(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】排気浄化装置および車両
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20220426BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20220426BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20220426BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F01N3/20 U
F01N3/20 A
F01N3/20 B
F01N3/20 J
F01N3/20 M
F01N3/20 N
F01N3/24 T
F01N3/28 301J
F02D23/00 F
(21)【出願番号】P 2018085999
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】景山 遊大
(72)【発明者】
【氏名】大石 和貴
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270535(JP,A)
【文献】特開2013-002355(JP,A)
【文献】特開2001-107722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0088373(US,A1)
【文献】特開2013-124610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
F02D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から生じた排気ガスが流れ、過給機の一部を構成するタービンが配置される排気管と、
前記排気管における前記タービンよりも排気方向の下流側に配置され、排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx選択還元型触媒と、
前記排気管における、前記タービンよりも排気方向の上流側の部位と、排気方向で前記タービンと前記NOx選択還元型触媒との間の部位とを連結する上流側バイパス経路部と、
前記排気管における、排気方向で前記タービンと前記NOx選択還元型触媒との間の部位と、前記NOx選択還元型触媒よりも排気方向の下流側とを連結する下流側バイパス経路部と、
前記下流側バイパス経路部に配置され、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、後に還元するNOx吸着触媒と、
前記排気管と前記上流側バイパス経路部との間における排気ガスの流量を調整する上流側調整部と、
前記排気管と前記下流側バイパス経路部との間における排気ガスの流量を調整する下流側調整部と、
前記排気ガスの温度がNOx吸着触媒に吸着された窒素酸化物を脱離させる温度以上である場合、排気ガスを、前記上流側バイパス経路部を経由して前記下流側バイパス経路部に流すように、前記上流側調整部および前記下流側調整部を制御する制御部と、
を備える、
排気浄化装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記排気ガスの温度が前記NOx選択還元型触媒に吸着されたSOxを脱離させる温度以上である場合、排気ガスを、前記上流側バイパス経路部を経由して前記排気管に流すように、前記上流側調整部および前記下流側調整部を制御する、
請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気浄化装置を備える、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気浄化装置および車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気系において、内燃機関から生じた排気ガス中の窒素酸化物(以下、「NOx」という)を、還元するNOx選択還元型触媒を有する排気浄化装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内燃機関の排気管に配置された過給機の一部を構成するタービンと、排気管におけるタービンよりも排気方向の下流側に配置されたNOx選択還元型触媒とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、タービンにおいては、熱エネルギーが回収されるため、排気ガスの温度が低下する。排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒の下限活性温度未満である場合、NOx選択還元型触媒は、NOxを適切に還元することができない。例えば、内燃機関が冷間始動し、排気ガスの温度が十分上昇するまでの間においては、排気ガス中のNOxが還元されずに排気系統から大気中へ放出されるおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、排気ガスの低温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することが可能な排気浄化装置および車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る排気浄化装置は、
内燃機関から生じた排気ガスが流れ、過給機の一部を構成するタービンが配置される排気管と、
前記排気管における前記タービンよりも排気方向の下流側に配置され、排気ガス中の窒素酸化物を還元するNOx選択還元型触媒と、
前記排気管における、前記タービンよりも排気方向の上流側の部位と、排気方向で前記タービンと前記NOx選択還元型触媒との間の部位とを連結する上流側バイパス経路部と、
前記排気管における、排気方向で前記タービンと前記NOx選択還元型触媒との間の部位と、前記NOx選択還元型触媒よりも排気方向の下流側とを連結する下流側バイパス経路部と、
前記下流側バイパス経路部に配置され、排気ガス中の窒素酸化物を吸着し、後に還元するNOx吸着触媒と、
前記排気管と前記上流側バイパス経路部との間における排気ガスの流量を調整する上流側調整部と、
前記排気管と前記下流側バイパス経路部との間における排気ガスの流量を調整する下流側調整部と、
前記排気ガスの温度がNOx吸着触媒に吸着された窒素酸化物を脱離させる温度以上である場合、排気ガスを、前記上流側バイパス経路部を経由して前記下流側バイパス経路部に流すように、前記上流側調整部および前記下流側調整部を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る車両は、
上記排気浄化装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、排気ガスの低温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に係る排気浄化装置が適用された内燃機関の排気系を示す概略構成図
【
図2】本開示の実施の形態に係る排気浄化装置における排気ガスの流量調整制御の動作例を示すフローチャート
【
図3】変形例2に係る排気浄化装置における排気ガスの流量調整制御の動作例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る排気浄化装置が適用された内燃機関の排気系を示す概略構成図である。
【0012】
図1に示すように、内燃機関1は、車両Vに搭載される、例えばディーゼルエンジンであり、内燃機関1で生じた排気ガスを大気中に導くための排気浄化装置100が設けられている。排気浄化装置100は、排気管110と、タービン120と、上流側バイパス経路部130と、上流側調整部140Aと、下流側調整部140Bと、温度検出部150と、下流側バイパス経路部160と、制御部300とを備えている。
【0013】
排気管110は、内燃機関1から生じた排気ガスが流れる。排気管110には、排気ガスが流れる方向(図示左から右へ向かう方向、以下、「排気方向」という)の上流側から順に、タービン120、酸化触媒210、NOx選択還元型触媒220、アンモニアスリップ触媒230等が設けられている。
【0014】
酸化触媒210は、排気ガス中の一酸化窒素(NO)等を酸化させて二酸化窒素(NO2)を生成することで、NOX選択還元型触媒220の浄化性能を向上させる。
【0015】
NOx選択還元型触媒220は、排気管110における酸化触媒210の下流側に配置され、図示しない尿素水噴射部により噴射された尿素水に基づいて生成されたアンモニアを吸着する。NOx選択還元型触媒220は、排気ガスの温度が下限活性温度以上のとき、吸着したアンモニアと、自身を通過する排気ガス中に含まれるNOxとを反応させることで、当該NOxを還元する。活性温度は、NOx選択還元型触媒220が活性化領域となる温度である。
【0016】
アンモニアスリップ触媒230は、排気方向におけるNOx選択還元型触媒220の下流側に位置しており、NOx選択還元型触媒220で使用されなかったアンモニアを分解して、アンモニアが車両V外に排出されるのを防止する。
【0017】
タービン120は、過給機の一部を構成しており、排気管110に設けられている。タービン120は、図示しないタービンインペラが、内燃機関1から排出された排気ガスにより回転する。また、タービン120は、過給機の他部を構成する、図示しない圧縮機と接続されている。圧縮機のコンプレッサインペラとタービンインペラとがシャフトにより一体に回転することで、吸気管から送り込まれる外気がコンプレッサインペラの回転により過給されて内燃機関1に送り込まれる。
【0018】
上流側バイパス経路部130は、排気管110における、タービン120よりも排気方向の上流側の部位111と、タービン120とNOx選択還元型触媒220との間の部位112とを接続する。
【0019】
下流側バイパス経路部160は、排気管110における、NOx選択還元型触媒220よりも排気方向の上流側の部位112と、アンモニアスリップ触媒230よりも排気方向の下流側の部位113とを接続する。下流側バイパス経路部160には、NOx吸着触媒240が設けられている。
【0020】
NOx吸着触媒240は、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満であっても、排気ガス中のNOxを吸着することが可能である。
【0021】
上流側調整部140Aは、上流側バイパス経路部130に流れる排気ガスのバイパス流量を調整可能なバルブである。制御部300が上流側調整部140Aを制御することで、排気管110の排気ガスが上流側バイパス経路部130に流れる。
【0022】
下流側調整部140Bは、下流側バイパス経路部160に流れる排気ガスのバイパス流量を調整可能なバルブである。制御部300が下流側調整部140Bを制御することで、排気管110の排気ガスが下流側バイパス経路部160に流れる。
【0023】
温度検出部150は、排気管110の下流側調整部140BとNOx選択還元型触媒220との間の部位112に設けられ、排気方向におけるNOx選択還元型触媒220よりも上流側の排気ガスの温度を検出する。
【0024】
制御部300は、例えば電子制御ユニットであり、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。制御部300は、予め設定されたプログラムに基づいて、上流側調整部140Aにおける排気ガスのバイパス流量を制御するように構成されている。同様に、制御部300は、予め設定されたプログラムに基づいて、下流側調整部140Bにおける排気ガスのバイパス流量を制御するように構成されている。
【0025】
制御部300は、排気ガスの温度に応じて、排気ガスを上流側バイパス経路部130に流すように上流側調整部140Aを制御し、かつ、排気ガスを下流側バイパス経路部160に流すように下流側調整部140Bを制御する。
【0026】
以下、具体的に、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bの制御について説明する。
【0027】
先ず、排気ガスの温度が予め定められた第一閾値未満の場合について説明する。ここでは、「第一閾値」を、NOx選択還元型触媒220の下限活性温度として説明する。
【0028】
制御部300は、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満である場合、上流側バイパス経路部130に排気ガスを流すように上流側調整部140Aを制御し、かつ、下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に排気ガスを流すように下流側調整部140Bを制御する。なお、このときの、上流側バイパス経路部130における排気ガスの流量は、タービン120側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように上流側調整部140Aが制御される。また、このときの、下流側バイパス経路部160における排気ガスの流量は、排気管110(NOx選択還元型触媒220)側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように下流側調整部140Bが制御される。ここで、タービン120側に流れる排気ガス流量は、タービン120の回転数が許容される下限値を下回らないために必要とされる流量である。
【0029】
排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満であると、NOx選択還元型触媒220における還元処理が行われにくいので、排気ガス中のNOxが大気に排出されやすくなる。例えば、内燃機関1が冷間始動し、排気ガスの温度が十分上昇するまでの間においては、NOxが還元されにくいので、排気ガス中のNOxが大気に排出されやすくなる。特に、タービン120を有する構成の場合、タービン120を排気ガスが通過することで、排気ガスの排気エネルギーがタービンインペラの回転エネルギーに変換されるので、排気ガスの温度が低下しやすい。
【0030】
そのため、本実施の形態では、排気ガスの温度が下限活性温度未満である場合、排気ガスを上流側バイパス経路部130に流すことによって排気ガスの温度低下を抑える。また、NOx吸着触媒240によって下流側バイパス経路部160を流れる排気ガス中に含まれるNOxを吸着する。これにより、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220で還元処理し難い温度のときに、排気ガスをNOx吸着触媒240に流すことで、排気ガス中のNOxがNOx吸着触媒240に吸着されるので、NOxが大気に排出されることを抑制することができる。
【0031】
次に、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度以上かつ第二閾値未満の場合について説明する。ここで、「第二閾値」とは、排気管110を流れてNOx選択還元型触媒220に達した排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度以上となる温度である。以下、「第二閾値」を、内燃機関1の高負荷時温度という。
【0032】
制御部300は、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度以上かつ高負荷時温度未満である場合、上流側バイパス経路部130に排気ガスを流すように上流側調整部140Aを制御し、かつ、NOx選択還元型触媒220に排気ガスを流すように下流側調整部140Bを制御する。このときの、上流側バイパス経路部130における排気ガスの流量は、タービン120側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように上流側調整部140Aが制御される。また、このときの、排気管110(NOx選択還元型触媒220)側に流れる排気ガスの流量は、下流側バイパス経路部160における排気ガスの流量よりも多くなるように下流側調整部140Bが制御される。
【0033】
以上のようにすることで、排気ガスの温度低下を抑えつつ、NOx選択還元型触媒220における還元処理を促進させることができる。
【0034】
次に、排気ガスの温度が高負荷時温度以上の場合について説明する。
【0035】
制御部300は、排気ガスの温度が高負荷時温度以上である場合、排気管110に排気ガスを流すように上流側調整部140Aを制御し、かつ、NOx選択還元型触媒220に排気ガスを流すように下流側調整部140Bを制御する。このときの、タービン120側に流れる排気ガスの流量は、上流側バイパス経路部130における排気ガスの流量よりも多くなるように上流側調整部140Aが制御される。また、このときの、排気管110(NOx選択還元型触媒220)側に流れる排気ガスの流量は、下流側バイパス経路部160における排気ガスの流量よりも多くなるように下流側調整部140Bが制御される。
【0036】
排気ガスの温度が高負荷時温度以上である場合、タービン120等が設けられた排気管110を排気ガスが流れて、排気ガスの温度が低下しても、低下した排気ガスの温度は、NOx選択還元型触媒220の下限活性温度以上である。このため、NOx選択還元型触媒220における還元処理を促進させることができる。
【0037】
以上のように構成された排気浄化装置100における排気ガスの流量調整制御の動作例について説明する。
図2は、排気浄化装置100における排気ガスの流量調整制御の動作例を示すフローチャートである。
図2の処理は、例えば、車両Vの走行中において、適宜実行される。
【0038】
図2に示すように、制御部300は、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満であるか否かについて判定する(ステップS100)。判定の結果、排気ガスの温度が下限活性温度以上である場合(ステップS100:NO)、処理はステップS120に遷移する。一方、排気ガスの温度が下限活性温度未満である場合(ステップS100:YES)、制御部300は、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する(ステップS110)。ステップS110の後、処理は終了する。
【0039】
ステップS100でNOと判定された場合、制御部300は、排気ガスの温度が高負荷時温度未満であるか否かについて判定する(ステップS120)。判定の結果、排気ガスの温度が高負荷時温度未満である場合(ステップS120:YES)、制御部300は、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して排気管110に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する(ステップS130)。ステップS130の後、処理は終了する。
【0040】
判定の結果、排気ガスの温度が高負荷時温度以上である場合(ステップS120:NO)、制御部300は、排気ガスを、上流側バイパス経路部130および下流側バイパス経路部160を経由せずに、排気管110に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する(ステップS140)。ステップS140の後、処理は終了する。
【0041】
以上のように、上記実施の形態に係る排気浄化装置100によれば、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満の場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する制御部300を備える。
【0042】
排気ガスを上流側バイパス経路部130に流すことにより、排気ガスの温度低下を抑えることができる。また、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度未満であっても、排気ガスを下流側バイパス経路部160に流すことで、NOx吸着触媒240においてNOxを吸着することができる。その結果、排気ガスの低温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することができる。
【0043】
また、上記実施の形態に係る排気浄化装置100によれば、排気ガスの温度がNOx選択還元型触媒220の下限活性温度以上かつ内燃機関1の高負荷時温度未満である場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して排気管110に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する制御部300を備える。
【0044】
排気ガスを上流側バイパス経路部130に流すことにより、排気ガスの温度を下限活性温度以上に維持することができる。また、下限活性温度以上の排気ガスを排気管110に流すことで、NOx選択還元型触媒220において、NOxを浄化することができる。その結果、排気ガスの中温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することができる。
【0045】
また、上記実施の形態に係る排気浄化装置100によれば、排気ガスの温度が内燃機関1の高負荷時温度以上である場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130および下流側バイパス経路部160を経由せずに、排気管110に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する制御部300を備える。
【0046】
これにより、排気管110(タービン120)を通った排気ガスの温度が下限活性温度以上の高負荷時温度であるため、排気ガスを、上流側バイパス経路部130および下流側バイパス経路部160を経由せずに、排気管110に流しても、NOx選択還元型触媒220において、排気ガス中のNOxを浄化することができる。その結果、排気ガスの高温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することができる。
【0047】
つまり、本実施の形態に係る排気浄化装置100によれば、低温域を含め広い温域においてNOxの大気中の放出を抑制することができる。
【0048】
<変形例1>
上記実施の形態においては、下流側バイパス経路部160と、下流側バイパス経路部160に配置されるNOx吸着触媒240とを備え、排気ガスの温度が下限活性温度未満(低温域)である場合、排気ガスを下流側バイパス経路部160に流して、NOx吸着触媒240でNOxを吸着し、後にNOxを還元する。
【0049】
ところで、NOx吸着触媒240のNOx吸着量には限度があるため、NOx吸着触媒240に吸着されているNOxを適宜脱離させる必要がある。しかしながら、排気ガスの温度が下限活性温度未満(低温域)では、NOxを脱離させることが困難となる。換言すれば、NOxを脱離させるには、排気ガスの温度が下限活性温度以上(具体的には、NOx脱離温度以上)である必要がある。
【0050】
そこで、変形例1に係る排気浄化装置100では、NOx吸着触媒240に吸着されているNOxを脱離させるための手段を備える。なお、変形例1における排気浄化装置100の構成は、上記実施の形態における排気浄化装置100の構成と同じである。
【0051】
制御部300は、排気ガスの温度がNOx脱離温度以上の場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する。ここで、「NOx脱離温度」とは、NOx吸着触媒240に吸着されているNOxを脱離させることが可能な温度である。
【0052】
上流側バイパス経路部130を経由して、NOx脱離温度以上の排気ガスを下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流すことにより、NOx吸着触媒240に吸着されているNOxを脱離させるNOxのパージが実行される。なお、このときの、上流側バイパス経路部130における排気ガスの流量は、タービン120側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように上流側調整部140Aが制御される。また、このときの、下流側バイパス経路部160における排気ガスの流量は、排気管110(NOx選択還元型触媒220)側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように下流側調整部140Bが制御される。
【0053】
変形例1に係る排気浄化装置100によれば、排気ガスの温度がNOx脱離温度以上の場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160に流す。これにより、下流側バイパス経路部160に配置されたNOx吸着触媒240においても、NOxのパージを適宜実行することが可能となる。
【0054】
制御部300は、排気ガスの温度がNOx脱離温度未満の場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して排気管110(NOx選択還元型触媒220)に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御してもよい。これにより、例えば、排気ガスの中温域におけるNOxの浄化が可能となる。
【0055】
なお、制御部300は、排気ガスの温度がNOx脱離温度より高いSOx脱離度以上の場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して排気管110(NOx選択還元型触媒220)に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御してもよい。排気ガスをNOx選択還元型触媒220に流すことにより、NOx選択還元型触媒220のSOxパージが実行される。これにより、NOx選択還元型触媒220をSOx被毒から回復させることができる。
【0056】
<変形例2>
変形例1においては、排気ガスの温度がNOx脱離温度以上である場合、排気ガスをNOx吸着触媒240に流すことにより、NOxのパージが実行される。ところが、排気ガスの温度条件(例えば、排気ガスの温度がNOx脱離温度以上に上昇しない)等によっては、NOxのパージが長時間にわたって実行されない場合がある。
【0057】
そこで、変形例2に係る排気浄化装置100では、NOxを強制的にパージする手段を備える。
【0058】
次に、変形例2に係る排気浄化装置100について説明する。なお、変形例2における排気浄化装置100の構成も、上記実施の形態における排気浄化装置100の構成と同じである。
【0059】
変形例2においては、制御部300は、NOx吸着触媒240に吸着されているNOx吸着量に基づいて、NOxを脱離させる必要があるか否かについて判断する。制御部300は、NOxを脱離させる必要があると判断した場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する。ここで、「NOxを脱離させる必要がある場合」とは、例えば、NOx吸着触媒240におけるNOxの吸着量が最大吸着量に達した場合である。NOxの吸着量が最大吸着量に達した場合、NOx吸着能力が低下する。NOx吸着能力を回復するために、NOx吸着触媒240に吸着されているNOxを脱離させる必要がある。
【0060】
NOx吸着触媒240に吸着されているNOxの吸着量は、内燃機関1の運転状態に基づいて算出されるNOx排出量や、下流側バイパス経路部160への排気ガスの流量(流通時間)等から推定される。
【0061】
排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流すことにより、NOxのパージが実行される。このときの、上流側バイパス経路部130における排気ガスの流量は、タービン120側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように上流側調整部140Aが制御される。また、このときの、下流側バイパス経路部160における排気ガスの流量は、排気管110(NOx選択還元型触媒220)側に流れる排気ガスの流量よりも多くなるように下流側調整部140Bが制御される。
【0062】
ところで、排気ガスを、下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流しても、排気ガスの温度がNOxの脱離温度未満の場合、NOxを脱離させることは困難となる。
【0063】
そこで、変形例2では、制御部300は、排気ガスの温度がNOxの脱離温度未満の場合、排気ガスの温度をNOxの脱離温度以上に上昇させるように昇温部を制御する。具体的には、制御部300は、NOx吸着触媒240よりも排気方向の上流側に配置されている酸化触媒210に図示しない燃料供給装置から燃料を供給させ、このときの酸化作用により、排気ガスの温度をNOxの脱離温度以上に上昇させる。なお、昇温部としては、上記の酸化触媒210および燃料供給装置に限らず、例えば、排気ガスの温度を上昇させるヒーターなどの公知の手段であってもよい。
【0064】
次に、排気浄化装置100における排気ガスの流量調整制御の動作例について、
図3を参照して説明する。
図3は、変形例2に係る排気浄化装置100における排気ガスの流量調整制御の動作例を示すフローチャートである。
図3の処理は、例えば、車両Vの走行中において、適宜実行される。
【0065】
図3に示すように、制御部300は、NOx吸着触媒240のNOx吸着量が最大吸着量に達したか否かについて判定する(ステップS200)。判定の結果、NOx吸着量が最大吸着量に達している場合(ステップS200:YES)、制御部300は、排気ガスの温度がNOx脱離温度以上であるか否かについて判定する(ステップS210)。一方、NOx吸着量が最大吸着量に達していない場合(ステップS200:NO)、処理は終了する。
【0066】
ステップS210でYESと判定された場合、制御部300は、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160に流すように、上流側調整部140Aおよび下流側調整部140Bを制御する(ステップS220)。
【0067】
ステップS210でNOと判定された場合、制御部300は、排気ガスの温度をNOx脱離温度以上に上げる制御を行う(ステップS230)。ステップS230の後、処理はステップS210の前に遷移する。
【0068】
変形例2に係る排気浄化装置100によれば、NOx吸着触媒240の吸着量が最大吸着量に達した場合、排気ガスを、上流側バイパス経路部130を経由して下流側バイパス経路部160(NOx吸着触媒240)に流す。これにより、NOxのパージが強制的に実行されるため、NOx吸着能力を回復させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示の排気浄化装置は、排気ガスの低温域におけるNOxの大気中の放出を抑制することが要求される内燃機関を搭載する車両用として有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 内燃機関
100 排気浄化装置
110 排気管
120 タービン
130 上流側バイパス経路部
140A 上流側調整部
140B 下流側調整部
150 温度検出部
160 下流側バイパス経路部
210 酸化触媒
220 NOx選択還元型触媒
230 アンモニアスリップ触媒
240 NOx吸着触媒
300 制御部
V 車両