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特許7062860パンツタイプ吸収性物品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】パンツタイプ吸収性物品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20220426BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20220426BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61F13/49 311Z
A61F13/496
A61F13/49 400
A61F13/49 312Z
A61F13/15 311Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017089891
(22)【出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2018186902
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2020-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196645
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 陽子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 桂子
【審査官】原田 愛子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/101195(WO,A1)
【文献】特表2019-536549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/49
A61F 13/496
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側胴回り領域及び後側胴回り領域の上部にウエスト開口部を形成し、前側胴回り領域
及び後側胴回り領域の間の股領域の左右両側にレッグ開口部を形成した、パンツタイプ吸性物品であって、
前記パンツタイプ吸収性物品は、
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びにトップシート及びバックシートの間に配置される吸収体、から構成される吸収性本体と、
パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成する外装不織布シート、及び外装不織布シートに対して身体側に設けられる内装不織布シート、から構成される外装体と、を有し、
前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域においては、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の伸縮性弾性部材が配置されて、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合されており、
パンツタイプ吸収性物品を、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分し、OとPの中間のサイズであるO-Pのパンツタイプ吸収性物品であって、
伸縮性弾性部材を配設する前のO-Pのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一であり、
さらに、前記ウエスト開口部から前記レッグ開口部にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分した場合において、
前記第5領域は伸縮性弾性部材を配設せず、
前記第6領域はクロッチ部伸縮性弾性部材を配設し、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも小さく、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも小さく、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、120%以上135%以下であり、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、110%以上125%以下であり、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、115%以上140%以下である
パンツタイプ吸収性物品。
【請求項2】
前側胴回り領域及び後側胴回り領域の上部にウエスト開口部を形成し、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の間の股領域の左右両側にレッグ開口部を形成した、パンツタイプ吸収性物品であって、
前記パンツタイプ吸収性物品は、
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びにトップシート及びバックシートの間に配置される吸収体、から構成される吸収性本体と、
パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成する外装不織布シート、及び外装不織布シートに対して身体側に設けられる内装不織布シート、から構成される外装体と、を有し、
前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域においては、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の伸縮性弾性部材が配置されて、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合されており、
さらに、パンツタイプ吸収性物品を、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分し、PとQの中間のサイズであるP-Qのパンツタイプ吸収性物品であって、
伸縮性弾性部材を配設する前のP-Qのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一であり、
さらに、前記ウエスト開口部から前記レッグ開口部にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分した場合において、
前記第5領域は伸縮性弾性部材を配設せず、
前記第6領域はクロッチ部伸縮性弾性部材を配設し、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも大きく、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも大きく、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、60%以上75%以下であり、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、80%以上90%以下であり、
Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、55%以上80%以下である、パンツタイプ吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体を前記トップシートと前記バックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートを接合して前記収性本体を作製する工程と、
前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域において、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の前記伸縮性弾性部材を配置し、前記ウエスト開口部から前記レッグ開口部にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分した場合、前記第5領域は前記伸縮性弾性部材を配置せず、前記第6領域はクロッチ部伸縮性弾性部材を配置し、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合する工程と、
前記外装体の身体側に前記吸収性本体を配設する工程と、
前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域の両側縁を接続する工程と、を有するパンツタイプ吸収性物品の製造方法であって、
O-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の製造において、Pのパンツタイプ吸収性物品と同じ製造装置を用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパンツタイプ吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低コストで、装着性及び着用感に優れる、パンツタイプ吸収性物品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幼児、成人及び病人の排泄物を吸収するため、パンツ型の紙おむつ(パンツタイプ吸収性物品)が使用されている。パンツタイプ吸収性物品は、ウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成するとともに、排泄物を吸収する吸収性本体とその支持部材である外装体を有し、吸収性本体が前後から着用者の股間部を覆っている。そして、レッグ開口部に着用者の両足を入れ、紙おむつ本体を胴回りへ引っ張り上げて着用する。
【0003】
このようなパンツタイプ吸収性物品においては、幼児用及び成人用ともに、着用者の体型に応じて、様々なサイズの商品が販売されており、例えば、サイズに応じて小さいものから順に、幼児用としては、SS、S、M、L、XL(BIG)、BIGより大きいスーパーBIGの6種類、成人用としては、SS、S、S-M(SとMの中間サイズ)、M、M-L(MとLの中間サイズ)、L、LLの7種類、のサイズに分類される。
【0004】
ここで、特に、成人用の場合には、着用者のウエスト回り、胴回り、レッグ回りの体型は、男性と女性に大きな差があり、画一的なサイズ構成では、全ての体型に適合させることが困難であった。また、成人用のパンツタイプ吸収性物品をアウターとして、専用の尿取りパッドを併用する場合も増えてきており、この場合、アウターの中に装着する尿取りパッドのサイズや厚さ及び着用者の体型を考慮して、アウターであるパンツタイプ吸収性物品のサイズを選択しなければならないため、従来の画一的なパンツタイプ吸収性物品のサイズ構成では、これらの使用実態に適しているとは言い難く、更に多様なサイズのパンツタイプ吸収性物品の供給が求められている。
【0005】
一方で、種々のサイズの製品を製造するためには、各サイズごとに製品寸法が異なるため、各サイズごとに適した専用機により製造するか、1台で複数のサイズのパンツタイプ吸収性物品を製造することが行わなわければならない。しかし、サイズごとの専用機を設けることは、多大な設備投資が伴うものであり、逆に、1台の製造設備で複数のサイズを製造する場合には、各サイズチェンジのための作業労力、調整にかかる時間、資材ロス等が膨大となり、製造コストに多大な影響をもたらすことになる。よって、一つのサイズで、複数のサイズをカバーできるパンツタイプ吸収性物品の検討がなされている。
【0006】
このような検討がなされてきたパンツタイプ吸収性物品として、特許文献1には、パンツタイプ吸収性物品の左右両腰に対応した各接合位置の間隔を変更することによって、胴回り周長及びレッグ回り周長の異なるパンツタイプ吸収性物品を製造することを特徴とするパンツタイプ吸収性物品の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、パンツタイプ吸収性物品の両側部のウエスト開口部近傍およびレッグ開口部近傍の外表面に、パンツタイプ吸収性物品の他の外表面と着脱自在で、ウエスト開口サイズ又はレッグ開口サイズを調節可能な締結手段を設けたパンツタイプ吸収性物品が開示されている。さらに、特許文献3には、パンツタイプ吸収性物品のウエスト開口部とレッグ開口部の上端との間に位置する胴回り部のうち、両側部に、胴回り方向の一部の範囲として定まるマチ部がそれぞれ設けられるとともに、両端部がマチ部の胴回り方向一方側及び他方側にそれぞれ固定された固定部が設けられたパンツタイプ吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平8-56988号公報
【文献】特開2008-142357号公報
【文献】特開2011-72429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1から3に記載のパンツタイプ吸収性物品においても、サイズを調整する際には締結手段やマチ部の調整が必要であり、幼児用においては保護者が、成人用においては介護者が、調整を行わなければならない場合があり、装着性が十分ではないという問題があり、さらに、締結手段やマチ部を設けたことによる着用時の違和感が発生することがあり、着用感についても十分ではないという問題があった。そこで、本発明は、低コストで、装着性及び着用感に優れるパンツタイプ吸収性物品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、所定の着圧比率及び伸張率比率を調整した、パンツタイプ吸収性物品によれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の上部にウエスト開口部を形成し、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の間の股領域の左右両側にレッグ開口部を形成した、パンツタイプ吸収性物品であって、前記パンツタイプ吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びにトップシート及びバックシートの間に配置される吸収体、から構成される吸収性本体と、パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成する外装不織布シート、及び外装不織布シートに対して身体側に設けられる内装不織布シート、から構成される外装体と、を有し、前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域においては、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の伸縮性弾性部材が配置されて、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合されており、パンツタイプ吸収性物品を、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分し、OとPの中間のサイズであるO-Pのパンツタイプ吸収性物品であって、伸縮性弾性部材を配設する前のO-Pのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一であり、さらに、前記ウエスト開口部から前記レッグ開口部にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分した場合において、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも小さく、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも小さい、パンツタイプ吸収性物品である。
【0011】
(2)本発明の第2の態様は、(1)に記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、120%以上135%以下であることを特徴とするものである。
【0012】
(3)本発明の第3の態様は、(1)又は(2)に記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、115%以上140%以下であることを特徴とするものである。
【0013】
(4)本発明の第4の態様は、(1)から(3)のいずれかに記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、110%以上125%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
(5)本発明の第5の態様は、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の上部にウエスト開口部を形成し、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の間の股領域の左右両側にレッグ開口部を形成した、パンツタイプ吸収性物品であって、前記パンツタイプ吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、並びにトップシート及びバックシートの間に配置される吸収体、から構成される吸収性本体と、パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成する外装不織布シート、及び外装不織布シートに対して身体側に設けられる内装不織布シート、から構成される外装体と、を有し、前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域においては、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の伸縮性弾性部材が配置されて、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合されており、さらに、パンツタイプ吸収性物品を、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分し、PとQの中間のサイズであるP-Qのパンツタイプ吸収性物品であって、伸縮性弾性部材を配設する前のP-Qのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一であり、さらに、前記ウエスト開口部から前記レッグ開口部にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分した場合において、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも大きく、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも大きい、パンツタイプ吸収性物品である。
【0015】
(6)本発明の第6の態様は、(5)に記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、60%以上75%以下であることを特徴とするものである。
【0016】
(7)本発明の第7の態様は、(5)又は(6)に記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、55%以上80%以下であることを特徴とするものである。
【0017】
(8)本発明の第8の態様は、(5)から(7)のいずれかに記載のパンツタイプ吸収性物品であって、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、80%以上90%以下であることを特徴とするものである。
【0018】
(9)本発明の第9の態様は、前記吸収体を前記トップシートと前記バックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートを接合して前記吸収性本体を作製する工程と、前記ウエスト開口部の周縁、前記レッグ開口部の周縁、前記前側胴回り領域、前記後側胴回り領域、及び前記股領域において、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートの間に、複数の前記伸縮性弾性部材を配置し、前記外装不織布シート及び前記内装不織布シートに接合する工程と、前記外装体の身体側に前記吸収性本体を配設する工程と、前記前側胴回り領域及び前記後側胴回り領域の両側縁を接続する工程と、を有する(1)から(8)のいずれかに記載のパンツタイプ吸収性物品の製造方法であって、O-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の製造において、Pのパンツタイプ吸収性物品と同じ製造装置を用いることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明のパンツタイプ吸収性物品は、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分した場合において、OとPの中間のサイズであるO-P、又は、PとQの中間のサイズであるP-Q、のパンツタイプ吸収性物品であり、伸縮性弾性部材を配設する前のO-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法とそれぞれ同一であるため、中間サイズのパンツタイプ吸収性物品を製造するために、新たな設備を設ける必要がなく、低コストである。さらに、本発明のパンツタイプ吸収性物品は、伸縮性弾性部材により所定の着圧比率及び伸張率比率が調整されており、締結手段やマチ部を設ける必要がなく、また、着用者が装着する際にサイズを調整する必要がないため、装着性及び着用感に優れる。よって、本発明によれば、低コストで、装着性及び着用感に優れるパンツタイプ吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のパンツタイプ吸収性物品の斜視図である。
図2】本発明のパンツタイプ吸収性物品の展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係るパンツタイプ吸収性物品について説明する。なお、パンツタイプ吸収性物品を着用したときに着用者の腹側となる位置を「前」又は「前側」と称し、着用者の背側となる位置を「後」又は「後側」と称する。また、パンツタイプ吸収性物品を着用したときに着用者の肌側となる面を「内側」と称する。
【0022】
<パンツタイプ吸収性物品>
図1は、本発明のパンツタイプ吸収性物品1の斜視図であり、図2は、本発明のパンツタイプ吸収性物品1の展開図である。パンツタイプ吸収性物品1は、着用者の股間部を前後から覆う前後方向に細長い形態を有する吸収性本体20と、吸収性本体20の外側に重なりつつ吸収性本体20の周囲に延びてパンツタイプ吸収性物品1の外形形状を構成する外装体30と、を有している。そして、図1に示すように、外装体30によりその外形形状が構成されるパンツタイプ吸収性物品1は、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の上部にウエスト開口部11が、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の間の股領域14の左右両側にレッグ開口部12が形成されており、大きく区分して、着用者の腹部に当接する前側胴回り領域13、着用者の背部に当接する後側胴回り領域15、及び吸収性本体20が配置された股領域14に区分される。
【0023】
[吸収性本体]
図2に示すように、吸収性本体20は、液透過性のトップシート24と、液不透過性のバックシート25と、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29とを含む。
【0024】
(トップシート)
トップシート24は、体液が吸収体29へと移動するような液透過性を備えた基材から形成すればよく、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布等の不織布、サーマルボンド/スパンボンドを積層した複合不織布等の親水性の不織布材料等、感触が柔らかで肌に刺激を与えない材料から構成される。また、トップシート24には、液透過性を向上させるために、表面にエンボス加工や穿孔加工を施してもよい。これらのエンボス加工や穿孔加工を施すための方法としては、公知の方法を制限なく実施することができる。また、肌への刺激を低減させるため、トップシート24には、ローション、酸化防止剤、抗炎症成分、pH調整剤、抗菌剤、保湿剤等を含有させてもよい。さらに、強度及び加工性の点から、トップシート24の坪量は、18g/m以上40g/m以下であることが好ましい。トップシート24の形状としては特に制限はないが、漏れがないように体液を吸収体29へと誘導するために必要とされる、吸収体29を覆う形状であればよい。
【0025】
(バックシート)
バックシート25は、吸収体29が保持している体液が衣類を濡らさないような液不透過性を備えた基材を用いて形成すればよく、通気性又は非通気性の樹脂フィルムから形成される。ここで、使用できる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンの複合フィルム等が挙げられる。強度及び加工性の点から、バックシート25の坪量は、15g/m以上40g/m以下であることが好ましい。また、装着時の蒸れを防止するため、通気性を有する樹脂フィルムをバックシート25として使用することが好ましい。バックシート25に通気性を備えさせるためには、例えば、基材の樹脂フィルムにフィラーを配合したり、バックシート25にエンボス加工を施したりすればよい。なお、フィラーとしては炭酸カルシウムを挙げることができ、その配合方法は、公知の方法を制限なく行うことができる。
【0026】
(吸収体)
吸収性本体20は、トップシート24及びバックシート25の間に配置される吸収体29を有している。吸収体29は、基材としての吸収性繊維と、高吸水性ポリマー(SAP)と、を含有する。吸収性繊維は、一般に生理用ナプキンやおむつ、尿取りパッド等の吸収性物品に使用されるものであれば特に制限はなく、例えば、フラッフパルプ、コットン、レーヨン、アセテート、ティシュ、吸収紙、親水性不織布等を挙げることができる。これらの中でも、吸収性の観点から、フラッフパルプを使用することが好ましい。斯かるフラッフパルプとしては、木材パルプ、合成繊維、ポリマー繊維、非木材パルプ等を綿状に解繊したものを挙げることができる。吸収体29の吸収性繊維は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、50g/m以上800g/m以下の坪量とすることが好ましい。
【0027】
吸収体29に使用される高吸水性ポリマーとしては、体液を吸収し、かつ、逆流を防止できるものであれば特に制限はなく、ポリアクリル酸ナトリウム系、ポリアスパラギン酸塩系、(デンプン-アクリル酸)グラフト共重合体、(アクリル酸-ビニルアルコール)共重合体、(イソブチレン-無水マレイン酸)共重合体及びそのケン化物等の材料から形成されたものを使用することができる。これらの中でも、重量当たりの吸収量の観点から、ポリアクリル酸ナトリウム系が好ましい。吸収体29のSAP量は、吸収性能及び肌触りを損なわないよう、10g/m以上500g/m以下の坪量とすることが好ましく、15質量%以上50質量%以下の含有量とすることが好ましい。
【0028】
吸収体29における吸収性繊維及びSAPの形態は、吸収性繊維中にSAP粒子を混合して形成した積層マットの形態であることが好ましい。また、SAP粒子の漏洩防止や吸収体29の形状の安定化の目的から、吸収体29をキャリアシートに包むことが好ましい。キャリアシートの基材としては親水性を有するものであればよく、ティシュ、吸収紙、エアレイド不織布等の親水性不織布を挙げることができる。キャリアシートを複数備える場合は、キャリアシートの基材は同一のものであっても異なるものであってもよい。
【0029】
吸収体29は、2層以上の吸収体からなるものであってもよく、例えば、上層吸収体と下層吸収体とを積層してなるものであってもよい。この場合、上層吸収体と下層吸収体の長手方向及び幅方向の寸法は、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より大きくてもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法と同じであってもよく、上層吸収体の寸法が下層吸収体の寸法より小さくてもよい。
【0030】
[外装体]
外装体30は、パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成し、ウエスト開口部11及びレッグ開口部12を形成し、パンツタイプ吸収性物品の外形形状を構成する外装不織布シート301と、外装不織布シート301の身体側の内装不織布シート302から構成される。
【0031】
(外装不織布シート及び内装不織布シート)
外装不織布シート301は、股領域14となる中心線を中心としてほぼ対称な前側胴回り領域13と後側胴回り領域15とを有し、吸収性本体20も上記中心線を中心としてほぼ対称に配置されている。そして、吸収性本体20が内側となるように外装不織布シート301(及び吸収性本体20)が上記中心線で二つ折りにされ、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の両側縁がサイドシール部303を介して接続されている。これにより、外装不織布シート301は、伸縮性のウエスト開口部11と、一対のレッグ開口部12とを形成し、パンツタイプ吸収性物品を全体として着脱可能なパンツ状に構成する。そして、パンツタイプ吸収性物品を着用すると、前側胴回り領域13が着用者の腹側で腰部及び股間部を覆い、後側胴回り領域15が着用者の背側で腰部及び股間部を覆うようになっている。
【0032】
外装不織布シート301の内側には、内装不織布シート302が積層されており、外装体30の強度を高めるようになっている。また、外装体30には、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に加えて、吸収性本体20の周縁を覆う補助シートが設けられ、これが内装不織布シート302に積層されていてもよい。外装不織布シート301及び内装不織布シート302には、サーマルボンド不織布、エアースルー不織布、スパンボンド不織布等の不織布、好ましくはエアースルー不織布又はスパンボンド不織布であって、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなる不織布を用いることができる。これらの不織布を用いる場合、その坪量は、10g/m以上40g/m以下とすればよい。
【0033】
[伸縮性弾性部材]
本発明のパンツタイプ吸収性物品1には、図2に示すように外装不織布シート301及び内装不織布シート302の間において、ウエスト開口部11の周縁にウエスト伸縮性弾性部材311、レッグ開口部12周縁及び股領域14にクロッチ部伸縮性弾性部材312、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15に胴回り伸縮性弾性部材313、が配置されており、これらは、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合されている。なお、内装不織布シート302と伸縮性弾性部材とは、伸縮性弾性部材にのみ介在するホットメルト接着剤を介して互いに接着されていることが好ましい。
【0034】
伸縮性弾性部材を構成する弾性部材としては、例えば、天然ゴム、合成ゴム、ポリウレタン等の糸状、紐状、平型形状のものを適宜使用することができ、その太さは、300dtex以上1500dtex以下であることが好ましい。
【0035】
[パンツタイプ吸収性物品のサイズ]
本発明のパンツタイプ吸収性物品1は、サイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分した場合において、OとPの中間のサイズであるO-P、又は、PとQの中間のサイズであるP-Q、のパンツタイプ吸収性物品である。また、伸縮性弾性部材を配設する前のO-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一である。よって、中間サイズであるパンツタイプ吸収性物品を製造するために、新たな設備を設ける必要がなく、低コスト化を実現できる。
【0036】
[第1領域から第6領域]
さらに、本発明のパンツタイプ吸収性物品1は、図1及び図2に示すように、ウエスト開口部11からレッグ開口部12にかけて、長手方向に、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域、第5領域及び第6領域に6等分される。本発明のパンツタイプ吸収性物品1においては、各領域における後述する着圧比率及び伸張率比率を調整することにより、サイズの調整がなされているため、着用時に締結手段やマチ部を調整する必要がなく、装着性に優れる。
【0037】
[着圧比率]
本発明のパンツタイプ吸収性物品1において、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも小さい。また、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも大きい。このように、伸縮性弾性部材により着圧比率を調整することで、ずり落ち締めつけ感が抑制され、着用感を向上させることができる。より具体的には、上記の着圧比率の調整により、O-Pのパンツタイプ吸収性物品は、Pのパンツタイプ吸収性物品と対比した場合において、ウエスト回りよりも腰回りで支えることを重視した設計となり、着用者の体格が小さい場合であっても、良好にフィットし、ずり落ちを抑制することができる。また、P-Qのパンツタイプ吸収性物品は、Pのパンツタイプ吸収性物品と対比した場合において、ウエスト回りで支えることを重視し、腰回りはゆったりとした設計となり、着用者の体格が大きい場合であっても、締めつけを抑制することができる。なお、伸縮性弾性部材により、着圧比率を調整しているため、新たな設備を設ける必要がなく、低コスト化を実現できる。一方で、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも大きい場合、又は、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の第1領域の着圧比率が、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値よりも小さい場合には、ずり落ちが起こりやすく、また、締めつけを感じ易くなり、装着性及び着用感が低下する。
【0038】
本発明のパンツタイプ吸収性物品1の着圧の測定方法について説明する。着圧の測定には、エイエムアイ・テクノ社製のエアパック式接直圧測定器を用いる。円周800mmの円周の測定位置にエアパックを貼り付け、その上からパンツタイプ吸収性物品を装着し、装着前後のエアパックの圧力差を読み取り着圧とする。第1領域から第6領域の各領域において、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の幅方向中心線と、幅方向両端部と、の各中間地点(計4点)の着圧を測定し、4点の着圧の平均値を各領域の着圧(gf/cm)とする。
【0039】
さらに、装着性及び着用感の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、120%以上135%以下であることが好ましい。当該数値が120%未満である場合には、着用感について、Pのパンツタイプ吸収性物品を着用した場合との差異が感じづらく、135%を超える場合には、装着性、着用感、体液の漏れにくさ等のパンツタイプ吸収性物品に必要な機能のバランスが取りづらくなる。また、装着性及び着用感の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率において、第2領域から第6領域の着圧比率の平均値が、60%以上75%以下であることが好ましい。当該数値が75%を超える場合には、着用感について、Pのパンツタイプ吸収性物品を着用した場合との差異が感じづらく、60%未満の場合には、装着性、着用感、体液の漏れにくさ等のパンツタイプ吸収性物品に必要な機能のバランスが取りづらくなる。
【0040】
さらに、装着性、着用感及び美粧性の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、115%以上140%以下であることが好ましい。当該数値が115%未満である場合には、着用感について、Pのパンツタイプ吸収性物品を着用した場合との差異が感じづらく、140%を超える場合には、装着性、着用感、体液の漏れにくさ等のパンツタイプ吸収性物品に必要な機能のバランスが取りづらくなる。また、装着性、着用感及び美粧性の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各着圧に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各着圧との比率を示す着圧比率が、55%以上80%以下であることが好ましい。当該数値が80%を超える場合には、着用感について、Pのパンツタイプ吸収性物品を着用した場合との差異が感じづらく、55%未満の場合には、装着性、着用感、体液の漏れにくさ等のパンツタイプ吸収性物品に必要な機能のバランスが取りづらくなる。
【0041】
[伸張率比率]
本発明のパンツタイプ吸収性物品1において、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも小さい。また、Pのパンツタイプ吸収性物品の第1領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第1領域の伸張率比率が、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値よりも大きい。このように、伸縮性弾性部材により伸張率比率(%)を調整することで、ずり落ちや締めつけ感が抑制され、着用感を向上させることができる。さらに、伸縮性弾性部材により、伸張率比率を調整しているため、新たな設備を設ける必要がなく、低コスト化を実現できる。なお、伸張率(%)は、パンツタイプ吸収性物品の各領域について、静置状態の幅方向の長さに対する、最大伸張時の幅方向の長さを示す。
【0042】
さらに、装着性及び着用感の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、O-Pのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、110%以上125%以下であることが好ましい。また、装着性及び着用感の観点から、Pのパンツタイプ吸収性物品の第2領域から第6領域の各伸張率に対する、P-Qのパンツタイプ吸収性物品の対応する各領域の各伸張率との比率を示す伸張率比率において、第2領域から第6領域の伸張率比率の平均値が、80%以上90%以下であることが好ましい。
【0043】
[パンツタイプ吸収性物品の製造方法]
パンツタイプ吸収性物品の製造方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、例えば、吸収体29をトップシート24とバックシート25との間に挟持し、トップシート24とバックシート25を接合して吸収性本体20を作製する工程、ウエスト開口部11の周縁、レッグ開口部12の周縁、前側胴回り領域13、後側胴回り領域15、及び股領域14において、外装不織布シート301及び内装不織布シート302の間に、複数の伸縮性弾性部材を配置し、外装不織布シート301及び内装不織布シート302に接合する工程、外装体30の身体側に吸収性本体20を配設する工程、前側胴回り領域13及び後側胴回り領域15の両側縁を、サイドシール部303を介して接続する工程、の順に各工程を経ることで、パンツタイプ吸収性物品を得ることができる。なお、O-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の製造において、伸縮性弾性部材により各サイズを調整するため、O-P又はP-Qのパンツタイプ吸収性物品の製造において、Pのパンツタイプ吸収性物品の製造で用いる製造装置と同じ製造装置を用いることができる。
【0044】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0045】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
(パンツタイプ吸収性物品の作製)
まず、フラッフパルプ及びSAPを混合して、吸収体を準備し、吸収体をトップシートとバックシートとの間に挟持し、トップシートとバックシートの全周に亘ってホットメルト接着剤を用いて固定し、吸収体本体を作製する。次に、ウエスト開口部の周縁、レッグ開口部の周縁、前側胴回り領域、後側胴回り領域、及び股領域において、外装不織布シート及び内装不織布シートの間に、複数の伸縮性弾性部材を配置し、外装不織布シート及び内装不織布シートに接合した。その後、外装体の身体側に吸収性本体を配設し、前側胴回り領域及び後側胴回り領域の両側縁を、サイドシール部を介して接続し、実施例1から2及び参考例1から4のパンツタイプ吸収性物品を得た。なお、トップシートとしては、サーマルボンド不織布を用い、外装不織布シート、及び内装不織布シートとしては、スパンボンド不織布を用い、バックシートとしては、通気性ポリエチレンフィルムを用い、伸縮性弾性部材については、ウエスト伸縮性弾性部材として太さ1240detx、胴回り伸縮性弾性部材として太さ620detx、の糸状の合成ゴムを用いた。
【0047】
さらに、パンツタイプ吸収性物品をサイズに応じて小さいものから順に、O、P、Qに区分し、各実施例及び各参考例では、Pのパンツタイプ吸収性物品、OとPの中間サイズであるO-Pのパンツタイプ吸収性物品、PとQの中間のサイズであるP-Qのパンツタイプ吸収性物品、の3種類のパンツタイプ吸収性物品を用意した。なお、伸縮性弾性部材を配設する前のO-P又はP―Qのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法は、伸縮性弾性部材を配設する前のPのパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向のそれぞれの寸法と同一であり、伸縮性弾性部材により、各領域の着圧及び伸張率を調整することで、表2に記載した着圧比率及び伸張率比率であるO-P及びP-Qのパンツタイプ吸収性物品を得た。伸縮性弾性部材を配設する前のパンツタイプ吸収性物品の展開時の長手方向及び幅方向の寸法を表1に示した。
【0048】
また、表1に記載したように、実施例1、参考例1及び参考例2では、Pのパンツタイプ吸収性物品として、通常販売されている成人用のパンツタイプ吸収性物品のLサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、O-Pのパンツタイプ吸収性物品としてM-Lサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、P-Qのパンツタイプ吸収性物品としてLLサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、をそれぞれ用意した。また、実施例2、参考例3及び参考例4では、Pのパンツタイプ吸収性物品として、通常販売されている成人用パンツタイプ吸収性物品のMサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、O-Pのパンツタイプ吸収性物品としてS-Mサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、P-Qのパンツタイプ吸収性物品としてM-Lサイズに相当するパンツタイプ吸収性物品、をそれぞれ用意した。
【0049】
このようにして得られた各パンツタイプ吸収性物品を用いて、ずり落ち試験及びずり落ち及び締めつけに関するモニターテストの官能評価を行い、結果を表3に示した。
【0050】
(ずり落ち試験:ずり落ち量)
円周800mmの円筒にウエスト開口部から150mmの位置が円筒の下端部に当たるように、パンツタイプ吸収性物品を装着する。その後、円筒の上部からパンツタイプ吸収性物品の吸収体中央部に600mlの生理食塩水を吸収させ、吸水開始から60秒後におけるパンツタイプ吸水性物品の下降した長さをずり落ち量(mm)とした。
【0051】
(官能評価:ずり落ち感)
Pのパンツタイプ吸収性物品がMサイズに相当する場合には、ウエストサイズが60cm以上90cm以下の10名の成人をパネラーとし、Pのパンツタイプ吸収性物品がLサイズに相当する場合には、ウエストサイズが80cm以上130cm以下の10名の成人をパネラーとした。各パネラーがO-P、P、P-Qのパンツタイプ吸収性物品をそれぞれ着用して生活し、以下の基準により評価を行った。
〇:「ずり落ちを感じる」がいないか、1人以上3人以下のとき
△:「ずり落ちを感じる」が4人以上7人以下のとき
×:「ずり落ちを感じる」が8人以上10名以下のとき
【0052】
(官能評価:締めつけ感)
Pのパンツタイプ吸収性物品がMサイズに相当する場合には、ウエストサイズが60cm以上90cm以下の10名の成人をパネラーとし、Pのパンツタイプ吸収性物品がLサイズに相当する場合には、ウエストサイズが80cm以上130cm以下の10名の成人をパネラーとした。各パネラーがO-P、P、P-Qのパンツタイプ吸収性物品をそれぞれ着用して生活し、以下の基準により評価を行った。
〇:「強い締めつけを感じる」がいないか、1人以上3人以下のとき
△:「強い締めつけを感じる」が4人以上7人以下のとき
×:「強い締めつけを感じる」が8人以上10名以下のとき
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
以上より、本発明によれば、低コストで、装着性及び着用感に優れるパンツタイプ吸収性物品を提供することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 パンツタイプ吸収性物品
11 ウエスト開口部
12 レッグ開口部
13 前側胴回り領域
14 股領域
15 後側胴回り領域
20 吸収性本体
24 トップシート
25 バックシート
29 吸収体
30 外装体
301 外装不織布シート
302 内装不織布シート
303 サイドシール部
311 ウエスト伸縮性弾性部材
312 クロッチ部伸縮性弾性部材
313 胴回り伸縮性弾性部材
図1
図2