(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-22
(45)【発行日】2022-05-06
(54)【発明の名称】密閉缶の孔あけ具
(51)【国際特許分類】
B67B 7/48 20060101AFI20220425BHJP
B65D 83/14 20060101ALI20220425BHJP
B21D 28/28 20060101ALI20220425BHJP
【FI】
B67B7/48
B65D83/14
B21D28/28
(21)【出願番号】P 2021194530
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2021-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594018658
【氏名又は名称】佐合 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】佐合 則夫
【審査官】田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-038134(JP,U)
【文献】特開2014-181037(JP,A)
【文献】実開昭61-103394(JP,U)
【文献】特開2000-033980(JP,A)
【文献】実開平06-087230(JP,U)
【文献】特開2000-079974(JP,A)
【文献】実開昭57-145562(JP,U)
【文献】実開昭61-046019(JP,U)
【文献】特開2001-294283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67B 7/48
B65D 83/14
B21D 28/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透視可能な上板部分の板厚方向に透孔が貫通した板状部の側周縁を、弾性体の枠部で囲って固着し、且つ該枠部が該上板部分の下方向へ延在してなる逆椀状の覆い体と、
棒体の一端面から該棒体の棒軸線上に軸体が突き出て、該軸体の先端部分が尖った突き刺し部を形成し、且つ該軸体の基端側周面に溝が軸方向に形成された突き刺し棒と、を具備し、
前記透孔に環孔を合わせ、且つ該透孔を取囲んで前記上板部分の上面に永久磁石の環体を固着し、さらに前記棒体を強磁性体として、前記上板部分の上面側から前記環孔,前記透孔への突き刺し部の挿通に伴い、前記棒体の前記一端面にして、該軸体よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分が、前記環体に磁力吸引されて該環体の頂面に係止され、且つ密閉缶の側面に該突き刺し部の先端と共に前記枠部の下縁を当接させ、前記棒体の他端面をたたいて密閉缶に突抜け孔があけられるようにしたことを特徴とする密閉缶の孔あけ具。
【請求項2】
前記上板部分の下面側に配して、前記覆い体の外方へフィルム端縁がはみ出る大きさの透視可能フィルムの略中央に抜孔を設け、且つ該抜孔を取囲む強磁性体の環板片を貼着した環板片付き孔あき透視可能フィルムを、具備し、該環板片付き孔あき透視可能フィルムの該環板片を、前記上板部分の下面側から前記環体に磁力吸着させて、前記透孔に前記抜孔及び該環板片の環板孔を合わせられるようにした
請求項1記載の密閉缶の孔あけ具。
【請求項3】
透視可能な上板部分の板厚方向に透孔が貫通した板状部の側周縁を、弾性体の枠部で囲って固着し、且つ該枠部が該上板部分の下方向へ延在してなる逆椀状の覆い体と、
棒体の一端面から該棒体の棒軸線上に軸体が突き出て、該軸体の先端部分が尖った突き刺し部を形成し、且つ該軸体の基端側周面に溝が軸方向に形成された突き刺し棒と、を具備し、
さらに、前記上板部分の下面側に配して、前記覆い体の外方へフィルム端縁がはみ出る大きさの透視可能フィルムの略中央に抜孔が設けられた孔あき透視可能フィルムを具備して、前記透孔に該抜孔を合わせ、
前記上板部分の上面側から前記透孔への前記突き刺し部の挿通に伴い、前記棒体の前記一端面にして、前記軸体よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分が、前記透孔周りの上板部分に係止されると共に、該棒体の一端面から突き出る該軸体の基端部分で、且つ前記透孔と共に該抜孔への突き刺し部の挿通に伴って、前記上板部分の下面側に現れる前記軸体の前記基端部分に雄螺子部が形成され、該雄螺子部にナットを螺着することにより、覆い体に突き刺し棒が螺着一体化し、且つ密閉缶の側面に該突き刺し部の先端と共に前記枠部の下縁を当接させ、前記棒体の他端面をたたいて密閉缶に突抜け孔があけられるようにしたことを特徴とする密閉缶の孔あけ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種スプレー缶の密閉缶にガス抜き用の孔をあける密閉缶の孔あけ具に関する。
【背景技術】
【0002】
塗料用や化粧用等の各種スプレー缶があるが、これらの密閉缶は、一般に、使い残し分の残圧ガスを抜いた後、廃棄,回収される方法が採られている。そして、密閉缶にガス抜き用の孔をあける発明は、これまで特許文献1、2のような各家庭でも行える密閉缶の孔あけ具が提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-294283号公報
【文献】実開平3-30698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1の密閉缶の穴あけ器(本発明は密閉缶の孔あけ具)は、孔あけをしたい密閉缶の所望箇所に押棒の先端にある突針(本発明では軸体の先端部分)が正しく当たっているかどうか確かめようがなかった。また、密閉缶に突針が突き刺さって突抜け孔ができても、突抜け孔周りに突針が密着し、突針でシールしているような状態となって、ガスがうまく抜け出ないことがあった。そして、密閉缶に対し穴あけ具を動かすことによりガス抜きさせると、残圧ガスが一気に噴出して危なかった。さらに、塗料用スプレー缶などにあっては、孔から残圧ガスと共に一気に吹出した塗料が衣服等を汚す虞があった。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、突き刺し棒の先端を確かめながら密閉缶の孔あけができ、且つ密閉缶の残圧ガスを円滑に抜き、仮に残圧ガスが噴出しても安全な密閉缶の孔あけ具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の第一態様は、透視可能な上板部分の板厚方向に透孔が貫通した板状部の側周縁を、弾性体の枠部で囲って固着し、且つ該枠部が該上板部分の下方向へ延在してなる逆椀状の覆い体と、棒体の一端面から該棒体の棒軸線上に軸体が突き出て、該軸体の先端部分が尖った突き刺し部を形成し、且つ該軸体の基端側周面に溝が軸方向に形成された突き刺し棒と、を具備し、前記上板部分の上面側から突き刺し部を前記透孔へ挿通し、且つ密閉缶の側面に該突き刺し部の先端と共に前記枠部の下縁を当接させ、前記棒体の他端面をたたいて密閉缶に突抜け孔があけられるようにしたことを特徴とする密閉缶の孔あけ具にある。本発明の第二態の閉缶の孔あけ具は、前記第一態様で、透孔に環孔を合わせ、且つ該透孔を取囲んで前記上板部分の上面に永久磁石の環体を固着し、さらに前記棒体を強磁性体として、前記上板部分の上面側から前記環孔,前記透孔への突き刺し部の挿通に伴い、前記棒体の前記一端面にして、該軸体よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分が、前記環体に磁力吸引されて該環体の頂面に係止されることを特徴とする。本発明の第三態様の閉缶の孔あけ具は、前記第二態様で、上板部分の下面側に配して、前記覆い体の外方へフィルム端縁がはみ出る大きさの透視可能フィルムの略中央に抜孔を設け、且つ該抜孔を取囲む強磁性体の環板片を貼着した環板片付き孔あき透視可能フィルムを、具備し、該環板片付き孔あき透視可能フィルムの該環板片を、前記上板部分の下面側から前記環体に磁力吸着させて、前記透孔に前記抜孔及び該環板片の環板孔を合わせられるようにしたことを特徴とする。本発明の第四態様の閉缶の孔あけ具は、前記第一態様で、上板部分の上面側から前記透孔への前記突き刺し部の挿通に伴い、前記棒体の前記一端面にして、前記軸体よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分が、前記透孔周りの上板部分に係止されると共に、該棒体の一端面から突き出る該軸体の基端部分で、且つ前記透孔への突き刺し部の挿通に伴って、前記上板部分の下面側に現れる前記軸体の前記基端部分に雄螺子部が形成され、該雄螺子部にナットを螺着することにより、覆い体に突き刺し棒が螺着一体化することを特徴とする。本発明の第五態様の閉缶の孔あけ具は、前記第四態様で、上板部分の下面側に配して、前記覆い体の外方へフィルム端縁がはみ出る大きさの透視可能フィルムの略中央に抜孔が設けられた孔あき透視可能フィルムを、具備し、前記透孔に該抜孔を合わせ、且つ前記上板部分の上面側から前記突き刺し部及び前記雄螺子部を前記透孔と共に該抜孔へ挿通し、その雄螺子部に前記ナットが螺着されてなることを特徴とする。本発明の第六態様の閉缶の孔あけ具は、前記第一態様~第五態様で、枠部が連続気泡フォームの気泡構造体を有する発泡プラスチック製弾性体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の密閉缶の孔あけ具は、突き刺し棒の先端を確かめながら密閉缶の孔あけが可能にして、密閉缶の残圧ガスを円滑に抜き去ることができ、さらに残圧ガスが噴出しても作業者にとって安全確保されているなど優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態1で、密閉缶の孔あけ具の分解斜視図である。
【
図2】
図1の透孔に挿通した突き刺し棒を、密閉缶へ突き立てようとする斜視図である。
【
図3】覆い体の透孔に挿通した突き刺し棒の先端を密閉缶の側面に当てた断面図である。
【
図4】
図3の状態から軸体の先端部分を密閉缶に突き刺して突抜け孔を形成した断面図である。
【
図5】
図4の状態から軸体に形成した溝までが密閉缶に入り込んだ断面図である。
【
図6】(イ)が
図4の突き刺し棒の側面図、(ロ),(ハ)が(イ)に代わる他態様図である。
【
図7】
図3の覆い体の内側に
図1の環板片付き孔あき透視可能フィルムを配した断面図である。
【
図8】実施形態2で、密閉缶の孔あけ具の分解斜視図である。
【
図9】
図7に対応する断面図で、
図8の覆い体の内側に
図8の孔あき透視可能フィルムを配した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る密閉缶の孔あけ具(以下、単に「孔あけ具」ともいう。)について詳述する。
図1~
図9は本発明の孔あけ具の一形態で、
図1は実施形態1における孔あけ具の分解斜視図、
図2は透孔に挿通した突き刺し棒を、密閉缶へ突き立てようとする斜視図、
図3は覆い体の透孔に挿通した突き刺し棒の先端を密閉缶の側面に当てた断面図、
図4は軸体の先端部分を密閉缶に突き刺して突抜け孔を形成した断面図、
図5は軸体に形成した溝までが密閉缶に入り込んだ断面図、
図6は(イ)が
図4の突き刺し棒の側面図、(ロ),(ハ)が(イ)に代わる他態様図である。
図7は
図3の覆い体の内側に
図1の環板片付き孔あき透視可能フィルムを配した断面図、
図8は実施形態2における孔あけ具の分解斜視図、
図9は
図8の覆い体の内側に
図8の孔あき透視可能フィルムを配した断面図を示す。尚、図面を判り易くするため、発明要部を強調図示する。また本発明に直接関係しない構成部分や部材等は省略する。
【0010】
(1)実施形態1
密閉缶の孔あけ具Pは、覆い体1と突き刺し棒4と環体7と環板片付き孔あき透視可能フィルム8とを具備する(
図1~
図7)。
覆い体1は板状部2と枠部3とを備える。板状部2は透視可能な上板部分21の板厚方向に透孔210が貫通した板状物で、本実施形態は、略水平配設される上板部分21と、この側周縁211から下方向に延在する短鍔部分22と、を備えた透明な合成樹脂製板状部2になっている。透孔210が上板部分21の略中央に設けられる。本発明でいう「上板部分」の上側や「下方向」の下方とは、密閉缶9に本発明の孔あけ具Pを用いて孔開けをする
図4の縦断面図で示せば、紙面上側や紙面下方を指す。
ここでの板状部2は、上板部分21が横長の矩形板である。上板部分21には、長手方向の側縁211m及び短手方向の側縁211nから下方へ鍔状に若干延びた四角筒形の短鍔部分22が補強用として一体形成されている。
【0011】
枠部3は板状部2に係る上板部分21の側周縁211を囲って固着し、さらに該枠部3が該上板部分21の下方向へ延在した枠状弾性体である。本実施形態は、枠部3が板状部2の前記短鍔部分22をも外側から囲って固着し、該短鍔部分22よりも下方へ延びる。板状部2の側周縁211から、厚板の弾性体からなる板状スラブの四角形枠部3が、短鍔部分22を越える高さ2cm~4cmほどまで下方へ延在し、該枠部3と前記板状部2とで
図1~
図3のような底面が矩形の逆椀状覆い体1を形成する。
【0012】
枠部3は、作業者が密閉缶9の側面91に孔あけ具Pを当接させて突抜け孔90を設ける際、孔あけ具Pに加える力によって
図3のごとく弾性変形して、突抜け孔90を囲み易くする弾性体であればよい。密閉缶9の筒周面となる側面91に枠部下縁35を当接する。図中、符号31が
図1の長辺側枠部、符号32が短辺側枠部、符号39が外力に伴う枠部3の弾性圧縮部を示す。
【0013】
ここでは、密閉缶9に突抜け孔90をあける時、密閉缶9の側面91で突抜け孔90を取り囲む四方全域に枠部下縁35が、
図3のように当接するが、密閉缶が小さい例えば化粧用密閉缶9の場合は、一部領域で枠部下縁35が側面91に当接しなくても本発明の孔空き孔として充足する。一部域で当接しない枠部3であっても、該枠部3と板状部2でつくる覆い体1が缶内残圧ガスGの噴出から孔あけ作業者を守れるからである。加えて、密閉缶9に突抜け孔90をあけて勢いよく噴出する缶内残圧ガスGを、覆い体1で守りつつ、該枠部3外の四方へ勢いを弱めて逃がすことができるよう(
図5)、枠部3が連続気泡フォームの気泡構造体を有する発泡プラスチック製(本実施形態)や発泡ゴム製等の弾性体であればより好ましい。尚、
図3から
図5へと孔あけ作業が進むと、作業者が加える外力によって枠部3の弾性圧縮部39が増え、孔あけ当初は密閉缶9に当接しなかった枠部下縁35の領域が、広がっていく(
図3、
図5)。
【0014】
突き刺し棒4は、棒体の一端面51から該棒体5の棒軸線上に軸体6が突き出て、該軸体6の先端部分611が尖った突き刺し部61を形成し、且つ該突き刺し部61よりも該軸体6の基端側周面62に、溝63が軸体6の軸方向に形成された棒状体である。
【0015】
棒体5は、横断面が円形(又は角形等)にして、握り部となる主部52が手に持てるほどの大きさの金属棒である。ここでは、長手方向等断面形状の棒体5とする。
軸体6は、棒体5の断面径よりも一回り小さな断面径にして、棒体の一端面51から延在する棒状の部分である。本実施形態の軸体6は、その軸芯を棒体5の棒軸芯に合わせ、且つ軸体6の横断面径を棒体5の横断面径よりも小さくして、棒体の一端面51に結合する基端部分65がまず略同径で先端側の突き刺し部61にまで延びる。突き刺し部61は、前記基端部分65と一致する断面径から先端に向けて次第に断面径を小さくし、先端部分611が円錐状に尖った軸体6とする。先端部分611が円錐状に尖る形状は、例えば
図6(ロ)のように、根元突き刺し部61aと先端突き刺し部61bとの接合部分で屈曲点kを有して、先端に向けて二段階で次第に断面径を小さくするものでもよい。また、先端部分611が尖った軸体6になっておれば足り、円錐状に代えて、例えば
図6(ハ)に示す角錐状としてもよい。符号615は四角錐の側稜を示す。
【0016】
そして、軸体6の基端側周面62に、溝63が軸体6の軸方向に形成される。本実施形態の溝63は、突き刺し部61の最大軸径の地点612から軸体6が棒体5と結合する基端地点へ向けて、軸体6の基端側周面62に細長く掘られている(
図6のイ)。溝63が軸体6の周方向に90°ピッチ間隔で互いに平行に4個形成される。軸体6の基端側周面62に形成する溝63は、
図6(イ)のような突き刺し部61の最大軸径地点612に接して、この地点から軸体6の基端側へ掘られるものに限定されない。例えば、
図6(ロ)のように、溝63が、突き刺し部61の最大軸径地点612よりも先端側の小さい軸径の地点から軸体基端側へ掘られているのでもよく、また突き刺し部61と離れた
図6(ハ)の基端側周面62に限って形成されていてもよい。尚、軸体6の前記基端部分65は略同径としたが、前記溝63を形成する箇所は、溝形状が勿論切り欠かれている。
【0017】
かくして、上述した前記覆い体1と別体の前記突き刺し棒4とを備えて、
図2のごとく上板部分の上面21a側から突き刺し部61を前記透孔210へ挿通し、さらに密閉缶9の側面91に該突き刺し部61の先端と共に前記枠部3の下縁35を当接させ(
図3)、前記棒体5の他端面53をたたいて、
図4のような密閉缶9に突抜け孔90をあけることのできる所望の孔あけ具Pになる。符号Cは残圧ガスGが存在する密閉缶9の中空部を示す。
【0018】
ここでは、永久磁石の環体7をさらに具備し、且つ前記棒体5を、鉄,ニッケル,コバルト及びその合金などのように磁石に強く引き付けられる強磁性体にして、より使い易い孔あけ具Pとする。透孔210に環孔70を合わせ、且つ上板部分の上面21aに該透孔210を取囲む永久磁石の環体7を固着している。環体7は固体磁石又は可撓性磁石で、磁石は磁力が強力なNd,Sm等のレアアースを含む希土類磁石や希土類鉄磁石が好ましく、本実施形態もこれらの固体磁石を採用する。
さらに上板部分の上面21a側から環孔70,透孔210への突き刺し部61の挿通に伴い、軸体6がつながる棒体の一端面51にして、軸体6よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分511が、
図2,
図3のごとく環体7の頂面73に係止される構成とする。
【0019】
環体7は
図1~
図3のようなリング状体である。環孔70と透孔210は略同径で、且つ孔中心が略一致する。上板部分の上面21a側から環孔70,透孔210へ突き刺し部61を挿通して、端面部分511が環体7の頂面73に係止されると、軸体6の基端側周面62に環体7の内周面72が近接又は当接する。突き刺し部61を透孔210に挿入していく途中で、棒体5の端面部分511が環体7へ
円滑に磁力吸引されて環体7に吸着係止され、上板部分21に対し突き刺し棒4が起立保持される。棒体の一端面51に対し環体7の磁力吸引が働き、
図2のように密閉缶9の側面91に突抜け孔90をあけるスタンバイ状態の孔あけ具Pになる。環体7の磁力吸着によって棒体5が上板部分21に対し自律的に起立し、突抜け孔90の孔あけ作業が行い易くなっている。
【0020】
加えて、本実施形態は、環板片付き孔あき透視可能フィルム8を備えて、塗料用スプレー缶にも対応可能にしている。環板片付き孔あき透視可能フィルム8は、
図7のごとく、上板部分の下面21b側に配して、覆い体1の外方へ両側がはみ出る大きさのフィルム811の略中央に抜孔810を設け、且つ該抜孔810を取囲む鉄等の磁石に強く引き付けられる強磁性体の環板片82がフィルム811の一方の面に貼着される。環板片82の環板孔820と抜孔810の孔径を略同径とし、且つ双方の孔中心を略一致させ、環板片付き孔あき透視可能フィルム8の環板片82が、上板部分の下面21b側から環体7に磁力吸着されて、前記透孔210に抜孔810を合わせられるようになっている。そうして、覆い体1の内面に孔あき透視可能フィルム81を沿わせながら、孔あき透視可能フィルム81に係るフィルム短辺811b側が枠部3内に収まる一方、フィルム長辺811a側のフィルム端縁81Eが
図7のごとく枠部3外へはみ出る大きさにする。
【0021】
斯かる構成により、孔あけ具Pで塗料用スプレー缶に突抜け孔90をあけた際、塗料が噴出して上板部分21を汚すのを孔あき透視可能フィルム81がブロックする。上板部分21が塗料で汚れてしまって、覆い体1が使えなくなるのを防ぐ。枠部3内の孔あき透視可能フィルム81が塗料で汚れても、透視を必要とする上板部分21は汚さない。また、枠部3外に在るフィルム端縁81Eは汚れないので、該フィルム端縁81Eを摘んで覆い体1から環板片付き孔あき透視可能フィルム8の撤去が容易となる。透視可能フィルム811は覆い体1に比べれば低コストで交換し易い。
かくして、環板片付き孔あき透視可能フィルム8を備えれば、密閉缶9が化粧用やエアコン洗浄用等だけでなく、着色塗料用スプレー缶等の残圧抜きにも適用可能な所望の孔あけ具Pが出来上がる。
【0022】
(2)実施形態2
本実施形態は、実施形態1の覆い体1に環体7を設ける代わりにナットNが備わる孔あけ具Pである。実施形態1は棒体5を強磁性体としたが、これに加えて、軸体6の基端部分65で、且つ透孔210への突き刺し部61の挿通に伴って、上板部分の下面21b側に現れる基端部分65に雄螺子部65aを形成する(
図8)。そして、上板部分の上面21a側から前記透孔210への前記突き刺し部61の挿通に伴い、前記軸体6と結合する前記棒体の一端面51で、該軸体6よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分511が前記透孔210周りの上板部分21に係止される。上板部分21の裏面側に現れた突き刺し部61の先端からナットNを軸体6に嵌め入れ、該雄螺子部65aにナットNの雌螺子部N1を螺着することにより、覆い体1に突き刺し棒4が固定一体化される孔あけ具Pになる。
【0023】
また、着色塗料用スプレー缶等の残圧抜きにも適用可能な孔あけ具Pにする場合は、前記環板片付き孔あき透視可能フィルム8に代えて、環板片82なしの孔あき透視可能フィルム81が用意される。上板部分21の下面21b側に配して、覆い体1の外方へ両側端縁81Eがはみ出る大きさの透視可能フィルム811の略中央に抜孔810が設けられた孔あき透視可能フィルム81を、さらに具備する。透孔210に抜孔810の孔を合わせ、且つ上板部分21の上面21a側から突き刺し部61及び雄螺子部65aを透孔210と共に該抜孔810へ挿通し、挿通し終えたその雄螺子部65aに軸体6の先端から嵌め込むナットNの雌螺子部N1を螺着できる。かくして、着色塗料用スプレー缶にも対応できる所望の孔あけ具Pが出来上がる(
図9)。
他の構成は実施形態1と同様で、その説明を省く。実施形態1と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0024】
(3)効果
このように構成した密閉缶の孔あけ具Pは、密閉缶9にガス抜き用の孔をあけたい箇所に突き刺し棒4の先端を突き立て、突抜け孔90を形成する状況を、透視可能な上板部分21、さらに孔あき透視可能フィルム81がある場合はこれをも介して、視認できる。したがって、孔あけしたい密閉缶9の狙いの箇所へ突き刺し棒4の先端が正しく当たっているかどうか確かめようがなかった従来器具と比べて、安全且つ的確に突抜け孔90を設けることができる(
図3,
図7)。
【0025】
そして、特許文献1の穴あけ器に比べ、小型化でき低コスト化できる孔あけ具Pになる。また、
図2~
図4のごとく、密閉缶9の周側面91に枠部下縁35を当てて覆い体1で覆ってから、該周側面91に突抜け孔90を形成することができるので、突抜け孔90から缶内残圧ガスGが勢いよく噴出しても身を守ることができる。枠部3が連続気泡フォームの気泡構造体を有する発泡プラスチック製であると、噴出した缶内残圧ガスGが、勢いよく噴出しても、覆い体1内をバッファにした後、連続気泡フォームの枠部3を通って枠部外方の四方への拡がりにより、噴出ガス速度が弱まって安全になる(
図5)。密閉缶9が塗料用スプレー缶の場合でも、作業者の衣類に塗料を付着させず、効を奏する。
また、クッション性ある枠部3が密閉缶9の周側面91に当接し易いことから、エアコン洗浄スプレー等の大きな口径の密閉缶9から化粧用スプレーの小さな口径の密閉缶9にまで、幅広く適用できる。
【0026】
加えて、特許文献1等をはじめとする従来の穴あけ器は、密閉缶9に突針が突き刺さって突抜け孔90ができても、突抜け孔90を形成する密閉缶9の部分に突針が密着し、突針でシールしているような状態となる。よって、密閉缶9内に在る残圧ガスGのガス抜きがうまくいかないことがあった。
これに対し、本孔あけ具Pは、突き刺し部61よりも軸体6の基端側周面62に、溝63が軸方向に形成されているので、棒体5の他端面53をたたいて、密閉缶9に突抜け孔90を突き刺し部61であけ、該軸体6の基端側がそのまま密閉缶9内へ入り込んでいけば、溝63を通ってガス抜きがスムーズにできる(
図3~
図5)。密閉缶9内にある残圧の急な噴出に驚くこともない。
【0027】
さらに、上板部分の上面21aに永久磁石の環体7を固着し、且つ棒体5を強磁性体として、上板部分の上面21a側から環孔70,透孔210への突き刺し部61の挿通に伴って、軸体6がつながる前記棒体の一端面51で、該軸体6よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分511が、環体7に係止されると、使い勝手に優れる孔あけ具Pとなる。上板部分の上面21a側から環孔70,透孔210へ突き刺し部61を挿通していくと、環体7に近づくにつれ棒体の一端面51が磁力吸着によって引き寄せられ、且つ該環体7に係止されて、板状部2に対し突き刺し棒4が自律的に起立するので、孔あけ作業が簡単にできる(
図2)。
また、軸体6と結合する棒体の一端面51で、該軸体6よりも軸半径外方向に出っ張る端面部分511が透孔210周りの上板部分21に係止される実施形態2にあっては、上板部分21に対し突き刺し棒4を起立保持できる。棒体の一端面51から突き出る該軸体6の基端部分65にして、且つ透孔210への突き刺し部61の挿通に伴って、上板部分の下面21b側に現れる該基端部分65に雄螺子部65aが形成され、該雄螺子部65aにナットNの雌螺子部N1を螺着すると、板状部2に対し突き刺し棒4を固定一体化して、より確実に起立保持させた作業時の孔あけ具Pが出来上がる(
図9)。
【0028】
さらにいえば、実施形態1において、環板片付き孔あき透視可能フィルム8を備え、環板片付き孔あき透視可能フィルム8の環板片82を、上板部分の下面21b側から環体7に磁力吸着させて、透孔210に抜孔810の孔を合わすと、
図7のように透視可能フィルム811が覆い体1の内面側を被って、塗料用スプレー缶の残留ガスGを抜く作業で、透視を必要とする上板部分21が塗料で汚されない。突抜け孔90を設けた時に塗料が噴出し飛び散っても、上板部分21へ付着する前に、低コストで交換容易な透視可能フィルム811がブロックし、これに塗料を付着させることができる。
実施形態2においても、上板部分の下面21b側に配して、前記覆い体1の外方へ両側端縁81Eがはみ出る大きさのフィルム811の中央に抜孔810が設けられた孔あき透視可能フィルム81を備え、透孔210に抜孔810を合わせ、且つ上板部分21の上面21a側から突き刺し部61及び雄螺子部65aを透孔210と共に抜孔810へ挿通し、挿通し終えたその雄螺子部65aにナットNの雌螺子部N1を螺着すると、塗料用スプレー缶の残圧ガスGをもガス抜きできる。実施形態1と同様、突抜け孔90を設けた時に塗料が噴出し飛び散っても、上板部分21に付着する前に、低コストで交換容易な孔あき透視可能フィルム81が阻止し、これに塗料を付着させることができる。
以上のごとく、本密閉缶の孔あけ具Pは、上述した種々の優れた効果を発揮し、多大な効を奏する。
【0029】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。覆い体1,板状部2,枠部3,突き刺し棒4,棒体5,軸体6,ナットN,環体7,環板片付き透視可能フィルム8,孔あき透視可能フィルム81,密閉缶9等の形状,大きさ,個数,材料,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。
【符号の説明】
【0030】
1 覆い体
2 板状部
210 透孔
3 枠部
4 突き刺し棒
5 棒体
61 突き刺し部
62 軸体の基端側周面
65 軸体の基端部分
65a 雄螺子部
7 環体
70 環孔
8 環板片付き孔あき透視可能フィルム
81 孔あき透視可能フィルム
82 環板片
9 密閉缶
90 突抜け孔
91 側面
N ナット
P 密閉缶の孔あけ具
【要約】
【課題】突き刺し棒の先端を確かめながら密閉缶の孔あけができ、且つ密閉缶の残圧ガスを円滑に抜き、仮に残圧ガスが噴出しても安全な密閉缶の孔あけ具を提供する。
【解決手段】透視可能な上板部分21の板厚方向に透孔210が貫通した板状部2の側周縁を、弾性体の枠部3で囲って固着し、且つ該枠部3が該上板部分21の下方向へ延在してなる逆椀状の覆い体1と、棒体5の一端面51から該棒体の棒軸線上に軸体6が突き出て、該軸体の先端部分611が尖った突き刺し部61を形成し、且つ該軸体の基端側周面62に溝63が軸方向に形成された突き刺し棒4と、を具備し、前記上板部分21の上面側から突き刺し部4を前記透孔210へ挿通し、且つ密閉缶9の側面91に前記枠部3の下縁を当接させ、前記棒体5の他端面53をたたいて密閉缶9に突抜け孔90があけられるようにした。
【選択図】
図3