(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 47/02 20060101AFI20220426BHJP
F02M 25/03 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F02B47/02
F02M25/03
(21)【出願番号】P 2018081870
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乃生 芳尚
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】樫本 正章
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-315234(JP,A)
【文献】特開2007-120403(JP,A)
【文献】特開2009-168039(JP,A)
【文献】特開2012-122405(JP,A)
【文献】特開2017-89556(JP,A)
【文献】特開2018-35682(JP,A)
【文献】特開2018-40260(JP,A)
【文献】国際公開第2006/092887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 47/02
F02D 19/12
F02M 25/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を構成する気筒と、該燃焼室内に臨むように設けられかつ該燃焼室内に水を噴射するための水噴射弁とを備えるエンジンであって、
上記水噴射弁は、
筒状の第1のケースと、
上記第1のケースの筒軸方向に沿って延びるように形成された水供給路と、
上記水供給路の、上記筒軸方向における上記燃焼室側の端部に形成されかつ上記燃焼室に水を噴射するための噴射部とを有するとともに、
上記筒軸方向における上記噴射部に近い位置ほど下側に位置するか又は上記筒軸方向が水平方向と平行になるように配設されており、
上記水供給路における上記噴射部寄りの部分には、該噴射部寄りの部分における他の部分よりも流路断面積が大きくなるように径方向の外側に拡張されかつ上記水供給路内の水の一部が滞留する滞留部が設けられ、
上記滞留部における、上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側の端部には、上記滞留部内の水が該滞留部よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための段差部が形成されており、
上記第1のケースにおける、上記筒軸方向の上記滞留部に対応する部分の周囲には、上記噴射部近傍の水を加熱するための加熱装置が設けられていることを特徴とするエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
上記滞留部は、上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側に向かって、上記径方向の外側に傾斜した傾斜部を、少なくとも部分的に有することを特徴とするエンジン。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエンジンにおいて、
上記水噴射弁は、上記筒軸方向に沿って延びるように上記第1のケース内に配設されかつ該筒軸方向に往復動可能な針弁と、
上記針弁における上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側の端部に設けられ、該針弁を作動させる電動機器をさらに有し、
上記水供給路は、上記針弁と上記第1のケースの内周面との間の部分に形成されており、
上記加熱装置は、上記第1のケースにおける、上記筒軸方向の上記滞留部に対応する部分を上記径方向の外側から覆うような筒状をなしていることを特徴とするエンジン。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のエンジンにおいて、
上記第1のケースと上記加熱装置との間には、該加熱装置により上記滞留部内の水が加熱されるのを抑制するための熱流抑制部材が配設されていることを特徴とするエンジン。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエンジンにおいて、
上記水噴射弁は、上記気筒の中心軸方向から見て、上記第1のケースの筒軸が所定方向の一側から他側にある上記燃焼室に向かって延び、かつ、上記気筒の中心軸方向及び上記所定方向に垂直な方向から見て、上記筒軸方向における上記噴射部に近い位置ほど下側に位置するように傾斜して配設されており、
上記滞留部は、上記筒軸方向から見て上側に形成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項6】
請求項5に記載のエンジンにおいて、
上記水供給路における、上記筒軸方向から見て上側の部分でかつ上記段差部よりも上流側の部分には、上記水供給路の上記上側の部分における他の部分よりも流路断面積が小さい絞り部が部分的に形成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項7】
請求項6に記載のエンジンにおいて、
上記水供給路における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ上記絞り部に対向する部分には、流路断面積が大きくなるように上記径方向の外側に向かって広がる流路拡大部が形成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1つに記載のエンジンにおいて、
上記水供給路における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ上記滞留部に対向する部分には、上記滞留部側に向かって突出した突出部が形成されていることを特徴とするエンジン。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1つに記載のエンジンにおいて、
上記所定方向の一側に形成された排気ポートにおける上記燃焼室側の開口部に設けられた排気バルブシートを更に備え、
上記水噴射弁の上記噴射部又は上記噴射部の近傍部分は、上記排気バルブシートと連結されていることを特徴とするエンジン。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1つに記載のエンジンにおいて、
上記水噴射弁は、上記第1のケースの筒軸が上記気筒の中心軸方向と平行に延びるように配設されており、
上記滞留部及び上記段差部は、上記水供給路の周方向全体に亘って形成されていることを特徴とするエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術はエンジン、特に、燃焼室内に水を噴射するための水噴射弁を備えるエンジンに関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、NOxの低減を目的として、エンジンの燃焼室内に燃料と水とを噴射することが提案されている。この提案を実現するものとして、燃焼室内に高温の水を噴射するための水噴射弁を備えたエンジンが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、250℃以上かつ10MPa以上の亜臨界水を噴射する亜臨界水噴射弁と燃料噴射弁とを各々独立に燃焼室中央部に配置したエンジンが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、針弁を往復動させることで高温流体(高温の水)を燃焼室内に噴射する高温流体噴射弁(水噴射弁)において、針弁が設けられる針弁室が内部に形成されたケースと、噴射弁本体に設けられかつ針弁を往復動させるための針弁開閉手段の装着部との間に、セラミックス材を含む低熱伝導材料からなるスペーサを介装した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-168039号公報
【文献】特開2007-120403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、相対的に温度の高い水は、相対的に温度の低い水の方に流れようとするため、水噴射弁の噴射部付近の水を加熱すると、水噴射弁内の水供給路を逆流するように移動する。また、水噴射弁が、噴射部が相対的に下側に位置するように配設される場合には、噴射部付近の水が加熱されて密度が低下すると、加熱された水は上側に移動しようとするため、水噴射弁内の水供給路を逆流するように上流側に向かって移動しやすい。これらのことから、噴射部付近には相対的に温度の低い水が集まりやすくなる。噴射部付近に低温の水が集まると、該低温の水が燃焼室内に供給されるようになり、高温の水を燃焼室に供給することによってピストンを押し下げる力に変換する場合と比較し、エンジンの燃焼効率が低下するおそれがある。
【0007】
噴射部付近の低温の水の温度が所望の温度になるように、水供給路内の水全体の温度を上げることも考えられる。しかしながら、必要以上に温度が高くなった水が、水供給路の上流側の部分に集まってしまうため、水供給路を形成するケースの耐熱性の問題が生じる。また、針弁の往復動により燃焼室への水の噴射を制御する水噴射弁では、針弁の噴射部とは反対側の端部(つまり、水供給路の上流側に位置する端部)には、針弁を往復動させるための電動機器が配置される。このため、必要以上に温度が高くなった水が上流側に集まると、電動機器の周囲の温度が、電動機器の耐熱温度を超えてしまい、電動機器が正常に作動しなくなるおそれもある。
【0008】
ここに開示された技術は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水噴射弁を備えたエンジンにおいて、該水噴射弁内で、相対的に温度の高い水が水供給路の上流側に移動するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、ここに開示された技術では、燃焼室を構成する気筒と、該燃焼室内に臨むように設けられかつ該燃焼室内に水を噴射するための水噴射弁とを備えるエンジンを対象として、上記水噴射弁は、筒状の第1のケースと、上記第1のケースの筒軸方向に沿って延びるように形成された水供給路と、上記水供給路の、上記筒軸方向における上記燃焼室側の端部に形成されかつ上記燃焼室に水を噴射するための噴射部とを有するとともに、上記筒軸方向における上記噴射部に近い位置ほど下側に位置するか又は上記筒軸方向が水平方向と平行になるように配設されており、上記水供給路における上記噴射部寄りの部分には、該噴射部寄りの部分における他の部分よりも流路断面積が大きくなるように径方向の外側に拡張されかつ上記水供給路内の水の一部が滞留する滞留部が設けられ、上記滞留部における、上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側の端部には、上記滞留部内の水が該滞留部よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための段差部が形成されており、上記第1のケースにおける、上記筒軸方向の上記滞留部に対応する部分の周囲には、上記噴射部近傍の水を加熱するための加熱装置が設けられている、という構成とした。
【0010】
この構成によると、噴射部近傍の水を加熱するための加熱装置が設けられているため、噴射部近傍の水は相対的に温度が高くなって、水供給路を逆流するように上流側に向かって移動する。水供給路における噴射部寄りの部分には、流路断面積が拡張されかつ水供給路内の水の一部が滞留する滞留部が設けられているため、温度が高い水(以下、高温水という)が水供給路を逆流するように上流側に向かって移動するときには、上記高温水は一旦滞留部に進入する。滞留部には、滞留部内の水が該滞留部よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための段差部が形成されているため、滞留部に進入した上記高温水は、滞留部内に滞留する。これにより、水噴射弁内で上記高温水が上流側に移動するのが抑制される。
【0011】
上記エンジンにおいて、上記滞留部は、上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側に向かって、上記径方向の外側に傾斜した傾斜部を、少なくとも部分的に有していてもよい。
【0012】
この構成によると、上記高温水が上流側に移動する際に傾斜部に沿って滞留部内に進入しやすくなる。これにより、水噴射弁内で上記高温水が水供給路の上流側に移動するのがより効果的に抑制される。
【0013】
上記エンジンにおいて、上記水噴射弁は、上記筒軸方向に沿って延びるように上記第1のケース内に配設されかつ該筒軸方向に往復動可能な針弁と、上記針弁における上記筒軸方向の上記噴射部とは反対側の端部に設けられ、該針弁を作動させる電動機器をさらに有し、上記水供給路は、上記針弁と上記第1のケースの内周面との間の部分に形成されており、上記加熱装置は、上記第1のケースにおける、上記筒軸方向の上記滞留部に対応する部分を上記径方向の外側から覆うような筒状をなしていてもよい。
【0014】
この構成では、針弁を作動させる電動機器を有しているため、上記高温水が上流側に移動してしまうと、電動機器の動作に悪影響を及ぼすおそれがある。よって、滞留部と段差部とにより水噴射弁内で上記高温水が上流側に移動するのを抑制することによる効果を適切に発揮することができる。
【0015】
上記エンジンにおいて、上記第1のケースと上記加熱装置との間には、該加熱装置により上記滞留部内の水が加熱されるのを抑制するための熱流抑制部材が配設されていてもよい。
【0016】
この構成によると、第1のケースと加熱装置との間には、熱流抑制部材が設けられているため、滞留部に滞留する上記高温水は温度が低下する。温度が低下した水は、再び噴射部に向かって流れる。これにより、噴射部近傍の水は、温度が高くかつ密度が高い状態に維持される。この結果、高温でかつ密度の高い水を燃焼室内に噴射することができる。
【0017】
上記エンジンの一実施形態では、上記水噴射弁は、上記気筒の中心軸方向から見て、上記第1のケースの筒軸が所定方向の一側から他側にある上記燃焼室に向かって延び、かつ、上記気筒の中心軸方向及び上記所定方向に垂直な方向から見て、上記筒軸方向における上記噴射部に近い位置ほど下側に位置するように傾斜して配設されており、上記滞留部は、上記筒軸方向から見て上側に形成されている。
【0018】
この構成によると、上記高温水が水供給路を逆流するように上流側に移動するときには、水供給路の上側の面に沿って移動するようになる。このため、上記高温水が上流側に移動する際には、上記筒軸方向から見て上側に形成された滞留部に進入するようになる。滞留部に進入した上記高温水は段差部によって上流側への移動が抑制されて、該滞留部内に滞留する。したがって、水噴射弁内で上記高温水が上流側に移動するのが一層効果的に抑制される。
【0019】
上記一実施形態において、上記水供給路における、上記筒軸方向から見て上側の部分でかつ上記段差部よりも上流側の部分には、上記水供給路の上記上側の部分における他の部分よりも流路断面積が小さい絞り部が部分的に形成されていてもよい。
【0020】
この構成によると、上記高温水が滞留部に滞留しやすくなる。この結果、水噴射弁内で上記高温水が上流側に移動するのがより一層効果的に抑制される。
【0021】
上記絞り部が形成された上記一実施形態において、上記水供給路における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ上記絞り部に対向する部分には、流路断面積が大きくなるように上記径方向の外側に向かって広がる流路拡大部が形成されていてもよい。
【0022】
すなわち、水を燃焼室内に噴射する際の水供給路内での水の流れをスムーズにするためには、水供給路における上記筒軸方向から見て上側の部分に絞り部を設けて、該上側の部分の流路断面積を小さくしつつも、水供給路の上側の部分及び下側の部分を含む全体の流路断面積は小さくしないようにすることが望ましい。そこで、水供給路における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ絞り部に対向する部分に、流路拡大部を形成する。これにより、絞り部が設けられた部分において、水供給路の上側の部分の流路断面積は小さくなっているが、水供給路の下側の部分の流路断面積が大きくなっているため、全体の流路断面積は、水供給路における、滞留部が設けられた部分を除く他の部分と略同じにすることができる。したがって、水供給路に絞り部を形成しつつ、水を燃焼室内に噴射する際の水供給路内での水の流れをスムーズにすることができる。
【0023】
上記一実施形態において、上記水供給路における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ上記滞留部に対向する部分には、上記滞留部側に向かって突出した突出部が形成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によると、上記高温水が水供給路を逆流するように上流側に移動するときに、該高温水が滞留部に向かって流れやすくなる。この結果、水噴射弁内で上記高温水が水供給路の上流側に移動するのがさらに効果的に抑制される。
【0025】
上記一実施形態において、上記所定方向の一側に形成された排気ポートにおける上記燃焼室側の開口に設けられた排気バルブシートを更に備え、上記水噴射弁の上記噴射部又は上記噴射部の近傍部分は、上記排気バルブシートと連結されていてもよい。
【0026】
この構成によると、排気ポートの燃焼室側の開口から当該排気ポートに排出された直後の排気ガスの熱を、排気バルブシートを介して、水噴射弁の噴射部又は噴射部の近傍部分に伝達することができる。これにより、噴射部又は噴射部の近傍部分にある水を効率的に加熱することができる。この結果、水供給路における噴射部寄りの部分の水を高温状態に維持しやすくなる。
【0027】
上記エンジンの他の実施形態では、上記水噴射弁は、上記第1のケースの筒軸が上記気筒の中心軸方向と平行に延びるように配設されており、上記滞留部及び上記段差部は、上記水供給路の周方向全体に亘って形成されている。
【0028】
この構成では、水噴射弁は略鉛直方向に延びるように配設されるため、上記高温水は水供給路を逆流するように上流側に移動しやすい。このため、滞留部及び段差部により、水噴射弁内で上記高温水が上流側に移動するのを抑制するという効果を、一層適切に発揮することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、水供給路における噴射部寄りの部分に、流路断面積が拡張された滞留部が設けられており、滞留部には、滞留部内の水が該滞留部よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための段差部が形成されているため、水供給路を逆流するように上流側に向かって移動しようとする水は、滞留部に進入して、該滞留部内に滞留するようになる。これにより、水噴射弁内で、相対的に温度の高い水が上流側に移動するのが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】エンジン本体の気筒を上側から見た状態を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線相当の断面図である。
【
図6】水噴射弁の構成を示す部分断面図であって、(a)は第1のケースの筒軸を含みかつ鉛直方向に垂直な面で切断した断面図であり、(b)は滞留部を通りかつ第1のケースの筒軸に垂直な面で切断した断面を該筒軸方向に見た断面図である。
【
図7】バルブシートに対する熱伝送シートの配設構造を模式的に示す模式図である。
【
図8】実施形態2に係る水噴射弁の構成を示す部分断面図であって、(a)は第1のケースの筒軸を含みかつ鉛直方向に平行な面で切断した断面図であり、(b)は滞留部を通りかつ第1のケースの筒軸に垂直な面で切断した断面を該筒軸方向に見た断面図である。
【
図9】実施形態2に係る水噴射弁の水供給路の位置と当該位置における流路断面積との関係を示す図である。
【
図10】実施形態3に係る水噴射弁の構成を示す部分断面図であって、(a)は第1のケースの筒軸を含みかつ鉛直方向に平行な面で切断した断面図であり、(b)は滞留部を通りかつ第1のケースの筒軸に垂直な面で切断した断面を該筒軸方向に見た断面図である。
【
図11】実施形態4に係る水噴射弁の構成を示す部分断面図であって、(a)は第1のケースの筒軸を含みかつ鉛直方向に平行な面で切断した断面図であり、(b)は滞留部を通りかつ第1のケースの筒軸に垂直な面で切断した断面を該筒軸方向に見た断面図である。
【
図12】実施形態5に係る水噴射弁のエンジン本体における配置を示す断面図である。
【
図13】実施形態5に係る水噴射弁の構成を示す部分断面図であって(a)は第1のケースの筒軸を含みかつ鉛直方向に平行な面で切断した断面図であり、(b)は滞留部を通りかつ第1のケースの筒軸に垂直な面で切断した断面を該筒軸方向に見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
(実施形態1)
図1は、本実施形態1に係るエンジン1を示す。このエンジン1は、車両に搭載されるエンジンである。エンジン1は、エンジン本体2と、吸気システム3と、排気システム4と、EGR装置5と、水供給装置6とを備える。
【0033】
エンジン本体2は、気筒20が並列に並べられた直列4気筒のエンジンである。また、エンジン本体2は、ガソリンを含有する燃料を燃焼室29(
図3参照)内で圧縮着火させる圧縮着火式のガソリンエンジンである。
【0034】
吸気システム3は、吸気通路30と、吸気マニホールド31と、エアクリーナ32と、スロットルバルブ33とを有する。吸気マニホールド31は、吸気通路30における吸気の流れ方向の下流側端部に設けられ、エアクリーナ32は、吸気通路30における吸気の流れ方向の上流側端部に設けられている。スロットルバルブ33は、吸気通路30における吸気マニホールド31とエアクリーナ32との間の部分に設けられている。
【0035】
吸気マニホールド31は、気筒20毎に分岐する独立吸気通路と、4つの独立吸気通路が集合されてなる集合吸気通路とで構成されている。独立吸気通路は、後述する吸気ポート37の燃焼室29とは反対側の開口部にそれぞれ接続されている。
【0036】
排気システム4は、排気通路40と、排気マニホールド41と、排気シャッターバルブ42と、触媒43とを有する。排気マニホールド41は、排気通路40における排気ガスの流れ方向の上流側端部に設けられ、排気シャッターバルブ42は、排気通路40における排気ガスの流れ方向の下流側端部に設けられている。触媒43は、排気通路40における排気マニホールド41と排気シャッター弁42との間の部分であって、排気通路40における排気ガスの流れ方向の下流側寄りの部分に設けられている。触媒43は、後述する熱交換器65の保温ケース650の内方に収納されている。
【0037】
排気マニホールド41は、気筒20毎に分岐する独立排気通路と、4つの独立排気通路が集合されてなる集合排気通路とで構成されている。独立排気通路は、後述する排気ポート47の燃焼室29とは反対側の開口部にそれぞれ接続されている。
【0038】
EGR装置5は、EGR通路50と、EGRクーラ51と、EGRバルブ52とを有する。EGR通路50は、排気通路40における排気マニホールド41と触媒43との間の部分と、吸気通路30におけるスロットルバルブ33と吸気マニホールド31との間の部分とに接続されている。EGRクーラ51はEGR通路50の途中に設けられている。EGRバルブ52は、EGR通路50の途中であって、EGRガスの流れ方向におけるEGRクーラ51よりも上流側の部分に設けられている。
【0039】
EGRクーラ51は、EGRガスの温度を調整するために設けられている。EGRクーラ51は水冷式又は空冷式のいずれか、あるいは水冷式及び空冷式の併用式である。
【0040】
EGRバルブ52は、EGR通路50を開閉させるために設けられている。EGRバルブ52は、EGR通路50の開閉だけを行うオン-オフ式のものでもよく、EGRガスの流量を段階的又は連続的に変更可能なものでもよい。
【0041】
水供給装置6は、コンデンサ60と、第1水配管61と、第2水配管63と、第3水配管66と、水タンク62と、低圧ポンプ64と、高圧ポンプ67と、蓄圧レール68と、気筒20毎に設けられた水噴射弁69とを有する。
【0042】
コンデンサ60は、排気通路40における触媒43と排気シャッター弁42との間の部分に設けられている。コンデンサ60は、排気通路40内を流れる排気ガスに含まれる水分を凝縮させるための熱交換器である。すなわち、コンデンサ60内では、冷媒との熱交換により排気ガスが冷却され、排気ガス中に含まれる水分が凝縮する。コンデンサ60で得られた凝縮水は、第1水配管61を通って水タンク62へ送られる。詳細には図示していないが、実際には、コンデンサ60の鉛直下側に水タンク62が位置するように、コンデンサ60と水タンク62とが配設されている。これにより、コンデンサ60内で生成された凝縮水は、自然流下により水タンク62に流れるようになっている。
【0043】
低圧ポンプ64は、第2水配管63の途中に設けられ、該第2水配管63の一部を介して水タンク62と接続されている。低圧ポンプ64は、水タンク62に貯留された凝縮水を加圧して、熱交換器65へ送り込む。尚、低圧ポンプ64は必ずしも設ける必要はない。
【0044】
熱交換器65は、排気通路40における、コンデンサ60よりも排気ガスの流れ方向の上流側の部分に配設されている。熱交換器65は、保温ケース650と、蓄熱部材651と、細管652とを有する。
【0045】
保温ケース650は、触媒43及び排気通路40における触媒43よりも下流側の一部(触媒下流配管40a)の外側を覆うように形成されている。保温ケース650の外周壁は、二重壁構造となっており、二重壁構造を形成する2つの壁部の間に蓄熱部材651が充填されている。蓄熱部材651は、例えば、エリスリトール等を用いた潜熱蓄熱部材や、塩化カルシウム等を用いた化学蓄熱部材等を採用することができる。
【0046】
細管652は、保温ケース650の内側において、触媒下流配管40aの周囲に螺旋状に巻き付けられている。細管652は、一端が第2水配管63と接続される一方、他端が第3水配管66に接続されている。細管652には、低圧ポンプ64により圧送された凝縮水が流れる。細管652を流れる凝縮水は、保温ケース650内で触媒43及び触媒下流配管40aからの熱を受けて昇温される。
【0047】
高圧ポンプ67は、第3水配管66の途中に設けられており、熱交換器65で昇温された凝縮水を加圧して、蓄圧レール68へと送り込む。高圧ポンプ67は、低圧ポンプ64で加圧された凝縮水を加圧するものであり、蓄圧レール68内の凝縮水の圧力が、例えば22MPa以上の圧力となるように凝縮水を加圧する。尚、低圧ポンプ64が省略される場合には、高圧ポンプ67は低圧ポンプ64の位置に配設され、該高圧ポンプ67よりも下流側の供給路(第3水配管66や水噴射弁69の後述する水供給路72)内の圧力が22MPa以上にされる。
【0048】
蓄圧レール68は、第3水配管66の下流側端部に接続されている。蓄圧レール68はエンジン本体2における気筒列方向に延び、気筒20毎に分岐されている。蓄圧レール68の下流側端部は、各気筒20に配設された各水噴射弁69にそれぞれ接続されている。
【0049】
4つの水噴射弁69からは、各気筒20の燃焼室29(
図3参照)内に、高温・高圧化された超臨界状態の凝縮水(以下、超臨界水という)が噴射される。超臨界状態とは、374℃(647K)以上の温度と22MPa以上の圧力を有し、液体及び気体の両方の性質を併せ持った特殊な状態(液体、気体、固体のいずれにも当てはまらない状態)をいう。
【0050】
水噴射弁69による水噴射は、例えば、燃焼温度の上昇を抑えて、NOxの発生を抑制したり、燃焼温度と圧力の上昇に伴い、燃焼ガスと燃焼室29の壁面との熱伝達率が上昇することによる冷却損失を抑制したりするために実施される。また、水噴射弁69による燃焼室29内への超臨界水の噴射は、これらの効果に加えて、非常に大きな熱容量を有する高温の水を燃焼室29に供給することにより、ピストンを押し下げる力に変換させるために実施される。水噴射弁69による水噴射は、例えば、圧縮行程の後期から膨張行程の初期にかけての期間、より詳しくは、燃料噴射後から該燃焼の燃焼開始前までの期間内に実行される。
【0051】
次に、エンジン本体2の構成について詳細に説明する。尚、以下の説明では、1つの気筒20の周辺構造について説明するが、他の気筒も同様の構成となっている。
【0052】
本実施形態1に係るエンジン本体2の気筒20には、
図2に示すように、吸気ポート37及び排気ポート47がそれぞれ接続されている。吸気ポート37は、2つの独立吸気ポート34と2つの独立吸気ポート34が集合されてなる集合吸気ポート35とをそれぞれ有する。排気ポート47は、2つの独立排気ポート44と2つの独立排気ポート44が集合されてなる集合排気ポート45とをそれぞれ有する。
【0053】
各独立吸気ポート34は、吸気ポート開口部36を介して燃焼室29(
図3参照)とそれぞれ連通している。各独立排気ポート44は、排気ポート開口部46を介して燃焼室29(
図3参照)とそれぞれ連通している。排気ポート開口部46は、排気ポート47における燃焼室29側の開口部に相当する。
【0054】
図2に示すように、2つの独立吸気ポート34は、吸気ポート開口部36から所定方向(気筒20の中心軸方向及び気筒列方向に垂直な方向)の一側から他側に向かって延びた後、集合吸気ポート35で連結されている。2つの独立排気ポート44は、排気ポート開口部46から上記所定方向の上記他側から上記一側に向かって延びた後、集合排気ポート45で連結されている。
【0055】
図2に示すように、エンジン本体2の吸気ポート37と排気ポート47との間、詳しくは、上記所定方向の中央部には、気筒20毎に、燃料噴射弁220が設けられている。エンジン本体2の燃料噴射弁220よりも上記所定方向の上記一側の位置(排気ポート47寄りの位置)には点火プラグ221が設けられている。また、エンジン本体2の排気ポート47側には、気筒20毎に、水噴射弁69が設けられている。
【0056】
図3に示すように、エンジン本体2は、シリンダブロック21と、シリンダヘッド22と、シリンダライナ23と、ピストン24とを有する。シリンダライナ23は、シリンダブロック21に対して、気筒20のボアを取り囲むように、気筒20毎に嵌め込まれている。
【0057】
シリンダヘッド22は、シリンダブロック21の上に載置されており、シリンダライナ23の内側にピストン24が上下動可能に嵌挿されている。シリンダライナ23の内周面と、ピストン24の冠面と、シリンダヘッド22とにより燃焼室29が画定されている。
【0058】
図3に示すように、シリンダヘッド22には、上述した吸気ポート37と排気ポート47とが形成されている。シリンダヘッド22には、吸気ポート開口部36を開閉させる吸気バルブ27と、排気ポート開口部46を開閉させる排気バルブ28とが配設されている。
【0059】
吸気ポート開口部36には、略リング状の吸気バルブシート25が燃焼室29側の周縁に沿って接着固定されている。この吸気バルブシート25の内周面に位置するシール面に、吸気バルブ27の傘部27aの周縁部近傍に位置するシール面が当接することにより、吸気ポート37が閉状態になる。また、同様に、各排気ポート開口部46には、略リング状の排気バルブシート26が燃焼室29側の周縁に沿って接着固定されている。この排気バルブシート26の内周面に位置するシール面に、排気バルブ28の傘部28aの周縁部近傍に位置するシール面が当接することにより、排気ポート47が閉状態になる。
【0060】
水噴射弁69は、シリンダヘッド22に配設されている。水噴射弁69は、気筒20の中心軸方向から見て(
図3の方向から見て)、当該水噴射弁69の中心軸(後述する第1のケース71の筒軸Cと一致)が上記所定方向の上記一側から上記他側にある燃焼室29に向かって延び、かつ、気筒20の中心軸方向及び上記所定方向に垂直な方向から見て(つまり、気筒列方向から見て(
図4で見て))、当該水噴射弁69の中心軸方向(後述する第1のケース71の筒軸方向と一致)おけるノズル部(噴射部)75に近い位置ほど下側に位置するように傾斜して配設されている。
【0061】
次に、水噴射弁69のノズル部75の周辺構成について
図5~
図7を参照して詳細に説明する。ここでは、1つの水噴射弁69についてのみ説明するが、他の水噴射弁69のノズル部75の周辺も同様の構成となっている。尚、
図6(a)では、後述する加熱装置81等については省略している。
【0062】
図5及び
図6(a)に示すように、水噴射弁69は、ノズル部75の周辺において、筒状の第1のケース71と、第1のケース71の筒軸方向に沿って延びるように形成された水供給路72とを有している。上記ノズル部75は、燃焼室29に超臨界水を噴射するため部分であって、水供給路72の上記筒軸方向における燃焼室29側の端部に形成されている。以下の説明では、上記筒軸方向の燃焼室29側(ノズル部75側)を一側といい、上記筒軸方向の燃焼室29とは反対側(ノズル部75とは反対側)を他側という。また、水供給路72におけるノズル部75側を下流側、水供給路72におけるノズル部75とは反対側を上流側という。
【0063】
上記第1のケース71は、
図5及び
図6(a)に示すように、上記筒軸方向の上記他側から上記一側に向かって均一な径で延びる大径部71aと、大径部71aの上記筒軸方向の上記一側の端部から該一側に向かって縮径するように延びる縮径部71bと、該縮径部71bの最も小さい外径で上記筒軸方向の上記一側に向かって延びる小径部71cと、該小径部71cよりも拡径した後、上記筒軸方向の上記一側に向かって延びる先端部71dとを有している。
【0064】
水噴射弁69は、上記筒軸方向に沿って延びるように第1のケース71の筒内に配設されかつ該筒軸方向に往復動可能な針弁73を有している。水供給路72は、
図5及び
図6(a)に示すように、針弁73と第1のケース71の内周面との間に形成されている。
【0065】
図5に示すように、針弁73における上記筒軸方向の上記他側の端部には、該針弁73を作動させる電動機器74が設けられている。詳細には図示していないが、電動機器74は、針弁73を上記筒軸方向の上記一側に向かって付勢するバネ部材と、針弁73を、上記バネ部材の付勢力に抗して上記筒軸方向の上記他側に向かって移動させる電磁石と、該電磁石への電流のオン-オフを制御するための制御装置とが設けられている。該制御装置は、例えば、半導体素子で構成されている。
【0066】
ノズル部75は、第1のケース71の先端部71dに水供給路72を閉じるように嵌め込まれたヘッド部75aを有している。ヘッド部75aの上記筒軸方向の上記他側の部分には、上記筒軸方向の上記一側に向かって凹んだ凹部75bが形成されている。
図5及び
図6(a)に示すように、該凹部75bには針弁73の先端部(上記筒軸方向の上記一側の端部)が挿入されている。凹部75bの底部には、該底部を貫通する噴射口75cが形成されている。該噴射口75cは、針弁73の先端部により塞がれている。電動機器74が作動して、針弁73が上記筒軸方向の上記他側に向かって移動したときには、噴射口75cと水供給路72とが連通して、噴射口75cから水が燃焼室29に噴射されるようになっている。
【0067】
図5及び
図6(a)に示すように、水供給路におけるノズル部75寄りの部分には、該ノズル部75寄りの部分における他の部分よりも流路断面積が大きくなるように、第1のケース71の径方向の外側に拡張された滞留部76が設けられている。詳しくは、滞留部76は、水供給路72における、第1のケース71の縮径部71b及び大径部71aの上記筒軸方向の上記一側の端部に対応する部分にかけて形成されている。滞留部76は、
図6(b)に示すように、上記筒軸方向の上記一側から見て、上側に形成されている。
図5及び
図6(a)に示すように、滞留部76における上記縮径部71bに対応する部分は、上記筒軸方向の上記他側(ノズル部75とは反対側)に向かって上記径方向の外側に傾斜した傾斜部76aが形成されている。つまり、滞留部76は、上記傾斜部76aを少なくとも部分的に有している。滞留部76における傾斜部76aよりも上記筒軸方向の上記他側の部分は、一定の拡張された流路断面積となる拡張部76bとなっている。詳しくは後述するが、滞留部76は、水供給路72内の水の一部が滞留する部分である。
【0068】
水供給路72における、滞留部76の上記筒軸方向の上記他側の端部には、滞留部76よりも縮径した段差部77が形成されている。
図5及び
図6(a)に示すように、段差部77は、上記筒軸方向に対して垂直な方向に、上記径方向に沿って真っ直ぐ伸びている。本実施形態1では、
図5及び
図6(a)に示すように、水供給路72における段差部77よりも上記筒軸方向の上記他側の部分は、流路断面積が略一定となっている。詳しくは後述するが、段差部77は、滞留部76内の水が該滞留部76よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための部分である。
【0069】
ノズル部75の上記径方向の外側(厳密には、第1のケース71の先端部の上記径方向の外側)には、
図5に示すように、ノズル部75を周方向の全体に亘って、上記径方向の外側から囲むように、筒状のノズルホルダー78が取り付けられている。ノズルホルダー78は、第1のケース71の縮径部71bの上記筒軸方向の上記他側の端部の位置まで延びている。ノズルホルダー78の上記筒軸方向のノズル部75寄りの部分には、上記筒軸方向の上記一側から上記他側に向かって拡径するように広がるテーパー部78aが形成されている。ノズルホルダー78は、銅等の高熱伝導部材で構成されている。尚、例えば、400W/m・K以上の熱伝導率を有する金属材料であれば、ノズルホルダー78を銅以外の金属材料で構成してもよい。
【0070】
図5に示すように、ノズルホルダー78における上記テーパー部78aから上記筒軸方向の上記他側の端までの部分と、第1のケース71の外周面との間には、シールリング79と、バックアップリング80とが配設されている。シールリング79は、第1のケース71の先端部71dにおける上記筒軸方向の上記他側の部分に取り付けられている。シールリング79は、ノズルホルダー78のテーパー部78aの形状に合わせて傾斜しかつ該テーパー部78aに当接する当接部79aを有している。バックアップリング80は、第1のケース71の縮径部71b及び小径部71cに上記径方向の外側から嵌め込まれている。バックアップリング80の上記筒軸方向の上記他側の部分は、上記縮径部71cの形状に合わせて傾斜しかつ該縮径部71cに当接する当接部80aとなっている。シールリング79及びバックアップリング80は、いずれも銅等の高熱伝導部材で構成されている。尚、例えば、400W/m・K以上の熱伝導率を有する金属材料であれば、シールリング79及びバックアップリング80を銅以外の金属材料で構成してもよい。
【0071】
水噴射弁69がエンジン本体2の燃焼室29側に向かって押し付けられたときには、ノズルホルダー78に上記筒軸方向の上記他側に向かう軸力がかかる。ノズルホルダー78がテーパー部78aを有し、シールリング79が当接部79aを有していることにより、上記軸力がかかったときには、シールリング79が第1のケース71に向かって押し付けられる。これにより、シールリング79と第1のケース71とが密着状態になる。また、水噴射弁69がエンジン本体2の燃焼室29側に向かって押し付けられたときには、シールリング79を介して、バックアップリング80にも上記軸力がかかる。バックアップリング80は、第1のケース71の縮径部71bに押し付けられる。これにより、バックアップリング80も第1のケース71と密着状態になる。
【0072】
図5に示すように、第1のケース71における、上記筒軸方向の滞留部76に対応する部分の周囲には、上記ノズル部75近傍の水を加熱するための加熱装置81が、熱流抑制シート82を介して配設されている。加熱装置81は、アルミナ材等の熱容量蓄熱材内に電熱線等を埋設して構成されている。
図5に示すように、加熱装置81は、第1のケース71における上記筒軸方向の滞留部76に対応する部分、特に、滞留部76の拡張部76bを、上記径方向の外側から覆うような筒状をなしている。
図5に示すように、加熱装置81は、第1のケース71の大径部71aの上記筒軸方向の中央よりも他側まで延びている。
図5に示すように、加熱装置81の上記筒軸方向の上記一側の端は、ノズルホルダー78の上記筒軸方向の上記他側の端に当接している。
【0073】
尚、加熱装置81への電力は、上記車両に搭載されたバッテリ(図示省略)から供給される。上記バッテリへの充電は、減速時などの走行シーンで、上記車両に搭載された発電機(図示省略)による回生により行うため、燃費を悪化させることは無い。
【0074】
熱流抑制シート82は、第1のケース71の上記筒軸方向の滞留部76に対応する部分と加熱装置81との間の部分を含んで、加熱装置81と第1のケース71との間全体に設けられている。熱流抑制シート82は、滞留部76内の水及び水供給路72における該滞留部76よりも上流側の水が、加熱装置81によって直接的に加熱されないようにするためのものである。本実施形態1では、熱流抑制シート82は、カーボンシート等の高耐熱材で構成されているが、熱流抑制シート82を介して大径部71aの壁に伝わった熱が、その壁を伝って電動機器74側に流れ過ぎず、大径部71aの壁を伝って水供給路72の水に伝わり、その水温を下げ過ぎないようにするために、例えば、耐熱性が高く、熱伝導率が90W/m・K未満の材料であれば、熱流抑制シート82をカーボンシート以外の材料で構成してもよい。
【0075】
また、加熱装置81の上記径方向の外側の部分には、遮熱コーティング層83が形成されている。これにより、加熱装置81からの熱流は、上記径方向の内側及び外側には向かい難くなり、高熱伝導材で構成されたノズルホルダー78に向かうようになる。ノズルホルダー78に流れ込んだ熱流は、同じく高熱伝導材で構成されたシールリング79及びバックアップリング80に流れ込む。その後熱流は、第1のケース71を介して、水供給路72におけるノズル部75近傍の水が加熱される。上述したように、シールリング79及びバックアップリング80は、第1のケース71に密着されているため、熱流に対する接触抵抗が小さくなっている。このため、効率良くノズル部75近傍の水を加熱することができる。
【0076】
本実施形態1では、加熱装置81による熱以外にも、排気ポート開口部46から当該排気ポート47に排出された直後の排気ガスの熱を、ノズル部75近傍の水に伝達するようにしている。具体的には、本実施形態1では、
図7に示すように、ノズルホルダー78を、排気バルブシート26に対して密接するように配設している。詳しくは、例えば、ノズルホルダー78の外周面に雄ねじを形成する一方、排気バルブシート26の周面の一部に雌ねじを形成して、ノズルホルダー78を排気バルブシート26に対してねじ込む。これにより、ノズルホルダー78と排気バルブシート26とが略密着状態になって、水噴射弁69のノズル部75が、ノズルホルダー78を介して排気バルブシート26と間接的に連結された状態となる。この結果、水噴射弁69のノズル部75には、排気バルブシート26及びノズルホルダー78を介して、排気ポート47に排出された直後の排気ガスの熱が伝達されるようになる。
【0077】
本実施形態1では、加熱装置81及び排気ガスの熱により、水供給路72内全体におけるノズル部75近傍の水のみを超臨界状態にするようにしている。ここで、基本的に、水は加熱されると、相対的に温度の高い水(以下、高温水という)が相対的に温度の低い水(以下、低温水という)の方に向かって流れようとする。また、超臨界状態の水は、加熱されると密度が低くなる。このため、本実施形態1のように、上記筒軸方向におけるノズル部75に近い位置ほど下側に位置するように傾斜していると、上記高温水は、上側に向かって、すなわち、水供給路72の上流側に向かって該水供給路72を逆流するように移動しやすい。
【0078】
上記高温水が、水供給路72を逆流するように上流側に向かって移動すると、ノズル部75近傍には上記低温水が集まりやすい。ノズル部75付近に低温水が集まると、該低温水が燃焼室29内に供給されるようになり、エンジン1の燃焼効率が低下するおそれがある。また、上述したように、針弁73の上記筒軸方向の上記他側の端部には、針弁73を作動させるための電動機器74がある。上記高温水が、水供給路72を逆流するように上流側に向かって移動すると、上記高温水が電動機器74に近づくため、電動機器74の制御装置等が該高温水の熱により故障して、電動機器74の動作に悪影響が生じるおそれがある。
【0079】
しかしながら、本実施形態1では、滞留部76及び段差部77が設けられているため、上記高温水が水供給路72を逆流するように上流側に向かって移動するのを抑制することができる。詳しくは、上記高温水が水供給路72の上流側に向かって移動するときには、該高温水は、水供給路72の上側の面(すなわち、第1のケース71の筒内の上側の面)に沿って移動する。このため、ノズル部75近傍から上記高温水が、水供給路72の上流側に向かって移動する場合、一旦、滞留部76に流入する。滞留部76の上記筒軸方向の上記他側の端部には段差部77が設けられているため、滞留部76に流入した上記高温水は、段差部77によって、水供給路72の上流側への移動が妨げられる。これにより、滞留部76内に水供給路72内の水の一部、特に、上記高温水が滞留して、該高温水が水供給路72を逆流するように上流側に向かって移動するのを抑制することができる。
【0080】
特に、本実施形態1では、滞留部76の上記筒軸方向の上記一側、すなわち、ノズル部75に近い側には、傾斜部76aが設けられているため、上記高温水が水供給路72の上流側に移動する際には、該高温水は傾斜部76aに沿って滞留部76内(厳密には、拡張部76b内)に進入しやすくなる。これにより、水噴射弁69内で上記高温水が上流側に移動するのがより効果的に抑制される。
【0081】
また、滞留部76の拡張部76b及び段差部77よりも上流側の部分は、上記径方向の外側が熱流抑制シート82により覆われている。これにより、拡張部76bに滞留する上記高温水、及び段差部77を超えて該段差部77よりも上流側に流れた上記高温水には、加熱装置81からの熱流が伝達されにくくなっている。このため、拡張部76bに滞留する上記高温水及び段差部77よりも上流側に流れた上記高温水は、温度が低下する。温度が低下すると密度が高くなるため、温度が低下した水は、再びノズル部75に向かって流れる。これにより、ノズル部75部近傍の水を、温度が高くかつ密度が高い状態に維持することができる。尚、段差部77よりも上流側に流れる上記高温水は、滞留部76内で温度が低下して、密度が僅かに回復することで、段差部77よりも下側に沈んだ水である。このため、段差部77よりも上流側に流れる上記高温水は、電動機器74に到達する前に十分に密度が回復して、ノズル部75に向かって移動するようになる。
【0082】
以上のように、本実施形態1の水噴射弁69では、ノズル部75から滞留部76の段差部76aまでが水を加熱する加熱域となり、滞留部76の拡張部76bから上流側は加熱を抑制して水を冷却する加熱抑制域になるとともに、加熱域の一部と加熱抑制域の一部とが含まれるように、滞留部76の部分に低密度水滞留域が形成される。これにより、加熱域には温度が高くかつ密度が高い水が確保されるようにし、温度上昇により密度が低下した水については、低密度水滞留域(つまり、滞留部76)に滞留させつつ、加熱抑制域で温度を低下させて、密度を回復させた後、再び加熱域に戻すことができる。この結果、高温でかつ密度の高い水を気筒20内(燃焼室29内)に噴射することができ、超臨界水の噴射によるNOx抑制効果等を向上させることができる。
【0083】
したがって、本実施形態では、水噴射弁69は、筒状の第1のケース71と、第1のケース71の筒軸方向に沿って延びるように形成された水供給路72と、水供給路72の、上記筒軸方向における上記燃焼室29側の端部に形成されかつ上記燃焼室29に水を噴射するためのノズル部75と、を有し、上記筒軸方向におけるノズル部75に近い位置ほど下側に位置するように配設されており、水供給路72におけるノズル部75寄りの部分には、該ノズル部75寄りの部分における他の部分よりも流路断面積が大きくなるように径方向の外側に拡張されかつ水供給路72内の水の一部が滞留する滞留部76が設けられ、滞留部76における、上記筒軸方向のノズル部75とは反対側の端部には、滞留部76内の水が該滞留部76よりも上流側に向かって流れるのを抑制するための段差部77が形成されており、第1のケース71における、上記筒軸方向の滞留部76に対応する部分の周囲には、ノズル部75近傍の水を加熱するための加熱装置81が設けられているため、加熱装置81により加熱されて、水供給路72のノズル部75近傍から上流側に向かって逆流するように移動しようとする水は、滞留部76に進入して、該滞留部76内に滞留する。これにより、水噴射弁69内で温度の高い水が水供給路72の上流側に移動するのが抑制される。
【0084】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図8は、実施形態2に係る水噴射弁69の構成を示す。本実施形態2は、水供給路272の構成(すなわち、第1のケース71の筒内の構成)が異なり、その他の構成(加熱装置81等)は、上記実施形態1と同じであるため、
図8及び
図9では、加熱装置81等は省略している。
【0086】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、本実施形態2は、第1のケース71の筒軸方向から見て上側の部分でかつ段差部77よりも上流側の部分に絞り部284が部分的に形成されている。具体的には、
図8(a)に示すように、第1のケース71の筒軸Cを含み鉛直方向に平行な断面において、段差部77が上記実施形態1と比較して、第1のケース71の上記筒軸Cに近い位置まで、第1のケース71の径方向の内側に延びている。そして、絞り部284は、上記径方向における長さを段差部77と同じ長さにして、上記筒軸方向に沿って、該筒軸方向の他側(ノズル部75とは反対側)に向かって延ばすことで形成されている。
【0087】
図9に示すように、絞り部284が形成された部分は、水供給路272の上記上側の部分における、他の部分よりも流路断面積が小さい。具体的に、本実施形態2の水供給路272の流路断面積について説明すると、
図9に示すように、ノズル部75側の端部から一定の流路断面積が続いた後、傾斜部76aで流路断面積が増加し、拡張部76bでは傾斜部76aにおける最大の流路断面積が維持される。そして、絞り部284では、水供給路272の上記上側の部分で最小の流路断面積となって、その後、絞り部284の上流端で流路断面積が僅かに大きくなる。
【0088】
このように、絞り部284が形成されていることにより、上記高温水が滞留部76に滞留しやすくなる。この結果、水噴射弁69内で上記高温水が水供給路72の上流側に移動するのが一層効果的に抑制される。
【0089】
(実施形態3)
以下、本発明の実施形態3について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1及び2と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0090】
図10は、実施形態3に係る水噴射弁69の構成を示す。本実施形態3は、水供給路372の構成(すなわち、第1のケース71の筒内の構成)が異なり、その他の構成(加熱装置81等)は、上記実施形態1と同じであるため、
図10では、加熱装置81等は省略している。
【0091】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、本実施形態3でも、上記実施形態2と同様に、第1のケース71の筒軸方向から見て上側の部分でかつ段差部77よりも上流側の部分に絞り部284が設けられている。本実施形態3では、
図10(a)及び
図10(b)に示すように、水供給路372における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ上記絞り部284に対向する部分に、流路断面積が大きくなるように、第1のケース71の径方向の外側に向かって広がる流路拡大部385が形成されている点で、実施形態1及び2とは異なる。
【0092】
すなわち、水供給路72内の水は、燃焼室29内に噴射される際には、ノズル部75側に向かって流れる。このため、燃焼室29内への水噴射時に、水供給路372内での水の流れをスムーズにするためには、水供給路372に絞り部284を設けて、該上側の部分の流路断面積を小さくしつつも、水供給路372の上側の部分及び下側の部分を含む全体の流路断面積は小さくしないようにすることが望ましい。上記のように流路拡大部385を形成すれば、絞り部284が設けられた部分において、水供給路372の上側の部分の流路断面積は小さくなっているが、水供給路372の下側の部分の流路断面積が大きくなっているため、全体の流路断面積は、水供給路372における、滞留部76が設けられた部分を除く他の部分と略同じ(厳密には、ノズル部75の近傍よりは僅かに小さい)にすることができる。したがって、水供給路372に絞り部284を形成しつつ、水を燃焼室29内に噴射する際の水供給路372内での水の流れをスムーズにすることができる。
【0093】
流路拡大部385は、
図10(b)に示すように、少なくとも、絞り部284により減少する流路断面積に相当する大きさの流路断面積が確保されるように形成されていることが好ましい。
【0094】
(実施形態4)
以下、本発明の実施形態4について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1~3と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0095】
図11は、実施形態4に係る水噴射弁69の構成を示す。本実施形態4は、水供給路472の構成(すなわち、第1のケース71の筒内の構成)が異なり、その他の構成(加熱装置81等)は、上記実施形態1と同じであるため、
図11では、加熱装置81等は省略している。
【0096】
図11(a)及び
図11(b)に示すように、本実施形態3では、水供給路472における、上記筒軸方向から見て下側の部分でかつ滞留部76に対向する部分に、滞留部76側に向かって突出した突出部486が形成されている点で、実施形態1~3とは異なる。このように、突出部486が形成されていることで、密度が低くなった上記高温水が水供給路472を逆流するように上流側に移動するときに、滞留部76に向かって流れやすくなる。この結果、水噴射弁69内で上記高温水が水供給路472の上流側に移動するのがさらに効果的に抑制される。
【0097】
また、本実施形態4では、突出部486は、
図11(a)に示すように、上記筒軸方向の他側(ノズル部75とは反対側)に向かって滞留部76側に傾斜した傾斜部486aを有している。この傾斜部486aによって、上記高温水が水供給路472の上流側に移動する際に、一層、滞留部76に向かって流れやすくなる。このため、水噴射弁69内で上記高温水が水供給路472の上流側に移動するのがより一層効果的に抑制される。
【0098】
尚、本実施形態4では、
図11(b)に示すように、突出部486は、水供給路472の周方向の下側半周分に亘って連続的に形成されているが、水供給路472の周方向の半周分よりも短くても良い。また、突出部486は、水供給路472の周方向に並ぶように、断続的に複数形成されていてもよい。
【0099】
(実施形態5)
以下、本発明の実施形態5について、図面を参照しながら詳細に説明する。尚、以下の説明において実施形態1~4と共通の部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0100】
図12は、実施形態5に係る水噴射弁69のエンジン本体2における配置を示す。本実施形態5は、
図12に示すように、水噴射弁69は、第1のケース71の筒軸Cが気筒20の中心軸方向と平行に延びるように配設されている点で、上記実施形態1~4とは異なる。より詳しくは、水噴射弁69は、気筒20の中心軸方向及び上記所定方向に垂直な方向から見て(
図12の方向から見て)、吸気ポート37と排気ポート47の間の位置に、ノズル部75が下側を向くとともに、第1のケース71の筒軸Cが気筒20の中心軸方向と平行に延びるように配設されている。尚、
図12では、燃料噴射弁220は、水噴射弁69と重なって見えないため省略している。
【0101】
上記のように、水噴射弁69が配設されていると、水噴射弁69は略鉛直方向に延びるように配設されるため、ノズル部75近傍の上記高温水は、水供給路572の上流側にかなり移動しやすい。このため、水供給路572内の構成を、実施形態1~4とは異なるものにしている。
【0102】
図13は、本実施形態5に係る水噴射弁69の構成を示す。本実施形態5は、水供給路572の構成(すなわち、第1のケース71の筒内の構成)が異なり、その他の構成(加熱装置81等)は、上記実施形態1と同じであるため、
図13では、加熱装置81等は省略している。
【0103】
図13(a)及び
図13(b)に示すように、本実施形態5では、水供給路72の周方向全体に亘って、滞留部576及び絞り部584が形成されている。本実施形態5のように、水噴射弁69は略鉛直方向に延びるように配設されると、ノズル部75近傍の加熱域で加熱されて、密度が低下した上記高温水は、ほぼそのまま上側(すなわち、水供給路572の上流側)に向かって移動する。このため、滞留部576及び絞り部584を水供給路572の全周に亘って形成して、上側に向かって移動した水が、滞留部576に進入するようにしている。
【0104】
また、
図13(a)に示すように、本実施形態5では、段差部577は、第1のケース71の径方向の内側に向かって、第1のケース71の筒軸方向の一側(ノズル部75側)に傾斜している。これにより、水供給路572を逆流するように上側に向かって移動した水が、段差部577にぶつかったときに、該水は、段差部577に沿って滞留部576内に進入する。この結果、密度が低下した上記高温水を滞留部576内に滞留させやすくなり、水噴射弁69内で上記高温水が水供給路572の上流側に移動するのを効果的に抑制することができる。
【0105】
特に、本実施形態5のように、水噴射弁69は略鉛直方向に延びるように配設されると、仮に、段差部577が、上記筒軸方向に対して垂直な方向に、上記径方向に沿って真っ直ぐ伸びている場合には、段差部577に衝突した水が水供給路572の上流側に移動してしまうおそれがある。すなわち、仮に、段差部577が、上記筒軸方向に対して垂直な方向に、上記径方向に沿って真っ直ぐ伸びている場合、段差部577に衝突した水が、該段差部577に沿って上記径方向の内側に向かって移動して、水供給路572における絞り部584よりも上記径方向の内側の部分に進入する可能性がある。したがって、段差部577が、第1のケース71の径方向の内側に向かって、第1のケース71の筒軸方向の上記一側に傾斜していることより、水噴射弁69内で上記高温水が水供給路572の上流側に移動するのを一層効果的に抑制することができる。
【0106】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0107】
例えば、上記実施形態1~4では、段差部77は、第1のケース71の筒軸方向に垂直な方向に、第1のケース71の径方向に沿って真っ直ぐ伸びているが、これに限らず、実施形態5のように、段差部77が、第1のケース71の径方向の内側に向かって、上記筒軸方向の一側(ノズル部75側)に傾斜していてもよい。
【0108】
また、上記実施形態4では、絞り部284及び流路拡大部385が設けられているものに対して、突出部486を設けていたが、これに限らず、上記実施形態1のように、絞り部284及び流路拡大部385の両方が設けられていないものに対して突出部486を設けてもよいし、上記実施形態2のように、絞り部284は設けられる一方、流路拡大部385が設けられていないものに対して突出部486を設けるようにしてもよい。
【0109】
さらに、上記実施形態1~5では、ノズルホルダー78は、排気バルブシート26と直接連結されていたが、必ずしも直接連結されていなくてもよい。例えば、ノズルホルダー78と排気バルブシート26とが直接連結していない場合でも、ノズルホルダー78と排気バルブシート26との間に高熱伝導材で構成された熱伝送シートを配置するようにすることで、排気ポート47から排気ガスの熱をノズルホルダー78に伝達することができる。
【0110】
また、上記実施形態1~5では、滞留部76(576)には、傾斜部76a(576a)が設けられていたが、傾斜部76a(576a)は、必ずしも設けられていなくてもよい。逆に、滞留部76(576)の全体を、傾斜部76a(576a)で構成してもよい。すなわち、段差部77(577)の位置まで、滞留部76(576)が、上記筒軸方向の他側(ノズル部75とは反対側)に向かって、上記径方向の外側に傾斜していてもよい。
【0111】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
ここに開示された技術は、燃焼室を構成する気筒と、該燃焼室内に臨むように設けられかつ該燃焼室内に高温水を噴射するための水噴射弁とを備えるエンジンに有用である。
【符号の説明】
【0113】
1 エンジン
20 気筒
26 排気バルブシート
29 燃焼室
47 排気ポート
69 水噴射弁
71 第1のケース
72 水供給路
73 針弁
74 電動機器
75 ノズル部(噴射部)
76 滞留部
76a 傾斜部
77 段差部
81 加熱装置
82 熱流抑制シート
284 絞り部
385 流路拡大部
486 突出部
576 滞留部
577 段差部
584 絞り部