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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】水中シリコーン型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/895 20060101AFI20220426BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20220426BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20220426BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
A61K8/895
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/898
A61K8/06
A61Q19/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019527450
(86)(22)【出願日】2016-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2016082643
(87)【国際公開番号】W WO2018114014
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2019-11-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【弁理士】
【氏名又は名称】江守 英太
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/148892(WO,A1)
【文献】特表2008-544961(JP,A)
【文献】特開2016-204307(JP,A)
【文献】特表2014-520804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
B01J 13/02-22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、少なくとも一種の多価アルコール、カプセル化されたポリオルガノシロキサン粒子を含むポリオルガノシロキサン分散物、並びに親水性ポリマーを含有する透明又は半透明な水中シリコーン型化粧料であって、
前記ポリオルガノシロキサン粒子は、ポリマーシェルで覆われたポリオルガノシロキサンのコアを含み、
前記親水性ポリマーは、水に溶解するか又は水に膨潤するポリサッカライドであり(ただし、前記ポリサッカライドはデンプン性ポリサッカライドを含まない)、
前記ポリオルガノシロキサンのコアは、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーであり、前記ポリマーシェルは、カチオン性ポリマー及びアニオン性ポリマーを含有する、
水中シリコーン型化粧料。
【請求項2】
水及び多価アルコールを含む水性媒体を含有し、ポリオルガノシロキサン粒子が連続相を形成する前記水性媒体中に分散している、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項3】
水性媒体の含有量が化粧料の全質量基準で50~95質量%である、請求項2に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項4】
多価アルコールがグリセリンである、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項5】
多価アルコールに対する水の質量比が0.3~8.0である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項6】
水性媒体に対するポリオルガノシロキサン分散物の質量比が0.05~1.0質量部である、請求項2に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項7】
ポリオルガノシロキサン粒子の含有量が10~20重量%である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項8】
多価アルコールの含有量が15~60重量%である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項9】
水の含有量が20~70重量%である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項10】
25℃における粘度が250~100,000mPa・sである、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項11】
ポリサッカライドが非デンプン性ポリサッカライド、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、プルラン、アガー、アガロースとアガロペクチンからなる紅藻由来のポリサッカライド、及びシロキクラゲ多糖体からなる群より選択される、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項12】
ポリサッカライドがプルランである、請求項11に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項13】
親水性ポリマーの含有量が0.001~5.0質量%である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項14】
水、多価アルコール、ポリオルガノシロキサン粒子及び親水性ポリマーの混合物が化粧料の重量に対する重量単位で少なくとも90重量%である、請求項1に記載の水中シリコーン型化粧料。
【請求項15】
請求項1に記載の透明又は半透明な水中シリコーン型化粧料を調製する方法であって、前記方法が、
水及び第一の多価アルコールを混合して(a)水性媒体を調製するステップ、
前記水性媒体に、水及び第二の多価アルコール(第二の多価アルコールは第一の多価アルコールと同一又は異なっていてもよい)に分散したポリオルガノシロキサン粒子の(b)ポリオルガノシロキサン分散物を添加するステップを含み、
前記(a)水性媒体と前記(b)ポリオルガノシロキサン分散物との屈折率の差は±0.05以内である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中シリコーン型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
スキンケアに用いられる、グリセリンなどの多価アルコールを含有する化粧品は、ナリシング効果及び潤い効果を有することから多くの消費者に好まれている。これらの製品のいくつかは、オイル成分のみを含有し、肌へのリフレッシュ効果に乏しく、重い感じ、油っぽい感じ及びすべり感を有している。グリセリンを含有する他の製品が、肌に高い水感を与える水型製品の形態で開発されているものの、ナリシング効果が低く、肌に高いべたつき感を与える。これら2つのタイプの長所を併せ持つ化粧料として、オイル成分に水を組み合わせた乳化化粧料が提案されている。水、及びグリセリンなどの多価アルコールを含有し、ナリシング効果、水感、肌へのべたつき感とすべり感のなさを同時に併せ持つ化粧料の提案が必要とされている。
【0003】
一方で多価アルコールの含有量を増加させながら、多価アルコールを含有する化粧料のナリシング効果を増大させることも必要とされている。しかしながら、本発明者らは、透明かつ多量のグリセリンを含有する水中シリコーン型化粧料が、驚くべきことにナリシング効果と水感に乏しく、肌にべたつき感とすべり感を与えることを見出している。
【0004】
また、乳化化粧料は頻繁に白濁している一方で、オイル製品及びヒドロゲルは消費者にとって透明に見える。したがって、化粧料が透明であることも必要とされている。透明性の改善された水中油型化粧料がWO2013/111441、US2015/0272861及び特開2004-51574号公報において提案されている。これらの乳化物は界面活性剤、オイルなどの脂肪化合物、及び/又はワックスなどのオイルゲル化剤を含有し、その結果、上述したような満足のいくケアや感触特性に欠けている。実際、水中油型乳化化粧料を透明な外観とするためには、近似した屈折率を有するオイル成分と多価アルコールの含有量を高める必要があるが、オイル成分の含有量が高いと、エマルジョン中で安定的に分散することができない。そのため、先行技術の乳化化粧料のように、界面活性剤やゲル化剤が相当量必要とされるが、これらの添加剤は肌に刺激やべたつき感をもたらすという問題がある。他方、多価アルコールの含有量が高いと、肌に不快なべたつき感を与えてしまう。
【0005】
本発明の化粧料はこのような問題点が解消されており、ナリシング効果、水感、肌へのべたつき感とすべり感のなさを同時に併せ持つ水中シリコーン型化粧料を提供する。また、このような水中シリコーン型化粧料は、有利に透明又は半透明であり、長時間にわたって安定である。化粧料についてこのような利点の組合せが得られるのは初めてのことである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様は、水、少なくとも一種の多価アルコール、カプセル化されたポリオルガノシロキサン粒子を含むポリオルガノシロキサン分散物、並びに水及び多価アルコールの混合物に好適に溶解する親水性ポリマーを含有する水中シリコーン型化粧料であって、上記ポリオルガノシロキサン粒子は、ポリマーシェルで覆われたポリオルガノシロキサンのコアを含み、上記親水性ポリマーは、ポリサッカライド、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を繰り返し単位として含むポリマーからなる群より選択される、水中シリコーン型化粧料を提供する。本発明において用いられる「水中シリコーン型」との用語は、水中における固体のシリコーン粒子の分散物を意味する。
【0007】
本発明の一態様は、20~70重量%の水、15~60重量%の少なくとも一種の多価アルコール、及び5~25重量%のポリオルガノシロキサン粒子を含有する水中シリコーン型化粧料であって、上記ポリオルガノシロキサン粒子は、ポリマーシェルで覆われたポリオルガノシロキサンのコアを含み、かつ上記水及び多価アルコール中に分散しており、上記水中シリコーン型化粧料は、ポリサッカライド、及び(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を繰り返し単位として含むポリマーからなる群より選択される、0.001~5重量%の少なくとも一種の親水性ポリマーをさらに含有し、ここで、上記百分率は、化粧料の重量に対する重量単位である、水中シリコーン型化粧料を提供する。
【0008】
本発明の水中シリコーン型化粧料は、肌に改善されたナリシング効果と水感を与えるとともに、肌へのべたつき感とすべり感が抑えられている。本発明の化粧料は、半透明又は透明である側面をももたらし、長時間にわたって安定である。
【0009】
本発明の水中シリコーン型化粧料において、親水性ポリマーの含有量は、全質量基準で0.001~5質量%であるとよい。このような含有量の範囲とすることで、肌へのべたつき感とすべり感が顕著に抑制される。
【0010】
本発明の水中シリコーン型化粧料の25℃における粘度は250~100,000mPasであるとよい。このような粘度範囲にすることで、ポリオルガノシロキサンがより安定的に水性媒体中に分散できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、肌にナリシング効果と水感を与え、肌へのべたつき感とすべり感が抑えられた、安定かつ透明な水中シリコーン型化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではない。
【0013】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料は、水及び多価アルコールを含む(a)水性媒体を含有する。
【0014】
水としては、蒸留水、精製水、温泉水、深層水の他、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水を用いることができる。
【0015】
多価アルコールとしては、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール、ソルビトール等の糖アルコールが挙げられる。これらの中でも、グリセリンが好ましい。多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
(a)水性媒体は、水又は多価アルコールに溶解可能な1価アルコール(例、フェノキシエタノール)をさらに含んでいてもよい。
【0017】
(a)水性媒体の含有量は、全質量基準で50~95質量%であることが好ましく、55~90質量%であることがより好ましい。なお、本明細書において「全質量基準」とは、水中シリコーン型化粧料の全質量を基準とするという意味である。
【0018】
本発明の化粧料において、多価アルコールに対する水の質量比は、0.30~8.0であることが好ましく、0.30~6.0であることがより好ましく、0.60~3.0であることがより好ましく、1~1.5であることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料は、水及び多価アルコールを実質的に含む水性媒体を含有する。ポリオルガノシロキサン粒子は、有利に連続相を形成する本水性媒体中に分散している。
【0020】
ポリオルガノシロキサン粒子、特にポリオルガノシロキサンのコアは、シロキサン結合(Si-O-Si)及びシロキサン結合におけるケイ素原子にアルキル基、アリール基などの有機基を有していてもよい。ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリメチルフェニルシロキサンが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは不飽和基、アミノ基、フルオロ基等の官能基を有していてもよく、このようなポリオルガノシロキサンの具体例としては、ビニルジメチコン、アモジメチコン、トリフルオロプロピルジメチコンが挙げられる。また、ポリオルガノシロキサンは異種のポリオルガノシロキサンが架橋したものであってもよく、このようなポリオルガノシロキサンの具体例としては、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーが挙げられる。ポリオルガノシロキサンは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
ポリマーシェルで覆われたポリオルガノシロキサンのコアを有するポリオルガノシロキサン粒子は、5~300ミクロンの平均粒径を有することが好ましい。
【0022】
「ポリオルガノシロキサン粒子」との用語は、「ポリオルガノシロキサンのコアとポリマーシェル(ただし、ポリマーシェルはポリオルガノシロキサンポリマーで構成されていない)を有する、カプセル化されたポリオルガノシロキサンポリマー粒子」とも称することができる。このようなポリオルガノシロキサン粒子は、水及び多価アルコール中において、有利に安定して分散している。
【0023】
ポリオルガノシロキサン粒子は、水及び/又は多価アルコールを含んでいてもよい分散媒、好ましくは水及び少なくとも一種の多価アルコールを含む分散媒に分散していてもよい。多価アルコールとしては、上記した多価アルコールと同一のものが挙げられ、中でもグリセリン、ペンチレングリコールが好ましい。多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ポリオルガノシロキサンのコアは、ポリマーシェルによりカプセル化されうる。このポリマーシェルによるカプセル化は、溶媒中に溶解しているカチオン性水溶性ポリマー(例、カルボキシビニルポリマー(INCI名:カルボマー))が、アニオン性ポリマー(例、アモジメチコン)とコアセルベート化し、コアを取り囲む被膜を形成することによって実現されうる。カプセル化されたポリオルガノシロキサン粒子は、例えば、US2015/0272861に記載されており、化粧料を調製する方法において、以下に述べる分散物の形態で、他の成分と混合されうる。
【0025】
ポリオルガノシロキサン粒子としては、カプセル化されたジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーが好ましい。
【0026】
ポリオルガノシロキサン粒子の含有量は、全質量基準で5~25質量%であることが好ましく、10~20質量%であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン粒子の含有量は、化粧品の重量に対する重量単位で、5、10、15、20及び25重量%からなる群より選択される2つの値の間でありうる。
【0027】
多価アルコールの含有量は、全質量基準で15~60質量%であることが好ましく、例えば、30~45質量%である。多価アルコールの含有量は、15、20、25、30、35、40、45、50、55及び60重量%からなる群より選択される2つの値の間でありうる。多価アルコールの含有量が15%を下回ると、ナリシング効果の低い不透明な化粧料となる。多価アルコールの含有量が60%を上回ると、すべり感のある、不透明で油っぽい化粧料となる。
【0028】
水の含有量は、全質量基準で20~70質量%であることが好ましく、35~55質量%であることが好ましく、40~50質量%であることがより好ましい。水の含有量は、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65及び70重量%からなる群より選択される2つの値の間でありうる。水の含有量が20%を下回ると、水感の低い不透明な化粧料となる。多価アルコールの含有量が70%を上回ると、ナリシング効果が低く、みずみずしい感触が不十分な化粧料となる。
【0029】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料は、水性媒体及びポリオルガノシロキサン分散物に加えて、親水性ポリマーを含有する。本明細書において「親水性ポリマー」とは、上述した量の水を用いた場合に、水に溶解するか又は水に膨潤するポリマーを意味する。本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料において、親水性ポリマーは、(メタ)アクリロイルアルキルタウリン又はその塩を繰り返し単位として含むポリマー、ポリサッカライド、或いはこれらの組合せである。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0030】
(メタ)アクリロイルアルキルタウリンとしては、例えば、アクリロイルジメチルタウリン、メタクリロイルジメチルタウリンが挙げられ、その塩としては、例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。(メタ)アクリロイルアルキルタウリン若しくはその塩を繰り返し単位として含むポリマーは、(メタ)アクリロイルアルキルタウリン若しくはその塩の重合体(ホモポリマー)であってもよく、(メタ)アクリロイルアルキルタウリン若しくはその塩とそれ以外の重合性モノマーとのコポリマー又は架橋性ポリマーであってもよい。(メタ)アクリロイルアルキルタウリン若しくはその塩を繰り返し単位として含むポリマーの具体例としては、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25 クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ラウレス-7 クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-25 クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ステアレス-8 コポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマー、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド クロスポリマー、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマー、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリルアミド コポリマー、ポリアクリロイルジメチルタウリンナトリウム、ジメチルアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/ビニルピロリドン クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/メタクリルアミドラウリン酸 コポリマー、アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/ジアクリル酸PEG-8 クロスポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン コポリマー、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/アクリル酸カルボキシエチルアンモニウム クロスポリマー、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリン コポリマー、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマー、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム/アクリル酸 コポリマーが挙げられる。これらの中でも、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/メタクリル酸ベヘネス-25 クロスポリマー、アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマーが好ましい。
【0031】
ポリサッカライドは、重量平均分子量が5,000以上のものであるものが好ましい。このようなポリサッカライドとしては、例えば、非デンプン性ポリサッカライド、ヒアルロン酸又はその塩、コンドロイチン硫酸又はその塩、プルラン、アガー、アガロースとアガロペクチンからなる紅藻由来のポリサッカライド、シロキクラゲ多糖体(製品名Tremoist-TP、日本精化株式会社製)が挙げられる。
【0032】
プルランは、細胞外ポリサッカライドでありえ、多型真菌アウレオバシジウム プルランス(Aureobasidium pullulans)によって分泌される。この分子は、規則的な反復三糖単位からなる直鎖状α-D-グルカンである。三糖単位は、3つのグルコース単位が1,4-グルコシド結合を介して結合しているマルトトリオースである。各マルトトリオース単位は、1,6-グルコシド結合を介して一連の3つの他のマルトトリオースに末端結合して、長い階段型構造を形成している。プルランの分子量は、生物が成長する条件に応じて、50,000~500,000ダルトンの範囲でありうる。
【0033】
親水性ポリマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
親水性ポリマーは、水中シリコーン型化粧料において主に肌へのべたつき感やすべり感を抑制する効果に寄与しており、その含有量は、全質量基準で0.001~5.0質量%であるとよい。
【0035】
水中シリコーン型化粧料の肌へのべたつき感が一層顕著に抑制される観点から、水中シリコーン型化粧料における親水性ポリマーの含有量は、全質量基準で0.001、0.01、0.02、0.03、0.05、0.1、0.3、0.5、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、4.0、4.5及び5.0質量%からなる群より選択される2つの値の間であることが好ましく、例えば、0.03~2.0質量%であり、好ましくは0.05~2.0質量%である。
【0036】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料の粘度は、25℃で250~100,000mPasの範囲内とすることができる。粘度範囲をこのような範囲内とすることにより、ポリオルガノシロキサンをより安定的に水性媒体中に分散させることが可能である。ポリオルガノシロキサンが一層安定的に水性媒体中に分散させる観点から、水中シリコーン型化粧料の25℃における粘度は、500~50,000mPasであることがより好ましく、1,000~25,000mPasであることがより好ましく、例えば、1,500~2,500mPasである。粘度は、回転粘度計(例えば、Rheolab QC;Anton Paar社製)を用い、当業者に知られた条件にて測定することができる。
【0037】
水中シリコーン型化粧料は、上記成分に加えて、油剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、褪色防止剤、防腐剤、生物学的な肌活性化剤、安定化剤、色素、香料等をさらに含んでいてもよい。
【0038】
本発明の化粧料は、有利に非常に少量の界面活性剤、非常に少量のオイル、非常に少量のオイルゲル化剤、及び/又は非常に少量の、上述したポリオルガノシロキサン以外の固体粒子を含有する。本発明の文脈において、非常に「少量の」とは、化粧料の重量に対する重量単位で5重量%未満、好ましくは3重量%未満、最も好ましくは1重量%未満、さらには0.1重量%未満又は0.05重量%未満であることを意味する。好ましい実施形態において、化粧料は、界面活性剤、オイル、オイルゲル化剤、及び/又は上述したポリオルガノシロキサン以外の固体粒子を含有しない。本発明に係る水中シリコーン型化粧料は、好ましくは、水、多価アルコール、ポリオルガノシロキサン粒子及び親水性ポリマーを実質的に含有する。ここで「実質的に」とは、水、多価アルコール、ポリオルガノシロキサン粒子及び親水性ポリマーの混合物が、化粧料の重量に対する重量単位で少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%であることを意味する。
【0039】
本発明はまた、上述した透明な水中シリコーン型化粧料を調製する方法に関し、上記方法は、水及び第一の多価アルコールを混合して(a)水性媒体を調製するステップ、上記水性媒体に、水及び第二の多価アルコール(第二の多価アルコールは第一の多価アルコールと同一又は異なっていてもよい)に分散したポリオルガノシロキサン粒子の(b)ポリオルガノシロキサン分散物を添加するステップを含み、上記(a)水性媒体と上記(b)ポリオルガノシロキサン分散物との屈折率の差は±0.05以内、好ましくは±0.01以内である、方法である。
【0040】
(a)水性媒体において、多価アルコールに対する水の量は、0.20~10.0質量部であることが好ましく、0.30~5.0質量部であることがより好ましく、0.40~4.0質量部であることがさらに好ましい。
【0041】
上記化粧料を調製するために用いられ、かつ他の成分と混合されるポリオルガノシロキサン分散物の含有量は、化粧料を調製するために用いられる全成分の全質量基準で、好ましくは20~60質量%であり、より好ましくは25~55質量%であり、又は30~50質量%である。さらに、水中シリコーン型化粧料において、分散物と混合される(a)水性媒体に対する(b)ポリオルガノシロキサン分散物の質量比は、0.05~1.0質量部であることが好ましく、0.10~0.80質量部であることがより好ましい。ポリオルガノシロキサン分散物の具体例としては、カプセル化されたジメチコンとジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーの分散物(製品名CES-1104(登録商標)、NusilTechnology LLC製)、トリフルオロプロピルジメチコンの分散物(製品名CES-3401(登録商標)、Nusil Technology LLC製)が挙げられる。
【0042】
また、(a)水性媒体に対する親水性ポリマーの質量比は、0.00001~0.05質量部であることが好ましく、0.0001~0.05質量部であることがより好ましく、0.0005~0.05質量部であることがさらに好ましい。
【0043】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料の製造は、例えば、以下のように行うことができる。すなわち、水と多価アルコールを均一になるように攪拌・混合して水性媒体を得、これにポリオルガノシロキサン分散物の原料(分散媒中においてポリマーシェルで被覆されたポリオルガノシロキサン粒子を含む)及び親水性ポリマーを同時に又は別々のタイミングで添加して、全体が均一になるまで攪拌・混合することにより製造可能である。水中シリコーン型化粧料が上記添加成分を含有するときは、任意の工程で添加が可能である。
【0044】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料において、(a)水性媒体と(b)ポリオルガノシロキサン分散物との屈折率の差は好ましくは±0.05以内であり、好ましくは±0.01以内である。屈折率の差をこのような範囲内とすることにより、水中シリコーン型化粧料を半透明又は透明なものとすることができる。(a)水性媒体に対する(b)ポリオルガノシロキサン分散物の配合比率、上述した水性媒体における水と多価アルコールの比率などを適宜設定することで、屈折率の差を±0.05以内に調整することができる。屈折率は、屈折率計(例えば、Abbemat 550;Anton Paar社製)を用いることにより測定することができる。
【0045】
ポリオルガノシロキサン分散物の原料は、他の成分(多価アルコール、水及び親水性ポリマーなど)と混合されて、化粧料を形成する。このようなポリオルガノシロキサン分散物は、化粧料を調製するために用いられる他の成分と混合される成分として用いられる。
【0046】
特に、水及び多価アルコールと混合されるポリオルガノシロキサン分散物は、好ましくは多価アルコールを含む分散物の形態であって、上記多価アルコールは、先に水と攪拌・混合された多価アルコールと同一であるものが好ましい。ポリオルガノシロキサン分散物の原料はまた、ペンチレングリコールなどの別の多価アルコールを含有することが好ましい。分散物はまた、ジメチコン、防腐剤、水酸化ナトリウム及びEDTA二ナトリウムなどの追加の化合物を含有していてもよい。
【0047】
ポリオルガノシロキサン粒子は、好ましくはアニオン性ポリマー及びカチオン性ポリマーから得られるポリマーシェルで被覆されたコアカプセル化材料を含んでいてもよい。アニオン性ポリマーは、カルボマーなどのポリアクリル酸ポリマーでありうる。カチオン性ポリマーは、アモジメチコンなどのアミンで官能化されたポリオルガノシロキサンでありうる。コアカプセル化材料は、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマーなどのポリオルガノシロキサンでありうる。
【0048】
本実施形態に係る水中シリコーン型化粧料は、例えば、ローション、美容液、ジェルクリームなどに適用可能である。当業者であれば、ポリオルガノシロキサン粒子が水相に分散するか否かを容易に判断することができる。本発明の文脈において、水相は化粧料中で連続相を形成する。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例により、さらに水中シリコーン型化粧料について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0050】
〔試験例:水中シリコーン型化粧料〕
水、グリセリン及びフェノキシエタノールを均一になるように攪拌・混合して水性媒体を得た。得られた水性媒体を50~60℃に昇温し、これに親水性ポリマー(プルラン(株式会社林原製)、又はアクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマー(SIMULGEL(登録商標)NS;Seppic社製))及びポリオルガノシロキサン分散物(CES-1104(登録商標)、NusilTechnology LLC製)をこの順に添加した。得られた混合物を30℃になるまで冷却しながら、全体が均一になるまで攪拌・混合して、以下の表に示す各化粧料(実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、及び比較例1)を調製した。各成分の配合割合(質量%)は以下の表に示すとおりである。
【0051】
(1)透明性評価及び屈折率測定
目視にて明確に視認可能な文字が記載された板上に上記調製した各化粧料の適量を滴下し、以下の基準にて評価した。
透明:文字がはっきりと視認できる
半透明:文字が視認できる
不透明:文字が視認できない
水性媒体とポリオルガノシロキサン分散物の屈折率を、屈折率計(Abbemat 550;Anton Paar社製)を用いて測定した。水性媒体(水、グリセリン及びフェノキシエタノールからなる)とポリオルガノシロキサン分散物(CES-1104(登録商標))の屈折率は、実施例1、2、3及び4について±0.01以内であった。
(2)粘度測定
上記調製した各化粧料の25℃における粘度を、回転粘度計(例えば、Rheolab QC;Anton Paar社製;回転速度:50rpm(3分間))を用いて測定した。
(3)安定性評価
上記調製した実施例1、2及び比較例1の各化粧料を2つの透明容器に収容し、蓋をして密閉したうえで、50℃又は4℃で1か月保管した。保管後、油相と水相の分離の有無を観察した。50℃及び4℃のいずれでも油相と水相の分離が観察されなかったものをY、50℃又は4℃のいずれかで油相と水相の分離が観察されたものをNと評価した。
(4)官能評価
上記調製した各化粧料のナリシング効果、水感、べたつき感のなさ及びすべり感のなさについて、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネルによる肌への単回使用試験において、以下の基準にて評価した。
A:認められる、B:普通、C:認められない
【0052】
【表1】
【0053】
親水性ポリマーを含まない比較例1の化粧料では、ナリシング効果と水感に乏しい一方、べたつき感とすべり感が明らかに認められた。これに対し、親水性ポリマーとしてプルランを含む実施例1及び実施例2の化粧料、並びに親水性ポリマーとしてアクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム コポリマーを含む実施例3及び実施例4の化粧料では、透明性、良好なナリシング効果及び水感を有し、かつべたつき感とすべり感が抑えられていた。