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特許7062829直線部材によるドーム状部材網の構築に使用する鉛直台
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】直線部材によるドーム状部材網の構築に使用する鉛直台
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20220425BHJP
   E04G 21/16 20060101ALI20220425BHJP
   E04B 7/08 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
E04B1/32 102H
E04G21/16
E04B1/32 102B
E04B7/08
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021191705
(22)【出願日】2021-11-26
【審査請求日】2021-12-20
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516047061
【氏名又は名称】犬飼 八重子
(74)【代理人】
【識別番号】715009178
【氏名又は名称】犬飼 晴雄
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 晴雄
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-020251(JP,A)
【文献】特許第6557809(JP,B1)
【文献】特開2009-150136(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112411758(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/32
E04G 21/16
E04B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線部材を用いて、骨組み構造のドーム状部材網を構築するために使用される鉛直台であって、相対する平行材の下部を鉛直に固定した鉛直台を、構築するドーム状部材網の中間の円周上に複数台配置し、ドーム状部材網を構築する直線部材を、前記鉛直台の平行材の間に通し、該直線部材の内側端部相互を固定することにより、該直線部材による放射状の平面部材網が形成され、該平面部材網の外側端部に内向きの水平力を作用させる縮径により、ドーム状部材網が構築され、この構築過程における前記平面部材網の形成において、前記直線部材の位置を決める位置決めと、該直線部材の傾きを防止する役割を担うために使用される鉛直台であって、前記円周上に配置された複数の鉛直台相互を環状枠で連結することにより、前記鉛直台の円周方向の移動が拘束され、同時に前記鉛直台の平行材の間に挟まれている前記直線部材の横方向の移動も拘束される結果、前記直線部材の横方向の座屈が防止され、この座屈防止の役割を担うために使用される環状枠で連結された鉛直台。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許文献1及び特許文献2に関するドーム状の部材網の構築時に使用する新たな鉛直台を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
ドーム又はドーム状構造体を構築する場合、現場で仮設足場、支保工、形枠を組みコンクリートを打設して構築する方法や、工期短縮、高所作業の軽減等をはかるため、事前に工場等で製作した各種部材を建設現場に運搬し、建設現場に仮設足場、支保工を組み、クレーン等により各種部材を持上げ、それらを接続・結合して構築する方法等が実施されている(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
【0003】
このような従来の方法は、構築するドーム形状に合わせたコンクリート打設用形枠や、組み立て部材を製造・加工することが不可欠であるが、特許文献3及び特許文献4の方法はそれらとは全く異にして、直線状部材を現場でアーチ状に強制変形させてドーム状部材網を構築することにより、仮設足場、支保工、クレーン等の重機の使用や高所作業を大幅に減少させるものであるが、ドーム状部材網の構築に関して、その構築が複雑なため建設費の上昇を招くことが危惧されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-06200号公報
【文献】特開平10-06101号公報
【文献】特許第6063086号公報
【文献】特許第6557809号公報
【文献】特許第6623331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は特許文献3と特許文献4によるドーム状部材網の構築に関して、ドームの構築をより簡略化して施工性と経済性の向上を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ドーム状部材網Cの構築に際して、本願発明の鉛直台6を使用することにより課題を解決するものである。
【0007】
ドーム状部材網Cは、最初に、基礎工1上に直線部材3を放射状に配置して平面部材網Aを形成し、この平面部材網Aの中間部を高くして凸状部材網Bを構築し、次にこの凸状部材網Bを縮径してドーム状部材網Cを構築する、という過程により構築される。
【0008】
ここで、ドーム状部材網Cを構築するために使用される直線部材3は、構築するドーム状部材網Cの弧長S0の半分の長さ、S0/2である。この直線部材3の内側端部を水平状に固定することで、構造上、長さS0の1本の部材と見なされる。
【0009】
上記3種の部材網A、B及びCの構築において鉛直台6が使用される。この鉛直台6は図1で示すように、相対する平行材6aの上下端を幅止め材6bと6cで固定するもので、上端の6cは直線部材3を平行材6aの間に通してから固定される。
【0010】
スパンがLでライズがfのドーム状部材網Cの構築における最初の過程である平面部材網Aの形成について、図2で説明する。形成する平面部材網Aの中間の円周上に複数の鉛直台6を鉛直に設置する。この鉛直に設置された鉛直台6の平行材6aの間に直線部材3を通す。平行材6aの間を通した直線部材3の内側端部を固定板装置2に水平状に固定する。こうして複数の直線部材6が放射状に配置される。放射状に配置された直線部材3の外側端部は、縁付き平滑板7の上に載せ、包囲方向には自由に移動でき、半径方向には移動できない包囲ワイヤ8によって係止される。こうして平面部材網Bが形成される(図2参照)。中間部に設置した鉛直台6によって、直線部材3の位置決めがなされ、直線部材3の中間部の横方向のズレや部材の傾きを防止することができ平面部材網の形成を容易にした。本願の鉛直台6の効用である。
【0011】
平面部材網Aから2つの方式でドーム状部材網が構築される。その1つは着地縮径方式で、平面部材網Aを基礎工1に着地した状態で縮径する方式(図3a)で、他の1つは非着地縮径方式で、平面部材網Aを吊り上げて基礎工1に対し非着地にした状態で縮径する方式(図3b)である。
【0012】
平面部材網Aからドーム状部材網Cを構築する2方式のうちの1つである着地縮径方式における、平面部材網Cから凸状部材網Bを構築する方法について図4の断面図で説明する。鉛直台6の上方に吊装置9を仮設し、鉛直台6の平行材6aに挟まれ下にある直線部材3(図4aの実線丸1参照)を吊りグリップ9a(図1b参照)で掴み、吊り装置9により、平面部材網Aを空に吊り上げる(図4aの破線丸2参照)。吊り上げられた直線部材3の端部は弾性変形でδ0撓み、直線部材3は中央部が高い凸状状態になる。
【0013】
ここで吊り上げ時に発生する弾性変形量δ0は、凸状部材網Bをドーム状部材網Cに変換する工程に大きな影響がある。δ0が大きいほど、縮径開始時の縮径水平力ΣHは小さくなり、また縮径量も少なくて済む。従って、施工が容易になり工事費も小さくすることが出来る。鉛直台6を使用し吊り上げる本願の方法では、例えば基礎工1上に支持台等を積み上げて凸状部材網を構築する方法に比べ、大きなδ0を採用することが出来る。本願の鉛直台6の効用である。
【0014】
鉛直台6に保持材10を設置し、吊り上げて凸状になった平面部材網(図4bの実線丸2参照)を降ろして、基礎工1上に着地した状態で保持台10により支持し、凸状部材網Bが形成される(図4bの破線丸3参照)。
【0015】
基礎工1に着地している凸状部材網Bを、ドーム状部材網Cに構築する方法について図5により説明する。
着地している凸状部材網Bの外側端部に縮径水平力ΣHを作用させると(図5aの実線丸3参照)、凸状部材網Bの中央部が保持材10から離れ上昇し、ドーム状になり、ライズがf1のドーム状部材網Cが形成される(図5aの破線丸4参照)。
【0016】
形成されたライズf1のドーム状部材網(図5bの実線丸4参照)の縮径を更に進めると、ライズが大きくなり、ライズがf、スパンがLの所要のドーム状部材網が構築される(図5bの破線丸5参照)。
【0017】
ここで、着地状態の縮径水平力ΣHは、直線部材3をアーチ状に変形させるための強制水平力Hrと、アーチの自重による水平反力Hgの合計でΣH=Hr+Hgである。
【0018】
図6は、ドーム状部材網B構築過程の縮径水平力ΣHの変化を示す。縮径開始時の端部の撓みがδ0の時が最大で、縮径最終時のドームのライズがfの時最小になる。ΣHの内訳として、水平反力Hgは強制水平力Hrより大きく、その水平反力Hgは縮径開始時が最大で、逆に強制水平力Hrは完成時に最大になることを示している。
【0019】
直線部材3に大きな縮径水平力ΣHが作用すると、横方向の座屈が発生する。横方向の座堀を防止するためには、直線部材3の横方向の剛性を大きくすることが1つの方法で、直線部材3の断面として十字断面が採用される(図7参照)。
【0020】
もう1つの方法は、直線部材3の拘束区間である座屈距離L0を小さくする方法である。直線部材3の両端部が拘束されている場合のL0は、L0=S0/2である。一方、直線部材3の中間部の横方向の変位を鉛直台6等により拘束した場合のL0は、L0=S0/4になり、座屈を発生させる座屈荷重が大きくなり、座屈を防止する機能が大きくなる(図4a参照)。
【0021】
縮径水平力ΣHの最大値が大きい着地縮径の場合、座屈対策として上記の2つの方法が採用され、直線部材3の断面は図7に示す強軸3aがhで弱軸3bがbの十字断面になる。ΣHが大きいと弱軸bが大きくなる。又、隣接する鉛直台6を環状枠5で連結して鉛直台6の横方向の変位を拘束する方法が採用される(図8参照)。このように本願の鉛直台6は環状枠5を設けて直線部材3の座屈強度を高めることが出来る。本願の鉛直台6の効用である。
【0022】
構築されたドーム状部材網Cは、環状支承13に固定される。固定後、隣接する直線部材3を幅止め鋼14によって連結し、環状枠5と鉛直台6が撤去され、ドーム状部材網Cの構築が完結する(図9の斜視図参照)。
【0023】
平面部材網Aからドーム状部材網Cを構築する2方式のうちの別の非着地縮径方式について説明する。非着地方式は着地方式に比べ縮径水平力ΣHが小さいことが特徴である。前出図6に示されるように、着地方式の縮径では、縮径水平力ΣHは、直線部材3を強制的にアーチ化するための強制水平力Hrと、アーチの自重による水平反力Hgとを合計したもので,ΣH=Hr+Hgになるのに対し、非着地方式では、アーチの自重による水平反力Hgは発生しないので、ΣH=Hrであり、非着地方式は着地方式より小さい縮径水平力ΣHでドーム状部材網Cを構築することが出来る。
【0024】
非着方式の縮径では縮径水平力ΣHが着地式に比べ小さいため、直線部材3の座屈対策としては直線部材の断面を十字断面(図7参照)とすることで対処し、座屈長L0を小さくする対策はここではとらないことにする。従って鉛直台6には環状枠5は取り付けず、鉛直台6は直線部材3の中間部の横方向変位の拘束には利用されない。ここでの鉛直台6は直線部材3の吊り上げに専用される。
【0025】
図10は吊り上げ専用の鉛直台6である。鉛直台6の上端に吊り装置9を仮設する。鉛直台6の平行材6aの間を通して下側に配置され、平面部材網Aを構成している直線部材3を吊りグリップ9aで掴み、吊り装置9により吊り上げる。このように鉛直台6は直線部材3の吊り専用に用いられる。
【0026】
平面部材網Aを吊り上げて非着状態にしてドーム状部材網Bを構築する方法について図11により説明する。平面部材網C(図11aの実線丸1参照)をδ1吊り上げるとライズがf=δ0+δ1の空に浮いた凸状部材網Bが形成される(図11aの破線丸2参照)。δ1は後述する分割吊り上げ量で、以後の吊り上げは、δ1の吊り上げを繰り返して所定のライズfのドーム状部材網を構築する。
【0027】
空に浮いた凸状部材網B(図11bの実線丸2参照)を縮径水平力ΣHで縮径すると、凸状部材網Bの端部が基礎工1に接地し、ライズがf1のドーム状部材網C(図11bの破線丸3参照)が形成される。吊り上げ荷重は維持した接地状態で、包囲ワイヤ8を引締め固定する。この後、次の吊り上げが行われる。
【0028】
δ1の吊り上げによって空に浮いたライズf1のドーム状部材網C(図11cの実線丸3)の端部が接地するまで縮径すると、ライズf2のドーム状部材網Cが形成される(図11cの破線丸4)。接地しているf2のドーム状部材網Cを再度吊り上げ、縮径、接地を実施しf3のドーム状部材網C形成後(図11dの破線丸5参照)、この吊り上げ、縮径、接地の繰り返しによりライズがf、スパンがLの所定のドーム状部材網Cが形成される(図11eの破線丸6参照)。
繰り返しの吊り上げ作業をクレーン等で行う場合、その架設費用が大きいだけでなく、多数の吊上げ点を同調して吊り上げることも簡単ではない。本願の鉛直台は費用、施工性においてそれらの問題点を解決することが出来る。本願の鉛直台6の効用である。
【0029】
所定のライズfとスパンLを形成してから、包囲ワイヤ8を引締め固定して、吊り上げを終了し、直線部材3の端部を基礎工1に設けたドームの環状支承13に降ろすことになるが、ドームの環状支承13に降ろすと着地状態になるため直線部材3には新たに水平反力Hgが発生する。従って着地前に座屈を防ぐために、幅止め鋼14によって直線部材3を連結することが必要になる。幅止め鋼14による連結後(図9の斜視図参照)、ドームの環状支承13にドーム状部材網Cが降ろされ固定され、鉛直台6が撤去され、ドーム状部材網Cが完成する。
【0030】
吊り下ろしたドーム状部材網Cには、着地により自重による支点反力Hgが発生するため、ドームの環状支承13は支点反力Hgを支持できる構造が必要になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】環状枠付き鉛直台の説明図である。
図2】着地縮径方式の平面部材網の説明図である。
図3】着地縮径方式と非着地縮径方式の説明図である。
図4】着地縮径方式による凸状部材網の構築過程の説明図である。
図5】着地縮径方式によるドーム状部材網の構築過程の説明図である。
図6】縮径による縮径水平力ΣHの変化図である。
図7】直線部材の十字断面の説明図である
図8】環状枠による鉛直台の横方向変位の拘束状態の説明図である。
図9】ドーム状部材網の完成時の斜視図である。
図10】吊り上げ用の鉛直台の説明図である。
図11】非着地縮径方式によるドーム状部材網の構築過程の説明図である。
図12】実施例1の着地縮径方式の平面部材網の説明図である。
図13】実施例1の着地縮径方式の縮径方法の説明図である。
図14-1】1次施工と2次施工の説明図である。
図14-2】1次施工と2次施工の説明図である。
図15】ドーム状部材網完成時の斜視図である。
図16】固定板装置の説明図である。
図17】実施例1の溝付き平滑板の説明図である。
図18】実施例2の非着地縮径方式の平面部材網の説明図である。
図19】実施例2の非着地縮径方式の縮径方法の説明図である。
図20】実施例2の拘束柱の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施例1)環状枠5付き鉛直台6を用いたドーム状部材網Cの構築について、図12乃至図17を用いて説明する。構築するドーム状部材網Cは、図12の中規模なドーム状部材網を想定する。ドーム状部材網の構築は、1次施工と2次施工に分割し、両施工には8本の直線部材3が使用される。
【0033】
1次施工では立地面を8等分し直線部材3を8本用いて、ドーム状部材網Cを構築する。構築は、特許文献3による着地方式によるものとして、構築方法についての詳細な説明は省くが、環状枠5付き鉛直台6を直径Λ1の円周状に8台設置し、鉛直台6の平行材6aの間に直線部材3を通すことにより、縮径過程の直線部材3の座屈を防止することが出来る。
【0034】
2次施工は、特許文献5の方法によって、1次施工で構築されたドーム状部材網C(図14aの平面図参照)を支保工にして構築され、2次施工の直線部材3は、1次施工の環状枠5の中間部に配置される(図14b1の平面図と図14b2の斜視図参照)。
【0035】
使用する直線部材3の断面は図7で、横方向の座屈を防ぐために、断面の弱軸3bを拡幅した十字断面である。使用される十字断面の強軸3aには、強度の高い鋼材が使用されるが、弱軸3bは剛性を大きくするためであり、通常、強度的には強軸3aの強度以下のものが使用される。
【0036】
図12で示す1次施工では、直線部材3の中間部にあたる直径Λ1の円周上の8カ所に下部工4が施工され、この下部工4に鉛直台6が鉛直に設置される。この鉛直台6の上部に環状枠5が接続・固定され、8台の鉛直台6は環状に連結され(図8参照)、包囲方向の動きが拘束される。
【0037】
図12に示す平面部材網A(図13の実線3・A)を形成後、鉛直台6の上部に設置した吊り装置9により平面部材網Aを吊り上げ量δ0だけ吊り上げ、保持材10で保持して凸状部材網Bを構築する(図13の実線3・B参照)。構築した凸状部材網Bを縮径してドーム状部材網Cを構築する。
【0038】
縮径するための水平力ΣHは最初大きく、縮径の進行により徐々に減少する(図6参照)。最初の最大ΣHに対して、直線部材3の横方向の剛性と環状枠5付き鉛直台6による包囲方向の拘束により座屈が防止され、1次施工のドーム状部材網Cが構築される(図13実線3・C参照)。
【0039】
1次施工のドーム状部材網C構築後(図14a平面図参照)、2次施工が開始される。2次施工の直線部材3が1次施工の直線部材3の中間に配置される。配置された直線部材3の内側端部が、1次施工で構築したドーム状部材網Cの固定板装置2に水平状に固定され、その中央部が環状枠5の上に置かれ(図14b1参照)、端部が基礎工1の上方に張出す(図14b2参照)。張出して基礎工1に対して非着地の直線部材3の端部を、ドームの環状支承13に引寄せる縮径をすることによりアーチが形成される(図14c参照)。円周上の環状枠5に代わって直線部材3の相互を幅止め鋼14で固定し、ドーム状部材網が構築される(図14d参照)。
【0040】
ドーム状部材網Cの構築後、構築後のドーム状部材網Cの利用の方法によっては、図15の斜視図に示すように、幅止め鋼を増やして16本の直線部材3が接続される。環状枠5と鉛直台6は撤去される。形成したドーム状部材網Cを環状支承13に固定してドーム状部材網Cが完成する。
【0041】
2次施工は、1次施工を支保工として、基本的には直線部材3を1次施工の上に並べて端部を引寄せ固定するだけの作業であり、1次施工に比べて施工が簡略化される。
【0042】
ドーム状部材網Cは、ドームの外周を囲むドーム環状支承13(図15参照)に固定される。ドーム環状支承13は、ドーム状部材網Cによる荷重の他に、ドーム状部材網Cの利用方法によって発生する水平力にも対応できる構造になっている。通常PC鋼材のケーブルを配置したPC構造になる。
【0043】
ドームの頂部を構成する固定板装置2の1例について、図16により説明する。直線部材3を上下に挟む固定板2aを、ボルト2bとナット2cで締め付けて直線部材3を水平状に固定する。締め付けにはジャッキが使用される。
【0044】
ドームの外側端部の溝付き平滑板7は図17に示すように、平滑板7の両側に縁材7aを設け、縮径中の直線部材3が平滑板7から外れないようにし、包囲方向の移動を拘束している。アンカ7bによって基礎工1に固定されている。
【0045】
(実施例2)吊り用の鉛直台6を用いて、非着地縮径によるドーム状部材網の構築に付いて、図18の平面部材網Aを用いて説明する。ドーム状部材網Cを構築する基礎工1の中央部に固定板装置2が配置され、中間部の直径Λ1位置に吊り用の鉛直台6が下部工4に仮設され、外側の直径Λ2位置に位置決めのための第2の鉛直台として拘束柱12が下部工12aに仮設される。
【0046】
1次施工について図18乃至図20により説明する。8本の直線部材3が、固定板装置2に水平状に固定され、吊り用の鉛直台6と拘束柱12のU型の間に配置される(図18参照)。吊り用の鉛直台6の上端に設けた吊り装置9により平面部材網Aが分割吊り上げ量δ1だけ吊り上げられ、非着地状態になった平面部材網Aが縮径される。縮径により外周が接地したライズがf1の低いドーム状部材網Cが形成される。このライズf1のドーム状部材網Cを分割吊り上げ量δ1だけ吊り上げ、縮径、接地によりさらにライズが増加する。この1連の吊り上げと縮径、接地を繰り返して、所要のライズfでスパンLの1次施工のドーム状部材網Cが構築される(図19参照)。
【0047】
分割吊り上げ量δ1の吊り上げと縮径時に直線部材3の端部が包囲方向にズレないように拘束柱12が使用される(図20参照)。拘束柱12のU型の間に置かれ、分割吊り上げ量δ1だけ吊り上げられた直線部材3(図20の実線)の端部が、引寄せワイヤ12dで、環状支承13に設けられた引寄せ装置12cによりで引寄せられて接地する(図20の破線参照)。吊り上げ、縮径、接地が繰り返され、1次施工によるドーム状部材網Cが構築される(図19参照)。
【0048】
1次施工後2次施工が行われる。この2次施工は、実施例1の環状枠5付き鉛直台6を使用した場合と同様に行われる。こうして1次と2次によって16本の直線部材3によるドーム状部材網が構築される(図15参照)。
【符号の説明】
【0049】
1:基礎工
2:固定板装置
3:直線部材
3a:直線部材断面の強軸
3b:直線部材断面の弱軸
4:鉛直台の下部工
5:環状枠
6:鉛直台
6a:平行板
6b:下部幅止め材
6c:上部幅止め材
7:縁付き平滑板
7a:縁材
7b:アンカボルト
8:包囲ワイヤ
9:吊り装置
10:保持材
11:吊りグリップ
12:拘束柱
12a:拘束柱の下部工
12b:拘束柱の幅止め材
12c:引寄せ装置
12d:引寄せワイヤ
13:ドームの環状支承
14:幅止め鋼
h:直線部材の断面高
b:直線部材の断面幅
A:平面部材網
B:凸状部材網
C:ドーム状部材網
S0:ドームの弧長
L0:直線部材の座屈長
Hr:直線部材をアーチ状に変形させるための強制水平力
Hg:アーチの自重による水平反力
ΣH:縮径水平力ΣH=Hr+Hg
L:ドーム状部材網の所定スパン
f:ドーム状部材網の所定ライズ
Λ0:固定板装置の直径
Λ1:鉛直台の配置直径
Λ2:拘束柱の配置直径
δ0:凸状部材網の端部の弾性変形量
δ1:平面部材網の分割吊り上げ量
ys:鉛直台位置のドーム状部材網の高さ
【要約】
【課題】
本発明は特許文献3と特許文献4によるドーム状部材網の構築に関して、ドームの構築をより簡略化して施工性と経済性の向上を図ることを課題とする。
【解決手段】
本発明は、課題を解決する手段として、ドーム状部材網の構築時に放射状に配置されるドーム弧長の半分の長さの直線部材の中間部に鉛直台を設け、この鉛直台が、直線部材の位置決めと直線部材の傾きを防止する役割、平面部材網を吊り上げる役割、及び直線部材の座屈を防止する役割を担うことにより、課題を解決したものである。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
図16
図17
図18
図19
図20