(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-04-25
(45)【発行日】2022-05-09
(54)【発明の名称】車両用シフタ装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20220426BHJP
【FI】
B60K20/02 D
B60K20/02 E
(21)【出願番号】P 2018116986
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】武永 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】松岡 俊弘
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-177529(JP,U)
【文献】特開平9-220943(JP,A)
【文献】特開2008-183998(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101439(US,A1)
【文献】特開2011-168264(JP,A)
【文献】実開平2-53563(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第1621262(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0345412(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作に基づいて、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、およびドライブレンジを含む複数のレンジ間で車両の変速レンジを切り換える車両用シフタ装置であって、
前記運転者の入力を受け付け、前記複数の変速レンジの各々に応じた複数のポジションが規定されたシフトレバーと、
前記運転者が前記シフトレバーの上端部を移動させて、前記複数のポジション間でシフト操作を行う場合に、当該上端部の移動方向に抗する方向に操作荷重を付加する操作荷重付加部と、
を備え、
前記シフトレバーの上端部の移動経路は、前記リバースレンジ、前記ニュートラルレンジ、および前記ドライブレンジの各間を前記運転者が切り換える場合には、前記車両の前後方向であり、前記パーキングレンジと前記リバースレンジとを前記運転者が切り換える場合には、前記車両の車幅方向であり、
前記操作荷重付加部は、前記ニュートラルレンジと前記ドライブレンジとを前記運転者が切り換える場合よりも、前記パーキングレンジと前記リバースレンジとを前記運転者が切り換える場合の方が付加する前記操作荷重が小さくなる、ように構成されている、
車両用シフタ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シフタ装置において、
前記操作荷重付加部は、
前記シフトレバーにおける前記上端部よりも下方の位置に設けられ、ディテントプランジャーが出没自在のディテント機構部と、
前記車両の車体に固定され、前記シフトレバーの移動に伴い前記ディテントプランジャーの先端部が底に当接した状態で摺動する溝部が設けられてなるディテントプレートと、
を有し、
前記ディテントプランジャーは、前記ディテントプレートにおける前記溝部の底に向けて弾性付勢されており、
前記ディテントプレートにおける前記溝部の底は、前記シフトレバーの移動に伴い前記ディテントプランジャーの突出量が変化するように、複数の山部と複数の谷部が設けられており、
前記操作荷重の大小は、前記山部の形状に基づき規定される、
車両用シフタ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シフタ装置において、
前記ディテントプレートにおいて、
前記複数の谷部は、前記シフトレバーが前記複数のポジションのそれぞれに入れられている場合に、当該複数のポジションのそれぞれに対応する位置に、前記ディテントプランジャーが突出するように凹入されており、
前記複数の山部は、隣り合う前記谷部同士の間の領域に、前記ディテントプランジャーが引っ込むように凸出されている、
車両用シフタ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用シフタ装置において、
前記パーキングレンジに対応する前記谷部と前記リバースレンジに対応する前記谷部との間の前記山部は、前記ニュートラルレンジに対応する前記谷部と前記ドライブレンジに対応する前記谷部との間の前記山部よりも、凸出高さが低い、
車両用シフタ装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の車両用シフタ装置において、
前記パーキングレンジに対応する前記谷部と前記リバースレンジに対応する前記谷部との間の前記山部は、前記ニュートラルレンジに対応する前記谷部と前記ドライブレンジに対応する前記谷部との間の前記山部よりも、当該山部の頂に至る斜面の傾斜が緩い、
車両用シフタ装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5の何れかに記載の車両用シフタ装置において、
前記ディテントプランジャーが移動する方向において、前記ディテントプレートにおける前記溝部の底は、滑らかな曲面で構成されている、
車両用シフタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シフタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両シフタ装置は、運転者からの変速レンジの切り替えに係る入力を受け付けるために、センターコンソールやインストルメントパネルに設けられている。車両用シフタ装置としては、自動変速機に対してケーブルなどで機械的に連結された機械式の車両用シフタ装置と、運転者が選択したシフトレバーのポジションを電気的に検出し、検出したポジション情報を電気信号により制御部に送出することで変速を実行する、所謂、シフト・バイ・ワイヤ方式の車両用シフタ装置とがある。
【0003】
シフト・バイ・ワイヤ方式の車両用シフタ装置は、シフトレバーの支持構造をコンパクト化できるので、装置全体のコンパクト化も可能である。
【0004】
特許文献1には、リバース(R)ポジションとドライブ(D)ポジションの選択をシフトレバーの操作により行い、パーキング(P)ポジションとニュートラル(N)ポジションの選択および解除を押ボタンスイッチで行う車両用シフタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の車両用シフタ装置では、RポジションとDポジションの選択はシフトレバーの操作で行い、PポジションとNポジションの選択はシフトレバーから離間した位置に設けられた押ボタンの操作で行うことが必要であり、運転者に対して煩雑な操作を要求することとなってしまう。このため、上記特許文献1に開示の車両用シフタ装置では、運転者の誤操作を招いてしまうことが懸念される。このような変速レンジの切り替えにおける誤操作は、高い安全性を必要とする車両の運転では、大きな問題となる。
【0007】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、運転者に対して煩雑な操作を要求せず、且つ、誤操作を抑制することで高い安全性を確保することができる車両用シフタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る車両用シフタ装置は、運転者の操作に基づいて、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、およびドライブレンジを含む複数のレンジ間で車両の変速レンジを切り換える車両用シフタ装置であって、前記運転者の入力を受け付け、前記複数の変速レンジの各々に応じた複数のポジションが規定されたシフトレバーと、前記運転者が前記シフトレバーの上端部を移動させて、前記複数のポジション間でシフト操作を行う場合に、当該上端部の移動方向に抗する方向に操作荷重を付加する操作荷重付加部と、を備え、前記シフトレバーの上端部の移動経路は、前記リバースレンジ、前記ニュートラルレンジ、および前記ドライブレンジの各間を前記運転者が切り換える場合には、前記車両の前後方向であり、前記パーキングレンジと前記リバースレンジとを前記運転者が切り換える場合には、前記車両の車幅方向であり、前記操作荷重付加部は、前記ニュートラルレンジと前記ドライブレンジとを前記運転者が切り換える場合よりも、前記パーキングレンジと前記リバースレンジとを前記運転者が切り換える場合の方が付加する前記操作荷重が小さくなる、ように構成されている。
【0009】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、シフトレバーの上端部(運転者が把持して操作する部分)の移動経路を、リバース(R)レンジ、ニュートラル(N)レンジ、およびドライブ(D)レンジの各間を切り換える場合には車両前後方向とし、Rレンジとパーキング(P)レンジとの間を切り換える場合には車両の車幅方向としているので、シフトレバーの移動方向の違いにより、運転者が不所望なレンジ間での変速操作を行うことが抑制される。
【0010】
また、上記態様に係る車両用シフタ装置では、運転者はシフトレバーの移動操作により、Pレンジ、Rレンジ、Nレンジ、およびDレンジの各間での変速操作を行うことができるので、上記特許文献1に開示の構成に対して、運転者に操作時の煩わしさを覚えさせ難い。
【0011】
さらに、上記態様に係る車両用シフタ装置では、NレンジとDレンジとの間で切り換えを行う場合よりも、PレンジとRレンジとの間で切り換えを行う場合の方が、シフトレバーを介した運転者への反力である操作荷重が小さくなるように構成されている。これは、人が腕を動かす場合において、前後方向に動かす場合に比べて、横方向に動かす場合の方が力が入り難いことに着目したものである。これより、力が入り易い前後方向にシフトレバーの上端部を動かす場合(NレンジとDレンジとの間で切り換えを行う場合)よりも、力の入り難い横方向(車幅方向)にシフトレバーの上端部を移動させる場合(PレンジとRレンジとの間で切り換えを行う場合)の方が運転者に対する操作荷重を小さくすることで、変速操作時に運転者が煩わしさを覚え難くすることができる。これらにより、上記態様に係る車両用シフタ装置では、変速操作時における運転者への煩雑な操作を必要とせず、誤操作の抑制に繋がる。
【0012】
従って、上記態様に係る車両用シフタ装置では、運転者に対して煩雑な操作を要求せず、且つ、誤操作を抑制することで高い安全性を確保することができる。
【0013】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、前記操作荷重付加部は、前記シフトレバーにおける前記上端部よりも下方の位置に設けられ、ディテントプランジャーが出没自在のディテント機構部と、前記車両の車体に固定され、前記シフトレバーの移動に伴い前記ディテントプランジャーの先端部が底に当接した状態で摺動する溝部が設けられてなるディテントプレートと、を有し、前記ディテントプランジャーは、前記ディテントプレートにおける前記溝部の底に向けて弾性付勢されており、前記ディテントプレートにおける前記溝部の底は、前記シフトレバーの移動に伴い前記ディテントプランジャーの突出量が変化するように、複数の山部と複数の谷部が設けられており、前記操作荷重の大小は、前記山部の形状に基づき規定されている、とすることもできる。
【0014】
上記構成を採用する車両用シフタ装置では、複数の山部と複数の谷部が形成されたディテントプレートの溝部の底(溝底)に対して、当該溝底に沿って先端部が摺接するディテントプランジャーの突出量により、上記操作荷重が変化するように構成されている。これにより、運転者がシフトレバーを移動操作した際には、ディテントプランジャーに付勢された弾性力に起因した操作荷重が付加される。よって、上記構成を採用する車両用シフタ装置では、簡易な構成を以って、確実に操作荷重の大小を付けることができる。
【0015】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、前記ディテントプレートにおいて、前記複数の谷部は、前記複数のポジションのそれぞれに入れられている場合に、当該複数のポジションのそれぞれに対応する位置に、当該ディテントプランジャーが突出するように凹入されており、前記複数の山部は、隣り合う前記谷部同士の間の領域に、前記ディテントプランジャーが引っ込むように凸出されている、とすることもできる。
【0016】
上記構成を採用する車両用シフタ装置では、シフトレバーが各ポジションに入れられた際に、ディテントプランジャーの先端部が各谷部に入るようになっているので、各ポジションでの節度感の実現が可能である。
【0017】
また、上記構成を採用する車両用シフタ装置では、シフトレバーを各ポジション間で移動させようとする場合には、山部を越えるためにディテントプランジャーが引っ込み、これにより運転者は操作荷重を感得することができる。よって、上記構成を採用する車両用シフタ装置では、より確実に変速操作時における誤操作を抑制することができる。
【0018】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、前記パーキングレンジに対応する前記谷部と前記リバースレンジに対応する前記谷部との間の前記山部は、前記ニュートラルレンジに対応する前記谷部と前記ドライブレンジに対応する前記谷部との間の前記山部よりも、凸出高さが低い、とすることもできる。
【0019】
上記構成を採用する車両用シフタ装置では、ディテントプレートの溝底に形成された山部の高さを、Nレンジに対応する谷部とDレンジに対応する谷部との間の山部と、Pレンジに対応する谷部とRレンジに対応する谷部との間の山部と、で変えることで、操作荷重の大小を実現している。よって、上記構成を採用する車両用シフタ装置では、簡易な構成を以って、確実に操作荷重の大小を付けることができる。
【0020】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、前記パーキングレンジに対応する前記谷部と前記リバースレンジに対応する前記谷部との間の前記山部は、前記ニュートラルレンジに対応する前記谷部と前記ドライブレンジに対応する前記谷部との間の前記山部よりも、当該山部の頂に至る斜面の傾斜が緩い、とすることもできる。
【0021】
上記構成を採用する車両用シフタ装置では、ディテントプレートの溝底に形成された山部の頂に至る斜面の傾斜について、Nレンジに対応する谷部とDレンジに対応する谷部との間の山部と、Pレンジに対応する谷部とRレンジに対応する谷部との間の山部と、で緩急をつけることで、操作荷重の大小を実現している。よって、上記構成を採用する車両用シフタ装置では、簡易な構成を以って、確実に操作荷重の大小を付けることができる。
【0022】
上記態様に係る車両用シフタ装置では、前記ディテントプランジャーが移動する方向において、前記ディテントプレートにおける前記溝部の底は、滑らかな曲面で構成されている、とすることもできる。
【0023】
上記構成を採用する車両用シフタ装置では、ディテントプレートの溝底を滑らかな曲面で構成することとしているので、運転者がシフトレバーを移動させる際に煩わしさを覚えることが抑制される。
【発明の効果】
【0024】
上記の各車両用シフタ装置では、運転者に対して煩雑な操作を要求せず、且つ、誤操作を抑制することで高い安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態に係る車両用シフタ装置が適用された車両の車室内を示す模式図である。
【
図2】車両用シフタ装置の概略構成を示す模式平面図である。
【
図3】シフトレバーの構成を示す模式側面図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面を示す図であって、シフトレバーにおける掛止レバーの構成を示す模式断面図である。
【
図5】センターコンソールの裏面側に設けられたロックプレートの構成を示す模式平面図である。
【
図6】
図5のVI-VI断面を示す図であって、ロックプレートの構成を示す模式断面図である。
【
図7】(a)は、シフトポジションがDポジションにある場合のロックプレートに対する掛止レバーの状態を示す模式平面図であり、(b)は、シフトポジションがNポジションにある場合のロックプレートに対する掛止レバーの状態を示す模式平面図である。
【
図8】(a)は、シフトポジションがRポジションにある場合のロックプレートに対する掛止レバーの状態を示す模式平面図であり、(b)は、シフトポジションがPポジションにある場合のロックプレートに対する掛止レバーの状態を示す模式平面図である。
【
図9】
図3のIX-IX断面を示す図であって、ディテントケースおよびディテントプランジャーを含むディテント機構部の構成を示す模式断面図である。
【
図10】センターコンソールの裏面側に設けられたディテントプレートの構成を示す模式平面図である。
【
図11】
図10のXI-XI断面を示す図であって、ディテントプレートにおける溝部の構成を示す模式断面図である。
【
図12】シフトレバーを操作する際の操作荷重を示す特性図である。
【
図13】シフトトポジションがPポジションにある場合のシフトレバーに対するプランジャーの状態を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0027】
ここで、以下の説明において用いる図において、“+X”および“R”は車両右方、“-X”および“L”は車両左方、“+Y”は車両前方、“-Y”は車両後方、“+Z”は車両上方、“-Z”は車両下方、をそれぞれ指す。
【0028】
[実施形態]
1.車両1の車室2内の構成
車両1の車室2内の構成について、
図1を用いて説明する。
【0029】
図1に示すように、運転者が着座する位置の前方には、インストルメントパネル4のメーターユニット5とステアリングハンドル6とが配置されている。メーターユニット5には、速度やエンジン回転数、さらにはギヤレンジなどの表示がなされるようになっている。
【0030】
運転者の前方側の足元部分には、アクセルペダル9およびブレーキペダル10が配されている。
【0031】
運転席と助手席との間には、センターコンソール7が設けられている。センターコンソール7は、車両の前後方向に延びるように設けられており、運転者の腕を載せることができるように上面が略平面に形成されている。
【0032】
センターコンソール7には、車両用シフタ装置3及びパーキングスイッチ8が設けられている。車両用シフタ装置3への運転者の操作により、車両1の自動変速機(図示を省略。)は、複数のレンジ間で変速レンジの切り替えを実行する。
【0033】
具体的には、車両用シフタ装置3は、パーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、及びドライブレンジ(Dレンジ)の間で変速レンジを切り換えできるようになっている。
【0034】
パーキングスイッチ8は、パーキングブレーキを操作するためのソレノイドに接続されたスイッチである。運転者がパーキングスイッチ6の前方部分を上に引き上げる操作をすると、パーキングブレーキが利くようになっている。
【0035】
2.車両用シフタ装置3の外観構成とシフトレバー11の上端部の動き
車両用シフタ装置3の外観構成とシフトレバー11の上端部の動きについて、
図2を用いて説明する。
図2は、
図1におけるセンターコンソール7の一部を抜き出して図示した模式平面図である。
【0036】
センターコンソール7の上面には、開口部14が設けられている。開口部14は、+Z側(
図2の紙面に垂直な方向)からの平面視で略逆L字形状をしている。
【0037】
センターコンソール7の開口部14には、当該開口部14をZ方向に挿通するシフトレバー11が配されている。シフトレバー11の上端部(
図2の紙面手前側の端部)には、変速操作において運転者が把持するシフトノブ12が設けられている。シフトノブ12には、+X側(運転席側)に突出した押ボタン13が設けられている。押ボタン13は、運転者が変速レンジの切り替えを行う際に押し込まれる。
【0038】
開口部14は、シフトレバー11が挿通する部分を除き、カバー15で覆われている。
【0039】
開口部14の+X側及び-X側には、シフトポジションを示すインジケータ16(16p,16r,16n,16d)が設けられている。これらインジケータ16p,16r,16n,16dは、選択されているシフトポジションに対応する箇所が-Z側(
図2の紙面奥側)から発光するようになっており、視覚的にも運転者がシフトポジションを確認し易いようになっている。
【0040】
図2に示すように、車両用シフタ装置3では、パーキング(P)ポジション3pとリバース(R)ポジション3rとは、X方向に並ぶ状態で配置されている。換言すると、Pポジション3pとRポジション3rとは、X方向に沿って延びる直線Ax
1上に配置されている。
【0041】
一方、車両用シフタ装置3において、Rポジション3rとニュートラル(N)ポジション3nとドライブ(D)ポジション3dとは、Y方向に並ぶ状態で配置されている。即ち、Rポジション3rとNポジション3nとDポジション3dとは、Y方向に沿って延びる直線Ax2上に配置されている。
【0042】
なお、本実施形態に係る車両用シフタ装置3では、Pポジション3pとRポジション3rとの間のシフトレバー11の動きを電気的信号で検出し(シフト・バイ・ワイヤ方式を採用し)、Rポジション3rとNポジション3nとDポジション3dの間のシフトレバー11の動きを連結されたケーブルによって自動変速機に変速指令する構成となっている。
【0043】
図2に戻って、直線Ax
1と直線Ax
2とは、略直角に交差する。ただし、直線Ax
1と直線Ax
2とがなす角度については、運転者の腕の自然な動きを考慮し、角度θ
1を90°よりも小さくしたり、90°よりも大きくしたりすることも可能である。
【0044】
運転者がパーキング状態にある車両を発進させようとした場合には、先ず、直線Ax1に沿ってシフトレバー11の上端部(シフトノブ12)を移動させ、シフトポジションをPポジション3pからRポジション3rに切り換える。なお、シフトレバー11を移動させようとする場合には、運転者は押ボタン13を押し込む必要がある。
【0045】
その後、車両1を前進させようとする場合には、直線Ax
2に沿ってシフトレバー11の上端部(シフトノブ12)を移動させ、Rポジション10rからNポジション10nを経てDポジション10dへと切り換え、パーキングスイッチ8(
図1を参照。)をOFFにする。
【0046】
なお、シフトレバー11の移動に伴い、その脇部分に設けられている対応するインジケータ16(16p,16r,16n,16d)が点灯する。また、詳細な図示を省略しているが、メーターユニット5(
図1を参照。)にもシフトポジションを表わすインジケータが設けられており、当該インジケータについても、シフトレバー11の移動に連動して点灯するようになっている。
【0047】
3.シフトレバー11の構成
シフトレバー11の構成について、
図3を用いて説明する。
図3は、シフトレバー11の構成を示す模式側面図であり、内部構成を明確にするためシフトノブ12を鎖線で表している。
【0048】
図3に示すように、シフトレバー11は、円筒状の上部レバー本体17と、上部レバー本体17の-Z側に一体形成された下部レバー本体18と、上部レバー本体17および下部レバー本体18の筒内をZ方向に移動自在のロッド19と、を備える。
【0049】
ロッド19には、Z方向の中程部分から+X側に向けて突設された第1掛止レバー21と、同じくZ方向の中程部分から-X側に向けて突設された第2掛止レバー22と、を有する。第1掛止レバー21および第2掛止レバー22は、ロッド19と一体にZ方向に上下動可能となっている。
【0050】
また、シフトレバー11は、下部レバー本体18の-Z側に接合され、略球形状の根元部20と、当該根元部20から斜め上方に突出形成されたディテントケース23と、を備える。ディテントケース23の先端部分には、出没自在のディテントプランジャー24が収容されている。ディテントケース23およびディテントプランジャー24とを含む構成がディテント機構部33である。
【0051】
さらに、シフトレバー11は、ロッド19における上端部(+Z側の端部)に接合されたヘッド26と、当該ヘッド26の斜面26aに対して摺動可能な斜面25aを有する押ヘッド25と、ロッド19を+Z側に向けて弾性付勢するバネ27と、を備える。なお、本実施形態に係るシフトレバー11では、バネ27の一例としてコイルバネが採用されている。
【0052】
運転者により押ボタン13の操作がなされた場合には、斜面25aと斜面26aとの摺動に伴い、矢印A1,A3,A4のようにヘッド26が上下に移動し、ロッド19および第1掛止レバー21および第2掛止レバー22も上下に移動する。なお、運転者により押ボタン13が押されていない状態では、筒内空間18aに収容されたバネ27の付勢力により、ロッド19および第1掛止レバー21および第2掛止レバー22は、Z方向における可動範囲の上端に位置するようになっている。
【0053】
なお、シフトレバー11は、根元部20の中心P
20を中心に、回動できるようになっている。そして、
図3では図示を省略しているが、根元部20の回動角を検出する回転角センサ―によりシフトレバー11の姿勢(シフトポジション)が検出できるようになっている。
【0054】
ディテントプランジャー24は、ディテントケース23に対して出没自在となっている。
【0055】
4.第1掛止レバー21および第2掛止レバー22の構成
第1掛止レバー21および第2掛止レバー22の構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、
図3のIV-IV断面を示す模式断面図である。
【0056】
図4に示すように、シフトレバー11を-Z側から平面視するとき、第1掛止レバー21は、筒内空間17cに収容されたロッド19から開口部17aを通過して+X側に向けて突設され、第2掛止レバー22は、同じく筒内空間17cに収容されたロッド19から開口部17bを通過して-X側に向けて突設されている。
【0057】
第1掛止レバー21は、一端がロッド19に接合され、+X側に向けて延びる根元部分21aと、根元部分21aの+X側の端部で+Y側に向けて曲折され+Y側に向けて延びる先端部分21bと、が一体形成されている。
【0058】
一方、第2掛止レバー22は、ロッド19との接合箇所から-X側に向けて直線状に延びている。
【0059】
5.ロックプレート28の構成
本実施形態に係る車両用シフタ装置3は、センターコンソール7の内方(裏面側)に設けられたロックプレート28を備える。ロックプレート28は、各シフトポジションにおいて、シフトレバー11の掛止レバー21,22を掛止し、シフトレバー11の位置を保持するレバー位置保持部として設けられている。このロックプレート28の構成について、
図5および
図6を用いて説明する。
図5は、センターコンソール7の裏面側に設けられたロックプレート28の構成を車両1の下方側(-Z側)から示す模式平面図であり、
図6は、
図5のVI-VI断面を示す模式断面図である。
【0060】
図5に示すように、ロックプレート28は、-Z方向からの平面視において、全体として逆L字形状を有しており、センターコンソール7に設けられた開口部14の外縁に沿って設けられている。即ち、ロックプレート28は、X方向に延びる第1延伸部分28iと、Y方向に延びる第2延伸部分28jと、が一体形成されている。
【0061】
図5および
図6に示すように、ロックプレート28の第1延伸部分28iには、+Z側に凹入した凹部28c,28dと、-Z側に突出した凸部28f,28gが設けられている。
図5および
図6に示すように、凸部28gは、X方向における凹部28cと凹部28dとの間に設けられている。
【0062】
なお、
図6に示すように、凹部28dは、-Z側に深く凹入された深底部分28d
1と、深底部分28d
1よりも凹入深さが浅く、深底部分28d
1に対して+X側に配された浅底部分28d
2と、を有する。
【0063】
一方、ロックプレート28の第2延伸部分28jには、+Z側に凹入した凹部28a,28bと、-Z側に突出した凸部28e,28fと、が設けられている。凸部28eは、Y方向における凹部28aと凹部28bとの間に設けられている。
【0064】
なお、
図6に示すように、凹部28aは、-Y側に設けられ、Z方向に高低を有する斜面を以って構成された斜面部分28a
1と、斜面部分28a
1に隣接して設けられ、底がY方向に沿った平面を以って構成された第2部分28a
2と、を有する。
【0065】
図6に示すように、ロックプレート28は、センターコンソール7の裏面側に配され、車両1の車体に接合された取付プレート29に対して接合されている。
【0066】
次に、
図6に示すように、ロックプレート28の第1延伸部分28iには、当該第1延伸部分28iの厚み方向(Y方向)に貫通する孔部28hが設けられている。
図6の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、孔部28hには、ソレノイド30のプランジャー30aが侵入した状態となっている。プランジャー30aは、矢印Cで示すように、Y方向に出没可能となっている。
【0067】
なお、
図6の二点鎖線で囲んだ部分に示すように、プランジャー30aが突出するのは、シフトレバー11のレバー本体17,18が可動する、ロックプレート28よりも-Y側の領域に対してである。
【0068】
6.シフトポジション毎のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の掛止
シフトポジション毎のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の掛止形態について、
図7および
図8を用いて説明する。
図7(a)は、シフトポジションがDポジションにある場合のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の状態を示す模式平面図であり、
図7(b)は、シフトポジションがNポジションにある場合のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の状態を示す模式平面図であり、
図8(a)は、シフトポジションがRポジションにある場合のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の状態を示す模式平面図であり、
図8(b)は、シフトポジションがPポジションにある場合のロックプレート28に対する掛止レバー21,22の状態を示す模式平面図である。
【0069】
図7(a)に示すように、シフトポジションがDポジション3dである場合、第2掛止レバー22がロックプレート28における第2延伸部分28jの凹部28aに掛止された状態となる。この場合に、第1掛止レバー21は、ロックプレート28の第1延伸部分28iに対して掛止されていない。
【0070】
次に、シフトレバー11を矢印D
1のように動かすことにより、
図7(b)に示すように、シフトポジションがNポジション3nとなる。なお、Dポジション3dからNポジション3nへの移動に際しては、運転者は押ボタン13を押し込む必要はなく、シフトノブ12を+Y側に向けて押すだけでよい。
【0071】
図7(b)に示すように、シフトポジションがNポジション3nである場合、第2掛止レバー22が、ロックプレート28における第2延伸部分28jの凹部28aの+Y側の端部領域に位置する。
【0072】
次に、シフトレバー11を矢印D
2のように動かすことにより、
図8(a)に示すように、シフトポジションがRポジション3rとなる。なお、Nポジション3nからRポジション3rへの移動に際しては、運転者は押ボタン13を押し込み、第2掛止レバー22が凸部28eを乗り越えるように操作する必要がある。
【0073】
図8(a)に示すように、シフトポジションがRポジション3rである場合、第2掛止レバー22が、ロックプレート28における第2延伸部分28jの凹部28bに掛止され、且つ、第1掛止レバー21の先端部分21bが、ロックプレート28における第1延伸部分28iの凹部28cに掛止された状態となる。
【0074】
次に、シフトレバー11を矢印E
1のように動かすことにより、
図8(b)に示すように、シフトポジションがPポジション3pとなる。なお、Rポジション3rからPポジション3pへの移動に際しても、運転者は押ボタン13を押し込み、第1掛止レバー21の先端部分21bが凸部28gを乗り越えるように操作する必要がある。
【0075】
図8(b)に示すように、シフトポジションがPポジション3pである場合、第1掛止レバー21の先端部分21bが、ロックプレート28における第1延伸部分28iの凹部28dに掛止された状態となる。
【0076】
なお、上記では、Dポジション3d⇒Nポジション3n⇒Rポジション3r⇒Pポジション3pの順にシフトポジションを移動させる形態を一例としたが、逆の移動、即ち、Pポジション3p⇒Rポジション3r⇒Nポジション3n⇒Dポジション3dの移動に際しても、上記同様の操作で実行が可能である。
【0077】
7.ディテント機構部33の構成
シフトレバー11に設けられたディテント機構部33の構成について、
図9を用いて説明する。
図9は、
図3のIX-IX断面を示す模式断面図である。
【0078】
図9に示すように、ディテント機構部33は、ディテントケース23と、ディテントプランジャー24と、バネ31と、を備える。ディテントケース23は、円筒形状を有し、根元部20に接合された部分と反対側の部分が少し窄まっている。
【0079】
ディテントプランジャー24は、全体に円柱形状を有し、突出部24aと、根元部24bと、フランジ部24cと、が一体形成されてなる。突出部24aは、上方からの押圧力(矢印F)が作用していない状態ではディテントケース23から全体が外方に突出している。
【0080】
根元部24bは、ディテントケース23のケース内空間23aに収容されている。フランジ部24cは、突出部24aと根元部24bとの境界部分に設けられており、バネ31の弾性力が付勢されていても、根元部24bがディテントケース23のケース内空間23aから飛び出さないように設けられている。
【0081】
なお、ディテントプランジャー24における突出部24aの先端部24dは、滑らかな曲面を以って構成されている。
【0082】
バネ31は、ディテントプランジャー24を弾性付勢するために、ディテントケース23のケース内空間23aに収容されている。これより、矢印Fのようにディテントプランジャー24が押圧力を受けた場合には、当該押圧力の大きさに応じてディテントプランジャー24の突出部24aがディテントケース23のケース内空間23a側に向けて押し込まれる。
【0083】
8.ディテントプレート32の構成
上記のディテント機構部33に対応するディテントプレート32の構成について、
図10および
図11を用いて説明する。
図10は、センターコンソール7の裏面側に設けられたディテントプレート32の構成を示す模式平面図であり、
図11は、
図10のXI-XI断面を示す模式断面図である。
【0084】
図10に示すように、ディテントプレート32は、ロックプレート28の第2延伸部分28jに対して-X側に隣接して設けられている。ディテントプレート32は、Z方向からの平面視で、開口部14と相似的な逆L字形状を有している。
【0085】
ディテントプレート32には、当該ディテントプレート32の延伸方向に沿って1条の溝部32aが設けられている。溝部32aは、その溝幅がディテントプランジャー24の径よりも大きい幅に設定されている。
図11に示すように、シフトレバー11の移動に伴ってディテント機構部33が矢印G
1~G
5のように移動する場合には、ディテントプランジャー24の先端部24dがディテントプレート32の溝部32aの底に摺接する。
【0086】
図11に示すように、ディテントプレート32の溝部32aは、谷部32p,32r,32n,32dと山部32b,32c,32eとで底が形成されている。
図10および
図11に示すように、谷部32pは、シフトレバー11がPポジション3pに入れられている場合に、ディテントプランジャー24の先端部24dが嵌まり込む谷部である(P谷部32pと記載する場合がある)。同様に、谷部32rは、シフトレバー11がRポジション3rに入れられている場合に、ディテントプランジャー24の先端部24dが嵌まり込む谷部であり(R谷部32rと記載する場合がある)、谷部32nは、シフトレバー11がNポジション3nに入れられている場合に、ディテントプランジャー24の先端部24dが嵌まり込む谷部であり(N谷部32nと記載する場合がある)、谷部32dは、シフトレバー11がDポジション3dに入れられている場合に、ディテントプランジャー24の先端部24dが嵌まり込む谷部である(D谷部32dと記載する場合がある)。
【0087】
図11に示すように、山部32bは、D谷部32dとN谷部32nとの間に設けられた山部であって、ディテント機構部33がD谷部32dとN谷部32nとの間を移動する際に、ディテントプランジャー24をディテントケース23側に押し込むよう作用する。なお、山部32bをD-N間山部32bと記載する場合がある。
【0088】
山部32cは、N谷部32nとR谷部32rとの間に設けられた山部であって、ディテント機構部33がN谷部32nとR谷部32rとの間を移動する際に、ディテントプランジャー24をディテントケース23側に押し込むよう作用する。なお、山部32cをN-R間山部32cと記載する場合がある。
【0089】
山部32eは、R谷部32rとP谷部32pとの間に設けられた山部であって、ディテント機構部33がR谷部32rとP谷部32pとの間を移動する際に、ディテントプランジャー24をディテントケース23側に押し込むよう作用する。なお、山部32eをR-P間山部32eと記載する場合がある。
【0090】
ここで、
図11に示すように、R-P間山部32eの-Z側への凸出量(凸出高さ)は、D-N間山部32bおよびN-R間山部32cの-Z側への凸出量(凸出高さ)よりも低く抑えられている。
【0091】
また、P谷部32pおよびR谷部32rからR-P間山部32eの頂に至る斜面は、R谷部32rおよびN谷部32nからN-R間山部32cの頂に至る斜面、および、D谷部32dおよびN谷部32nからD-N間山部32bの頂に至る斜面よりも、傾斜が緩くなっている。
【0092】
さらに、
図11に示すように、本実施形態に係るディテントプレート32では、溝部32aの底が滑らかな曲面で構成されている。
【0093】
本実施形態に係る車両用シフタ装置3では、シフトレバー11に設けられたディテント機構部33と、センターコンソール7の裏面側の取付プレート29に取り付けられたディテントプレート32と、の組み合わせを以って操作荷重付加部を構成している。即ち、ディテントプレート32の溝部32aにおける山部32b,32c,32eの表面プロファイル(溝底のプロファイル)によって、ディテントプランジャー24の引っ込み量(押し込まれ量)が規定され、当該引っ込み量に応じて運転者に対する操作荷重が規定される。
【0094】
9.シフトレバー11を操作する際の操作荷重
運転者がシフトレバー11を操作する際の操作荷重について、
図12を用いて説明する。
図12は、横軸にストローク(ディテントプレート32の溝部32aに対するディテントプランジャー24の先端部24dの相対位置)を、縦軸に操作荷重を表す特性図である。
【0095】
図12において、特性線L
1は、シフトレバー11をPポジション3p⇒Rポジション3r⇒Nポジション3n⇒Dポジション3dへと移動させる場合の特性線であり、特性線L
2は、Dポジション3d⇒Nポジション3n⇒Rポジション3r⇒Pポジション3pへと移動させる際の特性線である。
【0096】
なお、特性線L2においては、操作荷重の値を正負逆転させて表している。
【0097】
また、シフトレバー11に付加される操作荷重は、運転者がシフトノブ12を把持して根元部20を中心にシフトノブ12を移動させる際に、当該移動させようとする方向とは逆向きに付加される荷重である。換言すると、操作荷重は、シフトレバー11を操作する際に、当該操作に対して抗する方向に作用させる反力である。
【0098】
(1)特性線L
1
図12において実線で示した特性線L
1について、説明する。
【0099】
先ず、ディテントプランジャー24の先端部24dがP谷部32pからR谷部32rへ向けて摺動する場合には、P谷部32pとR谷部32rとの中間位置よりもP谷部32p側の位置P
1でピーク荷重LO
2となる。位置P
1は、P谷部32pからR-P間山部32e(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0100】
次に、ディテントプランジャー24の先端部24dがR谷部32rからN谷部32nへ向けて摺動する場合には、R谷部32rとN谷部32nとの中間位置よりもR谷部32r側の位置P
2でピーク荷重LO
1となる。位置P
2は、R谷部32rからN-R間山部32c(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0101】
次に、ディテントプランジャー24の先端部24dがN谷部32nからD谷部32dへ向けて摺動する場合には、N谷部32nとD谷部32dとの中間位置よりもN谷部32n側の位置P
3でピーク荷重LO
1となる。位置P
3は、N谷部32nからD-N間山部32b(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0102】
ここで、操作荷重LO1と操作荷重LO2とは、次の関係を満たす。
LO2<LO1 ・・(数1)
なお、操作荷重LO1は、例えば10N~20N(一例として15N)であり、操作荷重LO2は、例えば5N~15N(一例として10N)である。
【0103】
(2)特性線L
2
図12において破線で示した特性線L
2について、説明する。
【0104】
ディテントプランジャー24の先端部24dがD谷部32dからN谷部32nへ向けて摺動する場合には、D谷部32dとN谷部32nとの中間位置よりもD谷部32d側の位置P
4でピーク荷重LO
3となる。位置P
4は、D谷部32dからD-N間山部32b(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0105】
次に、ディテントプランジャー24の先端部24dがN谷部32nからR谷部32rへ向けて摺動する場合には、N谷部32nとR谷部32rとの中間位置よりもN谷部32n側の位置P
5でピーク荷重LO
3となる。位置P
5は、N谷部32nからN-R間山部32c(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0106】
次に、ディテントプランジャー24の先端部24dがR谷部32rからP谷部32pへ向けて摺動する場合には、R谷部32rとP谷部32pとの中間位置よりもR谷部32r側の位置P
6でピーク荷重LO
4となる。位置P
6は、R谷部32rからR-P間山部32e(
図11を参照。)の頂に至るまでの領域の略中間部分の位置である。
【0107】
ここで、操作荷重LO3と操作荷重LO4とは、次の関係を満たす。
LO4<LO3 ・・(数2)
なお、操作荷重LO3は、例えば10~20N(一例として15N)であり、操作荷重LO4は、例えば5~15N(一例として10N)である。
【0108】
10.Pポジション3pからRポジション3rへの移動
車両用シフタ装置3における、Pポジション3pからRポジション3rへの移動について、
図13を用いて補足説明しておく。
図13は、シフトポジションがPポジションにある場合のシフトレバー11に対するプランジャー30aの状態を示す模式平面図である。
【0109】
図13に示すように、シフトポジションがPポジション3pにある場合には、ソレノイド30のプランジャー30aがロックプレート28における第1延伸部分28iよりも-Y側に突出した状態となる。このため、仮に運転者が押ボタン13だけを押し込んでシフトレバー11を-X側に移動させようとしても、レバー本体17またはレバー本体18(
図13では、レバー本体18の図示を省略。)に対してプランジャー30aが当接することとなり、シフトレバー11の-X側への移動を防止する。
【0110】
シフトレバー11をPポジション3pからRポジション3rに移動させる場合には、運転者はブレーキペダル10を踏み込んだ状態で、上記操作を実行する必要がある。
【0111】
[変形例]
上記実施形態では、シフトレバー11に対して操作荷重を付加する手段として、ディテント機構部33とディテントプレート32との組み合わせに係る構成を一例としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ソレノイドでシフトレバーに操作荷重を付加することとしてもよいし、磁力の作用を以って操作荷重を付加することとしてもよい。この場合にも、PレンジとRレンジとの間の切り替えの場合の操作荷重を、NレンジとDレンジとの間の切り替えの場合の操作荷重よりも小さくすることで、上記同様の効果を得ることができる。
【0112】
上記実施形態では、
図12を用いて説明したように、位置P
2と位置P
3の操作荷重を荷重LO
1で同一荷重とし、位置P
4と位置P
5の操作荷重を荷重LO
3で同一荷重としたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、位置P
2よりも位置P
3の方が操作荷重を大きくなるようにしたり、位置P
4よりも位置P
5の方が操作荷重を大きくなるようにしたりすることや、逆に、位置P
3よりも位置P
2の方が操作荷重を大きくなるようにしたり、位置P
5よりも位置P
4の方が操作荷重を大きくなるようにしたりすることなども可能である。
【0113】
上記実施形態では、ディテントプランジャー24の先端部24dが突出部24aと一体に形成された構成を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ディテントプランジャーの先端部に、回転自在の球体(例えば、ベアリングボール)を取り付けることとしてもよい。これにより、ディテントプレートの溝部内をディテントプランジャーの先端部が摺動する際に、より滑らかな動きを確保することができる。
【0114】
上記実施形態では、ディテントプレート32の溝部32aの底を滑らかな曲面で構成することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、運転者に対してシフトレバーの位置を明確に認識させるために、敢えて角部や段差等を設けることとしてもよい。
【0115】
上記実施形態では、Dポジション3d、Nポジション3n、Rポジション3r、Pポジション3pの4つのポジションを有する車両用シフタ装置3を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、マニュアルモードに対応するポジションをさらに有することとしてもよい。
【0116】
上記実施形態では、車両の右側に運転席が設けられた右ハンドル車を一例として採用したが、本発明は、左ハンドル車に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 車両
3 車両用シフタ装置
11 シフトレバー
12 シフトノブ
13 押ボタン
24 ディテントプランジャー
28 ロックプレート(レバー位置保持部)
32 ディテントプレート(操作荷重付加部)
32a 溝部
32p,32r,32n,32d 谷部
32b,32c,32e 山部
33 ディテント機構部(操作荷重付加部)