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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】多気筒エンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 35/00 20060101AFI20220426BHJP
   F02F 1/42 20060101ALI20220426BHJP
   F02M 26/05 20160101ALI20220426BHJP
   F02M 26/06 20160101ALI20220426BHJP
   F02M 26/14 20160101ALI20220426BHJP
   F02M 26/41 20160101ALI20220426BHJP
   F02M 26/43 20160101ALI20220426BHJP
   F02B 37/00 20060101ALI20220426BHJP
   F02B 37/02 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F02D35/00 360C
F02F1/42 B
F02F1/42 Z
F02M26/05
F02M26/06 311
F02M26/14
F02M26/41 311
F02M26/43
F02B37/00 302Z
F02B37/00 302F
F02B37/02 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018008520
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019127852
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】上刎 慶幸
(72)【発明者】
【氏名】旗生 篤宏
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙太
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0254298(US,A1)
【文献】中国実用新案第202745980(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169095(US,A1)
【文献】実開昭58-162225(JP,U)
【文献】特開2012-031846(JP,A)
【文献】特開昭60-065238(JP,A)
【文献】特開昭61-055355(JP,A)
【文献】特開2015-222050(JP,A)
【文献】特開2017-120026(JP,A)
【文献】国際公開第2015/068504(WO,A1)
【文献】実開昭56-101444(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 35/00
F02F 1/42
F02M 26/00
F02B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドを含むエンジン本体を有する多気筒エンジンにおいて、
前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、
前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第1排気通路群と、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、前記排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第2排気通路群と、
前記第1排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第1排気管部と、
前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第2排気管部と、
前記第1排気通路群に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、
前記第1排気管部に設けられた排気ガス温度センサと、
を備え、
前記第1排気管部は、当該第1排気管部の管軸が湾曲してなる第1湾曲部を有し、
前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部における前記管軸よりも湾曲に係る径方向外側に配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項2】
シリンダヘッドを含むエンジン本体を有する多気筒エンジンにおいて、
前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、
前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第1排気通路群と、
前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、前記排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第2排気通路群と、
前記第1排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第1排気管部と、
前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第2排気管部と、
前記第1排気通路群に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、
前記第1排気管部に設けられた排気ガス温度センサと、
を備え、
前記第1排気管部は、当該第1排気管部の管軸が湾曲してなる第1湾曲部と、前記第1湾曲部に対して前記排気ガスの流れ方向における上流側に、管軸が湾曲してなる第2湾曲部と、を有し、
前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とは、管軸同士が変曲点を以って接するよう連続しており、
前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部に設けられている、
多気筒エンジン。
【請求項3】
請求項2に記載の多気筒エンジンであって、
前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部における前記管軸よりも湾曲に係る径方向外側に配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れかに記載の多気筒エンジンであって、
前記第1排気管部及び前記第2排気管部に対して前記排気ガスの流れ方向における下流側に設けられ、前記第1排気管部と前記第2排気管部とが集合されてなる集合排気管部を更に備える、
多気筒エンジン。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の多気筒エンジンであって、
前記第2排気管部は、当該第2排気管部の管軸が前記第1排気管部よりも直線的に設けられている、
多気筒エンジン。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れかに記載の多気筒エンジンであって、
前記第2排気通路群を気筒軸方向から平面視する場合に、当該第2排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第1排気通路群が隣接する側にオフセット配置されており、
前記第1排気通路群を気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第2排気通路群における前記開口部の配置形態に比べて、中央側に配置されている、
多気筒エンジン。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の多気筒エンジンであって、
燃料噴射は、前記第1気筒群に属する前記気筒と、前記第2気筒群に属する前記気筒と、に対して経時的に交互になされる、
多気筒エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンに関し、特に排気ガス温度センサを備える多気筒エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のエンジンでは、窒素酸化物(NOx)の発生を抑え、吸気時におけるポンピングロスの低減のために、排気ガスの一部を吸気通路に還流させるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置が設けられたものがある(特許文献1)。特許文献1では、エンジン本体の各気筒に接続された複数の独立排気通路部(独立排気管)の一部にEGR通路が接続された構成が開示されている。
【0003】
また、車両用のエンジンとしては、複数の独立排気通路部(排気ポート)と、当該複数の独立排気通路部が集合されてなる集合排気通路部(ポート集合部)と、がシリンダヘッド内に設けられた構成が採用されたものがある(特許文献2)。特許文献2に開示のエンジンでは、シリンダヘッド内に複数の独立排気通路部と集合排気通路部とが設けられ、シリンダヘッドの側面部に設けられた集合排気通路部の開口部に排気管が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-294264号公報
【文献】特開2000-265905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献2に開示の構成に対して上記特許文献1に開示の構成を組み合わせようとした場合には、排気ガス温度センサの設置箇所が課題となる。即ち、EGR装置を採用するエンジンにおいては、NOx低減及び吸気充填効率等の観点から排気ガスの温度を正確に検出することが重要となるが、メインテナンスの観点からシリンダヘッド内に排気ガス温度センサを設置することは現実的に困難である。
【0006】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、複数の独立排気通路部及び集合排気通路部がシリンダヘッド内に設けられているとともに、当該複数の独立排気通路部の一部にEGR通路が接続されている構成においても、排気ガスの温度を正確に検出することができる多気筒エンジンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る多気筒エンジンは、シリンダヘッドを含むエンジン本体を有する多気筒エンジンにおいて、前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第1排気通路群と、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、前記排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第2排気通路群と、前記第1排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第1排気管部と、前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第2排気管部と、前記第1排気通路群に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、前記第1排気管部に設けられた排気ガス温度センサと、を備え、前記第1排気管部は、当該第1排気管部の管軸が湾曲してなる第1湾曲部を有し、前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部における前記管軸よりも湾曲に係る径方向外側に配置されている。
【0008】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、EGR通路が第1排気通路群に接続され、第1排気管部に排気ガス温度センサが設けられている。そして、第1排気管部は、第1排気通路群における集合排気通路部の開口部に接続されている。
【0009】
よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、EGR通路に導出される排気ガスと略同じ温度を排気ガス温度センサで検出することができる。
【0010】
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、シリンダヘッドに対して排気ガス温度センサを設けるのではなく、第1排気管部に排気ガス温度センサを設けているので、当該排気ガス温度センサのメインテナンス性に優れる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気管部が第1湾曲部を有し、当該第1湾曲部に排気ガス温度センサが設けられているので、より高い精度での温度検出が可能となる。即ち、上記態様では、第1排気管部に第1湾曲部を設けることにより、当該第1排気管部に導入された排気ガスが管内部でミキシングされ、排気ガス温度センサが高い精度を以って温度検出できる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、排気ガス温度センサを第1湾曲部における径方向外側に設けることにより、速い流速で流れる排気ガスの温度を検出することができる。よって、上記態様では、排気ガス温度センサによりより高い精度での温度検出が可能である。
【0011】
従って、上記態様に係る多気筒エンジンでは、複数の独立排気通路部及び集合排気通路部がシリンダヘッド内に設けられているとともに、当該複数の独立排気通路部の一部にEGR通路が接続されている構成においても、排気ガスの温度を正確に検出することができる。
【0012】
本発明の別の一態様に係る多気筒エンジンは、シリンダヘッドを含むエンジン本体を有する多気筒エンジンにおいて、前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなる第1気筒群と、前記エンジン本体に設けられ、隣接配置された複数の気筒からなるとともに前記第1気筒群に隣接した第2気筒群と、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第1気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第1排気通路群と、前記シリンダヘッドに設けられ、前記第2気筒群における前記複数の気筒の各々に接続された複数の独立排気通路部と、前記排気ガスの流れ方向における下流側で前記複数の独立排気通路部が集合されてなり、前記シリンダヘッドの側面部に開口部が設けられた集合排気通路部と、を有する第2排気通路群と、前記第1排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第1排気管部と、前記第2排気通路群における前記集合排気通路部の前記開口部に対して接続された第2排気管部と、前記第1排気通路群に一端が接続され、他端が吸気通路に接続されたEGR通路と、前記第1排気管部に設けられた排気ガス温度センサと、を備え、前記第1排気管部は、当該第1排気管部の管軸が湾曲してなる第1湾曲部と、前記第1湾曲部に対して前記排気ガスの流れ方向における上流側に、管軸が湾曲してなる第2湾曲部と、を有し、前記第1湾曲部と前記第2湾曲部とは、管軸同士が変曲点を以って接するよう連続しており、前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部に設けられている。
【0013】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、EGR通路が第1排気通路群に接続され、第1排気管部に排気ガス温度センサが設けられている。そして、第1排気管部は、第1排気通路群における集合排気通路部の開口部に接続されている。
よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、EGR通路に導出される排気ガスと略同じ温度を排気ガス温度センサで検出することができる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、シリンダヘッドに対して排気ガス温度センサを設けるのではなく、第1排気管部に排気ガス温度センサを設けているので、当該排気ガス温度センサのメインテナンス性に優れる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気管部が第1湾曲部を有し、当該第1湾曲部に排気ガス温度センサが設けられているので、より高い精度での温度検出が可能となる。即ち、上記態様では、第1排気管部に第1湾曲部を設けることにより、当該第1排気管部に導入された排気ガスが管内部でミキシングされ、排気ガス温度センサが高い精度を以って温度検出できる。
また、上記態様に係る多気筒エンジンでは、変曲点を以って第1湾曲部と第2湾曲部とが接するように構成されているので、排気ガスが変曲点を通過することにより、第1湾曲部の径方向外側へと偏りを以って流れる。よって、上記態様に係る多気筒エンジンでは、より高い精度で排気ガスの温度を検出することができる。
【0014】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記排気ガス温度センサは、前記第1湾曲部における前記管軸よりも湾曲に係る径方向外側に配置されている。
【0015】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、排気ガス温度センサを第1湾曲部における径方向外側に設けることにより、速い流速で流れる排気ガスの温度を検出することができる。よって、上記態様では、排気ガス温度センサによりより高い精度での温度検出が可能である。
【0018】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記第1排気管部及び前記第2排気管部に対して前記排気ガスの流れ方向における下流側に設けられ、前記第1排気管部と前記第2排気管部とが集合されてなる集合排気管部を更に備える。
【0019】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気管部と第2排気管部とが集合されてなる集合排気管部を備えるので、当該集合排気管部よりも下流側の排気通路の軽量化や省スペース化などを図ることができる。
【0020】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記第2排気管部は、当該第2排気管部の管軸が前記第1排気管部よりも直線的に設けられている。
【0021】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第2排気管部が相対的に直線的に設けられているので、当該第2排気管部を通過する排気ガスの排気抵抗を低く抑えることができる。
【0022】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、前記第2排気通路群を気筒軸方向から平面視する場合に、当該第2排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第1排気通路群が隣接する側にオフセット配置されており、前記第1排気通路群を気筒軸方向から平面視する場合に、当該第1排気通路群では、前記複数の独立排気通路部の配列方向において、前記集合排気通路部の前記開口部が前記第2排気通路群における前記開口部の配置形態に比べて、中央側に配置されている。
【0023】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1排気通路群における集合排気通路部の開口部の配置と、第2排気通路群における集合排気通路部の開口部の配置と、が互いに異なっており、高い精度での排気ガスの温度検出と、高い排気効率の確保とが両立される。
【0024】
本発明の別態様に係る多気筒エンジンは、上記態様であって、燃料噴射は、前記第1気筒群に属する前記気筒と、前記第2気筒群に属する前記気筒と、に対して経時的に交互になされる。
【0025】
上記態様に係る多気筒エンジンでは、第1気筒群に属する気筒と、第2気筒群に属する気筒と、に対して経時的に交互に燃料噴射を行う構成としているので、排気干渉の抑制を図ることができ、さらに高い排気効率を実現することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記の各態様に係る多気筒エンジンでは、複数の独立排気通路部及び集合排気通路部がシリンダヘッド内に設けられているとともに、当該複数の独立排気通路部の一部にEGR通路が接続されている構成においても、排気ガスの温度を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施形態に係る車両におけるエンジンの概略構成を示す模式図である。
図2】エンジンを側方から見た模式側面図である。
図3】エンジンを正面から見た模式正面図である。
図4】エンジンにおけるシリンダヘッドとターボ過給機とを抜き出して示す模式斜視図である。
図5図4のV-V断面を示す図であって、シリンダヘッドにおける排気ポート及びポート集合部の構成を示す模式断面図である。
図6】エンジンの一部を拡大して示す模式側面図である。
図7】エンジンの一部を上方から見た模式平面図である。
図8図6のVIII-VIII断面を示す図であって、ターボ過給機のケーシング通路部における排気ガス温度センサの配設位置を示す模式断面図である。
図9】ターボ過給機のケーシング通路部の形状と排気ガス温度センサの取付位置との関係を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一態様であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0029】
なお、以下で用いる図面においては、詳細な車両の図示を省略しているが、+Z側が車両の上下方向における上方側であり、-Z側が車両の上下方向における下方側である。
【0030】
[実施形態]
1.多気筒エンジン2の概略構成
多気筒エンジン(以下では、単に「エンジン」と記載する。)2の概略構成について、図1を用い説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係る車両1は、当該車両1に搭載されたエンジン2と、当該エンジン2の駆動制御を実行するECU(Engine Control Unit)10と、を有する。
【0032】
エンジン2は、エンジン本体3と、吸気装置4と、排気装置5と、ターボ過給機6と、を備える。本実施形態では、エンジン本体3として、6つの気筒3a~3fを有する多気筒のディーゼルエンジンを一例として採用している。
【0033】
吸気装置4は、エンジン本体3の吸気ポート(図示を省略。)に接続された吸気通路41を有する。吸気通路41の上流端には、エアクリーナ42が設けられており、新気は、エアクリーナ42を通り吸気通路41に取り込まれる。
【0034】
吸気通路41には、ターボ過給機6のコンプレッサ61、スロットルバルブ43、インタークーラ44、及びサージタンク45が介挿されている。吸気通路41を流れてきた空気は、ターボ過給機6のコンプレッサ61により過給され、スロットルバルブ43を通りインタークーラ44に送られる。インタークーラ44では、コンプレッサ61による圧縮により温度上昇した空気の冷却がなされる。
【0035】
なお、スロットルバルブ43は、エンジン2の運転中において、基本的に全開若しくはこれに近い状態に維持するように開閉制御が実行される。そして、エンジン2の停止時等の必要時のみ閉弁される。
【0036】
サージタンク45は、エンジン本体3の吸気ポート(図示を省略。)との接続部分の直前に設けられており、各気筒3a~3fへの流入空気量の平準化を図るために設けられている。
【0037】
排気装置5は、ターボ過給機6のタービン62が設けられた部分に一端が接続された排気通路51を有する。排気通路51には、DOC(ディーゼル酸化触媒)52、DPF(ディーゼル微粒子除去フィルタ)53、排気シャッターバルブ54、及びサイレンサ55が介挿されている。
【0038】
DOC52は、エンジン本体3から排出された排気ガス中のCO及びHCを酸化することにより無害化するものであり、DPF53は、排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。排気シャッターバルブ54は、排気ガスの流れ方向におけるDPF53とサイレンサ55との間に設けられており、サイレンサ55を通り外部に排気される排気ガスの流量を制御するバルブである。
【0039】
ターボ過給機6は、コンプレッサ61及びタービン62の他に、ケーシング通路部(第1排気管部)63、ケーシング通路部(第2排気管部)64、及びケーシング集合部(集合排気管部)65を有する。ケーシング通路部63は、気筒3a~3cからなる第1気筒群3Aに接続されており、ケーシング通路部64は、気筒3d~3fからなる第2気筒群3bに接続されている。ケーシング通路部63には、排気ガスの温度を検出するための排気ガス温度センサ103が設けられている。この詳細については、後述する。
【0040】
ケーシング集合部65は、ケーシング通路部63とケーシング通路部64とが集合されてなる管部であり、タービン62が設けられた部分に接続されている。
【0041】
エンジン2は、HP-EGR(High Pressure-Exhaust Gas Recirculation)装置7、LP-EGR(Low Pressure-Exhaust Gas Recirculation)装置8、及びブローバイガス装置9を更に備える。HP-EGR装置7は、HP-EGR通路(EGR通路)71を有している。HP-EGR通路71は、エンジン本体3のシリンダヘッドと吸気通路41との間を接続するように設けられている。なお、吸気通路41におけるHP-EGR通路71の接続箇所は、インタークーラ44が介挿された箇所とサージタンク45との間の箇所である。HP-EGR通路71には、EGRバルブ72が介挿されている。EGRバルブ72は、吸気通路41に対して還流させる排気ガスの量を調節するためのバルブである。
【0042】
LP-EGR装置8は、LP-EGR通路81を有している。LP-EGR通路81は、排気通路51と吸気通路41とを接続するように設けられている。排気通路51におけるLP-EGR通路81の接続箇所は、DPF53が介挿された箇所と排気シャッターバルブ54が介挿された箇所との間の箇所である。吸気通路41におけるLP-EGR通路81の接続箇所は、エアクリーナ42が介挿された箇所とターボ過給機6のコンプレッサ61が介挿された箇所との間の箇所である。
【0043】
LP-EGR通路81には、EGRクーラ82とEGRバルブ83とが介挿されている。EGRバルブ83は、HP-EGR装置7におけるEGRバルブ72と同様に、吸気通路41に対して還流させる排気ガスの量を調節するためのバルブである。EGRクーラ82は、吸気通路41に還流させる排気ガスを冷却するために設けられている。
【0044】
ブローバイガス装置9は、ブローバイガス通路91を有している。ブローバイガス通路91は、エンジン本体3のヘッドカバ内と吸気通路41とを接続するように設けられている。ブローバイガス通路91は、エンジン本体3内で発生したブローバイガスを吸気通路41へと戻すための通路である。
【0045】
ECU10は、エンジン本体3における燃料噴射タイミングの制御や、各種バルブ43,54,72,83の開閉制御などを実行する。
【0046】
2.エンジン2の外観構成
エンジン2の外観構成について、図2及び図3を用い説明する。図2は、エンジン2を側方から見た模式側面図であり、図3は、エンジン2を正面から見た模式正面図である。
【0047】
図2及び図3に示すように、エンジン2において、エンジン本体3の-Y側の側面部には、LP-EGR装置8のLP-EGR通路81及びEGRクーラ82や、排気装置5のDOC52及びDPF53や、ターボ過給機6等が沿うように配置されている。LP-EGR通路81は、+Z側に配されたターボ過給機6におけるコンプレッサ61(図1を参照。)の直前部分と、-Z側に配されたDPF53の下流部分と、を接続するように設けられている。EGRクーラ82は、Z方向に略沿うように配置されている。
【0048】
図2に示すように、排気装置5におけるDOC52が設けられた箇所からDPF53が設けられた箇所に至る部分は、略U字形状となるように曲折されている。そして、排気通路51におけるDPF53よりも下流側(排気ガスの流れ方向の下流側)の部分は、-Z側(エンジン本体3のオイルパン33の側)であって-Y側(図2の紙面手前側)を向くように曲折されている。
【0049】
図3に示すように、排気装置5におけるDOC52は、エンジン本体3のシリンダヘッド31及びヘッドカバ34の-Y側に近接して配置されている。DPF53は、エンジン本体3のシリンダブロック32の-Y側に近接して配置されている。
【0050】
図2に示すように、ターボ過給機6の-X側には、カバー101とカバー102とが設けられている。これらカバー101,102は、断熱性を有するものである。
【0051】
ここで、本実施形態では、ターボ過給機6として可変容量ターボ過給機を採用している。このため、容量を可変するためのVGTアクチュエータを備えている(詳細な図示などは省略)。カバー101は、ターボ過給機6のVGTアクチュエータを、近接するエンジン本体3やDPF53などの熱から保護するために設けられている。
【0052】
同様に、カバー102は、LP-EGR装置8におけるEGRバルブ83(図2及び図3では、図示を省略。)を、近接するエンジン本体3やDPF53などの熱から保護するために設けられている。なお、カバー101とカバー102とは、別体であってもよいし、一体形成されたものであってもよい。
【0053】
3.シリンダヘッド31とターボ過給機6との配置関係
シリンダヘッド31とターボ過給機6との配置関係について、図4を用い説明する。図4は、エンジン2におけるシリンダヘッド31とターボ過給機6とを抜き出して示す模式斜視図である。
【0054】
図4に示すように、シリンダヘッド31は、X方向に長い略直方体形状を有している。シリンダヘッド31の+Z側は開口されており(上方開口部31a)、ヘッドカバ34が取り付けられることにより塞がれる(図3を参照)。
【0055】
ターボ過給機6は、シリンダヘッド31の-Y側の側面部31bに沿うように配置されている。そして、ターボ過給機6のケーシング通路部63,64(図4では、図示の都合上、ケーシング通路部63のみを図示。)が、シリンダヘッド31の側面部31bに開口された排気ポートに接続されている。これについては、後述する。
【0056】
ケーシング通路部63,64に続くケーシング集合部65は、ケーシング通路部63,64の-Y側で+Z側に向けて曲折されている。そして、ケーシング集合部65は、タービン62が設けられた部分に接続されている。
【0057】
4.シリンダヘッド31における排気ポート31c~31h,31j~31o及びポート集合部31i,31pの構成
シリンダヘッド31における排気ポート31c~31h,31j~31o及びポート集合部31i,31pの構成について、図5を用い説明する。図5は、図4のV-V断面を示す模式断面図である。
【0058】
図5に示すように、本実施形態に係るエンジン本体3では、+Z側から順に、#1気筒3a、#2気筒3b、#3気筒3c、#4気筒3d、#5気筒3e、#6気筒3fが配列されている。なお、図5では、シリンダヘッド31の気筒3a~3fに相当する箇所を示すために符号3a~3fを付している。
【0059】
本実施形態では、#1気筒3a~#3気筒3cからなるグループを第1気筒群3Aとし、#4気筒3d~#6気筒3fからなるグループを第2気筒群3Bとする。本実施形態に係るエンジン2では、第1気筒群3Aに属する#1気筒3a~#3気筒3cに対しては、連続して燃料噴射がされず、同様に、第2気筒群3Bに属する#4気筒3d~#6気筒3fに対しても、連続して燃料噴射がされないように駆動制御される。具体的に、エンジン2においては、#1気筒3a⇒#5気筒3e⇒#3気筒3c⇒#6気筒3f⇒#2気筒3b⇒#4気筒3dの順に燃料が噴射される。
【0060】
#1気筒3aには、排気ポート(独立排気通路部)31cと排気ポート(独立排気通路部)31dとが接続されている。同様に、#2気筒3bには、排気ポート(独立排気通路部)31eと排気ポート(独立排気通路部)31fとが接続され、#3気筒3cには、排気ポート(独立排気通路部)31gと排気ポート(独立排気通路部)31hとが接続されている。
【0061】
排気ポート31c~31hは、シリンダヘッド31における-Y側の部分に設けられたポート集合部31iで集合されている。本実施形態では、排気ポート31c~31hとポート集合部31iとを纏めて第1排気ポート群(第1排気通路群)31Aと呼ぶ。即ち、本実施形態では、第1気筒群3Aに対応して設けられた排気通路を第1排気ポート群31Aと呼ぶ。
【0062】
ターボ過給機6のケーシング通路部63は、第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iに接続されている。具体的には、ケーシング通路部63は、ポート集合部31iにおける排気ガスの流れ方向下流側の開口部31uに対して接続されている。
【0063】
#4気筒3dには、排気ポート(独立排気通路部)31jと排気ポート(独立排気通路部)31kとが接続されて、#5気筒3eには、排気ポート(独立排気通路部)31lと排気ポート(独立排気通路部)31mとが接続され、#6気筒3fには、排気ポート(独立排気通路部)31nと排気ポート(独立排気通路部)31oとが接続されている。
【0064】
排気ポート31j~31oは、シリンダヘッド31における-Y側の部分に設けられたポート集合部31pで集合されている。上記同様に、本実施形態では、排気ポート31j~31oとポート集合部31pとを纏めて第2排気ポート群(第2排気通路群)31Bと呼ぶ。
【0065】
ターボ過給機6のケーシング通路部64は、第2排気ポート群31Bにおけるポート集合部31pに接続されている。具体的には、ケーシング通路部64は、ポート集合部31pにおける排気ガスの流れ方向下流側の開口部31vに対して接続されている。
【0066】
第1排気ポート群31Aでは、X方向において、#1気筒3aに排気ポート31cが接続された箇所から#3気筒3cに排気ポート31hが接続された箇所までの範囲の略中央となる部分にポート集合部31iの開口部31uが配置されている。換言すると、ポート集合部31iの開口部31uは、#2気筒3bに排気ポート31fが接続された箇所の-Y側にポート集合部31iが配置されている。即ち、第1排気ポート群31Aでは、排気ポート31c~31hが等長(略等長)に設定されている。
【0067】
一方、第2排気ポート群31Bでは、X方向において、#4気筒3dに排気ポート31jが接続された箇所から#6気筒3fに排気ポート31oが接続された箇所までの範囲の中央に対して、+X側(第1排気ポート群31Aが隣接する側)にオフセットした状態でポート集合部31pの開口部31vが配置されている。より具体的には、ポート集合部31pの開口部31vは、X方向において、#4気筒3dに排気ポート31jが接続された箇所よりも+X側に配置されている。
【0068】
図5に示すように、エンジン本体3のシリンダヘッド31においては、HP-EGR通路71が排気ポート31cにのみ選択的に接続されている。HP-EGR通路71は、その少なくとも一部がシリンダヘッド31内に形成されている。
【0069】
HP-EGR通路71は、排気ポート31cとの接続部分から+X側に向けて延び、先端部分で+Y側に向けて曲折されている。HP-EGR通路71は、排気ポート31cにおける排気ポート31dとの合流箇所よりも+Y側(排気ガスの流れ方向の上流側)の箇所に接続されている。
【0070】
5.排気ガス温度センサ103の配設箇所
排気ガス温度センサ103の配設箇所について、図6及び図7を用い説明する。図6は、エンジン2の一部を拡大して側方側から示す模式側面図であり、図7は、エンジン2の一部を拡大して上方側から示す模式平面図である。
【0071】
図6及び図7に示すように、エンジン2では、排気ガス温度センサ103は、ケーシング通路部63の+Z側の部分に設けられている。図7に示すように、排気ガス温度センサ103は、ケーシング通路部63における+Y側の部分(シリンダヘッド31の側面部31bに近接する部分)に設けられている。
【0072】
排気ガス温度センサ103には、検出信号(温度情報)をECU10(図1を参照。)に送出するためのセンサーケーブル104が接続されている。センサーケーブル104は、排気ガス温度センサ103がケーシング通路部63に取り付けられた箇所から+Z側に延びるように配設されている。図7に示すように、センサーケーブル104は、シリンダヘッド31の側面部31bに沿って+Z側に延びている。
【0073】
6.ケーシング通路部63に対する排気ガス温度センサ103の配設箇所の詳細
エンジン2におけるケーシング通路部63に対する排気ガス温度センサ103の配設箇所の詳細について、図8及び図9を用い説明する。図8は、図6のVIII-VIII断面を示す模式断面図であり、図9は、ケーシング通路部63,64及びケーシング集合部65を拡大して示す模式断面図である。
【0074】
図8に示すように、ケーシング通路部63は、当該ケーシング通路部63の開口部63aが、第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iの開口部31uに対して気密に接続されている。同様に、ケーシング通路部64は、当該ケーシング通路部64の開口部64aが、第2排気ポート群31Bにおけるポート集合部31pの開口部31vに対して気密に接続されている。
【0075】
ターボ過給機6では、ケーシング集合部63及びケーシング集合部64の下流側(排気ガスの流れ方向における下流側)に、ケーシング通路部63とケーシング通路部64とが集合されてなるケーシング集合部65を有する。ケーシング集合部65は、X方向において、開口部63aと開口部64aとの中間箇所よりも-X側(第2排気ポート群31Bの側)にオフセット配置されている。
【0076】
図9に示すように、ケーシング通路部63の中心軸Ax63は、互いに接する3つの中心軸Ax63b,Ax63c,Ax63dとから構成されている。
【0077】
ケーシング通路部63における中心軸Ax63bを有する部分(箇所Pから箇所Pに至る部分)は、+Y側に曲率の中心を有する状態で湾曲している(上流側湾曲部63b)。ケーシング通路部63における中心軸Ax63cを有する部分(箇所Pから箇所Pに至る部分)は、-Y側に曲率の中心を有する状態で湾曲している(下流側湾曲部63c)。ケーシング通路部63における中心軸Ax63dを有する部分(箇所Pから箇所Pに至る部分)は、略直管状の部分である(直伸部63d)。なお、本実施形態に係る上流側湾曲部63bは「第2湾曲部」に相当し、下流側湾曲部63cは「第1湾曲部」に相当する。
【0078】
上流側湾曲部63bの中心軸Ax63bと第2湾曲部63cの中心軸Ax63cとは、変曲点である箇所P2で互いに接している。
【0079】
排気ガス温度センサ103におけるセンサーヘッド103aは、下流側湾曲部63cにおける箇所Pよりも箇所Pに近い部分であって、中心軸Ax63cよりも径方向外側の部分に配設されている。
【0080】
一方、図9に示すように、ケーシング通路部64は、開口部64aの箇所Pからケーシング集合部65との接続部である箇所Pに至るまで、中心軸Ax64が略直線状に延びている。
【0081】
7.ケーシング通路部63及びケーシング通路部64における排気ガスの流れ
ケーシング通路部63及びケーシング通路部64における排気ガスの流れについて、引き続き図9を用い説明する。
【0082】
図9に示すように、ケーシング通路部63に導入された排気ガスFは、先ず上流側湾曲部63bを通過する。この際、排気ガスFは、湾曲に係る径方向内側を流れる排気ガスFと、湾曲に係る径方向外側を流れる排気ガスFと、を含む。ここで、開口部63aから上流側湾曲部63bに導入された排気ガスFは、開口部63aに近い領域では-Y側に向けた方向で流れるが、湾曲に係る径方向外側の壁部で流れ方向が-X側へと修正される。このとき、排気ガスの流れの一部は、-X側であって+Y側にも流れ方向が変えられ、排気ガスFの一部をなす。
【0083】
下流側湾曲部63cを通過する排気ガスF~Fにおいては、下流側湾曲部63cにおける湾曲に係る径方向外側での排気ガスF,Fが、径方向内側での排気ガスFよりも流速が速くなる。即ち、下流側湾曲部63cにおいては、排気ガス温度センサ103のセンサーヘッド103aに対して、湾曲に係る径方向内側よりも速い流速の排気ガスF,Fが通過することとなる。
【0084】
直伸部63dへと送られた排気ガスF,Fは、当該直伸部63dを進み、ケーシング集合部65へと導出される。
【0085】
一方、ケーシング通路部64に導入された排気ガスFは、ケーシング通路部64を直進する(排気ガスF10,F11)。ケーシング通路部64を流れる排気ガスF10と排気ガスF11とでは、流速の際は殆どないか、あっても微差である。これは、排気ガスF10,F11が共に直進するために流速の際を殆ど生じないことによるものである。
【0086】
ケーシング通路部64を進む排気ガスF12,F13は、そのままケーシング集合部65へと導出される。
【0087】
8.効果
本実施形態に係るエンジン2では、HP-EGR通路71が第1排気ポート群31Aの排気ポート31cに接続され、ケーシング通路部63に排気ガス温度センサ103が設けられている。そして、ケーシング通路部63は、その開口部63aが第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iの開口部31uに接続されている。
【0088】
よって、本実施形態に係るエンジン2では、HP-EGR通路71に導出される排気ガスと近似した温度を排気ガス温度センサ103で検出することができる。
【0089】
また、本実施形態に係るエンジン2では、シリンダヘッド31に対して排気ガス温度センサ103を設けるのではなく、ケーシング通路部63に排気ガス温度センサ103を設けているので、当該排気ガス温度センサ103のメインテナンス性に優れる。
【0090】
さらに、図6を用い説明したように、本実施形態に係るエンジン2では、排気ガス温度センサ103に接続されたセンサーケーブル104が+Z側(車両1の上方側)に向けて延びるように配設されているので、さらに高いメインテナンス性を確保することができる。
【0091】
本実施形態に係るエンジン2では、ケーシング通路部63が下流側湾曲部63cを有し、当該下流側湾曲部63cに排気ガス温度センサ103のセンサーヘッド103aが設けられているので、より高い精度での温度検出が可能となる。即ち、本実施形態では、ケーシング通路部63に下流側湾曲部63cを設けることにより、当該ケーシング通路部63に導入された排気ガスFが管内部でミキシングされ、排気ガス温度センサ103が高い精度を以って温度検出できる。
【0092】
本実施形態に係るエンジン2では、排気ガス温度センサ103を下流側湾曲部63cにおける径方向外側(中心軸Ax63cよりも径方向外側)に設けることにより、速い流速で流れる排気ガスF,Fの温度を検出することができる。よって、本実施形態に係るエンジン2では、排気ガス温度センサ103により更に高い精度での温度検出が可能である。
【0093】
本実施形態に係るエンジン2では、変曲点(箇所P)を以って上流側湾曲部63bと下流側湾曲部63cとが接するように構成されているので、排気ガスF,Fが変曲点(箇所P)を通過することにより、下流側湾曲部63cの径方向外側へと偏りを以って流れる。よって、本実施形態に係るエンジン2では、より高い精度で排気ガスの温度を検出することができる。
【0094】
本実施形態に係るエンジン2では、ケーシング通路部63とケーシング通路部64とが集合されてなるケーシング集合部65を備えるので、当該ケーシング集合部65よりも下流側の排気通路51の軽量化や省スペース化などを図ることができる。
【0095】
本実施形態に係るエンジン2では、ケーシング通路部64が略直線的に設けられている(中心軸Ax64が略直線である)ので、ケーシング通路部64を通過する排気ガスF10~F13の排気抵抗を低く抑えることができる。
【0096】
本実施形態に係るエンジン2では、図5等を用い説明したように、第1排気ポート群31Aにおけるポート集合部31iの開口部31uの配置と、第2排気ポート群31Bにおけるポート集合部31pの開口部31vの配置と、が互いに異なっており、高い精度での排気ガスの温度検出と、高い排気効率の確保とが両立される。
【0097】
本実施形態に係るエンジン2では、第1気筒群3Aに属する気筒3a~3cと、第2気筒群3Bに属する気筒3d~3fと、に対して経時的に交互に燃料噴射を行う構成としているので、排気干渉の抑制を図ることができ、さらに高い排気効率を実現することができる。
【0098】
以上のように、本実施形態に係るエンジン2では、複数の排気ポート31c~31h,31j~31o及びポート集合部31i,31pがシリンダヘッド31内に設けられているとともに、排気ポート31cにHP-EGR通路71が接続されている構成においても、排気ガス温度センサ103で排気ガスの温度を正確に検出することができる。
【0099】
[変形例]
上記実施形態に係るエンジン2では、第1排気ポート群31AにのみHP-EGR通路71を選択的に接続することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。第2排気ポート群31BにEGR通路を接続することとしてもよいし、第1排気ポート群31Aと第2排気ポート群31Bとの両方にEGR通路を接続することとしてもよい。
【0100】
なお、排気ガス温度センサの配置については、EGR通路を接続する側の排気ポート群に対して接続される排気管部に設ければよい。
【0101】
上記実施形態では、エンジン2において、気筒休止装置の有無については特に説明しなかったが、本発明では、エンジンにおいて気筒休止装置を採用することとしてもよい。
【0102】
なお、気筒休止装置を採用する場合には、気筒休止しない側の排気ポート群に接続される排気管部に排気ガス温度センサを設けることができる。
【0103】
また、本発明では、シリンダヘッドの側面部に接続される排気管部(上記実施形態の「ケーシング通路部63,64」に相当。)からEGR通路を分岐することもできる。
【0104】
上記実施形態では、1つの気筒に対して2つの排気ポートを接続してなる構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、1つの気筒に対して1つの排気ポートを接続してなる構成や、1つの気筒に対して3つ以上の排気ポートを接続してなる構成を採用することもできる。
【0105】
上記実施形態では、エンジン2が1つのターボ過給機6を備える構成を一例として採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ターボ過給機を備えない自然吸気エンジンを採用することもできるし、2つ以上のターボ過給機を備える構成、電動過給機や機械式過給機などを備える構成などを採用することもできる。
【0106】
上記実施形態では、エンジン本体3の一例として6気筒のディーゼルエンジンを採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、気筒数については、4気筒や5気筒であってもよいし、7気筒以上であってもよい。また、エンジン種類については、ガソリンエンジンであってもよいし、エンジンの形式についても、直列型に限らず、V型やW型、あるいは水平対向などを採用することもできる。
【符号の説明】
【0107】
2 多気筒エンジン
3 エンジン本体
3A 第1気筒群
3B 第2気筒群
3a~3f 気筒
4 吸気装置
5 排気装置
6 ターボ過給機
7 HP-EGR装置
31 シリンダヘッド
31A 第1排気ポート群(第1排気通路群)
31B 第2排気ポート群(第2排気通路群)
31c~31h,31j~31o 排気ポート(独立排気通路部)
31i,31p ポート集合部(集合排気通路部)
31u,31v 開口部
51 排気通路
63 ケーシング通路部(第1排気管部)
63b 上流側湾曲部(第2湾曲部)
63c 下流側湾曲部(第1湾曲部)
64 ケーシング通路部(第2排気管部)
65 ケーシング集合部(集合排気管部)
71 HP-EGR通路(EGR通路)
103 排気ガス温度センサ
103a センサーヘッド
Ax63,Ax63b,Ax63c 管軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9