて寸法の異なるものが複数種類(例えば、本実施形態では5種類)用意されており、袋体3の大きさに適した寸法の下敷板4を適宜選択することができる。下敷板4を袋体3の下に敷くことにより、高温の空気が注入されて袋体3が高温化した際に、床へのダメージや火災を効果的に防ぐことができる。なお、下敷板4の形状は四角形状に限られるものでなく、袋体3の形状に合わせて例えば円形状等であってもよい。
【0015】
本体5は、対象物2を収納した袋体3内の空気を真空状態まで吸引して屋外へ排出するためのものであると同時に、袋体3内へ高温空気を注入するためのものである。
図3に示すように本体5は、制御部11、記憶部12、電源部13、操作部14、表示部15、送風部16、ヒータ部17、電動弁18、流路19、接続管5a、ダクト(風導管)21を筐体22に備えてなる。
【0016】
筐体22は、耐熱性プラスチック等の熱伝導性の低い素材からなる略立方体形状をしており、空気の通り道となる円筒形状の流路19が筐体22を貫通するように設けられている。筐体22の一方の側面31aには、流路19に連通する接続管5aが備えられている。筐体22の接続管5aが備えられた側面31aと反対側の側面31bには、流路19に連通するダクト21が備えられており、筐体22上部及び側面の袋体3側には熱放出グリル計4ヶ所(いずれも不図示)がある。
流路19には、
図3に示すように筐体22の側面31b付近にL字状の分岐路19aが設けられている。分岐路19aは筐体22の側面31bまで達して空気の吸気口20を構成している。流路19における筐体22の側面31b近傍位置には、流路19を開放、閉塞するための電磁弁29aが備えられている。分岐路19aにおける流路19近傍位置には、分岐路19aを開放、閉塞するための電磁弁29bが備えられている。電磁弁29a、29bは制御部11によって制御されるものであり、本体5が袋体3内の空気を吸引する際には、制御部11は電磁弁29bを閉じて分岐路19aを閉塞し、電磁弁29aを開いて流路19とダクト21とを連通させる。また、本体5が袋体3内へ空気を注入する際には、制御部11は電磁弁29bを開いて分岐路19aを開放し、電磁弁29aを閉じて流路19とダクト21との連通を遮断する。
なお、流路19内には、後述する電動弁18よりも接続管5a側の位置に圧力センサ23、温度センサ24及び不図示の湿度センサが備えられている。筐体22の下部には、耐熱ゴムからなる脚部25が四隅に各1つずつの計4つ(
図1参照、但し4つのうち2つは図示していない)が備えられており、熱による火傷、床へのダメージや火災、振動を効果的に防ぐことができる。筐体22の上部には、使用者が本体5を簡単に持ち運びできるように持ち手22aが設けられている。分岐路19aには吸気口20から取り込んだ空気の温度を検出するための温度センサ33が備えられている。
【0017】
本体5の接続管5aは、本体5から袋体3内へ空気の注入、袋体3内の空気の吸引を行うために袋体3の接続管3aに接続される円筒状部材である。接続管5aは、150℃の耐熱性を有し熱伝導性の低い素材(例えば、耐熱ゴム、塩化ビニル、シリコン等)からなる。
【0018】
ダクト21は、本体5が袋体3から吸引した空気の外部への排出を行うための筒状部材である。ダクト21は、200℃の耐熱性を有し、熱伝導率が低く耐久性にも優れ、軽量で低コストの素材(例えば、シリコン等)を用いることが好ましい。これにより、熱による火傷、床や壁へのダメージや火災を効果的に防ぐことができる。なお、ダクト21の長さは、使用者が乾燥消毒装置1の購入に際して使用環境に合わせて自由に選択できることが好ましい。
【0019】
特にダクト21は、柔軟性及び伸縮性のある素材で構成したり蛇腹形状にすることが好ましい。これにより、ダクトの先端を所望の位置(例えば、窓の外や換気扇の近傍等)に使用の度に配置することができる。また、ダクト21の先端部分には例えばS字フック等の固定部材21aを備えることが好ましい。これにより、ダクト21の先端を所望の位置に容易に固定することができる。
【0020】
制御部11は、本体5の各部、即ち送風部16、ヒータ部17、電動弁18、表示部15、電磁弁29a、29b等の制御を行うCPU(Central Processing Unit)からなる。
記憶部12は、使用者によって入力された各種情報(例えば袋体3内へ注入する高温空気の設定温度等)を記憶するためのメモリである。記憶部12には、乾燥消毒装置1で後述する各モードを実行するためのプログラムも記憶されている。
電源部13は、ケーブル13aを介して不図示の外部コンセント(家庭用コンセント)から得た電力を本体5の各部に供給するものである。
なお、制御部11、記憶部12、電源部13、後述する操作部14及び表示部15は、高温環境下でも正しく動作するものが採用されている。
【0021】
送風部16は、流路19内に配置されたリバーシブルフローファン(以下、単に「ファン」という)16a、ファン16aを駆動するためのモータ16bとからなる。ファン16aを正転させることにより、接続管5aを介して袋体3内の空気を真空状態まで吸引して本体5内へ取り込みつつ、取り込んだ空気を流路19からダクト21を介して外部へ排出することができる。また、ファン16aを逆転させることにより、本体5外部の空気を吸気口20から取り込み、分岐路19aと流路19を順に経て、接続管5aを介して袋体3へ注入することができる。なお、送風部16は制御部11の指示に基づきファン16aの回転速度を変更して空気の注入量、吸引量、速度を調整することが可能である。
【0022】
ヒータ部17は、吸気口20から取り込んだ空気を加熱するためのヒータ17aと、その空気にマイナスイオンを供給するマイナスイオン発生器17bとからなり、いずれも流路19内に配置されている。ヒータ17aは流路19内の空気を140℃程度まで加熱する能力を有し、吸気口20から取り込む空気の温度(室温)を制御部11が分岐路19aの温度センサ33により把握したうえ緻密な計算をし、制御部11がヒータ部17に指令を出してヒータ17aが発する熱量を調節して随時適切な加熱温度を定める仕様となっている。
【0023】
表示部15は、現在選択されているモード、現在の状態(「吸引中」、「高温空気注入中」、「常温空気注入中」、「残り時間」、「ダニ退治モード」、「ダニ退治・殺菌モード」、「ダニ退治・殺菌・ウイルス不活化モード」等)、吸引と注入を繰り返し実施する回数、温度、湿度等の各種情報を表示するディスプレイ26(
図2参照)と不図示のスピーカとからなる。
【0024】
操作部14は、使用者が本体5を操作するためのボタン群27(
図2参照)からなる。ボタン群27は、具体的には電源ボタン、モード選択ボタン、吸引と注入を繰り返し実施する回数の設定ボタン、温度設定ボタン、作動開始ボタン、作動停止ボタン、タイマー設定ボタン、吸引ボタン、注入ボタン等からなる。
【0025】
電動弁18は、本体5の流路19を全開(開放)、半開、1/3開、1/5開、1/10開、閉塞等と段階的な開閉が可能なスライド式の弁機構であり、流路19内に配置された耐熱ゴムからなる弁18aと、弁18aを駆動するモータ18bとからなる。
【0026】
電動弁18について、本体5が袋体3内の空気を吸引して屋外へ排出する際は、流路19における空気の流量が多いため、制御部11はモータ18bを制御して弁18aを全開にし、徐々に閉じて袋体3内の真空度を高めて行き、袋体3内が真空状態となった時に弁18aを閉める。また、本体5が袋体3へ空気を注入する際は、制御部11はモータ18bを制御して弁18aを少し開いた状態にし、本体5内に外部の空気を取り込んで加熱することで目的の温度(例えば110℃等)の空気を袋体3内へ注入する。これは、弁18aが全開になった状態で外部空気を取り込むと、真空状態になっている袋体3に空気を取り込もうとする力が作用し多くの外部空気が本体5を経由して袋体3内に入ってしまうため、目的の温度の空気を袋体3へ適切に注入することができなくなってしまうからである。なお、弁18aは制御部11の指示に基づき開放度合を変更して空気の吸引量、速度、注入量を調整することも可能である。以上に述べた電動弁18に限られず、これと同様の役割を果たす弁機構を採用してもよい。
【0027】
以上に述べた構成の乾燥消毒装置1において、制御部11は、電動弁18のモータ18bを駆動して弁18aを制御し、送風部16のモータ16bを駆動してファン16aを正転させる。これにより、袋体3内の空気及び袋体3内の対象物2に含まれる空気が接続管3a、5aを介して本体5内へ吸引され、流路19を経てダクト21から屋外に排出されて、袋体3内を真空状態にすることができ、続いて110℃等の高温空気を袋体3内に注入する。そして、一定時間経過後に再度袋体3内の空気を強力吸引することで、袋体3内の空気とともに、対象物2の表面や内部に潜む虫(例えば、ダニ等)、虫の糞や死骸、埃、花粉、臭気等を、本体5内を経由してダクト21から屋外に排出することができる。なお、真空状態とは、袋体3内の空気及び袋体3内の対象物2に含まれる空気が袋体3外に排出されて対象物2が強く圧縮された状態をいう。
【0028】
また、乾燥消毒装置1において、制御部11は、吸気口20から取り込む空気の温度(室温)を分岐路19aの温度センサ33により常に把握したうえ緻密な計算をし、電動弁18及びヒータ部17に指令を出し、弁の開閉度合を司るとともに、目的温度の空気の注入が叶うようにヒータ17aを高温とさせ、マイナスイオン発生器17bも作動させつつ、送風部16のモータ16bを駆動してファン16aを逆転させる。なお、制御部11はファン16aについても適切な回転数とさせる。これにより、室内の空気が吸気口20から本体5内に取り込まれ、流路19内でヒータ部17により所定温度(例えば50~110℃程度)に加熱されるとともにマイナスイオン発生器17bでマイナスイオンが供給され、接続管5a、3aを介して袋体3内へ注入される。詳しくは、真空状態が保たれた袋体3に対して高温空気のみが注入され、数秒~数十秒間で充満させることができる。これにより、袋体3内の対象物2の深部や端まで高温空気で満たすことができ、対象物2を乾燥させるとともに、対象物2の表面や内部に潜む害虫を死滅させ、カビ、細菌、ウイルスを殺菌又は不活化(消毒)することができる。この効果は、高温空気を袋体3内に充満させた状態を所定時間(例えば数十秒間から数分間程度)維持することでより大きくなる。
【0029】
例えば、生きているダニは対象物2の繊維にしがみついているため、洗濯機を用いて洗濯しても、ダニの除去能力に優れた専用の掃除機で吸引してもなかなか除去することができない。
これに対して乾燥消毒装置1は、上述した袋体3内の空気の排出と袋体3内への高温空気の供給とを必要に応じて複数回繰り返すことにより、対象物2から虫、虫の糞や死骸、埃、花粉、各アレルギー物質、臭気等の除去、カビ、細菌、ウイルスの破壊や不活化等(消毒)及び乾燥を短時間でより効率的で容易に行うことができる。また、対象物2である寝具や衣類を短時間でふかふかで温かい状態にすることもできる。なお、高温空気の上記所定温度及び上記所定時間は、対象物2の耐熱性等を考慮した上で、ダニやウイルス等を死滅又は不活化させるために十分な温度及び時間を使用者が設定することが好ましい。
【0030】
また、乾燥消毒装置1では、袋体3内への高温空気の供給により死滅した虫、殺菌又は不活化された細菌、ウイルス、カビは、袋体3内の空気の排出により埃、花粉、アレルギー物質、湿気、臭気等とともにダクト21を介して直接屋外へ放出することができる。したがって、これらが室内に取り残されて人体へ悪影響を及ぼしてしまうことを防ぎ、室内に湿気や熱が取り残されて室内の内装や電子機器等にダメージを加えたり室内の温度と湿度が上昇してしまうことを防ぐこともできる。
また、乾燥消毒装置1はマイナスイオン発生器17bによって対象物2にマイナスイオンを供給することができるため、使用者の健康増進も期待できる。
【0031】
なお、乾燥消毒装置1において、制御部11は温度センサ24及び圧力センサ23を常に監視して安全管理を行うが、温度センサ24及び圧力センサ23から異常な温度や圧力が検出された際には、その旨をディスプレイ26に表示させるとともにスピーカに出力させ、本体5に搭載されている安全機能により速やかに正常な温度や圧力まで下げる。この構成により、乾燥消毒装置1の安全性を常に確保することができる。
【0032】
本実施形態に係る乾燥消毒装置1は、以下に述べるマニュアルモード、オートモード、冷却モード、乾かしモードの4つのモードを実行することができる。
4つのモードに共通して使用者は、予め対象物2の大きさに適したサイズの袋体3に対象物2を収納してスライダー8でファスナー7、7を閉じ、袋体3の接続管3aと本体5の接続管5aとを接続する。また使用者は、袋体3の大きさに適したサイズの下敷板4を袋体3の下に敷き、本体5のダクト21を固定部材21aで例えば換気扇28に固定してダクト21の先端を換気扇28の近傍に配置しておく。なお、
図1、2には換気扇28として通常の換気扇を示しているがこれに限られずレンジフード式の換気扇でもよい。
【0033】
<マニュアルモード>
乾燥消毒装置1は、使用者が手動で乾燥消毒装置1を作動させて害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行うマニュアルモードを以下の手順により実行可能である。
本モードにおいて使用者は、予めボタン群27を操作してマニュアルモードを選択し、下記(A-2)の注入空気の温度、下記(A-3)の所定時間を設定する。
【0034】
(A-1)使用者が吸引ボタンを押すことで制御部11は本体5の各部を制御し、本体5が袋体3の空気を吸引してダクト21から排出する。この吸引動作は使用者が吸引ボタンを押している間中実行され、使用者が吸引ボタンを離した際に停止される。また、吸引動作は袋体3が真空状態になった際に自動的に停止される。具体的には、流路19の圧力センサ23により流路19の圧力が第1所定値以下になったことが検出された際に制御部11は本体5の吸引動作を停止させる。なお、第1所定値は袋体3が真空状態である時の流路19の圧力値であり予め記憶部12に保存されている。
【0035】
(A-2)使用者が注入ボタンを押すことで制御部11は本体5の各部を制御し、本体5が吸気口20から取り込んだ空気をヒータ17aで所定温度に加熱しマイナスイオン発生器17bがマイナスイオンを付与した上で袋体3へ注入する。この注入動作は使用者が注入ボタンを押している間中実行され、使用者が注入ボタンを離した際に停止される。また、注入動作は袋体3に適切な量の空気が注入された際に自動的に停止される。具体的には、流路19の圧力センサ23により流路19の圧力が第2所定値に達したことが検出された際に制御部11は本体5の注入動作を停止させる。なお、第2所定値は袋体3が適切な量の空気が注入された状態である時の流路19の圧力値であり予め記憶部12に保存されている。
【0036】
(A-3)袋体3に高温の空気が注入された状態のまま制御部11は上記(A-2)の注入動作終了からの経過時間をディスプレイに表示させる。そして所定時間経過後、制御部11は対象物2の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥が終了した旨をディスプレイに表示させつつスピーカに出力させる。
なお、使用者は対象物2の状態等を考慮し必要に応じて上記(A-1)~(A-3)を繰り返し実施する。
【0037】
以上のマニュアルモードによれば、使用者が手動で乾燥消毒装置1を操作して対象物2の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行うことができる。なお、このマニュアルモードでは、使用者が各工程を目視確認しながら一つ一つの自らの操作で実施するため、後述のオートモードに比べ、達成感や満足感を得ることができる。
【0038】
<オートモード>
乾燥消毒装置1は、使用者の指示により乾燥消毒装置1が自動的に害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行うオートモードを実行可能である。オートモードは、制御部11が記憶部12からオートモードを実行するためのプログラムを読み出し、以下の手順を実施することで行われる。
予め使用者はボタン群27を操作してオートモードを選択し、下記(B-2)の注入空気の温度、下記(B-3)の所定時間、下記(B-4)の所定回数を設定する。
【0039】
(B-1)使用者が作動開始ボタンを押すことで制御部11は上記(A-1)と同様に本体5の各部を制御し、本体5が袋体3の空気を吸引してダクト21から排出する。そして制御部11は上記(A-1)と同様に袋体3が真空状態になった際に吸引動作を停止させる。
【0040】
(B-2)制御部11が上記(A-2)と同様に本体5の各部を制御し、本体5が吸気口20から取り込んだ空気をヒータ17aで所定温度に加熱しマイナスイオン発生器17bがマイナスイオンを付与した上で袋体3へ注入する。そして制御部11は上記(A-2)と同様に袋体3に適切な量の空気が注入された際に注入動作を停止させる。
【0041】
(B-3)袋体3に高温の空気が注入された状態のまま制御部11が上記(B-2)の注入動作終了から所定時間が経過するまで時間を計る。
【0042】
(B-4)上記(B-1)~(B-3)を所定回数だけ繰り返し実施する。終了後、制御部11は対象物2の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥が終了した旨をディスプレイに表示させつつスピーカに出力させる。
【0043】
以上のオートモードによれば、乾燥消毒装置1が自動的に対象物2の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥を行うことができる。このため、乾燥消毒装置1を操作する使用者の手間を最小限にすることができる。
また、オートモードでは、上述のように使用者が予め(B-2)の注入空気の温度、(B-3)の所定時間(加熱時間)及び(B-4)の所定回数を設定せずに、注入空気の温度、所定時間及び所定回数の代表的な組み合わせが記憶部12に複数保存されており、所望の組み合わせを使用者が選択する構成としてもよい。代表的な組み合わせとして例えば、ダニ退治モード(注入空気の温度90℃、所定時間1分、所定回数1回)、ダニ退治・殺菌モード(注入空気の温度100℃、所定時間2分、所定回数2回)、ダニ退治・殺菌・ウイルス不活化モード(注入空気の温度110℃、所定時間3分、所定回数3回)等が記憶部12に保存されていることが好ましい。
【0044】
<冷却モード>
乾燥消毒装置1は、上述のマニュアルモードやオートモードを実行したことで高温化した袋体3内の対象物2を冷却する冷却モードを使用者の指示により実行可能である。冷却モードは、制御部11が記憶部12から冷却モードを実行するためのプログラムを読み出し、以下の手順を実施することで行われる。
予め使用者はボタン群27を操作して冷却モードを選択し、下記(C-3)の所定温度を設定する。
【0045】
(C-1)使用者が作動開始ボタンを押すことで制御部11は上記(A-1)と同様に本体5の各部を制御し、本体5が袋体3の空気を吸引してダクト21から排出する。そして制御部11は上記(A-1)と同様に袋体3が真空状態になった際に吸引動作を停止させる。
【0046】
(C-2)制御部11が本体5の各部を制御し、本体5が吸気口20から取り込んだ空気、即ち常温の空気をそのまま袋体3へ注入する。そして制御部11は上記(A-2)と同様に袋体3に適切な量の空気が注入された際に注入動作を停止させる。
【0047】
(C-3)制御部11が上記(C-1)及び(C-2)を繰り返し実施し、流路19の温度センサ24で流路19の空気が、所定温度以下になったことが検出された際に(C-1)及び(C-2)の実施を終了する。そして制御部11は対象物2の冷却が終了した旨をディスプレイに表示させつつスピーカに出力させる。なお、上記所定温度として例えば常温や50℃に設定することが好ましい。
【0048】
以上の冷却モードによれば、他のモードを実行したことで高温化した袋体3内の対象物2を効果的に冷却することができる。したがって、使用者は対象物2を火傷等することなく安全かつ迅速に袋体3から取り出して快適に使用することが可能になる。
【0049】
特に、冷却モード終了後、使用者はマニュアルモードで上記(A-1)のみを実施し、袋体3の接続管3aに備えられている密閉栓6を手動で閉じることにより、袋体3内に対象物2を圧縮したまま収納することができる。これにより、使用者は袋体3の接続管3aを本体5の接続管5aから取り外して袋体3を本体5から分離し、袋体3を圧縮袋として利用、即ち当該袋体3を押し入れやクローゼットに入れて真空状態を維持したままカビの発生や害虫や雑菌の繁殖を抑えて衛生的に省スペースで長期保管することが可能となる。
【0050】
なお、乾燥消毒装置1は上述のオートモードと冷却モードとを順次実行するプログラムを記憶部12に備える構成としてもよい。これにより、乾燥消毒装置1は使用者が当該プログラムを選択して作動開始ボタンを押すだけで対象物2の害虫の殺傷と除去、乾燥及び消毒、そして冷却を自動的に行うことができる。
また、上記(C-3)では、流路19の空気が所定温度以下になるまで(C-1)及び(C-2)を繰り返す構成であるが、これに限られず予め所定回数を設定し、(C-1)及び(C-2)を当該所定回数だけ繰り返し実施する構成としてもよい。
上述のマニュアルモードにおいては、上記(A-2)の所定温度即ち袋体3に注入する空気の温度を常温に設定することにより、手動での冷却モードを実現することができる。
【0051】
<乾かしモード>
乾燥消毒装置1は、例えば洗濯して脱水をした衣類等のように水で濡れた対象物2の乾燥を行う乾かしモードを使用者の指示により実行可能である。乾かしモードは、制御部11が記憶部12から乾かしモードを実行するためのプログラムを読み出し、当該プログラムに基づいて以下の手順を実施することで行われる。
予め使用者はボタン群27を操作して乾かしモードを選択し、下記(D-2)の注入空気の温度、下記(D-3)の所定時間、下記(D-4)の所定回数を設定する。
【0052】
(D-1)使用者が作動開始ボタンを押すことで制御部11は上記(A-1)と同様に本体5の各部を制御し、本体5が袋体3の空気を吸引してダクト21から排出する。そして制御部11は袋体3が準真空状態になった際に吸引動作を停止させる。具体的には、流路19の圧力センサ23により流路19の圧力が第3所定値以下になったことが検出された際に制御部11は本体5の吸引動作を停止させる。なお、第3所定値は袋体3が準真空状態である時の流路19の圧力値であり予め記憶部12に保存されている。また、準真空状態とは上述した真空状態よりも真空度が低い状態をいう。本(D-1)において、他モードのように真空状態になるまで吸引動作をすると、袋体3内の空気だけでなく対象物2に付着している水を直接吸引することとなり、当該水が本体5内に進入して故障の原因になってしまうことを防ぐためである。
【0053】
(D-2)制御部11が上記(A-2)と同様に本体5の各部を制御し、本体5が吸気口20から取り込んだ空気をヒータ17aで所定温度(衣類の耐熱性や縮み防止を考慮して使用者が設定する温度)に加熱して袋体3へ注入する。そして制御部11は上記(A-2)と同様に袋体3に適切な量の空気が注入された際に注入動作を停止させる。なお、上記(D-1)における吸引量を計測して記憶部12に記憶し、記憶部12に記憶された吸引量と同量又は倍量の空気を本(D-2)で袋体3に注入する構成としてもよい。
【0054】
(D-3)袋体3に高温の空気が注入された状態のまま制御部11が上記(D-2)の注入動作終了から所定時間(衣類等の耐熱性や縮み防止を考慮して使用者が設定する時間)が経過するまで時間を計る。
【0055】
(D-4)上記(D-1)~(D-3)を所定回数(衣類等の耐熱性や縮み防止を考慮して使用者が設定する回数)だけ繰り返し実施する。終了後、制御部11は対象物2の乾燥が終了した旨をディスプレイに表示させつつスピーカに出力させる。
【0056】
以上の乾かしモードによれば、本体5から袋体3に対し、袋体3内が準真空状態となるまでの空気の吸引と高温空気の注入とを繰り返し実施することにより、袋体3内の水で濡れた対象物2を乾燥(及び消毒、害虫の殺傷と除去)することができる。特に、洗濯直後の水分を帯びた衣類やシーツ等を、ウイルス、花粉、雑菌等の付着や増殖を防いで衛生的に短時間で乾かすことができる。
また、上記(D-4)では、(D-1)~(D-3)を所定回数だけ繰り返し実施する構成であるが、これに限られず予め所定湿度を設定し、流路19の空気が当該所定湿度以下になるまで(D-1)~(D-3)を繰り返した後、自動的に作動を停止し、その旨ディスプレイに表示するとともにスピーカに出力する構成としてもよい。
【0057】
以上に述べた4つのモードにより、乾燥消毒装置1は手動/自動で対象物2の害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥、高温化した対象物2の冷却、濡れた対象物2の乾燥を行うことができる。
【0058】
なお、乾燥消毒装置1は、寝具や衣類に限られず、座布団、クッション、カーペット、カーテン等を対象物2として乾燥、害虫等の殺傷と除去、消毒することもできるため、身の回りの衛生状態を向上させることができ、喘息や気管支炎等の呼吸器疾患、アレルギー性鼻炎、結膜炎、皮膚炎等の発症を抑え、これらの症状に既に苦しむ人やペットを寛解へ導き、人畜の健康維持と増進に貢献することが叶う。
【0059】
なお、本体5のダクト21の長さは、使用者が乾燥消毒装置1の購入に際して使用環境に合わせて自由に選択できることが好ましい。これにより、ダクト21の先端を固定部材21aで例えば換気扇に固定したり、窓から露出させることが容易に可能となる。また、袋体3から吸引されたダニ、ダニの糞や死骸、埃、花粉、臭気、カビ、細菌、ウイルス等を含む空気、高温空気を直接屋外へ排出することができ、室内の空気を清潔に保つことができる。
【0060】
乾燥消毒装置1は、従来の布団乾燥機に比して大幅に作動時間を短くできるため、省エネ化と確実な消毒等を実現できる。
【0061】
ダニによるアレルギー症状に悩む人は2015年時点で日本全国に約2900万人いると言われており、厚生労働省ホームページ内の情報では2011年時点で国民の半数が何らかのアレルギーを抱えており、中でもハウスダストや花粉アレルギーを有する人が圧倒的に多いとされていて、寝具や衣類は毎日長時間人体等に接しているものであるため、乾燥消毒装置1の利用により各アレルギー症状の消失や軽快という効果が期待できる。
寝具や衣類に付着した、アナフィラキシーショックをも引き起こしかねない各アレルギー物質や世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス等も乾燥消毒装置1によって除去し、それらを屋内に残すことなく屋外へ排出することができる。特に、新型コロナウイルスは日本医事新報社ホームページによれば「100℃で5分間」、厚生労働省ホームページによれば「80℃で10分間」の加熱で死滅させることができるとされているため、この点においても乾燥消毒装置1の利用は非常に大きな効果をもたらすものである。
【0062】
敷布団やマットレスと掛布団との間にノズルを挿入して温風を供給し続ける一般的な従来の布団乾燥機は、ダニ、カビ、花粉、細菌、ウイルス等の有害物質を退治、不活化するには長時間を要したり、実現が不可能である。さらに、当該温風や湿気、各種有害物質が室内を漂ってしまうため、空気汚染、室温上昇及び湿度上昇を避けることができず、人畜への健康被害や電子機器等への悪影響を招いてしまうおそれがある。
これに対して乾燥消毒装置1は、先に述べたように袋体3から短時間で吸引した有害物質を含む空気を換気扇や窓から確実に屋外に排出することができる。また、真空状態の袋体3に高温空気を注入する構成であるため、高温空気の注入にかかる時間は数秒から数十秒で済む。そして、高温空気は全て袋体3内に収まるため、室内の空気汚染、室温上昇及び湿度上昇を避けることができるだけでなく、一般的な従来の布団乾燥機よりも遥かに省エネルギー化を図りながら衛生を確保、維持することができる。
【0063】
乾燥消毒装置1は、シンプルな構成であり低コストで小型軽量に製造することができる。このため、安価で販売することが可能で世界的な普及も大いに期待できる。また、乾燥消毒装置1はシンプルな構成であることにより、故障しづらく、故障した際の修理費用も抑えることができる。
【0064】
以上、本実施形態によれば、室内の温度や湿度上昇と空気汚染を防止しながら寝具や衣類等の対象物2をそれらの内部まで短時間で効果的に害虫の殺傷と除去、消毒及び乾燥することが可能な乾燥消毒装置1を実現することができる。よって使用者は、乾燥消毒装置1により対象物2を極めて衛生的な状態で使用し続けることができるとともに、極めて衛生的な状態で袋体3に圧縮保存することもできる。
【0065】
さらに、乾燥消毒装置1は、リバーシブルフローファン16aの代わりにターボファン等であって一方向への空気吸引を可能とするファン(以下「通常のファン」という。)を備える構成としてもよい(この構成を別構成と称する)。無論、通常のファンにあっても十分な耐熱性を有するものを用いる。
【0066】
別構成において、制御部11は、スライド式の電動弁18を開放し、通常のファンを正転させる。これにより、袋体3内の空気が接続管3a、5aを介して本体5内へ吸引され、流路19を経てダクト21から屋外に排出されて、上記[0026]に記載のように袋体3内を真空状態にすることができる。次いで、制御部11は、電動弁18を一度閉じるとともに通常のファンを停止させ、ヒータ17aとマイナスイオン発生器17bを作動させる。真空状態となって圧縮されていた袋体3は、電動弁18が開くことで、空気を吸い込んで元の状態を復元しようとする。即ち袋体3は、本体5の吸気口20から取り込まれヒータ部17で加熱されたうえマイナスイオン発生器17bでマイナスイオンが付与された流路19内の高温空気のみを接続管3a、5aを介して吸い込み、これによって袋体3内への一定量の高温空気注入が叶う。したがって、通常のファンを用いることにより、リバーシブルフローファン16aを用いた場合と似た効果を得ることができる。
【0067】
また、別構成においても、各弁は十分な耐熱性を備えたスライド式の弁機構であって、流路19を開放(全開)、半開、1/3開、1/5開、1/10開、閉塞等と段階的に閉塞可能な仕様とし、袋体3内の空気を吸引する際には、制御部11が電動弁18を全開にして通常のファンを正転させることで吸引を開始する。次いで制御部11は、流路19の圧力センサ23の出力から袋体3内の空気の圧力を監視し、電動弁18で流路19の開放具合を段階的に小さくすることで、本体5の吸引力を段階的に大きくすることができるため、真空状態や準真空状態を作り出すまでの吸引時間を短縮化できる。
一方、袋体3内へ高温空気を注入する際には、本体5の吸気口20から流路19に取り込まれた室内空気の温度が高い場合、ヒータ17aで所定の温度(例えば50~110℃程度)まで短時間で加熱することができるため、制御部11は電動弁18を1/3開等にする。そして、吸気口20から流路19に取り込まれた室内空気の温度が低い場合はヒータ17aで所定の温度に加熱するまで時間がかかるため、制御部11は電動弁18を1/5開や1/10開等にする。これにより、室内空気の温度が低い場合でも目的温度に達した高温空気を袋体3内へ注入することができる。
【0068】
以上に述べた部材は全て150℃以上の高温に耐え得る耐熱性を有し、本体5の各部にあっては200℃の高温となっても正常に機能するものである。
【0069】
以上に述べた「真空状態(第1所定値)」とは、広く市販されている布団や衣類用の高性能な圧縮袋と家庭用掃除機を用いて実現できる圧力値と同じであり、「準真空状態(第3所定値)」とは、前記真空状態の1/3の真空度であって、第2所定値は圧縮袋からの吸引を開始する時点の圧力値と同量またはそれ以上(適切量)の空気が袋体3内に入っている圧力値である。
【0070】
先に述べた、制御部11による「弁の開閉度合、ヒータ17aの加熱度合、ファン16aの回転速度の適度な調節」は、先述の各モード運転中、常に実施され、いずれの目的も的確に達成できるようになっている。
【符号の説明】
【0071】
1 乾燥消毒装置
2 対象物
3 袋体
3a 袋体の接続管
4 下敷板
5 本体
5a 本体の接続管
6 密閉栓
7 ファスナー
8 スライダー
11 制御部
12 記憶部
13 電源部
14 操作部
15 表示部
16 送風部
17 ヒータ部
17a ヒータ
17b マイナスイオン発生器
18 電動弁
18a 弁
18b モータ
19 空気の流路
19a 分岐路
20 吸気口
21 屋外排気用ダクト
22 筐体
23 圧力センサ
24 温度センサ
25 脚部
26 ディスプレイ
27 ボタン群
28 換気扇
29a 電磁弁
29b 電磁弁
31a 筐体の側面
31b 筐体の反対側の側面
32 格子部材
33 温度センサ
【要約】
【課題】室内の温度や湿度上昇と空気汚染を防止しながら寝具や衣類を極めて短時間で真空状態とし、続いてそれらの深部や端までを確実に110℃等の高温にさせることで、省エネかつ非常に効率よくダニ等の害虫駆除、消毒及び乾燥、さらに長期保存が可能な乾燥消毒装置を提供すること。
【解決手段】対象物2を収納するための袋体3と、袋体3内の空気の吸引及び袋体3内への空気の供給を行うための本体5と、袋体3と本体5とを接続する接続管と、を有し、本体5は、接続管に連通する空気の流路19と、ファン16aと、流路19内の空気を加熱するためのヒータ17aと、袋体3から吸引した空気を屋外排出するためのダクト21等を備え、ファン16aの回転により袋体3内の空気を吸引して流路19及びダクト21を介して屋外へ排出し、吸気口20から取り込んだ空気をヒータ17aで加熱して袋体3内へ供給する。
【選択図】
図1