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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20220426BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20220426BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20220426BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
H01F17/00 B
H01F27/28 K
H01F27/28 104
H01F41/04 C
H01F41/10 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017200474
(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公開番号】P2019075458
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】金子 滋
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-260934(JP,A)
【文献】特開2002-280230(JP,A)
【文献】特開平06-236821(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053613(WO,A1)
【文献】特開2008-172048(JP,A)
【文献】特開昭51-079256(JP,A)
【文献】特開平06-215951(JP,A)
【文献】特開2011-049220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0308256(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0133877(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0278619(US,A1)
【文献】国際公開第03/005381(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/28-27/29
H01F 41/04、41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の一方の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、
前記絶縁基板の他方の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、
前記絶縁基板を貫通して設けられ、前記第1のコイル部の内周端と前記第2のコイル部の内周端を接続する接続部と、を備え、
前記第1のコイル部の外周端と前記第2のコイル部の外周端は、平面視で互いに隣接する位置に設けられ、
前記第1及び第2のコイル部を構成する前記複数ターンのそれぞれは、径方向における位置が変化しない円周領域と、径方向における位置が遷移する遷移領域を有し、
前記遷移領域は、前記第1及び第2のコイルの中心点から放射状に延在し、前記第1のコイル部の前記外周端と前記第2のコイル部の前記外周端の間を通過する仮想線上に位置し、
前記第1のコイル部を構成する前記複数ターンのうち最内周ターンを除く各ターンは、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された第1及び第2の導体部分を含み、
前記第2のコイル部を構成する前記複数ターンのうち最内周ターンを除く各ターンは、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された第3及び第4の導体部分を含み、
前記第1のコイル部の前記最内周ターンは前記第1の導体部分からなり、これにより前記第1の導体部分のターン数は前記第2の導体部分のターン数よりも1ターン多く、
前記第2のコイル部の前記最内周ターンは前記第3の導体部分からなり、これにより前記第3の導体部分のターン数は前記第4の導体部分のターン数よりも1ターン多く、
前記第1の導体部分は、前記複数ターンのうち最内周ターンを除く各ターンにおいて前記第2の導体部分よりも外周側に位置し、
前記第3の導体部分は、前記複数ターンのうち最内周ターンを除く各ターンにおいて前記第4の導体部分よりも外周側に位置し、
前記接続部は、前記第1の導体部分の内周端と前記第4の導体部分の内周端を接続する第1の接続部と、前記第2の導体部分の内周端と前記第3の導体部分の内周端を接続する第2の接続部を有することを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1及び第2のコイル部の前記内周端は、前記遷移領域に位置することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1及び第2のコイル部の前記内周端は、平面視で前記仮想線上に位置することを特徴とする請求項2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1のコイル部のパターン形状と前記第2のコイル部のパターン形状が同一であることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1のコイル部を構成する前記複数ターンの前記円周領域と、前記第2のコイル部を構成する前記複数ターンの前記円周領域は、平面位置が互いに一致していることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記絶縁基板は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、スパイラル状の平面導体を有するコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるコイル部品としては、磁性コアにワイヤ(被覆導線)を巻回したタイプのコイル部品の他、絶縁層の表面にスパイラル状の平面導体を複数ターンに亘って形成したタイプのコイル部品が知られている。例えば、特許文献1には、複数の絶縁層にそれぞれスパイラル状のコイル部を形成し、その内周端同士を接続した構成を有するコイル部品が開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品においては、スパイラル状のコイル部が渦巻状、つまり、導体の径方向における位置が徐々に変化する形状を有していることから、パターン設計やパターン変更が複雑となる。この問題を解決するためには、スパイラル状のコイル部を渦巻状とするのではなく、図11に示すように、導体の径方向における位置が変化しない円周領域Aと、導体の径方向における位置が遷移する遷移領域Bによって各ターンを構成する方法が考えられる。これによれば、導体の径方向における位置を徐々に変化させる必要がなくなることから、パターン設計やパターン変更が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-205215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スパイラル状のコイル部を図11に示すパターン形状とした場合、コイルの内周端Tiの周方向位置と外周端Toの周方向位置が大きく離れ、周方向における両者間に遷移領域Bが位置するレイアウトとなる。ここで、内周端Tiの周方向位置は、コイル部の中心点Cから放射状に延在する破線L1と重なる位置であり、外周端Toの周方向位置は、コイル部の中心点Cから放射状に延在する破線L2と重なる位置である。
【0006】
このため、電流の周回方向が同一となるように、図11に示すコイル部を2つ重ねて内周端Ti同士を接続すると、一方のコイル部の外周端Toと他方のコイル部の外周端Toの周方向位置がさらに大きく離れてしまう。他方のコイル部の外周端Toの周方向位置は、コイル部の中心点Cから放射状に延在する破線L3と重なる位置である。したがって、一方のコイル部の外周端Toに端子電極E1を設け、他方のコイル部の外周端Toに端子電極E2を設けると、端子電極E1と端子電極E2の周方向位置が大きく離れてしまい、端子電極E1,E2と回路基板との接続が複雑になるという問題があった。
【0007】
この問題を解決するためには、コイル部の外周端Toを破線L1で示す周方向位置まで伸延する方法や、内周端Tiを破線L2で示す周方向位置まで伸延する方法が考えられるが、これらの場合には、周方向距離の短い円周領域Aが発生することから、外形の大型化やコイルの内径領域の減少が生じるという問題があった。つまり、コイル部の外周端Toを破線L1で示す周方向位置まで伸延するか、或いは、コイル部の内周端Tiを破線L2で示す周方向位置まで伸延すると、ターン数が5ターンであるにもかかわらず、円周領域Aが6本必要となる。このため、パターン効率が悪く、前者の場合にはコイル部の外形が大型化し、後者の場合にはコイルの内径領域が大きく減少する。
【0008】
したがって、本発明は、外形の大型化やコイルの内径領域の減少を抑えつつ、一対の端子電極の周方向位置を隣接させることが可能なコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるコイル部品は、絶縁基板と、絶縁基板の一方の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、絶縁基板の他方の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、絶縁基板を貫通して設けられ、第1のコイル部の内周端と第2のコイル部の内周端を接続する接続部とを備え、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端は、平面視で互いに隣接する位置に設けられ、第1及び第2のコイル部を構成する複数ターンのそれぞれは、径方向における位置が変化しない円周領域と、径方向における位置が遷移する遷移領域を有し、遷移領域は、第1及び第2のコイルの中心点から放射状に延在し、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端の間を通過する仮想線上に位置することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端の間を通過する仮想線上に遷移領域を配置していることから、第1のコイル部の外周端と第2のコイル部の外周端を隣接させても、外形の大型化を防止することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1及び第2のコイル部の内周端は、遷移領域に位置するものであっても構わない。これによれば、コイルの内径領域の減少を最小限に抑えることが可能となる。
【0012】
本発明において、第1及び第2のコイル部の内周端は、平面視で仮想線上に位置するものであっても構わない。これによれば、第1のコイル部のパターン形状と第2のコイル部のパターン形状を互いに同一とすることが可能となる。
【0013】
本発明において、第1のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された第1及び第2の導体部分を含み、第2のコイル部は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離された第3及び第4の導体部分を含むものであっても構わない。これによれば、電流密度の偏りが低減されるため、直流抵抗や交流抵抗を低減することが可能となる。
【0014】
本発明において、第1の導体部分は、第2の導体部分よりも外周側に位置し、第3の導体部分は、第4の導体部分よりも外周側に位置し、接続部は、第1の導体部分の内周端と第4の導体部分の内周端を接続する第1の接続部と、第2の導体部分の内周端と第3の導体部分の内周端を接続する第2の接続部を有するものであっても構わない。これによれば、内周側に位置する導体部分と外周側に位置する導体部分の電流密度分布がより均一化されるため、直流抵抗や交流抵抗をよりいっそう低減することが可能となる。
【0015】
本発明において、第1のコイル部は、最内周に位置する第1のターンと、第1のターンよりも1ターン外周に位置する第2のターンを含み、第2のコイル部は、最内周に位置する第3のターンと、第3のターンよりも1ターン外周に位置する第4のターンを含み、接続部は、第1のターンと第4のターンを接続する第3の接続部と、第2のターンと第3のターンを接続する第4の接続部を有するものであっても構わない。これによれば、合計ターン数を奇数ターンとすることが可能となる。
【0016】
本発明において、第1のコイル部を構成する複数ターンの円周領域と、第2のコイル部を構成する複数ターンの円周領域は、平面位置が互いに一致していても構わない。これによれば、絶縁基板が透明又は半透明である場合に、外観検査が容易となる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、コイル部品の外形の大型化やコイルの内径領域の減少を抑えつつ、一対の端子電極の周方向位置を隣接させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品の構成を示す断面図である。
図2図2は、第1のコイル部100のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図3図3は、第2のコイル部200のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の他方の表面11b側から見た状態を示している。
図4図4は、第1及び第2のコイル部100,200の重なり方を説明するための透過平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図5】本発明の第1の実施形態によるコイル部品の等価回路図である。
図6図6は、第1のコイル部100Aのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図7図7は、第1のコイル部100Bのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図8図8は、第1のコイル部100Cのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図9図9は、第1のコイル部100Dのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図10図10は、第1のコイル部100Eのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
図11図11は、従来のコイル部品に用いるコイル部のパターン形状を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるコイル部品の構成を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品は、絶縁基板11と、絶縁基板11の一方の表面11aに形成された第1のコイル部100と、絶縁基板11の他方の表面11bに形成された第2のコイル部200とを備えている。詳細については後述するが、第1のコイル部100の内周端Tiと第2のコイル部200の内周端Tiは、絶縁基板11を貫通して設けられた接続部THaを介して互いに接続されている。
【0022】
絶縁基板11の材料については特に限定されないが、PET樹脂などの透明又は半透明なフレキシブル材料を用いることができる。また、絶縁基板11は、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸されたフレキシブル基板であっても構わない。絶縁基板11が透明又は半透明である場合、平面視で第1のコイル部100と第2のコイル部200が重なって見えることから、これらの重なり方によっては検査装置を用いた外観検査が困難となる。詳細については後述するが、本実施形態によるコイル部品は、検査装置を用いた外観検査を正しく実行できるよう、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なる位置に配置されている。
【0023】
図2は、第1のコイル部100のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
【0024】
図2に示すように、第1のコイル部100は、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体によって構成される。図2に示す例では、第1のコイル部100がターン101~ターン105からなる5ターン構成であり、ターン101が最外周に位置し、ターン105が最内周に位置する。第1のコイル部100の外周端Toは、径方向に延在する引き出しパターン110を介して、端子電極E1aに接続される。また、引き出しパターン110に対して周方向に隣接する位置には、径方向に延在する引き出しパターン120が設けられており、その先端部は端子電極E2bに接続される。
【0025】
第1のコイル部100を構成する各ターン101~105は、径方向における位置が変化しない円周領域A1と、径方向における位置が遷移する遷移領域B1を有しており、この遷移領域B1を境界としてターン101~ターン105からなる5ターンが定義される。図2に示すように、本実施形態においては第1のコイル部100の外周端To及び内周端Tiがいずれも遷移領域B1に位置している。さらに、第1のコイル部100の中心点Cから放射状に延在し、引き出しパターン110と引き出しパターン120の間を通過する仮想線L0を引いた場合、遷移領域Bは仮想線L0上に位置している。また、第1のコイル部100の内周端Tiも仮想線L0上に位置している。
【0026】
図3は、第2のコイル部200のパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の他方の表面11b側から見た状態を示している。
【0027】
図3に示すように、第2のコイル部200のパターン形状は、第1のコイル部100のパターン形状と同一である。したがって、第1のコイル部100と第2のコイル部200は、同一のマスクを用いて作製することが可能であり、これによって製造コストを大幅に削減することが可能となる。第2のコイル部200は、ターン201~ターン205からなる5ターン構成であり、ターン201が最外周に位置し、ターン205が最内周に位置する。第2のコイル部200の外周端Toは、径方向に延在する引き出しパターン210を介して、端子電極E2aに接続される。また、引き出しパターン210に対して周方向に隣接する位置には、径方向に延在する引き出しパターン220が設けられており、その先端部は端子電極E1bに接続される。
【0028】
第2のコイル部200を構成する各ターン201~205は、径方向における位置が変化しない円周領域A2と、径方向における位置が遷移する遷移領域B2を有している。上述の通り、第1のコイル部100と第2のコイル部200は同一の平面形状を有しているため、仮想線L0は、第1のコイル部100の外周端Toと第2のコイル部200の外周端Toの間を通過することになる。また、第2のコイル部200の内周端Tiも仮想線L0上に位置している。
【0029】
このような構成を有する第1及び第2のコイル部100,200は、それぞれ絶縁基板11の一方の表面11a及び他方の表面11bに形成される。
【0030】
図4は、第1及び第2のコイル部100,200の重なり方を説明するための透過平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
【0031】
図4に示すように、第1のコイル部100と第2のコイル部200は、それぞれの中心点Cが一致し、且つ、端子電極E1a,E1bが重なり、端子電極E2a,E2bが重なるよう、絶縁基板11の表裏に形成される。これにより、第1のコイル部100のターン101~105の円周領域A1と、第2のコイル部200のターン201~205の円周領域A2は、その大部分が平面視で重なることになる。また、第1のコイル部100の内周端Tiと第2のコイル部200の内周端Tiは、絶縁基板11を貫通して設けられた接続部THaを介して接続される。これにより、第1のコイル部100と第2のコイル部200は図5に示すように直列接続され、合計で10ターンのスパイラルコイルが構成されることになる。
【0032】
また、引き出しパターン110と引き出しパターン220は、絶縁基板11を貫通して設けられた接続部THbを介して接続される。同様に、引き出しパターン120と引き出しパターン210は、絶縁基板11を貫通して設けられた接続部THcを介して接続される。これにより、端子電極E1a,E1bが短絡され、端子電極E2a,E2bが短絡されることになる。本実施形態においては、接続部THaを4個設け、接続部THb,THcをそれぞれ3個設けているが、これら接続部の個数については特に限定されるものではない。
【0033】
以上が本実施形態によるコイル部品の構成である。このように、本実施形態によるコイル部品は、互いに同じ平面形状を有する第1のコイル部100と第2のコイル部200によって構成されていることから、同じパターン形状を有するマスクを用いて第1のコイル部100と第2のコイル部200を作製することができ、製造コストを削減することができる。しかも、遷移領域B1,B2と重なる部分を除き、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なることから、絶縁基板11が透明又は半透明である場合であっても、第1のコイル部100と第2のコイル部200の視覚的な干渉を最小限に抑えることができる。つまり、第1のコイル部100を外観検査する際に第2のコイル部200が視覚的な障害とならず、逆に、第2のコイル部200を外観検査する際に第1のコイル部200が視覚的な障害とならない。これにより、検査装置を用いた外観検査を正しく実行することが可能となる。
【0034】
さらに、本実施形態によるコイル部品は、第1及び第2のコイル部100,200の外周端To及び内周端Tiを遷移領域B1,B2に配置していることから、第1のコイル部100の外周端Toと第2のコイル部200の外周端Toを互いに隣接する位置に配置しているにもかかわらず、円周領域A1,A2の増大によるコイル部の外形の大型化や、コイルの内径領域の減少を防止することが可能となる。
【0035】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態によるコイル部品について説明する。第2の実施形態によるコイル部品は、上述した第1及び第2のコイル部100,200が第1及び第2のコイル部100A,200Aに置き換えられている点において、第1の実施形態によるコイル部品と相違している。その他の構成は、第1の実施形態によるコイル部品と同一であることから、同一の要素には同一の部号を付し、重複する説明は省略する。
【0036】
図6は、第1のコイル部100Aのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。本実施形態においても、第1のコイル部100Aと第2のコイル部200Aのパターン形状は同一であるため、図6の一部には、第2のコイル部200Aに対応する符号を括弧書きで表記している。
【0037】
図6に示すように、第1のコイル部100Aは、ターン105のさらに内周にターン106が追加されている点において、図2に示した第1のコイル部100と相違している。ターン106の導体幅は、他のターン101~105の導体幅の約半分である。また、ターン105の内周端はターン106から分岐しており、この部分に接続部THa1が設けられる。一方、ターン106の内周端には接続部THa2が設けられる。接続部THa1と接続部THa2は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置されている。
【0038】
かかる構成により、絶縁基板11を介して第1のコイル部100Aと第2のコイル部200Aを重ねると、接続部THa1を介して第1のコイル部100Aのターン105の内周端と第2のコイル部200Aのターン206の内周端が接続され、接続部THa2を介して第1のコイル部100Aのターン106の内周端と第2のコイル部200Aのターン205の内周端が接続される。その結果、合計で11ターンのスパイラルコイルが構成されることになり、表裏で同一のパターン形状を用いているにもかかわらず、奇数ターンのスパイラルコイルを実現することが可能となる。
【0039】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態によるコイル部品について説明する。第3の実施形態によるコイル部品は、上述した第1及び第2のコイル部100,200が第1及び第2のコイル部100B,200Bに置き換えられている点において、第1の実施形態によるコイル部品と相違している。その他の構成は、第1の実施形態によるコイル部品と同一であることから、同一の要素には同一の部号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
図7は、第1のコイル部100Bのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。本実施形態においても、第1のコイル部100Bと第2のコイル部200Bのパターン形状は同一であるため、図7の一部には、第2のコイル部200Bに対応する符号を括弧書きで表記している。
【0041】
図7に示すように、第1のコイル部100Bは、ターン101~106からなる6ターン構成であり、これにより合計で12ターンのスパイラルコイルが構成される。また、各ターン101~106は、スパイラル状のスリットによって径方向に分離されている。これにより、ターン101~106は、外周側に位置する導体部分101a~106aと、内周側に位置する導体部分101b~106bに分離される。最内周ターンであるターン106のうち、導体部分106aの内周端には接続部THa3が設けられ、導体部分106bの内周端には接続部THa4が設けられる。そして、接続部THa3と接続部THa4は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置されている。
【0042】
かかる構成により、絶縁基板11を介して第1のコイル部100Bと第2のコイル部200Bを重ねると、接続部THa3を介して第1のコイル部100Bの導体部分106aの内周端と第2のコイル部200Bの導体部分206bの内周端が接続され、接続部THa4を介して第1のコイル部100Bの導体部分106bの内周端と第2のコイル部200Bの導体部分206aの内周端が接続される。
【0043】
このように、本実施形態によるコイル部品は、各ターンがスパイラル状のスリットによって径方向に分離されていることから、このようなスリットを設けない場合と比べて、電流密度の偏りが低減される。その結果、直流抵抗や交流抵抗を低減することができる。しかも、第1のコイル部100Bにおいて外周側に位置する導体部分101a~106aが第2のコイル部200Bにおいて内周側に位置する導体部分201b~206bに接続され、第1のコイル部100Bにおいて内周側に位置する導体部分101b~106bが第2のコイル部200Bにおいて外周側に位置する導体部分201a~206aに接続されることから、内外周差が相殺される。これにより、電流密度分布がより均一化されることから、直流抵抗や交流抵抗をよりいっそう低減することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態においては、第1及び第2の実施形態と比べて、端子電極E1aと端子電極E2bの位置が入れ替わっている。このように、本発明において端子電極E1aと端子電極E2bの位置関係は任意である。
【0045】
<第4の実施形態>
図8は、第4の実施形態に用いる第1のコイル部100Cのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
【0046】
第1のコイル部100Cは、図7に示した第1のコイル部100Bに含まれる導体部分106bを削除し、導体部分105bの内周端に接続部THa5を設けた構成を有している。その他の構成は、図7に示した第1のコイル部100Bと同一であることから、同一の要素には同一の部号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においても、第1のコイル部100Cと第2のコイル部200Cのパターン形状は同一であるため、図8の一部には、第2のコイル部200Cに対応する符号を括弧書きで表記している。
【0047】
図8に示すように、接続部THa3と接続部THa5は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置されている。かかる構成により、絶縁基板11を介して第1のコイル部100Cと第2のコイル部200Cを重ねると、接続部THa3を介して第1のコイル部100Cの導体部分106aの内周端と第2のコイル部200Cの導体部分205bの内周端が接続され、接続部THa5を介して第1のコイル部100Cの導体部分105bの内周端と第2のコイル部200Cの導体部分106aの内周端が接続される。
【0048】
その結果、合計で11ターンのスパイラルコイルが構成されることになり、表裏で同一のパターン形状を用いているにもかかわらず、奇数ターンのスパイラルコイルを実現することが可能となる。
【0049】
<第5の実施形態>
次に、第5の実施形態によるコイル部品について説明する。第5の実施形態によるコイル部品は、上述した第1及び第2のコイル部100,200が第1及び第2のコイル部100D,200Dに置き換えら得ている点において、第1の実施形態によるコイル部品と相違している。その他の構成は、第1の実施形態によるコイル部品と同一であることから、同一の要素には同一の部号を付し、重複する説明は省略する。
【0050】
図9は、第1のコイル部100Dのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。本実施形態においても、第1のコイル部100Dと第2のコイル部200Dのパターン形状は同一であるため、図9の一部には、第2のコイル部200Dに対応する符号を括弧書きで表記している。
【0051】
図9に示すように、第1のコイル部100Dは、ターン101~105からなる5ターン構成であり、これにより合計で10ターンのスパイラルコイルが構成される。また、各ターン101~105は、スパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されている。これにより、ターン101~105は、最も外周側に位置する導体部分101a~105aと、2番目に外周側に位置する導体部分101b~105bと、2番目に内周側に位置する導体部分101c~105cと、最も内周側に位置する導体部分101d~105dに分離される。最内周ターンであるターン105のうち、導体部分105a~105dの内周端には、それぞれ接続部THa6~THa9が設けられる。そして、接続部THa6と接続部THa9は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置され、接続部THa7と接続部THa8は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置される。
【0052】
かかる構成により、絶縁基板11を介して第1のコイル部100Dと第2のコイル部200Dを重ねると、接続部THa6を介して第1のコイル部100Dの導体部分105aの内周端と第2のコイル部200Dの導体部分205dの内周端が接続され、接続部THa7を介して第1のコイル部100Dの導体部分105bの内周端と第2のコイル部200Dの導体部分205cの内周端が接続され、接続部THa8を介して第1のコイル部100Dの導体部分105cの内周端と第2のコイル部200Dの導体部分205bの内周端が接続され、接続部THa9を介して第1のコイル部100Dの導体部分105dの内周端と第2のコイル部200Dの導体部分205aの内周端が接続される。
【0053】
このように、本実施形態によるコイル部品は、各ターンがスパイラル状の3本のスリットによって径方向に4分割されていることから、電流密度の偏りがよりいっそう低減される。その結果、直流抵抗や交流抵抗をよりいっそう低減することができる。しかも、最も外周側に位置する第1のコイル部100Dの導体部分101a~105aが最も内周側に位置する第2のコイル部200Dの導体部分201d~205dに接続され、2番目に外周側に位置する第1のコイル部100Dの導体部分101b~105bが2番目に内周側に位置する第2のコイル部200Dの導体部分201c~205cに接続され、2番目に内周側に位置する第1のコイル部100Dの導体部分101c~105cが2番目に外周側に位置する第2のコイル部200Dの導体部分201b~205bに接続され、最も内周側に位置する第1のコイル部100Dの導体部分101d~105dが最も外周側に位置する第2のコイル部200Dの導体部分201a~205aに接続されることから、内外周差が相殺される。これにより、電流密度分布がより均一化されることから、直流抵抗や交流抵抗をよりいっそう低減することが可能となる。
【0054】
<第6の実施形態>
図10は、第6の実施形態に用いる第1のコイル部100Eのパターン形状を説明するための平面図であり、絶縁基板11の一方の表面11a側から見た状態を示している。
【0055】
第1のコイル部100Eは、図9に示した第1のコイル部100Dに導体部分106a,106bを追加し、導体部分106a,106bの内周端にそれぞれ接続部THa10,THa11を設けた構成を有している。その他の構成は、図9に示した第1のコイル部100Dと同一であることから、同一の要素には同一の部号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態においても、第1のコイル部100Eと第2のコイル部200Eのパターン形状は同一であるため、図10の一部には、第2のコイル部200Eに対応する符号を括弧書きで表記している。
【0056】
図10に示すように、接続部THa6と接続部THa11は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置され、接続部THa7と接続部THa10は、仮想線L0に対して対称となる位置に配置されている。かかる構成により、絶縁基板11を介して第1のコイル部100Eと第2のコイル部200Eを重ねると、接続部THa6を介して第1のコイル部100Eの導体部分105cの内周端と第2のコイル部200Eの導体部分206bの内周端が接続され、接続部THa7を介して第1のコイル部100Eの導体部分105dの内周端と第2のコイル部200Eの導体部分206cの内周端が接続され、接続部THa10を介して第1のコイル部100Eの導体部分106aの内周端と第2のコイル部200Eの導体部分205dの内周端が接続され、接続部THa11を介して第1のコイル部100Eの導体部分106bの内周端と第2のコイル部200Eの導体部分105cの内周端が接続される。
【0057】
その結果、合計で11ターンのスパイラルコイルが構成されることになり、表裏で同一のパターン形状を用いているにもかかわらず、奇数ターンのスパイラルコイルを実現することが可能となる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
11 絶縁基板
11a 絶縁基板の一方の表面
11b 絶縁基板の他方の表面
100,100A~100E 第1のコイル部
200,200A~200E 第2のコイル部
101~106,201~206 ターン
101a~106a,101b~106b,101c~105c,101d~105d,201a~206a,201b~206b,201c~205c,201d~205d 導体部分
110,120,210,220 引き出しパターン
A1,A2 円周領域
B1,B2 遷移領域
C 中心点
E1a,E1b,E2a,E2b 端子電極
L0 仮想線
THa,THa1~THa11,THb,THc 接続部
Ti 内周端
To 外周端
図1
図2
図3
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図5
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図11