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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】穀物乾燥機
(51)【国際特許分類】
   F26B 21/04 20060101AFI20220426BHJP
   F26B 25/22 20060101ALI20220426BHJP
【FI】
F26B21/04 A
F26B25/22 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018109443
(22)【出願日】2018-06-07
(65)【公開番号】P2019211176
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西野 栄治
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-61521(JP,A)
【文献】特開2012-57943(JP,A)
【文献】特開2009-109137(JP,A)
【文献】特開2016-61522(JP,A)
【文献】特開2016-61497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 21/04
F26B 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
戻り排風量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)とを備え、
前記風量低下検出手段(56)が設定以上の風量低下を検出すると前記戻り排風量を所定量低下させる風量低下時対応乾燥制御手段(B)を備えた穀物乾燥機。
【請求項2】
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
前記排風ファン(10)からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)とを備え、
前記風量低下検出手段(56)が設定以上の風量低下を検出すると戻り排風量を所定量低下させると共に乾燥設定温度を所定量低下させる風量低下時対応乾燥制御手段(B)を備えた穀物乾燥機。
【請求項3】
前記風量低下検出手段(56)は、前記熱風室(14)の入口側に配置の前側熱風温度センサ(43f)と出口側に配置の後側熱風温度センサ(43r)の各検出熱風温度(Tf,Tr)の対比による構成とした請求項1又は請求項2に記載の穀物乾燥機。
【請求項4】
前記排風ファン(10)と集塵装置(57)との間を接続する排風案内ダクト(55)と、排風戻しダクト(11)に配置した風量検出手段(61)とを備え、
前記戻し排風量調節制御手段(A)によって設定される演算戻し排風量に対して前記風量検出手段(61)による検出風量が大の場合に排風戻し量を所定量減少側に制御する構成とした請求項1から請求項3のいずれか一に記載の穀物乾燥機。
【請求項5】
前記風量低下検出手段(56)または風量検出手段(61)による風量低下検出時に、穀物循環機構による穀物循環量を所定値増加側に設定する構成とした請求項1から請求項4のいずれか一に記載の穀物乾燥機。
【請求項6】
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
前記排風ファン(10)からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)とを備え、
乾燥運転初期の水分ばらつきが大と判定されるときには排風戻し量を所定量減少側に制御する穀物乾燥機。
【請求項7】
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
前記排風ファン(10)からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)と、外気温度センサ(44)とを備え、
所定以下の外気温度の場合には排風戻し量を所定量減少側に制御する穀物乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀物乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
排風ファンから排出される排風を熱風室に戻して穀物乾燥に再利用することで高速に乾燥する穀物乾燥機において、張込穀物の初期水分値に設定以上の水分差があると排風量を増加させる制御が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5348236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、乾燥機の排風路に排風戻し通路を分岐して設けたことから、その内部結露を防止しつつ、排風をバーナーからの熱風に混合して高温多湿の混合熱風が熱風通路から熱風室に供給され、この混合熱風を乾燥網通路の穀粒に作用することにより、多湿化された高温熱風によって穀粒内部の水分移行が容易となるが、戻り排風量が過剰になると排風に含まれる塵埃も多くなって乾燥に不具合を生じ、また水分の過剰供給状態を来して結露発生の恐れがある。
【0005】
この発明は、過剰排風戻しを無くして上記の欠点を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
【0007】
請求項1に記載の発明は、
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
戻り排風量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)とを備え、
前記風量低下検出手段(56)が設定以上の風量低下を検出すると前記戻り排風量を所定量低下させる風量低下時対応乾燥制御手段(B)を備えた穀物乾燥機
とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
排風ファン(10)から排出される排風を熱風室(14)に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、
前記排風ファン(10)からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段(A)と、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段(56)と、穀物の水分を検出する水分計(54)とを備え、
前記風量低下検出手段(56)が設定以上の風量低下を検出すると戻り排風量を所定量低下させると共に乾燥設定温度を所定量低下させる風量低下時対応乾燥制御手段(B)を備えた穀物乾燥機とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、風量低下検出手段56は、熱風室14入口側に配置の前側熱風温度センサ43fと出口側に配置の後側熱風温度センサ43rの各検出熱風温度Tf,Trの対比による。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一に記載の発明において、排風ファン10と集塵装置57との間を接続する排風案内ダクト55と、排風戻しダクト11に配置した風量検出手段61とを備え、戻し排風量調節制御手段Aによって設定される演算戻し排風量に対して風量検出手段61による検出風量が大の場合に排風戻し量を所定量減少側に制御する構成とした。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一に記載の発明において、風量低下検出手段56または風量検出手段61による風量低下検出時に、穀物循環機構による穀物循環量を所定値増加側に設定する構成とした。
【0012】
請求項6に記載の発明は、排風ファン10から排出される排風を熱風室14に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、排風ファン10からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段Aと、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段56と、穀物の水分を検出する水分計54とを備え、乾燥運転初期の水分ばらつきが大と判定されるときには排風戻し量を所定量減少側に制御する穀物乾燥機とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、排風ファン10から排出される排風を熱風室14に戻して穀物乾燥に再利用する穀物乾燥機において、排風ファン10からの戻り量を制御する戻し排風量調節制御手段Aと、乾燥機内の風量低下を検出する風量低下検出手段56と、穀物の水分を検出する水分計54と、外気温度センサ44とを備え、所定以下の外気温度の場合には排風戻し量を所定量減少側に制御する穀物乾燥機とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項2又は請求項4に記載の発明によれば、風量低下時に過剰な戻し排風量とならず、塵埃の増加を来さない。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明に加え、異常検出の精度を向上できる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1から請求項4に記載の発明に加え、穀物循環量を増加することで不要な穀温上昇を防止できる。
【0017】
請求項6又は請求項7に記載の発明によれば、過剰な排風戻し量による結露を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】穀物乾燥機の正断面図である。
図2】穀物乾燥機の乾燥室及び集穀室の側断面図である。
図3】操作盤正面図である。
図4】制御ブロック図である。
図5】フローチャートである。
図6】燃焼量-ファン回転数関係グラフである。
図7】フローチャートである。
図8】水分値-仮想排風絶対湿度関係グラフである。
図9】熱風温度変動比較図である。
図10】フローチャートである。
図11】乾燥機と集塵装置接続状態を示す側面図である。
図12】設定熱風温度下げ量-戻し風量減少補正割合関係グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態としての穀物乾燥機につき、図面に基づき説明する。
【0020】
箱体1の内部には上部から下部に穀物を貯留する貯留室2と、穀物を乾燥する乾燥室3と、集穀室4を設ける。
【0021】
箱体1の前側には穀物を揚穀する昇降機5と、バーナケース6を設け、バーナケース6内に熱風を生成する燃焼バーナ7を設ける。箱体1の後側には排風室8と連通する排風ダクト9を設け、排風ダクト9の後側面に排風ファン10を設ける。排風ファン10の上面には排風戻しダクト11の一端始端側を連結し、排風戻しダクト11の他端終端側を箱体1に連結する。排風戻しダクト11の排風流入口12を排風ファン10の内部と連通し、終端側の排風供給口13を後記熱風室14の上部後ろ側部に連通している。
【0022】
箱体1の上部には昇降機5で揚穀された穀物を横搬送する上部ラセン樋15を設ける。
【0023】
前記貯留室2の下方の乾燥室3に、左右に区分された貯留室2内の穀物をさらに左右に区分する一対の断面Y型穀物流下通路19を形成する。該乾燥室3上半部には左右一対の上側に副排風室8aが形成される。また、乾燥室3の左右中央部には熱風室14を設け、熱風室14内部には遠赤外線放射体16を前後方向に沿うように設けている。熱風室14の左右両側に穀物が流下する前記穀物流下通路19,19が配置され、穀物流下通路19,19の左右外側には排風室8,8を設ける。
【0024】
穀物流下通路19の下端の左右合流部には穀物を繰り出すロータリバルブ17を設け、ロータリバルブ17の下方には穀物を昇降機5へ搬送する下部ラセン18を設ける。
【0025】
前記バーナケース6は外気取り入れ用の外気取り入れスリットを多数形成している。燃焼バーナ7は本実施形態では間欠燃焼型のガンタイプのバーナ7を搭載している。
【0026】
排風ファン10は、外筒24内に前後方向に沿った横軸心の回転軸20aにより回転する回転翼20と、回転翼20から排出された排風を整流する固定翼21と、回転翼20を軸支する内筒25と、回転翼20により排出された排風を排風戻しダクト11側に案内する排風案内板22とにより構成している。
【0027】
固定翼21は回転翼20の排風側後方に位置し、捻れ形状の排風整流面を左右両側に備え、背面視で放射状に設定間隔毎に多数設けている。固定翼21の外端は外筒24に取り付け、固定翼21の内端は内筒25に取り付けている。
【0028】
排風戻しダクト11内には排風戻しダクト11内に流入する排風量を増減調節する排風調節弁26を設ける。排風調節弁26は排風調節弁モータ27で左右方向の横軸心回りに回動角度調整可能に構成している(戻し排風量調節手段)。排風戻しダクト11は、排風ファン10の上面から上方向に延びる第一ダクト部11aと、第一ダクト部11aの上端部と箱体1の背面とを接続する前後方向に延びる第二ダクト部11bとから構成し、第一ダクト部11a内に排風調節弁26を設ける。第二ダクト部11bは前広がり状に開口面積を順次大きくする構成としている。
【0029】
遠赤外線放射体16は、大径の第一円筒部30と、小径の第二円筒部31とで構成している。第一円筒部30の後部を狭窄部30aに構成し、該狭窄部に始端側屈曲部を介して接続して第二円筒部31を上方へ導き、前側に折り返し接続している。第一円筒部30と第二円筒部31は共に中空状で、第一円筒部30の上方に所定空間を介して第二円筒鯛31を前後方向平行状に上方に配置している。
【0030】
第一円筒部30の前端開口部を燃焼バーナ7の燃焼部と対向配置し、第二円筒部31の前端を板体で閉鎖し、第二円筒部31の終端側である前側下部に左右両側に向けて開口する開口部31aを所定間隔毎に設けている。
【0031】
前記バーナケース6の前側面には制御部Sを内蔵した操作パネルUを設けている。操作パネルUの正面側には、図3に示すように張込スイッチ32・通風スイッチ33・乾燥スイッチ34・排出スイッチ35・停止スイッチ36の各運転スイッチを設けている。また、乾燥運転中の熱風温度・測定水分値・乾燥運転の終了までの残時間を順次切換え表示する液晶運転表示パネル45を設けている。
【0032】
また、張込量を設定するための張込量スイッチ37・到達目標水分値を設定する水分設定スイッチ38・張込量スイッチ37及び水分設定スイッチ38の設定数値を表示する設定表示パネル39、設定表示パネル39の設定値を変更する数値増減スイッチ40を設けている。また、乾燥対象の穀物種類を設定する穀物設定スイッチ41・乾燥速度を設定する乾燥速度設定スイッチ42を設けている。
【0033】
前記熱風室14には熱風室14内の温度を検出する熱風温度検出センサ43を、操作パネルUの適所には外気温度を検出する外気温度センサ44を設けている。
図4に示すように、制御部Sの入力側には入力インターフェースを経由して各種スイッチ,センサが接続され、出力側には出力インターフェイスを経由して各種モータ,駆動手段が接続されている。
【0034】
次に、穀物の乾燥運転について図5のフローチャートに基づき概要説明する。
【0035】
オペレータが張込スイッチ32をON操作すると、昇降機5及び上部ラセン15が駆動されて張込穀物を順次貯留室2内に張込む。そして、張込運転が終了すると、オペレータは張込量スイッチ37で張込穀粒量を設定し、水分設定スイッチ38で到達目標水分値(例えば14%)を設定し、穀物設定スイッチ41で対象穀物を設定し、乾燥速度設定スイッチ42で乾燥速度を設定する(S101)。
【0036】
次いで、乾燥スイッチ34をON操作すると(S102)乾燥運転が開始され、ロータリバルブ17、下部ラセン18、昇降機5、上部ラセン15の循環系が駆動を開始すると共に(S103)、燃焼バーナ7が燃焼を開始する(S104)。
【0037】
そして、燃焼バーナ7で生成される熱風は排風ファン10の吸引作用で遠赤外線放射体16の内部を通過し、第二円筒部31の終端側前側部の開口部31a,31a…から熱風室14に流入する。そして、熱風室14から網体で形成される穀物流下通路19内に流入し、穀物に作用する。そして、穀物から水分を奪った熱風は排風室8へ流入し、次いで排風ダクト9を経て排風ファン10により機外へ排風として排出される。 熱と水分を帯びた排風の一部は排風戻しダクト11を経て熱風室14に供給され、乾燥作業に再利用される。穀物は熱風と、遠赤外線放射体16から発生する遠赤外線の作用と、排風戻しダクト11から戻された排風により乾燥される。
【0038】
さらに図5に基づき説明すると、制御部Sは、各部スイッチ操作情報やセンサの検出情報を読み込み(S105)、燃焼量制御運転を実行し(S106)、併せて排風調節弁制御手段Aを実行する(S107)。ところで、排風ダクト9に接続する可撓性の排風案内ダクト55が折れ曲がるなどして良好な排風状態が遮られ熱風室14内に風量変化が惹起する恐れがある。熱風室14内の風量低下を判定すると(S108)、風量低下時対応乾燥制御手段Bを実行する(S109)。S108で風量低下をしないときは通常に乾燥制御し、そして、風量低下時対応乾燥制御手段Bを実行し、水分計54による検出水分値が予め設定した仕上水分値を下回ると各部のモータを停止し乾燥終了する(S111)。
【0039】
ここで、バーナの燃焼量制御について説明する。
【0040】
本実施の形態の燃焼バーナ7はいわゆるガンタイプバーナであり、バーナ用送風ファン52で燃焼風を供給し、燃料タンク(図示せず)からポンプ50で繰り出した燃料をノズル49から噴霧し、イグナイタ51で発火し燃焼させる。なお、ポンプ50から燃焼バーナ7への燃料供給量は、比例制御弁53にて流量制御できる構成であり、穀物種類、予め設定スイッチ42で設定した乾燥速度と実際の乾燥速度の差、外気温度等に基づいて、制御部Sは所定単位時間毎にバーナの必要燃焼量を演算し、これに見合う燃料供給量を演算して上記比例制御弁53に燃料供給量指令信号を出力する構成である。なお、燃焼バーナ7は、機器固有の性能等によって予め設定されている燃料供給量Fa(リットル/時)を基準に、これよりも大なる燃料供給量を必要とする場合に、上記比例制御弁53に付与される制御信号に基づいて、必要な燃料供給量Fbに演算される構成としている(比例燃焼運転)。ところが、前記基準の燃料供給量Fa以下を必要とされる場合には、燃焼バーナ7は燃焼工程と燃焼停止工程を交互に行ういわゆる間欠燃焼運転に切り替えられる。そして、間欠燃焼運転における燃焼工程と停止工程の周期T(例えば60秒)を一定として、燃焼工程時間Tb、停止工程時間Tsを変更することによって基準の燃料供給量Fa以下の燃焼状態を調整できる構成としている。
【0041】
図6の燃焼量-ファン回転数関係グラフに一例を示すように、前記の燃焼バーナ7の比例燃焼運転においては、バーナ用送風ファン52の回転数も燃料供給量の大小変更と比例的に増減制御される構成としている。また、間欠燃焼運転時、燃焼工程においては、該燃焼量-ファン回転数表の最低回転数Raを選択して回転制御する構成である。そして、間欠燃焼運転における停止工程では、予め設定した回転数を選択して回転させる構成として、間欠燃焼運転中継続してバーナ用送風ファン52を回転連動するよう構成している。なお、間欠燃焼運転における燃焼工程と停止工程のファン回転数は同一回転でもよく、異なる回転数としてもよい。
【0042】
次いで、図7のフローチャートに基づき、戻し排風量調節制御手段Aと風量低下時対応乾燥制御手段Bについて説明する。排風調節弁26による排風戻し量は、排風絶対湿度によって演算でき、そして、図8に示すように仮想排風絶対湿度と水分値には密接な関係にあるとの知見に基づき、実施例では検出水分値から仮想排風絶対湿度を求め、この仮想排風絶対湿度から必要な排風戻し量を演算するよう構成している(S201~S203)。その結果現在の排風調節弁26位置(角度)に対して補正が必要であるか否か判定されるが(S204)、排風戻し量増加の必要があると判定されると(S205)、排風調節弁モータ26mを正転すべく出力する(S206)。S205で排風戻し量減少側の補正が必要と判定されると排風調節弁モータ26mを逆転すべく出力する(S207)。なお、図示省略するが、正転も逆転も必要ない場合も想定され、この場合には排風調節弁モータ26mへの正逆出力は出されない。
【0043】
なお、排風調節弁26は上例のように、排風絶対湿度との関係で調節制御されるほか、設定された張込穀物量及び乾燥速度と、水分計54で測定される穀物水分値、外気温度等の条件に基づいて調節動作がなされる。例えば、乾燥初期には穀温を上昇させるべく機外排風の排風戻しダクト11側へ戻す割合を高くし、乾燥運転の継続により、水分計53で測定される水分値が低下するにつれて排風戻しダクト11側へ戻す割合を徐々に低下させ、到達目標水分値に近づくとほとんど全ての排風を機外に排出するように排風調節弁26を制御する場合等である。
【0044】
本実施の形態では、排風調節弁26が全開の場合、すなわち、最も多くの排風量を排風戻しダクト11を経て熱風室14に供給した場合でも、排風が排風案内板22のスリット22aを通過したり、排風案内板22を取り付けていない部分の固定翼21の間を通過するため、熱風室14に供給される戻り排風の割合は全機外排風量の約4割程度である。
【0045】
そして、図7のフローチャートにおいて、熱風室14の風量低下と判定すると(S208)、排風調節弁モータ26mには逆転出力されて風量調節弁26による排風量が減少補正される(S209)。なお、その減少風量については、予め設定された比率の排風調節弁26角度とするなど種々に設定できる。
【0046】
さらに、熱風設定温度Tcを予め設定した温度t分低下する(S210)。これによって乾燥速度は低下するが、乾燥を継続することができ、乾燥中断による穀物劣化を防止できる。
【0047】
排風ダクト9に接続する可撓性の排風案内ダクト55が折れ曲がるなどして良好な排風状態が遮られ熱風室14内に風量低下すると、前記S208~210のように、風量低下時対応制御を実行するもので、排風戻し風量を低下することで、塵埃の過剰な戻しをなくして乾燥運転の不具合を防止できる。
【0048】
前記S209での戻し風量減少補正量とS210で低下する温度tの関係は、図12に示すように、比例関係に設定して、乾燥制御への影響を防止している。
【0049】
前記の実施例において、図5のS108や図7のS208の判定に伴う風量低下時対応制御手段Bに関連して風量低下判定手段56を設けるがその詳細について説明する。正常に乾燥運転がなされているときは、排風ファン10の吸引作用により、熱風室14の後部に熱が集中し、熱風室14の後部側の方が前部側よりも高い温度になるが、排風ファン10の排出側に設ける排風案内ダクト55側あるいはこのダクト55に接続する集塵室側が詰り状態を惹起すると、吸引ファン10の吸引力が低下して、図9の熱風温度変動比較図に示すように、熱風室14内の風量が低下する。この現象を利用して、風量低下判定手段56を構成しようとするものである。具体的には、熱風室14の前部であって燃焼バーナ7に近い側と、熱風室14の後部であって排風ファン10に近い側にそれぞれ熱風温度センサ44f,44rを設ける。また、適所に外気温度センサ44を設け、熱風室14の前部の温度Tfと、熱風室14の後部の温度Trと、外気温度Toに基づいて、熱風流量の低下を判定する風量低下判定指標とする。具体的には、図10に示すように、外気温度Toを基準とする前後位置の対外気熱風温度Tfo=Tf-To、Tro=Tr-Toによる対外気温度基準比率Po=Tro/Tfoを指標とすることにより、図9の熱風温度変動比較図に示すように、熱風流量低下に伴って昇温位置が前側に寄ってきたことをレスポンス良く検知することができ、風量低下の判定出力を行うことができる。
【0050】
なお、図9につき説明すると、縦軸を温度の高低とし、横軸を側面から見た熱風室14の内部に見立て。正常な乾燥運転時における熱風室14内の温度分布を示す標準線H1と、風量が低下したときの温度分布を示す線H2のグラフである。標準線H1では熱風室14の後部の温度が高くなっており、H2では風量低下に起因して熱風室14の後部の温度が低くなると共に熱風室14の前部の温度が上昇していることを示す。
【0051】
すなわち、入口側に配置の前側熱風温度センサ43fと、出口側に配置の後側熱風温度センサ43rと、外気温度センサ44とを設け、この外気温度センサ44による外気温度To基準の対外気熱風温度Tfo,Troについて、両熱風温度センサによる対外気熱風温度の基準比率Po=Tro/Tfoが所定の基準値αo以下であれば風量低下の判定結果を出力する風量低下判定手段56を設ける。
【0052】
なお、上記の風量低下判定手段56としては、外気温度を対象外とした基準比率P=Tr/Tfが所定の基準値α以下で風量低下を判定することもできる。
【0053】
また、風量低下判定手段56としては、上記のほか、感知アクチュエータとポテンショメータとからなる風圧センサ形態としてもよい。
【0054】
次いで、乾燥装置に集塵装置を接続した構成について、図11に基づき説明する。集塵装置57は、排風案内ダクト55から案内された排風は、集塵装置57の入り口部に構成されるミスト発生手段58によるミストによって含まれる塵埃が捕集され、塵埃の除去された排風は排風口59から解放され、捕集された塵埃は底部の水槽に落下する構成としている。そして、排風案内ダクト55途中には風量検出手段60を配置する。
【0055】
乾燥作業に伴って集塵装置57を作動すると、排風案内ダクト55内の風量検出手段60は所定風量を検出することができるが、何らの原因で排風案内ダクト55や集塵装置57側に不具合が生じて円滑な排風流通が阻害されると、風量低下を来し、風量検出手段60は風量低下を出力する。このような場合には、熱風室14の風量低下同様に、排風調節弁制御と風量低下時対応乾燥制御を行うことによって、乾燥機本体内に過剰な排風量を戻すことによる不具合を防止でき、適正な乾燥作業を継続できる。風量検出手段60としては、例えば感知アクチュエータとポテンショメータとからなる風圧センサ形態とする。
【0056】
前記排風戻しダクト11内に風量検出手段61を備える。そして、排風量調節手段としての排風調節弁26開度による演算風量qsに対して実際の風量qが相違する場合の対応について、例えば、実際の風量qが演算風量qsよりも多い場合に、排風調節弁26開度を減少側に制御することによって、過剰な排風量を戻すことを防止できる。風量検出手段61としては、例えば感知アクチュエータとポテンショメータとからなる風圧センサ形態とする。
【0057】
前記風量低下判定手段56や風量検出手段60,61による風量低下判定の場合には、前記ロータリーバルブ17、下部ラセン18、昇降機5、上部ラセン樋15等からなる穀物循環機構による穀物循環量を増加する構成としている。このように穀物循環量の増加補正によって穀温上昇を防止できる。
【0058】
前記水分計54による水分検出は単粒測定可能に構成し、所定粒数毎に水分分布を判定できる構成としている。そして、所定粒数の水分ばらつき、例えば水分値分布幅を判定することによってばらつきの大小を判定し、この水分ばらつきが所定以上のときは、前記水分値-仮想排風絶対湿度関係グラフの標準ラインによる標準の排風戻し量に対して所定量少なく補正するよう構成する。このように構成すると、過剰な排風戻し量により結露の発生を防止できる。なお、図8に一例を示すが、標準ラインは水分ばらつきの無い又は所定以下の穀物を対象とし、ばらつき小(点線)、ばらつき大(一点鎖線)に示すように、ばらつきが大きくなるほど仮想排風絶対湿度を低下側補正している。
【0059】
また、外気温度Toが予め設定した所定値以下の場合、標準の排風戻し量制御に対して所定量少なく補正するよう構成することによっても、結露防止に寄与する。
【0060】
以下、本実施の形態の特徴について説明する。
【0061】
風量低下検出手段56が設定以上の風量低下を検出すると前記戻り排風量を所定量低下させると共に、乾燥設定温度を所定量低下させるように燃焼バーナ7を制御することで、風量低下時に過剰な量の塵埃を戻すとともに、そのような状態での高温の乾燥運転による不具合を防止できる。
【0062】
風量低下検出手段56は、熱風室14入口側に配置の前側熱風温度センサ43fと出口側に配置の後側熱風温度センサ43rの各検出熱風温度Tf,Trの対比によることで、風量低下の検出精度を向上させることができる。
【0063】
排風ファン10と集塵装置57との間を接続する排風案内ダクト55と、排風戻しダクト11に配置した風量検出手段61とを備え、戻し排風量調節制御手段Aによって設定される演算戻し排風量に対して風量検出手段61による検出風量が大の場合に排風戻し量を所定量減少側に制御する構成としたことで、集塵装置57を搭載した場合にも適切に風量を検出できる。
【0064】
また、風量低下検出手段56または風量検出手段61による風量低下検出時に、穀物循環機構による穀物循環量を所定値増加側に設定する構成としたことで、乾燥室3で乾燥される1回の時間が短くなり、不要な穀温上昇を防止できる。
【0065】
また、乾燥運転初期の水分ばらつきが大と判定されるときには排風戻し量を所定量減少側に制御する穀物乾燥機とすることで、過剰な排風戻し量による水分供給での結露の発生を低減することができる。
【0066】
また、所定以下の外気温度の場合には排風戻し量を所定量減少側に制御することで、外気が低い時に過剰な排風量戻し量による結露の発生を低減できる。
【符号の説明】
【0067】
10 排風ファン
11 排風戻しダクト
14 熱風室
56 風量低下検出手段
54 水分計
43f 前側熱風温度センサ
43r 後側熱風温度センサ
44 外気温度センサ
55 排風案内ダクト
56 風量低下検出手段
57 集塵装置
61 風量検出手段
A 排風量調節制御手段
B 風量低下時対応乾燥制御手段
Tf 検出熱風温度
Tr 検出熱風温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12