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特許7063040ロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】ロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレート
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
H02K15/02 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018056639
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019170088
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 義久
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-036486(JP,A)
【文献】特開2012-125029(JP,A)
【文献】特開2014-091220(JP,A)
【文献】特開2014-82807(JP,A)
【文献】特開2008-125353(JP,A)
【文献】特開2006-197693(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
H02K 15/03
H02K 1/22
H02K 1/32
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア本体に形成された複数の磁石収容孔のそれぞれに磁石を収容し、前複数の磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に複数の前記磁石を固定する装置であって、
前記複数の磁石収容孔のそれぞれに前記磁石を収容した前記コア本体が載置される固定型と、
前記コア本体上に設けられ、樹脂流入口を有する可動型と、
前記コア本体と前記可動型との間に配置され、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の不要な硬化物であるカルを保持する複数の充填ポットが形成されたカルプレートと、を備え、
前記コア本体には、周方向に間隔をおいて前記複数の磁石収容孔が形成されており、
前記カルプレートには、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つの前記充填ポットが形成されており、
それぞれの前記充填ポットは、前記可動型に当接する上面に開口し前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、
前記接続部は、前記上面から見て円形状に形成されており、
前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、
前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口している、
ロータコアの製造装置。
【請求項2】
前記ノズル部の少なくとも前記コア本体側の端部には、前記ノズル部における前記樹脂の出口を絞る絞り部が形成されている、
請求項1に記載のロータコアの製造装置。
【請求項3】
コア本体に形成された複数の磁石収容孔のそれぞれに磁石を収容し、前複数の磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に複数の前記磁石を固定する方法であって、
前記複数の磁石収容孔にそれぞれ前記磁石を収容した前記コア本体を固定型に載置し、
前記コア本体上に樹脂流入口を有する可動型を設けると共に、
前記コア本体と前記可動型との間に、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化後に前記樹脂の不要な硬化物であるカルを保持する複数の充填ポットが形成されたカルプレートを配置する準備工程と、
前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記複数の充填ポットを介して前記複数の磁石収容孔にそれぞれ流入させ充填し、前記複数の磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、
前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、を備え、
前記コア本体には、周方向に間隔をおいて複数の前記磁石収容孔が形成されており、
前記カルプレートには、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つの前記充填ポットが形成されており、
それぞれの前記充填ポットは、前記可動型に当接する上面に開口し前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、
前記接続部は、前記上面から見て円形状に形成されており、
前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、
前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口しており、
前記樹脂封止工程では、前記2つの磁石収容孔のぞれぞれに対して、複数の前記ノズル部を介して前記樹脂を流入させる、
ロータコアの製造方法。
【請求項4】
周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアの製造に用いられるカルプレートであって、
樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、
それぞれの前記充填ポットは、前記コア本体と反対側の平面に開口する接続部と、前記接続部の底壁を貫通して前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、
前記接続部は、前記平面から見て円形状に形成されており、
前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、
前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口している、
カルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに用いるロータコアの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータに用いるロータコアとして、コア本体に形成された磁石収容孔に磁石を収容し、磁石を収容した磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、コア本体に磁石を固定したものが知られている。このようなロータコアを製造する際には、磁石収容孔内に充填した樹脂を硬化させた後に、磁石収容孔の外部に形成されたカルと呼称される不要な樹脂の硬化物を除去する必要がある。
【0003】
従来のロータコアの製造装置として、成型型とコア本体との間にカルプレートと呼称される板状の部材を配置し、このカルプレートにカルを保持させるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。カルプレートを備えることにより、樹脂の硬化後にカルプレートをコア本体から取り外せば、カルプレートと共に複数のカルが一気にコア本体から分離されることとなり、カルを分離させる工程が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5748465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カルプレートをコア本体から取り外し、磁石収容孔内で硬化された樹脂からカルを分離させる際に、磁石収容孔内で硬化された樹脂に抉れ(凹部)が発生したり、カルの一部がコア本体側に残留したりする場合がある。抉れは外観不良となってしまい、カルの残留があると、残留したカルを除去する無駄な作業が発生してしまう。
【0006】
特許文献1では、磁石収容孔内で硬化された樹脂とカルとの境界部分に応力集中を発生させることで、樹脂の抉れ等を抑制している。しかし、この場合においても、樹脂の抉れやカルの残留を完全に抑制できるわけではなく、改善が望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、カルの分離時に樹脂に抉れが生じにくく、またカルのコア本体側への残留を抑制可能なロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、コア本体に形成された複数の磁石収容孔のそれぞれに磁石を収容し、前複数の磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に複数の前記磁石を固定する装置であって、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに前記磁石を収容した前記コア本体が載置される固定型と、前記コア本体上に設けられ、樹脂流入口を有する可動型と、前記コア本体と前記可動型との間に配置され、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の不要な硬化物であるカルを保持する複数の充填ポットが形成されたカルプレートと、を備え、前記コア本体には、周方向に間隔をおいて前記複数の磁石収容孔が形成されており、前記カルプレートには、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つの前記充填ポットが形成されており、それぞれの前記充填ポットは、前記可動型に当接する上面に開口し前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、前記接続部は、前記上面から見て円形状に形成されており、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口している、ロータコアの製造装置を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、コア本体に形成された複数の磁石収容孔のそれぞれに磁石を収容し、前複数の磁石収容孔内に樹脂を充填し硬化させて、前記コア本体に複数の前記磁石を固定する方法であって、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ前記磁石を収容した前記コア本体を固定型に載置し、前記コア本体上に樹脂流入口を有する可動型を設けると共に、前記コア本体と前記可動型との間に、前記樹脂流入口から流入した樹脂を前記複数の磁石収容孔に導くと共に、前記樹脂の硬化後に前記樹脂の不要な硬化物であるカルを保持する複数の充填ポットが形成されたカルプレートを配置する準備工程と、前記樹脂流入口から供給された前記樹脂を、前記複数の充填ポットを介して前記複数の磁石収容孔にそれぞれ流入させ充填し、前記複数の磁石収容孔に充填した前記樹脂を硬化させる樹脂封止工程と、前記可動型を離脱させ、その後前記カルプレートを前記コア本体から取り外すことで、前記コア本体から前記カルを分離させるカル分離工程と、を備え、前記コア本体には、周方向に間隔をおいて複数の前記磁石収容孔が形成されており、前記カルプレートには、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つの前記充填ポットが形成されており、それぞれの前記充填ポットは、前記可動型に当接する上面に開口し前記可動型の前記樹脂流入口と連通する接続部と、前記接続部の底壁を貫通し、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、前記接続部は、前記上面から見て円形状に形成されており、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口しており、前記樹脂封止工程では、前記2つの磁石収容孔のぞれぞれに対して、複数の前記ノズル部を介して前記樹脂を流入させる、ロータコアの製造方法を提供する。
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔が形成された円筒状のコア本体と、前記複数の磁石収容孔にそれぞれ収容された複数の磁石と、前記複数の磁石収容孔のそれぞれに充填されて硬化した樹脂と、を備えるロータコアの製造に用いられるカルプレートであって、樹脂を前記複数の磁石収容孔のそれぞれに導くと共に前記複数の磁石収容孔に充填されなかった樹脂の硬化物であるカルを保持する充填ポットが、前記複数の磁石収容孔のうち周方向に隣り合った2つの磁石収容孔毎に1つずつ形成されており、それぞれの前記充填ポットは、前記コア本体と反対側の平面に開口する接続部と、前記接続部の底壁を貫通して前記接続部と前記2つの磁石収容孔とを連通する4つ以上のノズル部と、を有し、前記接続部は、前記平面から見て円形状に形成されており、前記接続部と前記2つの磁石収容孔とが、それぞれ複数の前記ノズル部によって連通されており、前記4つ以上のノズル部の全てが前記接続部の周縁部に開口している、カルプレートを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カルの分離時に樹脂に抉れが生じにくく、またカルのコア本体側への残留を抑制可能なロータコアの製造装置、ロータコアの製造方法、及びカルプレートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコア示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。
図3】カルプレートを示す図であり、(a)は平面図、(b)は充填ポットの近傍を拡大した平面図である。
図4】(a)は図3(b)のA-A線断面図、(b)はノズル部の形状を示す破断面図である。
図5】ノズル部の形状の一変形例を示す破断面図である。
図6】本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。
図7】(a),(b)は、樹脂封止工程を説明する説明図である。
図8】(a),(b)は、カル分離工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0013】
(ロータコアの説明)
図1は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置で製造するロータコアを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は中心軸線を含む断面を示す断面図である。図1(a),(b)に示すように、ロータコア10は、コア本体11と、コア本体11に形成された磁石収容孔13に収容された磁石14と、磁石収容孔13に充填され硬化された樹脂15と、を有している。
【0014】
コア本体11は、電磁鋼板からなる複数枚の鉄心片12が積層された積層体である。コア本体11は、全体として略円筒状に形成されており、その軸心部には、コア本体11を軸方向に貫通するように中心孔11aが形成されている。なお、図1(a),(b)における符号Cは、コア本体11の中心軸線を表している。コア本体11の内周面には、対向位置から径方向内方に突出するキー部11bが形成されている。キー部11bは、後述する固定型2に対する位置決めのために用いられる。
【0015】
磁石収容孔13は、中心孔11aの外周側に形成されると共に、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されている。コア本体11には、周方向に間隔をおいて複数の磁石収容孔13が形成されている。磁石収容孔13は、長穴状に形成されており、その長軸方向が、コア本体11の径方向に対して傾斜するように形成されている。より具体的には、長軸方向がコア本体11の径方向に対して所定角度傾斜した磁石収容孔13と、長軸方向がコア本体11の径方向に対して反対方向に所定角度傾斜した磁石収容孔13とが、コア本体11の周方向に離間して交互に形成されている。
【0016】
各磁石収容孔13には、コア本体11の軸方向に沿って延在する板状の磁石14が収容されている。磁石収容孔13には、樹脂15が充填されており、この樹脂15により、磁石14がコア本体11に固定されている。樹脂15としては、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0017】
コア本体11の中心孔11aよりも外周側、かつ磁石収容孔13よりも内周側には、磁石14を冷却するための冷却媒体が流通される冷却孔11cが形成されている。コア本体11には、周方向に離間して複数の冷却孔11cが形成されている。各冷却孔11cは、コア本体11を軸方向に貫通するように形成されると共に、コア本体11の周方向に沿って湾曲した円弧状に形成されている。図示していないが、各冷却孔11cは、コア本体11の内部において分岐して中心孔11aと連通する連通部を有している。
【0018】
(ロータコアの製造装置の説明)
図2は、本実施の形態に係るロータコアの製造装置を示す断面図である。図2に示すように、ロータコアの製造装置1は、コア本体11に形成された磁石収容孔13に磁石14を収容し、磁石14を収容した磁石収容孔13内に樹脂を充填し硬化させて、コア本体11に磁石14を固定する装置である。ロータコアの製造装置1は、固定型2と、可動型3と、カルプレート4と、を備えている。
【0019】
固定型2は、磁石収容孔13に磁石14を収容したコア本体11が載置されるものであり、固定型本体21と、固定型本体21の上面に固定された支持部材22と、支持部材22の上面に配置されたスペーサ23と、を有している。
【0020】
支持部材22は、固定型本体21の上面に図略のボルトにより固定された板状のベース部22aと、ベース部22aの中央部から上方に突出し、コア本体11の中心孔11aに挿入される略円筒状のポスト部22bと、を有している。図示していないが、ポスト部22bの外周面には、コア本体11のキー部11bが挿入される一対のキー溝が形成されており、このキー溝にキー部11bを挿入することにより、固定型2に対するコア本体11の位置決めが行われる。
【0021】
スペーサ23は、板状に形成されており、その中央部にポスト部22bを挿通する挿通孔23aが形成されている。図示していないが、スペーサ23は、挿通孔23a内に突出しポスト部22bのキー溝に挿入される一対の規制突起を有しており、この規制突起をキー溝に挿入することで、支持部材22及びコア本体11に対するスペーサ23の位置決めがなされる。コア本体11は、スペーサ23の上面に載置され、コア本体11の下面とスペーサ23の上面とは当接する。
【0022】
スペーサ23におけるコア本体11の磁石収容孔13に対応する位置には、スペーサ23を板厚方向に貫通するピン用孔23bが形成されており、このピン用孔23bに、下方から規制ピン23cが挿入され固定されている。規制ピン23cの上端部は、スペーサ23の上面よりも上方に突出し、磁石収容孔13内に突出しており、磁石収容孔13に収容された磁石14を下方から支持する。
【0023】
可動型3は、固定型2に載置されたコア本体11上に、固定型2に対して離接可能に設けられている。可動型3は、可動型本体31と、可動型本体31の下面に固定されたプレート部32と、を有している。プレート部32は、カルプレート4よりも外形が大きくされている。可動型3は、磁石収容孔13を封止する樹脂を流入させるための複数の樹脂流入口33を有している。各樹脂流入口33は、可動型本体31及びプレート部32を貫通するように形成されており、平面視で円形状に形成されている。
【0024】
(カルプレート4の説明)
図3は、カルプレート4を示す図であり、(a)は平面図、(b)は充填ポット41の近傍を拡大した平面図である。また、図4(a)は図3(b)のA-A線断面図であり、図4(b)はノズル部の形状を示す破断面図である。
【0025】
図2~4に示すように、カルプレート4は、板状に形成されており、コア本体11と可動型3(プレート部32)との間に配置されている。カルプレート4の下面はコア本体11の上面に当接し、カルプレート4の上面はプレート部32の下面に当接する。
【0026】
カルプレート4には、可動型3の樹脂流入口33から流入した樹脂を磁石収容孔13に導く複数の充填ポット41が形成されている。本実施の形態では、周方向に隣り合った2つの磁石収容孔13毎に、1つの充填ポット41が形成されている。詳細は後述するが、充填ポット41は、樹脂の硬化後に、不要な樹脂の硬化物であるカルを保持する役割も果たすものである。
【0027】
充填ポット41は、平面視で円形状に形成され、上面に開口し可動型3の樹脂流入口33と連通する接続部41aと、接続部41aの底壁を貫通し、接続部41aと磁石収容孔13とを連通するノズル部41bと、を有している。
【0028】
磁石収容孔13内で硬化された樹脂15からのカルの分離を容易とするためには、ノズル部41bの出口の大きさをできるだけ小さくすることが望ましい。しかし、ノズル部41bの出口の大きさを小さくすると、成形時に磁石収容孔13へと樹脂を導入しにくくなり、磁石収容孔13の一部に樹脂が充填されない空間が生じたり、樹脂の成形にかかる時間が長くなったりするおそれが生じる。
【0029】
そこで、本実施の形態では、接続部41aと1つの磁石収容孔13とが、複数のノズル部41bによって連通されるようにした。これにより、ノズル部41bの出口を小さくした場合であっても、成形時における磁石収容孔13に流れ込む樹脂の流量を確保し、磁石収容孔13の一部に樹脂が充填されない空間が生じることを抑制すると共に、樹脂の成形にかかる時間が長くなることを抑制可能になる。
【0030】
ここでは、周方向に隣り合った2つの磁石収容孔13毎に、1つの充填ポット41を形成しているため、各充填ポット41は、4つ以上のノズル部41bを有することになる。本実施の形態では、1つの磁石収容孔13に対して2つのノズル部41bを形成した。よって、各充填ポット41は、2つの磁石収容孔13に対応するように、4つのノズル部41bを有している。1つの磁石収容孔13に対応する2つのノズル部41bは、コア本体11上に配置した際に、対応する磁石収容孔13の長軸方向に並ぶように形成される。
【0031】
各ノズル部41bは、全体として、平面視で磁石収容孔13の長軸方向に平行な長辺を有する長方形状に形成されており、下方ほど(コア本体11側ほど)開口が狭くなるテーパ状に形成されている。さらに、各ノズル部41bの下端部(コア本体11側の端部)には、下方に向かってより急激に開口が狭くなるように、ノズル部41bにおける樹脂の出口を絞る絞り部42が形成されている。本実施の形態では、平面視で長方形状に形成されたノズル部41bにおいて、一方の長辺を構成する内壁4a(ここでは、接続部41aの中心側の内壁4a)の下端部において、カルプレート4の厚さ方向に対する傾斜角度をより大きくする(当該下端部よりも上方の傾斜角度よりも大きくする)ことで、絞り部42を形成している。つまり、本実施の形態では、ノズル部41bの短辺方向において開口(樹脂の出口)を絞るように絞り部42を形成している。
【0032】
絞り部42を形成することで、樹脂の硬化後に、磁石収容孔13を封止している樹脂15と、不要なカルとを連結する連結部が細くなり、かつ、カルの下端部にて急激な断面係数の変化が生じるため、カルの下端部(樹脂15との連結部分)で破断が発生し易くなる。その結果、樹脂15からのカルの分離が容易となり、樹脂15の抉れやカルの残留がより発生しにくくなる。なお、絞り部42を形成することで、ノズル部41bから磁石収容孔13へと流れ込む樹脂の流量はより低下するが、1つの磁石収容孔13に複数(ここでは2つ)のノズル部41bから樹脂を流入させることにより、磁石収容孔13へと流れ込む樹脂の全体の流量は確保できるので、樹脂の充填不良等の不具合も抑制可能である。
【0033】
本実施の形態では、ノズル部41bの短辺方向において開口(樹脂の出口)を絞るように絞り部42を形成したが、これに限らず、例えば、図5に示すように、ノズル部41bの長辺方向と短辺方向の両方において開口(樹脂の出口)を絞るように絞り部42を形成してもよい。図5の例では、ノズル部41bにおいて一方の長辺を構成する内壁4a、及び2つの短辺を構成する2つの内壁4b,4bの下端部において、カルプレート4の厚さ方向に対する傾斜角度をより大きくする(当該下端部よりも上方の傾斜角度よりも大きくする)ことで、絞り部42を形成している。なお、絞り部42でより傾斜角度を大きくする内壁については、適宜選択可能である。
【0034】
(ロータコアの製造方法の説明)
図6は、本実施の形態に係るロータコアの製造方法の手順を示すフロー図である。図6に示すように、本実施の形態に係るロータコアの製造方法では、まず、ステップS1にて、コア本体11を形成するコア本体形成工程を行う。ステップS1のコア本体形成工程では、電磁鋼板をプレスして鉄心片12を形成し、形成した鉄心片12を複数積層して上下からプレスしてコア本体11を形成する。なお、コア本体11を形成する具体的な工程については、これに限定されるものではない。
【0035】
その後、ステップS2にて、コア本体11をロータコアの製造装置1にセットする準備工程を行う。ステップS2の準備工程では、コア本体11を固定型2に載置すると共に、コア本体11の磁石収容孔13に磁石14を収容する。また、コア本体11上に、カルプレート4と可動型3とを順次配置する。
【0036】
その後、ステップS3にて、樹脂封止工程を行う。ステップS3の樹脂封止工程では、図7(a)に示すように、封止用の樹脂15の原料となる熱硬化性樹脂からなる母材15aを、可動型3の樹脂流入口33に挿入し、プランジャ7により母材15aを下方(コア本体11側)へと押し込みつつ、母材15aを熱により溶融させて、樹脂流入口33から樹脂(溶融させた母材15a)を供給する。図7(b)に示すように、樹脂流入口33から供給された樹脂は、充填ポット41を介して磁石収容孔13に流入し、樹脂が充填ポット41に充填される。本実施の形態では、充填ポット41の接続部41aと1つの磁石収容孔13とが、複数(ここでは2つ)のノズル部41bによって連通されているため、ステップS3の樹脂封止工程では、1つの磁石収容孔13に対して、複数(ここでは2つ)のノズル部41bを介して樹脂が流入されることになる。
【0037】
磁石収容孔13に充填した樹脂が熱により硬化されると、磁石収容孔13を封止する樹脂15が形成されると共に、カルプレート4の充填ポット41にカル5が形成される。なお、樹脂封止工程においては、コア本体11やロータコアの製造装置1の一部を予め加熱しておき、この熱により母材15aの溶融及び樹脂の硬化を行うとよい。
【0038】
その後、ステップS4にて、カル分離工程を行う。ステップS4のカル分離工程では、まず、図8(a)に示すように、可動型3を上方に移動させて離脱させる。その後、図8(b)に示すように、カルプレート4をコア本体11から取り外すことで、コア本体11からカル5を分離させる。本実施の形態では、1つの磁石収容孔13に対して複数(ここでは2つ)のノズル部41bが設けられているため、ノズル部41bの出口を小さくして、カル5と樹脂15との連結部分を細くすることが可能であり、カル5を分離させる際に樹脂15の抉れやカル5の残留が発生しにくい。さらに、各ノズル部41bの下端部に絞り部42が形成されているため、カル5の下端部にて急激な断面係数の変化が生じ、カル5の下端部(樹脂15との境界部分)で破断が生じ易くなっており、これにより樹脂15の抉れやカル5の残留がより発生しにくくなっている。カル5を分離させたコア本体11を固定型2から取り外せば、図1のロータコア10が得られる。
【0039】
その後、ステップS5にて、カルプレート4からカル5を取り除くカル除去工程を行う。ステップS5のカル除去工程では、例えば、インジェクタピンをノズル部41bの下方から挿し込むことで、カル5をカルプレート4から取り除く。なお、カルプレート4からカル5を取り除く具体的な方法については、これに限定されない。
【0040】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係るロータコアの製造装置1では、カルプレート4の充填ポット41が、上面に開口し可動型3の樹脂流入口33と連通する接続部41aと、接続部41aの底壁を貫通し、接続部41aと磁石収容孔13とを連通するノズル部41bと、を有し、接続部41aと1つの磁石収容孔13とが、複数のノズル部41bによって連通されている。
【0041】
これにより、成形時における磁石収容孔13への樹脂の流入量を確保しつつも、ノズル部41bの出口を小さくすることが可能になる。その結果、カル5を分離させる際に樹脂15に抉れが生じにくくなると共に、カル5のコア本体11側への残留を抑制することが可能になる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0043】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、絞り部42の全体をテーパ状に形成したが、これに限らず、絞り部42の一部(例えば下端部)において、開口が一定の大きさとされていてもよい。例えば、絞り部42の一部において、すべての内壁がカルプレート4の厚さ方向に対して平行となっていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1…ロータコアの製造装置、2…固定型、21…固定型本体、22…支持部材、22a…ベース部、22b…ポスト部、23…スペーサ、23a…挿通孔、23b…ピン用孔、23c…規制ピン、3…可動型、31…可動型本体、32…プレート部、33…樹脂流入口、4…カルプレート、4a,4b…内壁、41…充填ポット、41a…接続部、41b…ノズル部、42…絞り部、5…カル、7…プランジャ、10…ロータコア、11…コア本体、11a…中心孔、11b…キー部、11c…冷却孔、11c…各冷却孔、12…鉄心片、13…磁石収容孔、14…磁石、15…樹脂、15a…母材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8