(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220426BHJP
B60W 30/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60W30/00
(21)【出願番号】P 2017130343
(22)【出願日】2017-07-03
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-102607(JP,A)
【文献】特開2017-091017(JP,A)
【文献】特開2010-003239(JP,A)
【文献】特開2008-293440(JP,A)
【文献】特開2014-032577(JP,A)
【文献】特開2010-121959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
B60W 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の前方を撮影する撮像手段と、
前記撮像手段により撮影した画像に基づいて、前記画像に含まれる信号機が
、右側から赤信号灯、黄色信号灯、青信号灯が水平方向に配置されていてそれらの下側であって左端部寄りに左折可を示す矢印灯を有する矢印式信号機であると判定した場合に、前記矢印式信号機の矢印灯が示す第1の方向と前記自車両が進もうとしている第2の方向とを対比する判定手段と、
前記判定手段が、前記第1の方向及び前記第2の方向が一致していないと判定した場合に、前記自車両の運転者に対して所定の運転支援を実施する運転支援手段と、
雨滴検出手段と、
を具備し、
前記左折可を示す矢印灯が左折可を示しているときにはそのタイミングで運転者の注意を喚起する制御を行うとともに、前記雨滴検出手段により検知される、前記自車両のフロントガラス又は前記自車両の前記運転者のヘルメットのシールドに対する雨滴の付着の有無に応じて、前記運転支援の実施のタイミングを変更することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記自車両が走行する道路上の道路標示又は前記道路に付設された道路標識が示す方向を前記第2の方向とすることを特徴とする請求項
1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記自車両の方向指示器が示す方向を前記第2の方向とすることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記自車両のステアリングの操舵角に基づいて前記第2の方向を認識することを特徴とする請求項1から請求項
3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転支援手段は、警報手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記運転支援手段は、振動により前記運転者の注意を喚起する振動発生手段を含むことを特徴とする請求項1から請求項
5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記運転支援手段は、前記自車両の速度を減速させる減速制御手段であることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の運転者が、漫然運転、体調不良時の運転、不慣れな道路での運転、会話中の運転等、注意力が低下した状態で運転しているとき、矢印式信号機の矢印灯が示す方向を誤認識し、交差点に間違った方向で進入してしまう可能性がある。例えば、矢印灯が左折方向を示しているにも関わらず、右折できると思い込み、交差点に進入してしまうことがあり得る。このため、他の車両との衝突又は横断歩道を渡る歩行者との衝突という危険な事態に発展することが懸念される。
【0003】
特許文献1には、直近信号機が進行禁止状態であるにもかかわらず車両が誤って分岐点に進入することを防止するため、車両の進行方向前方の直近に設置された直近信号機と、車両の進行方向前方にあって車両に対して直近信号機よりも遠方に設置された奥側信号機の点灯状態をそれぞれ取得し、直近信号機の点灯状態が進行禁止状態であって、奥側信号機の点灯状態が進行禁止状態から進行許可状態に変化した場合に、奥側信号機の点灯状態が変化してから一定時間が経過するまでの間において、車両の発進を抑制する制御を行うことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、CCDカメラによって撮影された画像から信号機を認識し、当該画像の中で輝度の高い部分の位置によって信号機の点灯状態を判定することが記載されている。さらに、赤信号を認識するとさらに、信号機の下部に表示される矢印が確認できるか調べ、認識結果及び車載センサによる計測結果に基づいて、運転者に危険が迫っていることを報知したり、車両の部品を制御することによって、運転者による安全運転の支援を行なったりすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-114557号公報
【文献】特開2000-149195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2のいずれにも、運転者が、矢印式信号機の矢印灯が示す方向が左折方向であるにも関わらず、右折方向と誤認識する等、間違った方向で交差点に進入しようとするのを防止することについては具体的には検討されていない。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、運転者が、矢印式信号機の矢印灯が示す方向を誤認識し、間違って交差点に進入しようとするのを防止し、予防安全性能を向上できる運転支援装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運転支援装置の一態様は、自車両の前方を撮影する撮像手段と、前記撮像手段により撮影した画像に基づいて、前記画像に含まれる信号機が、右側から赤信号灯、黄色信号灯、青信号灯が水平方向に配置されていてそれらの下側であって左端部寄りに左折可を示す矢印灯を有する矢印式信号機であると判定した場合に、前記矢印式信号機の矢印灯が示す第1の方向と前記自車両が進もうとしている第2の方向とを対比する判定手段と、前記判定手段が、前記第1の方向及び前記第2の方向が一致していないと判定した場合に、前記自車両の運転者に対して所定の運転支援を実施する運転支援手段と、雨滴検出手段と、を具備し、前記左折可を示す矢印灯が左折可を示しているときにはそのタイミングで運転者の注意を喚起する制御を行うとともに、前記雨滴検出手段により検知される、前記自車両のフロントガラス又は前記自車両の前記運転者のヘルメットのシールドに対する雨滴の付着の有無に応じて、前記運転支援の実施のタイミングを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転者が、矢印式信号機の矢印灯が示す方向を誤認識し、間違って交差点に進入しよう予防安全を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る運転支援装置を備えた自車両が走行する交差点を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る運転支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る運転支援装置の制御フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る運転支援装置を自動四輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る運転支援装置を他のタイプの車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車等の鞍乗型車両)に適用してもよい。以下の説明では、鞍乗型車両については、自動二輪車を代表例として説明する。
【0012】
<概要>
自車両の運転者が、漫然運転、体調不良時の運転、不慣れな道路での運転、会話中の運転等、注意力が低下した状態で運転しているとき、矢印式信号機の矢印灯が示す方向を誤認識し、交差点に間違った方向で進入してしまう可能性がある。
【0013】
特に、通常の信号機の赤、青、黄色の三色灯(以下、「本信号灯」という)に、矢印灯が一つ付設された矢印式信号機は、矢印灯が示す方向が右折方向であるもの、言い換えれば、右折可を示すもの(以下、「矢印式信号機(右)」という)ことが一般的であり、矢印灯が示す方向が左折方向であるもの、言い換えれば、左折可を示すもの(以下、「矢印式信号機(左)」という)は少ない。
【0014】
このため、例えば、通勤経路上で、矢印式信号機(右)と矢印式信号機(左)とが混在していると、よく知っている慣れた経路では、安全意識が低下しやすく、誤認識が発生しやすい。
【0015】
特に、矢印灯が点灯している時間は、本信号灯の青信号に比べて短いので、矢印灯が点灯すると反射的に発進する間隔が習慣化している運転者もいる。
【0016】
また、高齢な運転者は、矢印灯が点灯すれば右折できると思い込みやすい。
【0017】
また、天候、特に降雨や降雪によって、フロントガラス又はヘルメットのシールドが濡れると、光の反射により誤認識の可能性が高くなる。また、路面状況(例えば、凍結、砂)によって、停止距離が通常より長く必要な場合がある。
【0018】
また、自動変速車両(オートマチック車両)は、ブレーキが解除されば自動的に自車両が進み、運転者がわずかにアクセルを開ける操作をしただけで自車両は前に走り出す。このため、注意力が低下した状態での運転を想定し、何らかの対策が求められる。
【0019】
さらに、運転者が慌てしまい、アクセル操作やブレーキ操作を誤り、誤発進する可能性もある。
【0020】
本件発明者は、注意力が低下した状態での運転で、矢印式信号機(左)を矢印式信号機(右)であると思い込み、誤って右折方向で交差点に進入することを未然に防止することが予防安全性能の向上に寄与すると考えた。
【0021】
そこで、本件発明者は、撮像手段により撮影した画像に基づいて、画像に含まれる信号機が矢印式信号機であると判定した場合に、矢印式信号機の矢印灯が示す第1の方向と自車両が進もうとしている第2の方向とを対比し、第1の方向及び第2の方向が一致していなければ、運転者による、「うっかり、つい発進、つい進入」が起こることを予見して、予防安全性能を向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
すなわち、本実施の形態に係る運転支援装置は、自車両の前方を撮影する撮像手段と、前記撮像手段により撮影した画像に基づいて、前記画像に含まれる信号機が矢印式信号機であると判定した場合に、前記矢印式信号機の矢印灯が示す第1の方向と前記自車両が進もうとしている第2の方向とを対比する判定手段と、前記判定手段が、前記第1の方向及び前記第2の方向が一致していないと判定した場合に、前記自車両の運転者に対して所定の運転支援を実施する運転支援手段と、を具備することを特徴とする。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照してより詳細に説明する。まず、本実施の形態に係る矢印式信号機が設置された交差点について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る運転支援装置を備えた自車両が走行する交差点を示す模式図である。
図1は、自車両1が交差点2に近づいた状態を示す。交差点2は、自車両1が走行する道路3と、道路3と交差する道路4と、で構成されている。交差点2の、自車両1の進行方向前方には、信号機5が設置されている。
【0024】
信号機5は、右側から赤信号灯5a、黄色信号灯5b及び青信号灯5cが水平方向(
図1に示す左右方向)に配置され、それらの下側であって左端部寄りに、左折可を示す矢印を含む矢印灯5dが配置されている。
【0025】
自車両1が、道路3を走行し、交差点2に近づき、右折をしようとして、本線3aから右折車線3bに進入する。さらに交差点2に近づき、運転者が右折を示す方向指示器を点灯させる。このとき、信号機5の赤信号灯5aが点灯している場合、運転者は自車両1を停止させる。その後、信号機5の矢印灯5dが点灯した場合、本来であれば、運転者は、自車両1をそのまま停止させていなくてはならない。しかし、注意力が低下した状態での運転で、矢印灯5dが右折可を示していると思い込み、ブレーキを解除し、アクセルを踏み込み、右折方向で交差点2に進入することが想定される。
【0026】
この場合、交差点2内に他の車両がいたり、道路4に設けられた横断歩道4aを渡る歩行者がいたり、すると、衝突事故等に発展するリスクがある。
【0027】
<運転支援装置>
以下、本実施の形態に係る運転支援装置について、このような状況での自車両1の運転者への運転支援を例に挙げて説明する。
【0028】
まず、本実施の形態に係る運転支援装置の構成について、
図2を参照して説明する。
図2は、本実施の形態に係る運転支援装置100の機能ブロック図である。
図2においては、説明の便宜上、本発明に関連する構成のみを示している。なお、本実施の形態に係る運転支援装置100が適用される自車両1においては、通常、四輪車両が備えている構成(エンジン、タイヤ等)を備えているものとし、その説明を省略する。
【0029】
本実施の形態に係る運転支援装置100は、自車両1に搭載される。
図2に示すように、運転支援装置100は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)101を備えている。CPU101は、例えば、各種処理を実行するプロセッサにより構成される。CPU101は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する第1判定手段121、第2判定手段122、第3判定手段123及び運転支援手段124を実現可能に構成されている。
【0030】
CPU101には、前方カメラ102、雨滴量センサ103、路面センサ104、ステアリングセンサ105、アクセルポジションセンサ(APS)106及び方向指示器108が接続されている。ステアリングセンサ105には、ステアリング107が接続されている。前方カメラ102、雨滴量センサ103、路面センサ104、ステアリングセンサ105、アクセルポジションセンサ(APS)106及び方向指示器108は、CPU101との間で相互に信号を送受信、或いは、一方向で信号を送信又は受信が可能なようにCPU101に電気的に接続されている。
【0031】
前方カメラ102は、撮像手段の一例を構成するものであり、自車両1の前方の所定範囲を撮影する。より具体的には、前方カメラ102は、自車両1の前方であって、信号機5を含む所定範囲を撮影する(
図1に示す一点鎖線参照)。前方カメラ102は、撮影した画像(撮影画像)をCPU101に出力する。この撮影画像は、CPU101の内部又は外部に配置される、図示しない記憶部に保存され、詳細について後述するように、第1判定手段121による判定処理に利用される。
【0032】
雨滴量センサ103は、雨滴検出手段の一例を構成するものであり、例えば、赤外線方式のセンサで構成される。雨滴量センサ103は、発光部と受光部とを有し、フロントガラスに対する雨滴の付着の有無に応じて変動する赤外線の反射量に基づいて雨滴量を検出する。雨滴量センサ103は、検出した雨滴量をCPU101に出力する。
【0033】
路面センサ104は、路面状況確認手段の一例を構成するものであり、例えば、超音波検知方式のセンサで構成される。路面センサ104は、路面に対して超音波を出力する超音波発振器と、路面から反射した超音波を検知する検知部とを備え、路面からの超音波の反射量に基づいて路面状態を検出する。例えば、路面センサ104は、路面の凹凸状況や路面上の異物(砂利等)の有無を検出することができる。路面センサ104は、検出した路面状態をCPU101に出力する。
【0034】
ステアリングセンサ105は、運転者により操舵されるステアリング107の変化量を検出し、検出した変化量から操舵角を算出する。ステアリングセンサ105は、算出した操舵角に応じた信号(操舵角信号)をCPU101に出力する。
【0035】
アクセルポジションセンサ(APS)106は、運転者により踏み込まれたアクセルペダルの位置に応じてアクセル開度を検出する。アクセルポジションセンサ106は、検出したアクセル開度に応じた信号(アクセル開度信号)をCPU101に出力する。
【0036】
方向指示器108は、運転者の操作により指示された進行方向(左右のいずれか)を示す信号(方向指示信号)をCPU101に出力する。
【0037】
また、CPU101には、警報発生手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111が接続されている。減速制御手段111には、減速手段112が接続されている。なお、警報発生手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111は、運転支援手段の一部を構成する。警報発生手段109、ステアリング振動手段110及び減速制御手段111は、CPU101との間で相互に信号を送受信、或いは、一方向で信号を送信又は受信が可能なようにCPU101に電気的に接続されている。
【0038】
警報発生手段109は、警報手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、自車両1の運転者に対して警報を発する。例えば、警報発生手段109は、警報発生器及びスピーカで構成される。警報発生手段109は、所定の条件が満たされた場合に運転者に対する運転支援の一例として、警報を発する。警報は、音によるものに限定されず、例えば、自車両1のインストルメントパネル(不図示)等に設けられた表示灯を点灯したり、ナビゲーション装置(不図示)の表示部に警告のためのメッセージ等を表示したりしてもよい。
【0039】
ステアリング振動手段110は、振動発生手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、ステアリング107に振動を発生させる。ステアリング振動手段110は、例えば、ステアリング107に内蔵される振動モータ等の振動デバイスと、振動デバイスに振動指示を与える指示装置とで構成される。
【0040】
減速制御手段111は、減速制御手段の一例を構成するものであり、CPU101の制御の下、機械的ブレーキやエンジンブレーキ等で構成される減速手段112により自車両1の速度を減速する。
【0041】
CPU101は、第1判定手段121、第2判定手段122、第3判定手段123及び運転支援手段124を有する。第1判定手段121は、前方カメラ102により撮影した撮影画像に基づいて、自車両1の前方にある信号機を検知し、矢印式信号機か否か判定することができる。より具体的には、第1判定手段121は、撮影画像の中に本信号灯の配置パターン、すなわち、3つの本信号灯が水平方向又は垂直方向に一列に並んでいるパターンに基づいて、信号機があることを判定することができる。
【0042】
また、第1判定手段121は、撮影画像に基づいて、矢印式信号機の矢印灯が点灯したか否かを判定することができる。より具体的には、例えば、上述の通り、水平方向又は垂直方向に一列に並んでいる本信号灯に対して下側又は横側に信号灯が突出していることを条件として、矢印式信号機であることを判定することができる。
図1に示す信号機5を例に挙げて説明すれば、赤信号灯5a、黄色信号灯5b及び青信号灯5cが水平方向に配置され、それらの下側であって左端部寄りに矢印灯5dが配置されている。したがって、信号機5の外形は、L字を90度右回転させたような形状であるので、信号機5をパターンマッチングし、この外形から信号機5が矢印式信号機であると判定することができる。
【0043】
なお、矢印式信号機には、本実施の形態の信号機5のように矢印灯5dを一つだけ備えたものではなく、直進可を示す矢印灯及び/又は右折可を示す矢印灯をさらに備えているものもある。また、五差路、六差路といった複雑な交差点では、斜め方向を示した矢印灯を備えているものもある。したがって、矢印式信号機であるか否かの判定は、これらの態様も考慮したパターンマッチングを行うことが好ましい。
【0044】
また、第1判定手段121は、撮影画像に基づいて、当該矢印灯が示す方向(以下、「第1の方向」という)を判定することができる。より具体的には、例えば、矢印灯5dが点灯したときにそれが示す矢印をパターンマッチングし、その方向を外形に基づいて第1の方向を判定することができる。
【0045】
さらに、第1判定手段121は、自車両1が走行する道路上の道路標示又は道路に付設された道路標識が示す方向が、右折又は左折のいずれであるかを判定することができる。より具体的には、
図1に示すように、自車両1が右折車線3bを走行している場合、撮影画像に右折を示す道路表示(以下、「右折矢印」という)3cが含まれるようになるので、右折矢印3cをパターンマッチングし、右折矢印3cが示す方向が、右折であると判定することができる。
【0046】
第2判定手段122は、自車両1の運転状態を判定することができる。例えば、第2判定手段122は、アクセルポジションセンサ(APS)106からのアクセル開度信号に基づいて自車両1の発進又は走行の継続の有無を判定する。
【0047】
また、第2判定手段122は、ステアリングセンサ105からの操舵角信号に基づいて自車両1の回転方向(旋回方向)が、右回転か左回転かのいずれであるかを判定することができる。
【0048】
また、第2判定手段122は、方向指示器108からの方向指示信号に基づいて、自車両1の方向指示器108が、右折又は左折のいずれを示しているかを判定することができる。
【0049】
第3判定手段123は、第1判定手段121及び第2判定手段122による判定結果に基づいて、自車両1が進もうとしている方向(以下、「第2の方向」という)を判定することができる。第2の方向の判定の詳細については後述する。
【0050】
また、第3判定手段123は、第1判定手段121が判定した信号機5の矢印灯5dが示す第1の方向と、自車両1が進もうとする第2の方向とを対比し、両者が一致していないか否か、言い換えれば不一致であるか否かを判定する。
【0051】
運転支援手段124は、運転支援手段の一部を構成するものであり、第3判定手段123の判定結果に基づいて自車両1の運転者に対して所定の運転支援を実施する。
【0052】
より具体的には、運転支援手段124は、第3判定手段123が第1の方向及び第2の方向が一致していないと判定した場合、及び/又は、さらに第2判定手段122が自車両1が発進し又は走行を継続したと判定した場合に、所定の運転支援を実施する。
【0053】
運転支援手段124は、警報発生手段109、ステアリング振動手段110、減速制御手段111と協働して、運転者に対して各手段109、110、111の機能に応じた運転支援を実施する。運転支援手段124は、雨滴量センサ103や路面センサ104からの検出結果に基づいて、運転者に対する運転支援の実施のタイミングを変更することができる。
【0054】
次に、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローについて説明する。
図3は、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローを示す図である。
【0055】
まず、第1判定手段121(
図2参照)は、前方カメラ102が撮影した自車両1の前方の撮影画像に基づいて、前方に信号機があるか否かを判定する(ステップ(以下、「ST」という)101)。
【0056】
前方に信号機5(
図1参照)がある場合(ST101:YES)、第1判定手段121は、撮影画像に基づいて信号機5が矢印式信号か否かを判定する(ST102)。
【0057】
信号機5が矢印式信号である場合(ST102:YES)、第1判定手段121は、自車両1が交差点2の道路3の右折車線3bで停止しているかを判定する(ST103)。この判定において、例えば、第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮像画像に基づいて右折車線3bで停止しているかを判定することができる。例えば、第1判定手段121は、路面に描かれた右折矢印をパターンマッチングで検出した場合に右折車線3bでの停止を判定する。なお、ST103の判定は、交差点2に右折車線3bがない場合には省略できる。
【0058】
自車両1が右折車線3bで停止している場合(ST103:YES)、第1判定手段121は、前方カメラ102が撮影した撮影画像に基づいて、信号機5の矢印灯5dが点灯かしたか否かを判定する(ST104)。矢印灯5dの点灯は、例えば、矢印灯5dの輝度の変化に基づいて判定することができるが、特に限定されない。
【0059】
矢印灯5dが点灯している場合(ST104:YES)、第2判定手段122は、自車両1が発進する制御が行われるかを判定する(ST105)。第2判定手段122は、アクセルポジションセンサ(APS)106からのアクセル開度信号に基づいて自車両1の発進制御の有無を判定することができる。ST105で自車両1の発進制御の有無を判定することにより、直接的に存在する衝突事故の危険度の増加を把握することができる。
【0060】
発進制御があった場合(ST105:YES)、第3判定手段123は、矢印灯5dが示す矢印の方向、すなわち、第1の方向と、自車両1が進もうとする方向、すなわち第2の方向とを対比し、第1の方向及び第2の方向が一致していない、言い換えれば、不一致か否かを判定する(ST106)。
【0061】
より具体的には、本実施の形態では、第3判定手段123は、第1判定手段121が判定した信号機5の矢印灯5dが示す矢印の方向、すなわち左折方向を第1の方向とする。
【0062】
また、第3判定手段123は、以下の判定(a)~(c)のうち少なくともいずれか1つに基づいて、自車両1が進もうとする第2の方向を判定する。以下の場合は、右折方向が第2の方向と判定される。
(a)第1判定手段121が、自車両1が右折車線3bで停止していると判定したこと(ST103:YES)、
(b)第2判定手段122が、方向指示器108からの方向指示信号に基づいて自車両1の方向指示器108が右折を示していると判定したこと、及び、
(c)第2判定手段122が、ステアリングセンサ105からの操舵角信号に基づいて、ステアリング107の回転方向が右回転であると判定したこと。
【0063】
第1の方向及び第2の方向が不一致である場合(ST106:YES)、運転支援手段124は、運転者の注意を喚起する制御(以下、「注意喚起制御」という)を行う(ST107)。この注意喚起制御において、運転支援手段124は、警報発生手段109により警報を発生させ、或いは、ステアリング振動手段110によりステアリング107に振動を発生させる。なお、警報及び振動の双方を同時に行ってもよい。このように注意喚起制御を行うことにより、自車両1の運転者の注意力が低下する事態を抑止でき、矢印灯5dが示す左折可を右折可と誤認識することを防止できる。
【0064】
なお、注意喚起制御で実行される内容については、これらに限定されるものではなく適宜変更が可能である。
【0065】
注意喚起制御を行った後、第2判定手段122は、自車両1が交差点2への進入を継続しているか判定する(ST108)。第2判定手段122は、自車両1の発進制御の判定(ST105)と同様の要領で、交差点2への進入の継続を判定することができる。ST108で交差点2への進入の継続を判定することにより、注意喚起制御後の運転者の行動を判定することができる。
【0066】
交差点2への進入が継続されている場合(ST108:YES)、運転支援手段124は、自車両1に対する減速制御を行う(ST109)。この減速制御において、運転支援手段124は、減速制御手段111により減速手段112を稼働させ、自車両1の速度を減速させる。これにより、注意喚起制御を行ったにも関わらず、交差点2への進入を継続する自車両1を減速又は停止させることができる。
【0067】
なお、ST101~ST106及びST108の判定において、いずれも判定結果がNOであった場合には、処理がST101に戻され、ST101以降の処理が繰り返される。
【0068】
また、ST109で減速制御を行った後、自車両1が走行を再開した場合には、再び
図3に示す処理が繰り返される。
【0069】
なお、
図3に示すフローにおいては、自車両1が、交差点2の手前の右折車線3bで停止している場合について説明している(ST103)。しかしながら、
図3に示すフローは、自車両1が停止している場合に限定されるものではなく、右折車線3bで走行している場合にも適用される。この場合、例えば、ST103において、自車両1が右折車線3bに入っているか否かが判定される。
【0070】
以上説明したように、本実施の形態に係る運転支援装置100においては、前方カメラ102により撮影した撮影画像に基づいて、撮影画像に含まれる信号機5が矢印式信号機であると判定した場合に、矢印灯5dが示す第1の方向と自車両1が進もうとしている第2の方向とを対比し、第1の方向及び第2の方向が一致していなければ(ST106:YES)、運転者による、「うっかり、つい発進、つい進入」が起こることを予見して、注意喚起制御(ST107)が実施され、注意力が低下した状態の運転で、運転者に矢印灯5dが左折可を示しているにも関わらず、右折可と誤認識していることに気が付かせ、交差点2への進入を防止でき、予防安全性能を向上することができる。
【0071】
また、注意喚起制御(ST107)を行ったにも関わらず、交差点2への進入が継続された場合(ST108:YES)、減速制御(ST109)が実施され、自車両1が交差点2へそれ以上進入するのを防止でき、予防安全性能を一層向上することができる。
【0072】
特に、運転支援装置100においては、前方カメラ102、ステアリングセンサ105及び方向指示器108を各判定ST101~ST104及びST106に用いているため、特に特別な検知手段を追加せず、有人運転車両においても容易に実現できるので、経済的に予防安全性能を向上することができる。
【0073】
また、運転支援装置100において、運転支援手段124が、雨滴量センサ103及び/又は路面センサ104からの検出結果に応じて、運転支援(例えば、注意喚起制御、減速制御)の実施のタイミングを変更することは、実施の形態として好ましい。この場合には、雨滴量や路面状態に応じて運転支援の実施タイミングが変更されることから、自車両1が走行する環境に応じて適切な運転支援を実施することができる。
【0074】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0075】
また、上記実施の形態では、矢印式信号機の矢印灯が示す方向の誤認識として、矢印式信号機(左)5(
図1参照)の矢印灯5dが示す左折方向(左折可)を右折方向(右折可)に誤認識する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、稀な例ではあるが、矢印式信号機(左)5の矢印灯5dを毎日のように見ている運転者にとっては、矢印式信号機(右)の矢印灯が示す右折方向を左折方向に誤認識する場合も可能性として有り得る。このため、本発明は、このような場合にも対応可能としている。
【0076】
また、例えば、上記実施の形態においては、第1の方向及び第2の方向が不一致であった場合(ST106:YES)に初めて注意喚起制御を行っている。しかし、信号機5が矢印式信号機であって矢印灯5dが左折可を示しているときには、そのタイミングで注意喚起制御を行ってもよい。左折可を示す矢印灯を有する矢印式信号(左)は、矢印式信号(右)に比べて設置数が少なく、運転者による誤認識が起こりやすいので、注意喚起を行い、誤認識による交差点2への進入を未然に防ぐ効果を高めることができる。このタイミングでの注意喚起は、簡易なもの、例えば、警報のみを行い、ST107での注意喚起は、警報及びステアリング107の振動の双方としてもよい。
【0077】
また、上記実施の形態では、振動発生手段の一例としてステアリング振動手段110(
図2参照)を例に挙げて説明したが、ステアリング107以外に運転者が座るドライバーズシートの座面を振動させる振動発生手段であってもよく、特に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上説明したように、本発明は、運転者が、矢印式信号機の矢印灯が示す方向を誤認識し、間違って交差点に進入しようとするのを防止し、予防安全性能を向上できるという効果を有し、特に、自動四輪車、鞍乗型車両等の運転支援装置に有用である。
【符号の説明】
【0079】
1 自車両
2 交差点
5 信号機
5d 矢印灯
100 運転支援装置
102 前方カメラ(撮像手段)
103 雨滴量センサ(雨滴検出手段)
104 路面センサ(路面状況確認手段)
105 ステアリングセンサ
107 ステアリング
108 方向指示器
109 警報発生手段(警報手段)
110 ステアリング振動手段(振動発生手段)
111 減速制御手段
121 第1判定手段
122 第2判定手段
123 第3判定手段(判定手段)
124 運転支援手段