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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】自律走行台車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220426BHJP
【FI】
G05D1/02 S
G05D1/02 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018110859
(22)【出願日】2018-06-11
(65)【公開番号】P2019215598
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 誠
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-128899(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103562(WO,A1)
【文献】特開2000-56830(JP,A)
【文献】特開2011-170486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を走査させる2次元平面状の障害物検出平面領域を有し、前記障害物検出平面領域内の障害物の位置である障害物位置と、当該障害物の輝度である障害物輝度と、を含む検出情報を出力する障害物検出手段と、
複数の車輪と、
少なくとも1つの前記車輪を駆動する駆動手段と、
記憶手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有して、指定エリア内で自律走行する自律走行台車であって、
前記記憶手段には、前記指定エリア内において予めわかっている障害物の位置が示された指定エリア地図情報が記憶されており、
前記指定エリア内には、前記制御手段へのコマンドが対応付けられたコマンド部材が、当該コマンドの実行を所望する位置に配置されており、
前記制御手段は、
前記障害物検出手段からの前記検出情報に基づいて、現在の前記自律走行台車の周辺における前記障害物位置と前記障害物輝度を検出し、
検出した前記障害物位置と、前記記憶手段に記憶されている前記指定エリア地図情報と、に基づいて、前記指定エリア内における前記自律走行台車の位置である現在位置を判定し、
前記指定エリア地図情報と、前記現在位置と、に基づいて前記駆動手段を制御して、前記指定エリア内の障害物を回避しながら自律走行を行うことが可能であり、
前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、検出した前記コマンド部材に対応付けられたコマンドを、前記障害物検出手段からの前記検出情報に基づいて検出し、検出したコマンドに従い、
前記コマンド部材は、前記指定エリア内における前記コマンド部材を除いた前記障害物のレーザ反射率よりも高いレーザ反射率を有するレーザ反射部材であり、
前記制御手段は、
前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度が所定輝度以上の障害物を検出した場合、当該障害物を前記コマンド部材として検出する、
自律走行台車。
【請求項2】
請求項1に記載の自律走行台車であって、
前記コマンド部材には、前記障害物検出手段からのレーザ光の走査方向の長さである走査方向長さに応じたコマンドが対応付けられており、
前記記憶手段には、前記走査方向長さに対応付けられたコマンドが記憶されており、
前記制御手段は、
前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、前記検出情報に含まれている前記障害物位置と前記障害物輝度とに基づいて、検出した前記コマンド部材の前記走査方向長さを検出し、検出した前記コマンド部材の前記走査方向長さに対応付けられているコマンドを前記記憶手段から読み出して当該コマンドに従う、
自律走行台車。
【請求項3】
請求項1に記載の自律走行台車であって、
前記障害物検出手段は、
2次元平面状の前記障害物検出平面領域を、複数重ねて前記レーザ光を複数回走査させる3次元立体状の障害物検出立体領域を有し、
前記コマンド部材には、当該コマンド部材の形状に応じたコマンドが対応付けられており、
前記記憶手段には、前記コマンド部材の形状に対応付けられたコマンドが記憶されており、
前記制御手段は、
前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、前記検出情報に含まれている前記障害物位置と前記障害物輝度とに基づいて、検出した前記コマンド部材の形状を検出し、検出した前記コマンド部材の形状に対応付けられているコマンドを前記記憶手段から読み出して当該コマンドに従う、
自律走行台車。
【請求項4】
請求項2または3に記載の自律走行台車であって、
前記コマンド部材に対応付けられているコマンドには、
当該コマンド部材から所定範囲内の領域、または、2つの前記コマンド部材にて挟まれた領域、を進入禁止領域とするコマンドが含まれており、
前記制御手段は、
自律走行中に前記進入禁止領域を検出した場合、当該進入禁止領域を迂回するように前記駆動手段を制御する、
自律走行台車。
【請求項5】
請求項4に記載の自律走行台車であって、
前記コマンド部材に対応付けられているコマンドには、
当該コマンド部材から所定範囲内の領域、または、2つの前記コマンド部材にて挟まれた領域、を進入許可領域とするコマンドが含まれており、
前記制御手段は、
自律走行中に前記進入禁止領域を迂回する際、前記進入許可領域を検出している場合、前記進入禁止領域を迂回して前記進入許可領域を通過するように前記駆動手段を制御する、
自律走行台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自律走行台車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、荷物配送センター、パーツセンター、空港等にて、複数の棚等に配置された荷物やパーツの中から、所望する荷物やパーツを一か所(収集場所)に集める作業等に自律走行台車が利用される場合がある。例えば荷物配送センターでは、作業者Aが、複数の棚の中から配送するべき荷物を抽出して自律走行台車に載せて自律走行台車に「収集場所行き」の操作を行った場合、自律走行台車は、障害物を回避しながら収集場所へと自律走行して収集場所に到達すると走行を停止する。例えば収集場所には作業者Bが待機しており、作業者Bが、自律走行台車に載せられている荷物を回収して自律走行台車に「戻り」の操作を行った場合、自律走行台車は、障害物を回避しながら作業者Aの近傍へと自律走行して戻る。
【0003】
例えば特許文献1には、測定光(例えばレーザ光)を、横方向、または横方向及び縦方向、に走査して反射光を受光することで被測定物までの距離を計測する測距装置と、測距装置からの情報に基づいて障害物の有無を判定する障害物判定部と、を備えた走行装置(自律走行台車に相当)が記載されている。また走査した検知エリアを複数のサブエリアに分割し、サブエリア毎に障害物と認識するための閾値を設けることで、障害物判定部は、簡単な計算で障害物を判定することができる。
【0004】
また特許文献2には、無線で電子タグの情報を読み取る電子タグリーダと、読み取った電子タグの情報を用いて動作を制御する動作制御手段と、を備えた自律移動装置(自律走行台車に相当)が記載されている。そして、自律移動装置が使用されるエリア内において危険領域(進入禁止領域)には、危険領域検出用の複数の電子タグが床面に埋め込まれている。特許文献2では、床面に埋設した危険領域検出用の電子タグにて、当該領域内への自律移動装置の進入を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-83223号公報
【文献】特開2008-186097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自律走行台車が使用される実際の指定エリア内には、自律走行台車を進入させるべきではない通路(例えば、比較的大きな凹凸がある通路や、突発的に工事が必要となった通路等)を有している場合がある。このような通路(進入禁止通路)に自律走行台車が進入しないようにすることが所望されている。特に、実際の指定エリア内にて、特定場所において、自律走行台車への制限等(例えば進入禁止)が、突発的に発生しても、比較的容易に対処できることが望まれている。
【0007】
特許文献1に記載の走行装置は、レーザ光を用いて障害物までの距離を計測することで、より高精度に距離を測定できるが、進入禁止領域に関する記載は見受けられない。従って、突発的に進入禁止とするべき通路が発生しても、容易に進入禁止とすることはできない。
【0008】
また、特許文献2に記載の自律移動台車では、危険領域(進入禁止領域)の床面に電子タグを埋め込んでいるが、電子タグを埋設する工事が必要であり、突発的に進入禁止とするべき通路が発生しても、容易に進入禁止とすることができない。また、電子タグを床面に埋設しているため、作業者や台車によって電子タグが踏みつけられて劣化するおそれがあるので、電子タグの交換工事が必要となる可能性がある。電子タグを埋設する工事と、埋設されている電子タグを交換する工事は、どちらも非常に手間がかかる工事であるので、突発的に進入禁止とするべき通路が発生した場合、容易に進入禁止とすることはできない。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、自律走行台車を使用する実際の指定エリア内にて、特定場所において自律走行台車への制限等が突発的に発生しても、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能な、自律走行台車を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、レーザ光を走査させる2次元平面状の障害物検出平面領域を有し、前記障害物検出平面領域内の障害物の位置である障害物位置と、当該障害物の輝度である障害物輝度と、を含む検出情報を出力する障害物検出手段と、複数の車輪と、少なくとも1つの前記車輪を駆動する駆動手段と、記憶手段と、前記駆動手段を制御する制御手段と、を有して、指定エリア内で自律走行する自律走行台車であって、前記記憶手段には、前記指定エリア内において予めわかっている障害物の位置が示された指定エリア地図情報が記憶されており、前記指定エリア内には、前記制御手段へのコマンドが対応付けられたコマンド部材が、当該コマンドの実行を所望する位置に配置されている。そして、前記制御手段は、前記障害物検出手段からの前記検出情報に基づいて、現在の前記自律走行台車の周辺における前記障害物位置と前記障害物輝度を検出し、検出した前記障害物位置と、前記記憶手段に記憶されている前記指定エリア地図情報と、に基づいて、前記指定エリア内における前記自律走行台車の位置である現在位置を判定し、前記指定エリア地図情報と、前記現在位置と、に基づいて前記駆動手段を制御して、前記指定エリア内の障害物を回避しながら自律走行を行うことが可能であり、前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、検出した前記コマンド部材に対応付けられたコマンドに従う、自律走行台車である。
【0011】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る自律走行台車であって、前記コマンド部材は、前記指定エリア内における前記コマンド部材を除いた前記障害物のレーザ反射率よりも高いレーザ反射率を有するレーザ反射部材であり、前記制御手段は、前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度が所定輝度以上の障害物を検出した場合、当該障害物を前記コマンド部材として検出する、自律走行台車である。
【0012】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る自律走行台車であって、前記コマンド部材には、前記障害物検出手段からのレーザ光の走査方向の長さである走査方向長さに応じたコマンドが対応付けられており、前記記憶手段には、前記走査方向長さに対応付けられたコマンドが記憶されており、前記制御手段は、前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、前記検出情報に含まれている前記障害物位置と前記障害物輝度とに基づいて、検出した前記コマンド部材の前記走査方向長さを検出し、検出した前記コマンド部材の前記走査方向長さに対応付けられているコマンドを前記記憶手段から読み出して当該コマンドに従う、自律走行台車である。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第2の発明に係る自律走行台車であって、前記障害物検出手段は、2次元平面状の前記障害物検出平面領域を、複数重ねて前記レーザ光を複数回走査させる3次元立体状の障害物検出立体領域を有し、前記コマンド部材には、当該コマンド部材の形状に応じたコマンドが対応付けられており、前記記憶手段には、前記コマンド部材の形状に対応付けられたコマンドが記憶されており、前記制御手段は、前記障害物検出手段からの前記検出情報に含まれている前記障害物輝度に基づいて前記コマンド部材を検出した場合、前記検出情報に含まれている前記障害物位置と前記障害物輝度とに基づいて、検出した前記コマンド部材の形状を検出し、検出した前記コマンド部材の形状に対応付けられているコマンドを前記記憶手段から読み出して当該コマンドに従う、自律走行台車である。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第3の発明または第4の発明に係る自律走行台車であって、前記コマンド部材に対応付けられているコマンドには、当該コマンド部材から所定範囲内の領域、または、2つの前記コマンド部材にて挟まれた領域、を進入禁止領域とするコマンドが含まれており、前記制御手段は、自律走行中に前記進入禁止領域を検出した場合、当該進入禁止領域を迂回するように前記駆動手段を制御する、自律走行台車である。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係る自律走行台車であって、前記コマンド部材に対応付けられているコマンドには、当該コマンド部材から所定範囲内の領域、または、2つの前記コマンド部材にて挟まれた領域、を進入許可領域とするコマンドが含まれており、前記制御手段は、自律走行中に前記進入禁止領域を迂回する際、前記進入許可領域を検出している場合、前記進入禁止領域を迂回して前記進入許可領域を通過するように前記駆動手段を制御する、自律走行台車である。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、実際の指定エリア内の特定場所において、自律走行台車への制限等として、例えば「進入禁止」が突発的に発生した場合(突然、棚の荷物が通路に落下して通路が塞がれた場合等)、「進入禁止」コマンドが対応付けられたコマンド部材を、特定場所に配置するだけでよい。従って、自律走行台車を使用する実際の指定エリア内にて、特定場所において自律走行台車への制限等が突発的に発生しても、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能である。
【0017】
第2の発明によれば、レーザ光を走査させる障害物検出手段に対して、コマンド部材のレーザ反射率を、コマンド部材を除いた障害物のレーザ反射率よりも高いレーザ反射率とすることで、障害物輝度を用いてコマンド部材を容易に検出することができる。また、コマンド部材を特殊な構成とする必要が無く、レーザ反射部材(レーザ反射板等)とするだけでよいので、容易にコマンド部材を用意することができる。
【0018】
第3の発明によれば、コマンド部材におけるレーザ光の走査方向の長さ(走査方向長さ)に応じて、種々のコマンドを対応付けることができるので、便利である。
【0019】
第4の発明によれば、コマンド部材の形状に応じて、種々のコマンドを対応付けることができるので、便利である。
【0020】
第5の発明によれば、実際の指定エリア内にて、特定場所において自律走行台車への「進入禁止」要求が突発的に発生しても、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能である。
【0021】
第6の発明によれば、実際の指定エリア内にて、特定場所において自律走行台車への「進入禁止」要求が突発的に発生した場合、「進入許可」経路を指示することで、迂回をスムースに行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の自律走行台車の外観の例を示す斜視図である。
図2】自律走行台車の全体構成を説明する模式図である。
図3】障害物検出装置の外観と最大検出領域の例を説明する斜視図である。
図4】障害物検出装置に対して、最大検出領域内において所望する検出領域を設定する例を説明する図である。
図5】自律走行台車と、2次元平面状の障害物検出平面領域の例と、を説明する斜視図である。
図6】指定エリア地図情報の例を説明する図である。
図7】コマンド部材の外観の例を説明する図である。
図8】コマンド部材の走査方向長さに、コマンドを対応付けたコマンド対応情報の例を説明する図である。
図9】実際の指定エリア内において、自律走行台車を利用する例を説明する図である。
図10】自律走行台車の制御手段の処理手順の例を説明するフローチャートである。
図11】実際の指定エリア内において、取得した障害物位置の例を説明する図である。
図12】指定エリア地図情報と、目標到達位置と、現在位置と、に基づいて走行ルートR1を求める例を説明する図である。
図13】コマンド部材を用いた進入禁止領域、コマンド部材を用いた進入許可領域、を示す配置例1を説明する図である。
図14】コマンド部材を用いた進入禁止領域、コマンド部材を用いた進入許可領域、を示す配置例2を説明する図である。
図15】3次元立体状の障害物検出立体領域の例を説明する斜視図である。
図16】3次元立体状の障害物検出立体領域の例を説明する側面図である。
図17】障害物検出立体領域によってコマンド部材の形状を判定する例を説明する図である。
図18】コマンド部材の形状等に、コマンドを対応付けたコマンド対応情報の例を説明する図である。
図19】進入許可領域を示すコマンド部材を並べて自律走行台車を誘導する誘導路を形成した例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図において、X軸とY軸とZ軸は互いに直交している。また、Z軸方向は鉛直上向き方向を示し、X軸方向は自律走行台車の前方向を示し、Y軸方向は自律走行台車の左方向を示している。また、U軸とV軸とW軸が記載されている図において、U軸とV軸とW軸は互いに直交している。また、W軸方向は鉛直上向き方向を示し、U軸方向は実際の指定エリアの奥行方向における手前に向かう方向を示し、V軸方向は実際の指定エリアの幅方向における右方向を示している。
【0024】
●[自律走行台車の外観(図1)と全体構成(図2)]
自律走行台車には、用途や作業現場等に応じて種々の外観のものがあるが、本実施の形態の説明では図1に示すように、円柱状の外観を有する自律走行台車1を例として説明する。自律走行台車1は、ボディ2、荷台3、右駆動輪4R、左駆動輪4L、右キャスタ輪5R、左キャスタ輪5L、障害物検出手段11、右床面検出手段12R、左床面検出手段12L、メインスイッチ13A、往路スイッチ13B、復路スイッチ13C、タッチモニタ31、アンテナ32、音声出力手段33、通信用コネクタ34、右モータ35R、左モータ35L、制御装置40、バッテリ38等を有している。
【0025】
ボディ2は、図1に示すように、円柱状の形状を有しており、ボディ2の上面は、荷物を載置する荷台3を有している。自律走行台車1は、荷台3に載置された荷物を、自律走行にて搬送する。
【0026】
右駆動輪4R(車輪に相当)は、自律走行台車1の右前輪の位置に配置され、直進方向に向きが固定されており、右モータ35R(駆動手段に相当)にて前進方向または後進方向に回転駆動される。左駆動輪4L(車輪に相当)は、自律走行台車1の左前輪の位置に配置され、直進方向に向きが固定されており、左モータ35L(駆動手段に相当)にて前進方向または後進方向に回転駆動される。図2に示すように、制御手段41は、右モータ35Rと左モータ35Lを別々に制御することが可能であり、自律走行台車1に、直進前進、直進後進、右折前進、左折前進、その場で右旋回、その場で左旋回等、の動作をさせることができる。なお、複数の車輪のうち、少なくとも1つの駆動輪を有し、右折、左折等を行う旋回手段を有していてもよい。
【0027】
右キャスタ輪5R(車輪に相当)は、自律走行台車1の右後輪の位置に配置され、向きが自由に変更される従動輪である。左キャスタ輪5L(車輪に相当)は、自律走行台車1の左後輪の位置に配置され、向きが自由に変更される従動輪である。右キャスタ輪5R、左キャスタ輪5Lは、自律走行台車1の、直進前進、直進後進、右折前進、左折前進、その場で右旋回、その場で左旋回等、の動作に応じて向きが変わる。
【0028】
障害物検出手段11は、自律走行台車1の前上端に配置されている。障害物検出手段11は、レーザ光を走査させる2次元平面状の障害物検出平面領域を有する障害物センサであり、障害物検出平面領域内の障害物の位置である障害物位置と、障害物の輝度である障害物輝度と、を含む検出情報を制御手段41(図2参照)に出力する。なお、障害物検出手段11の詳細については後述する。
【0029】
右床面検出手段12Rは、例えば超音波センサであり、右駆動輪4Rの前方の床面の障害物を検出し、床面検出情報を制御手段41(図2参照)に出力する。同様に、左床面検出手段12Lは、例えば超音波センサであり、左駆動輪4Lの前方の床面の障害物を検出し、床面検出情報を制御手段41(図2参照)に出力する。
【0030】
メインスイッチ13Aは、制御装置40の起動と停止を行うためのスイッチであり、作業者によって操作される。往路スイッチ13Bは、実際の指定エリア内の任意の位置の作業者A(図9参照)によって操作されるスイッチであり、実際の指定エリア内の任意の位置に居る自律走行台車1に、実際の指定エリア内(及び指定エリア地図情報内)に設定された目標到達位置PT(例えば荷物収集場所であり、図9参照)への自律走行を指令するスイッチである。復路スイッチ13Cは、実際の指定エリア内の目標到達位置PTに待機している作業者B(図9参照)によって操作されるスイッチであり、実際の指定エリア内の目標到達位置PTに居る自律走行台車1に、実際の指定エリア内の作業者A(図9参照)のもとに戻るように自律走行を指令するスイッチである。
【0031】
タッチモニタ31は、自律走行台車1の動作状態やバッテリ残量等の表示を行い、作業者からの入力の受け付けも行う。
【0032】
アンテナ32は、実際の指定エリア内の作業者Aに所持させた無線タグTG(図9参照)を検索するための無線送信及び無線受信を行うアンテナである。制御手段41は、アンテナ32を介して無線タグTGに向けて応答要求信号を送信し、有効範囲内にある無線タグTGからの応答信号を受信することで、無線タグTGを検索することができる。
【0033】
音声出力手段33は、例えばスピーカであり、自律走行台車1が自律走行中に、自律走行台車1が作業者に接近していることを知らせるための音声や音楽等を出力する。
【0034】
通信用コネクタ34は、制御手段41に種々のデータ等を送信、あるいは制御手段41から種々のデータ等を受信、するためのパーソナルコンピュータ等を接続するためのコネクタである。例えば作業者は、パーソナルコンピュータに記憶されている指定エリア地図情報(実際の指定エリア内の障害物の位置が示された情報)を、通信用コネクタ34を介して記憶手段42(図2参照)に記憶させることができる。
【0035】
バッテリ38は、自律走行台車1内の制御手段や検出手段等の機器に電力を供給する電源である。
【0036】
制御装置40は、図2に示すように、制御手段41(例えばCPU)と、記憶手段42(例えばHard Disk Drive)等を有している。制御手段41には、障害物検出手段11からの検出情報、右床面検出手段12R及び左床面検出手段12Lからの床面検出情報、メインスイッチ13A、往路スイッチ13B、復路スイッチ13Cからの操作信号等が入力される。また制御手段41は、記憶手段42からのデータ等の読み出しと記憶手段42へのデータ等の書き込み、アンテナ32を介した送受信、タッチモニタ31への出力とタッチモニタ31からの入力、右モータ35R及び左モータ35Lへの駆動信号の出力、等を行う。
【0037】
●[障害物検出装置の検出領域(図3図5)]
図3は、障害物検出手段11の外観と、最大検出領域11Aの例を示しており、図4は、パーソナルコンピュータ等を用いて障害物検出手段11の最大検出領域11A内において、所望する検出領域(障害物検出平面領域11AX)を指定している様子を示している。
【0038】
障害物検出手段11は、レーザ光を走査させる2次元平面状の障害物検出平面領域11AX(図4にて指定された領域)を有し、障害物検出平面領域内にて検出された物体(障害物)の位置である障害物位置と、検出された物体(障害物)の輝度である障害物輝度と、を含む検出情報を制御手段41(図2参照)に出力する。つまり、検出情報には、どの方向の、どれだけの距離の位置に、どのような輝度の物体(障害物)があるか、という情報が含まれている。
【0039】
障害物検出手段11の障害物検出平面領域11AXの最大範囲となる最大検出領域11Aは、例えば、半径が約5[m]、中心角度が約270[°]の扇形である。また、障害物検出手段11または制御装置40には、複数の検出領域を設定(記憶)しておくことが可能である。作業者は、複数の検出領域を作成して障害物検出手段11または制御装置40に記憶させておき、制御装置40から検出領域の切り替えが可能である。作業者は、図4の例に示すように、パーソナルコンピュータ等にて検出領域作成用のプログラムを起動して、最大検出領域11A内において所望する検出領域を指定(作成)することができる。
【0040】
図4の例は、障害物検出手段11の最大検出領域11A内において、障害物検出平面領域11AXを指定(作成)した例を示している。作業者は、パーソナルコンピュータ等にて作成した障害物検出平面領域11AXを、通信用コネクタ34を介して障害物検出手段11や制御装置40に記憶させることができる。
【0041】
そして図5に示すように、自律走行台車1の前上端に配置された障害物検出手段11は、床面から高さH1にて水平方向に広がる障害物検出平面領域11AXにて、障害物検出平面領域11AX内の障害物の障害物距離と障害物輝度を検出する。
【0042】
●[指定エリア地図情報の例(図6)]
また作業者は、自律走行台車1を自律走行させる実際の指定エリア内において予めわかっている障害物の位置が示された指定エリア地図情報を、パーソナルコンピュータ等にて作成し、作成した指定エリア地図情報を、通信用コネクタ34を介して制御装置40(記憶手段42)に、予め記憶させておくことができる。
【0043】
図6は、実際の指定エリアが荷物配送センターの作業場の場合における、指定エリア地図情報42Vの例を示している。指定エリア地図情報42Vは、対象となる実際の指定エリア(作業場)の平面図であり、予めわかっている障害物の位置が示されている。なお、指定エリア地図情報42Vにおいて、U軸、V軸、W軸は互いに直交しており、W軸方向は鉛直上向き方向を示し、U軸方向は実際の指定エリアの奥行方向における手前に向かう方向を示し、V軸方向は実際の指定エリアの幅方向における右方向を示している。
【0044】
図6に示す指定エリア地図情報42V中において予めわかっている障害物は、四方の壁面と、種々の荷物が載置されている棚B1~B4と、壁面に配置されたそれぞれ異なるサイズの目印障害物M1A~M5A、M1B~M5Bである。棚B1~B4は、壁面から離れた位置に配置されており、作業者や自律走行台車1が入るための適度な間隔をあけて配置されている。壁面と棚B1~B4との間は、自律走行台車1が走行可能な通路であり、隣り合う棚の間も、自律走行台車1が走行可能な通路である。また、目印障害物M1A~M5A、M1B~M5Bは、自律走行台車1が現在位置を判定するための目印となる障害物であり、それぞれ異なる幅(Wxx)と、それぞれ異なる奥行(Dxx)に設定されている。例えば自律走行台車1が、2つの棚に近接する位置に居た場合、棚B1、B2に近接する位置、棚B2、B3に近接する位置、棚B3、B4に近接する位置、のどの位置か区別が困難な場合であっても、目印障害物M1A~M5A、M1B~M5Bのいずれかを検出できれば、正しい現在位置を判定することが容易となる。
【0045】
●[コマンド部材の例(図7)と、コマンド対応情報(図8)]
図7は、自律走行台車1の制御手段へのコマンドが対応付けられたコマンド部材の外観の例を示している。コマンド部材の材質は、障害物検出手段11が走査に用いるレーザ光を反射するレーザ反射部材等である。そして、コマンド部材のレーザ反射率は、実際の指定エリア内に存在するコマンド部材以外の障害物のレーザ反射率よりも高いレーザ反射率とされている。従って、自律走行台車1の制御手段は、障害物検出手段11からの検出情報に含まれている障害物輝度が、所定輝度以上の障害物を検出した場合、当該障害物をコマンド部材として検出することができる。
【0046】
制御手段は、障害物検出手段11からの検出情報に含まれている障害物位置と、障害物輝度と、に基づいて、どの方向において、どれだけの距離の位置に、どのような輝度の障害物があるか、検出することができるとともに、その輝度の長さ(走査方向の長さ(=走査方向長さ))を検出することもできる。従って、種々の走査方向長さのコマンド部材を用意すれば、複数のコマンドのそれぞれを、種々の走査方向長さのコマンド部材のそれぞれに対応付けることができる。
【0047】
図7に示す例では、走査方向長さはV軸方向の長さである。図7は、走査方向長さWK1を有する矩形のコマンド部材K1、走査方向長さWK2を有する円形のコマンド部材K2、走査方向長さWK3を有する(右向き)三角形のコマンド部材K3、走査方向長さWK4を有する(左向き)三角形のコマンド部材K4、の外観の例を示している。
【0048】
また図8は、各コマンドに、コマンド部材の走査方向長さを対応付けたコマンド対応情報42Yの例を示している。図8に示すコマンド対応情報42Yの例では、「進入禁止」コマンドには走査方向長さA1±ΔA2が、「進入許可」コマンドには走査方向長さBw±ΔBuが、「一時停止」コマンドには走査方向長さC1±ΔC2が、それぞれ対応付けられている。そしてコマンド対応情報42Yは、記憶手段42に記憶されている。
【0049】
なお、コマンドとして「進入禁止」、「進入許可」、「一時停止」を例としたが、これらのコマンドに限定されるものではなく、種々のコマンドを走査方向長さに対応付けすることができる。以下の説明では、図7に示すコマンド部材K1の走査方向長さWK1の長さがA1に設定され、コマンド部材K1が「進入禁止」コマンドに対応付けられており、図7に示すコマンド部材K2の走査方向長さWK2の長さがBwに設定され、コマンド部材K2が「進入許可」コマンドに対応付けられている例にて説明する。
【0050】
●[自律走行台車1の利用方法の例(図9)]
ここで図9を用いて、自律走行台車1の利用方法の例について説明する図9は、荷物配送センターの作業場を実際の指定エリアとした例を示している。実際の指定エリア42R内では、以下の(1)~(7)が繰り返され、自律走行台車1は、任意の位置で作業する作業者Aと、目標到達位置PTの作業者Bと、の間を自律走行する。
【0051】
(1)作業者Aは、無線タグTGを所持しており、自律走行台車1は、無線タグTGを検出し、検出した無線タグTGから所定範囲内となるように、作業者Aに追従する。
(2)作業者Aは、棚B1~B4の間を移動しながら、棚B1~B4に載置されている多数の荷物の中から、配送するべき荷物を選別して自律走行台車1の荷台に載せていく。
(3)自律走行台車1の荷台に載置された荷物が適量になった場合、作業者Aは、自律走行台車1に、目標到達位置PT(荷物収集場所)へと自律走行を行う指示をする(この場合、往路スイッチ13B(図1、2参照)をONにする)。
(4)荷物が載置された自律走行台車1は、実際の指定エリア42R内の障害物を回避しながら、目標到達位置PTに向かって、例えば走行ルートR1に沿って自律走行し、目標到達位置PTに到達すると停止する。なお、目標到達位置PTは、実際の指定エリア42R内において予め指定された位置であり、目標到達位置PTには、作業者Bが待機している。
(5)作業者Bは、目標到達位置PTで停止した自律走行台車1から荷物を受け取り、自律走行台車1に、作業者Aのもとへ戻る自律走行を行う指示をする(この場合、往路スイッチ13BのONを解除して、復路スイッチ13C(図1、2参照)をONにする)。
(6)荷台がカラとされた自律走行台車1は、次の荷物を搬送するために、実際の指定エリア42R内の障害物を回避しながら、作業者Aのもとへと、例えば走行ルートR2に沿って自律走行し、作業者Aから(無線タグTGから)所定範囲内に入ったところで停止する。
(7)作業者Aは、自律走行の指示を解除して(この場合、復路スイッチ13CのONを解除して)、上記の(1)に戻る。
【0052】
上記の自律走行台車1の利用方法を実現する、自律走行台車1の制御手段41の処理手順について、以下に説明する。なお、以下の処理手順の例では、実際の指定エリア内に、「進入禁止」コマンドが対応付けられたコマンド部材と、「進入許可」コマンドが対応付けられたコマンド部材と、が配置されている場合を考慮した処理手順の例を示している。
【0053】
●[制御手段41の処理手順(図10)]
次に図10を用いて、制御装置40の制御手段41(図2参照)の処理手順について説明する。制御手段41は、例えばメインスイッチ13A(図1図2参照)が操作されると、図10に示す処理を起動し、起動するとステップS010へと処理を進める。
【0054】
ステップS010にて制御手段41は、記憶手段42に記憶されている指定エリア地図情報を読み出し、読み出した指定エリア地図情報内に、目標到達位置PT(図9参照)が登録されているか否かを判定し、目標到達位置PTが登録されている場合(Yes)はステップS020へ処理を進め、目標到達位置PTが登録されていない場合(No)はステップS015へ処理を進める。
【0055】
ステップS015に処理を進めた場合、制御手段41は、目標到達位置の登録を督促してステップS010へ処理を戻す。例えば制御手段41は、タッチモニタ31(図1図2参照)に指定エリア地図情報を表示して、「所望する目標到達位置の場所をタッチしてください」と表示し、タッチされた位置を読み込んで目標到達位置として登録する。
【0056】
ステップS020に処理を進めた場合、制御手段41は、往路スイッチ13B(図1、2参照)が、作業者A(図9参照)によってONされているか否かを判定し、往路スイッチ13BがONされている場合(Yes)はステップS025に処理を進め、往路スイッチ13BがONされていない場合(No)はステップS120に処理を進める。例えば、往路スイッチ13B、復路スイッチ13Cは、両方同時にONさせることができないスイッチであり、作業者がONさせた場合は、作業者によって解除されるまでON状態を維持するスイッチである。
【0057】
ステップS025に処理を進めた場合、制御手段41は、障害物検出手段11からの検出情報に含まれている障害物位置と、記憶手段42に記憶されている指定エリア地図情報と、に基づいて、実際の指定エリア内(及び指定エリア地図情報内)における自律走行台車1の位置である現在位置を判定してステップS030に処理を進める。例えば図11に示すように、実際の指定エリア42R内にて自律走行台車1は、障害物検出平面領域11AXにて障害物を走査し、障害物位置11APを得る。制御手段41は、パターンマッチング等を用いて、検出情報に含まれている障害物位置11AP(図11参照)と、記憶手段42から読み出した指定エリア地図情報(図6参照)と、を比較して、障害物位置11AP(図11参照)と一致する指定エリア地図情報(図6参照)中の位置を求め、求めた位置を現在位置と判定する。図11の例では、制御手段41は、目印障害物M3Bを検出することで、図12に示す指定エリア地図情報42V内において、現在位置P01を判定する。
【0058】
ステップS030にて制御手段41は、図12に示すように、指定エリア地図情報42Vと、ステップS025にて求めた現在位置P01と、指定エリア地図情報42V内に登録されている目標到達位置PTと、に基づいて、障害物を回避しながら現在位置P01から目標到達位置PTへと至る走行ルートR1を求め、ステップS035に処理を進める。
【0059】
ステップS035にて制御手段41は、指定エリア地図情報42V内における現在位置P01が、目標到達位置PTに到達したか否か(目標到達位置PTから所定範囲内であるか否か)を判定し、目標到達位置PTに到達している場合(Yes)はステップS040に処理を進め、目標到達位置PTに到達していない場合(No)はステップS045に処理を進める。
【0060】
ステップS040に処理を進めた場合、制御手段41は、右モータ35R及び左モータ35Lの駆動を停止して自律走行台車1の進行を停止させ、ステップS020へと処理を戻す。なお、図9に示す作業者Bは、自律走行台車1が目標到達位置PTに到達して(当該ステップS040にて)停止した場合、荷物を受け取り、往路スイッチのONを解除して、復路スイッチをONにする。
【0061】
ステップS045に処理を進めた場合、制御手段41は、指定エリア地図情報42V内における現在位置P01を更新しながら、障害物を回避しつつ、走行ルートR1(図12参照)に沿って、右モータ35R及び左モータ35Lを制御して自律走行を行い、ステップS050に処理を進める。
【0062】
ステップS050にて制御手段41は、サブルーチンSUB100へ処理を進め、サブルーチンSUB100からリターンするとステップS035へと処理を戻す。
【0063】
●[サブルーチンSUB100の処理(図10)の詳細]
サブルーチンSUB100へ処理を進めた場合、制御手段41は、ステップSUB110へと処理を進める。
【0064】
ステップSUB110にて制御手段41は、現在位置P01を更新しながら走行ルートR1に沿って自律走行している際、検出情報に含まれている障害物輝度に基づいて、所定輝度以上の輝度を有する障害物を検出することが可能である。自律走行台車1は、検出情報を取得する際、指定エリア地図情報に記憶されていない障害物も認識することができる(コマンド部材を、指定エリア地図情報内に、予め記憶させておく必要は無い)。そして制御手段41は、障害物輝度に基づいてコマンド部材を検出した場合、検出情報に含まれている障害物位置と障害物輝度とに基づいて、検出したコマンド部材の走査方向長さを検出する。そして制御手段41は、検出したコマンド部材の走査方向長さと、記憶手段42に記憶されているコマンド対応情報42Y(図8参照)と、に基づいて、検出したコマンド部材に対応付けられているコマンドを記憶手段42から読み出す。そして制御手段41は、コマンド部材を検出し、かつ、対応付けられたコマンドが「進入禁止」であるか否かを判定し、コマンド部材を検出、かつ、「進入禁止」である場合(Yes)はステップSUB120に処理を進め、そうでない場合(No)はサブルーチンSUB100を終了してリターンする。
【0065】
ステップSUB120に処理を進めた場合、制御手段41は、他のコマンド部材が検出されており、かつ、当該他のコマンド部材に対応付けられているコマンドが「進入許可」であるか否かを判定し、他のコマンド部材を検出、かつ、「進入許可」である場合(Yes)はステップSUB130Aに処理を進め、そうでない場合(No)はステップSUB130Bに処理を進める。
【0066】
ステップSUB130Aに処理を進めた場合、制御手段41は、進入禁止領域を迂回して進入許可領域を通る、新たな走行ルートを再計算して(走行ルートを変更して)リターンする。
【0067】
ステップSUB130Bに処理を進めた場合、制御手段41は、進入禁止領域を迂回する、新たな走行ルートを再計算して(走行ルートを変更して)リターンする。
【0068】
●[「進入禁止」のコマンド部材の設置例と、「進入許可」のコマンド部材の設置例(図13図14)]
例えば図13に示すように、棚B1と棚B2との間の通路T12内において、突発的に荷物の落下等が発生して、自律走行台車1が通路T12を通ることができない場合、作業者は、通路T12の入口となる棚B1及び棚B2の面、かつ高さH1(図5参照)の位置に、「進入禁止」コマンドが対応付けられたコマンド部材K1を配置する(貼り付ける)。
【0069】
例えば、「進入禁止」コマンドを、2つの「進入禁止」コマンド部材K1に挟まれた領域を進入禁止領域とする、あるいは各「進入禁止」コマンド部材K1から所定範囲内(図13中の領域AA内)を進入禁止領域とするように設定にしておく。これにより、制御手段41は、コマンド部材K1及び「進入禁止」コマンドを検出し、通路T12が「進入禁止」であることを認識することができる。作業者は、特定場所(この例では通路T12)において、自律走行台車1への制限等(この場合、「進入禁止」)が突発的に発生しても、当該特定場所に、所望するコマンドが対応付けられたコマンド部材を配置(貼り付けも含む)するだけでよいので、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能である。
【0070】
また図13に示すように、通路T12を「進入禁止」とした場合、隣の通路T23またはさらに隣の通路T34を「進入許可」とすることで、制御手段41が走行ルートを再計算する際、真っ先に通路T23または通路T34を通る走行ルートを再計算させて、新たな走行ルートの再計算時間をより短くすることができる。図13の例では、作業者は、通路T23、通路T34の入口となる棚B3、B4の面、かつ高さH1(図5参照)の位置に、「進入許可」コマンドが対応付けられたコマンド部材K2を配置する(貼り付ける)。この場合の「進入許可領域」は、「迂回時の優先通過領域」の意味となる。
【0071】
例えば、「進入許可」コマンドを、2つの「進入許可」コマンド部材K2に挟まれた領域を進入許可領域とする、あるいは各「進入許可」コマンド部材K2から所定範囲内(図13中の領域BB内)を進入許可領域とするように設定にしておく。これにより、制御手段41は、コマンド部材K2及び「進入許可」コマンドを検出し、通路T23、T34が「進入許可」であることを認識することができる。作業者は、特定場所(この例では通路T23、T34)において、自律走行台車1への制限等(この場合、「進入許可」)が突発的に発生しても、当該特定場所に、所望するコマンドが対応付けられたコマンド部材を配置(貼り付けも含む)するだけでよいので、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能である。
【0072】
図13の例では、コマンド部材K1、K2を棚B1~B4の側面に配置した(貼り付けた)例を示したが、図14に示すように、高さH1の位置にコマンド部材が取り付けられた三脚や三角コーン(コマンド部材保持器)を予め用意しておき、対象となる通路の入口部に配置する(立てる)ようにしてもよい。図14の例は、通路T12の入口部となる棚B1、B2の手前に、コマンド部材K1が取り付けられたコマンド部材保持器KS1を立て、通路T23、T34の入口部となる棚B3、B4の手前に、コマンド部材K2が取り付けられたコマンド部材保持器KS2を立てた例を示している。この場合、三脚や三角コーン等のコマンド部材保持器を予め用意しておき、必要に応じて、対象とする特定場所にコマンド部材保持器を立てるだけでよいので、図13の例と比較して、作業者は、さらに容易に、さらに短時間に、対処することができる。
【0073】
ここで、図10に示すフローチャートの説明に戻る。図10に示すステップS120に処理を進めた場合、制御手段41は、復路スイッチ13C(図1、2参照)が、作業者B(図9参照)によってONされているか否かを判定し、復路スイッチ13CがONされている場合(Yes)はステップS125に処理を進め、復路スイッチ13CがONされていない場合(No)はステップS240に処理を進める。
【0074】
ステップS125に処理を進めた場合、制御手段41は、記憶手段42に記憶している前回の走行ルートR1を逆方向にたどって、指定エリア地図情報42V内における現在位置P01を更新しながら、障害物を回避しつつ、自律走行を行い、ステップS130に処理を進める。
【0075】
ステップS130にて制御手段41は、サブルーチンSUB100へ処理を進め、サブルーチンSUB100からリターンするとステップS135へと処理を進める。なお、サブルーチンSUB100の処理の詳細については、上記に説明しているので、説明を省略する。
【0076】
ステップS135にて制御手段41は、無線タグTG(図9参照)を発見(検出)したか否かを判定し、無線タグTGを発見した場合(Yes)はステップS140に処理を進め、無線タグTGを発見していない場合(No)はステップS125に処理を戻す。なお、制御手段41は、自律走行中に、アンテナ32(図1、2参照)を介して、無線タグTGに応答要求信号を無線で送信し、無線タグTGからの応答信号を無線で受信することで、無線タグTGを発見することができる。
【0077】
ステップS140に処理を進めた場合、制御手段41は、無線タグTGからの電波強度等に基づいて、自律走行台車1の現在位置が、無線タグTGから所定範囲内(例えば半径1[m]以内)であるか否かを判定し、無線タグTGから所定範囲内である場合(Yes)はステップS145に処理を進め、そうでない場合(No)はステップS150に処理を進める。
【0078】
ステップS145に処理を進めた場合、制御手段41は、右モータ35R及び左モータ35Lの駆動を停止して自律走行台車1の進行を停止させ、ステップS020へと処理を戻す。なお、図9に示す作業者Aは、自律走行台車1が自身のもとに戻ってきて(当該ステップS145にて)停止した場合、復路スイッチのONを解除する。
【0079】
ステップS150に処理を進めた場合、制御手段41は、発見した無線タグTGに向かって、指定エリア地図情報42V内における現在位置P01を更新しながら、障害物を回避しつつ、自律走行を行い、ステップS155に処理を進める。
【0080】
ステップS155にて制御手段41は、サブルーチンSUB100へ処理を進め、サブルーチンSUB100からリターンするとステップS140へ処理を戻す。なお、サブルーチンSUB100の処理の詳細については、上記に説明しているので、説明を省略する。
【0081】
ステップS240に処理を進めた場合、制御手段41は、無線タグTGからの電波強度等に基づいて、自律走行台車1の現在位置が、無線タグTGから所定範囲内(例えば半径1[m]以内)であるか否かを判定し、無線タグTGから所定範囲内である場合(Yes)はステップS245に処理を進め、そうでない場合(No)はステップS250に処理を進める。
【0082】
ステップS245に処理を進めた場合、制御手段41は、右モータ35R及び左モータ35Lの駆動を停止して自律走行台車1の進行を停止させ、ステップS020へと処理を戻す。なお、図9に示す作業者Aは、目標到達位置PTへの搬送を所望する荷物を、棚から選別して、自身に追従している自律走行台車1の荷台に載せていく。そして作業者Aは、自律走行台車1に載せた荷物が適量になると、往路スイッチをONにする。
【0083】
ステップS250に処理を進めた場合、制御手段41は、無線タグTGに向かって、指定エリア地図情報42V内における現在位置P01を更新しながら、障害物を回避しつつ、自律走行を行い、ステップS255に処理を進める。
【0084】
ステップS255にて制御手段41は、サブルーチンSUB100へ処理を進め、サブルーチンSUB100からリターンするとステップS240へ処理を戻す。なお、サブルーチンSUB100の処理の詳細については、上記に説明しているので、説明を省略する。
【0085】
●[3次元立体状の障害物検出立体領域11BXと、コマンド部材の形状を検出する例(図15図19)]
以上の説明では、図3図5に示すように、レーザ光を用いて走査する障害物検出手段11の検出領域が、2次元平面状の障害物検出平面領域11AXである場合について説明した。これに対して図15図16に示すように、2次元平面状の障害物検出平面領域11AXを、複数重ねてレーザ光を複数回走査させる3次元立体状の障害物検出立体領域11BXとすることも可能である。例えば、3つの障害物検出平面領域11AXのそれぞれを、水平方向に対して傾斜角度ゼロ、水平方向に対して下方に傾斜角度Δθ、水平方向に対して下方に傾斜角度Δ2*θ、等に設定して重ね、各傾斜角度の障害物検出平面領域11AXを走査することで、3次元立体状の障害物検出立体領域11BXを実現することができる。
【0086】
上記の障害物検出立体領域11BXを用いて走査することで、図17に示すように、コマンド部材K1~K5の走査方向(図17の例ではV軸方向)の長さ(WKx)だけでなく、高さ方向(図17の例では、W軸方向)の概略長さ(HKx)を検出することも可能であり、コマンド部材の概略形状を判定することも可能である。図17の例は、各コマンド部材K1~K5の輪郭を点線で示し、各コマンド部材K1~K5を走査した際の走査軌跡(所定輝度以上の軌跡)を太実線で示している。
【0087】
制御手段41は、障害物検出手段11からの検出情報に含まれている障害物位置と障害物輝度とに基づいて、上記の走査軌跡を求め、求めた走査軌跡に基づいて、コマンド部材K1~K5の形状を認識することができる。例えば図17の例では、制御手段41は、コマンド部材K1の走査軌跡から、コマンド部材K1の形状は矩形であると判定し、コマンド部材K2の走査軌跡からコマンド部材K2の形状は円形であると判定することができる。また制御手段41は、コマンド部材K3の走査軌跡からコマンド部材K3の形状は(右向き)三角形であると判定し、コマンド部材K4の走査軌跡からコマンド部材K4の形状は(左向き)三角形であると判定し、コマンド部材K5の走査軌跡からコマンド部材K5の形状は(下向き)三角形であると判定することができる。
【0088】
例えば、図18に示すコマンド対応情報42Zに示すように、コマンド部材の形状に応じたコマンドを対応付けすることができる。図8に示したコマンド対応情報42Yでは、コマンド部材の走査方向長さの寸法を、正確に管理しなければならない。しかし、図18に示すコマンド対応情報42Zでは、適度なサイズのコマンド部材であれば、寸法を正確に管理する必要がなく、概略形状が適切な形状であればよい。例えば図18の例では、矩形の形状のコマンド部材K1に「進入禁止」を対応付け、円形の形状のコマンド部材K2に「進入許可」を対応付け、右向き三角形の形状のコマンド部材K3に「右側は進入許可」を対応付け、左向き三角形の形状のコマンド部材K4に「左側は進入許可」を対応付け、下向き三角形の形状のコマンド部材K5に「一時停止」を対応付けた例を示している。
【0089】
例えば、図19に示すように、右向き三角形のコマンド部材K3(右側は進入許可)が取り付けられたコマンド部材保持器KS3を一列に並べて立て、各コマンド部材K3の右側に、所定間隔をあけて左向き三角形のコマンド部材K4(左側は進入許可)が取り付けられたコマンド部材保持器KS4を一列に並べて立てて、自律走行台車1を誘導する誘導通路TYを形成することができる。また、誘導通路TYの先に、下向き三角形のコマンド部材K5(一時停止)が取り付けられたコマンド部材保持器KS5を立てることで、当該コマンド部材保持器KS5よりも手前の位置で、自律走行台車1を一時停止させることができる。この例は、自律走行台車1を所望する位置に集めたい場合等において、便利である。
【0090】
以上に説明した本実施の形態の自律走行台車1は、自律走行台車1を使用する実際の指定エリア42R内にて、特定場所において自律走行台車1への制限等(進入禁止や進入許可等)が突発的に発生しても、手間がかかる工事等を必要とせず、容易に、かつ、短時間に対処することが可能である。また、コマンド部材の走査方向長さや形状に、それぞれのコマンドを対応付けることで、自律走行台車1を、所望する場所で、所望するコマンドに従わせることができるので便利である。
【0091】
本発明の自律走行台車1は、本実施の形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0092】
本実施の形態の説明では、コマンド部材に対応付けるコマンドとして、進入禁止、進入許可、右側は進入許可、左側は進入許可、一時停止、の例を説明したが、このコマンドに限定されるものではなく、種々のコマンドを対応付けることができる。また、コマンド部材の形状、サイズ、材質等は、本実施の形態の説明に限定されるものではない。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【0093】
本発明の自律走行台車1は、荷物配送センター、パーツセンター、空港等に限定されず、荷物を一か所(目標到達位置)に収集する、あるいは逆に、荷物を一か所(目標到達位置)から任意の位置(作業者Aの位置)に搬送する、種々の作業現場にて利用することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 自律走行台車
2 ボディ
3 荷台
4L 左駆動輪(車輪)
4R 右駆動輪(車輪)
5L 左キャスタ輪(車輪)
5R 右キャスタ輪(車輪)
11 障害物検出手段
11A 最大検出領域
11AX 障害物検出平面領域
11BX 障害物検出立体領域
12L 左床面検出手段
12R 右床面検出手段
13A メインスイッチ
13B 往路スイッチ
13C 復路スイッチ
31 タッチモニタ
32 アンテナ
33 音声出力手段
34 通信用コネクタ
35L 左モータ(駆動手段)
35R 右モータ(駆動手段)
38 バッテリ
40 制御装置
41 制御手段
42 記憶手段
42R (実際の)指定エリア
42V 指定エリア地図情報
42Y、42Z コマンド対応情報
A (指定エリア内の任意の位置で作業する)作業者
B (指定エリア内の目標到達位置で待機している)作業者
B1~B4 棚
K1~K5 コマンド部材
KS1~KS5 コマンド部材保持器
M1A~M5A、M1B~M5B 目印障害物
P01 現在位置
PT 目標到達位置
R1、R2 走行ルート
T01、T12、T23、T34、T40 通路
TG 無線タグ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19