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特許7062885静圧スライド案内装置及び静圧スライド案内装置を備えた工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】静圧スライド案内装置及び静圧スライド案内装置を備えた工作機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 32/06 20060101AFI20220426BHJP
   B23Q 1/38 20060101ALI20220426BHJP
   B23Q 1/58 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F16C32/06 A
B23Q1/38 A
B23Q1/58 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017099770
(22)【出願日】2017-05-19
(65)【公開番号】P2018194123
(43)【公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130188
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 喜一
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(74)【代理人】
【識別番号】100190333
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 群司
(72)【発明者】
【氏名】大津 雄太
(72)【発明者】
【氏名】堀 伸充
(72)【発明者】
【氏名】野々山 眞
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-108503(JP,A)
【文献】特開2007-182911(JP,A)
【文献】特開2006-297504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 32/06
B23Q 1/38
B23Q 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面となる第一縦案内面及び前記第一縦案内面の法線方向とは反対方向の法線方向となる第二縦案内面を有する固定体と、
前記第一縦案内面に対向する第一縦スライド面及び前記第二縦案内面に対向する第二縦スライド面を有する可動体と、
流体供給装置と、
前記流体供給装置が供給する流体の流体圧を所望の所定流体圧に調圧可能なレギュレータである調圧装置と、
前記第一縦案内面又は前記第一縦スライド面に設けられ、前記流体供給装置によって流体が供給され、前記第一縦案内面と前記第一縦スライド面との間の第一隙間の大きさに応じた流体圧が作用され、前記可動体に対して前記第一隙間の大きさに応じた支持剛性を発揮する静圧支持部と、
前記第二縦案内面又は前記第二縦スライド面に設けられ、前記調圧装置によって前記所定流体圧に調圧された流体が供給されることにより前記可動体を前記第一縦案内面の方向に付勢する付勢力発生部と、
前記流体供給装置から前記静圧支持部への供給経路に設けられ、前記静圧支持部に供給する前記流体の流体圧を前記第一隙間の大きさに応じて変動させる可変絞りと、
前記調圧装置における前記付勢力発生部側の圧力を計測する圧力計と、
を備え、
前記静圧支持部に作用する前記流体圧は、前記可動体の移動に伴い前記第一隙間が小さくなると、上昇する隙間-流体圧関係を有し、
前記可変絞りは、前記静圧支持部に作用する前記流体圧が上昇すると、前記静圧支持部に供給する前記流体の流量を増加するように作用し、
前記調圧装置は、前記圧力計により計測される圧力が前記所定流体圧の大きさに一致するように調圧可能に構成され、
前記調圧装置における前記所定流体圧の大きさは、前記隙間-流体圧関係から得られる静圧支持流体圧範囲であって前記第一隙間の大きさが隙間設定値となるような前記静圧支持部に作用する前記流体圧の範囲である前記静圧支持流体圧範囲と、前記静圧支持部における静圧ポケット面積と、前記付勢力発生部における荷重負荷ポケット面積とに基づいて決定される、静圧スライド案内装置。
【請求項2】
前記第一隙間の前記隙間設定値は、前記第一隙間の大きさと前記第一隙間の大きさに応じた前記流体圧との関係に基づいて、所望の前記支持剛性が得られるよう設定される、請求項に記載の静圧スライド案内装置。
【請求項3】
前記固定体は、前記第一縦案内面及び前記第二縦案内面の各直交平面上に一対の水平案内面を有し、
前記可動体は、前記一対の水平案内面にそれぞれ対向する一対の水平スライド面を有する、請求項1又は2に記載の静圧スライド案内装置。
【請求項4】
工作物を加工する工具を有した工作機械であって、
前記工作機械には請求項1-の何れか一項に係る静圧スライド案内装置が適用され、
前記工作物及び工具の一方が前記可動体に設けられ、
前記工作物及び工具の他方が前記固定体に設けられる、静圧スライド案内装置を備えた工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静圧スライド案内装置及び静圧スライド案内装置を備えた工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、可動体及び固定体で構成される二部材を非接触状態に維持し、二部材の相対移動時における摩擦を低減させるとともに、固定体に対して可動体の支持剛性を高め、安定した相対移動を実現させる静圧スライド案内装置がある(例えば、特許文献1-4参照)。具体的には、静圧スライド案内装置は、相対移動する二部材の対向面の一方(例えば、可動体の水平及び垂直な各一対の各スライド面)に凹状のポケットが設けられる。
【0003】
そして、ポケットに所定圧の空気や油等の流体を供給し、固定体の水平な案内面及び垂直な案内面と、当該各案内面と対向する可動体の水平なスライド面及び垂直なスライド面との間に流体を噴出させて隙間を形成する。これにより、二部材を非接触状態とし、二部材間における摩擦を低減して摺動性を向上させるとともに、固定体に対する可動体の支持剛性を確保する。
【0004】
なお、このとき、形成された隙間の大きさ、ポケットに供給された流体圧、及び支持剛性の間には相関関係がある。このため、所望の支持剛性を確保するため、特に垂直(縦)案内面及び垂直(縦)スライド面における隙間と流体圧との関係を管理することが必要となる。これに対し、特許文献1-4では、一対の垂直(縦)スライド面に設けられた左右二箇所の各ポケットに、流体供給装置(オイルポンプ等)から所定の供給経路を介して所定の流体圧の流体が供給され、所望の支持剛性の確保を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-221572号公報
【文献】実公昭57-57884号公報
【文献】特開2014-108503号公報
【文献】特開2006-231483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の供給経路では、一方及び他方の各ポケットに何れも固定絞りを介して一定圧の流体が供給される。このため、所望の支持剛性を確保しようとすると、流体圧による調整はできないので、各隙間の大きさを厳密に管理して対応する必要がある。これにより、加工時において固定体の一対の各案内面間の寸法管理、及び可動体の一対の各スライド面間の寸法管理を高精度に行なう必要がある。また、可動体を固定体に組み付ける際にも精度のよい組み付けが必要となるため組み付け工数が増加する。これにより、コストが上昇する虞がある。
【0007】
また、特許文献2の供給経路では、一方のポケットに固定絞りを介して一定圧の流体が供給され、他方のポケットにオイルポンプから一定圧(吐出圧)の流体が直接供給される。また、特許文献3の供給経路では、一方のポケットには、隙間の大きさに応じて流体圧が成行きで変動する可変絞りを介して流体が供給され、他方のポケットには、オイルポンプから一定圧(吐出圧)の流体が直接供給される。また、特許文献4の供給経路では、一方のポケットには、調整によって所望の調圧値が得られる調整式絞りを介して流体が供給され、他方のポケットにはオイルポンプから直接、一定圧の流体が供給される。
【0008】
このように特許文献2~4においては、他方のポケットへは、オイルポンプから直接、一定圧の流体が供給される。このため、特許文献1のように、一対の各案内面間、及び各スライド面間の寸法を厳密に管理しなくとも、少なくとも、一方のポケット側の隙間に十分大きな流体圧を付与できる。これにより、少なくとも一方のポケット側では、相応の支持剛性を得ることが出来る。しかしながら、このとき、案内面とスライド面との間の隙間の管理は出来ておらず成行きである。このため、隙間と高い相関性を有する支持剛性を最適な値に管理することまではできない。従って、支持剛性を最適な値としたい場合には、特許文献1と同様、一対の各案内面間、及び各スライド面間の厳密な寸法管理が必要となる。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、加工精度及び組付け精度を高精度なものとしなくとも固定体に対する可動体の支持剛性が容易に確保できる低コストな静圧スライド案内装置及び静圧スライド案内装置を備えた工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1.静圧スライド案内装置)
本発明に係る静圧スライド案内装置は、
基準面となる第一縦案内面及び前記第一縦案内面の法線方向とは反対方向の法線方向となる第二縦案内面を有する固定体と、
前記第一縦案内面に対向する第一縦スライド面及び前記第二縦案内面に対向する第二縦スライド面を有する可動体と、
流体供給装置と、
前記流体供給装置が供給する流体の流体圧を所望の所定流体圧に調圧可能なレギュレータである調圧装置と、
前記第一縦案内面又は前記第一縦スライド面に設けられ、前記流体供給装置によって流体が供給され、前記第一縦案内面と前記第一縦スライド面との間の第一隙間の大きさに応じた流体圧が作用され、前記可動体に対して前記第一隙間の大きさに応じた支持剛性を発揮する静圧支持部と、
前記第二縦案内面又は前記第二縦スライド面に設けられ、前記調圧装置によって前記所定流体圧に調圧された流体が供給されることにより前記可動体を前記第一縦案内面の方向に付勢する付勢力発生部と、
前記流体供給装置から前記静圧支持部への供給経路に設けられ、前記静圧支持部に供給する前記流体の流体圧を前記第一隙間の大きさに応じて変動させる可変絞りと、
前記調圧装置における前記付勢力発生部側の圧力を計測する圧力計と、
を備え、
前記静圧支持部に作用する前記流体圧は、前記可動体の移動に伴い前記第一隙間が小さくなると、上昇する隙間-流体圧関係を有し、
前記可変絞りは、前記静圧支持部に作用する前記流体圧が上昇すると、前記静圧支持部に供給する前記流体の流量を増加するように作用し、
前記調圧装置は、前記圧力計により計測される圧力が前記所定流体圧の大きさに一致するように調圧可能に構成され、
前記調圧装置における前記所定流体圧の大きさは、前記隙間-流体圧関係から得られる静圧支持流体圧範囲であって前記第一隙間の大きさが隙間設定値となるような前記静圧支持部に作用する前記流体圧の範囲である前記静圧支持流体圧範囲と、前記静圧支持部における静圧ポケット面積と、前記付勢力発生部における荷重負荷ポケット面積とに基づいて決定される
【0011】
このような構成により、静圧支持部では、支持剛性を高くする第一隙間と流体圧との組み合わせ状態を容易に得ることができる。そこで、付勢力発生部に対し、静圧支持部において支持剛性を高くする前記流体圧と釣り合う所定流体圧を調整装置により調整して供給する。これにより、静圧支持部では、支持剛性を高くする第一隙間(設定値)が容易に得られ、静圧支持部が、可動体に対して所望の支持剛性を発揮する。この場合、第一隙間の大きさを厳密に管理するため、固定体、可動体の各案内面間及び各スライド面間の寸法精度を高精度とする必要がないので、加工工数は低減し低コストとなる。
【0012】
(2.工作機械)
本発明に係る工作機械は、工作物を加工する工具を有した工作機械であって、前記工作機械には上記静圧スライド案内装置が適用される。前記工作物及び工具の一方が前記可動体に設けられ、前記工作物及び工具の他方が前記固定体に設けられる。これにより、上記と同様、固定体に対する可動体の支持剛性が容易に確保できる低コストな静圧スライド案内装置を備えた低コストな工作機械が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の静圧スライド案内装置を備えた研削盤1の一実施の形態を説明する平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】可変絞りの構造を説明する断面図である。
図4】可変絞りの流量と第一流体圧との関係を示すグラフである。
図5】供給経路に可変絞りを備えた場合における静圧スライド案内装置の第一隙間と第一流体圧との関係を示すグラフである。
図6】供給経路に可変絞りを備えた場合における静圧スライド案内装置の第一流体圧と支持剛性との関係を示すグラフである。
図7】供給経路に可変絞りを備えた場合における静圧スライド案内装置の第一隙間と支持剛性との関係を示すグラフである。
図8】変形例1を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(1.概要)
以下に本発明の実施形態を、図面を用いて説明する。図1には、本発明の静圧スライド案内装置40(図2参照)を適用した研削盤1(工作機械に相当)の実施形態を示す。研削盤1は、砥石台トラバース型研削盤である。図1は、研削盤1の平面図の例を示し、図2は、図1におけるII-II断面図を示す。また、X軸、Y軸、Z軸が記載されている全ての図面において、X軸とY軸とZ軸とは互いに直交している。Y軸は鉛直上向きを示しており、Z軸とX軸は水平方向を示している。Z軸はワーク回転軸方向を示しており、X軸方向は砥石車15(本発明の工具に相当する)が、ワークW(本発明の工作物に相当する)に切り込む方向を示している。
【0015】
(2.研削盤1の全体構成)
図1に示すように、研削盤1は、床上に固定されたベッド11と、ベッド11に固定されたワークWを回転可能に両端支持する主軸台12及び心押装置13とを備える。さらに、研削盤1は、ベッド11上をZ軸方向及びX軸方向に移動可能な砥石台14と、砥石台14に回転可能に支持される砥石車15と、静圧スライド案内装置40(図2参照)と、主軸台12及び砥石車15を駆動させ、かつワークWに対する砥石車15の位置を制御する制御装置18とを備える。
【0016】
研削盤1は、ワーク回転軸WZ回りに回転しているワークWを、砥石車15によって研削する。砥石車15は、略円板形状に形成される。砥石車15は、砥石回転軸TZ回りに回転し、ワークWに対してZ軸及びX軸方向に相対移動可能に構成されている。なお、ワーク回転軸WZと砥石回転軸TZは、どちらもZ軸と平行である。
【0017】
図1及び図2に示すように、主軸台12は、ベース12aと、主軸ハウジング12bと、主軸12cとを備える。ベース12aは、ベッド11上に載置される。主軸ハウジング12bは、ベース12aに対してZ軸方向に往復移動可能に構成される。主軸12cは、主軸ハウジング12b内でワーク回転軸WZ回りに回転可能に支持される。また、主軸12cの一端にはセンタ部材12dが設けられる。主軸12cには図示しない駆動モータが設けられており、制御装置18は、センタ部材12dの先端をとおるワーク回転軸WZ回りに主軸12cを、任意の角速度で任意の角度まで回転させることができる。
【0018】
心押装置13は、ベース13aと、心押軸ハウジング13bと、心押軸13cと、センタ部材13dとを備える。ベース13aは、ベッド11上に載置される。心押軸ハウジング13bは、ベース13aに対してZ軸方向に移動可能に構成される。心押軸13cは、心押軸ハウジング13b内でワーク回転軸WZ回りに回転可能または回転不能に支持され、主軸12cと同軸に設けられる。そして、ワークWは、センタ部材12dを備えた主軸台12と、センタ部材13dを備えた心押装置13によって両端(または両端近傍)が支持される(センタ部材の代わりにチャックであってもよい)。
【0019】
また、ベッド11には、トラバースベース19が載置される。トラバースベース19は、Z軸駆動モータ21にて制御されるボールねじ22の回転角度に応じ、V型ガイド23に沿ってZ軸方向の任意の位置に位置決め制御される。制御装置18は、図略のエンコーダ等の位置検出手段からの信号を検出しながら、Z軸駆動モータ21に制御信号を出力して、トラバースベース19のZ軸方向の位置決めをする。
【0020】
トラバースベース19には、砥石車15を進退させる砥石台14が載置される。砥石台14は、X軸駆動モータ25にて制御されるボールねじ30の回転角度に応じ、トラバースベース19の上面に一体的に設けられたガイド16、17に沿ってX軸方向の任意の位置に位置決めされる。制御装置18は、位置検出手段からの信号を検出しながらX軸駆動モータ25に制御信号を出力して、砥石台14のX軸方向の位置を位置決めする。
【0021】
また、例えば、砥石回転軸TZとワーク回転軸WZは同一水平面上に位置しているとする。この状態で砥石車15をワークWに対して相対的に近づけていき、ワークWと砥石車15とが接触した位置における砥石車15の側の点を加工点とする。このとき、研削盤1には、加工点の近傍にクーラントを供給するクーラントノズルが設けられているが、図示省略する。また、図1及び図2の例に示す研削盤1では、砥石車15のドレッシングを行うドレッシング手段が、主軸ハウジング12bに取り付けられているが、図示省略する。
【0022】
図1図2に示すように、砥石台14は、スライドテーブル26と、砥石車15と、砥石軸受27と、砥石駆動モータ28(サーボモータ)と、X軸駆動モータ25等によって構成される。砥石駆動モータ28の回転駆動力が、駆動プーリ29、ベルト31、従動プーリ32を介して砥石車15に伝達される。なお、本実施形態では、砥石台14をX軸駆動モータ25とボールねじ30とによって進退させる構造の例を示したが、例えばリニアモータを用いてもよい。砥石台14を進退させる駆動装置は、特に限定されない。また、砥石車15を、ベルト31を介さずに直接、駆動モータで駆動する構成でも良い。
【0023】
(2-1.静圧スライド案内装置40の構成)
図2に示すように、静圧スライド案内装置40は、トラバースベース19(固定体に相当する)と、砥石台14(可動体に相当する)と、油圧ポンプ33(流体供給装置に相当する)と、調圧装置38と、複数の可変絞り24と、各可変絞り24を介して油圧ポンプ33と接続される静圧ポケット34(静圧支持部に相当する)及び静圧ポケット36と、調圧装置38を介して油圧ポンプ33と接続される荷重負荷ポケット35(付勢力発生部に相当する)と、圧力計39とを備える。なお、トラバースベース19(固定体)、及び砥石台14(可動体)は、研削盤1(工作機械に相当)と兼用である。そして、静圧ポケット34,36により流体軸受は構成され、可変絞り24の可変する絞りの抵抗の特性により流体軸受の支持剛性が高いものとなっている。
【0024】
油圧ポンプ33は、例えば油等の流体をタンク37から吸入し吐出口33aから供給圧力Psで吐出する。油圧ポンプ33は、常に、一定の供給圧力Psで流体を吐出口33aから吐出できるよう制御装置18によって制御される。吐出された流体は、静圧スライド案内装置40内を循環し、やがてタンク37に回収されるよう図略の流体回収手段が設けられる。
【0025】
図1図2に示すように、トラバースベース19(固定体)は、砥石台14をX軸方向に移動させる一対のガイド16,17を上面に一体的に備えている。つまり、一対のガイド16,17は、トラバースベース19(固定体)の一部である。一対のガイド16,17はZ軸方向に平行に距離を隔てて設けられ、それぞれ同じ距離だけX軸方向に延在している。
【0026】
図2に示すように、ガイド16は、基準面となる第一縦案内面16aを有する。第一縦案内面16aは、Z軸と直交する平面上に形成される。また、ガイド17は、第一縦案内面16aと平行で、且つ法線方向が第一縦案内面16aの法線方向とは反対方向となる第二縦案内面17aを有する。つまり、本実施形態において、第一縦案内面16a及び第二縦案内面17aは、対向して配置される。
【0027】
ガイド16の上面である、第一縦案内面16aの直交平面上には、第一水平案内面16bが形成される。ガイド17の上面である、第二縦案内面17aの直交平面上には、第二水平案内面17bが形成される。第一水平案内面16b及び第二水平案内面17bは、本発明の一対の水平案内面に相当する。本実施形態においては、一対の第一水平案内面16b及び第二水平案内面17bは同一高さで形成される。しかし、これに限らず、第一水平案内面16b及び第二水平案内面17bは異なる高さによって形成されていてもよい。
【0028】
また、図2に示すように、第一水平案内面16b及び第二水平案内面17bのそれぞれの位置は、第一縦案内面16a及び第二縦案内面17aに対してそれぞれ外側にある。つまり、第一水平案内面16bは、第二縦案内面17aから見て第一縦案内面16aよりもZ軸方向において離間して配置される。また、第二水平案内面17bは、第一縦案内面16aから見て第二縦案内面17aよりもZ軸方向において離間して配置される。
【0029】
砥石台14(可動体)が備えるスライドテーブル26の下面側には、一対の第一縦スライド面14a1及び第二縦スライド面14a2が設けられる。一対の第一縦スライド面14a1,第二縦スライド面14a2は、砥石台14(可動体)が、トラバースベース19(固定体)上に載置されたとき、トラバースベース19が備える一対のガイド16、17の一対の第一縦案内面16a及び第二縦案内面17aとそれぞれ対向する。このとき、第一縦案内面16aと第一縦スライド面14a1との間で形成される隙間を、以降、第一隙間L1と称す。また、第二縦案内面17aと第二縦スライド面14a2との間で形成される隙間を、以降、第二隙間L2と称す。
【0030】
また、スライドテーブル26の下面には、一対の第一,第二水平スライド面14b1,14b2(水平スライド面に相当)が設けられる。一対の第一,第二水平スライド面14b1,14b2は、上述したガイド16,17が備える一対の第一,第二水平案内面16b,17bと対向して配置される。第一,第二水平スライド面14b1,14b2には、それぞれ凹状に形成された各静圧ポケット36が設けられる。
【0031】
各静圧ポケット36は、それぞれ可変絞り24を介して油圧ポンプ33と接続される。本実施形態において、各可変絞り24は、図3に一例として示すダイヤフラム式の可変絞りである。なお、静圧ポケット36と接続される可変絞りは、これに限らずスプール式のものでもよいし、その他の方式の可変絞りでもよい。また、可変絞りではなく、固定絞りでも良い。さらには、絞りを有さず、油圧ポンプ33と直接接続してもよい。
【0032】
図3に示すように、各可変絞り24は、それぞれアッパハウジング41、ロワハウジング42及びダイヤフラム43を備える。各可変絞り24は、流入口24aから供給された供給圧力Psの流体を流路の絞りとなるロワハウジング42とダイヤフラム43との間の環状部のすきまR(ロワハウジング42の流出口24bの上部の環状となる部分)を経由させて流出口24bから各静圧ポケット36に向けて流出させる。流入口24aには、油圧ポンプ33から直接流体が供給される。また、流入口24aは、ダイヤフラム43の上方の空間とも連通される。そして、固定絞りとして機能する、流入口24aからダイヤフラム43の下方の空間の入り口までの間の通路の断面積や距離(長さ)などを調整する(固定絞りの流量調整)。これにより、ダイヤフラム43の上方と下方の圧力差が生じるようにする。
【0033】
そして、油圧ポンプ33から可変絞り24を介して各静圧ポケット36に流体が供給されると、静圧ポケット36内の各流体圧P1は、各静圧ポケット36、及び第一,第二水平案内面16b,17bに作用する。これにより、各流体圧P1が、砥石台14(可動体)の第一,第二水平スライド面14b1,14b2を、第一,第二水平案内面16b,17bから離間(浮上)させる。
【0034】
このとき、離間(浮上)と同時に、流体は各静圧ポケット36から第一,第二水平スライド面14b1,14b2と、第一,第二水平案内面16b,17bとの間に噴出し所定の厚さの流体の流出層(即ち、隙間)を形成する。これらにより、第一,第二水平案内面16b,17bと第一,第二水平スライド面14b1,14b2とは流体を介して上下方向(重力方向)で非接触状態となる。なお、可変絞り24の詳細な作動特性等については後に詳述する。
【0035】
(2-1-1.静圧ポケット34について)
図2に示すように、静圧ポケット34(静圧支持部)は、基準面となる第一縦案内面16aと対向する第一縦スライド面14a1に設けられ、凹状に形成される。静圧ポケット34は、上述した静圧ポケット36と同様、可変絞り24を介して油圧ポンプ33(流体供給装置)と接続される。
【0036】
説明の都合上、まず、前述した可変絞り24について、詳細に説明する。本実施形態において、静圧ポケット34と接続される可変絞り24は、図3に示す静圧ポケット36に接続される可変絞り24と同様の可変絞り(ダイヤフラム式)である。なお、これに限らず可変絞りは、スプール式のものでもよいし、その他の方式の可変絞りでもよい。また、可変絞りではなく、固定絞りであっても良い。これによっても相応の効果は得られる。
【0037】
可変絞り24は、上述したように、流入口24aから供給された流体を、図3に示す流路の絞りとなるロワハウジング42とダイヤフラム43との間の環状部のすきまR(ロワハウジング42の流出口24bの上部の環状となる部分)を経由させて流出口24bから静圧ポケット34に向けて流出させる。このとき、第一縦案内面16aと第一縦スライド面14a1との間の隙間である第一隙間L1(図2参照)が小さくなると、静圧ポケット34内の流体は第一隙間L1から良好に流出することが出来ず、静圧ポケット34内の圧力(第一流体圧P1)が上昇する。
【0038】
このため、静圧ポケット34内に連通している流出口24b及び流体充填室24cに充填される流体の圧力も上昇する。上昇した流体の圧力がダイヤフラム43を押し上げ、環状部のすきまRを増加させ環状部のすきまRを通過する流体の流量を増加させる(図4のグラフ参照)。ただし、図4のグラフに示すように、静圧ポケット34内の流体の圧力が上昇しすぎると、ダイヤフラム43の上方と下方の圧力差が小さくなり流量は急激に減少する。
【0039】
また、例えば、砥石台14(可動体)が、上記の状態からZ軸方向において第二縦案内面17aの方向に移動すると、第一隙間L1は大きくなる。これにより、第一隙間L1から流出する流体の量が増え、静圧ポケット34内の流体の圧力が減少する。
【0040】
(2-1-2.第一隙間L1と第一流体圧P1との関係)
流体は、このような流量特性を有する可変絞り24を介して油圧ポンプ33から静圧ポケット34に供給される。このとき、静圧ポケット34内の第一流体圧P1は、流体軸受が支持する負荷により変動し、図5のグラフGr1に示す第一隙間L1と第一流体圧P1との関係となり、この関係に基づき静圧ポケット34内の圧力が調整される。なお、図5のグラフGr1では、横軸が第一隙間L1(μm)であり、縦軸が第一流体圧P1(MPa)である。また、このときの流体軸受の流量は、図4に示す静圧ポケット34内の第一流体圧P1と流体軸受の流量との関係になる。
【0041】
(2-1-3.第一流体圧P1と支持剛性Gとの関係)
次に、第一流体圧P1と支持剛性Gとの関係について説明する(図6参照)。図6のグラフGr2は、静圧ポケット34への流体の供給経路に可変絞り24を備えた場合における第一流体圧P1と支持剛性Gとの関係を示す。なお、図6には、参考として、可変絞り24に替えて固定絞りを油圧ポンプ33と静圧ポケット34との間に配置した場合における特性(グラフGr3)を記載してある。
【0042】
図6をみてわかるように、グラフGr3に対し、グラフGr2のほうが、より大きな支持剛性Gが得られることがわかる。これにより、本実施形態では、可変絞り24を採用した。また、図6を見ると、可変絞り24では、第一流体圧P1が小さい領域I、及び第一流体圧P1が大きい領域IIIにおいて、大きな支持剛性Gが得られないことがわかる。そこで、本実施形態では、一例として第一流体圧P1の中間領域IIで得られる支持剛性G1~G2を所望の支持剛性Gとする。
【0043】
つまり、図6に示すように、所望の支持剛性G(G1~G2)を得るため、静圧ポケット34内の第一流体圧P1が、所望の支持剛性G(G1~G2)に対応する流体圧P1a~P1bとなるようにする。なお、第一流体圧P1の調圧範囲として設定する値は、本実施形態のように幅を有しておらずとも良く、例えば流体圧P1a~P1b内の所定の点(調圧点)のみであっても良い。そして、第一流体圧P1の流体圧P1a~P1b、又は調圧点を実現させるため、調圧装置38の図略の調整部を操作する。なお、調圧装置38については後に詳述する。
【0044】
このとき、流体圧P1a~P1b(第一流体圧P1)を図5のグラフGr1にあてはめてみると、流体圧P1a~P1bに対応する第一隙間L1の幅(隙間L1a~L1b)は非常に小さいことがわかる。つまり、隙間L1a~L1bを管理値として、砥石台14(可動体)の位置を調整することは非常に困難であることがわかる。
【0045】
また、参考として図7に可変絞り24を使用した場合における第一隙間L1と支持剛性Gとの関係(グラフGr4)も示しておく。グラフGr4を見てもわかるように、可変絞り24を使用することにより、大きな支持剛性は得られる。しかし、所望の支持剛性G1~G2に対応する第一隙間L1の範囲は非常に小さいことがわかる。
【0046】
しかしながら、本実施形態では、上述したように第一流体圧P1が、比較的広い範囲の流体圧P1a~P1bとなるよう調整することにより、隙間L1a~L1b(設定値に相当)を実現させるため容易である。前述したとおり流体圧P1a~P1bは、後に詳述する調整装置38の調整部(図略)を操作し調整することにより得る。
【0047】
また、静圧ポケット34内の圧力とする第一流体圧P1をP1a~P1bなどとすることにより、砥石台14(可動体)を第二縦案内面17aの方向に第一付勢力F1で付勢する(図2参照)。第一付勢力F1は、静圧ポケット34内の「第一流体圧P1」が静圧ポケット34及び静圧ポケット34と対向する第一縦案内面16aに作用し生じる力である。第一付勢力F1は、第一流体圧P1を受圧する静圧ポケット34の面積をS1(図略)とした場合に、F1=P1×S1となる。
【0048】
なお、上記においては、油圧ポンプ33と静圧ポケット34との間の供給経路には、可変絞り24を配置するものとして説明した。しかし、この態様には限らない。上記でも述べたが、油圧ポンプ33と静圧ポケット34との間の供給経路には、可変絞り24ではなく、固定絞りを採用してもよい。この場合、図6のグラフGr3に示すように、支持剛性Gが最も高い点G3に対応する第一流体圧P1の流体圧P1cを中心として前後に所定の幅を持たせ、第一流体圧P1が、例えば、流体圧P1d~P1eの範囲に入るよう調圧装置38によって調整すればよい。これによっても本実施形態と同様、最も支持剛性Gの高い領域(支持剛性G3~G4)を幅広い第一流体圧P1の範囲である流体圧P1d~P1eによって容易に実現できる。
【0049】
(2-1-4.荷重負荷ポケット35について)
次に、荷重負荷ポケット35について説明する。図2に示すように、荷重負荷ポケット35(付勢力発生部)は、第二縦案内面17aと対向する第二縦スライド面14a2に設けられ、凹状に形成される。荷重負荷ポケット35は、前述したように、調圧装置38を介して油圧ポンプ33と接続される。調圧装置38は、荷重負荷ポケット35に供給する流体圧(第二流体圧P2(図略))を所望の「所定流体圧P2a」(図略)に調圧可能な、所謂、レギュレータである。調圧の操作は、図2に示す圧力計39の値を確認しながら行なえばよい。
【0050】
このとき、本実施形態において、荷重負荷ポケット35の「所定流体圧P2a」は、前述したように、静圧ポケット34内の圧力である第一流体圧P1を流体圧P1a~P1bとする流体圧である。また、換言すると、「所定流体圧P2a」は、第一縦案内面16aと第一縦スライド面14a1との間の第一隙間L1の大きさを設定値(隙間L1a~L1b)とする流体圧である。
【0051】
なお、調圧装置38はどのようなタイプの装置(レギュレータ)であってもよい。調圧装置38は、レギュレータとして、油圧ポンプ33から調圧装置38の一次側(吸入側)に供給される供給圧力Psの流体を所望の「所定流体圧P2a」(図略)に調圧し、調圧した流体を二次側(荷重負荷ポケット35側)に供給可能であればどのようなものでもよい。
【0052】
また、「所定流体圧P2a」は、「予め設定した所定の流量」の流体を調圧装置38の一次側から二次側に流したときに得られる二次側の流体圧とする。このとき、「予め設定した所定の流量」は、上述した基準面側の第一隙間L1が、予め設定した隙間L1a~L1b(設定値)となるときの第二隙間L2に対応する流量である。
【0053】
このとき、第二流体圧P2(所定流体圧P2a)は、荷重負荷ポケット35に供給されることにより、砥石台14(可動体)を第一縦案内面16aの方向に第二付勢力F2で付勢する。第二付勢力F2は、荷重負荷ポケット35に供給された「第二流体圧P2(所定流体圧P2a)」が荷重負荷ポケット35及び荷重負荷ポケット35と対向する第二縦案内面17aに作用し生じる力である。
【0054】
第二付勢力F2は、第二流体圧P2(P2a)とする荷重負荷ポケット35の面積をS2(図略)とした場合に、F2=P2(P2a)×S2となる。静圧ポケット34の面積S1とS2とは、同じ面積(S1=S2)であることが好ましいが、F1=F2が実現できれば、S1>S2でもよいし、S1<S2でもよい。
【0055】
このように、荷重負荷ポケット35には、油圧ポンプ33が吐出した供給圧力Psの流体が調圧装置38によって所定流体圧P2a(第二流体圧P2)に調圧され供給される。つまり、調圧装置38は、基準面側の第一隙間L1の大きさが、例えば、隙間L1a~L1b(設定値)となり、第一付勢力F1と第二付勢力F2とが水平方向で、且つZ軸方向において釣り合うよう、第二流体圧P2の大きさを「所定流体圧P2a」に調圧する。「所定流体圧P2a」は、第一隙間L1の大きさと第一隙間L1の大きさに応じた第一流体圧P1との関係(図5参照)に基づき設定される。
【0056】
(3.作動)
次に、作動について説明する。説明においては、基準面側における第一隙間L1の設定値を例えば隙間L1a~L1bとする。また、調圧装置38は、基準面側の静圧ポケット34内の第一流体圧P1が流体圧P1a~P1bとなり、且つ第一隙間L1が設定値(隙間L1a~L1b)となった状態において、第一付勢力F1と第二付勢力F2とが水平方向で釣り合うよう図略の調整部が予め操作され、ある程度調整されているものとする。
【0057】
また、研削盤1の組み付け時の前提として、トラバースベース19(固定体)の上に、砥石台14(可動体)を載置したとき、基準面側の第一隙間L1が、設定値である隙間L1a~L1bより大きな隙間L1cとなるものとする(図5グラフ中、点P参照)。また、このとき、第二隙間L2は、隙間L2c(図略)とする。なお、「第一隙間L1」+「第二隙間L2」は、常に一定の値となる。よって、隙間L2cは、隙間L1cの大きさに基づき常に決まる。このため、隙間L2cは、第一隙間L1が隙間L1a~L1b(設定値)とされたときにおける第二隙間L2の隙間L2a~L2bよりも小さい。
【0058】
このような状態で、研削盤1を起動させ、油圧ポンプ33を起動させると流体が供給圧力Psで吐出される。吐出された流体は、静圧ポケット34及び荷重負荷ポケット35に供給される。基準面側の静圧ポケット34には、可変絞り24を介して流体が供給される。そして、可変絞り24の作用によって、静圧ポケット34内の圧力(第一流体圧P1)が、隙間L1c(>隙間(L1a~L1b))の大きさに応じた流体圧P1cとなる(図5、点P参照)。これにより、流体圧P1cが、砥石台14(可動体)を、第二縦案内面17aの方向に第一付勢力F1c(=P1c×S1)で付勢する(図2参照)。このとき、S1は、静圧ポケット34の面積である。第一付勢力F1cは、第一隙間L1が設定値(隙間L1a~L1b)である場合の付勢力である第一付勢力F1よりも小さい。
【0059】
また、このとき、隙間L2cは、第一隙間L1が設定値(隙間L1a~L1b)となったときにおける、第二隙間L2の隙間L2a~L2bよりも小さい(L2c<(L2a~L2b))。これにより、このとき、調圧装置38に調圧され、荷重負荷ポケット35に供給される流体の流量は「予め設定した所定の流量」よりも小さい。
【0060】
このため、調圧装置38によって調圧された流体圧P2cは、「所定流体圧P2a」より大きくなる(P2c>P2a)。従って、第二付勢力F2c(=P2c×S2)は、第一付勢力F1aよりも大きな値となり、砥石台14(可動体)を、第一縦案内面16a(基準面)の方向に付勢力(F2c-F1c)の大きさで付勢し移動させる。
【0061】
これにより、第一隙間L1の隙間L1c(点P)が、図5の矢印Ar1に示すように、徐々に小さくなる。また、これに伴い可変絞り24と接続される静圧ポケット34内の流体圧P1cは、徐々に上昇し、やがて流体圧P1a~P1bの範囲に入るとともに、第一隙間L1が、設定値(隙間L1a~L1b)となる。
【0062】
このとき、第二隙間L2では、隙間L2cが、第一隙間L1の隙間L1cの縮小に伴って拡大していく。これに伴い、第二流体圧P2は、徐々に減少し、基準面側の静圧ポケット34内の圧力が、流体圧P1a~P1b(設定値)となったときに、「所定流体圧P2a」となる。しかし、このとき、流体圧P1a~P1b(設定値)と、「所定流体圧P2a」とが対応していない場合が考えられる。このときには、調圧装置38の図略の調圧部を操作し、流体圧P1a~P1b(設定値)と、「所定流体圧P2a」とが対応するようにする。
【0063】
これによって、上述したように、流体圧P1a~P1b(設定値)により付勢される第一付勢力F1と、所定流体圧P2aにより付勢される第二付勢力F2(=P2c×S2)とが、水平方向(Z軸方向)で釣り合い、特に基準面側において高い支持剛性G(G1~G2)が得られる。
【0064】
このようにして、研削盤1を起動させることによって、ラフに組み付けつけたトラバースベース19及び砥石台14が、所望の組み付け状態に調整され、基準面側の案内の支持剛性Gを、事前に設定した大きさとすることができる。
【0065】
(4.その他)
なお、上記実施形態では、研削盤1を起動させるときには、調圧装置38の調圧値が予めある程度設定された状態であるものとして説明した。しかし、この態様には限らない。研削盤1を起動させるときには、調圧装置38の調圧値は一切調圧されていなくても良い。この場合、静圧スライド案内装置40を起動し静圧ポケット34及び荷重負荷ポケット35に流体が供給された後に、調圧装置38の調圧を開始すれば良い。調圧に対する時間は多少かかるが、加工精度及び組み付け工数の低減等、上記実施形態と同様の効果が期待出来る。
【0066】
また、上記実施形態においては、砥石台14が有する一対の第一,第二水平スライド面14b1,14b2(水平スライド面)に各静圧ポケット36を備えた。しかし、各静圧ポケット36を廃止し、第一,第二水平スライド面14b1、14b2と、第一,第二水平案内面16b、17b(水平案内面)とを当接させて摺動させる摺動タイプの案内としてもよい。これによっても、上記実施形態における効果と同様の効果が得られる。
【0067】
また、上記実施形態においては、静圧ポケット34を第一縦スライド面14a1に設け、荷重負荷ポケット35を第二縦スライド面14a2に設けた。しかし、この態様には限らない。静圧ポケット34は第一縦スライド面14a1と対向する第一縦案内面16aに設け、荷重負荷ポケット35は、第二縦スライド面14a2と対向する第二縦案内面17aに設けてもよい。これによっても上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
また、上記実施形態に対する変形例1として、図8に示すように、ガイド16、17を、静圧ポケット46、47を介して下方からも支持する構成としてもよい。これによっても、上記実施形態における効果と同様の効果が得られる。
【0069】
(5.実施形態による効果)
上記実施形態によれば、静圧ポケット34(静圧支持部)では、支持剛性Gを高くする第一隙間L1と静圧ポケット34に供給された流体の流体圧(第一流体圧P1)との組み合わせ状態を容易に得ることができる。そこで、荷重負荷ポケット35(付勢力発生部)に対し、静圧ポケット34において支持剛性Gを高くする流体圧(第一流体圧P1a~P1b)と釣り合う所定流体圧P2aを調整装置38により調整して供給する。これにより、静圧ポケット34(静圧支持部)では、支持剛性Gを高くする第一隙間L1(隙間L1a~L1b)(設定値)が容易に得られ、静圧ポケット34が、砥石台14(可動体)に対して所望の支持剛性G(G1~G2)を発揮する。この場合、第一隙間L1(隙間L1a~L1b)の大きさを厳密に管理するため、トラバースベース19(固定体)、及び砥石台14(可動体)の各案内面16a,17a間及び各スライド面14a1,14a2間の寸法精度を高精度とする必要がないので、加工工数は低減し低コストとなる。また、上下方向(Y軸方向)の隙間は、重力(負荷)とのバランスによって調整される。しかし、左右方向(Z軸方向)においては、重力とのバランスによることなく静圧ポケット34と荷重負荷ポケット35との隙間を適切に調整でき支持剛性を高く保つことが可能となる。
【0070】
また、上記実施形態によれば、静圧ポケット34(静圧支持部)に供給される流体は、油圧ポンプ33(流体供給装置)から静圧ポケット34への供給経路に設けられ、第一隙間L1の大きさに応じて流体圧を変動させる可変絞り24を介して供給される。通常、可変絞り24は、固定絞りに対し、高い支持剛性を得ることが出来る特性を有する。このため、トラバースベース19(固定体)に対する砥石台14(可動体)の高い支持剛性が得られる。
【0071】
また、上記実施形態によれば、第一隙間L1の設定値(隙間L1a~L1b)は、第一隙間L1の大きさと第一隙間L1の大きさに応じた流体圧P1との関係(図5参照)に基づいて、所望の支持剛性G(G1~G2)が得られるよう設定される。これにより、確実に所望の支持剛性G(G1~G2)が得られる。
【0072】
また、上記実施形態によれば、トラバースベース19(固定体)は、第一縦案内面16a及び第二縦案内面17aの各直交平面上に一対の水平案内面16b、17bを有する。また、砥石台14(可動体)は、一対の水平案内面16b、17bにそれぞれ対向する一対の水平スライド面14b1、14b2を有する。これにより、トラバースベース19(固定体)に対する砥石台14(可動体)の支持剛性が高く、且つX軸方向への移動がスムーズな静圧スライド案内装置40が得られる。
【0073】
また、上記実施形態においては、静圧スライド案内装置40を研削盤に適用した。しかし、これに限らず、静圧スライド案内装置40を、研削盤以外の工作機械に適用してもよい。例えば、旋盤、フライス盤、ボール盤、及びマシニングセンタ等に適用し、それらの工作機械の工具または工作物(一方)を支持する各可動体を、静圧スライド案内装置40を介して工具または工作物(他方)を支持する固定体上に支持してもよい。
【符号の説明】
【0074】
1;研削盤、 14;砥石台(可動体)、 14a1;第一縦スライド面、 14b1;水平スライド面、 15;砥石車、 16,17;ガイド、 16a;第一縦案内面、 17a;第二縦案内面、 19;トラバースベース(固定体)、 33;油圧ポンプ(流体供給装置)、 34;静圧ポケット(静圧支持部)、 35;荷重負荷ポケット(付勢力発生部)、 38;調圧装置、 40;静圧スライド案内装置、 F1;第一付勢力、 F2;第二付勢力、 G;支持剛性、 L1;第一隙間、 L2;第二隙間、 P1;第一流体圧(流体圧)、 P2;第二流体圧(流体圧)、 P2a;所定流体圧。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8