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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】乗物用照明装置
(51)【国際特許分類】
   B60Q 3/64 20170101AFI20220426BHJP
   B60N 2/75 20180101ALI20220426BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220426BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20220426BHJP
   F21V 8/00 20060101ALI20220426BHJP
   B60Q 3/217 20170101ALI20220426BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20220426BHJP
   B60Q 3/78 20170101ALI20220426BHJP
   B60Q 3/41 20170101ALI20220426BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220426BHJP
【FI】
B60Q3/64
B60N2/75
B60J5/04 F
B60R13/02 B
F21V8/00 310
B60Q3/217
B60Q3/54
B60Q3/78
B60Q3/41
F21Y115:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018094540
(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公開番号】P2019073259
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2017199339
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】特許業務法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 和季
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-086532(JP,A)
【文献】特開2013-229316(JP,A)
【文献】米国特許第06164805(US,A)
【文献】特開2011-240811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 3/64
B60N 2/75
B60J 5/04
B60R 13/02
F21V 8/00
B60Q 3/217
B60Q 3/54
B60Q 3/78
B60Q 3/41
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を導光しつつ乗物室内に向けて出射する長手状の導光体と、を備える乗物用照明装置であって、
前記導光体は、
長手方向における少なくともいずれか一方の端面からなり、前記光源からの光が入射する光入射面と、
前記長手方向に湾曲した湾曲形状をなし、前記光入射面に入射した光を導光する湾曲導光部と、
前記長手方向において前記湾曲導光部より小さい曲率を有する形状をなし、前記湾曲導光部を通過した光を導光しつつ、側面から乗物室内に向けて出射する光出射部と、を有し、
前記湾曲導光部は、
前記湾曲形状における湾曲外側の面において、前記光入射面に入射した光の進行方向に位置し、前記光入射面に入射した光を反射する反射面と、
前記反射面と前記光出射部との間に位置し、幅方向における前記反射面側の面と前記反射面側の面と対向する対向面との間の寸法が前記光出射部に向かうにつれて大きくなるような逆テーパ状をなすテーパ部と、を有し、
前記テーパ部の前記対向面には、幅方向における中央部に、前記長手方向に沿って延設された突条部が設けられている乗物用照明装置。
【請求項2】
前記光入射面は、前記光源と対向配置されるとともに前記光源に向けて突出する凸面状をなす請求項1に記載の乗物用照明装置。
【請求項3】
第1のボード部材と、第2のボード部材と、前記第1のボード部材の縁部を前記第2のボード部材に対して取り付ける取付部と、を備えた乗物用内装材に設置され、
前記導光体は、前記光出射部が前記第1のボード部材の前記縁部に沿って前記取付部の手前まで延設されるとともに、前記湾曲導光部が、前記取付部の手前において、前記一方の端面側に向かうにつれて前記第1のボード部材の前記縁部から離れるようにして延設されている請求項1または請求項2に記載の乗物用照明装置。
【請求項4】
アームレストと、前記アームレストの下方に配されたポケットと、を備えた乗物用内装材に設置され、
前記光出射部は、前記アームレストの下面から前記乗物室内に臨み、前記ポケットの開口部に向けて光を出射するように構成されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の乗物用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、乗物用照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置として、下記特許文献1に開示のものが知られている。特許文献1に開示の照明装置は、光源と、光入射面を設けた光入射部を有する導光体と、を備えている。そして、図3及び図4を参照するに、光入射面である第2の半球部分の球面が導光体の一方の端面に配され、導光体全体が直線形状を有する棒状をなしているように見受けられる。また、導光体は、導光体本体部内の全体が均斉に発光した状態になり、導光体本体部は明るい光を放つと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-107732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の構成では、導光体全体が直線形状を有するから、導光体本体部の延長線上に光源を配する必要がある。このため、光出射部を構成する導光体本体部の配置構成によっては、その延長線上に、光源を配置するための空間を確保することが難しく、乗物用照明装置の搭載位置自由度が低いという問題がある。
【0005】
そこで、光出射部の延長線上からずれた位置に光源を配し、導光体における光出射部と光入射面との間を湾曲形状とする構成が考えられる。しかしながら、そのような構成では、導光体における湾曲形状をなす部分で内部反射した光の進行方向が、光出射部において不揃いとなり易く、光出射部から出射される光の配光範囲をコントロールし難いという、別の問題がある。
【0006】
本明細書によって開示される技術は、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、搭載位置自由度が高く、光出射部における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制可能な乗物用照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書によって開示される乗物用照明装置は、光源と、前記光源からの光を導光しつつ乗物室内に向けて出射する長手状の導光体と、を備える乗物用照明装置であって、前記導光体は、長手方向における少なくともいずれか一方の端面からなり、前記光源からの光が入射する光入射面と、前記長手方向に湾曲した湾曲形状をなし、前記光入射面に入射した光を導光する湾曲導光部と、前記長手方向において前記湾曲導光部より小さい曲率を有する形状をなし、前記湾曲導光部を通過した光を導光しつつ、側面から乗物室内に向けて出射する光出射部と、を有し、前記湾曲導光部は、前記湾曲形状における湾曲外側の面において、前記光入射面に入射した光の進行方向に位置し、前記光入射面に入射した光を反射する反射面と、前記反射面と前記光出射部との間に位置し、幅方向における前記反射面側の面と前記反射面側の面と対向する対向面との間の寸法が前記光出射部に向かうにつれて大きくなるような逆テーパ状をなすテーパ部と、を有する。
【0008】
このような乗物用照明装置によれば、湾曲導光部を有することにより、仮に光出射部から直線状に延びる導光部を有する構成に比べて、乗物用照明装置の搭載位置自由度を大きくすることができる。そして、湾曲導光部を設けることで反射面が形成され、光出射部から直線状に延びる導光部を有する構成に比べて、光出射部に向かう光の進行方向が不揃いになり易いという問題を、テーパ部を設けることにより解消可能とした。具体的には、反射面で反射した光がテーパ部の内部で反射しつつ光出射部側に進行することにより、仮にテーパ部の外側の面と内側の面との間の寸法が一定である構成に比べて、光出射部に向かう光線を互いに平行化することができる。この結果、搭載位置自由度が高く、光出射部における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制可能な乗物用照明装置を提供することができる。
【0009】
上記構成において、前記光入射面は、前記光源と対向配置されるとともに前記光源に向けて突出する凸面状をなしていてもよい。このような構成によれば、光源から拡散しつつ進行する光が光入射面に入射する際に屈折することにより、仮に、光入射面が平坦面とされる場合に比べて、反射面に向かう光の進行方向を互いに平行化することができる。この結果、反射面で反射して、光出射部に向かう光線を、より一層、互いに平行化することができる。
【0010】
上記構成において、前記テーパ部の前記対向面には、幅方向における中央部に、前記長手方向に沿って延設された突条部が設けられていてもよい。このような構成によれば、導光体の光出射部で反射した光が湾曲導光部側に進行する際に、突条部を有しない構成に比べて、湾曲導光部におけるより光出射部から遠い位置から外部に出射させることができる。このため、湾曲導光部がテーパ部を有することにより、光出射部から湾曲導光部側に戻った光がテーパ部の内部で反射することにより、湾曲導光部における光出射部に近い位置から乗物室内に向けて出射される事態の発生を抑制することができる。
【0011】
上記構成において、第1のボード部材と、第2のボード部材と、前記第1のボード部材の縁部を前記第2のボード部材に対して取り付ける取付部と、を備えた乗物用内装材に設置され、前記導光体は、前記光出射部が前記第1のボード部材の前記縁部に沿って前記取付部の手前まで延設されるとともに、前記湾曲導光部が、前記取付部の手前において、前記一方の端面側に向かうにつれて前記第1のボード部材の前記縁部から離れるようにして延設されていてもよい。このような構成によれば、光源と取付部との干渉を避けつつ、光出射部を取付部手前まで延長することができ、乗物用照明装置の搭載位置自由度が大きい構成を実現することができる。
【0012】
上記構成において、アームレストと、前記アームレストの下方に配されたポケットと、を備えた乗物用内装材に設置され、前記光出射部は、前記アームレストの下面から前記乗物室内に臨み、前記ポケットの開口部に向けて光を出射するように構成されていてもよい。このような構成では、光出射部における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制することで、光出射部から出射される光の配光領域を、好適にポケットの開口部の範囲内とすることができ、好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本明細書によって開示される技術によれば、搭載位置自由度が高く、光出射部における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制可能な乗物用照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態に係る照明装置が設置されたドアトリムの正面図
図2】ドアトリムの一部断面図(図1のII-II線で切断した図)
図3】ドアトリムの一部断面図(図2のIII-III線で切断した図、ホルダを省略して示す)
図4】導光体を車両上方から視た図
図5】導光体を車室内側から視た図
図6】導光体の内部における光の進行態様を模式的に示す説明図
図7】導光体の内部における光の進行態様を模式的に示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施形態を、図1から図7を参照しつつ説明する。本実施形態では、乗物用照明装置として、乗物用内装材の一例であるドアトリム10に設置される照明装置30について例示する。なお、各図において、FR及びRRの矢印は車両前方及び車両後方をそれぞれ示し、UP及びDWの矢印は車両上方及び車両下方をそれぞれ示し、IN及びOUTの矢印は車室内(乗物室内)側及び車室外(乗物室外)側をそれぞれ示す。
【0016】
ドアトリム10は、図1に示されるように、車両用ドアの車室内側部分を構成するものであり、ドアインナパネル(不図示)に対して、車室内側から取り付けられる。ドアトリム10は、アームレスト12と、アームレスト12の下方に配されたドアポケット14(ポケット)と、を備えている。さらに、ドアトリム10は、プルハンドル16、スピーカグリル17、ドアインサイドハンドル18と、を備えている。
【0017】
ドアトリム10は、図1に示されるように、トリムボード20を主体として構成されている。トリムボード20は、複数の部品が互いに組み付けられたものからなる。トリムボード20を構成する各部品としては、主として、ロアボード21、アームレストボード23、アッパーボード26が挙げられる。トリムボード20は、アームレストボード23(第1のボード部材)の縁部23Aをロアボード21(第2のボード部材)に対して取り付ける取付部24を備えている。取付部24は、アームレストボード23の縁部23Aの延設方向に点在して、複数設けられている。取付部24は、例えば、アームレストボード23の車室外側の面に立設された取付ボス24Aを、ロアボード21の周端部において、アームレストボード23の車室外側にフランジ状に延出する部分に貫通形成された取付孔24Bに挿通し、ビス締めや熱カシメ等の締結手段を利用して互いに固定する構造をなしている(図3参照)
【0018】
ドアポケット14は、図2に示されるように、車両上方に向けて開口する開口部14Aを有し、内部に物品等を収容可能な構成とされている。開口部14Aは、車両前後方向に長い形状を有している。ドアポケット14は、例えば、開口部14Aを有するロアボード21の車室外側にポケットボード28を取り付けることで構成されている。
【0019】
アームレスト12は、図1及び図2に示されるように、車室内側に向けて膨出した形状を有し、上面が肘掛け面として機能する。アームレスト12は、車室内側の面及び下面12Aがアームレストボード23によって構成されている。アームレスト12は、ドアポケット14から離間して開口部14Aの直上に位置している。アームレストボード23における縁部23Aの車両下側端部とロアボード21との間には、細長いスリット状の開口25が形成されている。
【0020】
照明装置30は、図1及び図2に示されるように、アームレストボード23の車室外側に配され、開口25からドアポケット14を照らすように構成されている。詳細には、照明装置30は、後述する光出射部47が、アームレスト12の下面12Aから車室内に臨み、ドアポケット14の開口部14Aに向けて光を出射するように構成されている。このような構成により、照明装置30は、乗員の視界に入り難い位置において、照明対象物(ドアポケット14)を照らすことが可能とされている。
【0021】
照明装置30は、図1及び図2に示されるように、光源32と、光源32からの光を導光しつつ車室内に向けて出射する長手状の導光体40と、を備える。照明装置30は、導光体40の光出射部47から光がライン状に出射され、長手状の領域に光を照射可能なライン照明とされる。以下、導光体40の断面形状における略中心を通る線を導光体40の中心線と呼び、各部の説明をする。
【0022】
光源32は、図3に示されるように、LED等の点状光源とされ、基板34に実装されている。図6においては、光源32を模式的に点で示している。光源32は、発光面32Aの中心を通る光軸に沿って進行する光量が多いものの、放射状に拡散する光成分を有して発光する構成とされる。光源32が実装された基板34は、ケース36に収容されている。ケース36には、光源32の発光面32Aと対向する位置に開口して、導光体40の後述する光入射面41を配置するための光入射面配置部36Aが設けられている。このようにして、光源32と、基板34と、ケース36からなる光源ユニット31が構成されている。
【0023】
光源32は、図3に示されるように、取付部24よりアームレストボード23の縁部23Aから離れた位置に配されている。光源32は、光源ユニット31内に設けられる構成上、車室内外方向及び車両上下方向において、導光体40より大きな配置空間を占有する構成となっている。また、照明装置30が設置されるアームレストボード23の縁部23A付近では、下方に向かうにつれて、車室内外方向における空間が狭まる構成となっている。また、アームレストボード23の縁部23Aには、所定の位置に取付部24が設けられている。このため、光源32は、取付部24を避けるとともに、光源ユニット31の配置空間を確保する形で、導光体40の光出射部47より縁部23Aから離れた位置に配される構成となっている。
【0024】
導光体40は、屈折率が空気よりも十分に高く、ほぼ透明な合成樹脂材料からなる。本実施形態では、導光体40として、約39°の臨界角を有するポリカーボネート樹脂からなるものを例示する。導光体40は、内部を進行する光が臨界角より小さい入射角で外部の空気層との界面に入射すると、全反射しつつ、内部を伝播する構成となっている。
【0025】
導光体40は、図4及び図5に示されるように、長手方向における少なくともいずれか一方の端面40Aからなり、光源32からの光が入射する光入射面41と、長手方向に湾曲した湾曲形状をなし、光入射面41に入射した光を導光するように構成された湾曲導光部43と、長手方向において湾曲導光部43より小さい曲率を有する形状をなし、湾曲導光部43を通過した光を導光しつつ、側面40Cから乗物室内に向けて出射するように構成された光出射部47と、を有している。
【0026】
導光体40は、図1に示されるように、長手方向を車両前後方向に沿わせる姿勢で配されている。導光体40は、光出射部47がアームレストボード23の縁部23Aに沿って取付部24の手前まで延設されるとともに、湾曲導光部43が、取付部24の手前において、一方の端面40A側に向かうにつれてアームレストボード23の縁部23Aから離れるようにして延設されている。導光体40は、開口25に組み付けられたホルダ49に保持されている(図2参照)。導光体40は、光出射部47が開口25内に配されるとともに、湾曲導光部43がアームレストボード23により車室内側から覆われるようにして設置されている(図3参照)。
【0027】
光入射面41は、図3に示されるように、光源32と対向配置されるとともに光源32に向けて突出する凸面状をなしている。光入射面41は、光源32の発光面32Aから放射状に拡散しつつ進行する光が、凸面で屈折を伴って入射することで、導光体40の中心線に沿って進行するように構成されている。本実施形態では、光入射面41は導光体40における車両後方に位置する端面40Aからなり、導光体40の車両前方に位置する端面40Bは光入射面41を構成しない。このような、光入射面41が導光体40の一方の端面40Aのみに配された構成では、光入射面が導光体の両端面に配された構成に比べて、光源32(光源ユニット31)の配置上の自由度が高い一方、光出射部47における他方の端面40B側から出射される光の量が少なくなりがちであり、本願技術がより有効であると言える。導光体40には、光入射面41に近接して、光源ユニット31のケース36に組み付けられる突部42が設けられている。
【0028】
湾曲導光部43は、図4に示されるように、光出射部47の延設方向に対して臨界角より小さい角度で、車両上方かつ車両後方に向けて立ち上がるような形状を有している。このような構成により、湾曲導光部43は、光入射面41に入射して、内部を進行する光を外部に漏らすことなく光出射部47側に伝播可能とされている。
【0029】
湾曲導光部43は、図3に示されるように、湾曲形状における湾曲外側の面において、光入射面41に入射した光の進行方向に位置し、光入射面41に入射した光を反射する反射面44と、反射面44と光出射部47との間に位置し、幅方向における反射面44側の面43Aと当該反射面44側の面43Aと対向する対向面43Bとの間の寸法が光出射部47に向かうにつれて大きくなるような逆テーパ状をなすテーパ部45と、を有する。本実施形態では、湾曲導光部43は、略円柱状をなす部分と、これに連なり略円柱状をなす部分から離れるにつれて拡径する略円錐台状をなす部分とで構成されている。
【0030】
反射面44は、図3に示されるように、湾曲導光部43において、略円柱状をなす部分の側面において、車両下側に位置する面に形成されている。反射面44は、湾曲形状における接線に対して、光入射面41から進行する光入射角が臨界角以下の角度となるように設定されている。そして、反射面44は、光入射面41から進行してきた光を全反射して、テーパ部45に向けて進行させるように構成されている。
【0031】
テーパ部45は、図3に示されるように、湾曲導光部43において、略円錐台状をなす部分の側面において、車両下側に位置する面と車両上側に位置する面とで構成されている。テーパ部45は、湾曲導光部43における反射面44が形成された部分に比べて、長手方向における曲率が小さく、本実施形態では中心線が略直線状とされている。テーパ部45は、中心線に対して、反射面44側の面43Aが光出射部47側に向かうにつれて湾曲外側に向けて傾斜するとともに、対向面43Bが光出射部47側に向かうにつれて湾曲内側に向けて傾斜するように形成されている。テーパ部45は、湾曲形状を有する反射面44で反射することにより、中心線に対して、所定の角度以上の角度を有して進行する光が少なくとも1回以上内部反射するように適宜設計されている。本実施形態では、テーパ部45は、反射面44において最もテーパ部45側で反射した光、つまり、中心線に対して最も大きい角度を有して進行することが想定される光が、テーパ部45を通過するまでに少なくとも2回程度内部反射するように設計されている。
【0032】
テーパ部45の対向面43Bには、図3に示されるように、幅方向における中央部に、長手方向に沿って延設された突条部46が設けられている。突条部46は、断面視円形状をなすテーパ部45の対向面43Bから、径方向外側に向けて断面視矩形状に突出するように構成されている。突条部46は、テーパ部45の幅寸法に対して約1/3程度の幅寸法を有している(図4参照)。つまり、突条部46は、帯状の突出端面46Aが、テーパ部45の対向面43Bに対して、湾曲内側に後退したような構成となっている。この突条部46は、後述する光出射部側突条部48Aに連なる構成とされている。
【0033】
光出射部47は、図3及び図4に示されるように、テーパ部45の光出射部47側の断面形状と同じ大きさの断面形状を有する略円柱状をなし、略直線状に延設されている。光出射部47は、側面40Cにおいて、湾曲導光部43における湾曲外側の面に連なる面(本実施形態では、車両下側に位置する面)が、光を出射する光出射面47Aとされている。また、光出射部47には、光出射面47Aに対向する面に、光を光出射面47A側に向けて立ち上げるように構成された光立ち上げ部48が形成されている。光立ち上げ部48は、光出射面47Aと対向する面から突出する光出射部側突条部48Aに形成された溝部48Bによって構成されている。溝部48Bは、断面視V状をなし、光出射部47の幅方向に沿って延びている(図7参照)。光立ち上げ部48は、光出射部47の内部をその延設方向に沿って進行する光を、溝部48Bの側面で光出射面47A側に向けて反射し、光出射面47Aから出射するように構成されている。
【0034】
続いて、本実施形態の作用について、図6及び図7を用いて説明する。光源32の発光面32Aから出射された光は、導光体40の光入射面41から導光体40の内部に進入する。この際、図6に示されるように、光源32からの光は凸面状をなす光入射面41で屈折して、仮に、光入射面41が平坦面とされる場合に比べて、互いに平行化された状態で、湾曲導光部43内を反射面44に向けて進行する。そして、湾曲導光部43における反射面44に入射した光は、反射面44で反射され、湾曲導光部43のテーパ部45側に向けて進行する。図6に示されるように、反射面44において、光入射面41に近い位置で反射した光は、その光線角度が光出射部47の中心線(車両前後方向)に対して略平行とされ、テーパ部45の内部で反射することなくテーパ部45を通過する。一方、反射面44で反射された光のうち、その光線角度がテーパ部45を通過可能な角度より大きい角度とされる光は、車両上方に向けて進行して、湾曲導光部43の湾曲内側の面ないし対向面43Bに入射する。そして、湾曲導光部43の湾曲内側の面ないし対向面43Bで反射し、さらに、テーパ部45において1~数回反射して、光出射部47側に向かう。テーパ部45の面43A又は対向面43Bで反射した光は、光出射部47の中心線に対する光線角度が小さくなる。この結果、テーパ部45を通過して、光出射部47内を進行する光は、互いの光線角度が平行化された状態となっている。
【0035】
図7に示されるように、光出射部47内を進行する光のうち、中心線に対してわずかな角度を有して車両上方に向かう光L1は、光立ち上げ部48において溝部48Bの側面で車両下方に向けて反射される。そして、車両下方に向けて進行する光は、光出射面47Aに対して臨界角より大きい角度で入射して、光出射面47Aから車両下方に向けて出射される。
【0036】
図7に示されるように、光出射部47内を進行する光のうち、光出射面47Aから出射されなかった光の一部は、導光体40の他方の端面40B等で反射して、湾曲導光部43側に向けて進行する。湾曲導光部43に進行した光の一部は、テーパ部45内において、突条部46内に進入して、突条部46の突出端面46Aで反射面44側の面43Aに向けて反射する。突条部46の突出端面46Aで反射した光L2(図7における太い一点鎖線で示す)は、仮にテーパ部45が突条部46を有していない構成においてテーパ部45の対向面43Bで反射した光L3(図7における細い一点鎖線で示す)に比べて、湾曲導光部43の反射面44側の面43Aにおいて、より光出射部47から遠い位置に向かうこととなる。本実施形態では、湾曲導光部43における光出射部47から遠い領域は、アームレストボード23で覆われており、突条部46を有することにより、意図せず湾曲導光部43の反射面44側の面43Aから出射される漏れ光が、車室内に向けて出射される事態が抑制されている。
【0037】
本実施形態に係る実施例について、図6に示す導光体40の断面S1,S2,S3における光線角度分布と、光出射部47から出射される光の配光について解析した。まず、導光体40において、光入射面41と反射面44との間に位置する第1断面S1と、反射面44とテーパ部45との間に位置する第2断面S2と、テーパ部45の光出射部47側の端部に位置する第3断面S3とで、導光する光線の光線角度分布変化をシミュレートした。なお、光線角度は、当該断面において、光線が導光体40の中心線に対してなす角度とする。第1断面S1においては、光線角度15度以下の光線が全体の約64%を占めていた。第2断面S2においては、第1断面S1に比べて、光線角度10度以下の光線の割合が減り、25度以上の光線の割合が増えていた。第3断面S3においては、再び光線角度15度以下の光線の割合が増え、全体の約74%を占めていた。
【0038】
次に、実施例の導光体40と、テーパ部45を有しない一定断面形状を有する導光体(比較例)とについて、光出射部47から出射される光の配光をシミュレートし、比較した。なお、比較例の導光体では、光入射面の形状や湾曲導光部の湾曲形状については実施例と同様とした。光の配光を示す指標として、光出射部47の幅方向について、照射角度0°における照射割合を1とし、照射割合0.9と0.5における照射角度を算出した。比較例では、照射割合0.9における照射角度が約-10°~約10°であり、照射割合0.5における照射角度が約-16°~約16°であった。実施例では、照射割合0.9における照射角度が約-5°~約5°であり、照射割合0.5における照射角度が約-11°~約11°であった。
【0039】
上述の解析結果を考察すると、実施例では、光線角度がテーパ部45の内部を通過することにより、テーパ部45を通過する前に比べて小さくなる、つまり、光線が互いに平行化されることがわかった。そして、実施例では、比較例に比べて、光出射部47の幅方向における配光範囲(照射角度)が狭くなることが確認された。これは、比較例では、反射面44の後に一定断面が続くため、反射面44で反射した光線は光線角度が不揃いなまま内部反射を繰り返し、光出射部47における光線角度が互いに平行化されることなく、光立ち上げ部48で光出射面47A側に向けて立ち上げられたためと推察される。一方、実施例では、反射面44で反射して不揃いとなった光線がテーパ部45により互いに平行化され、比較例に比べて、光出射部47における光線角度が互いに平行化された状態で、光立ち上げ部48で光出射面47A側に向けて立ち上げられたためと推察される。
【0040】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態によれば、湾曲導光部43を有することにより、仮に光出射部47から直線状に延びる導光部を有する構成に比べて、照明装置30の搭載位置自由度を大きくすることができる。そして、湾曲導光部43を設けることで反射面44が形成され、光出射部47から直線状に延びる導光部を有する構成に比べて、光出射部47に向かう光の進行方向が不揃いになり易いという問題を、テーパ部45を設けることにより解消可能とした。具体的には、反射面44で反射した光がテーパ部45の内部で反射しつつ光出射部47側に進行することにより、仮にテーパ部45の面43Aと対向面43Bとの間の寸法が一定である構成に比べて、光出射部47に向かう光線を互いに平行化することができる。この結果、搭載位置自由度が高く、光出射部47における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制可能な照明装置30を提供することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、光出射部47における光の進行方向が互いに平行化されることで、照明装置30における配光(照射角度)を小さくすることができる。この結果、所定の範囲(本実施形態では、ドアポケット14の開口部14A)のみに光を照射して、車室内の乗員に意図せず光が照射され、乗員が眩しさを感じる事態の発生を抑制することができる。
【0042】
さらに、本実施形態によれば、光出射部47において、光が光出射部47の延設方向に沿って進行することにより、光出射部47内において導光される光路長を短くすることができる。このため、光出射部47が長尺化される場合であっても、導光(内部反射)による光損失を低減することができ、長尺でも明るい照明装置30を実現することができる。さらに、導光体40の一方の端面40Aのみに光源32を配する構成においても、照明装置30の照明範囲を十分に延長することができ、より一層、照明装置30の搭載位置自由度を大きくすることができる。
【0043】
また、本実施形態では、光入射面41は、光源32に向けて突出する凸面状をなす。このため、光源32から拡散しつつ進行する光が光入射面41に入射する際に屈折することにより、仮に、光入射面が平坦面とされる場合に比べて、反射面44に向かう光の進行方向を互いに平行化することができる。この結果、反射面44で反射して、光出射部47に向かう光線を、より一層、互いに平行化することができる。
【0044】
また、本実施形態では、テーパ部45の対向面43Bには、幅方向における中央部に、長手方向に沿って延設された突条部46が設けられている。このため、導光体40の光出射部47で反射した光が湾曲導光部43側に進行する際に、突条部46を有しない構成に比べて、湾曲導光部43におけるより光出射部47から遠い位置から外部に出射させることができる。このため、湾曲導光部43がテーパ部45を有することにより、光出射部47から湾曲導光部43側に戻った光がテーパ部45の内部で反射することにより、湾曲導光部43における光出射部47に近い位置から車室内に向けて出射される事態の発生を抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態では、導光体40は、湾曲導光部43が、取付部24の手前において、一方の端面40A側に向かうにつれてアームレストボード23の縁部23Aから離れるような姿勢で配されている。このため、光源32と取付部24との干渉を避けつつ、光出射部47を取付部24手前まで延長することができ、照明装置30の搭載位置自由度が大きい構成を実現することができる。
【0046】
また、本実施形態では、光出射部47は、アームレスト12の下面12Aから車室内に臨み、ドアポケット14の開口部14Aに向けて光を出射するように構成されている。このような構成では、光出射部47における光の進行方向が不揃いになる事態を抑制することで、光出射部47から出射される光の配光領域を、好適にドアポケット14の開口部14Aの範囲内とすることができ、好ましい。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば、次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態以外にも、導光体の形状、配置、構成は適宜変更可能である。例えば、光入射面は、光源に向けて突出する凸面状をなすものに限られず、平坦面状をなしていてもよい。テーパ部の湾曲内側の面には、突条部が設けられていなくてもよい。
(2)上記実施形態では、光入射面が導光体の一方の端面からなる構成を例示し、光入射面が導光体の一方の端面からなる構成を例示したが、光入射面が導光体の両端面からなるものであってもよい。この場合には、両端面側に湾曲導光部を配してもよく、また、一方の端面側にのみ湾曲導光部を配してもよい。
(3)上記実施形態では、照明装置が乗物用内装材に設置され、光出射部がアームレストボードの縁部に沿って配されるものを例示したが、照明装置の設置態様はこれに限られない。例えば、照明装置は、乗物用表示装置等に適宜設置されるものであってもよい。
(4)上記実施形態では、照明装置がドアポケットの開口部を照らす構成を例示したが、これに限られない。例えば、照明装置は、プルハンドルを構成するポケットの開口部を照明するものであってもよく、また、特に照射対象物を想定せず、乗物室内を照明する加飾用のイルミネーションを構成するものであってもよい。
(5)上記実施形態では、乗物用照明装置として車両用照明装置を例示したが、乗物用照明装置は、車両以外の航空機等の乗物用照明装置であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
10…ドアトリム(車両用内装材)、12…アームレスト、12A…下面、14…ドアポケット(ポケット)、14A…開口部、21…ロアボード(第2のボード部材)、23…アームレストボード(第1のボード部材)、23A…縁部、24…取付部、30…照明装置(乗物用照明装置)、32…光源、40…導光体、40A…端面、40C…側面、41…光入射面、43…湾曲導光部、43A…面(反射部側の面)、43B…対向面、44…反射面、45…テーパ部、46…突条部、47…光出射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7