(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20220426BHJP
G08G 1/015 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/015
(21)【出願番号】P 2017241415
(22)【出願日】2017-12-18
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】倉田 光次
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158983(WO,A1)
【文献】特開昭60-213585(JP,A)
【文献】特開2012-011886(JP,A)
【文献】特開2017-102666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/015
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両から他車両を撮像する撮像手段と、
前記他車両が所定の距離内を走行しているか否かを判定する車間距離判定手段と、
前記撮像手段が撮像した画像に基づいて、前記他車両が、(a)車輪が3つ以上であること、及び、(b)単座又は二人乗り用として前記他車両の前後方向に座席を並べた座席配置がされていることを満たす場合、前記他車両を小型運転車両として判別する車両判別手段と
、
前記車両判別手段が前記他車両を前記小型運転車両として判別した場合に、前記画像に基づいて、前記小型運転車両が前記自車両に対して影響を及ぼすか否かを判定する他車両監視手段と、を具備し、
交差点にて、
(1)前記他車両が一旦停止なしで前記交差点に進入し始めたこと、
(2)前記他車両が前記交差点に入る道路の中央寄りを走行していること、
(3)前記他車両が前記交差点に入る道路の中央寄りに進路を変更し始めたこと、
のいずれか一つに該当している場合に、
前記他車両監視手段は、前記小型運転車両が前記自車両に対して影響を及ぼすと判定することを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
前記車両判別手段は、(b)の条件を満たすか否かを、前記他車両の一対のバックミラーの間隔が人ひとり分相当であるか否かに基づいて判断することを特徴とする請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記車両判別手段は、(c)前記座席が、前記他車両の外部から認識可能であり、且つ、前記座席がシートバックを備えることをさらに満たす場合に、前記他車両が小型運転車両として判別することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記車両判別手段は、(d)前記座席に一対のアームレストが備えられていることをさらに満たす場合に、前記他車両を小型運転車両として判別することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記小型運転車両が、前記自車両の走行に対して影響を及ぼすと判断される場合に、警報手段を制御して、前記自車両の運転者に対して警報を行う運転制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項
1から請求項4のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記小型運転車両が、前記自車両の走行に対して影響を及ぼすと判断される場合に、減速手段を制御して、前記自車両に前記小型運転車両の回避行動を行わせる運転制御手段をさらに具備することを特徴とする請求項
1から請求項5のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記所定の距離は、前記自車両が安全に停止できる距離であることを特徴とする請求項1から請求項
6のいずれかに記載の運転支援装置。
【請求項8】
前記小型運転車両を、小型電動車両とすることを特徴とする請求項1から請求項
7のいずれかに記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化社会では、高齢者が、いわゆるシニアカー等の小型電動車両を運転し、一般道を走行する機会が増えていることが予測されている。一方、今後、自動四輪車の自動運転が普及することも予測されている。
【0003】
自動運転車両の普及は、交通量が圧倒的に多い都市部よりも、農村部又は離島のような交通量が比較的少ない地域で先行することが予測されている。
【0004】
交通量が比較的少ない地域では、小型電動車両を運転する高齢者が都市部に比べて多いので、自動運転車両が小型電動車両と共に道路を走行する場合も多くなることが予測される。
【0005】
シニアカー等の小型電動車両を運転する高齢者は、一般的に、衰えから、周囲状況認知能力が低い傾向が高い。このため、ウインカーを点灯するのを忘れて右折又は左折を行ったり、一時停止状態から後方確認を十分に行わずに発進したり、交差点に一時停止なしで進入したり、前兆現象がなく行動を起こすことが多い。
【0006】
また、当該高齢者は、歩行者に近い感覚で運転を行う傾向も高い。このため、道路中央を低速度で走行するといった交通法規を遵守する意識が低いことも多い。
【0007】
特に、シニアカーは、車両が小型であるだけでなく、タイヤが小径で、且つ、ボディが低いため、曲がる方向を判別し難い。
【0008】
高齢者に交通安全教育を実施し、自助努力を期待しても衰えは避けることができず、限界がある。このため、自動運転車両の側で、高齢者が運転する蓋然性が高い小型電動車両を認識し、注意を払い、必要に応じて回避行動を行い、予防安全を図ることが重要になる。
【0009】
物体をテレビカメラで撮影し、テレビカメラの映像を処理することにより車両等の物体の動きを認識する物体認識装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
特許文献1には、道路をテレビカメラで撮影し、道路上を走行する車両の認識手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、車両の種類を見分けること、特にシニアカー等の小型電動車両を見分けることについては言及がない。したがって、高齢者が運転する蓋然性が高い小型電動車両を他の車両から見分け、運転者にその存在を通知したり、自動運転車両に回避行動を行わせたりして、予防安全を行うことについては検討されていない。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、小型運転車両を認識して予防安全を向上できる運転支援装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の運転支援装置の一態様は、自車両から他車両を撮像する撮像手段と、前記他車両が所定の距離内を走行しているか否かを判定する車間距離判定手段と、前記撮像手段が撮像した画像に基づいて、前記他車両が、(a)車輪が3つ以上であること、及び、(b)単座又は二人乗り用として車両の前後方向に座席を並べた座席配置がされていることを満たす場合、前記他車両を小型運転車両として判別する車両判別手段と、前記車両判別手段が前記他車両を前記小型運転車両として判別した場合に、前記画像に基づいて、前記小型運転車両が前記自車両に対して影響を及ぼすか否かを判定する他車両監視手段と、を具備し、交差点にて、(1)前記他車両が一旦停止なしで前記交差点に進入し始めたこと、(2)前記他車両が前記交差点に入る道路の中央寄りを走行していること、(3)前記他車両が前記交差点に入る道路の中央寄りに進路を変更し始めたこと、のいずれか一つに該当している場合に、前記他車両監視手段は、前記小型運転車両が前記自車両に対して影響を及ぼすと判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型運転車両を認識して予防安全を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す側面図である。
【
図2】本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す正面図である。
【
図3】本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す背面図である。
【
図4】交差点における自車両とシニアカーとの関係を示す模式図である。
【
図5】本実施の形態に係る運転支援装置の概略構成図である。
【
図6】本実施の形態に係る運転支援装置の制御フローを示す図である。
【
図7】本実施の形態において自車両の前方状況と前方画像との関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<概要>
本発明者は、小型電動車両は高齢者が運転する蓋然性が高いので、運転支援装置により、小型電動車両を一般の車両と見分け、自車両の周囲の小型電動車両に対して運転者の注意を喚起し、及び、必要に応じて自車両に回避行動を実施させ、予防安全を向上することについて鋭意検討した。
【0018】
小型電動車両を認識するために、画像認識技術を利用することが考えられる。例えば、撮像手段で撮像した画像を、画像認識技術を用いて処理し、車両の輪郭(シルエット)を把握し、既知の小型電動車両の輪郭と近似していれば、小型電動車両であると判別することが考えられる。
【0019】
しかし、農機(トラクタ、田植え機、コンバイン等)、小型建設機械(ミニショベル等)、或いは、三輪又は四輪スクターの中には、小型電動車両と輪郭が似たものが存在する。このため、車両の輪郭だけで小型電動車両を判別することは難しい。
【0020】
そこで、車輪の数、座席の構造及び配置等の特徴に基づいて、小型電動車両、特にシニアカーを見分けることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る運転支援装置を自動四輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る運転支援装置を他のタイプの車両(例えば、自動二輪車、自動三輪車等の鞍乗型車両)に適用してもよい。以下の説明では、鞍乗型車両については、自動二輪車を代表例として説明する。
【0022】
本実施の形態では、(a)車輪が3つ以上であること、及び、(b)単座又は二人乗り用として前後方向に座席を並べた座席配置がされていることの両方を満たす車両を、小型電動車両として判別する。
【0023】
この小型電動車両には、シニアカーが含まれる。シニアカーは、ハンドル付電動車いす又は電動カートとも呼ばれ、三輪又は四輪の一人乗りの電動車両であり、日本の道路交通法では、原動機を用いる身体障害者用の車いすに分類され、歩行者として取り扱われる。
【0024】
シニアカーは、最高速度が低く、例えば、時速6kmであるが、特に限定されない。
【0025】
シニアカーの車両サイズは、例えば、全長1190mm、幅650mm、全高1080mであるが、特に限定されない。
【0026】
シニアカー以外の車両であっても、高齢者により運転される蓋然性が高いため、本実施の形態では、(a)、(b)の条件に適合すれば、小型電動車両に該当する。
【0027】
シニアカー以外の小型電動車両は、日本の道路交通法で、身体障害者用の車いすに該当せず、自動車又は原動機付自転車として取り扱われてもよい。
【0028】
(b)の条件には、例えば、単座式(ワンシーター)車両が該当する。すなわち、人ひとりが着座可能な座席が一つのみである場合が該当する。
【0029】
また、(b)の条件には、また、前後にそれぞれ人ひとりが着座可能な座席を備えた二人乗り(ツーシーター)車両も該当する。
【0030】
さらに、(b)の条件を満たすか否かは、例えば、小型電動車両は、(b’)一対のバックミラーの間隔が人ひとり分相当であるか否かに基づいて判断することができる。ここで、「人ひとり分」とは、例えば、厚生労働省が発表する日本人の身長の平均から算出することで求めることができる。また、「人ひとり分相当」であるとは、一対のバックミラーの中心の間の距離が人ひとり分とまったく同一である必要はなく、予め定めた「人ひとり分」の長さに対して、プラス〇〇cm、マイナス△△cmというような任意の範囲内であればよいことを意味する。
【0031】
ここで一対のバックミラーには、左右一対で車両に設けられるものであり、ドアミラー、フェンダーミラー、サイドミラー、ハンドルエンドミラー等が含まれる。
【0032】
また、(b”)風防(キャノピー等)を車両が備えている場合、風防の幅が人ひとり分相当であるか否かに基づいて判断することができる。
【0033】
さらに、本実施の形態において、小型電動車両のうちシニアカーを認識対象としてもよい。シニアカーを認識する場合、(a)、(b)の他に、(c)座席が、むき出し又は風防(キャノピー等)で覆われているが車両外部から認識可能であり、且つ、座席がシートバック(背もたれ)を備えることを条件として加えることで、シニアカーを認識することができる。
【0034】
さらに、(d)座席に一対のアームレスト(肘掛)が備えられていることを条件に加えてもよい。特に、(d’)シートバックからボディの前方に向ってアームレストが略水平に伸びるようにして配置されていることを条件に加えてもよい。
【0035】
本実施の形態に係る運転支援装置は、自車両の周囲に小型電動車両が存在し、自車両の走行に対して影響を及ぼすと判断した場合、運転者への警告又は回避行動を行わせることが好ましい。
【0036】
以下、本実施の形態に係る運転支援装置において、シニアカーを対象車両として認識する場合を例に挙げて説明する。
【0037】
<シニアカーの構成>
図1~
図3を参照して、認識対象である小型電動車両の一例であるシニアカーの具体例について説明する。
図1は、本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す側面図である。
図2は、本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す正面図である。
図3は、本実施の形態に係るシニアカーの一例を示す背面図である。
【0038】
図1~
図3に示すシニアカー1は、小型電動車両として必要な構成、例えば、駆動系(電動モータ等)、伝達系(ギア等)、操舵系(ハンドル等)、制動系(ブレーキ等)、照明系(ヘッドライト、ウインカー等)を備えていることは当業者であれば容易に理解できるであろう。以下の説明では、本発明を理解するために必要な構成についてだけ説明する。
【0039】
シニアカー1は、ボディ(車体)2の前後に、車輪の一例であるタイヤ3a~3dを2ずつ備えた四輪車である。シニアカー1は、ボディ2の後方寄りに、座席の一例であるシートユニット4が配置されている。シートユニット4は、ボディ2の後部であってフェンダー2a、2bの位置よりも上方の位置に取り付けられている。
【0040】
シートユニット4は、運転者Aが着座するためのシートクッション(座面)4aと、シートクッション4aの後端部に設けられたシートバック(背もたれ)4bと、シートバック4bの両側面部に設けられた一対のアームレスト(肘掛)4c、4dで構成されている。
【0041】
アームレスト4c、4dは、シートバック4bからボディ2の前方へ略水平に伸びるようにして配置されている。
【0042】
また、シニアカー1のハンドル5には、一対のバックミラー6a、6bが設けられている。
【0043】
<交差点でのシニアカーの行動>
次に、
図4を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置が適用されるシニアカーの交差点での課題について説明する。
図4は、交差点における自車両とシニアカーとの関係を示す模式図である。
図4に示すように、交差点Xは、上下二車線(片側一車線)の主道路R1に、道幅が狭い従道路R2が交差する。
【0044】
図4に示す車両(以下、自車両と記載)10、20、30は、本実施の形態に係る運転支援装置を搭載する。自車両10、20は、四輪自動車であり、自車両30は、二輪自動車である。
【0045】
まず、従道路R2を走行する自車両10の前方にシニアカー1が存在する場合を例に挙げて説明する。
【0046】
自車両10の前方を走行するシニアカー1は、従道路R2から主道路R1に合流しようとしている。
【0047】
シニアカー1の行動のうち、自車両10の走行に影響を与える場合として、以下の行動が考えられる。
(1)シニアカー1が一旦停止なしで交差点Xに進入すること、
(2)シニアカー1が従道路R2の中央寄りを走行し、その後、交差点Xに進入し、主道路R1に合流すること、及び
(3)シニアカー1が従道路R2の中央寄りに進路を変更し、その後、交差点Xに進入し、主道路R1に合流すること。
【0048】
しかし、自車両10の運転手にとって、シニアカー1は小型であり、且つ、ボディ2が低く、タイヤ3a~3dの向きやボディ2の向きからシニアカー1が進む方向を予測することが難しい。
【0049】
しかも、シニアカー1を高齢者が運転する場合、ウインカーを出し忘れたり、交通規則遵守の意識が低くかったりするため、さらにシニアカー1の行動予測がし難い。本実施の形態の運転支援装置は、(1)~(3)のようなシニアカー1の行動に対する予防安全を向上することを一つの目的としている。
【0050】
<運転支援装置>
以下、本実施の形態に係る運転支援装置100の構成について説明する。
図5は、本実施の形態に係る運転支援装置の概略構成図である。なお、運転支援装置100が適用される自車両10において、自動四輪車が通常備えている構成(エンジン、タイヤ等)は備えているものとし、説明は省略する。以下の説明で単に自車両10と記載した場合には、自車両10には、同じく自動四輪車である自車両20及び自動二輪車である自車両30が含まれる。
【0051】
本実施の形態に係る運転支援装置100(
図1参照)は、処理部の一例であるECU(Electronic Control Unit)101を備えている。ECU101は、例えば、各種処理を実行するプロセッサにより構成される。
【0052】
ECU101は、処理部としてプログラムを実行することにより、車間距離判定手段102と、車両判別手段103と、他車両監視手段104と、運転制御手段105と、を実現可能に構成されている。
【0053】
また、運転支援装置100は、自車両10の前方を撮像する撮像手段の一例として、前方カメラ106を備え、その出力がECU101に入力されるように電気的に接続されている。
【0054】
車間距離判定手段102は、前方カメラ106により撮像した自車両10の前方画像に基づいて自車両10と前方を走行する車両(以下、他車両と記載する)との距離が所定の距離内であるか否か判定を行うように構成されている。
【0055】
車両判別手段103は、後述するように、前方画像に含まれる他車両がシニアカーか否かを判定するように構成されている。
【0056】
他車両監視手段104は、後述するように、前方カメラ106により撮像した前方画像に基づいて、他車両、すなわちシニアカー1が、自車両10の走行に影響を与えるか否かを判定するように構成されている。
【0057】
運転制御手段105は、他車両監視手段104からの出力に応じて警報手段107に警報を行わせ、又は、減速手段108に自車両10の減速を行わせるように構成されている。
【0058】
警報手段107は、自車両10の運転者に対して警報を行うものである。警報手段107は、例えば、警報音発生器及びスピーカで構成されてもよいし、警報に関する情報を表示するディスプレイ、例えば、スピードメータのディスプレイやナビゲーションシステムのディスプレイで構成されてもよい。
【0059】
また、警報手段107は、例えば、振動発生手段の一例であるステアリング振動手段(不図示)で構成されてもよい。ステアリング振動手段は、ステアリング(不図示)に振動を発生させる。ステアリング振動手段は、例えば、ステアリングに内蔵される振動モータ等の振動デバイスと、振動デバイスに振動指示を与える指示装置とで構成される。
【0060】
減速手段108は、自車両10が行う回避行動の一例として自車両10の速度を減速するものである。減速手段108の例としては、車輪の回転を制動するブレーキ装置等が挙げられる。なお、減速手段108は、運転者の直接の操作に伴って作動するブレーキ装置に限らず、その他、ハイブリッド車や電動自動車における回生ブレーキや、変速に伴うエンジンブレーキ等、ECU等によって自動的に制御される手段も含むものとする。
【0061】
自車両10は、本発明の実施のためには、他車両の認識のために撮像手段(前方カメラ106)を備えていれば足りるが、この他にレーダ等を備えていてもよい。例えば、車間距離判定手段102は、レーダを用いて車間距離を測定してもよい。
【0062】
以上、
図5を参照して自車両10として自動四輪車に搭載された運転支援装置100について説明した。自動二輪車(鞍乗型車両の一例)である自車両30に運転支援装置100を搭載することも可能である。自動四輪車と自動二輪車との相違は、まず、ディスプレイに情報を表示させる代わりに、例えば、ヘルメットに内蔵された外部通信機器(不図示)に、通信手段(不図示)を用いて情報を送信し、例えば音声により情報を運転者に提供する点にある。もちろん、自動四輪車の場合と同様に、自動二輪車に搭載された車載機器を用いてもよい。
【0063】
また、外部通信機器として、スマートグラスのようなヘッドマウントディスプレイを用い、情報を表示させることも可能である。
【0064】
しかしながら、自動四輪車と自動二輪車とで運転支援装置100が同じ構成であってもよいことは言うまでもない。
【0065】
次に、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローについて説明する。
図6は、本実施の形態に係る運転支援装置100の制御フローを示す図である。
【0066】
<車間距離判定処理>
まず、車間距離判定手段102(
図5参照)は、自車両10の前方の所定の距離内に他車両が存在するか否か判定する(ST101)。
【0067】
図7は、本実施の形態において自車両10の前方状況と前方画像との関係を示す模式図である。
図7に示すように、自車両10(
図4参照)の前方を走行する他車両の一例であるシニアカー1が、前方カメラ106によって撮像される前方画像201の範囲内に入ってくる。車間距離判定手段102(
図5参照)は、前方画像201の左下隅を原点Oとする座標系を設定する。そして、当該座標系におけるy方向(
図7の上下方向)の値と自車両10の前端からの距離の実測値に基づいて、所定の距離に対応するy方向の値Yを決定し、値Yを通り、x方向(
図7中の左右方向)に平行な判定ラインAを設定する。そして、車間距離判定手段102は、シニアカー1の最下端を通る仮想線B(
図7中破線で示す)のy方向の値y
1が、判定ラインAのy方向の値Yよりも小さい場合、言い換えれば、仮想線Bが判定ラインAよりも原点Oに近い場合、自車両10とシニアカー1との車間距離が所定の距離未満であると判定する。
【0068】
ここで、所定の距離については、自車両10が安全に停止できる距離が一応の目安である。アスファルト及び路面が乾燥している条件下では、自車両10の速度が時速40kmであれば17m、時速60kmであれば32mが確保できれば自車両10が安全に停止できることを考慮すれば、一例として、所定の距離を40mとすることができる。
【0069】
<車両判定処理>
ST101において、判定がNOであれば、ST101に戻る。ST101において、判定がYESであれば、車両判別手段(
図5参照)103が、前方画像について画像認識処理を施し、他車両がシニアカー1(
図1参照)であることを示す条件を満たすか否かを判定する(ST102)。
【0070】
シニアカーであることを示す条件の一例は、以下の通りである。
(a-1)タイヤが3つ以上であること、
(b-1)単座式であること、
(c-1)シートユニットが他車両の後方から認識可能であり、シートユニットがシートバックを備えること、及び
(d-1)シートユニットに一対のアームレストが備えられ、バックシートからボディの前方へ略水平に伸びるようにして配置されていること。
【0071】
車両判別手段103は、以上列挙した条件(a-1)~(d-1)のすべてを満たす場合に、他車両がシニアカー1であると判別する。
【0072】
条件(a-1)~(d-1)を満たすかどうかは、画像認識技術を用いて行うことができる。画像認識技術は、前方画像から特徴部分(タイヤ、シートユニット等)を直接認識してもよいし、パターンマッチング(テンプレートマッチング)を応用してもよく、当業者が適宜選択して用いることができる。
【0073】
条件(b-1)に関し、単座式であるか否かは、他車両の一対のバックミラーの間隔が人ひとり分相当であるかどうかで判定してもよい。また、他車両がキャノピー(風防)付シニアカーである場合、キャノピーの幅が人ひとり分相当であるどうかで判定してもよい。
【0074】
次に、ST103において、運転制御手段105は、車両判別手段103が、他車両がシニアカーであると判別したか否かを判定する。ST103において、判定がYESであれば、運転制御手段105は、ST104に進み、シニアカー向けの運転支援処理を開始する。一方、ST103において、判定がNOであれば、シニアカー以外の一般車両向けの通常運転支援処理を行う(ST105)。通常運転支援処理が完了したならばST101に戻る。
【0075】
<他車両監視処理>
次に、他車両監視手段104は、例えば、上述の前方画像を画像解析し、以下の条件のいずれか一つに該当している場合、シニアカー1が自車両10の走行に影響を与えると判断する(ST104)。
(A)シニアカー1が一旦停止なしで交差点X(
図4参照)に進入し始めたこと、
(B)シニアカー1が従道路R2(
図4参照)の中央寄りを走行していること、又は
(C)シニアカー1が従道路R2(
図4参照)の中央寄りに進路を変更し始めたこと。
【0076】
ここで列挙した条件(A)~(C)以外にも、シニアカー1が自車両10の走行に影響を与える可能性があると考えられる様々な条件を適用してもよい。
【0077】
<注意喚起及び減速制御>
次に、他車両監視手段104での判断に基づき、運転制御部105が、シニアカー1が自車両10の走行に影響を及ぼすか否かを判定する(ST106)。ST106において、判定がYESであれば、運転制御手段105は、警報手段107により自車両10の運転者に対して警報音や警報の表示を行わせ、注意喚起を行わせる(ST107)。ST106において、判定がNOであれば、ST101に戻る。
【0078】
次に、運転制御手段105は、シニアカー1による影響が及ぼす状況が継続されているか否かを判定する(ST108)。
【0079】
ST108の判定は、特に限定されないが、運転制御手段105が、車間距離判定手段102からの出力に基づいて、シニアカー1が自車両10の前方の所定の距離内に存在するか否かに基づいて行ってもよい。
【0080】
ST108において、判定がNOであれば、ST101に戻る。判定がYESであれば、運転制御手段105は、減速手段108に、例えば、最徐行速度まで減速を行わせ(ST109)、処理を終了する。
【0081】
なお、ST109では、警報及び減速のいずれか一方を行ってもよいし、両方を行ってもよい。
【0082】
以上説明した運転支援装置100における制御フローに示した各処理の順番は一例であり、当業者であれば変更が可能であることは容易に理解できるであろう。
【0083】
以上、自車両10を例に挙げて説明したが、
図4に示す自車両20が運転支援装置100を備えている場合、
図4に示す交差点Xにおいて、従道路R2からシニアカー1が主道路R1に合流してきた場合、シニアカー1の側面側を前方カメラ106で撮像した前方画像に基づいて、他車両がシニアカー1であることを見分け、シニアカー1が自車両20に対して影響を及ぼすか否かを判定し、警報又は回避行動を自車両20に行わせるようにすることができる。
【0084】
自動二輪車である自車両30についても同様に運転支援装置100を備え付け、
図4に示す交差点Xにおいて、従道路R2からシニアカー1が主道路R1に合流してきた場合、シニアカー1の側面側を前方カメラ106で撮像した前方画像に基づいて、他車両がシニアカー1であることを見分け、シニアカー1が自車両30に対して影響を及ぼすか否かを判定し、警報又は回避行動を自車両30に行わせるようにすることができる。
【0085】
以上説明したように、本実施の形態に係る運転支援装置100によれば、画像認識処理を用い、小型電動車両の一例であるシニアカー1を一般の車両と見分けることができる。シニアカー1は、高齢者が運転している蓋然性が高く、且つ、ボディが小さいため、行動予測が困難であるが、運転者に注意を喚起し、自車両10、20、30に必要な回避行動を適切に実施させることができる。この結果、シニアカー1に対する予防安全を向上し、自車両10、20、30の運転者の運転負担を軽減することができる。
【0086】
特に、自動運転車両の導入が先行して進むことが予測される交通量が比較的少ない地域では、農機等が道路を走行することが多いので、農機等の輪郭がシニアカー1に近似していても、本実施の形態に係る運転支援装置100によれば、農機等とシニアカー1とを見分けることができるので特に有益である。
【0087】
また、交通量が比較的少ない地域では、高齢者の交通法規遵守の意識がより低い傾向になることが懸念される。さらに、交通量が比較的少ない地域では、都市計画による計画道路でない、昔からの車幅が狭い道路が多く存在し、都市部以上に予防安全が重要である。したがって、本実施の形態に係る運転支援装置100により、高齢者が運転するシニアカー1に対する予防安全を向上できることは特に有益である。
【0088】
また、本実施の形態に係る運転支援装置100は、撮像手段(前方カメラ106)及び画像認識処理(車間距離判定処理及び車両判定処理)を利用するので簡易に且つ安価に実現できる。
【0089】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0090】
例えば、上記実施の形態においては、小型電動車両としてシニアカー1(
図1~
図3参照)を対象としている。しかし、小型電動車両はシニアカー1に限定されない。例えば、単座式又は二人乗りの小型電動車両と類似構造を採用するシニアカー1以外の小型電動車両も対象としてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態においては、自車両10、20、30の回避行動として減速を例に挙げて説明したが、それ以外の回避行動を行なわせてもよい。例えば、運転支援装置100が、自車両10、20、30の操舵手段を制御し、自車両10、20、30に方向転換を行わせ、シニアカー1を避けさせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上説明したように、本発明は、小型運転車両を認識して予防安全を向上できるという効果を有し、特に、自動四輪車、鞍乗型車両等の運転支援装置に有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 シニアカー(他車両、小型電動車両)
2 ボディ
3a~3d タイヤ
4 シートユニット(座席)
4a シートクッション
4b シートバック
4c、4d アームレスト
6a、6b バックミラー
10、20、30 自車両
100 運転支援装置
101 ECU
102 車間距離判定手段
103 車両判別手段
104 他車両監視手段
105 運転制御手段
106 前方カメラ(撮像手段)
107 警報手段
108 減速手段